説明

加熱調理器

【課題】プレートの温度を測定し、その温度検知の結果を、負荷量判定や上下ヒータの出力値を決定する際に用いること。
【解決手段】調理物を載置するプレート1の温度を検知する温度検知部2を有し、その温度上昇の速度あるいは温度の結果に応じて、上ヒータ5と下ヒータ4の出力を変更しながら調理を行うことによって、どの調理物、負荷量であっても表裏の出来を同じにし、良好な仕上がりを得ることを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受け皿や焼き網を用いずプレートで調理物を加熱する加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の加熱調理器は、調理庫内に温度検知手段を設け、調理庫内の雰囲気温度の検知結果から、調理物の負荷量を判別したり、あるいは温調を行ったりすることで加熱を行っており、受け皿温度検知手段の検知結果は発火を防いだり、受け皿に水が有るか無いかの判別にのみ使用していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−259550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、受け皿や焼き網を用いず調理物をプレートに載置して調理する構成の加熱調理器で調理を行う場合、プレート自体の負荷が重いため調理庫内に設けた温度検知手段の結果だけでは調理物そのものの負荷量の判別が困難となる。
【0005】
また、受け皿温度検知手段は調理物に接していないので、調理物の負荷量を判別することは不可能であり、プレートを用いて加熱を行う場合、精度よく負荷量を判別することは難しい。
【0006】
さらに、プレートに調理物を載置して加熱調理を行う場合に、負荷が少なく表面積が小さい調理物は、上ヒータからの熱がプレートに直接あたり、その熱が伝導で調理物の下面に伝わるため、下面が非常によく焼け、反対に負荷が多く表面積が大きい調理物は上ヒータの熱が下面に伝わりにくいので下面が焼けにくい傾向があるという課題を有していた。
【0007】
このようなプレート焼き独特の特徴を加味し、自動あるいは手動共に制御パターンを設定する必要があった。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、受け皿や焼き網を用いず調理物をプレートに載置して調理する構成での加熱調理器において、プレートに調理物を載せて調理する際、どのような調理物、負荷量であっても、表と裏の焼き色及び出来映えを同じにすることができる加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明の加熱調理器は、被調理物を載置するプレート、前記プレートの温度を検知する温度検知部、前記プレートの下方に設けた下ヒータ及び前記プレートの上方に設けた上ヒータを内部に有する調理庫と、前記下ヒータ及び前記上ヒータの加熱出力を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記上ヒータ及び下ヒータを共に通電して加熱開始後、前記温度検知部の検知する前記プレート温度の上昇速度が、所定値より速い場合には、前記下ヒータの加熱出力を抑制し、且つ前記上ヒータの加熱出力を抑制しないか又は前記上ヒータの加熱出力を前記下ヒータの加熱出力の低減量より小さな低減量となるように抑制するものである。
【0010】
これによって、プレートに調理物を載せて調理する際、どのような調理物、負荷量であっても、表と裏の焼き色及び出来映えを同じにすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の加熱調理器は、どのような調理物、負荷量でも表裏の出来ばえを同じにし、良好な仕上がりを得ることができるので、プレート上で自由に調理を行うことができ、受け皿や焼き網を洗う手間もなくなり、使用者の満足度も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1における加熱調理器の概略構成図
【図2】(a)本発明の実施の形態1における加熱調理器の加熱時間と温度検知部温度のグラフ、(b)本発明の実施の形態1における加熱調理器の負荷小の時の加熱時間とヒータ出力のタイミングチャート、(c)本発明の実施の形態1における加熱調理器の負荷大の時の加熱時間とヒータ出力のタイミングチャート、(d)本発明の実施の形態1における加熱調理器の負荷小の時の加熱時間とヒータ出力のタイミングチャート
【図3】本発明の実施の形態2における加熱調理器のプレート温度と加熱出力の変化図
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の発明は、被調理物を載置するプレート、前記プレートの温度を検知する温度検知部、前記プレートの下方に設けた下ヒータ及び前記プレートの上方に設けた上ヒータを内部に有する調理庫と、前記下ヒータ及び前記上ヒータの加熱出力を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記上ヒータ及び下ヒータを共に通電して加熱開始後、前記温度検知部の検知する前記プレート温度の上昇速度が、所定値より速い場合には、前記下ヒータの加熱出力を抑制し、且つ前記上ヒータの加熱出力を抑制しないか又は前記上ヒータの加熱出力を前記下ヒータの加熱出力の低減量より小さな低減量となるように抑制する加熱調理器とすることにより、負荷が小さく表面積が小さい調理物でも裏面が焦げすぎることなく効率的に、表裏の焼き色を合わせることが可能となる。
【0014】
第2の発明は、特に、第1の発明の制御部は、温度検知部の検知するプレート温度の上昇速度が、所定値より速い場合には、下ヒータの加熱動作のみ停止し、前記所定値より遅い場合には、前記下ヒータの加熱動作を継続することにより、調理物の負荷量に関わらず、表裏共に効率的に最適な出来映えを得ることができる。
【0015】
第3の発明は、被調理物を載置するプレート、前記プレートの温度を検知する温度検知部、前記プレートの下方に設けた下ヒータ及び前記プレートの上方に設けた上ヒータを内部に有する調理庫と、前記下ヒータ及び前記上ヒータの加熱出力を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記上ヒータ及び下ヒータを共に通電して加熱開始後、前記温度検知部の検知する前記プレート温度が、所定値以上になると、前記下ヒータの加熱出力を抑制し、且つ前記上ヒータの加熱出力を抑制しないか又は前記上ヒータの加熱出力を前記下ヒータの加熱出力の低減量より小さな低減量となるように抑制する加熱調理器とすることにより、負荷量の大小により受熱量に差が生じやすい裏面を常に最適に加熱することができる。
【0016】
第4の発明は、特に、第3の発明の制御部は、温度検知部の検知するプレート温度が、所定値以上の場合には、下ヒータの加熱動作のみを停止し、前記所定値より低い場合には、前記下ヒータの加熱動作を継続することにより、調理物の負荷量に関わらず、表裏共に最適な出来映えを得ることができる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の
形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における加熱調理器の概略構成図を示すものである。
【0019】
図1において、調理物3を載置するプレート1、プレート1の温度を検知する温度検知部2、プレート1の下にある下ヒータ4、プレート1の上にある上ヒータ5、調理を行う調理庫6、温度検知部2からの温度検知結果と操作部8からの情報に応じて下ヒータ4と上ヒータ5の出力を制御する制御部7で構成している。
【0020】
図2(a)は本発明の第1の実施の形態における加熱調理器の加熱時間と温度検知部温度のグラフ、(b)は本発明の第1の実施の形態における加熱調理器の負荷小の時の加熱時間とヒータ出力のタイミングチャート、(c)は本発明の第1の実施の形態における加熱調理器の負荷大の時の加熱時間とヒータ出力のタイミングチャート、(d)は本発明の第1の実施の形態における加熱調理器の負荷小の時の加熱時間とヒータ出力のタイミングチャートであり、所定値までの温度上昇速度とその結果による加熱出力の変化図である。
【0021】
以上のように、構成された加熱調理器について、以下その動作、作用を説明する。
【0022】
図1において、使用者が、加熱したい調理物3を調理庫6内のプレート1に載置し、操作部8で調理物3に合致する調理コースを選択すると、制御部7にその情報が伝達され、上ヒータ5と下ヒータ4の出力が決定される。
【0023】
加熱が開始され、図2(a)に示すように温度検知部2が所定温度、例えば220℃、を検知するまでの所要時間が所定値として設定した時間、例えば300秒、より速いと、調理物が少ししかない(負荷量が少ない)負荷小ゾーンであると判定し、図2(b)に示すように下ヒータ4の出力を例えば30%抑える。
【0024】
そして上ヒータ5の出力は変更せず加熱開始時の出力、例えば1000Wを維持する。この時、上ヒータ5の出力を低減する際は、下ヒータ4の抑制した出力割合より高ければ良いので、30%より少ない例えば20%抑制した出力で加熱を行っても良い。
【0025】
調理物が多い(負荷量が多い)負荷大ゾーンであると判定された場合は、判定後の出力は図2(c)に示すように下ヒータ4及び上ヒータ5共に出力は変更せずとも良い。
【0026】
また、温度検知部2の検知するプレート温度の上昇速度は、加熱開始から測定せずとも良く、所定時間中、例えば300秒中、にどの程度温度が上がるか、あるいは所定温度上昇値、例えば40℃、に要する時間で決定されても構わない。
【0027】
また、プレート1が高温で加熱が開始される場合、温度検知部2で正確な温度上昇速度の結果が得られない為、温度検知部2の検出結果が所定の温度以下、例えば40℃、に下がるまで制御部7で下ヒータ4と上ヒータ5の出力を行わず、下がってから調理を開始しても構わない。
【0028】
また、プレート1のみが高温なのか、調理庫6全体が高温なのかを正確に知る為に、調理庫6内の温度を測定する為の温度検知部(図示せず)を調理庫6内に設け、温度検知部2の検知結果と2つの温度検知結果より下ヒータ4と上ヒータ5の出力を決定することも可能である。
【0029】
また、温度検知部2の検知するプレート温度の上昇速度が、図2(a)に示す所定値より速い負荷小ゾーンの場合には、図2(d)に示すように下ヒータ4の加熱動作のみ停止し、上ヒータ5は加熱維持し、所定値より遅い負荷大ゾーンの場合には、図2(c)に示すように下ヒータの加熱動作を継続するように負荷量に応じて下ヒータ4の加熱パターンを変えても構わない。
【0030】
以上のように、本実施の形態においては、上ヒータ及び下ヒータを共に通電して加熱開始後、温度検知部の検知するプレート温度の上昇速度が、所定値より速い場合には、下ヒータの加熱出力を抑制し、且つ上ヒータの加熱出力を抑制しないか又は上ヒータの加熱出力を下ヒータの加熱出力の低減量より小さな低減量となるように抑制することで、特に負荷量が少なく表面積が少ない調理物の場合、上ヒータからの熱がプレートに吸収され、調理物裏面に伝導で伝えられる為、どうしても裏面が焼きすぎになってしまうといったプレート調理特有のデメリットを避け、調理物の負荷量の大小や表面積に関わらず、いつでも表裏差のない最適な出来映えを得ることができる。
【0031】
(実施の形態2)
図3は本発明の第2の実施の形態における加熱調理器のプレート温度と加熱出力の変化図である。
【0032】
図3において実施の形態1と異なる点は、第1工程で下ヒータ4と上ヒータ5がそれぞれ定められた出力値、例えば1000W、を出力し、温度検知部2が所定温度、例えば220℃、を検知すると、下ヒータ4の加熱出力を抑制し、且つ上ヒータ5の加熱出力を抑制せずにプレート1の温度を温度検知部2で温調しながら加熱を行うか、第1工程で下ヒータ4と上ヒータ5がそれぞれ定められた出力値、例えば1000W、を出力し、温度検知部2が所定温度、例えば220℃、を検知すると、図3の第2工程(b)に示すように、プレート温度が所定値、例えば220℃、になる前までの加熱出力、例えば1000W、に比べて、上ヒータ5の加熱出力を下ヒータ4の加熱出力の低減量より小さな低減量となるように、例えば上ヒータ5を20%、下ヒータ4を30%、下げ、プレート1を温度検知部2で所定温度、例えば220℃で温調し、加熱を行うことである。
【0033】
また、図3の第2工程(c)に示すように、プレート温度が所定値、例えば200℃、になった場合には、温調を上ヒータ5のみで行い、下ヒータの加熱動作を停止することもできる。
【0034】
以上のように、本実施の形態においては、上ヒータ及び下ヒータを共に通電して加熱開始後、前記温度検知部の検知する前記プレート温度が、所定値以上になると、前記下ヒータの加熱出力を抑制し、且つ前記上ヒータの加熱出力を抑制しないか又は前記上ヒータの加熱出力を前記下ヒータの加熱出力の低減量より小さな低減量となるように抑制することで、調理物の量や表面積に関わらず、プレート調理でもっとも影響の出やすい裏面を常に同じように精度よく調理することができる。
【0035】
また、調理庫6内にもう一つ庫内温度検知部を設け、温度検知部2で下ヒータ4の出力を、庫内温度検知部で4を制御部7により制御することで、より精度良く調理を行うこともできる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上のように、本発明にかかる加熱調理器は、プレートを用いて調理庫で調理する場合、プレートの温度検知結果に応じて上下のヒータの出力を各々変えることで、調理物の負荷量や表面積に関わらず表裏共に最適な加熱を行うことができるので調理器の用途に有効である。
【符号の説明】
【0037】
1 プレート
2 温度検知部
3 調理物
4 下ヒータ
5 上ヒータ
6 調理庫
7 制御部
8 操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物を載置するプレート、前記プレートの温度を検知する温度検知部、前記プレートの下方に設けた下ヒータ及び前記プレートの上方に設けた上ヒータを内部に有する調理庫と、前記下ヒータ及び前記上ヒータの加熱出力を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記上ヒータ及び下ヒータを共に通電して加熱開始後、前記温度検知部の検知する前記プレート温度の上昇速度が、所定値より速い場合には、前記下ヒータの加熱出力を抑制し、且つ前記上ヒータの加熱出力を抑制しないか又は前記上ヒータの加熱出力を前記下ヒータの加熱出力の低減量より小さな低減量となるように抑制する加熱調理器。
【請求項2】
制御部は、温度検知部の検知するプレート温度の上昇速度が、所定値より速い場合には、下ヒータの加熱動作のみ停止し、前記所定値より遅い場合には、前記下ヒータの加熱動作を継続する請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
被調理物を載置するプレート、前記プレートの温度を検知する温度検知部、前記プレートの下方に設けた下ヒータ及び前記プレートの上方に設けた上ヒータを内部に有する調理庫と、前記下ヒータ及び前記上ヒータの加熱出力を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記上ヒータ及び下ヒータを共に通電して加熱開始後、前記温度検知部の検知する前記プレート温度が、所定値以上になると、前記下ヒータの加熱出力を抑制し、且つ前記上ヒータの加熱出力を抑制しないか又は前記上ヒータの加熱出力を前記下ヒータの加熱出力の低減量より小さな低減量となるように抑制する加熱調理器。
【請求項4】
制御部は、温度検知部の検知するプレート温度が、所定値以上の場合には、下ヒータの加熱動作のみを停止し、前記所定値より低い場合には、前記下ヒータの加熱動作を継続する請求項3に記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−45063(P2012−45063A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187815(P2010−187815)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】