説明

加熱調理装置

【課題】効率的に加熱調理できる加熱調理装置を提供する。
【解決手段】加熱調理装置1は、炊飯釜2の底板部5の下方に位置する加熱手段41を備える。加熱手段41は、複数本の棒状のカーボンヒータ42にて構成する。加熱調理装置1は、加熱手段41の下方に位置する反射体51を備える。反射体51は、カーボンヒータ42からの赤外線を炊飯釜2の底板部5に向けて反射する。反射体51は、平面視でカーボンヒータ42と直交するように位置する長手状の山型部80を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンヒータを用いた加熱調理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カーボンヒータに用いた加熱調理装置として、例えば特許文献1に記載されたピザ焼き器が知られている。
【0003】
このピザ焼き器は、ピザ焼き用空間を有し開口部に開閉扉が設けられているケーシングと、ピザ焼き用空間内に収納され開口部よりスライドにて引き出し入れ可能に配設され高熱伝導性金属薄板上にセラミックスコーティングがなされたピザ焼き用加熱棚と、ピザ焼き用加熱棚の上下に配設された棒状のカーボンヒータと、ピザ焼き用加熱棚上方のカーボンヒータの上に配設されピザ焼き用加熱棚に向かって凹湾曲し反射放射熱をピザ焼き用加熱棚側中央部分に集光する反射板とにて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−84955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の加熱調理装置は、熱を集中させて加熱するピザ店舗での利用に最適なピザ焼き器であり、例えば炊飯釜等の被加熱容器を加熱して加熱調理する際には利用できない。そして、近年、被加熱容器を適切に加熱でき、効率的に加熱調理できる加熱調理装置が求められていた。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、効率的に加熱調理できる加熱調理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の加熱調理装置は、複数の長手状のカーボンヒータにて構成され、被加熱容器の底板部の下方に位置する加熱手段と、この加熱手段の下方に位置し、前記被加熱容器の底板部の全体が均一に加熱されるように前記カーボンヒータからの赤外線を前記被加熱容器の底板部に向けて反射する反射体とを備えるものである。
【0008】
請求項2記載の加熱調理装置は、請求項1記載の加熱調理装置において、反射体は、平面視でカーボンヒータと直交するように位置する長手状の山型部を有するものである。
【0009】
請求項3記載の加熱調理装置は、請求項2記載の加熱調理装置において、反射体の山型部は、カーボンヒータの長手方向中央部の下方に配設されているものである。
【0010】
請求項4記載の加熱調理装置は、請求項2または3記載の加熱調理装置において、反射体の山型部は、被加熱容器の底板部のうちカーボンヒータの一端側の上方に位置する部分に向けて前記カーボンヒータからの赤外線を反射する一方側傾斜面と、前記被加熱容器の底板部のうち前記カーボンヒータの他端側の上方に位置する部分に向けて前記カーボンヒータからの赤外線を反射する他方側傾斜面とを有するものである。
【0011】
請求項5記載の加熱調理装置は、請求項1ないし4のいずれか一記載の加熱調理装置において、反射体は、被加熱容器から出た汁を受ける汁受け皿を兼ねた反射部材を有するものである。
【0012】
請求項6記載の加熱調理装置は、請求項1ないし5のいずれか一記載の加熱調理装置において、カーボンヒータは、直線状のガラス管部と、このガラス管部内に収納され、水平状に位置する細長板状のカーボン繊維部とを有するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被加熱容器の底板部の全体が均一に加熱されるようにカーボンヒータからの赤外線を被加熱容器の底板部に向けて反射する反射体を備えるため、被加熱容器を適切に加熱でき、効率的に加熱調理できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係る加熱調理装置のI−I断面図である。
【図2】同上加熱調理装置のII−II断面図である。
【図3】同上加熱調理装置のIII−III断面図である。
【図4】同上加熱調理装置の反射部材(汁受け皿)の斜視図である。
【図5】同上加熱調理装置のカーボンヒータの側面図である。
【図6】同上カーボンヒータの断面図である。
【図7】炊飯釜の底板部の温度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1ないし図3において、1は加熱調理装置で、この加熱調理装置1は、例えば加熱調理である炊飯を行うバッチ式の炊飯装置である。つまり、加熱調理装置1は、加熱室3に出し入れ可能に入れられた被加熱容器である業務用の炊飯釜2を加熱して炊飯を行うものである。
【0017】
炊飯釜2は、図1および図2に示されるように、例えばアルミニウム鋼板によって上面開口部(図示せず)を有する外形略直方体状で箱形状に形成されたものであり、その上面開口部は釜蓋(図示せず)にて開閉可能に閉鎖されている。つまり、炊飯釜2は、炊飯時には、内部に洗米(食材)および水等が投入されかつ上面開口部が釜蓋にて閉鎖された状態で、加熱室3に入れられる。
【0018】
炊飯釜2は、平面視で左右方向(加熱室3に対する出し入れ方向に対して直交する方向)に長手方向を有する矩形状をなす平面状の底板部5と、この底板部5の外周端部に曲面状の湾曲板部6を介して立設された鉛直状(鉛直方向に対して外側方にやや傾斜した傾斜状を含む)の4つの側板部7と、これら4つの側板部7の上端部に外側方に向かって突設された鍔部8とを有している。また、底板部5、湾曲板部6および側板部7の各外面には、赤外線を吸収しやすいように黒色塗装が施されている。なお、赤外線を吸収しやすくするために、底板部5、湾曲板部6および側板部7の各外面を黒色酸化皮膜で覆うようにしてもよい。
【0019】
加熱調理装置1は、図1ないし図3に示されるように、前面開口部4を介して前方に向かって開口する1つの加熱室3を内部に有する箱形状の装置本体11と、この装置本体11に左右方向の軸13を中心として上下方向に回動可能に設けられ前面開口部4を開閉する扉体12とを備えている。
【0020】
装置本体11は、左右方向長手状でかつ矩形状の底板部15を有し、この底板部15の左右方向両端部には側板部16が立設されている。左右の両側板部16の上端部相互が上板部17にて連結され、左右の両側板部16の後端部相互が後板部18にて連結されている。
【0021】
また、左右の両側板部16の前側下部相互が連結部19にて連結され、この連結部19には複数(例えば6つ)のヒータ被取付部であるヒータ被取付前側孔部21が形成されている。後板部18のうち連結部19と対向する部分には、ヒータ被取付前側孔部21と対応する複数(例えば6つ)のヒータ被取付部であるヒータ被取付後側孔部22が形成されている。連結部19の左右方向両端部には、釜搬送用のローラ体23が回転可能に取り付けられている。
【0022】
さらに、後板部18の上端部には、加熱室3に連通する左右方向長手状の排気口部26が後板部18の内外面(前後面)に貫通して形成されている。加熱室3の上部には、排気用孔部27が中央部に形成された板部材28が配設されており、加熱室3のうち板部材28と上板部17との間に位置する部分が排気用空間部29となっている。そして、炊飯時に炊飯釜2から発生した水蒸気等の排気は、排気用孔部27、排気用空間部29および排気口部26を順次流れて外部へ排出される。
【0023】
また、後板部18の内面上部には、後板部18の内面と面した炊飯釜2の鍔部8と近接した状態で、炊飯釜2から吹きこぼれた汁を受ける左右方向長手状の断面略コ字状の汁受け部材31が脱着可能に取り付けられている。汁受け部材31の左右両側の2箇所には、炊飯釜2の鍔部8が当接する板状の被当接部材32が固設されている。
【0024】
さらに、各側板部16の内面上部には、各側板部16の内面と面した炊飯釜2の側板部7の上部付近と近接した状態で、炊飯釜2から吹きこぼれた汁を受ける前後方向長手状の断面略コ字状の汁受け部材33が脱着可能に取り付けられている。各側板部16の内面上部の複数箇所(例えば5箇所)には、釜搬送用のローラ体34が回転可能に取り付けられている。各ローラ体34は、側板部16の内面から突出する左右方向の支軸部35と、この支軸部35にて回転可能に支持され汁受け部材33の上方に位置する円板状のローラ本体部36とにて構成されている。そして、炊飯時には加熱室3内の炊飯釜2の鍔部8が左右両側のローラ体34のローラ本体部36にて支持される。
【0025】
また、扉体12は、装置本体11の側板部16の前端部の下部に軸13を中心として上下方向に回動可能に取り付けられた扉本体部37と、この扉本体部37の外面に突設された取手部38とを有している。扉本体部37の内面の左右方向両端部には、釜搬送用のローラ体39が回転可能に取り付けられている。
【0026】
そして、扉体12は、鉛直姿勢の閉状態となって装置本体11の前面開口部4を閉鎖し、水平姿勢の開状態となって装置本体11の前面開口部4を開口させる。この扉体12の開状態時には、扉本体部37から上方に突出するローラ体39と連結部19から上方に突出するローラ体23とが同一面上に位置する。そして、同一面上に位置するローラ体23,39上に底板部5が載置された状態で、炊飯釜2がローラ体23,39にて出し入れ方向に沿って搬送される。また、加熱室3内では、同一面上に位置するローラ体34上に鍔部8が載置された状態で、炊飯釜2がローラ体34にて出し入れ方向に沿って搬送される。なお、扉本体部37の内面の上端部は、扉体12の閉状態時に炊飯釜2の鍔部8が当接する被当接部40となっている。
【0027】
また、加熱調理装置1は、加熱室3に入れられた炊飯釜2の底板部5の下方に位置する加熱手段41を備えている。つまり、加熱室3の下部には、炊飯釜2を加熱する加熱手段41が配設されている。
【0028】
加熱手段41は、左右方向に等間隔(略等間隔を含む)をおいて並ぶ互いに平行で真直ぐな前後方向長手状である棒状の複数本(例えば6本)の電気ヒータであるカーボンヒータ42にて構成されている。
【0029】
各カーボンヒータ42は、図5および図6にも示すように、直線状で細長円筒状をなす直管形のガラス管部43と、このガラス管部43内に不活性ガスとともに収納され水平状に位置する細長板状のカーボン繊維部(発熱体)44と、ガラス管部43の長手方向両端部である前後方向両端部に設けられた取付部45とを有している。
【0030】
そして、前側の取付部45が装置本体11のヒータ被取付前側孔部21に挿入により取り付けられかつ後側の取付部45が装置本体11のヒータ被取付後側孔部22に挿入により取り付けられることにより、カーボンヒータ42が加熱室3の下部に前後方向に沿って水平状に配設されている。
【0031】
そして、カーボン繊維部44に電流が流れると、図6に示されるように、水平面状のカーボン繊維部44の上面および下面から熱線である赤外線(主として中赤外線および遠赤外線)が上方および下方に向かって多く放射される。つまり、帯状のカーボン繊維部44は、面方向に多くの赤外線を放射する。
【0032】
なお、カーボン繊維部44には、カーボンヒータ42の発熱量や電源のオンオフ等を制御する制御手段(図示せず)がリード線等を介して電気的に接続され、この制御手段に発熱量等を設定するための操作設定手段(図示せず)が電気的に接続されている。
【0033】
さらに、加熱調理装置1は、加熱室3内において加熱手段41の下方に位置し炊飯時に炊飯釜2の底板部5の全体が均一(略均一を含む)に加熱されるように各カーボンヒータ42からの赤外線を炊飯釜2の底板部5に向けて反射する金属製の反射体51を備えている。つまり、加熱室3の下部には、主としてカーボンヒータ42から下方へ放射された赤外線を上方に向けて反射する反射体51がカーボンヒータ42の下方に位置するように配設されている。
【0034】
反射体51は、例えば左右1対の反射部材52と、これら両反射部材52間に位置するセンサ支持部材53と、反射部材52の左右方向両端部を支持する対をなすガイドレール部材61,62とを有している。なお、これら各部材52,53,61,62は、カーボンヒータ42からの赤外線を反射する金属材料(アルミニウムやステンレス等)によって形成されている。
【0035】
センサ支持部材53は、前後方向長手状のもので、装置本体11の連結部19と後板部18の下部との間に架設され、加熱室3の下部における左右方向中央部に配設されている。そして、センサ支持部材53には、炊飯釜2の底板部5と接触してこの底板部5の温度を検知する温度センサ54が取り付けられており、この温度センサ54は制御手段に電気的に接続されている。
【0036】
温度センサ54は、センサ支持部材53に固設された本体部55と、この本体部55に昇降可能に設けられ扉体12の回動に連動して昇降する接触部56とを有している。
【0037】
センサ支持部材53は、図2等に示されるように、互いに離間対向する鉛直状の左右1対の対向板部57を有し、これら両対向板部57の上端部相互が水平状の連結板部58にて連結され、この連結板部58から温度センサ54が上方に向かって突出している。各対向板部57の外側面には、前後方向長手状で断面略コ字状のガイドレール部材61が固設されている。また、各側板部16の下部内面には、そのガイドレール部材61と離間対向する前後方向長手状で断面略コ字状のガイドレール部材62が固設されている。そして、反射部材52は、両ガイドレール部材61,62にて案内されながら前後方向にスライド移動する。つまり、反射部材52は、両ガイドレール部材61,62に沿って加熱室3の下部に対して出し入れ可能となっている。
【0038】
左右1対の反射部材52は、互いに左右対称であるため、左側の反射部材52を中心にその構成を説明する。
【0039】
反射部材52は、図4にも示すように、炊飯釜2から吹きこぼれた汁を受ける汁受け皿を兼ねたもので、前端部の手掛部71と、汁受け皿として機能する皿状の反射部(皿状部)72とにて構成されている。
【0040】
反射部72は、前後方向長手状で平面視矩形状の底板部73を有し、この底板部73の一側端部である右端部から上向き鉛直板部74が鉛直上方に向かって突出している。底板部73の他側端部である左端部から傾斜板部75が左斜め上方に向かって突出し、この傾斜板部75の左端部から下向き鉛直板部76が鉛直下方に向かって突出している。底板部73の後端部から鉛直板部77が鉛直上方に向かって突出している。
【0041】
なお、上向き鉛直板部74の下端部がガイドレール部材61のガイド面61a上をスライド移動し、下向き鉛直板部76の下端部がガイドレール部材62のガイド面62a上をスライド移動する(図2参照)。また、傾斜板部75は炊飯釜2の湾曲板部6と離間対向し、この傾斜板部75にて反射された赤外線が湾曲板部6に当たるようになっている。傾斜板部75は、汁受け部材33の下方に配設されている。つまり、左右両側の傾斜板部75は、加熱室3の下部における左右方向端部にそれぞれ配設され、加熱室3の左右方向中央側に向かって徐々に下り傾斜している。
【0042】
また、底板部73の前後方向中央部には、平面視で複数本のカーボンヒータ42と直交するように位置する左右方向長手状で断面逆V字状の山型部80が折り曲げにより一体に形成されている。つまり、底板部73は、水平状に位置する前後2つの平坦部78,79と、これら両平坦部78,79間に位置する上方に向かって凸状の山型部80とにて構成されている。
【0043】
なお、カーボンヒータ42の長手方向中央部の下方に山型部80が配設され、この山型部80の長手方向と複数本のカーボンヒータ42の長手方向とが平面視で互いに直交している。山型部80の頂辺80aは、水平辺である。
【0044】
そして、山型部80は、主として炊飯釜2の底板部5のうちカーボンヒータ42の長手方向一端側である前端側の上方に位置する部分に向けてカーボンヒータ42から下方へ放射された赤外線を前斜め上方に向けて反射する一方側傾斜面81と、主として炊飯釜2の底板部5のうちカーボンヒータ42の長手方向他端側である後端側の上方に位置する部分に向けてカーボンヒータ42から下方へ放射された赤外線を後斜め上方に向けて反射する他方側傾斜面82とを有している。一方側傾斜面81は、前方に向かって徐々に下り傾斜する反射面であり、水平方向に対する傾斜角度は例えば30度である。他方側傾斜面82は、後方に向かって徐々に下り傾斜する反射面であり、水平方向に対する傾斜角度は例えば一方側傾斜面81と同じ30度である。なお、平坦部78,79の上面は、主としてカーボンヒータ42から下方へ放射された赤外線を鉛直上方に向けて反射する反射面である。
【0045】
なお、図3に示されるように、左右の山型部80が平面視で加熱室3の前後方向中央部に位置し、センサ支持部材53が平面視で加熱室3の左右方向中央部に位置している。つまり、平面視で左右の両山型部80間にセンサ支持部材53が位置している。
【0046】
また、加熱室3に臨む面、つまり装置本体11の内面および扉体12の内面は、例えばアルミニウム塗装が施され、反射体51と同様、カーボンヒータ42からの赤外線を反射する反射面となっている。すなわち、各側板部16の内面は、炊飯釜2の左右両側の側板部7の側方に位置しカーボンヒータ42からの赤外線が各側板部16の内面に向かって放射されてきたときにはその赤外線を左右両側の側板部7に向けて反射する側方反射面91にて構成されている。後板部18の内面は、炊飯釜2の後側の側板部7の後方に位置しカーボンヒータ42からの赤外線が後板部18の内面に向かって放射されてきたときにはその赤外線を炊飯釜2の後側の側板部7に向けて反射する後方反射面92にて構成されている。扉体12の内面は、炊飯釜2の前側の側板部7の前方に位置しカーボンヒータ42からの赤外線が扉体12の内面に向かって放射されてきたときにはその赤外線を炊飯釜2の前側の側板部7に向けて反射する前方反射面93にて構成されている。
【0047】
次に、加熱調理装置1の作用等を説明する。
【0048】
加熱調理装置1を使用して炊飯を行う場合、作業者は、洗米および水等を投入して釜蓋をセットした閉蓋状態の炊飯釜2を、ローラ体23,34,39を利用して移動させながら、開口した前面開口部4から加熱室3内に挿入する。
【0049】
次いで、作業者は、扉体12を軸13を中心として上方に回動させて開状態から閉状態に切り換えることにより、この扉体12にて前面開口部4を閉鎖する。
【0050】
すると、扉体12の被当接部40が炊飯釜2の鍔部8の前面に当接しかつ装置本体11の被当接部材32が炊飯釜2の鍔部8の後面に当接することにより、炊飯釜2が加熱室3内で所定位置に位置決めされる。このとき、加熱室3のうち鍔部8よりも下方の部分は、加熱室3内の炊飯釜2が鍔部8に当接する前側の扉体12、鍔部8と近接する後側の汁受け部材31および両側板部7の上部付近と近接する左右両側の汁受け部材33によって囲繞されることから、熱気で包まれるように、熱気が充満可能な略密閉した密閉空間となる。
【0051】
そして、作業者が操作設定手段の炊飯開始用操作部を操作すると、電源がオンして加熱手段41のカーボンヒータ42のカーボン繊維部44に電流が流れる。
【0052】
すると、カーボンヒータ42のカーボン繊維部44が瞬時に所定温度(例えばフィラメント温度:約1100℃)に達するとともに、このカーボン繊維部44から赤外線(主として中赤外線および遠赤外線)が上方および下方に向かって多く放射され、その結果、炊飯釜2が加熱される。
【0053】
このとき、カーボン繊維部44の上面から上方へ放射された赤外線は、そのまま直接的に炊飯釜2の底板部5に当たるが、カーボン繊維部44の下面から下方へ放射された赤外線は、反射体51(主として左右1対の反射部材52)にて反射された後、炊飯釜2の底板部5に当たる。つまり、カーボンヒータ42からの直接的な赤外線と反射体51からの間接的な赤外線とによって、炊飯釜2の底板部5の全体が均一に加熱される。
【0054】
特に、反射体51の左右1対の反射部材52が山型部80を有するため、カーボンヒータ42から下方へ放射された赤外線の反射する向きが変えられて、炊飯釜2の底板部5の中央部分のみが集中的に加熱されることが防止される。
【0055】
つまり、図7に示すように、山型部80がない場合には、炊飯釜2の底板部5のうちカーボンヒータ42の長手方向中央部に対応する部分がその他の部分に比べて熱が滞りやすく高温となってしまう。しかし、山型部80がある場合には、その山型部80の両傾斜面81,82によってカーボンヒータ42から下方へ放射された赤外線がそのまま放射された方向に反射されるのではなく斜め上方に向けて分散反射されその赤外線の当たった部分が加熱されるため、カーボンヒータ42の長手方向中央部に対応する部分とその他の部分との温度差が小さくなり、炊飯釜2の底板部5の全体が均一に加熱される。
【0056】
このように炊飯釜2を用いて炊飯する場合、米をむらなく炊き上げるには、炊飯釜2の底板部5において強く加熱されやすい中央部分と他の部分との温度差をなくして底板部5全体を均一に加熱する必要がある。
【0057】
また一方、炊飯釜2の4つの側板部7は、これら側板部7の周囲を覆う側方反射面91、後方反射面92および前方反射面93にて反射された赤外線によって加熱される。
【0058】
こうしてカーボンヒータ42にて炊飯釜2が加熱されて炊飯が完了し、所定時間蒸らした後、作業者は、扉体12を閉状態から開状態に切り換えて装置本体11の前面開口部4を開口させてから、炊飯釜2を加熱室3内から取り出す。
【0059】
そして、このような加熱調理装置1によれば、炊飯釜2の底板部5の全体が均一に加熱されるようにカーボンヒータ42から下方に放射された赤外線を炊飯釜2の底板部5に向けて反射する反射体51を備えるため、炊飯釜2を適切に加熱でき、効率的に炊飯を行うことができる。
【0060】
また、反射体51は平面視で棒状のカーボンヒータ42と直交するように位置する長手状で断面逆V字状の山型部80を有し、この山型部80が一方側傾斜面81および他方側傾斜面82にて構成されているため、炊飯釜2をより適切に加熱でき、より効率的に炊飯を行うことができる。
【0061】
さらに、反射体51は炊飯釜2から出た汁を受ける汁受け皿を兼ねた反射部材52を有するため、この反射部材52にて赤外線を反射できるばかりでなく、炊飯釜2から吹き出た汁つまり吹きこぼれた汁を受けることができる。
【0062】
また、反射部材52を装置本体11に対して着脱自在としている汁受け皿に形成していることから、特に山型部80の反射面および傾斜板部75の反射面の汚れを容易に除去することができる。
【0063】
また、カーボンヒータ42自体が熱しやすくて冷めやすいことから、加熱室3内に配置された加熱手段41の余熱による悪影響を受けにくく、例えば蒸らし工程では、電源のオンオフで加熱室3の温度調整が可能であり、加熱室3内の余熱で蒸らし過ぎるという不具合を防止できる。
【0064】
なお、反射体51は、反射部材52とセンサ支持部材53を有するものには限定されず、例えばセンサ支持部材53を有さず、1つの反射部材のみからなるもの等でもよい。
【0065】
また、山型部80は、断面逆V字状のものには限定されず、例えば断面逆U字状や断面半円状等のものでもよく、1本には限定されず、複数本でもよい。
【0066】
さらに、例えば反射部材52では、平坦部78,79と一体形成されている山型部80や傾斜板部75を別々に形成して、山型部80についてはカーボンヒータ42に接近させて、そのカーボンヒータ42から下方に放射される赤外線が散乱する前にその山型部80で分散反射させるようにしてもよい。
【0067】
さらに、例えば山型部80およびカーボンヒータ42間の距離が調整可能な構成でもよく、また山型部80の傾斜面81,82の傾斜角度が調整可能な構成等でもよい。なお、例えば山型部80およびカーボンヒータ42間の距離と、カーボンヒータ42および底板部5間の距離とを同程度にしてもよい。
【0068】
また、装置本体11が複数、例えば上下3段の加熱室3を有し、この各加熱室3ごとに加熱手段41および反射体51等が設けられた構成等でもよい。
【0069】
さらに、加熱調理装置1は、バッチ式の炊飯装置には限定されず、例えば炊飯釜2を搬送手段で搬送しながら炊飯を行う連続式の炊飯装置でもよい。
【0070】
また、例えば炊飯以外の加熱調理をするものでもよく、この場合には炊飯釜以外の被加熱容器を用いる。
【0071】
さらに、例えばカーボンヒータ42のガラス管部43を保護用ガラス管で覆うようにしてもよい。
【0072】
また、例えば炊飯釜2の底板部5とカーボンヒータ42との間に保護用網等のカバー部材を配設してもよい。
【0073】
さらに、例えばカーボンヒータ42の取付部45を装置本体11のヒータ被取付部に緩衝部材を介して取り付けてもよい。
【0074】
また、例えば被加熱容器の底板部の温度を精度よく検知できるように、温度センサ54を筒状部材で覆い、これら温度センサ54と筒状部材との間に空気断熱層を設けるようにしてもよい。
【0075】
さらに、カーボンヒータ42は、真直ぐな長手状(直線長手状)のものには限定されず、曲がった長手状(曲線長手状)のもの、すなわち例えば丸い炊飯釜(被加熱容器)の円板状の底板部に対応した円形状のもの等でもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 加熱調理装置
2 被加熱容器である炊飯釜
5 底板部
41 加熱手段
42 カーボンヒータ
43 ガラス管部
44 カーボン繊維部
51 反射体
52 反射部材
80 山型部
81 一方側傾斜面
82 他方側傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の長手状のカーボンヒータにて構成され、被加熱容器の底板部の下方に位置する加熱手段と、
この加熱手段の下方に位置し、前記被加熱容器の底板部の全体が均一に加熱されるように前記カーボンヒータからの赤外線を前記被加熱容器の底板部に向けて反射する反射体と
を備えることを特徴とする加熱調理装置。
【請求項2】
反射体は、平面視でカーボンヒータと直交するように位置する長手状の山型部を有する
ことを特徴とする請求項1記載の加熱調理装置。
【請求項3】
反射体の山型部は、カーボンヒータの長手方向中央部の下方に配設されている
ことを特徴とする請求項2記載の加熱調理装置。
【請求項4】
反射体の山型部は、
被加熱容器の底板部のうちカーボンヒータの一端側の上方に位置する部分に向けて前記カーボンヒータからの赤外線を反射する一方側傾斜面と、
前記被加熱容器の底板部のうち前記カーボンヒータの他端側の上方に位置する部分に向けて前記カーボンヒータからの赤外線を反射する他方側傾斜面とを有する
ことを特徴とする請求項2または3記載の加熱調理装置。
【請求項5】
反射体は、被加熱容器から出た汁を受ける汁受け皿を兼ねた反射部材を有する
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一記載の加熱調理装置。
【請求項6】
カーボンヒータは、
直線状のガラス管部と、
このガラス管部内に収納され、水平状に位置する細長板状のカーボン繊維部とを有する
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一記載の加熱調理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−125380(P2012−125380A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278962(P2010−278962)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000116699)株式会社アイホー (65)
【Fターム(参考)】