説明

加熱調理装置

【課題】被加熱容器を適切に加熱でき、効率的に加熱調理できる加熱調理装置を提供する。
【解決手段】加熱調理装置1は、加熱室3内の炊飯釜2の底板部5の下方に位置する加熱手段41を備える。加熱手段41は、互いに平行に位置する長手状をなす複数本の底板用カーボンヒータ42にて構成する。加熱手段41の下方には、底板用カーボンヒータ42からの赤外線を炊飯釜2の底板部5に向けて反射する反射体51を配設する。加熱調理装置1は、加熱室3内の炊飯釜2の側板部7の下端側の側方に位置する長手状の側板用カーボンヒータ101を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンヒータを用いた加熱調理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カーボンヒータに用いた加熱調理装置として、例えば特許文献1に記載されたピザ焼き器が知られている。
【0003】
このピザ焼き器は、ピザ焼き用空間を有し開口部に開閉扉が設けられているケーシングと、ピザ焼き用空間内に収納され開口部よりスライドにて引き出し入れ可能に配設され高熱伝導性金属薄板上にセラミックスコーティングがなされたピザ焼き用加熱棚と、ピザ焼き用加熱棚の上下に配設された棒状のカーボンヒータと、ピザ焼き用加熱棚上方のカーボンヒータの上に配設されピザ焼き用加熱棚に向かって凹湾曲し反射放射熱をピザ焼き用加熱棚側中央部分に集光する反射板とにて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−84955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の加熱調理装置は、熱を集中させて加熱するピザ店舗での利用に最適なピザ焼き器であり、例えば炊飯釜等の被加熱容器を加熱して加熱調理する際には適さず利用できない。そして、近年、被加熱容器を適切に加熱でき、効率的に加熱調理できる加熱調理装置が求められていた。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、被加熱容器を適切に加熱でき、効率的に加熱調理できる加熱調理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の加熱調理装置は、被加熱容器を出し入れ可能な加熱室を有する装置本体と、長手状をなす複数本の底板用カーボンヒータにて構成され、前記加熱室内の被加熱容器の底板部の下方に位置する加熱手段と、この加熱手段の下方に位置し、前記底板用カーボンヒータからの赤外線を前記加熱室内の被加熱容器の底板部に向けて反射する反射体と、前記加熱室内の被加熱容器の側板部下端側の側方に位置する長手状の側板用カーボンヒータとを備えるものである。
【0008】
請求項2記載の加熱調理装置は、請求項1記載の加熱調理装置において、装置本体は、加熱室に臨む内側面に形成された凹部を有し、側板用カーボンヒータは、前記凹部内に配設されているものである。
【0009】
請求項3記載の加熱調理装置は、請求項2記載の加熱調理装置において、装置本体の凹部の表面は、側板用カーボンヒータからの赤外線を加熱室内の被加熱容器の側板部下端側に向けて反射する反射面となっているものである。
【0010】
請求項4記載の加熱調理装置は、請求項1ないし3のいずれか一記載の加熱調理装置において、反射体は、平面視で底板用カーボンヒータと直交するように位置する長手状の山型部を有するものである。
【0011】
請求項5記載の加熱調理装置は、請求項4記載の加熱調理装置において、反射体の山型部は、底板用カーボンヒータの長手方向中央部の下方に配設されているものである。
【0012】
請求項6記載の加熱調理装置は、請求項1ないし5のいずれか一記載の加熱調理装置において、底板用カーボンヒータおよび側板用カーボンヒータの各々は、直線状のガラス管部と、このガラス管部内に収納された細長板状のカーボン繊維部とを有するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、底板用カーボンヒータおよび側板用カーボンヒータを備えるため、被加熱容器の底板部の全体を均一に加熱することが可能となり、よって、被加熱容器を適切に加熱でき、効率的に加熱調理できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係る加熱調理装置の正面視断面図である。
【図2】同上加熱調理装置の側面視断面図である。
【図3】同上加熱調理装置の平面視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1ないし図3において、1は加熱調理装置で、この加熱調理装置1は、例えば加熱調理である炊飯を行うバッチ式の炊飯装置である。つまり、加熱調理装置1は、加熱室3に出し入れ可能に入れられた被加熱容器である業務用の炊飯釜2を加熱して炊飯を行うものである。
【0017】
炊飯釜2は、図1および図2に示されるように、例えば上面開口部(図示せず)を有する外形直方体状の箱形状の釜本体10と、この釜本体10の上面開口部を開閉する脱着可能な蓋体(図示せず)とにて構成されている。そして、炊飯釜2は、炊飯の際には、釜本体10の内部に洗米(食材)および水等が投入されかつ釜本体10の上面開口部が蓋体にて閉鎖された状態で、加熱室3に入れられて加熱される。なお、釜本体10および蓋体は、金属材料、例えばアルミニウム鋼板によってそれぞれ一体に形成されている。
【0018】
釜本体10は、平面視で左右方向(加熱室3に対する出し入れ方向に対して直交する方向)に長手方向を有する矩形状をなす平面状の底板部5と、この底板部5の外周端部に一体に設けられた4つの側板部7と、これら4つの側板部7の上端部に外側方に向かって一体に突設された鍔部8とを有している。
【0019】
側板部7は、底板部5の外周端部に連設されたR形状をなす湾曲面状の湾曲板部分7aと、この湾曲板部分7aの上端部に連設され鉛直方向に対して外側方にやや傾斜した傾斜面状の平板部分7bとにて構成されている。つまり、側板部7は、湾曲板部分7aを下端側に有している。また、底板部5および側板部7の各外面の全体には、赤外線を吸収しやすいように黒色塗装が施されている。なお、赤外線を吸収しやすくするために、底板部5および側板部7の各外面の全体を黒色酸化皮膜で覆うようにしてもよい。
【0020】
加熱調理装置1は、前面開口部4を介して前方に向かって開口しその前面開口部4を通して炊飯釜2を出し入れ可能な1つの加熱室3を内部に有する箱形状の装置本体11と、この装置本体11に左右方向の軸13を中心として上下方向に回動可能に設けられ前面開口部4を開閉する開閉扉である扉体12とを備えている。
【0021】
装置本体11は、左右方向長手状でかつ矩形状の底板部15を有し、この底板部15の左右方向両端部には側板部16が立設されている。左右の両側板部16の上端部相互が上板部17にて連結され、左右の両側板部16の後端部相互が後板部18にて連結されている。
【0022】
また、左右の両側板部16の前側下部相互が連結部19にて連結され、この連結部19には複数(例えば6つ)のヒータ被取付部であるヒータ被取付前側孔部21が形成されている。後板部18のうち連結部19と対向する部分には、ヒータ被取付前側孔部21と対応する複数(例えば6つ)のヒータ被取付部であるヒータ被取付後側孔部22が形成されている。連結部19の左右方向両端部には、釜搬送用のローラ体23が回転可能に取り付けられている。
【0023】
さらに、後板部18の上端部には、加熱室3に連通する左右方向長手状の排気口部26が後板部18の内外面(前後面)に貫通して形成されている。加熱室3の上部には、排気用孔部27が中央部に形成された板部材28が配設されており、加熱室3のうち板部材28と上板部17との間に位置する部分が排気用空間部29となっている。そして、炊飯時に炊飯釜2から発生した水蒸気等の排気は、排気用孔部27、排気用空間部29および排気口部26を順次流れて外部、すなわち装置本体11の周囲へ排出される。
【0024】
また、後板部18の内面上部には、後板部18の内面と面した炊飯釜2の鍔部8と近接した状態で、炊飯釜2から吹きこぼれた汁を受ける左右方向長手状の断面略コ字状の汁受け部材31が脱着可能に取り付けられている。汁受け部材31の左右両側の2箇所には、炊飯釜2の鍔部8が当接する板状の被当接部材32が固設されている。
【0025】
さらに、各側板部16の内面上部には、各側板部16の内面と面した炊飯釜2の側板部7の上部付近と近接した状態で、炊飯釜2から吹きこぼれた汁を受ける前後方向長手状の断面略コ字状の汁受け部材33が脱着可能に取り付けられている。各側板部16の内面上部の複数箇所(例えば3箇所)には、釜搬送用のローラ体34が回転可能に取り付けられている。各ローラ体34は、側板部16の内面から突出する左右方向の支軸35にて回転可能に支持され汁受け部材33の上方に位置する円板状のローラ本体部36にて構成されている。そして、炊飯時には加熱室3内の炊飯釜2の鍔部8が左右両側のローラ体34のローラ本体部36の外周面にて支持される。
【0026】
扉体12は、装置本体11の側板部16の前端部の下部に軸13を中心として上下方向に回動可能に取り付けられた扉本体部37と、この扉本体部37の外面(前面)に突設された取手部38とを有している。扉本体部37の内面(後面)の左右方向両端部には、釜搬送用のローラ体39が回転可能に取り付けられている。
【0027】
そして、扉体12は、鉛直姿勢の閉状態となって装置本体11の前面開口部4を閉鎖し、水平姿勢の開状態となって装置本体11の前面開口部4を開口させる。扉体12の開状態時には、扉本体部37から上方に突出するローラ体39と連結部19から上方に突出するローラ体23とが同一面上に位置する。そして、同一面上に位置するローラ体23,39上に底板部5が載置された状態で、炊飯釜2がローラ体23,39にて出し入れ方向に沿って搬送される。また、加熱室3内では、同一面上に位置するローラ体23,39上に底板部5が載置された時と同じ高さとなる炊飯釜2の鍔部8がローラ体34上に載置された状態で、炊飯釜2がローラ体34にて出し入れ方向に沿って搬送される。
【0028】
また、加熱調理装置1は、加熱室3内の炊飯釜2の底板部5の下方に位置しその底板部5を加熱する加熱手段41を備えている。つまり、加熱室3の下部には、炊飯釜2を加熱する加熱手段41が配設されている。
【0029】
加熱手段41は、左右方向に等間隔(略等間隔を含む)をおいて並ぶ互いに平行で真直ぐな前後方向長手状(直線状)である棒状の複数本(例えば6本)の電気ヒータである底板用カーボンヒータ42にて構成されている。すなわち、加熱手段41は底板用カーボンヒータ群にて構成されている。
【0030】
各底板用カーボンヒータ42は、いずれも、直線状で細長円筒状をなす直管形の収納管部であるガラス管部43と、このガラス管部43内に不活性ガスとともに収納され水平状に位置する細長い平板状のカーボン発熱部であるカーボン繊維部(発熱体)44と、ガラス管部43の長手方向両端部である前後方向両端部に設けられた取付部45とを有している。そして、前側の取付部45が装置本体11のヒータ被取付前側孔部21に挿入により取り付けられかつ後側の取付部45が装置本体11のヒータ被取付後側孔部22に挿入により取り付けられることにより、底板用カーボンヒータ42が加熱室3の下部に前後方向に沿って水平状に配設されている。
【0031】
また、全長にわたって厚さが一定である薄肉平板状で矩形状をなすカーボン繊維部(カーボン部)44には、このカーボン繊維部44の幅方向に長手方向を有する複数の長手状のスリットである切込部(図示せず)が幅方向端縁から幅方向中央側に向かって交互に切り込み形成されている。なお、底板用カーボンヒータ42の長手方向長さ寸法と、炊飯釜2の出し入れ方向長さ寸法とは、同じ(略同じを含む)である。
【0032】
そして、電源オンにより水平状のカーボン繊維部44に電流が流れると、カーボン繊維部44の上面および下面から熱線である赤外線(主として中赤外線および遠赤外線)が上方および下方に向かって多く放射される。
【0033】
さらに、加熱調理装置1は、加熱室3内において加熱手段41の下方に位置し炊飯時に炊飯釜2の底板部5の全体が均一(略均一を含む)に加熱されるように各底板用カーボンヒータ42からの赤外線を炊飯釜2の底板部5に向けて反射する金属製の反射体(反射手段)51を備えている。つまり、加熱室3の下部には、主として底板用カーボンヒータ42から下方へ放射された赤外線を上方に向けて反射する反射体51が底板用カーボンヒータ42の下方に位置するように配設されている。なお、この反射体51が加熱室3の底面に位置している。
【0034】
反射体51は、例えば加熱室3内に対して出し入れ可能な左右1対の反射部材52と、これら両反射部材52間に位置するように固定された中間部材であるセンサ支持部材53と、反射部材52の加熱室3内に対する出し入れの際に反射部材52を案内する対をなすガイドレール部材61,62とを有している。なお、これら各部材52,53,61,62は、カーボンヒータ42からの赤外線を反射する金属材料(例えばアルミニウムやステンレス等)によって形成されている。
【0035】
センサ支持部材53は、前後方向長手状のもので、装置本体11の連結部19と後板部18の下部との間に架設され、加熱室3の下部における左右方向中央部に配設されている。そして、センサ支持部材53には、炊飯釜2の底板部5と接触してこの底板部5の温度を検知する温度検知手段である温度センサ54が取り付けられており、この温度センサ54は制御手段に電気的に接続されている。温度センサ54は、センサ支持部材53に固設された本体部55と、この本体部55に昇降可能に設けられ扉体12の上下回動に連動して昇降する接触部(温度検知部材)56とを有している。
【0036】
センサ支持部材53は、図2等に示されるように、互いに離間対向する鉛直状の左右1対の対向板部57を有し、これら両対向板部57の上端部相互が水平状の連結板部58にて連結され、この連結板部58から温度センサ54が上方に向かって突出している。また、各対向板部57の下端部には、前後方向長手状の内側のガイドレール部材61が一体に設されている。各側板部16の下部内面には、内側のガイドレール部材61と離間対向する前後方向長手状の外側のガイドレール部材62が固設されている。そして、反射部材52は、左右の両ガイドレール部材61,62にて案内されながら前後方向にスライド移動する。つまり、反射部材52は、両ガイドレール部材61,62に沿って加熱室3の下部に対して出し入れ可能(脱着可能)となっている。なお、装置本体11は、前面下部に開口部63を有し、この開口部63を通して反射部材52を加熱室3内に出し入れする。その開口部63は、化粧板64にて開閉可能となっている。
【0037】
左右1対の反射部材52は、互いに左右対称であるため、左側の反射部材52を中心にその構成を説明する。
【0038】
反射部材52は、炊飯釜2から吹きこぼれた汁を受ける汁受け皿を兼ねたもので、前端部の取手部71と、汁受け皿として機能する皿状の反射部(皿状部)72とにて構成されている。
【0039】
反射部72は、前後方向長手状で平面視矩形状の底板部73を有し、この底板部73の内側端部である右端部から内側鉛直板部74が鉛直上方に向かって突出している。底板部73の外側端部である左端部から外側鉛直板部75が鉛直上方に向かって突出している。底板部73の前端部から前側鉛直板部76が鉛直上方に向かって突出している。底板部73の後端部から後側鉛直板部77が鉛直上方に向かって突出している。
【0040】
また、底板部73の前後方向中央部には、平面視で複数本(全体の半分である例えば3本)の底板用カーボンヒータ42と直交するように位置する左右方向長手状で断面逆V字状の山型部80が折り曲げにより一体に形成されている。つまり、底板部73は、水平状に位置する前後2つの平坦部78,79と、これら両平坦部78,79間に位置する上方に向かって凸状の山型部80とにて構成されている。
【0041】
底板用カーボンヒータ42の長手方向中央部の下方に山型部80が配設され、この山型部80の長手方向と複数本の底板用カーボンヒータ42の長手方向とが平面視で互いに直交している。そして、山型部80は、加熱室3内の炊飯釜2の底板部5の前後方向中央部の下方に配設されている。また、山型部80は、開口部63側から供給される外気を加熱室3内に導入する複数の外気導入孔70を頂部に有している。つまり、山型部80の頂部である頂辺部の長手方向中央部および長手方向内端側には、左右方向にスリット状の外気導入孔70がそれぞれ形成されている。なお、外気導入孔70は、少なくとも炊飯釜2の底板部5の中央部分の下方に位置している。
【0042】
そして、山型部80は、主として炊飯釜2の底板部5のうち底板用カーボンヒータ42の長手方向一端側である前端側の上方に位置する部分に向けて底板用カーボンヒータ42から下方へ放射された赤外線を前斜め上方に向けて反射する一方側傾斜面81と、主として炊飯釜2の底板部5のうち底板用カーボンヒータ42の長手方向他端側である後端側の上方に位置する部分に向けて底板用カーボンヒータ42から下方へ放射された赤外線を後斜め上方に向けて反射する他方側傾斜面82とを有している。一方側傾斜面81は、前方に向かって徐々に下り傾斜する反射面であり、水平方向に対する傾斜角度は例えば30度である。他方側傾斜面82は、後方に向かって徐々に下り傾斜する反射面であり、水平方向に対する傾斜角度は例えば一方側傾斜面81と同じ例えば30度である。なお、平坦部78,79の上面は、主として底板用カーボンヒータ42から下方へ放射された赤外線を鉛直上方に向けて反射する反射面である。
【0043】
なお、図3に示されるように、左右の山型部80が平面視で加熱室3の前後方向中央部に位置し、センサ支持部材53が平面視で加熱室3の左右方向中央部に位置している。つまり、平面視で左右の両山型部80間にセンサ支持部材53の前後方向中央部が位置している。
【0044】
また、加熱調理装置1は、装置本体11の加熱室3内の炊飯釜2の側板部7の下端側の左右両側方に位置する長手状の側板用カーボンヒータ101を備えている。つまり、加熱室3の左右両側部には、炊飯釜2を加熱する棒状の側板用カーボンヒータ101がそれぞれ1本ずつ配設されている。
【0045】
なお、炊飯釜2の下方に配置した加熱手段41だけで炊飯釜2の底板部5を加熱する場合、加熱される底板部5では、その底板部5と連続している湾曲板部分7a側に向けて中央部分以外の熱が伝熱されていくことから、底板部5全体をみると、中央部分以外よりも中央部分の方が多く熱を吸収して温度上昇していく状態にある。このようなことから、側板用カーボンヒータ101を用いて、炊飯釜2の側板部7の下端側の湾曲板部分7aを加熱するようにしたものである。
【0046】
側板用カーボンヒータ101は、底板用カーボンヒータ42と基本的構成を同一とするものであり、直線状で細長円筒状をなす直管形の収納管部であるガラス管部43と、このガラス管部43内に不活性ガスとともに収納された細長い平板状のカーボン発熱部であるカーボン繊維部(発熱体)44と、ガラス管部43の長手方向両端部である前後方向両端部に設けられた取付部45とを有し、電源オンによりカーボン繊維部44に電流が流れるとカーボン繊維部44の両面から熱線である赤外線が放射される。
【0047】
なお、カーボン繊維部44の炊飯釜2側の面は、この面から放射される赤外線が湾曲板部分7aの表面に直接当たるように、その湾曲板部分7aと対面した状態(例えば鉛直状に位置した状態)となっている。
【0048】
そして、図1から明らかなように、装置本体11は加熱室3に臨む左右の内側面に形成された凹部102を有し、この凹部102内に側板用カーボンヒータ101が非突出状態に水平状に配設されている。つまり、装置本体11の側板部16の内面の上下方向略中央部に凹部102が形成され、この凹部102内に側板用カーボンヒータ101が炊飯釜2の側板部7の湾曲板部分7aと対向して位置するように収納配設されている。
【0049】
凹部102は、側板用カーボンヒータ101の側方に配設された鉛直面部103と、この鉛直面部103の上端部に連設され側板用カーボンヒータ101の上方に配設され上端ほど炊飯釜2側に位置する上傾斜面部104と、鉛直面部103の下端部に連設され側板用カーボンヒータ101の下方に配設され下端ほど炊飯釜2側に位置する下傾斜面部105とにて構成されている。なお、上傾斜面部104の水平方向に対する傾斜角度が、下傾斜面部105の水平方向に対する傾斜角度よりも大きくなっている。
【0050】
また一方、炊飯釜2を加熱するための加熱室3に臨む面、つまり装置本体11の内面および扉体12の内面は、例えばアルミニウム塗装が施され、反射体51と同様、底板用カーボンヒータ42および側板用カーボンヒータ101からの赤外線を反射する反射面となっている。
【0051】
すなわち、各側板部16の内面、つまり装置本体11の左右の内側面は、加熱室3内の炊飯釜2の左右両側の側板部7の側方に位置し赤外線が各側板部16の内面に向かって放射されてきたときにはその赤外線を左右両側の側板部7に向けて反射する側方反射面91にて構成されている。なお、装置本体11の各凹部102の表面は、主として側板用カーボンヒータ101からの赤外線を加熱室3内の炊飯釜2の側板部7の下端側に向けて反射する断面略く字状の反射面となっている。つまり、反射面は、側板部7の湾曲板部分7a側に向かって開口する断面略く字状に形成されている。
【0052】
後板部18の内面は、加熱室3内の炊飯釜2の後側の側板部7の後方に位置し赤外線が後板部18の内面に向かって放射されてきたときにはその赤外線を炊飯釜2の後側の側板部7に向けて反射する後方反射面92にて構成されている。扉体12の内面は、加熱室3内の炊飯釜2の前側の側板部7の前方に位置し赤外線が扉体12の内面に向かって放射されてきたときにはその赤外線を炊飯釜2の前側の側板部7に向けて反射する前方反射面93にて構成されている。
【0053】
なお、カーボンヒータ42,101のカーボン繊維部44には、カーボンヒータ42,101の発熱量や電源のオンオフ等をそれぞれ制御可能とする制御手段(図示せず)がリード線等を介して電気的に接続され、この制御手段に発熱量等を設定するための操作設定手段(図示せず)が電気的に接続されている。
【0054】
次に、加熱調理装置1の作用等を説明する。
【0055】
加熱調理装置1を使用して炊飯を行う場合、作業者は、洗米および水等を投入して釜蓋をセットした閉蓋状態の炊飯釜2を、ローラ体23,34,39を利用して移動させながら、開口した前面開口部4から加熱室3内に入れる。
【0056】
次いで、作業者は、扉体12を軸13を中心として上方に回動させて開状態から閉状態に切り換えることにより、この扉体12にて前面開口部4を閉鎖する。
【0057】
このとき、加熱室3のうち炊飯釜2の鍔部8よりも下方の部分は、鍔部8と近接する前側の扉体12、鍔部8と近接する後側の汁受け部材31および両側板部7の上部付近と近接する左右両側の汁受け部材33によって囲繞されることから、熱気で包まれるように、熱気が充満可能な略密閉した密閉空間となる。
【0058】
そして、作業者が操作設定手段の炊飯開始用操作部を操作すると、底板用カーボンヒータ42および側板用カーボンヒータ101の各カーボン繊維部44に電流が流れる。
【0059】
すると、カーボン繊維部44が瞬時に所定温度(例えばフィラメント温度:約1100℃)に達するとともに、カーボン繊維部44から赤外線(主として中赤外線および遠赤外線)が放射され、その結果、炊飯釜2が加熱される。
【0060】
このとき、底板用カーボンヒータ42のカーボン繊維部44の上面から上方へ放射された赤外線は、そのまま直接的に炊飯釜2の底板部5に当たるが、カーボン繊維部44の下面から下方へ放射された赤外線は、反射体51(主として左右1対の反射部材52)にて反射された後、炊飯釜2の底板部5に当たる。
【0061】
また、側板用カーボンヒータ101のカーボン繊維部44の炊飯釜2側の面から放射された赤外線は、炊飯釜2の側板部7の下端側の湾曲板部分7aに直接当たる。側板用カーボンヒータ101のカーボン繊維部44の炊飯釜2側とは反対側の面から放射された赤外線は、凹部102にて反射された後に、湾曲板部分7aに当たる。
【0062】
こうして底板用カーボンヒータ42および側板用カーボンヒータ101から放射された赤外線によって、炊飯釜2の底板部5の全体が均一に加熱される。
【0063】
このとき、反射体51の左右1対の反射部材52が山型部80を有することから、その山型部80にて放射された赤外線が前後の斜め上方に向かうため、炊飯釜2の底板部5の中央部分のみが集中的に加熱されることが防止される。
【0064】
また、各反射部材52の山型部80が外気導入孔70を有し、この各外気導入孔70から外気が加熱室3内の炊飯釜2の底板部5の中央部分付近に導入されるため、炊飯釜2の底板部5の中央部分のみが集中的に加熱されることが防止される。
【0065】
つまり、この山型部80の外気導入孔70は、熱気が漂い易く温度が他の部分に比べて高くなりやすい底板部5の中央部分に外気を導入し、熱気に流れを生じさせ、底板部5の中央部分での加熱温度を他の部分と同じようにするとともに炊飯釜2の側面側および上面側に熱気を誘導し、熱気で炊飯釜2全体を包んで加熱した後、熱気を中央の排気用孔部27から排出させる。また、外気導入孔70は、反射部材52が汁受け皿を兼ねているため、山型部80の頂部に形成されており、炊飯釜2から吹きこぼれた汁が外気導入孔70からこぼれ落ち難くなっている。
【0066】
このように炊飯釜2を用いて炊飯する場合、米をむらなく炊き上げるには、炊飯釜2の底板部5において熱が溜まって加熱されやすい中央部分と他の部分との温度差をなくして底板部5の全体を均一に加熱する必要がある。
【0067】
また一方、炊飯釜2の4つの側板部7は、これら側板部7の周囲を覆う側方反射面91、後方反射面92および前方反射面93にて反射された赤外線によって加熱される。
【0068】
こうしてカーボンヒータ42にて炊飯釜2が加熱されて炊飯が完了し、所定時間蒸らした後、作業者は、扉体12を閉状態から開状態に切り換えて装置本体11の前面開口部4を開口させてから、炊飯釜2を加熱室3内から取り出す。
【0069】
そして、このような加熱調理装置1によれば、炊飯釜2の底板部5を加熱する底板用カーボンヒータ42および炊飯釜2の側板部7の下端側を加熱する側板用カーボンヒータ101を備えるため、底板部5の中央部分のみが集中的に加熱されることを防止しつつ、底板部5の全体を均一に加熱することが可能となり、よって、炊飯釜2を適切に加熱でき、効率的に炊飯を行うことができる。
【0070】
また、側板用カーボンヒータ101は、装置本体11の凹部102内に収納配設されているため、炊飯釜2の加熱室3に対する出し入れの際に炊飯釜2の側板部7と側板用カーボンヒータ101とが衝突することがなく、側板用カーボンヒータ101の損傷を防止でき、しかも、加熱の際に炊飯釜2から吹きこぼれた汁が側板用カーボンヒータ101に付着することもない。
【0071】
さらに、反射体51は平面視で棒状のカーボンヒータ42の長手方向中央部と直交するように位置する長手状で断面逆V字状の山型部80を有し、この山型部80が一方側傾斜面81および他方側傾斜面82にて構成されているため、炊飯釜2の底板部5の中央部分のみが集中的に加熱されることを効果的に防止でき、よって、炊飯釜2をより一層適切に加熱でき、効率的に炊飯を行うことができる。
【0072】
また、反射体51の山型部80は外気導入孔70を頂部に有するため、炊飯釜2の底板部5の中央部分のみが集中的に加熱されることをより一層防止でき、よって、炊飯釜2をさらにより一層適切に加熱でき、効率的に炊飯を行うことができる。
【0073】
さらに、反射体51は炊飯釜2から出た汁を受ける汁受け皿を兼ねた反射部材52を有するため、この反射部材52にて赤外線を反射できるばかりでなく、炊飯釜2から吹き出た汁つまり吹きこぼれた汁を受けることができる。
【0074】
また、反射部材52が装置本体11に対して脱着可能となっているため、反射部材52を装置本体11から取り出して洗浄でき、特に山型部80の反射面の汚れを容易に除去することができる。
【0075】
さらに、カーボンヒータ42,101自体が熱しやすくて冷めやすいことから、カーボンヒータ42,101の余熱による悪影響を受けにくく、例えば蒸らし工程では、電源のオンオフで加熱室3の温度調整が可能であり、加熱室3内の余熱で蒸らし過ぎるという不具合を防止できる。
【0076】
なお、上記実施の形態では、側板用カーボンヒータ101が加熱室3の左右両側部にそれぞれ1本ずつ配設された構成について説明したが、例えば側板用カーボンヒータ101が加熱室3の左右両側部にそれぞれ複数本ずつ配設された構成でもよい。
【0077】
また、例えば底板用カーボンヒータ42の平板状のカーボン繊維部44の上面を炊飯釜2の底板部5の加熱したい部分に向けるように傾斜させてもよい。
【0078】
さらに、例えば側板用カーボンヒータ101の平板状のカーボン繊維部44を底板用カーボンヒータ42と同じように水平状や傾斜状に位置させてもよい。
【0079】
また、反射体51は、反射部材52とセンサ支持部材53を有するものには限定されず、例えばセンサ支持部材53を有さず、1つの反射部材のみからなるもの等でもよい。
【0080】
さらに、山型部80は、断面逆V字状のものには限定されず、例えば断面逆U字状や断面半円状等のものでもよく、1本には限定されず、複数本でもよい。
【0081】
さらに、例えば反射部材52では、平坦部78,79と一体形成されている山型部80を別に形成して、山型部80についてはカーボンヒータ42に接近させて、そのカーボンヒータ42から下方に放射される赤外線が散乱する前にその山型部80で分散反射させるようにしてもよい。
【0082】
また、例えば山型部80およびカーボンヒータ42間の距離が調整可能な構成でもよく、また山型部80の傾斜面81,82の傾斜角度が調整可能な構成等でもよい。なお、例えば山型部80およびカーボンヒータ42間の距離と、カーボンヒータ42および底板部5間の距離とを同程度にしてもよい。
【0083】
さらに、炊飯釜2の底板部5の中央部分と加熱手段41との間に位置する断面V字状の遮蔽板等の赤外線遮蔽手段を配設してもよい。
【0084】
また、装置本体11が複数、例えば上下3段の加熱室3を有し、この各加熱室3ごとに加熱手段41および反射体51等が設けられた構成等でもよい。
【0085】
さらに、加熱調理装置1は、バッチ式の炊飯装置には限定されず、例えば炊飯釜2を搬送手段で搬送しながら炊飯を行う連続式の炊飯装置でもよい。
【0086】
また、例えば炊飯以外の加熱調理をするものでもよく、この場合には炊飯釜以外の被加熱容器を用いる。
【符号の説明】
【0087】
1 加熱調理装置
2 被加熱容器である炊飯釜
3 加熱室
5 底板部
7 側板部
11 装置本体
41 加熱手段
42 底板用カーボンヒータ
43 ガラス管部
44 カーボン繊維部
51 反射体
80 山型部
101 側板用カーボンヒータ
102 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱容器を出し入れ可能な加熱室を有する装置本体と、
長手状をなす複数本の底板用カーボンヒータにて構成され、前記加熱室内の被加熱容器の底板部の下方に位置する加熱手段と、
この加熱手段の下方に位置し、前記底板用カーボンヒータからの赤外線を前記加熱室内の被加熱容器の底板部に向けて反射する反射体と、
前記加熱室内の被加熱容器の側板部下端側の側方に位置する長手状の側板用カーボンヒータと
を備えることを特徴とする加熱調理装置。
【請求項2】
装置本体は、加熱室に臨む内側面に形成された凹部を有し、
側板用カーボンヒータは、前記凹部内に配設されている
ことを特徴とする請求項1記載の加熱調理装置。
【請求項3】
装置本体の凹部の表面は、側板用カーボンヒータからの赤外線を加熱室内の被加熱容器の側板部下端側に向けて反射する反射面となっている
ことを特徴とする請求項2記載の加熱調理装置。
【請求項4】
反射体は、平面視で底板用カーボンヒータと直交するように位置する長手状の山型部を有する
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の加熱調理装置。
【請求項5】
反射体の山型部は、底板用カーボンヒータの長手方向中央部の下方に配設されている
ことを特徴とする請求項4記載の加熱調理装置。
【請求項6】
底板用カーボンヒータおよび側板用カーボンヒータの各々は、
直線状のガラス管部と、
このガラス管部内に収納された細長板状のカーボン繊維部とを有する
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一記載の加熱調理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−245077(P2012−245077A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117541(P2011−117541)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000116699)株式会社アイホー (65)
【Fターム(参考)】