説明

加硫ゴム組成物、空気入りタイヤおよびこれらの製造方法

【課題】環境への配慮がなされ、優れた破断特性と低いエネルギーロスとを与える加硫ゴム組成物、および該加硫ゴム組成物を用いてなり、環境への配慮がなされかつ転がり抵抗特性、操縦安定性および耐久性に優れる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】天然ゴムおよび変性天然ゴムならびに合成ゴムの少なくともいずれかからなるゴム成分と、化学変性ミクロフィブリルセルロースと、を含有する加硫ゴム組成物およびこれを用いてなる空気入りタイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境への配慮がなされた加硫ゴム組成物およびこれを用いてなる空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アラミド、セルロース等の短繊維や、シンジオタクチックポリブタジエン等の結晶性ポリマーでゴムを補強して硬度およびモジュラスを向上させ、例えば70℃での複素弾性率(E*)を向上させて操縦安定性を改善する技術が知られている(例えば、特開2
005−133025号公報(特許文献1)参照)。
【0003】
特許文献1には、耐摩耗性に優れるゴム組成物を提供することを目的として、ジエン系ゴム成分、澱粉およびセルロースからなるゴム組成物が提案され、セルロースとして特にバクテリアセルロースを用いることも提案されている。しかし特許文献1の技術は、ゴムとセルロースとの相容性が悪いことによって破断特性が悪くゴムとセルロースとの界面におけるエネルギーロスが大きいという問題を有する。
【0004】
特許文献2には、低反発性と剛性(操縦安定性)を両立しうるゴム組成物として、天然植物繊維から調製された微粉末セルロース繊維をジエン系ゴムに配合したゴム組成物が開示されている。しかし特許文献2の技術は、その製法上、セルロース繊維の繊維長が短いため、セルロース繊維配合量に見合った剛性、補強性を得る面において改善の余地がある。
【0005】
よって、環境への配慮がなされており、破断特性に優れかつエネルギーロスの少ない加硫ゴム組成物を得ることは未だ困難である。
【特許文献1】特開2005−133025号公報
【特許文献2】特開2005−75856号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の課題を解決し、環境への配慮がなされているとともに、優れた破断特性と低いエネルギーロスとが両立された加硫ゴム組成物、および該加硫ゴム組成物を用いてなり、環境への配慮がなされかつ転がり抵抗特性、操縦安定性および耐久性に優れる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、天然ゴムおよび変性天然ゴムならびに合成ゴムの少なくともいずれかからなるゴム成分と、化学変性ミクロフィブリルセルロースとを含有する加硫ゴム組成物を提供する。
【0008】
本発明の加硫ゴム組成物においては、例えば化学変性ミクロフィブリルセルロースの化学変性の例としてアセチル化、アルキルエステル化、複合エステル化、β−ケトエステル化、アルキルカルバメート化、アリールカルバメート化からなる群から選択された少なくとも1種を用いることができる。
【0009】
本発明の加硫ゴム組成物において、化学変性ミクロフィブリルセルロースは、置換度が0.2〜2.5の範囲内となるように化学変性されていることが好ましい。
【0010】
本発明の加硫ゴム組成物において、化学変性ミクロフィブリルセルロースの平均繊維径は、4nm〜1μmの範囲内であることが好ましい。
【0011】
本発明の加硫ゴム組成物において、化学変性ミクロフィブリルセルロースの含有量は、ゴム成分100質量部に対して1〜50質量部の範囲内であることが好ましい。
【0012】
本発明の加硫ゴム組成物において、ゴム成分は天然ゴムおよび変性天然ゴムの少なくともいずれかからなることが好ましい。
【0013】
本発明はまた、上述のいずれかの加硫ゴム組成物を用いてなる空気入りタイヤを提供する。
【0014】
さらに、本発明は、天然ゴムおよび変性天然ゴムならびに合成ゴムの少なくとも1種類のゴム成分を含むゴムラテックスに、化学変性ミクロフィブリルセルロースを前記ゴム成分100質量部に対して1〜50質量部を混合、乾燥してマスターバッチを調製することを特徴とする加硫ゴム組成物の製造方法を提供する。
【0015】
本発明の加硫ゴム組成物の製造方法において、前記混合がホモジナイザーによる混合方法であることが好ましい。
【0016】
本発明の加硫ゴム組成物の製造方法において、前記乾燥が加熱オーブン中での乾燥、自然乾燥およびパルス乾燥のいずれかの乾燥方法であることが好ましい。
【0017】
本発明の加硫ゴム組成物の製造方法において、化学変性ミクロフィブリルセルロースにおける化学変性がアセチル化、アルキルエステル化、複合エステル化、β−ケトエステル化、アルキルカルバメート化、アリールカルバメート化からなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
【0018】
本発明の加硫ゴム組成物の製造方法において、化学変性ミクロフィブリルセルロースは、置換度が0.2〜2.5の範囲内となるように化学変性されていることが好ましい。
【0019】
本発明の加硫ゴム組成物の製造方法において、化学変性ミクロフィブリルセルロースの平均繊維径は、4nm〜1μmの範囲内であることが好ましい。
【0020】
本発明はまた、前記加硫ゴム組成物の製造方法において調製されたマスターバッチに配合剤を混練する工程と、加硫剤及び加硫促進剤を加えて混練する工程と、これをタイヤ金型で加圧・加熱下で加硫する加硫工程を有する空気入りタイヤの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、環境への配慮がなされているとともに、優れた破断特性と低いエネルギーロスとが両立された加硫ゴム組成物、および該加硫ゴム組成物を用いてなり、環境への配慮がなされ、かつ転がり抵抗特性、操縦安定性および耐久性に優れる空気入りタイヤを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明に係る加硫ゴム組成物は、天然ゴムおよび変性天然ゴムならびに合成ゴムの少なくともいずれかからなるゴム成分と、化学変性ミクロフィブリルセルロースと、を含有する。化学変性ミクロフィブリルセルロースはゴム補強剤としての作用を有する。化学変性ミクロフィブリルセルロースにおいては、ミクロフィブリルセルロースに所望の変性基が導入されているため、該変性基とゴムとの相互作用や直接結合等によって該化学変性ミクロフィブリルセルロースとゴムとの相容性を向上させることができる。よって、本発明の加硫ゴム組成物においては、化学変性ミクロフィブリルセルロースとゴムとの界面におけるエネルギーロスが小さく、ゴム組成物中での化学変性ミクロフィブリルセルロースの分散性は良好である。これにより、本発明の加硫ゴム組成物によれば、破断特性、より典型的には引張強さおよび破断伸び、に優れるゴムを得ることができる。また本発明の加硫ゴム組成物は、たとえば70℃付近において、tanδ(損失正接)が大きく増大することなく良好なE*(複素弾性率)を有する。よって本発明の加硫ゴム組成物をたとえば空気
入りタイヤに用いる場合には、該空気入りタイヤの転がり抵抗特性、操縦安定性および耐久性を高度に両立させることができる。
【0023】
<化学変性ミクロフィブリルセルロース>
本発明において用いられる化学変性ミクロフィブリルセルロースは、たとえば木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農作物残廃物、布、再生パルプ、古紙、バクテリアセルロース、ホヤセルロース等の天然物から選択される少なくともいずれかに由来するミクロフィブリルセルロースを化学変性したものである。なお本発明において、ミクロフィブリルセルロースとは、典型的には、平均繊維径が4nm〜1μmの範囲内であるセルロース繊維、より典型的には、セルロース分子の集合により形成されている平均繊維径100nm以下の微小構造を有するセルロース繊維を意味する。なお、典型的なミクロフィブリルセルロースは、たとえば上記のような平均繊維径を有するセルロース繊維の集合体として形成されていることができる。
【0024】
本発明においては、上記のような天然物に由来する化学変性ミクロフィブリルセルロースを用いることにより、CO2排出量の顕著な削減効果を得ることができ、これにより本
発明の加硫ゴム組成物は環境への配慮がなされたものとなる。中でも、CO2排出量の削
減効果が良好でかつ入手が容易な点で、化学変性ミクロフィブリルセルロースは、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農作物残廃物、布、再生パルプ、古紙から選択される少なくともいずれかに由来するミクロフィブリルセルロースを化学変性したものであることが特に好ましい。
【0025】
ミクロフィブリルセルロースの化学変性の態様としては、たとえば、エステル化処理、エーテル化処理、アセタール化処理等が例示される。より具体的には、アセチル化等のアシル化、シアノエチル化、アミノ化、スルホンエステル化、リン酸エステル化、ブチル化等のアルキル化、塩素化、等が好ましく例示される。特に、アセチル化は反応の簡便さからコスト面において有利であり、また、化学変性ミクロフィブリルセルロースとゴムとの相容性改善効果を大きくできる点、使用される薬品の安全性が高い点でも好ましい。
【0026】
また、アミノ化によれば、たとえば、アミノ基との反応性が大きいエポキシ化ゴムをゴム成分として組合せて用い、該アミノ基と該エポキシ化ゴムとを反応させることにより、加硫ゴム組成物中での化学変性ミクロフィブリルセルロースの分散性をさらに向上させることも可能である。
【0027】
アセチル化と同じくエステル結合を介した変性方法であるアルキルエステル化、複合エステル化、β−ケトエステル化もアセチル化と同様に反応が簡便でコスト面において有利である。特にβ−ケトエステル化は、アルキルケテンダイマー誘導体がセルロースのサイジング剤として現在使用されている点でも工業化に適した手法である。
【0028】
さらに、ミクロフィブリルセルロースの化学変性の態様として、アルキルカルバメート化、アリールカルバメート化も例示することができる。アルキルカルバメート化、アリールカルバメート化は変性剤が反応性の高いイソシアネート化合物であり、本手法で変性したセルロース系材料が光学分割用カラム充填剤として使用されている点からも実用化に適しているといえる。
【0029】
化学変性ミクロフィブリルセルロースは、1種でも2種以上の組合せでも良い。2種以上の組合せの態様としては、たとえば、化学変性の方法、平均繊維径等が異なる組合せを例示できる。
【0030】
化学変性ミクロフィブリルセルロースは、置換度が0.2〜2.5の範囲内となるように化学変性されていることが好ましい。ここで置換度とは、セルロースの水酸基のうち化学変性によって他の官能基に置換された水酸基のグルコース環単位当りの平均個数を意味し、理論上最大値は3である。該置換度が0.2以上である場合、ゴムと化学変性ミクロフィブリルセルロースとの相容性の改善効果が特に良好であり、2.5以下である場合、化学変性ミクロフィブリルセルロースがゴムとの相容性に優れかつ柔軟性に優れる。該置換度は、0.3〜2.5の範囲内であることがより好ましく、0.5〜2.0の範囲内であることがさらに好ましい。
【0031】
なお化学変性ミクロフィブリルセルロースが2種以上の組合せからなる場合の上記置換度は化学変性ミクロフィブリルセルロース全体での平均として算出される。
【0032】
化学変性ミクロフィブリルセルロースにおける該置換度は、たとえば、0.5N−NaOHと0.2N−HClとを用いる滴定法やNMR、赤外吸収スペクトル等の測定によって確認され得る。
【0033】
本発明において特に好ましく用いられる化学変性ミクロフィブリルセルロースとしては、置換度が0.3〜2.0の範囲内のアセチル化ミクロフィブリルセルロース(酢酸セルロース)を例示できる。アセチル化ミクロフィブリルセルロースの置換度は、0.5〜1.8の範囲内であることが好ましく、より好ましくは、0.7〜1.5の範囲内である。さらに化学変性ミクロフィブリルセルロースがアルキルエステル化ミクロフィブリルセルロースでは置換度が0.3〜1.8、複合エステル化ミクロフィブリルセルロースでは置換度が0.4〜1.8、β−ケトエステル化ミクロフィブリルセルロースでは置換度が0.3〜1.8、アルキルカルバメート化ミクロフィブリルセルロースでは置換度が0.3〜1.8、アリールカルバメート化ミクロフィブリルセルロースでは置換度が0.3〜1.8の範囲内であることが好ましい。
【0034】
化学変性ミクロフィブリルセルロースの平均繊維径は4nm以上であることが好ましい。該平均繊維径が4nm以上である場合、変性時のナノファイバーのダメージが少なく、表面性状が平滑でゴムとの複合後の強度を向上することできる点で有利である。該平均繊維径は10nm以上であることがより好ましく、20nm以上であることがさらに好ましい。
【0035】
また、化学変性ミクロフィブリルセルロースの平均繊維径は、1μm以下であることが好ましい。該平均繊維径が1μm以下である場合、ゴムと化学変性ミクロフィブリルセルロースとの相容性が特に良好でゴムと化学変性ミクロフィブリルセルロースとの界面におけるエネルギーロスの低減効果が顕著であるとともに、弾性率の向上によってより高い補強効果を得ることができ、かつ化学変性された表面によりゴムとの相容性を改善できる点で有利である。該平均繊維径は0.5μm以下であることがより好ましく、0.2μm以下であることがさらに好ましく、0.1μm以下であることが最も好ましい。
【0036】
なお化学変性ミクロフィブリルセルロースが2種以上の組合せからなる場合の上記平均繊維径は化学変性ミクロフィブリルセルロース全体での平均として算出される。
【0037】
化学変性ミクロフィブリルセルロースの平均繊維径は、たとえば、走査型電子顕微鏡写真の画像解析、透過型電子顕微鏡写真の画像解析、X線散乱データの解析等によって測定
され得る。
【0038】
ミクロフィブリルセルロースとして化学変性されていないミクロフィブリルセルロースのみを用いた加硫ゴム組成物においては、ゴムとミクロフィブリルセルロースとの相容性が悪いためにゴムとミクロフィブリルセルロースとの間にエネルギーロスが発生し、加硫ゴム組成物を空気入りタイヤに用いたときに転がり抵抗を低減することが困難である。しかし、本発明においては、化学変性ミクロフィブリルセルロースを必須に用いるため、本発明の効果を損なわない範囲で、該化学変性ミクロフィブリルセルロースに加えて化学変性されていないミクロフィブリルセルロースを併用しても良い。
【0039】
化学変性ミクロフィブリルセルロースの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、1〜50質量部の範囲内であることが好ましい。化学変性ミクロフィブリルセルロースの該含有量が1質量部以上である場合、化学変性ミクロフィブリルセルロースの配合による補強効果および弾性率の向上効果が特に良好であり、50質量部以下である場合、ゴム中での化学変性ミクロフィブリルセルロースの分散性の悪化が生じ難い点で有利である。化学変性ミクロフィブリルセルロースの該含有量は、さらに5〜35質量部の範囲内、さらに7〜15質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0040】
化学変性としては、前述のように、エステル化、エーテル化、アセタール化等を例示できるが、化学変性のより具体的な例であるアセチル化、アミノ化、スルホンエステル化、リン酸エステル化、アルキルエステル化、アルキルエーテル化、アルキルエステル化、複合エステル化、β−ケトエステル化、アルキルカルバメート化、アリールカルバメート化は、たとえば下記のような方法で行なうことができる。
【0041】
アセチル化は、たとえば、ミクロフィブリルセルロースに、酢酸、濃硫酸、無水酢酸を加えて反応させる方法等で行なうことができる。より具体的には、たとえば、酢酸とトルエンとの混合溶媒中、硫酸触媒存在下で、ミクロフィブリルセルロースと無水酢酸とを反応させてアセチル化反応を進行させ、その後、溶媒を水に置き換える方法等、従来公知の方法で行なうことができる。
【0042】
アミノ化は、たとえば、トシルエステル化した後にアルコール中でアルキルアミンと反応させ、親核置換反応させる方法で行なうことができる。
【0043】
スルホンエステル化は、たとえば、セルロースを硫酸に溶解して、水中に投入するのみの簡単な操作で行なうことができる。他にも、無水硫酸ガス処理、クロルスルホン酸とピリジンによって処理する方法等で行なうことができる。
【0044】
リン酸エステル化は、たとえばジメチルアミン処理等を施したミクロフィブリルセルロースをリン酸と尿素とで処理する方法により行なうことができる。
【0045】
アルキルエステル化は、たとえば、ミクロフィブリルセルロースを塩基性条件下でカルボン酸クロライドを用いて反応させるSchotten−Baumann法(ショッテン・バウマン法)、アルキルエーテル化は、ミクロフィブリルセルロースを塩基性条件下でハロゲン化アルキルを用いて反応させるWillamson法等で行なうことができる。塩素化は、たとえば、DMF(ジメチルホルムアミド)中で塩化チオニルを加えて加熱する方法で行なうことができる。
【0046】
複合エステル化は、たとえばミクロフィブリルセルロースに2種類以上のカルボン酸無水物またはカルボン酸クロライドを塩基性条件下で反応させる方法で行なうことができる。
【0047】
β−ケトエステル化は、たとえばミクロフィブリルセルロースにジケテンやアルキルケテンダイマーを反応させる方法、もしくはミクロフィブリルセルロースとアルキルアセトアセテートのようなβ−ケトエステル化合物のエステル交換反応により行なうことができる。
【0048】
アルキルカルバメート化は、たとえばミクロフィブリルセルロースにアルキルイソシアナートを塩基性触媒またはスズ触媒存在下で反応させる方法で行なうことができる。
【0049】
アリールカルバメート化は、たとえばミクロフィブリルセルロースにアリールイソシアナートを塩基性触媒またはスズ触媒存在下で反応させる方法で行なうことができる。
【0050】
<ゴム成分>
ゴム成分は、天然ゴムおよび変性天然ゴムならびに合成ゴムの少なくともいずれかからなる。ゴム成分としては、タイヤ用途等に用いられる一般的なゴムを好ましく使用でき、たとえば、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、変性
天然ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム等を例示できる。また変性天然ゴムとしては、エポキシ化天然ゴム、水素化天然ゴム等を例示できる。
【0051】
さらに、コストを増大させたり、余分なエネルギーおよび溶剤等を用いたりすることなく、ラテックスを容易かつ比較的安価に得ることができる点で、ゴム成分が、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、天然ゴム、変性天然ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴムの少なくともいずれかからなることがより好ましい。さらに、環境に与える負荷が小さく、ミクロフィブリルセルロースとの相容性が高く、破壊特性により優れ、エネルギーロスがより低減されたゴムを与えることができる点で、ゴム成分は、天然ゴムおよび変性天然ゴムの少なくともいずれかを含むことがより好ましく、天然ゴムおよび変性天然ゴムの少なくともいずれかからなることが特に好ましい。
【0052】
また、tanδの低減による燃費向上効果に優れる点では、ゴム成分が、天然ゴム、変性量の比較的低い変性天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン量の比較的低いスチレンブタジエンゴム、の少なくともいずれかからなることが好ましい。
【0053】
ゴム成分が、天然ゴムおよび変性天然ゴムの少なくともいずれかを含む場合、天然ゴムと変性天然ゴムとのゴム成分中の含有率の合計は、50質量%以上であることが好ましく、65質量%以上、さらに75質量%以上であることがより好ましい。化学変性ミクロフィブリルセルロースは天然の植物由来の天然ゴムまたはこれを変性して得られる変性天然ゴムとの親和性に優れるため、天然ゴムおよび変性天然ゴムのゴム成分中の含有率の合計を50質量%以上とすることによって、良好な破断特性と低いエネルギーロスとをより高度に両立させることができる。また、天然ゴムおよび変性天然ゴムは伸張結晶性による良好な引張強さを有するため、天然ゴムおよび変性天然ゴムの含有率の合計を高くする程、引張強さ向上の点で有利である。さらに、天然ゴムおよび変性天然ゴムの含有率の合計を高くする程、CO2排出量の削減効果を大きくできる。
【0054】
なお、変性天然ゴムを用いる場合、ミクロフィブリルセルロースおよび化学変性ミクロフィブリルセルロースとの相容性を高くでき、かつ環境への負荷の低減とゴム物性の確保とを容易に両立できる点で、該変性天然ゴムがエポキシ化天然ゴムであることが特に好ましい。
【0055】
エポキシ化天然ゴムとしては、市販のものを用いてもよいし、天然ゴム(NR)をエポキシ化したものを用いてもよい。天然ゴムをエポキシ化する方法としては、特に限定されるものではなく、たとえばクロルヒドリン法、直接酸化法、過酸化水素法、アルキルヒドロペルオキシド法、過酸法などを挙げることができる。過酸法としては、たとえば天然ゴムのエマルジョンに過酢酸や過蟻酸などの有機過酸をエポキシ化剤として反応させる方法を挙げることができる。
【0056】
エポキシ化天然ゴムのエポキシ化率は、2.5モル%以上が好ましく、7.5モル%以上がより好ましく、15モル%以上がさらに好ましい。ここで、エポキシ化率とは、エポキシ化前の天然ゴム中の二重結合の全数のうちエポキシ化された数の割合を意味し、たとえば滴定分析や核磁気共鳴(NMR)分析等により求められる。エポキシ化天然ゴムのエポキシ化率が2.5モル%以上である場合、エポキシ基がミクロフィブリルセルロースおよび化学変性ミクロフィブリルセルロースと相互作用または化学結合することにより、ゴムとミクロフィブリルセルロースおよび化学変性ミクロフィブリルセルロースとの相容性を改善できる。
【0057】
また、エポキシ化天然ゴムのエポキシ化率は、60モル%以下が好ましく、30モル%以下がより好ましい。エポキシ化天然ゴムのエポキシ化率が60モル%以下である場合、
加硫ゴム組成物が硬くなり過ぎず機械強度が良好となる。
【0058】
エポキシ化天然ゴムとして、より典型的には、エポキシ化率10モル%のエポキシ化天然ゴム、エポキシ化率25モル%のエポキシ化天然ゴム、エポキシ化率50モル%のエポキシ化天然ゴム等を例示できる。
【0059】
なお、本発明において、たとえば空気入りタイヤに用いられたときの転がり抵抗をさらに低減する等の目的で、ゴム成分に、天然ゴムおよび変性天然ゴムの少なくともいずれかに加えて、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム等の他のゴムを含有させる場合、天然ゴムと変性天然ゴムとのゴム成分中の含有率の合計を、50質量%以下、さらに25質量%以下、さらに10質量%以下としても良い。
【0060】
<その他の配合剤>
本発明のゴム組成物には、上記した成分以外に、従来ゴム工業で使用される他の配合剤として、たとえば、補強剤、シランカップリング剤、加硫剤、ステアリン酸、加硫促進剤、加硫促進助剤、オイル、硬化レジン、ワックス、老化防止剤などを配合できる。
【0061】
補強剤としては、タイヤ用途で用いられるものをいずれも好適に使用できるが、特に、カーボンブラックおよびシリカの少なくともいずれかを用いることが好ましい。
【0062】
カーボンブラックを用いる場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して2.5〜150質量部の範囲内であることが好ましい。カーボンブラックの該含有量が2.5質量部以上である場合、補強効果、耐久性向上効果および加工性向上効果が特に良好であり、150質量部以下である場合、ゴムが硬くなり過ぎることによる機械強度の低下を防止できる。カーボンブラックの該含有量は、5〜100質量部の範囲内、さらに10〜80質量部の範囲内、さらに20〜50質量部であることがより好ましい。
【0063】
シリカを用いる場合、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して2.5〜150質量部の範囲内であることが好ましい。シリカの該含有量が2.5質量部以上である場合、補強効果が特に良好であり、150質量部以下である場合、ゴムが硬くなり過ぎることによる機械強度の低下や、加硫ゴム組成物の製造時の粘度上昇による加工性低下を防止できる。シリカの該含有量は、さらに5〜100質量部の範囲内、さらに10〜80質量部の範囲内、さらに20〜50質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0064】
本発明の加硫ゴム組成物がシリカを含有する場合、該シリカとともに、シランカップリング剤を配合することが好ましい。シランカップリング剤としては、従来公知のシランカップリング剤を用いることができ、たとえば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチル
チオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリメトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィドなどのスルフィド系;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプト系;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系;3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系;γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどのグリシドキシ系;3−ニトロプロピルトリメトキシシラン、3−ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系;3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、2−クロロエチルトリメトキシシラン、2−クロロエチルトリエトキシシランなどのクロロ系;などを挙げることができる。これらのシランカップリング剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
シランカップリング剤をさらに含有させる場合、その含有量については特に制限されるものではないが、シリカの配合量を100質量%としたときの量で1質量%以上が好まし量が1質量%未満である場合には、ゴムの混練り時および押し出し時の加工性が低下する傾向にあるとともに、加硫ゴム組成物に対する補強効果が小さくなる傾向にある。また、シランカップリング剤の含有量は、シリカの配合量を100質量%としたときの量で20質量%以下が好ましく、15質量%以下、さらに10質量%以下がより好ましい。シランカップリング剤の該含有量が20質量%を超える場合には、シランカップリング剤の配合量を増やしてもゴムの混練り時および押し出し時の加工性および加硫ゴム組成物に対する補強効果の改善効果は小さい一方、コストが上昇してしまい経済的ではない傾向にある。
【0066】
加硫剤としては、有機過酸化物もしくは硫黄系加硫剤を使用することが可能であり、有機過酸化物としては、たとえば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、パーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3あるいは1,3−ビス(t−ブチルパーオキシプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルパーオキシ−ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルパーオキシベンゼン、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシロキサン、n−ブチル−4,4−ジ−t−ブチルパーオキシバレレートなどを使用することができる。これらの中で、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゼンおよびジ−t−ブチルパーオキシ−ジイソプロピルベンゼンが好ましい。また、硫黄系加硫剤としては、たとえば、硫黄、モルホリンジスルフィドなどを使用することができる。これらの中では硫黄が好ましい。これらの加硫剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
加硫促進剤としては、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド−アミン系またはアルデヒド−アンモニア系、イミダゾリン系、もしくは、キサンテート系加硫促進剤のうち少なくとも一つ
を含有するものを使用することが可能である。スルフェンアミド系としては、たとえばCBS(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)、TBBS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドなどのスルフェンアミド系化合物などを使用することができる。チアゾール系としては、たとえばMBT(2−メルカプトベンゾチアゾール)、MBTS(ジベンゾチアジルジスルフィド)、2−メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩、亜鉛塩、銅塩、シクロヘキシルアミン塩、2−(2,4−ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2−(2,6−ジエチル−4−モルホリノチオ)ベンゾチアゾールなどのチアゾール系化合物などを使用することができる。チウラム系としては、たとえばTMTD(テトラメチルチウラムジスルフィド)、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ペンタメチレンチウラムテトラスルフィドなどのチウラム系化合物を使用することができる。チオウレア系としては、たとえばチアカルバミド、ジエチルチオ尿素、ジブチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、ジオルトトリルチオ尿素などのチオ尿素化合物などを使用することができる。グアニジン系としては、たとえばジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、トリフェニルグアニジン、オルトトリルビグアニド、ジフェニルグアニジンフタレートなどのグアニジン系化合物を使用することができる。ジチオカルバミン酸系としては、たとえばエチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ブチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジアミルジチオカルバミン酸亜鉛、ジプロピルジチオカルバミン酸亜鉛、ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛とピペリジンの錯塩、ヘキサデシル(またはオクタデシル)イソプロピルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペリジン、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジエチルジチオカルバミン酸テルル、ジアミルジチオカルバミン酸カドミウムなどのジチオカルバミン酸系化合物などを使用することができる。アルデヒド−アミン系またはアルデヒド−アンモニア系としては、たとえばアセトアルデヒド−アニリン反応物、ブチルアルデヒド−アニリン縮合物、ヘキサメチレンテトラミン、アセトアルデヒド−アンモニア反応物などのアルデヒド−アミン系またはアルデヒド−アンモニア系化合物などを使用することができる。イミダゾリン系としては、たとえば2−メルカプトイミダゾリンなどのイミダゾリン系化合物などを使用することができる。キサンテート系としては、たとえばジブチルキサントゲン酸亜鉛などのキサンテート系化合物などを使用することができる。これらの加硫促進剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
加硫促進助剤としては、たとえば酸化亜鉛、ステアリン酸などを使用できる。
老化防止剤としては、アミン系、フェノール系、イミダゾール系の老化防止剤や、カルバミン酸金属塩などを適宜選択して使用することができる。
【0069】
オイルとしては、プロセスオイル、植物油脂、またはこれらの混合物、などを例示できる。プロセスオイルとしては、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイルなどを例示できる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、サフラワー油、桐油、などを例示できる。
【0070】
<化学変性ミクロフィブリルセルロースとゴム成分とからなるマスターバッチの製造方
法>
本発明の加硫ゴム組成物を調製する際には、たとえば、化学変性ミクロフィブリルセルロースとゴム成分とからなるマスターバッチ(以下、単にマスターバッチとも称する)を予め調製することができる。該マスターバッチは、たとえば下記のような方法を用いた混合、乾燥により調製できる。混合方法としては、高い剪断力と圧力とをかけ、分散を促進できる点で、ホモジナイザーによる混合方法が好ましいが、その他、プロペラ式攪拌装置、ロータリー攪拌装置、電磁攪拌装置、手動による攪拌、等の方法を用いることもできる。
【0071】
ゴムラテックスを乾燥する際の方法としては、通常用いられるラテックスの乾燥方法の他に、水絞りロールによって水を除去した後に加熱オーブン等の中で乾燥させたり、自然乾燥させたりする方法、ゴムラテックスと化学変性ミクロフィブリルセルロースの水分散体との混合液を凍結乾燥する方法、同様に、上記混合液をそのままパルス燃焼による衝撃波により乾燥させる方法等を用いることができる。但し、分散性の悪化を防止する点で、水絞りロール等による剪断力をかけずに加熱オーブン中で乾燥させたり、自然乾燥させたり、または、上記混合液をそのままパルス燃焼させたりする方法が好ましい。その他、上記混合液をマイクロ波により乾燥させる方法も好ましい。なお、マイクロ波による方法では、あらかじめ官能基を導入した化学変性ミクロフィブリルセルロースを調製しておき、乾燥と同時に該化学変性ミクロフィブリルセルロースとゴム等とを反応させることにより、化学変性ミクロフィブリルセルロースとゴムとの相容性をさらに向上させても良いし、マイクロ波により化学変性をミクロフィブリルセルロースに施しながら乾燥させても良い。
【0072】
<加硫ゴム組成物の製造方法>
本発明の加硫ゴム組成物は、上記のマスターバッチとその他の必要なゴムや配合剤とを、たとえばゴム用混練機等を用いて従来公知の方法で混合し、従来公知の方法で加硫することにより得られる。
【0073】
<空気入りタイヤ>
本発明はまた、上述したような本発明の加硫ゴム組成物を用いてなる空気入りタイヤを提供する。図1は、本発明の空気入りタイヤの一例を示す概略断面図である。空気入りタイヤ1は、トレッド部2と、該トレッド部2の両端からタイヤ半径方向内方に延びる一対のサイドウォール部3と、各サイドウォール部3の内方端に位置するビード部4とを備える。またビード部4,4間にはカーカス6が架け渡されるとともに、このカーカス6の外側かつトレッド部2内にはタガ効果を有してトレッド部2を補強するベルト層7が配される。
【0074】
上記カーカス6は、カーカスコードをタイヤ赤道COに対して、たとえば70〜90°の角度で配列する1枚以上のカーカスプライから形成され、このカーカスプライは、上記トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5の廻りをタイヤ軸方向の内側から外側に折返されて係止される。
【0075】
上記ベルト層7は、ベルトコードをタイヤ赤道COに対して、たとえば40°以下の角度で配列した2枚以上のベルトプライからなり、各ベルトコードがプライ間で交差するよう向きを違えて重置している。なお、必要に応じてベルト層7の両端部のリフティングを防止するためのバンド層(図示しない)を、ベルト層7の少なくとも外側に設けても良く、このときバンド層は、低モジュラスの有機繊維コードを、タイヤ赤道COとほぼ平行に螺旋巻きした連続プライで形成する。
【0076】
またビード部4には、上記ビードコア5から半径方向外方に延びるビードエイペックスゴム8が配されるとともに、カーカス6の内側には、タイヤ内腔面をなすインナーライナゴム9が隣設され、カーカス6の外側は、クリンチゴム4Gおよびサイドウォールゴム3Gで保護される。
【0077】
なおトレッド部2は、たとえば図1に示すようなキャップトレッド2aおよびベーストレッド2bからなる構造を有しても良い。
【0078】
本発明の加硫ゴム組成物は、空気入りタイヤのたとえばベーストレッド、ビードエイペックス、ランフラットタイヤのインサートゴム、操縦安定性を改善するための繊維補強ゴム(Fiber Reinforced Rubber(FRR))、等として用いることができる。その他、キャップトレッド、サイドウォール、クリンチ等にも使用できる。また、ブレーカークッションゴム、ジョイントレスバンド等にも使用できる。
【0079】
図1には、乗用車用の空気入りタイヤについて例示しているが、本発明はこれに限定されず、トラック用、バス用、重車両用等を含む各種車両の用途に対して用いられる空気入りタイヤを提供する。
【0080】
本発明の空気入りタイヤは、本発明の加硫ゴム組成物を用いて、従来公知の方法により製造される。すなわち、上述した必須成分、および必要に応じて配合されるその他の配合剤を含有するゴム組成物を混練りし、未加硫の段階で、タイヤの所望の適用部材の形状に合わせて押出し加工し、タイヤの他の部材とともに、タイヤ成形機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、本発明の加硫ゴム組成物を用いてなるタイヤを得ることができる。
【0081】
かかる本発明の空気入りタイヤは、少なくとも本発明の加硫ゴム組成物が適用された部材において石油資源由来の成分の含有比率がより低減され、省資源および環境保護への配慮が十分なされている。また、少なくとも本発明の加硫ゴム組成物が適用された部材において、優れた破断特性と低いエネルギーロスとを与える加硫ゴム組成物が使用されているため、地球環境に優しい「エコタイヤ」であるとともに良好な転がり抵抗特性、操縦安定性および耐久性を有する。
【実施例】
【0082】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0083】
<マスターバッチの調製>
後述の表1〜4に示す配合処方に従い、ゴム成分とミクロフィブリルセルロースとからなるマスターバッチとして、NBRマスターバッチ1〜7、ポリブタジエンマスターバッチ1〜3、NRマスターバッチ1〜15、ENRマスターバッチ1〜7を調製した。なお以下では、各マスターバッチの番号が共通のものを纏めて、各マスターバッチ1等と称することがある。
【0084】
各マスターバッチ1では、ゴムラテックスのみを用いた。通常用いられるゴムラテックスの凝固剤を所定量添加した後、水分を除去して、40℃の加熱オーブン中で乾燥させ、各マスターバッチ1の乾燥物を得た。
【0085】
各マスターバッチ2ではミクロフィブリルセルロース1を、各マスターバッチ3ではミクロフィブリルセルロース2を、各NRマスターバッチ9〜15ではそれぞれミクロフィブリルセルロース3〜9をそれぞれホモジナイザーを用いてゴム中に混合した。
【0086】
ミクロフィブリルセルロース1は化学変性されていないミクロフィブリルセルロースであり、ミクロフィブリルセルロース2〜9は化学変性ミクロフィブリルセルロースである。
【0087】
ミクロフィブリルセルロース2は、ミクロフィブリルセルロース1を、酢酸およびトルエンの混合溶媒中、硫酸触媒存在下で無水酢酸と反応させてアセチル化した後、溶媒を水に置換する方法により調製した。なおアセチル化における置換度は約2とした。
【0088】
ミクロフィブリルセルロース3は、ミクロフィブリルセルロース1を、トルエンに置換した後、ピリジン触媒存在下で酪酸クロリドと反応させエステル化させた後、溶媒を水に置換する方法により調製した。置換度は約0.5とした。
【0089】
ミクロフィブリルセルロース4は、ミクロフィブリルセルロース1を、トルエンに置換した後、ピリジン触媒存在下でステアロイルクロリドと反応させエステル化させた後、溶媒を水に置換する方法により調製した。置換度は約0.3とした。
【0090】
ミクロフィブリルセルロース5は、ミクロフィブリルセルロース1を、酢酸+トルエンの混合溶媒中、硫酸触媒存在下で無水酢酸と無水酪酸の混合物と反応させ複合エステル化させた後、溶媒を水に置換する方法により調製した。置換度は約1とした。
【0091】
ミクロフィブリルセルロース6は、ミクロフィブリルセルロース1を、トルエンに置換した後、ピリジン触媒存在下でブチルイソシアナートと反応させカルバメート化させた後、溶媒を水に置換する方法により調製した。置換度は約0.4とした。
【0092】
ミクロフィブリルセルロース7は、ミクロフィブリルセルロース1を、トルエンに置換した後、ピリジン触媒存在下でステアリルイソシアナートと反応させカルバメート化させた後、溶媒を水に置換する方法により調製した。置換度は約0.3とした。
【0093】
ミクロフィブリルセルロース8は、ミクロフィブリルセルロース1を、トルエンに置換した後、ピリジン触媒存在下でフェニルイソシアナートと反応させカルバメート化させた後、溶媒を水に置換する方法により調製した。置換度は約0.4とした。
【0094】
ミクロフィブリルセルロース9は、ミクロフィブリルセルロース1を、トルエンに置換した後、ピリジン触媒存在下でジケテンと反応させβ−ケトエステル化させた後、溶媒を水に置換する方法により調製した。置換度は約0.4とした。
【0095】
ミクロフィブリルセルロース1〜9にそれぞれ適宜蒸留水を追加してホモジナイザーで30分間攪拌して分散体を調製し、該分散体とゴムラテックスとを各表に記載の比率となるように計量し、ホモジナイザーでさらに10分間混合して混合物を得た。
【0096】
ホモジナイザーとしては、上記いずれの工程にも、IKA製バッチ式ホモジナイザーT65Dウルトラタラックス(Ultraturrax T25)を用い、回転数7000rpmで処理した。
【0097】
混合時に粘度が高く混合、攪拌が難しい場合には、適宜蒸留水を追加し、希釈して攪拌した。
【0098】
得られた混合物に、通常用いられるゴムラテックスの凝固剤を必要量添加して、ゴムとミクロフィブリル1〜9とを沈殿させた後、水洗し、水を除去し、40℃の加熱オーブン中で乾燥させ、各マスターバッチ2,3およびNRマスターバッチ9〜15を得た。
【0099】
各マスターバッチ4〜7については、ゴムラテックスとミクロフィブリルセルロース1または2とを各表に示す比率となるように混合して調製した。
【0100】
混合方法としては、上述のホモジナイザーに代えてプロペラ式攪拌装置を用いた。700rpmでまず水とミクロフィブリルセルロースとを2時間攪拌し、その後、ゴムラテックスをさらに加えて2時間混合した。ゴムラテックスとミクロフィブリルセルロース1または2との混合時に粘度が高く混合、攪拌が難しい場合には、適宜蒸留水を追加して希釈して攪拌した。その後、凝固、洗浄、脱水、乾燥を行なった。
【0101】
【表1】

【0102】
【表2】

【0103】
【表3】

【0104】
【表4】

【0105】
各表中に示す各配合成分の詳細を以下に示す。
NBRラテックス1:ニッポール1561(日本ゼオン(株)製、固形分40.5質量%、平均粒径50nm、Tg=−11℃)。
ミクロフィブリルセルロース1:セリッシュKY−100G(ダイセル化学工業(株)製
、固形分10質量%、水分90質量%、平均繊維径0.1μm)。
ミクロフィブリルセルロース2:アセチル化品(ミクロフィブリルセルロース1を、67モル%アセチル化(置換度:約2)、固形分10質量%、水分90質量%、平均繊維径0.1μm)。
ミクロフィブリルセルロース3:エステル化品(ミクロフィブリルセルロース1を、50モル%アセチル化(置換度:約0.5)、固形分約10質量%、水分約90質量%、平均繊維径0.1μm)。
ミクロフィブリルセルロース4:エステル化品(ミクロフィブリルセルロース1を、30モル%アセチル化(置換度:約0.3)、固形分約10質量%、水分約90質量%、平均繊維径0.1μm)。
ミクロフィブリルセルロース5:複合エステル化品(ミクロフィブリルセルロース1を、100モル%アセチル化(置換度:約1)、固形分約10質量%、水分約90質量%、平均繊維径0.1μm)。
ミクロフィブリルセルロース6:カルバメート化品(ミクロフィブリルセルロース1を、40モル%アセチル化(置換度:約0.4)、固形分約10質量%、水分約90質量%、平均繊維径0.1μm)。
ミクロフィブリルセルロース7:カルバメート化品(ミクロフィブリルセルロース1を、30モル%アセチル化(置換度:約0.3)、固形分約10質量%、水分約90質量%、平均繊維径0.1μm)。
ミクロフィブリルセルロース8:カルバメート化品(ミクロフィブリルセルロース1を、40モル%アセチル化(置換度:約0.4)、固形分約10質量%、水分約90質量%、平均繊維径0.1μm)。
ミクロフィブリルセルロース9:β−ケトエステル化品(ミクロフィブリルセルロース1を、40モル%アセチル化(置換度:約0.4)、固形分約10質量%、水分約90質量%、平均繊維径0.1μm)。
ポリブタジエンラテックス1:ニッポールLX111A2(日本ゼオン(株)製、固形分54.0質量%、平均粒径300nm)。
NRラテックス1:HYTEX HA(Golden Hope Plantations(ゴールデン・ホープ・プランテーションズ)製の天然ゴムラテックス、固形分60質量%、平均粒径1μm)。
ケブラー分散体:固形分23質量%、水分77質量%、平均繊維径14μm。
ENRラテックス1:上記のNRラテックスを蟻酸と過酸化水素とでエポキシ化して得たエポキシ化天然ゴムラテックス。固形分30質量%、エポキシ化率25%、平均粒径1μm。
【0106】
<実施例1〜18,比較例1〜28>
表1〜4の配合処方に従って上記の方法により乾燥物として得た各マスターバッチを用い、表5〜10に示す配合処方で加硫ゴム組成物を調製した。
【0107】
表5〜9および表10の実施例11〜18の工程1に示す配合処方に従った配合成分を、(株)東洋精機製作所製の250ccラボプラストミルに充填率が65%となるように投入し、回転数80rpmの条件下で、混練機の表示温度が140℃になるまで3〜8分間混練した。なお、比較例19〜28については、本マスターバッチ法の効果を検証するため、NRマスターバッチ1を予め250ccラボプラストミルで上記と同様の充填率と回転数で1分間混練しておき、そこに乾燥したミクロフィブリルセルロース1〜9をそれぞれ投入し、混練機の表示温度が140℃になるまで合計で3〜8分間混練した。工程1で得られた混練物に対し、工程2に示す配合処方に従って硫黄および加硫促進剤を加え、オープンロールを用い、50℃の条件下で3分間混練して、未加硫ゴム組成物を得た。工程2で得られた未加硫ゴム組成物を、後述のそれぞれの評価に必要なサイズに成型し、160℃で20分間プレス加硫することにより、各実施例および各比較例の加硫ゴム組成物を得た。
【0108】
上記の方法で作製した加硫ゴム組成物を用い、以下に示す評価を行なった。なお、各評価に共通して、表5に示す実施例1〜3および比較例1〜4の評価では比較例1を、表6に示す実施例4および比較例5,6の評価では比較例5を、表7および表8に示す実施例5〜7および比較例7〜13の評価では比較例7を、表9に示す実施例8〜10および比較例14〜17の評価では比較例14を、それぞれ基準配合とした。表10に示す実施例11〜18および比較例19〜28では比較例18を基準配合とした。
【0109】
(繊維分散状態)
各実施例および各比較例の加硫ゴム組成物からなる試験片、および該試験片につき後述の方法で引張試験を行なった後の試験片の断面をそれぞれ観察し、下記の基準で評価した。
A:目視で凝集塊が認められず、引張試験後の破断面にも異物が確認されない。
B:目視で微細な凝集塊が認められ、引張試験後の破断面には微細な異物が確認される。C:目視で微細でない凝集塊が認められる。
【0110】
(引張試験)
JIS K6251「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に従い、引張強度および破断伸びを測定した。下記の計算式、
引張強度指数=(各配合の引張強度)÷(基準配合の引張強度)×100
破断伸び指数=(各配合の破断伸び)÷(基準配合の破断伸び)×100
により、基準配合の引張強度および破断伸びをそれぞれ100として、引張強度指数および破断伸び指数を算出した。各々の指数が大きい程、加硫ゴム組成物が良好に補強されており、ゴムの機械強度が大きく、破壊特性に優れることを示す。
【0111】
(引裂試験)
JIS K6252「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム−引裂強さの求め方」に従い、切り
込みなしのアングル型試験片を用いて、引裂強さ(N/mm)を測定した。下記の計算式、
引裂強さ指数=(各配合の引裂強さ)÷(基準配合の引裂強さ)×100
により、基準配合の引裂強さを100として、引裂強さ指数を算出した。指数が大きい程、引裂強さが大きく、特にサイドウォール用ゴム組成物等として優れていることを示す。
【0112】
(操縦安定性指数,転がり抵抗指数)
前述の方法で調製された加硫ゴム組成物からなる、2mm×130mm×130mmのゴムスラブシートを作製し、該ゴムスラブシートから測定用試験片を切り出し、粘弾性スペクトロメータVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度70℃、初期歪10%、動歪2%、周波数10Hzの条件下で、各測定用試験片のE*(複素弾性率)およびtan
δ(損失正接)を測定した。下記の計算式、
操縦安定性指数=(各配合のE*)÷(基準配合のE*)×100
転がり抵抗指数=(各配合のtanδ)÷(基準配合のtanδ)×100
により、基準配合のE*およびtanδをそれぞれ100として、操縦安定性指数および
転がり抵抗指数を算出した。操縦安定性指数が大きい程、空気入りタイヤに良好な操縦安定性を与えることが可能であることを示し、転がり抵抗指数が小さい程、空気入りタイヤに良好な転がり抵抗特性を与えることが可能であることを示す。
【0113】
【表5】

【0114】
【表6】

【0115】
【表7】

【0116】
【表8】

【0117】
【表9】

【0118】
【表10】

【0119】
表5〜10に示す配合成分の詳細を以下に示す。
カーボンブラック:シーストSO(東海カーボン(株)製、FEFカーボン)。
ステアリン酸:桐(日本油脂(株)製)。
酸化亜鉛:酸化亜鉛2種(三井金属鉱業(株)製)。
老化防止剤:ノクラック6C(大内新興化学工業(株)製)。
硫黄:粉末硫黄(鶴見化学工業(株)製)。
加硫促進剤MBTS:ノクセラーDM(大内新興化学工業(株)製)。
加硫促進剤TMTM:ノクセラーTS(大内新興化学工業(株)製)。
加硫促進剤CBS:ノクセラーCZ(大内新興化学工業(株)製)。
シンジオタクチック成分含有ポリブタジエンゴム:ウベポールVCR412(宇部興産(株)製、n−ヘキサン不溶分(シンジオタクチックポリブタジエン結晶量を示す)12.0質量%、シス:トランス:ビニル=98:1:1)。
【0120】
表5〜9に示す結果から、化学変性ミクロフィブリルセルロースを用いることにより、ミクロフィブリルセルロースを用いなかった比較例、化学変性されていないミクロフィブリルセルロースを用いた比較例、他の繊維としてケブラー分散体を配合した比較例、および結晶性ポリマーであるシンジオタクチック成分含有ポリブタジエンゴムを配合した比較
例、のそれぞれと比べ、転がり抵抗指数を大きく悪化させることなく良好な引張特性および操縦安定性を高度に両立できる傾向にあることが分かる。また、各実施例においては、化学変性されていないミクロフィブリルセルロースを用いた比較例と比べて繊維分散状態が良好であった。
【0121】
表10に示す結果から、化学変性ミクロフィブリルセルロースを用いる場合であっても、ドライブレンドの形でゴムに化学変性ミクロフィブリルセルロースを添加するのではなく、本発明のように予めゴムラテックスと化学変性ミクロフィブリルセルロースを水媒体中で複合化したマスターバッチの形で使用する方法が、良好な繊維分散状態、しいては転がり抵抗特性を悪化させず、操縦安定性および耐久性を高度に両立するために必要であるといえる。
【0122】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明の加硫ゴム組成物は、たとえば乗用車用、トラック用、バス用、重車両用等、各種車両の用途の空気入りタイヤの、たとえばベーストレッド、ビードエイペックス、ランフラットタイヤのインサートゴム、操縦安定性を改善するための繊維補強ゴム(Fiber Reinforced Rubber(FRR))、キャップトレッド、サイドウォール、クリンチ、ブレーカークッションゴム、ジョイントレスバンド等に対して好適に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の空気入りタイヤの一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0125】
1 空気入りタイヤ、2 トレッド部、3 サイドウォール部、4 ビード部、5 ビードコア、6 カーカス、7 ベルト層、8 ビードエイペックスゴム、9 インナーライナゴム、2a キャップトレッド、2b ベーストレッド、3G サイドウォールゴム、4G クリンチゴム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴムおよび変性天然ゴムならびに合成ゴムの少なくともいずれかからなるゴム成分と、化学変性ミクロフィブリルセルロースと、を含有する加硫ゴム組成物。
【請求項2】
前記化学変性ミクロフィブリルセルロースにおける化学変性がアセチル化、アルキルエステル化、複合エステル化、β−ケトエステル化、アルキルカルバメート化、アリールカルバメート化からなる群から選択された少なくとも1種である、請求項1に記載の加硫ゴム組成物。
【請求項3】
前記化学変性ミクロフィブリルセルロースは、置換度が0.2〜2.5の範囲内となるように化学変性されてなる、請求項1または2に記載の加硫ゴム組成物。
【請求項4】
前記化学変性ミクロフィブリルセルロースの平均繊維径は、4nm〜1μmの範囲内である、請求項1〜3のいずれかに記載の加硫ゴム組成物。
【請求項5】
前記化学変性ミクロフィブリルセルロースの含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して1〜50質量部の範囲内である、請求項1〜4のいずれかに記載の加硫ゴム組成物。
【請求項6】
前記ゴム成分は、前記天然ゴムおよび前記変性天然ゴムの少なくともいずれかからなる、請求項1〜5のいずれかに記載の加硫ゴム組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の加硫ゴム組成物を用いてなる空気入りタイヤ。
【請求項8】
天然ゴムおよび変性天然ゴムならびに合成ゴムの少なくとも1種類のゴム成分を含むゴムラテックスに、化学変性ミクロフィブリルセルロースを前記ゴム成分100質量部に対して1〜50質量部を混合、乾燥してマスターバッチを調製することを特徴とする加硫ゴム組成物の製造方法。
【請求項9】
前記混合がホモジナイザーによる混合方法である、請求項8に記載の加硫ゴム組成物の製造方法。
【請求項10】
前記乾燥が加熱オーブン中での乾燥、自然乾燥およびパルス乾燥のいずれかの乾燥方法である、請求項8または9に記載の加硫ゴム組成物の製造方法。
【請求項11】
前記化学変性ミクロフィブリルセルロースにおける化学変性がアセチル化、アルキルエステル化、複合エステル化、β−ケトエステル化、アルキルカルバメート化、アリールカルバメート化からなる群から選択された少なくとも1種である、請求項8〜10のいずれかに記載の加硫ゴム組成物の製造方法。
【請求項12】
前記化学変性ミクロフィブリルセルロースは、置換度が0.2〜2.5の範囲内となるように化学変性されてなる、請求項8〜11のいずれかに記載の加硫ゴム組成物の製造方法。
【請求項13】
前記化学変性ミクロフィブリルセルロースの平均繊維径は、4nm〜1μmの範囲内である、請求項8〜12のいずれかに記載の加硫ゴム組成物の製造方法。
【請求項14】
請求項8〜13いずれか記載の加硫ゴム組成物の製造方法において調製されたマスターバッチに配合剤を混練する工程と、
加硫剤及び加硫促進剤を加えて混練する工程と、
これをタイヤ金型で加圧・加熱下で加硫する加硫工程を有する空気入りタイヤの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−84564(P2009−84564A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224908(P2008−224908)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】