説明

加硫金型の離型力検出方法および装置

【課題】小型でかつ安価でありながら容易に加硫金型(セクターモールド)の離型力を検出する。
【解決手段】セクターセグメントの一部とほぼ同一形状の部分モールド47を含む部分金型71を用いて未加硫ゴムを加硫した後、加硫済ゴムGから離型力を測定しながら部分モールド47を離型し、その後、該離型力からセクターモールド35の全体離型力を求めるようにしたので、使用するモールドが小型となり、これに付随する離型、測定手段も小型のものでよい。しかも、1個の部分モールド47における離型力を測定するだけでよく、装置全体も小型で取り扱いが簡単となるため、離型力検出作業も容易となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加硫金型を構成するセクターモールドを加硫済タイヤから離型させる際に必要な離型力を検出する検出方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空気入りタイヤの加硫金型として、下モールドと、昇降することにより下モールドに接近離隔可能な上モールドと、下、上モールド間に位置し、半径方向に同期移動可能な弧状のセクターセグメントを周方向に並べて配置することで構成したセクターモールドとからなるものが、離型時における加硫済タイヤに対する負荷を低減することができるため、多用されるようになってきた。ここで、新規の空気入りタイヤを設計、生産する場合、加硫後に前記セクターモールドが加硫済タイヤから問題なく離型できるか否か、また、離型の際の難易度がどの程度かを事前に知ることは、新規に設計した空気入りタイヤの生産において重要な事項である。
【0003】
従来、前述のような離型を行うことができるか否かや離型の際の難易度は、設計者、生産ライン担当者が経験則に基づいて判断をしていたが、このような判断は不確実で、仮に離型を行うことができない場合には、生産ラインを一時停止しなければならないのである。このため、例えば、以下の特許文献1に記載の離型力測定方法を加硫金型における離型力の検出に応用することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−254852号公報
【0005】
このものは、加熱軟化されたガラス素材を成形型により押圧成形した後、前記成形型を支持する保持軸を駆動手段により後退させるとともに、前記保持軸と駆動手段との間に介在された検出手段により離型力を検出するようにしたものであるが、前記ガラス素材、成形型の代わりに加硫済タイヤ、セクターモールドを用いることで加硫金型における離型力検出に適用するのである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述のような離型力検出方法をタイヤ加硫金型に適用する場合には、新規の空気入りタイヤを設計する度に、該空気入りタイヤを加硫するための加硫金型一式を試作し、該試作された加硫金型の各セクターセグメントに保持軸、駆動手段、検出手段を設けるとともに、加硫済タイヤからセクターセグメントを離型させる際の離型力を検出することになるが、新規タイヤを設計する度に加硫金型一式を試作するとともに、各セクターセグメントに保持軸、駆動手段、検出手段を設ける必要があるため、検出装置全体が大型化するとともに、費用も高価となり、また、検出作業が複雑で面倒となってしまうという課題がある。
【0007】
この発明は、小型でかつ安価でありながら容易に加硫金型(セクターモールド)の離型力を検出することができる加硫金型の離型力検出方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、第1に、弧状のセクターセグメントを周方向に並べて配置することで構成したセクターモールドを有する加硫金型の前記セクターモールドを、加硫後に加硫済タイヤから離型させる際に必要な離型力を検出する離型力検出方法であって、型付け面形状が前記セクターセグメントの型付け面の周方向一部とほぼ同一形状である部分モールドを含む部分金型を用いて未加硫ゴムを加硫し加硫済みゴムとする工程と、加硫済みゴムから前記部分モールドを離型力を測定しながら離型させる工程と、前記セクターモールドの1周長を部分モールドの周方向長で除した値Aおよび前記測定した離型力を基に、加硫済タイヤからセクターモールドを離型させる際の離型力を求める工程とを備えた加硫金型の離型力検出方法により、達成することができる。
【0009】
第2に、弧状のセクターセグメントを周方向に並べて配置することで構成したセクターモールドを有する加硫金型の前記セクターモールドを、加硫後に加硫済タイヤから離型させる際に必要な離型力を検出する離型力検出装置であって、型付け面形状が前記セクターセグメントの型付け面の周方向一部とほぼ同一形状である部分モールドを含み、未加硫ゴムを加硫することで加硫済みゴムとする部分金型と、前記部分モールドを加硫済みゴムから離型させる離型手段と、前記部分モールドが加硫済みゴムから離型する際、その離型力を測定する測定手段と、前記セクターモールドの1周長を部分モールドの周方向長で除した値Aおよび前記測定した離型力を基に、加硫済タイヤからセクターモールドを離型させる際の離型力を求める演算手段とを備えた加硫金型の離型力検出装置により、達成することができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明においては、セクターセグメントの一部とほぼ同一形状の部分モールドを含む部分金型を用いて未加硫ゴムを加硫した後、加硫済ゴムから離型力を測定しながら前記部分モールドを離型し、その後、該離型力からセクターモールドの離型力を求めるようにしたので、使用するモールドが小型となるとともに、これに付随する離型、測定手段も小型のものを用いればよく、この結果、装置全体を小型で安価とすることができる。しかも、1個の部分モールドにおける離型力を測定するだけでよく、また、装置全体も前述のように小型で取り扱いが簡単となるため、セクターモールドの離型力を検出する作業も容易となる。
【0011】
また、請求項3に記載のように構成すれば、部分モールドの製作が容易となるとともに、セクターモールドの離型力を高精度で検出することができる。さらに、セクターセグメントは弧状を呈しているため、その周方向中央から周方向に離れた部位は、加硫済タイヤから離型する際、セクターセグメントの離型方向に直交する方向に対して傾斜していることになるが、請求項4に記載のように構成すれば、このような傾斜している部位における離型力を高精度で検出することができる。また、請求項5に記載のように構成すれば、傾斜している部位における離型力の検出精度をより向上させることができ、さらに、請求項6に記載のように構成すれば、構造簡単で安価とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】加硫装置を示す正面断面図である。
【図2】この発明の実施形態1を示す部分モールドの平面図である。
【図3】一部がブロックで示された部分金型近傍の側面断面図である。
【図4】加硫済みタイヤのトレッド踏面を示す平面図である。
【図5】部分モールドが傾斜した部分金型近傍の側面断面図である。
【図6】各試験タイヤにおいて部分モールドを離型させたときの離型力を示すグラフである。
【図7】各試験タイヤにおいてセクターモールドを離型させる際に必要となる全体離型力の演算結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態1を図面に基づいて説明する。
図1において、11は未加硫タイヤUを加硫して加硫済タイヤとするタイヤ加硫装置であり、この加硫装置11は静止した下基台12を有する。この下基台12に固定された加熱用の下プラテン13には下モールド15が着脱可能に取り付けられ、この下モールド15の上面には未加硫タイヤUの下側サイドウォール部を主に型付けする型付け面16が設けられている。
【0014】
17は下基台12の上方に設置され前記下基台12と対をなす上基台であり、この上基台17は図示していないシリンダ等の昇降機構により昇降され、下基台12に対して接近離隔する。前記上基台17に固定された加熱用の上プラテン20の直下には可動プレート19が配置され、この可動プレート19の下面には未加硫タイヤUの上側サイドウォール部を主に型付けする型付け面22が設けられた上モールド21が着脱可能に取り付けられている。
【0015】
23は上基台17に取り付けられたシリンダ24のピストンロッドであり、このピストンロッド23の先端(下端)には前記可動プレート19が連結されている。この結果、前記シリンダ24が作動すると、可動プレート19、上モールド21は上基台17と別個に一体的に昇降し、上基台17に対して接近離隔する。そして、後述の加硫金型の閉止時には、可動プレート19が上昇して上プラテン20に面接触するが、このとき、上モールド21には上プラテン20からの熱が伝達され、該上モールド21が加熱される。
【0016】
26は可動プレート19、上モールド21を半径方向外側から囲むよう設けられたアウターリングであり、このアウターリング26の上端は前記上基台17に固定されている。そして、このアウターリング26の内周には下基台12に向かって拡開している円錐面の一部からなる傾斜面27が形成されている。28は周方向に並べて配置された複数(ここでは9個であるが、10個の場合もある)の弧状をしたホルダであり、これらのホルダ28の上端は上モールド21より半径方向外側の可動プレート19に半径方向に移動可能に支持されている。
【0017】
また、これらホルダ28の外周には前記アウターリング26の傾斜面27と同一勾配で円錐面の一部からなる傾斜面30が形成され、これら傾斜面30と前記傾斜面27とはあり継手によって連結されながら摺動可能に係合している。この結果、可動プレート19が上基台17に対し接近離隔してこれらの間の間隔が変化すると、ホルダ28は傾斜面27、30の楔作用によって半径方向に同期移動する。33は各ホルダ28の半径方向内側面に着脱可能に取り付けられ、ホルダ28と同数の弧状をしたセクターセグメントであり、これらセクターセグメント33の半径方向内側面には未加硫タイヤUのトレッド部を主に型付けする型付け面34が形成されている。この結果、これらセクターセグメント33もホルダ28と同様に周方向に並べて配置されることになる。
【0018】
そして、これら複数のセクターセグメント33はホルダ28と共に半径方向内側限まで移動すると、互いに密着して連続リング状のセクターモールド35を構成するが、このとき、このセクターモールド35は下降限まで下降している上モールド21および下モールド15に密着するため、これら上、下、セクターモールド21、15、35からなる加硫金型36は閉止し、内部に未加硫タイヤUを収納するドーナツ状の加硫空間を形成する。
【0019】
38は下基台12の中央部に遊嵌されたバグ本体であり、このバグ本体38は図示していない流体シリンダ等により昇降される。このバグ本体38内には上下方向に延びるセンターポスト39が摺動可能に挿入され、このセンターポスト39は図示していないシリンダ等によってバグ本体38と別個に昇降される。このセンターポスト39の上端部には上クランプリング40が着脱可能に取り付けられ、一方、前記バグ本体38の上端部には下クランプリング42が着脱可能に取り付けられている。
【0020】
43は下端部が下クランプリング42に気密状態で把持された屈曲容易なブラダであり、このブラダ43の上端部は前記上クランプリング40に気密状態で把持されている。そして、加硫時に前記ブラダ43の内部に高温、高圧の加硫媒体が供給されると、該ブラダ43は未加硫タイヤU内でドーナツ状に膨張し、該未加硫タイヤUを閉止状態の加硫金型36の型付け面に押し付けながら加硫して加硫済タイヤとする。
【0021】
このような加硫装置11を用いて未加硫タイヤUを加硫した後、加硫済タイヤを該加硫装置11から取り出す場合には、まず、上基台17を上昇させるが、このとき、上モールド21が加硫時における高さ位置を保持するようシリンダ24を作動してそのピストンロッド23を突出させる。この結果、セクターセグメント33、ホルダ28は傾斜面27、30の楔作用によって半径方向外側に同期移動し、セクターモールド35(セクターセグメント33)が加硫済タイヤから離型する。
【0022】
ここで、前記セクターモールド35の型付け面は加硫済タイヤのトレッド踏面に密着しているので、加硫済タイヤからセクターモールド35を離型させる際には、ある程度の離型力が必要となるが、この離型力を上回る力を既設のシリンダ24がセクターモールド35に付与できるか否か、また、前述した離型の際の難易度がどの程度かを、事前に簡単に知ることは、特に新規に設計した空気入りタイヤの生産においては重要な事項である。
【0023】
このため、この実施形態においては、図2、3に示すように、いずれか1個のセクターセグメント33を周方向に複数個の分割片として等分割したときの1個の分割片より若干大きな部分モールド47を1個だけ形成したのである。ここで、前記部分モールド47は四角枠状の枠部48と、該枠部48により外側から囲まれ前記分割片と同一面積である型付け部49とから構成され、前記型付け部49の一側面には前記セクターセグメント33の型付け面34の周方向一部(前記分割片の型付け面)と同一幅で形状がほぼ同一である型付け面50が形成されている。
【0024】
ここで、前記部分モールド47の型付け面50とセクターセグメント33の型付け面34の周方向一部(分割片の型付け面)とを高精度で同一としてもよいが、このようにすると、型付け面50の形成作業が複雑となり形成時間も長時間必要となるため、この実施形態では前記型付け面50の底面51を円弧面ではなく平面とすることで部分モールド47の形成作業を容易としている。ここで、例えば、図4に示すような周方向に延びる複数の主溝52および該主溝52に交差する複数の横溝53を有するトレッドパターンPを加硫済タイヤTのトレッド踏面に成形する場合には、部分モールド47の型付け面50の底面51に前記主溝52、横溝53と補完形状にある主骨54、横骨55を形成するが、このような主骨54、横骨55の形状、配置位置に関しては離型力に大きな影響を与えるため、セクターセグメント33の型付け面34と同一としている。
【0025】
なお、部分モールド47の型付け面50が前述のようにセクターセグメント33の型付け面34とほぼ同一であれば、離型力に関して底面を円弧面とした場合と殆ど差はないが、必要であれば離型力測定後に適切な補正を行えばよい。また、前述のように加硫済タイヤTのトレッドパターンPがピッチ要素57、ここではブロックを周方向に繰り返し配置することで構成されているときには、前記部分モールド47の型付け部49の周方向長Lを前記ピッチ要素57の周方向ピッチMの整数倍とすることが好ましい。
【0026】
その理由は、このようにすれば部分モールド47(型付け部49)の製作が容易となるとともに、場所により離型応力に差異があっても、このような差異を吸収することができ、これにより、セクターモールド35の離型力を高精度で検出することができるからである。ここで、前記部分モールド47の型付け面50は平面であるため、厳密には周方向長と表現できないが、この型付け面50は前述のように形成を簡単にするために平面としているのであって実質は円周面の一部と考えてよいので、周方向長と表現している。なお、この発明においては、前記ピッチ要素はラグから構成されていてもよい。
【0027】
58は下側ケースであり、この下側ケース58の中央部上面には前記部分モールド47とほぼ同一断面積の凹み59が形成されている。この下側ケース58の外縁部上面には中間ケース60が取り付けられ、この中間ケース60は矩形ブロック状を呈するとともに、その中央部には上下に貫通し前記部分モールド47が収納される貫通孔61が形成されている。
【0028】
63は前記中間ケース60の上面に着脱可能に取り付けられた上側ケースであり、この上側ケース63の下面中央部には前記凹み59と同様の凹み64が形成されている。そして、これら下側、中間ケース58、60と上側ケース63とが締結されると、これらの内部には凹み59、64、貫通孔61からなる密閉状態の収納室65が形成される。66は前記下側ケース58の凹み59に収納されるとともに、該下側ケース58に着脱可能に取り付けられた下部分モールドであり、この下部分モールド66の水平な上面には前記部分モールド47の枠部48と同様の四角枠状をした中間部分モールド67が着脱可能に取り付けられている。
【0029】
そして、この中間部分モールド67上にはその型付け面50が下部分モールド66に対向するよう下側に向けられた状態で部分モールド47が載置され、この結果、部分モールド47の枠部48の下面と中間部分モールド67の上面とは当接した状態で面接触している。69は前記上側ケース63の凹み64に収納された保持部材であり、この保持部材69は上側ケース63に着脱可能に取り付けられている。そして、この保持部材69の水平な下面には前記部分モールド47が着脱可能に取り付けられている。
【0030】
前述した部分モールド47、下、中間部分モールド66、67は全体として、型付け面50の形状がセクターセグメント33の型付け面34の周方向一部とほぼ同一形状である部分モールド47を含む部分金型71を構成し、この部分金型71が閉止されると、その内部に前記部分モールド47、下、中間部分モールド66、67により囲まれた加硫室72が形成される。また、前述した下側ケース58、中間ケース60、上側ケース63は全体として、前記部分金型71および保持部材69が収納される加硫ケース73を構成する。なお、74は両端部が中間部分モールド67を貫通する水平な係止ロッドである。
【0031】
そして、前記下部分モールド66上に未加硫ゴムが供給した後、一体的に締結されている部分モールド47、上側ケース63、保持部材69を、一体的に締結されている下側ケース58、中間ケース60、下部分モールド66、中間部分モールド67に向かって接近させて、部分モールド47を中間部分モールド67に、上側ケース63を中間ケース60にそれぞれ当接させ、その後、上側ケース63と中間ケース60とを互いに締結すると、前記加硫ケース73、部分金型71が共に閉止されるとともに、未加硫ゴムに部分モールド47の主骨54、横骨55が押し込まれ、該未加硫ゴムに主溝52、横溝53が成形される。
【0032】
この状態で加硫ケース73と部分金型71との間の収納室65に高温、高圧の加硫媒体、例えばスチーム、不活性ガスを供給すると、前記未加硫ゴムは部分金型71により型付けされながら加硫されて加硫済みゴムGとなる。このときの加硫済みゴムGは、加硫済タイヤTのトレッドゴムを周方向に多数に等分割した分割片の1個とほぼ同一形状となる。なお、この発明においては、前記下部分モールド66、保持部材69内に加硫媒体を供給して未加硫ゴムを加硫するようにしてもよい。
【0033】
77は上下方向に延びる離型手段としての流体シリンダのピストンロッドであり、このピストンロッド77の先端(下端)に固定されたコの字形の第1ブラケット78と、前記上側ケース63の上面に固定され前記第1ブラケット78に嵌り合うコの字型をした第2ブラケット79との間には、前記部分モールド47が加硫済みゴムGから離型する際、その離型力を測定する測定手段としてのロードセル80が介装されている。そして、中間ケース60と上側ケース63との締結が解除された後、前記離型手段としての流体シリンダが作動してピストンロッド77が引っ込むと、該流体シリンダから上側ケース63、保持部材69を介して部分モールド47に離型方向の力が付与され、この結果、該部分モールド47が加硫済みゴムGから離型するが、この離型時における離型力を前述のロードセル80により測定する。なお、このとき、加硫済みゴムGは係止ロッド74が内部に挿入されていることで離型方向への抜け出しが阻止されている。
【0034】
このように測定手段としてロードセル80を用いるようにすれば、検出装置を構造簡単で安価とすることができる。なお、この発明においては、測定手段としてストレンゲージ式力センサ、磁歪式力センサ、圧電式力センサを用いるようにしてもよい。また、この発明においては、離型手段としてねじ機構、ラック・ピニオン機構等を用いるようにしてもよい。
【0035】
83は前記ロードセル80が測定した離型力が測定信号として入力されるCPU等の演算手段であり、この演算手段83の記憶部には前記セクターモールド35の型付け面の1周長を部分モールド47の周方向長Lで除した値Aが予め記憶されている。ここで、前述の値Aは、タイヤ加硫金型図面を用いてセクターモールド35の型付け面の1周長を求めるとともに、部分モールド47の金型図面を用いて、あるいは、製造された部分モールド47の型付け面50を実測して部分モールド47の周方向長Lを求めた後、セクターモールド35の型付け面の1周長を部分モールド47の周方向長Lで割り算することにより求ることができる。
【0036】
そして、前述したロードセル80からの離型力が演算手段83に入力されると、該演算手段83は前記値Aを記憶部から読み出し、該値Aと前記部分モールド47の離型力とを基に、ここでは前記離型力に値Aを乗じることで、加硫済タイヤTからセクターモールド35全体を離型させる際に必要となる全体離型力を求める。このようにセクターセグメント33の一部とほぼ同一形状の部分モールド47を含む部分金型71を用いて未加硫ゴムを加硫した後、加硫済ゴムGから離型力を測定しながら前記部分モールド47を離型し、その後、該離型力からセクターモールド35の離型力を求めるようにしたので、使用するモールドが小型となるとともに、これに付随する離型、測定手段も小型のものを用いればよく、この結果、装置全体を小型で安価とすることができる。
【0037】
しかも、1個の部分モールド47における離型力を測定するだけでよく、また、装置全体も前述のように小型で取り扱いが簡単となるため、セクターモールド35の離型力を検出する作業も容易となる。ここで、各セクターセグメント33は弧状を呈しているため、該セクターセグメント33を加硫済タイヤTから半径方向に移動させて離型させる際、セクターセグメント33の周方向中央部における型付け面34は離型方向(半径方向)に直交する方向とほぼ平行に延びているが、周方向中央から周方向に離れた周方向端部における型付け面34は離型方向に直交する方向に対して傾斜しながら延びている。
【0038】
この結果、このような周方向端部における型付け面34は離型方向(半径方向)に直交する方向に対して傾斜した状態で離型することになるが、前述の離型力測定時においては部分モールド47の型付け面50を離型方向に直交する方向に対し平行に配置したため、測定した離型力は実際の周方向端部における離型力と若干異なった値となり、この結果、前述のように演算により求めたセクターモールド35の全体離型力は実際の全体離型力と若干異なった値とならざるを得ない。
【0039】
このため、この実施形態においては、セクターセグメント33の周方向端部における離型力を測定する際、図5に示すように、等厚である保持部材69の代わりに下面が水平に対して傾斜した断面直角三角形の上傾斜部材85を用いるとともに、等厚である下部分モールド66の代わりに上面が前記上傾斜部材85の下面と平行となるよう傾斜した断面直角三角形の下傾斜部材86を用いるようにしたのである。なお、このとき、下傾斜部材86に代えることなく下部分モールド66をそのまま用いるようにしてもよい。
【0040】
このように部分金型71と離型手段(ピストンロッド77を有する流体シリンダ)との間に、部分モールド47の離型方向(ピストンロッド77の延在方向)に直交する方向に対して該部分モールド47の型付け面50を傾斜させる上傾斜部材85を介装すれば、セクターセグメント33の離型方向に対して傾斜している部位(周方向端部)における離型力を、同様に傾斜した部分モールド47により高精度で検出することができる。
【0041】
ここで、前述した直交方向に対する部分モールド47の傾斜角度は、セクターセグメント33の周方向中央における型付け面34に対する周方向の接線と、セクターセグメント33の周方向端部における型付け面34に対する周方向の接線との交差角と同一角度とすることが好ましい。それは、このようにすれば、セクターセグメント33の周方向中央から離れた傾斜部位における離型力の検出精度をより向上させることができるからである。
【0042】
次に、前記実施形態1の作用について説明する。
加硫後に加硫済タイヤTからセクターモールド35を離型させる際に必要な全体離型力を求める場合には、まず、図3に示す部分金型71の下部分モールド66上に加硫室72の容積と同体積の未加硫ゴムが供給した後、流体シリンダを作動して部分モールド47等を下側ケース58に向かって接近させ、部分モールド47を中間部分モールド67に、上側ケース63を中間ケース60にそれぞれ当接させる。次に、上側ケース63と中間ケース60とを互いに締結することで、加硫ケース73、部分金型71を共に閉止するが、このとき、未加硫ゴムは流動して加硫室72内に充満するとともに、該未加硫ゴムに部分モールド47の主骨54、横骨55が押し込まれ、該未加硫ゴムに主溝52、横溝53が成形される。
【0043】
この状態で部分金型71と加硫ケース73との間の収納室65に高温、高圧の加硫媒体を供給すると、前記未加硫ゴムは部分モールド47を含む部分金型71により型付けされながら加硫されて加硫済みゴムGとなる。このときの加硫済みゴムGは、加硫済タイヤTのトレッドゴムを周方向に多数に等分割した分割片の1個とほぼ同一形状となる。
【0044】
次に、流体シリンダを作動してピストンロッド77を引っ込ませ、部分モールド47に加硫済みゴムGから離隔する方向の力(離型力)を付与する。この結果、部分モールド47は加硫済みゴムGから離型するが、この離型時における離型力をロードセル80により測定し、該測定した離型力を測定信号として演算手段83に出力する。このとき、前記部分モールド47の型付け面50は離型方向に直交する方向に平行に延在しているため、セクターセグメント33の周方向中央部における離型力が測定される。
【0045】
一方、セクターセグメント33の周方向中央から離れた周方向端部における離型力を測定する場合には、図5に示すように、保持部材69を上傾斜部材85に交換するとともに、下部分モールド66を下傾斜部材86に交換した後、前述と同様に未加硫ゴムを供給して部分金型71により加硫を施し加硫済みゴムGとする。その後、流体シリンダを作動してピストンロッド77を引っ込ませ、部分モールド47に離型力を付与するとともに、離型時における離型力をロードセル80を用いて測定し、該測定した離型力を測定信号として演算手段83に出力する。このとき、部分モールド47の延在方向がセクターセグメント33の周方向端部における接線方向とほぼ平行であるので、セクターセグメント33の周方向端部における離型力が高精度で測定される。
【0046】
ここで、例えば、各セクターセグメント33を3個に等分割し、そのうちの1個の分割片から部分モールド47を形成した場合には、各セクターセグメント33の周方向中央部の離型力測定箇所の数はセクターセグメント33の数と同一のX、周方向端部の離型力測定箇所の数は前記数Xの2倍となるので、前記演算手段83は、図3の部分モールド47で測定した離型力にセクターセグメント33の数Xを乗じて、セクターセグメント33の周方向中央部における合計離型力を演算する一方、図5の部分モールド47で測定した離型力にセクターセグメント33の数Xの2倍を乗じて、セクターセグメント33の周方向両端部における合計離型力を演算し、その後、これら両合計離型力を合算してセクターモールド35全体の全体離型力を求める。
【0047】
このように加硫金型36を一式製作することなく、加硫前に予め加硫済タイヤTからセクターモールド35を離型させる際に必要な全体離型力を検出することができれば、該求めた離型力から事前に、既設のシリンダ24でセクターモールド35を加硫済タイヤTから離型させることができるか否か、あるいは、離型の際の難易度がどの程度で、離型による加硫済タイヤTへの負担がどの程度かを、簡単に知ることができ、タイヤ製造に極めて有用である。
【0048】
なお、このときには各セクターセグメント33を3分割しているので、前記数Xと、該数Xの2倍との合計が値Aとなるが、この値Aおよび前記測定した離型力を基に、加硫済タイヤTからセクターモールド35を離型させる際の全体離型力を求めることができる。このようにしてセクターモールド35の全体離型力を求めるにようにすれば、使用するモールドが小型となるとともに、これに付随する離型、測定手段も小型のものを用いればよいため、装置全体を小型で安価とすることができるとともに、1個の部分モールド47における離型力を測定するだけでよいため、装置全体も前述のように小型で取り扱いが簡単となり、セクターモールド35の離型力の検出作業が容易となる。なお、この発明においては、各セクターセグメントを4以上に等分割して部分モールドを形成し、該部分モールドを用いてセクターモールドの全体離型力を検出するようにしてもよい。
【実施例1】
【0049】
次に、試験例について説明する。この試験に当たってはトレッドパターンが異なった4種類の空気入りタイヤを試験タイヤ1〜4として設計したが、これら試験タイヤ1〜4は経験則に基づけば数値が大となるに従い離型力が大となるものである。次に、各試験タイヤの加硫時に使用するセクターセグメントの周方向一部を部分モールドとして製造し、図3に示すような部分金型を用いて未加硫ゴムを加硫した。その後、前記部分モールドを加硫済みゴムから離型させるとともに、その離型時における離型力を測定した。
【0050】
その結果を図6に示すが、経験則通り試験タイヤ1〜4の順序で離型力が大となっている。また、試験タイヤ1〜4の部分モールドを含む加硫金型を、図5に示すように配置して加硫済みゴムからの離型力もそれぞれ測定した。その後、これら離型力と予め求めている値Aを基に演算を行い、試験タイヤ1〜4からセクターモールドを離型する際に必要な全体離型力をそれぞれ求めた。その結果を図7に示すが、この図7から、設計時には離型力が大きくて加硫後の離型が困難かもしれないと考えていた試験タイヤ3、4においても、加硫装置がセクターモールドに付与することができる最大離型力(1202kN)より全体離型力が小さいことが確認できた。
【0051】
次に、試験タイヤ1〜4を加硫する際に用いる加硫金型を製作するとともに、これら加硫金型を用いて未加硫タイヤを加硫し、その後、加硫済タイヤからセクターモールドの離型を行ったが、前述の演算結果の通り、既設の加硫装置により問題なく、特に離型が困難かもしれないと考えていた試験タイヤ3、4においても問題なく、セクターモールドを加硫済タイヤから離型することができた。
【産業上の利用可能性】
【0052】
この発明は、加硫金型を構成するセクターモールドを加硫済タイヤから離型させる際に必要な離型力を検出する産業分野に適用できる。
【符号の説明】
【0053】
33…セクターセグメント 34…型付け面
34…セクターモールド 36…加硫金型
47…部分モールド 50…型付け面
57…ピッチ要素 71…部分金型
77…離型手段 80…測定手段
83…演算手段 85…傾斜部材
L…周方向長 M…周方向ピッチ
P…トレッドパターン T…加硫済タイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弧状のセクターセグメントを周方向に並べて配置することで構成したセクターモールドを有する加硫金型の前記セクターモールドを、加硫後に加硫済タイヤから離型させる際に必要な離型力を検出する離型力検出方法であって、型付け面形状が前記セクターセグメントの型付け面の周方向一部とほぼ同一形状である部分モールドを含む部分金型を用いて未加硫ゴムを加硫し加硫済みゴムとする工程と、加硫済みゴムから前記部分モールドを離型力を測定しながら離型させる工程と、前記セクターモールドの1周長を部分モールドの周方向長で除した値Aおよび前記測定した離型力を基に、加硫済タイヤからセクターモールドを離型させる際の離型力を求める工程とを備えたことを特徴とする加硫金型の離型力検出方法。
【請求項2】
弧状のセクターセグメントを周方向に並べて配置することで構成したセクターモールドを有する加硫金型の前記セクターモールドを、加硫後に加硫済タイヤから離型させる際に必要な離型力を検出する離型力検出装置であって、型付け面形状が前記セクターセグメントの型付け面の周方向一部とほぼ同一形状である部分モールドを含み、未加硫ゴムを加硫することで加硫済みゴムとする部分金型と、前記部分モールドを加硫済みゴムから離型させる離型手段と、前記部分モールドが加硫済みゴムから離型する際、その離型力を測定する測定手段と、前記セクターモールドの1周長を部分モールドの周方向長で除した値Aおよび前記測定した離型力を基に、加硫済タイヤからセクターモールドを離型させる際の離型力を求める演算手段とを備えたことを特徴とする加硫金型の離型力検出装置。
【請求項3】
前記加硫済タイヤのトレッドパターンがピッチ要素を周方向に繰り返し配置することで構成されているとき、部分モールドの周方向長を前記ピッチ要素の周方向ピッチの整数倍とした請求項2記載の加硫金型の離型力検出装置。
【請求項4】
前記部分モールドと離型手段との間に、部分モールドの離型方向に直交する方向に対して該部分モールドを傾斜させる傾斜部材を介装した請求項2または3記載の加硫金型の離型力検出装置。
【請求項5】
前記直交方向に対する部分モールドの傾斜角度を、セクターセグメントの周方向中央における接線と、セクターセグメントの周方向端部における接線との交差角と同一角度とした請求項4記載の加硫金型の離型力検出装置。
【請求項6】
前記測定手段としてロードセルを用いた請求項2〜5のいずれかに記載の加硫金型の離型力検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−6287(P2012−6287A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144779(P2010−144779)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】