説明

加速度センサ用補正装置

【課題】車両に搭載される加速度センサの出力値を正確に補正する補正装置を提供する。
【解決手段】車両20に加わる第1の加速度を測定する加速度センサ221と、車両に設置された位置検出手段220又は速度センサとに接続され、制御手段210と記憶手段222を備える加速度センサ用補正装置(ナビゲーション装置)200であって、制御手段210は、位置検出手段220又は速度センサからの出力をもとに第2の加速度を算出し、第1の加速度と第2の加速度とから求められる差分又は車両の傾き等のパラメータを記憶手段222に逐次記憶し、車両の累積走行距離が所定値に達した際に、記憶されたパラメータの平均値を算出し、この平均値を補正値として加速度センサ221を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設置された加速度センサの取り付け角度のずれに起因する誤差、又は経年変化に起因する出力の誤差を補正するための補正装置に関し、特に、加速度センサから求められる路面角の平均値に基づいて補正値を算出するものに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に車両に取り付けられる加速度センサは、車両が加速や減速などを行った際の加速度を出力するものであり、加速度センサの出力に基づき、車両に加わる重力、振動或いは動き、衝撃を検出することができる。
【0003】
車両が坂道等を走行すると車両が傾くが、その際に、加速度センサに加わる重力加速度の方向が変化するために、車両の傾きを検出することが可能である。また、車両に加わる特定の振動や衝撃を検出することによって車両に備え付けられている種々の機能、例えばエアバッグ等を動作させることが可能である。
【0004】
加速度センサを自動車の所定部分に取り付けた場合、この加速度センサの取り付け状態が時間の経過とともに若干変化したり、或いは加速度センサ自身の特性が変化したりする場合がある。そのために、加速度センサの出力値が時間の経過とともに偏移してしまう。
【0005】
そのために、従来、車両の停車時において加速度センサの出力値を検出し、その出力値がゼロになるように補正量を決定する装置が知られている。これは、車両が停車状態の時には、車両には前後左右方向の加速度が加わっていないので、車両に搭載される加速度センサにも当然にそれらの加速度が加わることがなく、出力値がゼロになるはずであるという原理に基づくものである。
【0006】
しかしながら、車両が停車している場合でも、路面は必ずしも水平ではなく、前後方向に傾斜していたり、左右に傾斜していたりする場合もある。このような場合に、加速度センサの出力値は当然にこうした傾斜の影響を受けて前後又は左右方向の加速度が反映されたものとなる。このようなときの出力値は、加速度センサの補正値として採用するのには不適切なものである。
【0007】
そこで、下記特許文献1(特開平7−301641号公報)は、車両の停車時における加速度センサの出力値が所定値以下である場合には、車両が平坦地で停車していると判断して加速度センサの零点補正を行い、所定値を超える出力値が出力されている場合には、車両が傾斜路に停車しているとみなして零点補正を行わない「車両用加速度センサ補正装置」を開示している。
【0008】
この「車両用加速度センサ補正装置」の発明においては、加速度センサの出力値を測定した場合に、その出力値が停車路面の傾斜に起因している場合を想定して出力値における傾斜角を演算し、その傾斜角が所定値より大きいか小さいかを判定する。そして傾斜角が小さいと判定された場合には、車両がほぼ平坦な路面に停車していると判断し、上述の出力値を補正量として記憶する。一方、出力値から計算される値が所定値よりも大きい場合は、その出力値を補正値として記憶することはしない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−301641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1に開示された「車両量加速度センサ補正装置」の発明では、出力値の値が所定値以下の場合は常に平坦地に停車しているとみなされてしまう。実際には、路面が水平な場合と、わずかに傾斜している場合とでは出力値が異なっているはずである。しかしながら、その両者の出力値が水平な路面に停車している状態とみなされて加速度センサの補正値として採用されてしまう。そのため、上記特許文献1の補正装置では、正確な補正値を得ることはできなかった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、車両に搭載される加速度センサの出力値を正確に補正する補正装置を提供することにある。
【0012】
また、本発明の更なる目的は、車両が水平な路面、傾斜した路面に位置しているかということに関わりなく、また、車両が走行中か停車中かということに関わりなく車両に搭載される加速度センサの正確な補正値を得る補正装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本願の請求項1に係る加速度センサ用補正装置の発明は、車両に加わる第1の加速度を測定する加速度センサおよび前記車両に設置された位置検出手段又は速度センサに接続される加速度センサ用補正装置であって、前記加速度センサ用補正装置は、制御手段と、記憶手段と、を備え、前記制御手段は、前記位置検出手段又は速度センサからの出力をもとに第2の加速度を算出し、前記第1の加速度と前記第2の加速度とから求められるパラメータを前記記憶手段に逐次記憶し、前記車両の累積走行履歴が所定値に達した際に、前記記憶されたパラメータに基づき補正値を算出し、該補正値を用いて前記加速度センサを補正することを特徴とする。
【0014】
また、本願の請求項2に係る発明は、請求項1に係る加速度センサ用補正装置において、前記パラメータが、前記第1の加速度と前記第2の加速度との差分であることを特徴とする。
【0015】
また、本願の請求項3に係る発明は、請求項2に係る加速度センサ用補正装置において、前記制御手段は、前記パラメータの平均値を前記補正値として算出することを特徴とする。
【0016】
また、本願の請求項4に係る発明は、請求項1に係る加速度センサ用補正装置において、前記パラメータが、前記第1の加速度と前記第2の加速度との差分から求められる前記車両の傾きであることを特徴とする。
【0017】
また、本願の請求項5に係る発明は、請求項4に係る加速度センサ用補正装置において、前記制御手段は、前記第1の加速度と前記第2の加速度との差分から逆正弦を求めることによって前記車両の傾きを算出することを特徴とする。
【0018】
また、本願の請求項6に係る発明は、請求項4又は請求項5に係る加速度センサ用補正装置において、前記制御手段は、前記算出した車両の傾きの平均値を算出し、該算出した車両の傾きの平均値から正弦を求めることによって前記補正値を算出することを特徴とする。
【0019】
また、本願の請求項7に係る発明は、請求項1〜6の何れか1項に係る加速度センサ用補正装置において、前記制御手段は、前記位置検出手段又は速度センサからの出力をもとに前記車両の速度が所定速度以上であることを検出した際の前記第1の加速度と前記第2の加速度とから前記パラメータを算出することを特徴とする。
【0020】
また、本願の請求項8に係る発明は、請求項1〜7の何れか1項に係る加速度センサ用補正装置において、前記累積走行履歴は、累積走行距離、累積走行時間、累積パラメータ数のうち何れか1つ以上を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
上記の構成により、本発明は下記に示すような優れた効果を奏する。すなわち、請求項1に係る加速度センサ用補正装置の発明によれば、車両に加わる第1の加速度を測定する加速度センサおよび前記車両に設置された位置検出手段又は速度センサに接続される加速度センサ用補正装置であって、前記加速度センサ用補正装置は、制御手段と、記憶手段と、を備え、前記制御手段は、前記位置検出手段又は速度センサからの出力をもとに第2の加速度を算出し、前記第1の加速度と前記第2の加速度とから求められるパラメータを前記記憶手段に逐次記憶し、前記車両の累積走行履歴が所定値に達した際に、前記記憶されたパラメータに基づき補正値を算出し、該補正値を用いて前記加速度センサを補正する。これにより、車両が水平な路面、傾斜した路面に位置しているかどうかに関わりなく、また、車両が走行中か停車中かということに関わりなく、車両に搭載される加速度センサの補正値を得ることが可能となる。
【0022】
また、請求項2に係る発明によれば、請求項1に係る加速度センサ用補正装置において、前記パラメータは、前記第1の加速度と前記第2の加速度との差分である。これにより、補正値を求める根拠となるパラメータの算出を容易に行なうことが可能となる。
【0023】
また、請求項3に係る発明によれば、請求項2に係る加速度センサ用補正装置において、前記制御手段は、前記パラメータの平均値を前記補正値として算出することを特徴とする。これにより、補正値を求めることができ、この補正値を用いることで加速度センサを補正することが可能となる。
【0024】
また、請求項4に係る発明によれば、請求項1に係る加速度センサ用補正装置において、前記パラメータが、前記第1の加速度と前記第2の加速度との差分から求められる前記車両の傾きである。これにより、補正値を求める根拠となるパラメータを角度の値で求めることができる。
【0025】
また、請求項5に係る発明によれば、請求項4に係る加速度センサ用補正装置において、前記制御手段は、前記第1の加速度と前記第2の加速度との差分から逆正弦を求めることによって前記車両の傾きを算出する。これにより、車両の傾きを正確に求めることができる。
【0026】
また、請求項6に係る発明によれば、請求項4又は請求項5に係る加速度センサ用補正装置において、前記制御手段は、前記算出した車両の傾きの平均値を算出し、該算出した車両の傾きの平均値から正弦を求めることによって前記補正値を算出する。これにより、補正値を求めることができ、この補正値を用いることで加速度センサを補正することが可能となる。
【0027】
また、請求項7に係る発明によれば、請求項1〜6の何れかに係る加速度センサ用補正装置において、前記制御手段は、前記位置検出手段又は速度センサからの出力をもとに前記車両の速度が所定速度以上であることを検出した際の前記第1の加速度と前記第2の加速度とから前記パラメータを算出する。これは、車両の速度が遅いと位置検出手段や加速度センサ等の出力の誤差が大きくなるため、所定速度以上の際の第1の加速度と第2の加速度とからパラメータを算出することで、正確なパラメータを得ることが可能となる。
【0028】
また、請求項8に係る発明によれば、請求項1〜7の何れかに係る加速度センサ用補正装置において、前記累積走行履歴は、累積走行距離、累積走行時間、累積パラメータ数のうち何れか1つ以上を含む。これにより、累積走行距離などの累積走行履歴が所定値に達した場合、加速度センサを補正することが可能となる。これは、累積走行距離などの累積走行履歴が大きくなれば、前記記憶されたパラメータの合計及び平均値はゼロに収束することを応用したものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、加速度センサの補正原理の説明図である。
【図2】図2は、本実施例に係るナビゲーション装置の内部ブロック図である。
【図3】図3は、ナビゲーション装置200における加速度センサの補正値決定を示す動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本願発明を実施するための最良の形態を実施例と共に図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための加速度センサ用補正装置としてナビゲーション装置を例示して説明するものであって、本発明をこのナビゲーション装置に特定することを意図するものではなく特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなくその他の加速度センサ用補正装置にも等しく適用し得るものである。
【実施例】
【0031】
まず、図1を参照して本発明の加速度センサ用補正装置の原理について説明する。なお、図1は、加速度センサの補正原理の説明図である。図1Aは、水平な路面10A上に加速度センサ30を搭載した車両20が停車している状態を示している。ここで、簡単のため、加速度センサ30は車両20の走行方向のみの加速度を出力するものとして考え、車両20の走行方向に対して垂直な方向成分は出力されないものとする。車両20は停車しているから、加速度センサ30はいかなる加速度も検出しない。そして重力加速度gは、車両20の走行方向に対して垂直な方向成分であるから無視される。
【0032】
図1Bは、水平な路面10A上で、同じ車両20が加速度a0で加速しながら走行している状態を示している。このとき加速度センサ30は、a0の加速度を検出している。図1Aと同様に、重力加速度gは、車両20の走行方向に対する垂直な方向成分であるからから無視される。
【0033】
次に図1Cを参照する。図1Cは、水平方向対してθ度で傾斜している傾斜路10B上に、同じ車両20が停車している状態を示している。このとき、車両20が傾斜路10Bに沿って傾くので、車両20に搭載されている加速度センサ30も水平方向からθ度だけ傾く。すると、水平な路面10A上では無視されていた重力加速度gの、車両20の走行方向成分が加速度センサ30において検出されることになる。つまり、加速度センサ30に加わっている重力加速度gは、車両20の走行方向成分であるg・sinθと車両20の走行方向に対する垂直方向成分であるg・cosθとに分解することができるが、このうち、車両20の走行方向に対する垂直方向成分は出力されないので無視されるため、加速度センサ30で検出される加速度a0はg・sinθに相当する。
【0034】
さらに、図1Dを参照する。図1Dは、水平方向に対してθ度で傾斜している傾斜路10B上を同じ車両20が加速度aでX方向に加速しながら走行している状態を示している。なお、ここでX方向とは、傾斜路10Bに対して平行な方向のことをいう。このときの加速度aは、傾斜路10Bの路面方向、つまり、X方向のものであり、この方向は車両20の走行方向と一致する。このときに加速度センサ30において検出される加速度a0は、自動車20の走行加速度aと、加速度センサ30に加わっている重力加速度の路面方向成分との和であり、次の式(1)で表される。
【0035】
0=a+g・sinθ ・・・(1)
式(1)から次の関係が導かれる。
【0036】
θ=sin-1((a0−a)/g) ・・・(2)
式(2)によれば、傾斜路10Bの傾斜角θは、加速度センサ30の出力と、自動車の走行加速度から求められることが分かる。自動車の走行加速度は、式(3)から求められる。
【0037】
a=dV/dt=d2X/dt2 ・・・(3)
ここで、Vは自動車の走行速度、Xは自動車の変位
従って、自動車10に搭載された速度センサの出力値を微分することによって走行加速度を算出することができる。又は、走行加速度は、自動車10に搭載されたGPS受信機においてGPS衛星からの信号を受信し、その測定結果に基づいて算出される現在位置の変位を2階微分することによって得ることができる。
【0038】
ここで、自動車の走行に伴って路面角を定期的に蓄積していき、その総和をとると、自動車の走行距離が長くなればなるほど0に収束するはずである。しかしながら、実際には、加速度センサ30の取り付け角度のずれに起因する誤差、また、加速度センサ30の経年変化に起因する出力の誤差によって路面角は0度に収束されない場合がある。この、走行距離が長くなった際に生じる路面角の、0度からの偏移を、加速度センサ30の補正値とし、それ以降に測定される加速度センサの出力値を適切に補正することが可能となる。
【0039】
上述した加速度センサの補正の原理をナビゲーション装置200に適用した実施例を下記に説明する。なお、以下の説明では、図1で説明したのと同じように、自動車に加わる加速度、つまり加速度センサで検出される加速度をa0とし、自動車の位置の変位から求められる走行加速度をaとする。図2は、本実施例に係るナビゲーション装置200の内部ブロック図を示す。ナビゲーション装置200は、具体的には自動車に搭載されるカーナビゲーション装置であって、制御手段210、GPS受信機220、加速度センサ221、記憶手段222、地図記憶手段223、表示手段224、入力手段225、音声出力手段226を備えて構成される。
【0040】
制御手段210は、ナビゲーション装置200の各部の動作を制御・統括するためのもので、CPU、RAM、ROM等を含むプロセッサから構成され、ROMに記憶された制御プログラムを実行することによって各部の動作を制御・統括する。また、制御手段210は、さらに、機能ブロックとして速度・距離算出判定手段211、加速度算出手段212、路面角算出手段213、経路探索手段214、経路案内手段215を備えて構成される。
【0041】
GPS受信機220は、GPS衛星からの信号を受信し、現在位置を算出するものである。GPS受信機220は所定時間間隔、例えば1秒間隔で現在位置を検出する。算出された現在位置は、後述する記憶手段222に一時的に記憶される。
【0042】
加速度センサ221は、このナビゲーション装置200が取り付けられた自動車に加わる加速度a0を検出する。加速度センサ221は、例えば3軸式の加速度センサで、車両の走行方向に対する加速度だけではなく、走行方向に対する垂直方向成分をも検出することができるものである。そして、自動車に加わる加速度を検出することにより、例えば、トンネルやビル街など、遮蔽物がありGPS衛星からの信号が受信できない場合であっても、検出した加速度を用いることで自動車の現在位置を検出することが可能である。なお、加速度センサ221において検出される加速度は、特許請求の範囲における「第1の加速度」に対応する。
【0043】
記憶手段222は、RAM、ROM又はハードディスクドライブ等で構成され、GPS受信機220で算出された現在位置、後述する現在位置の変位から算出される速度、走行加速度、路面角等を記憶するものである。
【0044】
地図記憶手段223は、各道路の交差点及び分岐点等の結節点をノードとしてデータ化した道路ノードデータ、それぞれのノード間を結ぶ経路をリンクとしてデータ化した道路リンクデータを含む道路データを記憶している。道路ノードデータには、ノード番号、位置座標、接続リンク本数、交差点名称等が含まれ、道路リンクデータには起点及び終点となるノード番号、道路種別、リンクコスト、橋やトンネル等のリンク属性等が含まれる。地図記憶手段223にはさらに、海岸線、湖沼、河川形状、行政境界、施設等の背景データが記憶されている。
【0045】
表示手段224は、液晶表示パネル等で構成され、地図画像や最適経路画像を表示してユーザが視認できるようにするためのマンマシンインターフェースとしての役割を担うものである。
【0046】
入力手段225は、キー、操作ボタン、スイッチ等で構成され、ユーザが表示手段224に表示された選択メニューを視認しながら出発地、目的地及び他の条件等を入力するために用いられる。表示手段224と入力手段225をタッチパネル式液晶表示ユニットで構成してもよい。
【0047】
音声出力手段226は、スピーカを有し、誘導経路において、交差点等の案内地点の手前の所定地点に車両が到達すると、交差点の名称や交差点までの距離とともに車両の走行方向を音声出力するものである。音声出力手段226は、また、ナビゲーション装置200の操作案内や各種の警告・報知を音声により出力する場合にも用いられる。
【0048】
制御手段210の速度・距離算出判定手段211は、GPS受信機220によって算出され、記憶手段222に記憶された現在位置に基づき速度を算出する。GPS受信機220による現在位置の算出は、例えば、1秒毎に行われ、速度・距離算出判定手段211は、
現在位置の算出が行われる度に、前回算出された現在位置から今回算出された現在位置までの変位を算出し、この変位を時間微分することによって速度を得ることができる。また、速度・距離算出判定手段211は、算出した変位を記憶手段222に記憶してゆくことにより、累積走行距離を算出する。なお、ここで速度をGPS受信機220により算出された現在位置に基づいて算出する方法について述べたが、GPS受信機220に代えて、ナビゲーション装置200に速度センサを設け、速度センサの出力値を用いてもよい。また、累積走行距離は、算出した速度を積分して記憶手段222に記憶してゆくことにより算出することも可能である。
【0049】
加速度算出手段212は、上記の速度・距離算出判定手段211において算出された速度の値をさらに時間微分することによって自動車の走行加速度aを得る。算出された走行加速度は、記憶手段222に記憶される。ここで、走行加速度とは、自動車の移動方向だけを考慮した場合における加速度のことで、特許請求の範囲における「第2の加速度」に対応する。
【0050】
路面角算出手段213は、速度・距離算出判定手段211によって算出された走行加速度と、加速度センサ221によって出力された加速度の値を基に、路面角を上記の式(2)から求める。算出した路面角は、記憶手段222に記憶される。
【0051】
経路探索手段214は、ユーザが入力手段225を操作することによって、特定された出発地点又は現在位置から目的地点に至る経路を、地図記憶手段223に記憶されている道路データから探索し、リンクコストが最短となる経路を最適経路として特定し、最適経路に関係する道路データを記憶手段222に記憶する。
【0052】
経路案内手段215は、記憶手段222に記憶された最適経路に関する道路データに基づいて経路案内画面を作成して表示手段224に表示したり、最適経路に関する道路データに従いながら、GPS受信機220によって現在位置を受信しながら自動車の走行を監視し、適切な位置で音声出力手段226を用いて案内ガイダンス等を報知したりする。
【0053】
次に、図3を参照して、上述したナビゲーション装置200における加速度センサの補正値の決定の動作の流れについて説明する。図3は、ナビゲーション装置200における加速度センサの補正値の決定を示す動作フローチャートである。
【0054】
図3のステップS301において、自動車に搭載された加速度センサ221において、自動車に加わっている加速度a0を測定し、その値を記憶手段222に記憶する。なお、自動車が停車している際の加速度を予め測定して記憶し、このときに記憶した加速度を、ナビゲーション装置200又は加速度センサ221の取り付け角による重力加速度成分として加速度a0から差し引いてもよい。
【0055】
続くステップS302において、GPS受信機220によってGPS衛星からの信号を受信し、それらの信号に基づいて現在位置を算出し、記憶手段222に一時的に記憶する。この現在位置の算出は、例えば、1秒毎に行う。そして、現在位置の算出を行なう度に、速度・距離算出判定手段211が前回算出された現在位置からの変位を算出し、続くステップS303において自動車の速度を算出し、記憶手段222に記憶する。また、毎回算出ごとの変位は累積して記憶手段222に記憶することによって累積走行距離を得ることができる。
【0056】
ステップS304において、速度・距離算出判定手段211は自動車の速度が所定速度以上、例えば、時速20km以上(秒速5.56m以上)であるか否かを判定する。時速20km未満である場合にはステップS301の処理に戻って上記の処理を繰り返し行う。自動車の速度が時速20km以上であると判定された場合には、続くステップS305の処理に進む。なお、自動車の速度が時速20km以上とする理由は、速度が時速20km以下と遅い場合、移動距離が短くなり、GPS受信機220にて検出される現在位置の精度が低くなってしまうためである。
【0057】
ステップS305において、加速度算出手段212は、記憶手段222に記憶されている自動車の速度の変化を基に自動車の走行加速度aを算出する。つまり、記憶手段222に記憶されている今回算出された速度と、前回算出された速度との変化量を求めることによって自動車の走行加速度が求められる。算出された走行加速度は記憶手段222に記憶される。
【0058】
ステップS306において、路面角算出手段213は加速度センサ221によって測定された自動車に加わっている加速度a0と、GPSの測位に基づいて算出された自動車の走行加速度aとの差を算出し、続くステップS307において、それらの逆正弦を求め、路面角θを算出する。路面角θは、上式(2)により求められる。
【0059】
ステップS308において、得られた路面角θは、記憶手段222に記憶される。
【0060】
続くステップS309において、速度・距離算出判定手段211は、記憶手段222に記憶された累積走行距離を参照し、前回の補正値算出時から所定距離だけ走行したか否かを判定する。所定距離は、例えば、1000km又は2000kmといった比較的長い距離が設定される。これだけの長い距離を走行した場合、加速度センサ221に誤差がないと仮定したとすると、記憶された路面角の合計及び平均値はゼロに収束するはずであり、加速度センサ221の補正値の算出に好都合である。
【0061】
なお、上記には累積走行距離が所定距離に到達したか否かを判定することについて述べたが、上記に限られず、記憶手段222に記憶された累積路面角のデータ数が所定数に達したか否かを判定するようにしてもよい。例えば、累積路面角のデータ数を360000個として設定してもよい。この場合、1秒毎に路面角のデータが蓄積されていくので、時速20km以上で100時間走行したことになるから、累積走行距離は少なくとも2000kmとなる。また、累積走行距離、累積路面角のデータ数以外にも、累積走行時間が所定時間に達したか否かを判定してもよく、累積走行時間は、ナビゲーション装置200に電源が入っている時間でも良いし、累積路面角のデータ数と同様に、時速20km以上と検出したときの時間のみを記憶し、その累積走行時間で判定しても良い。
【0062】
ステップS309において、累積走行距離が所定距離に到達していないと判定された場合、ステップS301の処理に戻り、上記のステップS301〜ステップS309までの処理を繰り返し行なう。
【0063】
ステップS309において、累積走行距離が所定距離に到達したと判定された場合、ステップS310の処理に進み、路面角算出手段213が路面角の平均値を算出する。これは路面角の合計値を、記憶手段222に蓄積された路面角のデータ数で割ることによって得られる。
【0064】
次いでステップS311において算出した路面角の平均値から加速度を算出する。加速度は、次の式(4)で表される。
【0065】
1=g・sinθ1 ・・・(4)
ここで、θ1は、路面角の平均値である。
【0066】
ここで求められる加速度a1は、自動車が水平な路面を走行しているときに検出される加速度の誤差に相当し、本実施例において求めようとしている加速度センサの補正値に相当する。ステップS312において、算出された加速度を加速度センサ221の補正値として記憶手段222に記憶して以降の処理に反映させる、又は加速度センサ221の出力に直接反映させる。例えば、加速度センサ221の出力に算出した加速度a1を加算することで、補正値を反映させる。
【0067】
上記説明したように、実施例のナビゲーション装置によれば、加速度センサにおいて検出される第1の加速度と、GPS受信機等によって検出される現在位置の変位又は速度センサによって検出される速度の変化から算出される第2の加速度とから求められるパラメータを逐次記憶してゆき、車両の累積走行距離が所定値に達した際に、このパラメータの平均値を算出して加速度センサの補正値を求めることができる。これらは第1の加速度と第2の加速度とから求められる差分パラメータを累積してゆくと、車両の走行距離が長くなればなるほどそれらはゼロに収束することを応用したものである。これにより、車両が水平な路面、傾斜した路面に位置しているかどうかに関わりなく、また、車両が走行中か停車中かということに関わりなく、車両に搭載される加速度センサの補正値を得ることが可能となる。
【0068】
なお、上記実施例では、算出した路面角の平均値から得られる加速度を加速度センサの補正値としたが、これに限ることはなく、例えば、路面角を算出せずとも、加速度センサによって測定された自動車に加わっている加速度a0と、GPSの測位に基づいて算出された自動車の走行加速度aとの差の平均値を加速度センサの補正値としても同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0069】
20 車両
200 ナビゲーション装置
210 制御手段
211 速度・距離算出判定手段
212 加速度算出手段
213 路面角算出手段
214 経路探索手段
215 経路案内手段
220 GPS受信機
221 加速度センサ
222 記憶手段
223 地図記憶手段
224 表示手段
225 入力手段
226 音声出力手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に加わる第1の加速度を測定する加速度センサおよび前記車両に設置された位置検出手段又は速度センサに接続される加速度センサ用補正装置であって、
前記加速度センサ用補正装置は、制御手段と、記憶手段と、を備え、
前記制御手段は、前記位置検出手段又は速度センサからの出力をもとに第2の加速度を算出し、前記第1の加速度と前記第2の加速度とから求められるパラメータを前記記憶手段に逐次記憶し、前記車両の累積走行履歴が所定値に達した際に、前記記憶されたパラメータに基づき補正値を算出し、該補正値を用いて前記加速度センサを補正することを特徴とする加速度センサ用補正装置。
【請求項2】
前記パラメータが、前記第1の加速度と前記第2の加速度との差分であることを特徴とする請求項1に記載の加速度センサ用補正装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記パラメータの平均値を前記補正値として算出することを特徴とする請求項2に記載の加速度センサ用補正装置。
【請求項4】
前記パラメータが、前記第1の加速度と前記第2の加速度との差分から求められる前記車両の傾きであることを特徴とする請求項1に記載の加速度センサ用補正装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記第1の加速度と前記第2の加速度との差分から逆正弦を求めることによって前記車両の傾きを算出することを特徴とする請求項4に記載の加速度センサ用補正装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記算出した車両の傾きの平均値を算出し、該算出した車両の傾きの平均値から正弦を求めることによって前記補正値を算出することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の加速度センサ用補正装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記位置検出手段又は速度センサからの出力をもとに前記車両の速度が所定速度以上であることを検出した際の前記第1の加速度と前記第2の加速度とから前記パラメータを算出することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の加速度センサ用補正装置。
【請求項8】
前記累積走行履歴は、累積走行距離、累積走行時間、累積パラメータ数のうち何れか1つ以上を含むことを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の加速度センサ用補正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−58967(P2011−58967A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209267(P2009−209267)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】