説明

劣化検知システム及び劣化検知方法

【課題】路側機の通信性能の劣化を検知することができ、故障して通信不能となる前にメンテナンスを可能とさせる劣化検知システムを提供する。
【解決手段】車載機2から発せられる自己の所在位置についての位置情報を含む無線信号を路側機1は受信可能であり、この路側機1の通信性能が劣化しているか否かを検知する劣化検知システムである。路側機1が受信した位置情報に基づいて、路側機1が無線信号を受信することのできる受信エリアAを検出するエリア検出部15と、検出された受信エリアAの経時的変化を判定し、当該受信エリアAが狭くなっている場合に路側機1の通信性能が劣化していると推定する劣化推定部17とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路側通信装置の通信性能の劣化を検知する劣化検知システム及び劣化検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通安全の促進や交通事故の防止を目的として、道路に設置されたインフラ装置からの情報を受信し、この情報を活用することで車両の安全性を向上させる高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport System)が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
この交通システムは、主に、インフラ側の通信装置としての複数の路側通信装置と、各車両に搭載される通信装置である車載通信装置(移動端末)とによって実現される。通信の組み合わせとしては、路側通信装置同士での路路間通信と、路側通信装置と車載通信装置とによる路車(または車路)間通信と、車載通信装置同士での車車間通信とがある。
【0003】
【特許文献1】特許第2806801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
路側通信装置は、例えば道路の各交差点に設置されていて、ある交差点に設置された路側通信装置から送信された情報を、近隣または同一の交差点に設置された他の路側通信装置が受信することができる。このような路路間通信が行われるとともに、路側通信装置と、その周囲を走行している車両の車載通信装置との間で路車間通信が行われることにより、車載通信装置に、例えば交差点の死角になっている部分の情報を予め通知することが可能となり、交差点における交通事故を未然に防止することができる。
【0005】
しかし、路側通信装置は屋外である例えば交差点に設置されており、また、長期間にわたって使用されていると、路側通信装置が備えているアナログ回路やアンプ等が劣化し、周波数が変動したり、通信エリアが減少したり、通信マージンが減少したりする。
このまま路側通信装置が放置されていると、通信性能の劣化が進行し、やがて他の通信装置との間で無線通信ができなくなる(故障する)。この場合、故障した路側通信装置と通信相手となっている他の通信装置において、受信エラーが多く発生することとなるが、例えば、その受信エラーの発生率が、予め定められた閾値よりも大きくなることを、当該他の通信装置が検出することで、前記路側通信装置が故障したことを検知することができる。
【0006】
しかし、路側通信装置が故障して通信不能になったことを検知してから、修理や交換をする場合では、その路側通信装置の運用が長期間にわたって停止されてしまうおそれがある。
そこで、本発明は、路側通信装置の通信性能の劣化を検知することができ、路側通信装置が故障して通信不能となる前に、路側通信装置のメンテナンスを可能とさせる劣化検知システム及び劣化検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は、移動通信装置から発せられる自己の所在位置についての位置情報を含む無線信号を受信可能な路側通信装置の通信性能が劣化しているか否かを検知する劣化検知システムであって、前記路側通信装置が受信した位置情報に基づいて、前記路側通信装置が無線信号を受信することのできる受信エリアを検出するエリア検出部と、検出された前記受信エリアの経時的変化を判定し、当該受信エリアが狭くなっている場合に前記路側通信装置の通信性能が劣化していると推定する劣化推定部とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、路側通信装置が受信した移動通信装置からの無線信号に含まれている位置情報に基づけば、その無線信号は、どの位置から発信されたかが解るため、エリア検出部は、路側通信装置が無線信号を受信することのできる受信エリアを検出する。そして、劣化推定部が、前記受信エリアの変化を判定し、当該受信エリアが狭くなっている場合に路側通信装置の通信性能が劣化していると推定するように構成することで、劣化が推定された路側通信装置が故障して通信不能となる前に、路側通信装置のメンテナンス等が可能となり、路側通信装置の故障の予防が可能となる。
【0009】
(2)また、前記移動通信装置が発信した無線信号の前記路側通信装置における受信品質を検出する受信検出部を、更に備え、前記エリア検出部は、検出された前記受信品質と、当該受信品質が検出された無線信号に含まれている位置情報とに基づいて、当該受信品質が基準を超えている無線信号が発信された位置を含む領域を、前記受信エリアとして求めるのが好ましい。
このように、受信検出部が、移動通信装置が発信した無線信号の路側通信機における受信品質を検出し、エリア検出部が、前記受信品質が基準(閾値)を超えている無線信号が発信された位置を含む領域を、前記受信エリアとして求めることで、受信エリアの特定が可能である。
なお、前記受信品質とは、受信した無線信号の質の指標を意味し、例えば、受信レベル、C/N比、D/U比、受信エラー率等がある。
【0010】
(3)また、本発明は、移動通信装置から発せられる自己の所在位置についての位置情報を含む無線信号を受信可能な路側通信装置の通信性能が劣化しているか否かを検知する劣化検知システムであって、前記移動通信装置が発信した無線信号の前記路側通信装置における受信品質を検出する受信検出部と、前記受信品質が検出された無線信号に含まれている位置情報が示す前記所在位置を求める位置取得部と、検出された前記受信品質と、求められた前記所在位置とに基づいて、当該所在位置から発信された無線信号の受信品質の経時的変化を判定し、当該受信品質が低下している場合に前記路側通信装置の通信性能が劣化していると推定する劣化推定部とを備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、受信検出部が検出した路側通信装置における受信品質と、位置取得部が求めた移動通信装置の所在位置とに基づいて、劣化推定部が、当該所在位置から発信された無線信号の前記受信品質について過去からの変化を判定し、当該受信品質が低下している場合に路側通信装置の通信性能が劣化していると推定するように構成することで、劣化が推定された路側通信装置が故障して通信不能となる前に、路側通信装置のメンテナンス等が可能となり、路側通信装置の故障の予防が可能となる。
【0012】
(4)また、前記各劣化検知システムにおいて、前記移動通信装置が発信した無線信号は、前記移動通信装置同士が直接的に行う移動体通信のための信号であり、前記路側通信装置は、前記移動体通信のための情報を傍受可能な構成とすることができる。
この場合、移動通信装置同士が直接的に移動体通信を行っている場合であっても、つまり、移動通信装置が路側通信装置と通信するために路側通信装置向けの情報を送信していなくても、移動通信装置から発信された移動体通信のための情報を、路側通信装置が傍受すれば、当該路側通信装置の通信性能の劣化を推定する処理を実行することができる。
なお「移動通信装置同士が直接的に行う移動体通信」とは、移動通信装置間での情報の送受信に路側通信装置が介在しておらず、一つの移動通信装置から送信された情報を他の移動通信装置が直接受信することによって行われる無線通信を意味する。
【0013】
(5)また、本発明は、移動通信装置から発せられた自己の所在位置についての位置情報を含む無線信号を、路側通信装置が受信し、前記路側通信装置が受信した位置情報に基づいて、前記路側通信装置が無線信号を受信することのできる受信エリアを検出し、検出された前記受信エリアの経時的変化を判定し、当該受信エリアが狭くなっている場合に前記路側通信装置の通信性能が劣化していると推定することを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、路側通信装置が受信した移動通信装置からの無線信号に含まれている位置情報に基づけば、どの位置から発信された無線信号であるかが解るため、路側通信装置が無線信号を受信することのできる受信エリアを検出し、前記受信エリアの変化を判定し、当該受信エリアが狭くなっている場合に路側通信装置の通信性能が劣化していると推定することで、劣化が推定された路側通信装置が故障して通信不能となる前に、路側通信装置のメンテナンス等が可能となり、路側通信装置の故障の予防が可能となる。
【0015】
(6)また、本発明は、移動通信装置から発せられた自己の所在位置についての位置情報を含む無線信号を、路側通信装置が受信し、前記移動通信装置が発信した無線信号の前記路側通信装置における受信品質を検出し、前記受信品質を検出した無線信号に含まれている位置情報が示す前記所在位置を求め、検出された前記受信品質と、求められた前記所在位置とに基づいて、当該所在位置から発信された無線信号の受信品質の経時的変化を検出し、当該受信品質が低下している場合に前記路側通信装置の通信性能が劣化していると推定することを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、路側通信装置における無線信号の受信品質と、当該無線信号に含まれている位置情報が示す移動通信装置の所在位置とに基づいて、当該所在位置から発信された無線信号の受信品質について過去からの変化を検出し、当該受信品質が低下している場合に路側通信装置の通信性能が劣化していると推定することで、劣化が推定された路側通信装置が故障して通信不能となる前に、路側通信装置のメンテナンス等が可能となり、路側通信装置の故障の予防が可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、通信性能の劣化が推定された路側通信装置が故障して通信不能となる前に、その路側通信装置のメンテナンスが可能となるので、路側通信装置の故障の予防が可能となる。路側通信装置が故障して通信不能となってからでは、その路側通信装置の運用が長期間にわたって停止されてしまうおそれがあるが、本発明によれば、このような長期間の運用の停止を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔通信システム〕
図1は、通信システムが設けられている道路の模式図であり、図2は図1の一部(二点鎖線で囲まれた部分)を拡大して説明している説明図である。
通信システムは、複数の路側通信装置(以下、「路側機」という)1を有している。図1では路側機1として、路側機1A〜1Iが示されている。また、通信システムは、複数の正規の路側機1を統括する交通管制センターの中央制御装置4を有している。これら路側機1は、交通管制センターの中央制御装置4と接続されていて、中央制御装置4と各路側機1との間は有線または無線で通信可能である。
【0019】
路側機1は、交差点(交差点の近傍を含む)Jに設置されていて、車両5(図2参照)に搭載された車載通信装置(以下、「車載機」という)2との間で通信が可能である。この路側機1と車載器2との間の通信を「路車間通信」というものとする。
また、各車載機2は、路側機1との通信の他、他の車載機2との間の通信も可能であり、車載機2同士で情報を交換することが可能である。この車載機2同士の通信を「車車間通信」というものとする。
さらに、路側機1(例えば路側機1A)は、他の路側機(路側機1B,1C,1D,1E)との間の通信も可能であり、路側機1同士で情報を交換することが可能である。この路側機1同士の通信を「路路間通信」というものとする。
なお、通信システムが使用する周波数は、例えば720MHz帯であり、特に路路間通信では2.4GHzや5GHz帯がある。
【0020】
本実施形態では、道路構造の例として、南北方向の複数の道路と、東西方向の複数の道路が交差した碁盤目構造を想定する。したがって、一つの交差点Jには、東西南北の4方位から4本の道路RE,RW,RN,RSが流入するように接続されている。
図2において、各交差点Jには、4本の各道路RE,RW,RN,RS用に4つ(複数)の交通信号灯器20a,20b,20c,20dが設置されている。
また、各交差点の角には、ビル等の障害物がある。なお、道路構造は、上記に限定されるものではない。
【0021】
図3のブロック図に示しているように、各路側機1は、通信装置本体10と、この通信装置本体10に接続されたアンテナ11とを有している。アンテナ11は、前記交通信号灯器20a,20b,20c,20dにそれぞれ設置されている(アンテナ11a,11b,11c,11d)。通信装置本体10が、通信システムを統括している前記交通管制センターの中央制御装置4と通信可能となっている。通信装置本体10は、無線部(送受信部)12と、通信に関する制御を行う制御部13とを有している。制御部13は、CPUを有するマイコンなどからなり、記憶しているプログラムによって各種処理を実行することができる。
【0022】
また、路側機1は、時分割多重方式によって通信を行うことができ、このために、制御部13は時分割スロットの管理を行う。なお、このスロットの管理は、無線部12が行っても良い。
路側機1は、車載機2に対して同報通信(1対多通信)が可能であり、交通情報などを、周囲に存在している車載機2に対して一斉に送信することができる。
【0023】
図3において、車載機2は、通信装置本体20と、通信装置本体20に接続された無指向性アンテナ21とを有している。通信装置本体20は、路側機1の通信装置本体10と同様に、無線部22と、通信に関する制御を行う制御部23とを有している。
さらに、車載機2は、自己の位置についての情報を取得可能な位置取得部24を有している。位置取得部24は、例えばGPS機能部からなる。
制御部23及び位置取得部24は、CPUを有するマイコンなどからなり、記憶しているプログラムによって各種処理を実行することができる。
【0024】
また、車載機2は、路側機1との通信の他、キャリアセンス方式によって、車載機同士の車車間通信が可能である。車載機2のアンテナ21は、無指向性であるため、路側機1や他の車載機2がいずれの方向にあっても電波を受信することができる。
【0025】
以上のように構成された通信システムの通信方式は、MACレイヤにおいて、TDMA方式とCSMA/CA方式とが組み合わされている。すなわち、路側機1が信号を送信するための時間帯(第一時間帯)が確保されていて、さらに、この第一時間帯における複数の路側機1のスロットの割り当てに、TDMA方式が採用されている。
そして、前記第一時間帯以外の残りの第二時間帯が、車載機2が信号を送信することのできる時間であり、この第二時間帯で例えばCSMA/CA方式による車車間通信が行われる。
【0026】
これにより、第一時間帯では、路側機1同士の路路間通信、路側機1から車載機2へ信号が送られる路車間通信が行われる。そして、第二時間帯では、車載機2から路側機1へ信号が送られる路車間通信、車載機2同士の車車間通信が行われる。なお、第一時間帯では、車載機2は信号の送信が禁止されている。
このように、路側機1が信号を送信する時間(第一時間帯)が優先的に与えられていることで、路側機1から送信される信号の品質を確保している。
【0027】
また、すべての路側機1は、信号を送信するタイミングを制御するために、時刻を同期させる機能を有している。そして、前記交通管制センターの中央制御装置4から、通信によって各路側機1は、前記第一時間帯(および第二時間帯)の時間の割り当てに関する情報(割り当て情報)を得ることができる。各路側機1の記憶部14(図3参照)は、この割り当て情報を記憶することができる。
そして、各路側機1は、時刻を同期させ、通信エリア内に(通信エリア内の車載機2に対して)前記割り当て情報を送信する。
【0028】
したがって、割り当て情報を共有している各路側機1は、第一時間帯の内の指定されたスロットで、路路間通信と路車間通信との内の一方または双方を行うことができる。
一方、割り当て情報を受信して取得した車載機2は、路側機1が信号を送信する時間帯(第一時間帯)と、当該車載機2が信号を送信することが可能となる通信可能時間帯(第二時間帯)とを知ることができる。これにより、車載機2は、第二時間帯で、車路間通信と車車間通信との内の一方または双方を行うことができる。
【0029】
また、本発明では、正規の各路側機1に、予め識別情報がそれぞれ割り当てられていて、各路側機1における記憶部14は、自己の識別情報(ID情報)を記憶していると共に、他の正規な路側機1の識別情報も記憶している。そして、路側機1は、自己の識別情報を含ませて無線信号(無線情報)を発信することができる。
また、各車載機2に、予め識別情報が割り当てられていて、各車載機2における記憶部(図示せず)は、自己の識別情報(ID情報)を記憶している。そして、車載機2は、自己の識別情報を含ませて無線信号を発信することができる。
【0030】
さらに、車載機2が発信する無線信号には、当該車載機2の所在位置についての位置情報が含まれている。前記所在位置についての位置情報とは、無線信号を発信する際の車載機2の位置に関する情報である。したがって、この位置情報を取得すれば、どの位置から車載機2が発信した無線信号であるかについて検知することができる。
前記位置情報は、車載機2が備えている前記位置取得部(GPS機能部)24によって取得される。
【0031】
路側機1は、路車間通信のために、車載機2が路側機1に対して送信している無線信号を受信することができる。さらに、車載機2が発信した無線信号が、路側機1を介することなく車載機2同士が直接的に行う移動体通信(車車間通信)のための信号であっても、路側機1は、この移動体通信のための情報を傍受可能となっている。つまり、車載機2同士が車車間通信を行うために、車載機2が発信した無線信号を傍受することができる。
【0032】
〔劣化検知システム〕
以上のように、通信システムには複数の路側機1が設けられ、中央制御装置4によって統括されている。そして、この通信システムには、路側機1の通信性能の劣化を検知する劣化検知システムSが設けられている(図3参照)。
【0033】
〔第一実施形態〕
図3に示す劣化検知システムSの実施形態では、各路側機1(図1のすべての路側機1)の通信装置本体10に、劣化検知システムSが設けられている。劣化検知システムSは、CPU及び記憶部を有しているプログラマブルなマイコンなどからなる。
劣化検知システムSが備えている記憶部19には、所定の各機能を実行するプログラムが格納されている。そして、劣化検知システムSは、このプログラムによって実行される機能部として、エリア検出部15、受信検出部16、劣化推定部17および統計部18を備えている。これらの機能部については後に説明する。記憶部19および前記記憶部14は、各種情報やコンピュータプログラムを記憶するROMやRAM等の記憶装置よりなる。
なお、劣化検知システムSは、中央制御装置4に設けられていてもよく、または、劣化検知システムSの各機能部が、路側機1と中央制御装置4とに分かれて設けられていてもよい。また、各機能部は、通信装置本体10の制御部13が有していてもよい。
【0034】
図4は劣化検知システムSの機能を説明する説明図である。図4(a)は路上に設置された路側機1の受信系装置の通信性能が劣化する前の状態であり、図4(b)は劣化した状態を示している。
劣化検知システムSの機能について図3と図4とにより説明する。
【0035】
前記エリア検出部15は、道路上を走行している車両5a〜5dにそれぞれ搭載された車載機2から発信され路側機1が受信した無線信号に含まれている位置情報に基づいて、路側機1が無線信号を受信することのできる受信エリアAを検出する機能を有している。なお、この受信エリアAは、路側機1の通信性能の劣化を推定する劣化検知システムSで用いられるためのエリアであり、路側機1が車載機2と通信するための通信エリアと異なっていてもよい。また、無線信号に含まれている位置情報は、前記のとおり、無線信号を発信する際の車載機2の位置に関する情報である。
【0036】
エリア検出部15についてさらに説明すると、各車載機2から発信される無線信号には、当該無線信号を発信する際の当該車載機2の所在位置に関する位置情報が含まれているので、当該無線信号を路側機1の無線部12が受信できた場合、エリア検出部15は、この位置情報を無線部12から取得すると、道路に設置された路側機1のアンテナ11と、受信できた無線信号が発信された位置との間の距離L(図4参照)を求めることができる。
このために、記憶部19にはアンテナ11の所在位置に関する情報が予め記憶されている。そして、路側機1が受信できた無線信号には位置情報が含まれているので、エリア検出部15は、アンテナ11の所在位置に関する情報と、前記位置情報とを取得すれば、これら情報を演算することで前記距離Lを求めることができる。
【0037】
例えば、図4(a)において、車両5aの車載機2が路側機1のアンテナ11から200m上流側に離れた位置で発信した無線信号を、路側機1の無線部12(図4参照)が受信できた場合、当該無線信号には車載機2が無線信号を発信した位置に関する位置情報が含まれているため、エリア検出部15は、演算によって、アンテナ11と車載機2との間の距離Lは200mであると求めることができる。
【0038】
また、エリア検出部15は、路側機1の通信性能の劣化を推定するための前記受信エリアAを検出するために、前記受信検出部16は、様々な位置(様々な前記距離Lの位置)に存在している車載機2が発信した無線信号の、路側機1の無線部12における受信品質を検出する機能を有している。この受信検出部16は、前記エリア検出部15と共に機能する。すなわち、エリア検出部15が前記距離Lを求めるために用いた位置情報を含んでいた無線信号を路側機1が受信した際の、当該無線信号の受信品質を受信検出部16は検出する。なお、受信品質としては、受信信号の受信レベル、C/N比、D/U比、受信エラー率等がある。
【0039】
図4の場合、受信品質を受信レベルとしている。つまり、アンテナ11からある距離L離れた位置で車載機2が発信した無線信号を路側機1が受信した場合、エリア検出部15は前記距離Lを求め、受信検出部16は当該無線信号の受信レベルの値を検出する。
例えば、図4(b)の場合、エリア検出部15及び受信検出部16の検出結果は、アンテナ11から距離L=100m上流の位置で車載機2が発信した無線信号の、路側機1における受信レベルは−70dBmである、というものになる。また、アンテナ11から距離L=100m下流の位置で車載機2が発信した無線信号の、路側機1における受信レベルは−80dBmである、という検出結果が得られる。
【0040】
さらに、前記受信検出部16による検出結果(受信品質)と、前記エリア検出部15による検出結果(距離L)とに基づいて、エリア検出部15は、図5(b)に示しているように、アンテナ11(の直下)からの距離Lと、当該距離Lにあった車載機2から発信された無線信号の受信レベルとの対応関係情報を求めることができる。なお、図5では、アンテナから上流側に関してのみ示している。
【0041】
そして、エリア検出部15は、図5(b)の対応関係情報の内の、受信レベルが予め設定されている閾値(基準)αを超えている無線信号が発信された位置を含む領域(距離Lの範囲)を、前記受信エリアAとして求める機能を有している。
図5(b)の場合、エリア検出部15は、アンテナ11の上流側に関して、アンテナ11の直下位置から100m離れた位置未満の範囲を、受信エリアAとして検出する。
このようにして、現状の受信エリアAを検出することができる。
【0042】
なお、図4(b)に示しているように、アンテナ11から200m上流側に離れた位置で、車両5aの車載機2が無線信号を発信していて、この無線信号には、位置情報として車載機2が無線信号を発信した位置に関する情報が含まれているが、路側機1はこの無線信号を受信できていない。
この場合、エリア検出部15は、当然に、アンテナ11から200m上流側に離れた位置が前記受信エリアAに含まれるとは、検出しない。
【0043】
さらに、前記エリア検出部15及び前記受信検出部16を、過去の所定期間にわたって(継続して)機能させ、前記機能部である前記統計部18は、当該過去の所定期間における平均的な受信エリアAの範囲(統計値情報)を求める機能を有している。
統計値情報を求める処理は後にも説明するが、この統計値情報は、例えば、路側機1の運用開始から現時点までの間に得られた受信エリアAの範囲(広さ)に関する平均的な値についての情報である。この平均的な値には、平均値や、中央値がある。
前記所定期間は、例えば、通信性能の劣化を検知する対象とする路側機1の運用が開始されてから現時点までの間とすることができる。または、過去のある時点から現時点としたり、過去のある区切られた期間であってもよい。求められた統計値情報は記憶部19が記憶する。
【0044】
そして、劣化推定部17は、検出された受信エリアAの経時的変化を判定し、当該受信エリアAが狭くなっていると判定すると、路側機1の受信系の装置の通信性能が劣化していると推定する機能を有している。なお、受信系の装置としては無線部12の例えば信号受信側のアナログ回路やアンプがある。
なお、前記統計部16が統計値情報を求めていることから、劣化推定部17は、エリア検出部15が現時点で検出した受信エリアAの範囲と、統計値情報に基づく前記所定期間の平均的な受信エリアAの範囲と比較することにより、受信エリアAの経時的変化を判定し、当該受信エリアAが狭くなっていると判定すると、路側機1の受信系の通信性能の劣化を推定する。
【0045】
以上のように構成された劣化検知システムによって実行される、路側機1の劣化検知方法の具体例を説明する。図6は、前記劣化検知方法のフロー図である。
まず、前記統計値情報を求める。このために、過去の所定期間にわたって、前記受信検出部16が、様々な位置から車載機2が送信した無線信号の路側機1における受信レベルを検出すると共に、前記エリア検出部15が、当該受信レベルを検出した無線信号に含まれている位置情報に基づいて当該無線信号の発信源の位置(前記距離L)を求める。
【0046】
これにより、前記受信検出部16による検出結果(受信品質)と、前記エリア検出部15による検出結果(距離L)とに基づいて、図5(a)に示しているように、統計部18は、アンテナ11(の直下)からの距離Lと、当該距離Lにあった車載機2から発信された無線信号の受信レベルとの関係を求めることができる。
例えば、所定期間の間に複数回、路側機1が受信した無線信号は距離L=100mの位置から発信されたものであるとエリア検出部15が検出でき、かつ、当該距離L=100mの位置から発信された無線信号の受信レベルを受信検出部16が検出することにより、統計部18は、距離L=100mの位置から発信された無線信号の受信レベルの平均的な値を求めることができる。このように、各位置(様々な距離L)に関して平均的な受信レベルの値を求めることで、図5(a)に示している関係を求めることができる。
【0047】
そして、統計部18は、図5(a)において受信レベルが予め設定されている閾値αを超えている無線信号が発信されたエリア(距離Lの範囲)を、平均的な過去の受信エリアA(統計値情報)として求める。なお、この閾値αは、前記対応関係情報(図5(b))から現状の受信エリアAを求める際に用いられた値と同じである。
図5(a)の場合、アンテナ11直下から上流側に関して、平均的な過去の受信エリアA(統計値情報)は、アンテナ11から距離L=200mまでの範囲として求められる。
求められた統計値情報を記憶部19に記憶させる(ステップS11)。
【0048】
そして、現状の情報として、エリア検出部15は、前記受信検出部16によって現在において検出された路側機1における無線信号の受信レベルと、当該受信レベルが検出された無線信号に含まれている位置情報(距離L)とに基づいて、前記エリア検出部15が、図5(b)に示しているような、受信レベルと距離Lとの前記対応関係情報を求める(ステップS12)。
【0049】
そして、エリア検出部15は、この図5(b)の対応関係情報に基づいて、受信品質が閾値αを超えている無線信号が発信された位置を含む領域を、路側機1が無線信号を受信することのできる現状の前記受信エリアAとして求める(ステップS13)。
すなわち、図5(b)の場合、アンテナ11の直下位置から75m上流側に離れた位置(距離L=75m)から発信された無線信号を、路側機1は受信でき、さらに、その無線信号の受信レベルが、前記閾値αを超えているので、エリア検出部15は、その位置(L=75mの位置)は、前記受信エリアAに含まれていると検出する。
【0050】
しかし、アンテナ11の直下位置から100m上流側に離れた位置から発信された無線信号を、路側機1は受信できているが、その無線信号の受信レベルが−70dBmであり、この値が前記閾値α以下であるため、エリア検出部15は、その位置(L=100mの位置)を、前記受信エリアAとは検出しない。したがって、エリア検出部15は、アンテナ11の上流側に関して、アンテナ11から100m離れた位置未満の範囲を、現状の受信エリアAとして検出する(ステップS13)。
【0051】
そして、統計部18によって求められた前記統計値情報(ステップS11)に基づいて、劣化推定部17は、過去に対する現状の受信エリアAの範囲についての変化を判定する(ステップS14)。現状での受信エリアAが狭くなっていると判定すると(ステップS14でYes)、路側機1の受信系の通信性能の劣化を推定する(ステップS15)。なお、この判定は、受信エリアAが狭くなっている程度が、予め設定される閾値(例えば50m)を超えている場合に、受信エリアAが狭くなっていると判定(ステップS14でYes)される。
【0052】
すなわち、図5(a)の統計値情報では、閾値αを超えているエリアは、アンテナ直下の位置から距離L=200mの位置までであるのに対して、図5(b)の現状の対応関係情報では、閾値αを超えているエリアが、アンテナ直下の位置から距離L=100m未満までである。この場合、受信エリアAが狭くなっている程度が、前記閾値(例えば50m)を超えているので、劣化推定部17は、受信エリアAが狭くなっていると判定し(ステップS14でYes)、路側機1の受信系の通信性能が劣化していることを推定する(ステップS15)。
【0053】
一方、受信エリアAの広さについて、過去から変化していないと判定された場合、つまり、受信エリアAが狭くなっている程度が、前記閾値(例えば50m)以下である場合、受信エリアAが狭くなっているとは判定されず(ステップS14でNo)、路側機1の通信性能の劣化検出を引き続いて行う。
【0054】
以上のように構成された劣化検知システムによって実行される劣化検出方法は、車両5に搭載した車載機2が、当該車載機2の所在位置についての位置情報を含ませて発信した無線信号を、路側機1が受信することによって開始される(ステップS11,S12)。そして、路側機1が受信した無線信号に含まれている位置情報に基づいて、当該路側機1が無線信号を受信することのできる受信エリアAを検出する(ステップS13)。検出された受信エリアAの経時的変化を判定し(ステップS14)、過去に対する現状の受信エリアAが狭くなっていると判定すると、前記路側機1の受信系の通信性能の劣化を推定する(ステップS15)ことにより、劣化検出方法は実行される。
【0055】
また、劣化推定部17によって路側機1の劣化が推定されると(ステップS15)、当該劣化推定部17は当該路側機1にはメンテナンスが必要である旨のメンテナンス情報を作成する(ステップS16)。このメンテナンス情報は、路側機1の無線部12を通じて、交通管制センターの中央制御装置4(図1)へ送信される。
そして、交通管制センターの管理者が、取得したメンテナンス情報に基づいて、通信性能の劣化が推定された路側機1に対してメンテナンスを行うことが可能となる。このため、劣化が推定された路側機1が故障して通信不能となる前に、路側機1のメンテナンスを行うことができる。つまり、路側機1の故障の予防が可能となる。なお、路側機1が故障して通信不能となってからでは、その路側機1の運用が長期間にわたって停止されてしまうおそれがあるが、本発明によれば、このような長期間の運用の停止を防ぐことができる。
【0056】
なお、図5のような対応関係情報を用いない場合であっても、図4(a)の場合(過去の情報)では、エリア検出部15によれば、アンテナ11から200m上流側に離れた位置が、路側機1の受信エリアAに含まれていることが検知されていたが、図4(b)の場合(現状の情報)では、アンテナ11から200m上流側に離れた位置が、路側機1の無線信号の受信エリアAに含まれているとは検出されていないことから、劣化推定部17は、受信エリアAの広さが狭くなったと検出することができ、劣化推定部17は、路側機1の受信系の通信性能が劣化していることを推定することができる。
【0057】
〔第二実施形態〕
第一実施形態と同様に第二実施形態の劣化検知システムについても、車載機2が当該車載機2の所在位置についての位置情報を含ませて発信した無線信号を、路側機2は受信可能であり、路側機2に設置された劣化検知システムSは、当該路側機1の通信性能の劣化を検知するように構成されている。図7は劣化検知システムSの第二実施形態のブロック図である。
【0058】
この劣化検知システムSが備えている記憶部39には、所定の各機能を実行するプログラムが格納されている。そして、劣化検知システムSは、このプログラムによって実行される機能部として、受信検出部35、位置取得部36、劣化推定部37および統計部38を備えている。これらの機能部については以下に説明する。
なお、この劣化検知システムSの機能を、図4(a)(b)を用いて説明する。図4(a)は路上に設置された路側機1の受信系の装置の通信性能が劣化する前の状態であり、図4(b)は劣化した状態を示している。
【0059】
受信検出部35は、車載機2が発信した無線信号の路側機1における受信品質として、例えば受信レベルを検出する機能を有している。
そして、位置取得部36は、受信検出部35が受信品質を検出した無線信号に含まれている位置情報が示す所在位置を求める機能を有している。
【0060】
すなわち、図4(a)において、受信検出部35は、アンテナ11から距離L=200m上流の位置で車載機2が発信した無線信号の、路側機1における受信レベルが−80dBmであることを検出することができる。さらに、アンテナ11から距離L=200m上流の位置で車載機2が発信した無線信号には、車載機2が当該無線信号を発信した位置に関する位置情報が含まれている。また、記憶部39にはアンテナ11の位置に関する情報が予め記憶されている。このため、位置取得部36は、これら情報を取得することで、演算によって、前記所在位置として、アンテナ11から車載機2までの距離Lは200mであると求めることができる。
【0061】
同様に、図4(a)において、アンテナ11から距離L=100m上流の位置で車載機2が発信した無線信号の、路側機1における受信レベルは、−60dBmであることを、受信検出部35は、検出することができる。そして、位置取得部36は、アンテナ11と前記無線信号が発信された位置との間の距離Lは100mであると求めることができる。
【0062】
統計部38は、前記受信検出部35が所定期間の間に求めた受信レベルに関する情報、及び、前記位置取得部36が所定期間の間に求めた前記距離Lに関する情報に基づいて、当該所定期間における、距離L毎の受信レベルに関する統計値情報を求める。この統計部38による機能の具体例については、後に説明する。
【0063】
劣化推定部37は、受信検出部35が検出した前記受信品質と、位置取得部36が求めた所在位置(距離L)とに基づいて、当該所在位置から発信された無線信号の受信レベルについて過去から現在への変化を判定する。そして、劣化推定部37は、受信レベルが低下していると判定した場合、路側機1の受信系の通信性能が劣化していると推定する機能を有している。この機能の具体例については、後に説明する。
【0064】
以上のように構成された劣化検知システムによって実行される、路側機1の劣化検出方法の具体例を説明する。図8は、劣化検知方法のフロー図である。
まず、前記統計値情報を求める。過去の所定期間にわたって、前記受信検出部35が路側機1における無線信号の受信レベルを検出し続けると共に、当該受信レベルを検出した無線信号に含まれている位置情報に基づいて当該無線信号の発信源の位置(距離L)を、前記位置取得部36が求め続ける。
【0065】
これによって、統計部38は、各距離Lの所定期間における平均的な受信レベル(統計値情報)を取得することができ、記憶部39に当該統計値情報を記憶させる(ステップS21)。
記憶部39に記憶させた統計値情報の具体例は、図4(a)に示しているように、例えば、距離L=200mの位置で車載機2が無線信号を発信した場合における、路側機1での当該無線信号の受信レベルは−80dBmであり、距離L=100mの位置で車載機2が無線信号を発信した場合における、路側機1での当該無線信号の受信レベルは−60dBmであるというように、距離Lと受信レベルとが対応つけられた情報である。
【0066】
そして、現状での路側機1の受信レベルを、前記受信検出部35が検出する(ステップS22)。例えば、所定の位置(例えば距離L=100mの位置)から、車載機2が無線信号を送信し、この無線信号を路側機1が受信できた場合、当該路側機1における当該無線信号の受信レベルを受信検出部35によって検出し、当該位置(距離L=100mの位置)を位置取得部36が求める。
このようにして求めた結果が図4(b)であり、この場合では、受信検出部35によって、路側機1での無線信号の受信レベルが−70dBmであると検出されていて、当該無線信号に含まれている位置情報に基づいて、位置取得部36によって、当該無線信号が発信された際の車載機1の所在位置が、アンテナ11から距離L=100mの位置であると求められている。
【0067】
そして、劣化推定部37は、前記統計値情報と、現状で求められた受信レベル及び距離Lとを比較する(ステップS23)。
つまり、統計値情報によれば、アンテナ11から距離L=100mの位置から発信された無線信号の、路側機1における受信レベルは−60dBmであったのに対し、現状で求めた、距離L=100mの位置にある車載機2から発信された無線信号の受信レベルは−70dBmである。
この場合、距離L=100mの位置から発信された無線信号の受信レベルの経時的変化を判定すると、受信レベルの低下の程度が、予め設定される閾値(例えば−10dBm)以上であるため(ステップS23でYes)、当該受信レベルが低下していると判定され、路側機1の受信系の装置の通信性能が劣化していると推定する(ステップS24)。
【0068】
路側機1の通信性能の劣化が、劣化推定部17によって推定されると、前記実施形態と同様に、劣化推定部17は当該路側機1にはメンテナンスが必要である旨のメンテナンス情報を作成し、中央制御装置4側へ送信する(ステップS25)。
【0069】
以上のように構成された劣化検知システムによって実行される劣化検出方法は、車両5に搭載した車載機2が、当該車載機2の所在位置についての位置情報を含ませて、当該車載機2が発信した無線信号を、路側機1が受信する。路側機1が当該無線信号を受信すると、車載機2が発信した前記無線信号の路側機1における受信レベルを検出し、当該受信レベルを検出した無線信号に含まれている位置情報が示す所在位置を求める。
そして、検出された受信レベルと、求められた所在位置とに基づいて、当該所在位置から発信された無線信号の受信品質の経時的変化を判定し、当該受信品質が低下していると判定すると路側機が備えている受信系の装置の通信性能の劣化を推定することにより、劣化検出方法は実行される。
【0070】
この実施形態においても、前記の構成によれば、通信性能の劣化が推定された路側機1が故障して通信不能となる前に、当該路側機1のメンテナンスを行うことができる。つまり、路側機1の故障の予防が可能となる。なお、路側機1が故障して通信不能となってからでは、その路側機1の運用が長期間にわたって停止されてしまうおそれがあるが、本発明によれば、このような長期間の運用の停止を防ぐことができる。
【0071】
また、本発明に関して、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
前記実施形態では、車車間通信の情報を路側機1が傍受することにより、当該路側機1の通信性能の劣化を推定するように構成したが、車載機2が路側機1に対して発信している路車間通信用の無線信号に基づいて、当該路側機1の通信性能の劣化を推定するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】通信システムが設けられている道路の模式図である。
【図2】図1の一部を拡大して説明している説明図である。
【図3】交通管制センター、路側機および車載機のブロック図である。
【図4】劣化検知システムの機能を説明する説明図である。
【図5】劣化検知システムの機能を説明する説明図である。
【図6】劣化検知方法のフロー図である。
【図7】他の実施形態に係る交通管制センター、路側機および車載機のブロック図である。
【図8】劣化検知方法のフロー図である。
【符号の説明】
【0073】
1 路側機(路側通信装置)
2 車載機(移動通信装置)
5 車両
15 エリア検出部
16 受信検出部
17 劣化推定部
35 受信検出部
36 位置取得部
37 劣化推定部
S 劣化検知システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動通信装置から発せられる自己の所在位置についての位置情報を含む無線信号を受信可能な路側通信装置の通信性能が劣化しているか否かを検知する劣化検知システムであって、
前記路側通信装置が受信した位置情報に基づいて、前記路側通信装置が無線信号を受信することのできる受信エリアを検出するエリア検出部と、
検出された前記受信エリアの経時的変化を判定し、当該受信エリアが狭くなっている場合に前記路側通信装置の通信性能が劣化していると推定する劣化推定部と、
を備えたことを特徴とする劣化検知システム。
【請求項2】
前記移動通信装置が発信した無線信号の前記路側通信装置における受信品質を検出する受信検出部を、更に備え、
前記エリア検出部は、検出された前記受信品質と、当該受信品質が検出された無線信号に含まれている位置情報とに基づいて、当該受信品質が基準を超えている無線信号が発信された位置を含む領域を、前記受信エリアとして求める請求項1に記載の劣化検知システム。
【請求項3】
移動通信装置から発せられる自己の所在位置についての位置情報を含む無線信号を受信可能な路側通信装置の通信性能が劣化しているか否かを検知する劣化検知システムであって、
前記移動通信装置が発信した無線信号の前記路側通信装置における受信品質を検出する受信検出部と、
前記受信品質が検出された無線信号に含まれている位置情報が示す前記所在位置を求める位置取得部と、
検出された前記受信品質と、求められた前記所在位置とに基づいて、当該所在位置から発信された無線信号の受信品質の経時的変化を判定し、当該受信品質が低下している場合に前記路側通信装置の通信性能が劣化していると推定する劣化推定部と、
を備えたことを特徴とする劣化検知システム。
【請求項4】
前記移動通信装置が発信した無線信号は、前記移動通信装置同士が直接的に行う移動体通信のための信号であり、
前記路側通信装置は、前記移動体通信のための情報を傍受可能である請求項1〜3のいずれか一項に記載の劣化検知システム。
【請求項5】
移動通信装置から発せられた自己の所在位置についての位置情報を含む無線信号を、路側通信装置が受信し、
前記路側通信装置が受信した位置情報に基づいて、前記路側通信装置が無線信号を受信することのできる受信エリアを検出し、
検出された前記受信エリアの経時的変化を判定し、当該受信エリアが狭くなっている場合に前記路側通信装置の通信性能が劣化していると推定することを特徴とする劣化検知方法。
【請求項6】
移動通信装置から発せられた自己の所在位置についての位置情報を含む無線信号を、路側通信装置が受信し、
前記移動通信装置が発信した無線信号の前記路側通信装置における受信品質を検出し、
前記受信品質を検出した無線信号に含まれている位置情報が示す前記所在位置を求め、
検出された前記受信品質と、求められた前記所在位置とに基づいて、当該所在位置から発信された無線信号の受信品質の経時的変化を検出し、当該受信品質が低下している場合に前記路側通信装置の通信性能が劣化していると推定することを特徴とする劣化検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−135913(P2010−135913A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307613(P2008−307613)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】