説明

動力源の出力レベルを下げる部品保護システム

【課題】 動力源の出力レベルを下げる部品保護システムを提供する。
【解決手段】 部品保護システムが、動力源を有する作業機械に提供される。少なくとも1つのセンサは、動力源の外部の作業機械システムの流体パラメータを監視するように、構成されている。センサは、流体パラメータの値を示す信号を生成するように、さらに構成されている。また、部品保護システムは、少なくとも1つのセンサと連通する制御モジュールを有し、制御モジュールは、流体パラメータの値に基づいて、動力源の出力レベルを下げるように、構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、部品保護システムに関し、さらに詳細には、動力源の出力レベルを下げる部品保護システムに関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械は、各システム内に多数の部品を有する多くの異なる流体システムを備えていることがある。種々のシステム内の単一部品の故障は、完全に防止できないかもしれないが、部品が故障した状態下において作業機械の作動を継続させると、流体システムが完全に故障することがある。エンジンの流体状態を監視し、そのエンジンの流体状態が許容範囲内にない場合に、エンジンを保護するルーチンを行なうエンジン保護システムが実施されている。
【0003】
このような保護システムは、ハプケらに付与された(特許文献1)に記載されている。この(特許文献1)は、種々のエンジンの流体パラメータを監視し、それらのパラメータを制限値と比較するエンジン保護システムを教示している。もし流体欠陥状態が存在する場合、エンジンの壊滅的な故障を保護するために、エンジン性能の出力レベルが下げられる。
【0004】
(特許文献1)のエンジン保護システムは、エンジンの流体作動状態が許容限度を越えたときに、作業機械のエンジンを保護し得るが、エンジンの外部にある作業機械システムを保護するためのいかなる措置も講じていない。特に、(特許文献1)のエンジン保護システムによって監視される流体状態は、エンジンの外部の作業機械の流体状態には関連していていないので、これらの外部システムは、流体状態の異常が検出されることなく及び/又はエンジン保護システムによって介入されることなく、単一部品の誤動作の後、システムが完全な故障に至る点まで、作動が継続されることがある。
【0005】
開示された部品保護システムは、前述の問題の1つ以上を克服することに関する。
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,070,832号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様によれば、本開示は、動力源を有する作業機械用の部品保護システムに関する。部品保護システムは、動力源の外部の作業機械システムの流体パラメータを監視し、流体パラメータの値を示す信号を生成するように構成された少なくとも1つのセンサを備えている。また、部品保護システムは、少なくとも1つのセンサと連通している制御モジュールを備え、この制御モジュールは、流体パラメータの値に基づいて、動力源の出力レベルを下げるように構成されている。
【0008】
他の態様によれば、本開示は、作業機械の動力源の外部の作業機械システムを保護する方法に関する。本方法には、作業機械システムと関連する流体パラメータを監視すること、及び流体パラメータの値に基づいて、作業機械の動力源の出力レベルを下げることが含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、例示的作業機械10を示している。作業機械10は、鉱業、建設、農業、輸送のような工業、又は当技術分野において知られている他の工業と関連するある種の作動を行なう定置又は可動式機械でありうる。例えば、作業機械10は、ブルドーザ、トラクタショベル、掘削機、モータ付き地ならし機、ダンプトラックのような土木機械、又は他の土木機械でありうる。あるいは、作業機械10は、発電機設備、ポンプ、船舶、乗用車、又は他の適切な作動を行なう作業機械でありうる。作業機械10は、動力源12と、動力伝達装置14と、油圧システム16と、部品保護システム18とを備えうる。
【0010】
動力源12には、例えば、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン、天然ガスエンジンのような内燃機関、又は当業者にとって明らかな他のエンジンが含まれ得る。あるいは、動力源12は、炉、蓄電池、燃料電池のような他の動力源、又は当技術分野において知られている他の動力源を含み得る。一実施形態において、動力源12は、シリンダーごとに1つの燃料噴射器20を有する4シリンダーディーゼルエンジンであり得る。動力源12は、より多くの又はより少ない数のシリンダーを備えてもよく、及び/又はシリンダーごとの燃料噴射器20の数が異なっていてもよいことが考えられる。
【0011】
動力伝達装置14は、動力を動力源12からある範囲の出力速度比で出力装置(図示せず)に伝達するように構成されうる。動力伝達装置14は、油圧動力伝達装置、機械式動力伝達装置、油圧機械式動力伝達装置、又は他の動力伝達装置でありうる。出力装置には、地面係合装置、ポンプ、発電機、プロペラ、又は当技術分野において知られている他の出力装置が含まれ得る。例えば、カウンターシャフト22のような入力駆動部材が、動力源12と動力伝達装置14を接続しうる。動力伝達装置14は、その動力伝達装置14を出力装置に接続する出力軸24のような出力駆動部材も備えうる。このようにして、動力源12によって生成される動力は、出力軸24を介して、出力装置に伝達されうる。あるいは、動力伝達装置14は、単一の出力速度比で、動力を動力源12から出力装置に伝達しうる。
【0012】
油圧システム16は、オペレータの入力に応じて、動力を動力源12から1つ以上の作業ツール(図示せず)に、油圧によって伝達するように構成される部品を備えうる。具体的には、油圧システム16は、流体を1つ以上の油圧シリンダー28に向けて加圧するように構成されるポンプ26を備えうる。
【0013】
ポンプ26は、可変排気量ポンプ、固定容量ポンプ、可変流量ポンプ、又は当技術分野において知られている他の加圧流体源でありうる。ポンプ26は、例えば、カウンターシャフト30のような入力駆動部材を介して、動力源12に駆動可能に接続されうる。ポンプ26は、カウンターシャフト30の入力回転を加圧流体の出力に変換しうる。このようにして、動力源12によって生成された機械的な動力は、流体動力に変換され得る。
【0014】
油圧シリンダー28は、流体通路32を介して、ポンプ26に流体的に接続され、作業ツールを作動するように、機能しうる。特に、ポンプ26からの加圧された流体が油圧シリンダー28に供給され、油圧シリンダー28内のピストンアセンブリ(図示せず)を油圧シリンダー28のチューブ(図示せず)内で変位させ、これによって、油圧シリンダー28の有効長さを大きくするようにしうる。また、油圧シリンダー28は、流体ドレイン(図示せず)に接続され、ピストンアセンブリをチューブ内で変位させ、油圧シリンダー28の有効長さを減少させうる。このようにして、油圧シリンダー28の拡張と収縮によって、ポンプ26からの流体動力を、作業ツールの移動を補助する機械的な動力に変換しうる。必要に応じて、油圧シリンダー28が省略され、異なる油圧装置がポンプ26に流体的に連結され得ることが考えられる。
【0015】
部品保護システム18は、動力伝達装置14と、油圧システム16と、動力源12とに連通しうる。具体的には、部品保護システム18は、通信ライン38を介して動力伝達装置センサ36と、通信ライン42を介して油圧システムセンサ40と、通信ライン44を介して動力源12の噴射器20とに連通する制御モジュール34を備えうる。
【0016】
制御モジュール34は、情報を記憶し、その情報を比較し、及び動力源12の作動を制御するための手段を有するマイクロプロセッサを備えうる。制御モジュール34は、単一のマイクロプロセッサ又は多数のマイクロプロセッサの形態で、具現化される。多数の市販のマイクロプロセッサが、制御モジュール34の機能を果たすように構成され得る。制御モジュール34は、多数の作業機械の機能を制御することができる一般的な作業機械用マイクロプロセッサの形態で、容易に具現化され得ることが理解されるべきである。制御モジュール34は、メモリー、1つ以上のデータ記憶装置、又はアプリケーションを作動させるのに用いられ得るその他の要素のような記憶、比較、及び制御のためのいかなる手段をも備えうる。さらに、本開示の態様は、一般的にメモリー内に記憶されているとして記載され得るが、当業者であれば、これらの態様が、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、光媒体、CD−ROM、又はRAM又はROMの他の形態を含むコンピュータチップ及び二次的な記憶装置のようなコンピュータ関連製品又はコンピュータ読み込み可能な媒体の形式に記憶可能又はそこから読取可能であることが、理解されるだろう。動力源回路、信号調整回路、ソレノイド・ドライバー回路、通信回路、又は他の適切な回路を含む種々の他の公知の回路が、制御モジュール34と関連され得る。
【0017】
動力伝達装置センサ36は、動力伝達装置14の流体パラメータを検知し、流体パラメータを示す値を有する信号を生成するように構成されうる。例えば、動力伝達装置センサ36は、動力伝達装置14内のクラッチ(図示せず)に対して与えられる流体の流体パラメータを検知するように、動力伝達装置14の油溜め(図示せず)内の流体の流体パラメータを検知するように、動力伝達装置14内のポンプ(図示せず)とモータ(図示せず)との間に流れる流体の流体パラメータを検知するように、又は動力伝達装置14内の他の適切な流体の流体パラメータを検知するように、構成されうる。動力伝達装置センサ36によって検知される流体パラメータには、例えば、圧力、温度、粘度、又は当技術分野において知られている他の動力伝達装置の流体パラメータが含まれうる。
【0018】
油圧システムセンサ40は、油圧システム16内のポンプ26と油圧シリンダー28との間に流れる流体の流体パラメータを検知するように、油圧システム16の油溜め(図示せず)内の流体の流体パラメータを検知するように、又は油圧システム16内の他の適切な流体の流体パラメータを検知するように、構成されうる。油圧システムセンサ40によって検知される流体パラメータには、例えば、圧力、温度、粘度、又は当技術分野において知られている他の油圧システムの流体パラメータが含まれうる。
【0019】
制御モジュール34は、動力源12の作動を変化させるように、構成されうる。動力源12の作動の変化は、例えば、出力トルク及び/又は出力速度のような動力源12の出力レベルを下げることを含みうる。動力源12の出力レベルを下げることは、動力源12の全動範囲にわたって、動力源12の最大出力を低下させることを含みうる。例えば、最大出力トルクは、燃料噴射器20の燃料送達特性を変化させることによって、出力速度の範囲にわたって、低下され得る。同様に、最大出力速度は、変速出力比の範囲にわたって、低下され得る。変更のために利用可能な燃料送達特性には、燃料送達量、燃料送達タイミング、及び当分野において知られている他の燃料送達特性が含まれうる。
【0020】
制御モジュール34は、動力伝達装置センサ36及び/又は油圧システムセンサ40からの信号に応じて、動力源12の作動を変化させうる。一例を挙げれば、制御モジュール34は、制御モジュール34のメモリー内に記憶された出力レベル低下パーセント値のテーブルを備えうる。以下の項においてさらに詳細に説明するように、これらの出力レベル低下パーセント値は、動力伝達装置センサ36及び/又は油圧システムセンサ40によって生成された信号の値と関連されうる。このテーブルは必要に応じて省略され、制御モジュール34は、代替的に、動力伝達装置センサ36及び/又は油圧システムセンサ40からの信号値に応じた1つ以上の所定の質問に基づいて、動力源12の出力レベルを下げうることが考えられる。
【0021】
図2は、部品保護システム18を作動させるための例示的方法を表すフローチャート46を示している。以下の項において、フローチャート46をさらに詳細に説明する。
【産業上の利用可能性】
【0022】
開示された部品保護システムは、主動力源の外部にあり、その主動力源によって駆動される作業機械補助システムの部品を保護するのが望ましいいかなる動力システムにおいても、潜在的な用途を見出す。具体的には、補助システムの検知された流体パラメータの値が、補助システム内の部品の故障を示すとき、主動力源の作動は、その動力源が補助システムを更なる損失に至るまで駆動するのを防ぐように、制御されうる。
【0023】
図2を参照するに、部品保護システム18が作動しているとき、動力伝達装置14及び/又は油圧システム16内の1つ以上の流体パラメータの値が、連続的に検知され、特定の流体パラメータの所定の許容範囲と比較されうる(ステップ100)。また、動力伝達装置14及び/又は油圧システム16内の1つ以上の流体パラメータの値が、所定の時間間隔で、チェックされ得ることも考えられる。次いで、部品保護システム18は、流体パラメータの値が所定の許容範囲内にあるかどうかを決定されうる(ステップ110)。もし流体パラメータの値が所定の許容範囲内にある場合、部品保護システム18は、動力源12の出力を変化させずに、流体パラメータを継続的に検知しうる(ステップ100)。
【0024】
しかし、もし1つ以上の流体パラメータ値が所定の許容範囲から外れている場合、その偏差の大きさが定量化され、制御モジュール34のメモリー内に記憶された出力レベル低下テーブルと比較され、動力伝達装置14及び/又は油圧システム16をさらに損傷しないように保護する適切な出力レベル低下パーセントを決定しうる(ステップ120)。出力レベル低下テーブルは、特定のパラメータ値と対応する特定の出力レベル低下パーセント値を備えうる。テーブルに記載されていないパラメータ値に対応する適切な出力レベル低下パーセント値が、例えば、線形内挿又は外挿によって、決定されうる。代替的に、出力レベル低下テーブルに記載されていないパラメータ値に対する適切な出力レベル低下パーセントは、1つ以上の所定の式によって、非線形的に内挿又は外挿され得ることも考えられる。さらに、適切な出力レベル低下パーセントの全てが、所望の公式を用いて、計算され得ることも考えられる。
【0025】
出力レベル低下パーセントが決定されたら、この値は、動力源12に適用されうる。(ステップ130)。前述したように、出力レベル低下は、噴射器20の燃料噴射量及び/又は燃料噴射タイミングを制御することによって、行なわれうる。動力源12の作動の出力レベル低下の前に、検知されたパラメータの値が所定の許容範囲を超えたが、最小の出力レベル低下閾値をまだ超えていないときに、例えば、警告ランプ及び/又は警告信号の作動からなる警告が開始され得ることが考えられる。出力レベル低下中又はその後、制御モジュール34は、更なる実行が必要であるかどうかを決定するために、動力伝達装置14及び/又は油圧システム16の流体パラメータを継続的に検知しうる(ステップ100)。
【0026】
所定の許容範囲を超える偏差の大きさとは無関係に、出力レベル低下の最大量は、非出力レベル低下作動下における最大出力に制限されうる。一例として、出力レベル低下の最大量は、動力源の最大出力の50%の最大出力レベル低下に制限されうる。このような方法で、作業機械10の安全な作動を確実にし、及び/又は修理のために修理工場に戻るための作業機械10の能力(「徐行能力」)を確実にする十分な動力源の出力が、維持され得る。
【0027】
動力源12の動作が、動力源12の外部の流体システムの検知されたパラメータに応じて、変化され得るので、いくつかの利点が実現される。コスト的に効率よく修理され得るより小さい部品の故障が、作業機械のオペレータに早急に知らされうる。さらに、そうしなければシステムの全体にわたる故障の一因になるかもしれない動力源の駆動力及び/又は速度の自動的低減によって、故障した部品がそれと関連するシステムを損傷させる影響が制限される。
【0028】
この開示された部品保護システムに対して、種々の修正形態及び変更形態がなされ得ることが、当業者には明らかであろう。部品保護システムの他の実施形態が、この明細書の考察とここに開示された本発明の実施から、当業者には明らかであろう。この明細書と実施例は、単なる例示と見なされるべきであり、本発明の正確な範囲は、以下の特許請求の範囲とそれらの等価物によって示されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】開示された例示的な部品保護システムの概略図である。
【図2】図1の部品保護システム用の例示的な工程フローチャートである。
【符号の説明】
【0030】
10 作業機械
12 動力源
14 動力伝達装置
16 油圧システム
18 部品保護システム
20 噴射器
22 カウンターシャフト
24 出力軸
26 ポンプ
28 油圧シリンダー
30 カウンターシャフト
32 流体通路
34 制御モジュール
36 動力伝達装置センサ
38 通信ライン
40 油圧システムライン
42 通信ライン
44 通信ライン
46 フローチャート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源を有する作業機械用の保護システムにおいて、
動力源の外部の作業機械システムの流体パラメータを監視し、流体パラメータの値を示す信号を生成するように構成された少なくとも1つのセンサと、
少なくとも1つのセンサと連通する制御モジュールであって、流体パラメータの値に基づいて、選択的に動力源の出力レベルを下げるように構成された制御モジュールと
を備える保護システム。
【請求項2】
作業機械システムは、動力伝達装置であり、流体パラメータは、動力伝達装置内の流体の温度である、請求項1に記載の保護システム。
【請求項3】
作業機械は、少なくとも1つの作業ツールを備え、作業機械システムは、少なくとも1つの作業ツールを作動させる油圧システムであり、流体パラメータは、油圧システム内の流体の温度である、請求項1に記載の保護システム。
【請求項4】
作業機械動力源の外部の作業機械システムを保護する方法において、
作業機械システムと関連する流体パラメータを監視すること、及び
流体パラメータの値に基づいて、作業機械の動力源の出力レベルを下げること
を備える方法。
【請求項5】
動力源と、
動力源の外部の流体システムであって、動力源に駆動可能に接続される流体システムと、及び
請求項1〜3のいずれか一項に記載の保護システムと
を備える作業機械。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−63987(P2006−63987A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−246518(P2005−246518)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(391020193)キャタピラー インコーポレイテッド (296)
【氏名又は名称原語表記】CATERPILLAR INCORPORATED
【Fターム(参考)】