説明

動圧軸受とこの動圧軸受を備えた放熱ファン

【課題】加工の過程が簡化になり、取付ける効率を向上させ、生産効率を高めることができる動圧軸受を提供すること。
【解決手段】動圧軸受を含む動圧軸受において、前記動圧軸受の内表面には、軸線方向に沿う複数の動圧発生溝が形成され、各々の動圧発生溝は、断面がV字状であり、互いに対称する2つの動圧面を含む。回転軸を含む動圧軸受において、前記回転軸の外表面には、軸線方向に沿う複数の動圧発生溝が形成され、各々の動圧発生溝は、断面がV字状であり、互いに対称する2つの動圧面を含む。本発明は前記動圧軸受の構造を持つ放熱ファンをさらに提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動圧軸受及び前記動圧軸受を備えた放熱ファンに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、動圧軸受は、ハードディスクドライブ、デジタルビデオ光ディスク機、小型の光ディスク機、磁気の光ディスク機、放熱ファンなどのような電子装置に広く応用されている。このような装置に用いられる軸受は、寸法が小さいから、比較に高い回転精度及び寿命が要求される。
【0003】
動圧軸受は、回転軸の外周面と軸受の内周面との間の微小な隙間に、油や空気などの流体を介在させるのみで、回転軸を滑らかに運動させるものである。前記回転軸が前記軸受に支持されて回転する時、両者の間の潤滑油によって、両者が直接に接続しないから、回転軸と軸受の磨損を減らし、ノイズが発生することを防止し、軸受の寿命を高めることができる。
【0004】
通常、動圧軸受の内表面に複数の動圧発生溝が形成されている。この動圧発生溝には、前記回転軸が前記軸受に相対して回転する時、動圧効果を起こす潤滑油が盛られている。しかし、前記動圧発生溝の形状が複雑し、軸受の小型化に従って、この動圧発生溝の加工も困難になる。また、前記動圧発生溝が非対称に形成されているから、前記回転軸の回転方向が決まり(他の方向へ回転すると、動圧効果が悪くなる)、且つ、組み立てる時所定の回転方法を考えなければならないから、組み立てが不便になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上の問題点に鑑み、本発明は、加工が簡化し、着脱することが便利し、方向性がない動圧軸受と、この動圧軸受を備えた放熱ファンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
動圧軸受を含む動圧軸受において、前記動圧軸受の内表面には、軸線方向に沿う複数の動圧発生溝が形成され、各々の動圧発生溝は、断面がV字状であり、互いに対称する2つの動圧面を含む。
【0007】
回転軸を含む動圧軸受において、前記回転軸の外表面には、軸線方向に沿う複数の動圧発生溝が形成され、各々の動圧発生溝は、断面がV字状であり、互いに対称する2つの動圧面を含む。
【0008】
ベースと、動圧軸受と、ステータと、ロータとを含み、前記動圧軸受は、前記ベースの中央に設けられる動圧軸受を含み、前記ロータは、前記動圧軸受の軸孔の内に挿入される回転軸を含む放熱ファンにおいて、前記動圧軸受の内表面と前記回転軸の外表面で、少なくとも1つの表面には、軸線方向に沿う動圧発生溝が凹設され、各々の動圧発生溝は、2つの動圧面を含み、前記2つの動圧面は、前記軸孔の軸心と2つの動圧面の接続線によって形成される表面に対称する。
【発明の効果】
【0009】
前記動圧軸受において、前記動圧軸受の内表面または回転軸の外表面に軸線方向に沿い、互いに対称する複数の動圧発生溝が形成されている。これで、前記動圧発生溝が対称に形成されているので、製造過程が簡単になる。且つ、前記動圧軸受に回転軸を組み立てる時、回転軸の回転方向を考える必要がないから、取付ける効率を向上させ、生産率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る実施例の構成を詳細に説明する。
【0011】
図1〜図3を参照しなさい。前記実施方式において、放熱ファンを実施例として本発明の動圧軸受を説明する。もちろん、前記動圧軸受をハードディスクドライブなどのようなモーターに応用することもできる。前記放熱ファンは、ベース70と、前記ベース70の内に設けられるステータ60と、ロータ30と、動圧軸受10と、スリーブ20と、を含む。
【0012】
前記ベース70は、円状体であり、中心に支持部71が設けられている。前記支持部71は、先端が開放され、中央に前記スリーブ20を嵌入させる収容空間72が形成されている。
【0013】
前記ステータ60は、回路基板601と、アーマチュア602と、を含む。前記アーマチュア602は、前記回路基板601に電気接続されて、変化する磁場を形成する。
【0014】
前記ロータ30は、ホイール32と、前記ホイール32の外周面から放射状に形成される複数の羽根34と、前記ホイール32の内に設けられるマグネットリング36と、を含む。前記ホイール32の中央には、一端が固定され、軸方向へ延びる回転軸38が設置されている。前記回転軸38の外周面には、他端に近隣する環状凹部384が形成されている。
【0015】
前記スリーブ20は、底端が密閉され、先端が開放され、内部に配置空間209が形成されている円筒状体である。前記スリーブ20の内壁には、密閉端に近隣する階段部202(図3)と、開口端に近隣する階段部204(図3)がそれぞれ形成されている。前記階段部204の内径が前記階段部202の内径より大きいから、前記配置空間209が3つの円柱状の空間に分かられ、且つ3つの空間の直径が下から上へますます大きくなる。前記配置空間209の底端には、前記回転軸38の底端を支持する円形の耐摩耗板50が設けられ、この耐摩耗板50の直径が前記配置空間209の底端の直径と同じである。前記耐摩耗板50が前記回転軸38と前記スリーブ20の底端との間に設けられているので、この回転軸38と前記スリーブ20の底端が摩擦することを防止でき、前記スリーブ20の寿命を向上させることができる。
【0016】
前記動圧軸受10は、前記配置空間209の内に収容され、前記スリーブ20の階段部202に支持される。図4及び図5を参考すると、前記動圧軸受10の内部に前記回転軸38を挿入させるための軸孔11が形成される。前記動圧軸受10の外表面には、潤滑油を還流させるための4つの返油溝12が形成されている。この返油溝12は、前記動圧軸受10の軸孔11と連通し、前記動圧軸受10の外表面に均一に対称に設けられている。各々の返油溝12は、前記動圧軸受10の2つの端面にそれぞれ径方向へ形成される2つの第一部分121と、前記動圧軸受10の外周面に軸方向へ形成される第二部分122と、を含む。図5を参考すると、前記返油溝12の断面は半円形である。前記返油溝12の形状は、これに限定されるものでなく、還流させることができる他の形状を採用することもできる。
【0017】
前記動圧軸受10の内表面には、軸線方向に沿う複数の動圧発生溝14が形成されている。動圧発生溝14の数量は、実際の需要によって決まり、前記実施方式において、3つの動圧発生溝14を含む。前記3つの動圧発生溝14は、前記動圧軸受10の内表面に均一に設けられ、且つ、何れか1つの動圧発生溝14が前記動圧軸受10の外表面の1つの返油溝12と対向するように設けられている。これにすると、潤滑油を前記動圧軸受10の外から前記動圧軸受10の内へ容易に還流させることができる。各々の動圧発生溝14の断面は、V字状であり、2つの動圧面141、142を含む。前記動圧面141と動圧面142の面積が等しく、且つ、2つの動圧面は、前記軸孔11の軸心と2つの動圧面の接続線によって形成される表面に対称に形成されている。前記2つの動圧面141、142を斜面に形成するか、加工し易い弧状面に形成することができる。図5に示した2つの動圧面141、142は、斜面であり、且つ2つの動圧面と前記動圧軸受10の内表面が互いに線接続する。
【0018】
前記実施方式において、前記動圧発生溝14の深さwは、前記動圧発生溝14の最深部145からこの動圧発生溝14が形成しない動圧軸受10の内周面までの径方向の距離である。優れる動圧用油膜を形成するために、前記動圧発生溝14の深さwを0.06〜0.1mmにすることができる。前記動圧軸受10の内表面と端面に接続する個所と、外表面と端面が接続する個所に面取りがそれぞれ形成されているから、前記回転軸38と前記動圧軸受10の組み立てが容易になる。
【0019】
前記配置空間209の頂端には、前記スリーブ20の階段部204に支持される遮蔽部材40が装着されている。前記遮蔽部材40の外径が前記スリーブ20の頂端の内径と大体に同じであるので、前記スリーブ20の開口部を密閉することができる。前記遮蔽部材40の中心には、前記回転軸38を挿入するための穿孔42(図1)が設けられている。前記穿孔42の直径が前記回転軸38の外径よりちょっと大きいから、前記穿孔42と前記回転軸38との間に微小隙間が形成される。前記微小隙間がとても小さいから、前記ファンが作動する時、潤滑油が漏れることを防止できると同時に、前記回転軸38と前記遮蔽部材40が摩擦することを防ぐことができる。
【0020】
前記ファンが取付ける時、先ず、前記スリーブ20の底端を前記ベース70の収容空間72の内に嵌入し、前記ステータ60を前記スリーブ20の外周面に固定させる。次に、前記耐摩耗板50を前記スリーブ20の配置空間209の底端に置き、前記動圧軸受10を前記スリーブ20の配置空間209の内に収容させる。すると、前記動圧軸受10が前記スリーブ20の階段部202の内面に当接され、前記動圧軸受10の頂端が前記スリーブ20の階段部204の下に置かれ、前記動圧軸受10の底端と前記耐摩耗板50との間に一定の距離が残る。次に、前記回転軸38を回転可能に前記動圧軸受10の軸孔11の内に収容させる。前記回転軸38の環状凹部384は、前記回転軸38と前記動圧軸受10との間の接触面積を減らし、且つ貯油用空間を形成することができる。次に、前記遮蔽部材40を前記回転軸38の外周面に装着する。すると、前記遮蔽部材40が前記スリーブ20の配置空間209の内に収容され、且つ前記階段部204に支持される。前記遮蔽部材40の頂端が前記スリーブ20の頂端と平たくなり、前記遮蔽部材40の底端と前記動圧軸受10の頂端との間に一定の距離が残る。従って、前記動圧軸受10と、前記遮蔽部材40と、前記スリーブ20とによって、前記軸孔11と連通する貯油空間が構成される。
【0021】
前記ファンが作動する時、前記ステータ60と前記ロータ30との間の磁界作用によって前記回転軸38が回転する。前記動圧軸受10の内表面に前記動圧発生溝14が形成されているので、前記回転軸38が高速に回転する時、前記動圧発生溝14に収納される潤滑油によって動圧作用が発生する。即ち、潤滑油によって前記回転軸38の外表面と前記動圧軸受10の内表面との間に油膜が形成され、前記回転軸38を滑らかに運動させることができる。従って、前記回転軸38と前記動圧軸受10との間の摩擦及びノイズを減らすことができる。且つ、遠心力の作用によって、前記潤滑油が前記回転軸38と前記動圧軸受10の内表面との隙間に沿って上へ昇り、最後、前記動圧軸受10と、前記遮蔽部材40と、前記スリーブ20とによって構造される貯油空間に保存される。もし、貯油空間に潤滑油が一定に保存されると、この潤滑油が前記動圧軸受10の外表面の返油溝12に沿って、再度前記動圧軸受10の底端へ流れるから、潤滑油を循環して利用することができる。
【0022】
前記動圧発生溝14の切断面が、対称するV字状に前記動圧軸受10の内表面に形成されているので、前記動圧発生溝14に生じる動圧効果は、前記回転軸38の回転方向に制限されない。且つ、前記動圧軸受10を取付ける時、回転軸38の回転方向を考える必要がないから、取付ける効率を向上させることができる。且つ、2つの動圧発生溝14は対称に動圧軸受10の内表面に形成されているので、加工の過程が簡化になり、生産効率を高めることができる。
【0023】
前記実施例の放熱ファンにおいて、前記動圧軸受10の内表面だけに前記動圧発生溝14が形成されるが、前記回転軸38の外表面だけに複数の前記動圧発生溝14を形成するか、前記動圧軸受10の内表面と前記回転軸38の外表面にみんな複数の前記動圧発生溝14を形成することができる。図6及び図7を参考すると、前記回転軸38の外表面に形成される動圧発生溝386も前記実施例の動圧発生溝14と同じな構造を持つ。即ち、動圧発生溝386の切断面はV字状であり、2つの動圧面387、388を含み、2つの動圧面の面積が等しく、且つ、2つの動圧面が前記回転軸38の軸心と2つの動圧面387、388の接続線に形成される表面に対称する。図6と図5に示した2つの動圧面387、388は斜面または弧状面であることができ、加工が簡単なその他の形状であることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る動圧軸受を用いる放熱ファンの分解斜視図である。
【図2】図1に示す放熱ファンの組立斜視図である。
【図3】図2に示す放熱ファンのIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図1に示す動圧軸受の拡大図である。
【図5】図4に示す動圧軸受の表面図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る動圧軸受を用いる回転軸の斜視図である。
【図7】図6に示す回転軸のVII−VII線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0025】
10 動圧軸受
11 軸孔
12 返油溝
14 動圧発生溝
20 スリーブ
30 ロータ
32 ホイール
34 羽根
36 マグネットリング
38 回転軸
40 遮蔽部材
42 穿孔
50 耐摩耗板
60 ステータ
70 ベース
71 支持部
72 収容空間
121 第一部分
122 第二部分
141 動圧面
142 動圧面
145 動圧発生溝の最深部
202 階段部
204 階段部
209 配置空間
384 環状凹部
601 回路基板
602 アーマチュア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を含む動圧軸受において、
前記回転軸の外表面には、軸線方向に沿う複数の動圧発生溝が形成され、
各々の前記動圧発生溝は、断面がV字状であり、互いに対称な2つの動圧面を含むことを特徴とする動圧軸受。
【請求項2】
前記動圧発生溝の2つの前記動圧面は、斜面または弧状面であることを特徴とする請求項1に記載の動圧軸受。
【請求項3】
ベースと、動圧軸受と、ステータと、ロータとを含み、
前記動圧軸受は、前記ベースの中央に設けられる前記動圧軸受を含み、
前記ロータは、前記動圧軸受の軸孔の内に挿入される回転軸を含む放熱ファンにおいて、
前記動圧軸受の内表面と前記回転軸の外表面とのうちの、少なくとも前記回転軸の外表面には、軸線方向に沿う動圧発生溝が凹設され、
各々の前記動圧発生溝は、2つの動圧面を含み、
前記2つの動圧面は、前記軸孔の軸心と当該2つの動圧面の接続線とによって形成される平面を基準として対称であることを特徴とする放熱ファン。
【請求項4】
前記動圧発生溝は、前記動圧軸受の内表面に形成され、前記動圧軸受の外表面に軸線方向に沿う複数の返油溝が形成され、且つ少なくとも1つの前記動圧発生溝が前記返油溝と対向するように連通されることを特徴とする請求項3に記載の放熱ファン。
【請求項5】
前記動圧発生溝の2つの前記動圧面は、斜面であり、
前記2つの斜面は、前記動圧軸受の内表面と線接続することを特徴とする請求項4に記載の放熱ファン。
【請求項6】
前記放熱ファンは、前記ベースの中央に設けられる前記動圧軸受を支持するスリーブをさらに含み、前記スリーブの内部に2つの階段部が形成され、前記動圧軸受が1つの前記階段部に支持されていることを特徴とする請求項3に記載の放熱ファン。
【請求項7】
前記動圧発生溝は、前記回転軸の外表面に形成されることを特徴とする請求項3に記載の放熱ファン。
【請求項8】
各々の前記動圧発生溝の断面は、V字状であり、且つ2つの動圧面が斜面または弧状面を形成することを特徴とする請求項4または請求項7のいずれか1つに記載の放熱ファン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−193854(P2012−193854A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−149851(P2012−149851)
【出願日】平成24年7月3日(2012.7.3)
【分割の表示】特願2008−37569(P2008−37569)の分割
【原出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(505292889)富準精密工業(深▲セン▼)有限公司 (64)
【出願人】(501346906)鴻準精密工業股▲フン▼有限公司 (82)
【Fターム(参考)】