説明

動植物の育成方法及び動植物の育成装置

【課題】鮑などの水産物の養殖ならびに農作物や観葉植物などの育成において,その成長を助長したり,動植物の活性を高めることができれば,水産物ならびに農作物の収穫や病原菌対策などの点から非常に有効であり,また農薬などの使用を低減することも可能となる。
【解決手段】水産物の養殖ならびに農作物や観葉植物などの植物の水耕栽培等において,キャビテーションを発生させた水などの液体を用いる。キャビテーションを発生させた水中には,活性水素や活性酸素が存在するので,動植物に活性を与えることができる。またキャビテーションを発生させた水中には,キャビテーション気泡の崩壊後もキャビテーションの核となる微細気泡以上の残留気泡が存在するので,水産物の養殖ならびに水耕栽培する動植物に活性を与えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,動植物(水産物の養殖ならびに農作物や観葉植物など)の成長を助長する分野に属する。特に鮑などの養殖ならびに水耕栽培で農作物や観葉植物などを生育している分野に関する。
【背景技術】
【0002】
キャビテーションにより,植物性プランクトンを不活性化したり(特許文献1),アオコなどを殺藻したりその発生を抑制したりする技術(特許文献2及び3)がある。また魚などを養殖する際に,水中にキャビテーションを発生させて,海水や真水の中の寄生虫,細菌,糞等の有機物を分解し,それを泡沫に付着させて取り除く技術(特許文献4)が提案されている。しかしながら,キャビテーションで処理した水を,動植物の育成の助長に活用した技術はない。
【0003】
【特許文献1】特開平7−155756号公報
【特許文献2】特開平11−47785号公報
【特許文献3】特開2005−138029号公報
【特許文献4】特開2001−212560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鮑などの水産物の養殖ならびに農作物や観葉植物などの育成において,その成長を助長したり,動植物の活性を高めることができれば,水産物ならびに農作物の収穫や病原菌対策などの点から非常に有効であり,また農薬などの使用を低減することも可能となる。本発明は,水産物の養殖ならびに水耕栽培する動植物などにキャビテーションで処理した水を用いて水産物の養殖ならびに農作物を生育することにより,これらを可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
水産物の養殖ならびに農作物や観葉植物などの植物の水耕栽培等において,キャビテーションを発生させた水などの液体を用いる。キャビテーションを発生させた水中には,活性水素や活性酸素が存在するので,動植物に活性を与えることができる。またキャビテーションを発生させた水中には,キャビテーション気泡の崩壊後もキャビテーションの核となる微細気泡以上の残留気泡が存在するので,養殖する水産物や水耕栽培する植物に活性を与えることができる。またキャビテーション気泡崩壊時に生じる衝撃波を,養殖する水産物や植物の根などに照射することにより,動植物の活性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
水耕栽培する農作物や観葉植物あるいは養殖する水産物の水中に超音波振動子を没入して超音波振動させることによりキャビテーションを発生させる(図1及び図5参照)。水耕栽培あるいは養殖する水産物の水中に高速水噴流を噴射してキャビテーションを発生させて,当該の水を水耕栽培や水産物の養殖に用いる(図2及び図6参照)。水耕栽培あるいは養殖する水産物の水を供給する経路において,高速水噴流を噴射してキャビテーションを発生させて,当該の水を水耕栽培や水産物の養殖に用いる(図3及び図7参照)。図3に示すチャンバ出口に圧力(流量)調整弁を取り付けて,チャンバ内の圧力を高速水噴流の噴射圧力の1/200〜1/20程度にする(1/100が最適値)。
【0007】
実施例の具体的作用(作動)として、ギンヨウセンネンボク(学名:Dracaena sanderiana,英名:Belgian evergreen,科名:リュウケツジュ科,属名:ドラセナ(ドラカエナ)属)(通称:ミリオンバンブー,万年竹,富貴竹)を室内で水耕栽培し,水耕栽培の水中に超音波振動子を用いて,1日4分間程度(2分間を2回)キャビテーションを発生させた。超音波振動子には,周波数28 kHz,出力150 Wを使用した。
【0008】
発明の効果として1年以上室内で水耕栽培したギンヨウセンネンボクは,光量不足により,葉の色が黄色から黄緑色となっていた。2ヶ月程度上記の条件でキャビテーションを照射することにより,新しい葉の色の緑色が濃くなった(図4参照)。
【0009】
以下、キャビテーションによる影響ではないと予想される懸念とその反論を参考までに記します。
【0010】
水耕栽培に使用している水をキャビテーションで処理した結果,水のアオコなどが低減したので,植物(ギンヨウセンネンボク)の成長が改善され,その結果,緑が濃くなった。その反論として、比較実験に使用した水中にもアオコの発生は認められない。
【0011】
キャビテーションによるエネルギーが投入されたので,水温が若干上昇し,その結果,緑が濃くなった。その反論として、使用した超音波振動子は150 Wであり,キャビテーションを照射した時間は4 min/dayであるので,水温の上昇の効果は少ないと考えられる。
【0012】
超音波振動による水の攪拌作用により,成長が改善され,その結果,緑が濃くなった。その反論として、キャビテーションの気泡の崩壊時にも衝撃波が発生しており,その振動による効果もあるので,包括的にはキャビテーションによる効果と考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】超音波振動子を用いた植物育成の実施例を示す概念図である。
【図2】高速水噴流噴射用ノズルを用いた植物育成の実施例を示す概念図である。
【図3】高速水噴流噴射用ノズルを用いた植物育成の実施例を示す概念図である。
【図4】写真中、左側はキャビテーションなしで育成した植物、右側はキャビテーションを照射して育成した植物。
【図5】超音波振動子を用いた動物育成の実施例を示す概念図である。
【図6】高速水噴流噴射用ノズルを用いた動物育成の実施例を示す概念図である。
【図7】高速水噴流噴射用ノズルを用いた動物育成の実施例を示す概念図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビテーションを発生させた液体を用いて動植物を育成することを特徴とする動植物の育成方法。
【請求項2】
高速液流を前記液体中に噴射することにより前記キャビテーションを発生させることを特徴とする請求項1に記載の動植物の育成方法。
【請求項3】
超音波振動により前記液体中に前記キャビテーションを発生させることを特徴とする請求項1に記載の動植物の育成方法。
【請求項4】
キャビテーションを発生させた液体を用いて動植物を育成することを特徴とする動植物の育成装置。
【請求項5】
高速液流を前記液体中に噴射することにより前記キャビテーションを発生させることを特徴とする請求項4に記載の動植物の育成装置。
【請求項6】
超音波振動により前記液体中に前記キャビテーションを発生させることを特徴とする請求項4に記載の動植物の育成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−306857(P2007−306857A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−139700(P2006−139700)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】