動脈瘤計測方法、及びその装置並びにコンピュータプログラム
【課題】脳動脈瘤のサイズ及び形状を画一的方法により測定する。
【解決手段】CT、MRI、3DDSAなどで撮影した3次元画像データを元に、血管芯線を特定し、これと垂直な断面を連続的に生成し、面積増大、円形度低下の特徴が生じる断面画像からとそれ以外の断面画像から動脈瘤部分と母血管部分とを抽出する。その上で、両者の境界面(ネック領域)を自動的に認識し、ここからネック長さ、動脈瘤の縦横の長さを断面画像を用いて特定する。
【解決手段】CT、MRI、3DDSAなどで撮影した3次元画像データを元に、血管芯線を特定し、これと垂直な断面を連続的に生成し、面積増大、円形度低下の特徴が生じる断面画像からとそれ以外の断面画像から動脈瘤部分と母血管部分とを抽出する。その上で、両者の境界面(ネック領域)を自動的に認識し、ここからネック長さ、動脈瘤の縦横の長さを断面画像を用いて特定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータを用いた3次元脳部画像から動脈瘤、とりわけ脳動脈瘤を検出しその形状を計測する動脈瘤計測方法、及びその装置並びにコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
脳動脈瘤とは、脳内の血管の分岐部などにおいて、血管壁が一部膨隆して生じた瘤のことをいう。小さな脳動脈瘤は、ほとんどのものが無症状だが、脳動脈瘤の壁は一部が薄くなっており、破れて出血を起こすとくも膜下出血となる。くも膜下出血は、発症した場合約40%が死亡、約30%は治療がうまくいって助かっても重大な後遺症が残り、社会復帰できる人は約30%とされる。未破裂脳動脈瘤の破裂率は、その大きさやくも膜下出血の既往の有無などに依るが、年間1〜2.3%とされている(非特許文献1参照)。
【0003】
脳動脈瘤の治療法として代表的なものには、開頭による直達手術(脳動脈瘤クリッピング術)と脳血管内治療による未破裂脳動脈瘤のコイル塞栓術とがある。前者は全身麻酔下にて頭蓋骨の一部をはずして脳の表面を露出し、顕微鏡下に脳の溝や骨との隙間を徐々に開いて、脳の深部にある脳動脈瘤に到達し、脳動脈瘤の根元に金属性のクリップをかけて、脳動脈瘤内へ流入する血流を遮断し、再出血を予防しようとする治療方法である。後者はカテーテルと呼ばれる細い管を足の付け根の血管から、レントゲンを見ながら脳血管内へ誘導し、脳動脈瘤内にコイルを詰めて閉塞させてしまう治療である(こうした塞栓術において用いられる検出方法及び検出装置について、例えば特許文献1参照)。またコイルに替えて液体状の塞栓物質による塞栓や、また動脈瘤の頚部にステントを配置して血流を変え、瘤内に血液が入りづらくする施術も検討されている。
【0004】
ところで、未破裂脳動脈瘤がある場合、常に積極的に治療すべきとは限らない。治療それ自体にリスクが伴う一方、上述の通り破裂率は必ずしも高くはないため、経過観察をもって足りる場合もあるからである。そうした治療方針の決定にあたって、脳動脈瘤の大きさの計測は重要な意味合いを持つ。また当然、コイル塞栓術による積極治療を行う場合にあっても、脳動脈瘤の大きさの計測は塞栓術の際のコイル量の選択にあたって重要である。
【0005】
このような、脳動脈瘤のサイズ把握の重要性については多方面で提唱されている。現在、ISUIA(国際未破裂動脈瘤調査)の報告も瘤のサイズ別で行われている他、AHA(アメリカ脳卒中協会)の治療方針でもサイズに応じた治療がうたわれている。国内でも脳ドックガイドライン、脳卒中ガイドライン2004においても脳動脈瘤のサイズ把握の重要性は明記している。
【0006】
それでいて従来、その計測手法及び計測基準については確立されたものがなく、施設間でばらつきが大きく、一定した測定方法がないのが実状であった。従来の手動計測においては、患部の3次元画像を基礎とし、必要に応じ断面画像を用い、サイズ測定を行っていた。しかし、ネック領域(=母血管と動脈瘤部との境界面)の適切な特定が手動では困難である上、ネック長(=ネック面における任意の二点間距離のうち最長のもの。動脈瘤中このネック長の中点から最大距離にある点までを結ぶ直線を瘤の縦、瘤の縦と直交する動脈瘤中の二点を結ぶ直線のうち最長のものを瘤の横とする)の軸方向が不規則に表れるため、手動での把握が困難であった。
【0007】
また、問題を有する血管を撮像した医療用画像をコンピュータ処理して所望の部位を解析する技術としては、例えば特許文献2のような、大動脈瘤の半自動分析システムや、特許文献3のような血管のCT断層像に基づいて血管壁の長さ、及び血栓部と血管部との体積比を求める画像処理方法が開示されている。しかし、上述の臨床的課題の解決に寄与する技術には未だ至っていないのが現状であった。
【0008】
【非特許文献1】Juvela S, Porres M, Heiskanen O:Natural history of unruptured intracranial aneurysms. J neurosurg 79:174-182, 1993.
【特許文献1】特開平10−118077
【特許文献2】特開2007−289704
【特許文献3】特開2004−201873
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、動脈瘤、とりわけ脳動脈瘤のサイズを測定するにあたり、手動計測において生じる誤差を防ぎ、画一化された計測処理を可能にするコンピュータを用いた動脈瘤計測方法、及びその装置並びにコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明にかかる動脈瘤計測方法、及びその装置並びにコンピュータプログラムは、以下の特徴を備える。
【0011】
(1)コンピュータを用いた3次元脳部画像から動脈瘤を検出しその形状を計測する動脈瘤計測方法であって、外部からの入力により動脈瘤を含む画像領域を特定し元データとする工程と、外部からの入力により血管内血流の流入部及び流出部を特定する工程と、前記特定された画像領域の細線化処理を行う工程と、前記細線化処理された画像データ及び前記特定された流入部及び流出部に基づき血管芯線を特定する工程と、前記特定された血管芯線に対し垂直な断面画像データを生成する工程と、前記生成された断面画像データにおいて血管断面に面積増大、円形度低下の特徴が表れる画像データを特定する工程と、前記特定された断面画像データ以外の画像データにおける血管断面に基づき、前記特定された断面画像データ上に正常血管を仮想的に配置した正常血管モデルを生成する工程と、前記元データから前記正常血管モデルを差分する工程と、前記差分により得られたデータのうち、前記正常血管モデルと連結し、かつ体積が最大の部分を動脈瘤部として抽出する工程と、前記抽出された部分以外をフィルタリング処理する工程と、前記元データから前記抽出した部分を差分し、更に正常血管モデルを含む部分を母血管として抽出する工程と、前記動脈瘤部と前記母血管部との境界面をネック面として特定する工程とを含むことを特徴とする動脈瘤計測方法(請求項1)。
【0012】
この発明によれば、3次元画像から認識される動脈瘤が形成されている血管域を手動で指定するだけで、母血管と動脈瘤との境界面を検知することができる。これにより、動脈瘤の体積、サイズを認識するにあたって手動計測による誤差を未然に防ぐことができる。
【0013】
(2)前記正常血管モデルを生成する工程において正しく正常血管モデルが生成されない場合、前記血管芯線を含む画素の距離値を利用して、前記血管芯線から血管表面までの最小半径を求め、血管芯線を当該最小半径まで膨張させることにより代替的に正常血管モデルを生成する工程を含むことを特徴とする動脈瘤計測方法(請求項2)。
【0014】
この発明によれば、血管のねじれや撓みがあるため、あるいは手動によって流入部や流出部を適切に指定できなかったために正常血管モデルを正しく生成できなかった場合であっても、精査領域内の血管太さのうち最細の太さが正常血管モデルにおける血管太さとして生成されるため、その後の動脈瘤計測処理にスムーズに進むことができる。
【0015】
(3)前記ネック面上の最も距離の遠い2点を探索し、当該2点を結ぶ直線をネックとし、当該ネックの長さを測定する工程と、前記ネックの中点から動脈瘤領域上最も遠い点を探索し、当該2点を結ぶ直線を動脈瘤の縦とし、当該動脈瘤の縦の長さを測定する工程と、前記動脈瘤の縦に対し垂直な断面画像データを生成する工程と、前記断面画像データ中、動脈瘤領域の面積が最大となる画像データを抽出する工程と、前記抽出された断面画像データ上の動脈瘤領域内で最も距離の遠い2点を探索し、当該2点を結ぶ直線を動脈瘤の横とし、当該動脈瘤の横の長さを測定する工程とを更に含むことを特徴とする動脈瘤計測方法(請求項3)。
【0016】
この発明によれば、さまざまな形状を有する可能性がある動脈瘤の形状を特定するにあたって、誤差の少ない形状把握を行うための指標を数値化したものが自動的に計測されるため、3次元画像で得られる患部イメージを形状を示す数値で補完することができ、治療方針の決定や施術前の準備を疎漏なく行うことに役立つ。
【0017】
(4)上記(1)ないし(3)記載の動脈瘤測定方法において、動脈瘤領域上の全ての画素の画素数に画像解像度を乗じた結果を動脈瘤の体積として抽出することを特徴とする動脈瘤計測方法(請求項4)。
【0018】
この発明によれば、3次元画像における動脈瘤に相当するデータを特定することにより当該動脈瘤の体積を把握することができる。
【0019】
(5)コンピュータを用いた3次元脳部画像から動脈瘤を検出しその形状を計測する動脈瘤計測方法であって、所定の手順により前記動脈瘤部と前記母血管部との境界面をネック面として特定する工程と、前記ネック面上の最も距離の遠い2点を探索し、当該2点を結ぶ直線をネックとし、当該ネックの長さを測定する工程と、前記ネックの中点から動脈瘤領域上最も遠い点を探索し、当該2点を結ぶ直線を動脈瘤の縦とし、当該動脈瘤の縦の長さを測定する工程と、前記動脈瘤の縦に対し垂直な断面画像データを生成する工程と、前記断面画像データ中、動脈瘤領域の面積が最大となる画像データを抽出する工程と、前記抽出された断面画像データ上の動脈瘤領域内で最も距離の遠い2点を探索し、当該2点を結ぶ直線を動脈瘤の横とし、当該動脈瘤の横の長さを測定する工程とを含むことを特徴とする動脈瘤計測方法(請求項5)。
【0020】
この発明によれば、さまざまな形状を有する可能性がある動脈瘤の形状を特定するにあたって、誤差の少ない形状把握を行うための指標を数値化したものが自動的に計測されるため、3次元画像で得られる患部イメージを形状を示す数値で補完することができ、治療方針の決定や施術前の準備を疎漏なく行うことに役立つ。とりわけ、動脈瘤のネック面すなわち本来的な血管と動脈瘤部分との境界面、ネックすなわち該境界面上の最長距離、動脈瘤の縦及び横という計測位置が一義的に定められることにより、いずれの医療機関において測定したとしても通有性のあるデータを抽出することができる。
【0021】
(6)外部からの入力により動脈瘤を含む画像領域を特定し元データとする元データ特定手段と、外部からの入力により血管内血流の流入部及び流出部を特定する流入部流出部特定手段と、前記特定された画像領域の細線化処理を行う細線化処理手段と、前記細線化処理された画像データ及び前記特定された流入部及び流出部に基づき血管芯線を特定する血管芯線特定手段と、前記特定された血管芯線に対し垂直な断面画像データを生成する対血管芯線垂直断面画像生成手段と、前記生成された断面画像データにおいて血管断面に面積増大、円形度低下の特徴が表れる画像データを特定する特徴断面特定手段と、前記特定された断面画像データ以外の画像データにおける血管断面に基づき、前記特定された断面画像データ上に正常血管を仮想的に配置した正常血管モデルを生成する正常血管モデル生成手段と、前記元データから前記正常血管モデルを差分する元データ‐正常血管モデル差分処理手段と、前記差分により得られたデータのうち、前記正常血管モデルと連結し、かつ体積が最大の部分を動脈瘤部として抽出する動脈瘤部抽出手段と、前記抽出された部分以外をフィルタリング処理するフィルタリング処理手段と、前記元データから前記抽出した部分を差分し、更に正常血管モデルを含む部分を母血管として抽出する母血管抽出手段と、前記動脈瘤部と前記母血管部との境界領域をネック領域として特定するネック領域特定手段とを含むことを特徴とする動脈瘤計測装置(請求項6)。
【0022】
この発明の装置によれば、3次元画像から認識される動脈瘤が形成されている血管域を手動で指定するだけで、母血管と動脈瘤との境界面を検知することができる。これにより、動脈瘤の体積、サイズを認識するにあたって手動計測による誤差を未然に防ぐことができる。
【0023】
(7)前記正常血管モデル生成手段において正しく正常血管モデルが生成されない場合、前記血管芯線を含む画素の距離値を利用して、前記血管芯線から血管表面までの最小半径を求め、血管芯線を当該最小半径まで膨張させることにより代替的に正常血管モデルを生成する代替的正常血管モデル生成手段を有することを特徴とする、(6)に記載の動脈瘤計測装置(請求項7)。
【0024】
この発明の装置によれば、血管のねじれや撓みがあるため、あるいは手動によって流入部や流出部を適切に指定できなかったために正常血管モデルを正しく生成できなかった場合であっても、精査領域内の血管太さのうち最細の太さが正常血管モデルにおける血管太さとして生成されるため、その後の動脈瘤計測処理にスムーズに進むことができる。
【0025】
(8)前記ネック領域上の最も距離の遠い2点を探索し、当該2点を結ぶ直線をネックとし、当該ネックの長さを測定するネック長測定手段と、前記ネックの中点から動脈瘤領域上最も遠い点を探索し、当該2点を結ぶ直線を動脈瘤の縦とし、当該動脈瘤の縦の長さを測定する動脈瘤縦長測定手段と、前記動脈瘤の縦に対し垂直な断面画像データを生成する対動脈瘤縦垂直断面画像生成手段と、前記生成された断面画像データ中、動脈瘤領域の面積が最大となる画像データを抽出する画像データ抽出手段と、前記抽出された断面画像データ上の動脈瘤領域内で最も距離の遠い2点を探索し、当該2点を結ぶ直線を動脈瘤の横とし、当該動脈瘤の横の長さを測定する動脈瘤横長測定手段と、を更に含むことを特徴とする(6)又は(7)に記載の動脈瘤計測装置(請求項8)。
【0026】
この発明の装置によれば、さまざまな形状を有する可能性がある動脈瘤の形状を特定するにあたって、誤差の少ない形状把握を行うための指標を数値化したものが自動的に計測されるため、3次元画像で得られる患部イメージを形状を示す数値で補完することができ、治療方針の決定や施術前の準備を疎漏なく行うことに役立つ。
【0027】
(9)動脈瘤領域上の全ての画素の画素数に画像解像度を乗じた結果を動脈瘤の体積として抽出する動脈瘤体積抽出手段を有することを特徴とする、(6)又は(7)に記載の動脈瘤計測装置(請求項9)。
【0028】
この発明によれば、3次元画像における動脈瘤に相当するデータを特定することにより当該動脈瘤の体積を把握することができる。
【0029】
(10)所定の手順により動脈瘤部と母血管部との境界領域をネック領域として特定するネック領域特定手段と、前記ネック領域上の最も距離の遠い2点を探索し、当該2点を結ぶ直線をネックとし、当該ネックの長さを測定するネック長測定手段と、前記ネックの中点から動脈瘤領域上最も遠い点を探索し、当該2点を結ぶ直線を動脈瘤の縦とし、当該動脈瘤の縦の長さを測定する動脈瘤縦長測定手段と、前記動脈瘤の縦に対し垂直な断面画像データを生成する対動脈瘤縦垂直断面画像生成手段と、前記生成された断面画像データ中、動脈瘤領域の面積が最大となる画像データを抽出する画像データ抽出手段と、前記抽出された断面画像データ上の動脈瘤領域内で最も距離の遠い2点を探索し、当該2点を結ぶ直線を動脈瘤の横とし、当該動脈瘤の横の長さを測定する動脈瘤横長測定手段とを含むことを特徴とする動脈瘤計測装置(請求項10)。
【0030】
この発明によれば、さまざまな形状を有する可能性がある動脈瘤の形状を特定するにあたって、誤差の少ない形状把握を行うための指標を数値化したものが自動的に計測されるため、3次元画像で得られる患部イメージを形状を示す数値で補完することができ、治療方針の決定や施術前の準備を疎漏なく行うことに役立つ。とりわけ、動脈瘤のネック面すなわち本来的な血管と動脈瘤部分との境界面、ネックすなわち該境界面上の最長距離、動脈瘤の縦及び横という計測位置が一義的に定められることにより、いずれの医療機関において測定したとしても通有性のあるデータを抽出することができる。
【0031】
(11)コンピュータに(1)から(5)の何れかに記載の動脈瘤計測方法を実行させるためのプログラム(請求項11)。
【0032】
この発明のプログラムを所定のプラットフォーム上で実行させることで、手動による動脈瘤の形状・サイズ計測では生じてしまいがちな誤差を極力排除することができる。特に未破裂脳動脈瘤の形状、サイズの把握は、治療方針そのものや手術前の必要資材量の把握には不可欠であり、これを規定化された所定の数値にて表現することにより、治療にあたる医師はこれを有効な情報として活用することができる。
【0033】
なお本発明において「血管断面に特徴が表れる」とは、連続する断面画像データ上の血管領域の面積増大や、血管領域形状の円形度の低下など、動脈瘤が存在する場合に断面画像データ上に現れうる特徴が生じることを意味する。面積の測定及び領域の周囲長の測定には、ラベリング処理等既存の方法を適用可能である。円形度とはどれだけ円に近いかをあらわすパラメータであり、(円形度)=(4π×(面積))/(周囲長の2乗)で求めることができる。特徴と認定する面積増大比率や円形度の低下率は、動脈瘤が現れる断面画像データを抽出できるよう適宜設定することができる。特徴が表れているか否かを判定するパラメータとしては、面積増大、円形度低下のいずれか一方でも良く、双方でも良い。また他の特徴を現すパラメータを複合的に参照してもよい。
【0034】
「細線化処理」とは、ThinningやSkeletonizationと呼ばれ、二値画像(白と黒の色だけで表現された2階調の画像)を幅1ピクセルの線画像に変換する処理をいう。また本発明において「血管芯線」とは、血管を血流方向と垂直の断面に現れる円の中心を連続させた仮想線をいう。また「正常血管モデル」とは、動脈瘤が発生していなかった場合の仮想的な血管をいう。また「フィルタリング処理」とは、3次元元データにおいて表れる、動脈瘤以外のノイズを除去するための処理をいい、メディアンフィルタ或いはモルフォロジカルフィルタなど任意のフィルタリング処理を適用することができる。
【0035】
また、本発明において「ネック面」とは、動脈瘤部と母血管部との境界面をいい、ネック面上の2点間のうち最長のものを結ぶ直線を「ネック」といい、その長さを「ネック長」という。また、「ネック」の中点から動脈瘤領域上最も遠い点を探索し、両点を結ぶ直線を「動脈瘤の縦」とし、その長さを「動脈瘤の縦長」とする。さらに「動脈瘤の縦」に垂直な断面を微小間隔で形成したときに、各断面に現れる動脈瘤の断面積が最大となる断面において、当該動脈瘤領域内の2点間の距離が最長となる2点を結ぶ直線を「動脈瘤の横」とし、その長さを「動脈瘤の横長」とする。
【0036】
このように、動脈瘤の形状についてその計測する箇所を一義的に定義することにより、異なる機関において計測を行った場合であっても同一の基準に基づいて動脈瘤の形状を把握することができるというメリットがある。本発明にかかる測定方法、測定装置及びプログラムにおいては、こうした一定の基準に基づいた動脈瘤の形状把握を行うことができ、しかもその測定の基礎となるネック面の把握を極力誤差が生じない態様により行うことができる。これによりいかなる医療機関で計測を行った場合であっても、人的な恣意が介在するのは、血管の流入部及び流出部の特定のみに絞られる。一般の医療従事者においては、血管の流入部及び流出部の特定を、3次元画像に基づいて行うことは容易であり、誰が行っても同じ結果の出る、再現性の高い動脈瘤計測を行うことができる。
【0037】
なお、本発明における「動脈瘤」とは、主として脳動脈瘤を念頭においているが、計測対象は必ずしもこれに限られず、脳以外の身体部位における動脈瘤にも適用可能である。更には、静脈瘤の測定にも用いることが可能である。明瞭簡便な記載の観点から「動脈瘤」の単一の用語を用いているが、その後の治療方法の相違はともかくとして、瘤の測定という観点では同一であり、静脈瘤の測定方法、測定装置、及び測定用プログラムを除外する趣旨ではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、図面を参照しつつ本発明に好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、全図を通じ同一部分には同一の符号を付すこととする。なお以下では典型的な適用例として、脳動脈瘤の測定例をもって説明する。
【0039】
図1は、本発明の一実施例である脳動脈瘤測定装置のハードウェア構成を表すブロック図である。脳動脈瘤測定装置100は、CPU101、ROM102、RAM103、バス104、I/F105、入力手段106、表示装置107、HDD108及び通信ポート109を有する。ROM102は不揮発性の記憶装置であり、ブートプログラム等の基本プログラムを記憶する。RAM103は揮発性の記憶装置であり、プログラムやデータを記憶する領域として、或いは、CPU101による処理に使用しているデータを格納する作業領域として利用される。これらの構成は、バス104及びI/F105を介して入力手段106、表示装置107、HDD108及び通信ポート109と接続している。
【0040】
入力手段106は、外部の操作者が入力操作を行うためのデバイスであり、具体的にはマウスやキーボードが一般的であるが、これらに限定されない。例えば、スキャナなどの患部画像データ取り込み手段なども含まれる。表示装置107は、例えば液晶ディスプレイや、CRTディスプレイ等の画像を表示する装置である。なお本実施例においては測定装置として他のノードと一体的な構成として説明しているが、当然これに限定されることはなく、例えば拡張端子(図示しない)を介して外部接続する表示装置であってもよい。
【0041】
HDD108は、OS(オペレーティングシステム)及び各種アプリケーションソフトを読み出し可能に記憶するほか、各種アプリケーションソフトにおける保存データを記憶する。通信ポート109は、ネットワーク110を介して外部の装置とのデータのやりとりの仲介を行う。
【0042】
図2は、HDD108に記憶されているソフトウェア群を示す概念図である。HDD108に記憶されているデータ及びプログラムとしては、OS(オペレーティングシステム)及びその関連プログラム210、アプリケーションソフトにおける保存データ220、アプリケーションソフト230などがある。本実施例における動脈瘤計測装置においては、後述する機能をハードウェアに機能させる動脈瘤測定プログラム231、及び3次元画像処理ビューワ241が記憶されている。また3次元画像処理ビューワで展開する医療画像データ221が記憶される領域を有している。
【0043】
3次元画像処理ビューワとしては、MRIやCTのDICOM画像などを編集可能なソフトウェアであればよく、例えば「REAL INTAGE」(株式会社ケイ・ジー・ティー製)などを採用することができる。記憶される医療画像データ221のフォーマットとしては、先述のDICOMの他、RAWデータ、TIFF、BMPなどが加工可能である。
【0044】
なお、本実施例においては、上記各アプリケーション及びそこで用いられる保存データの記憶領域をHDD108と規定しているが、説明の便宜のためであり、記憶装置としての物理的形状はHDDに特定されることはなく、例えばフラッシュメモリなどでも良く、また医療画像データについては外部メディア(図示しない)からRAM103の作業領域に逐次展開しても良い。
【0045】
次に、本実施例の動脈瘤測定装置における動脈瘤形状及び動脈瘤サイズの測定の流れを説明する。図3及び図4は動脈瘤測定のステップを示すフローチャートである。図3は対象となる動脈瘤画像から動脈瘤、母血管及びネック領域の特定を行う過程を示したものであり、図4はこれに基づき動脈瘤のネック長及び形状、体積を抽出する過程を示したものである。
【0046】
まず、医療画像データ221の中から測定対象が撮像された所定の医療画像データ221の選択を行う(ステップS301。以下医療画像データ221を「元データ」ということがある)。選択された元データは表示装置107上に表示される。この際、動脈瘤を含む血管部分をある程度抽出する。その後の手動による指定作業の便宜のためである。図6(a)はある程度抽出した動脈瘤を含む血管画像の元データである。
【0047】
次に、動脈瘤の母血管の流入側と流出側血管を指定する(ステップS302)。操作者は、表示装置107に表示された画像(図6(a)参照)を見つつ、入力手段106、例えばマウス等により画面上の流入側血管及び流出側血管を指定する。図6(a)は、元データから動脈瘤ANを含む血管をある程度抽出したものである。本事例では母血管MAから図示右上方向に動脈瘤が隆起した状態を示している。ここで操作者は、動脈瘤の母血管の流入側と流出側血管を指定する。この指定により、図6(b)に示されるように指定された箇所にマーキングmi、moがなされる。
【0048】
上記マーキングが完了すると、動脈瘤測定プログラム231は画像解析を開始する。まず元データの細線化処理を行い、血管芯線の抽出を行う(ステップS303)。細線化処理手法を用いることにより、血管内の管空構造を容易に把握することができる。脳動脈はとりわけ蛇行が著しく、血管の正断面を3次元画像上で把握することの困難性から解放される。
【0049】
次に、正常血管モデルの生成を行う(ステップS304)。図5は正常血管モデルの生成の詳細を示すサブルーチンである。まず、先に抽出された血管芯線に基づき、これと垂直な仮想断面による連続スライス画像を生成する(ステップS501)。ここで、処理対象となっている画像領域内には動脈瘤が包含されていることから、連続するスライス画像のうち動脈瘤にかかる部分においては、血管断面の膨張や血管断面以外の断面が現れることになる。これらを特徴として認識し、かかる特徴を含むスライス画像を特定する(ステップS502)。動脈瘤には様々なタイプがあり、その形状も不定形であるところ、断面の特徴値として把握することにより、正常な血管部(母血管)と患部(動脈瘤)との適切な峻別が可能となる。
【0050】
次に、前述の特徴を有するスライス画像以外のスライス画像に表れている血管断面は、略同一径となることから、これが動脈瘤がないと仮定した場合の血管径となる。そこでこの血管断面データを、面積増大、円形度低下の特徴を含むスライス画像上に、スライス画像の前後で連続性を有するように補完して配置する(ステップS503)。これらを結合して(ステップS504)、正常血管モデルとする。
【0051】
メインフロー(図3)に戻り、元データから、生成した正常血管モデルデータを差分する(ステップS305)。そして、差分により得られたデータのうち、正常血管モデルと連結し、かつ体積が最大となる部分を動脈瘤部として抽出する(ステップS306)。ここで正常血管モデルと連結としたのは、それ以外にも画像上に浮遊するノイズが発生しており、これらを除外することで正確な形状、体積を算出するためである。
【0052】
前記ノイズについては、任意のフィルタリング手段により除去する(ステップS307)。次いで元データから先に抽出した動脈瘤部を差分し、更に正常血管モデルを含む部分を母血管として抽出する(ステップS308)。この一連の流れにより、動脈瘤部と母血管部とが特定される。ここで特定された両者の境界領域が元データ上明らかになる。この境界領域をネック領域として特定する(ステップS309)。
【0053】
なお、正常血管モデル生成が諸般の原因、例えば流入部、流出部の手動指定が適切でないために正しく行われない場合がある。その場合、上記に代え、血管芯線を含む画素の距離値を利用して、血管芯線から血管表面までの最小半径を求め、血管芯線を当該最小半径まで膨張させることにより代替的に正常血管モデルを生成するようにしてもよい。
【0054】
次に、ネック領域上の最も距離の遠い2点を総当りで探索し、当該2点を結ぶ直線をネックとし、当該ネックの長さを測定する(ステップS401)。図7(a)は、図6の画像データの解析の結果測定されたネック長nを示した図である。次いでネックの中点を特定した上で、中点から動脈瘤領域上最も遠い点を探索し、中点と最も遠い点とを結ぶ直線を動脈瘤の縦とし、その長さを測定する(ステップS402)。図7(b)は、測定された動脈瘤の縦長lを示した図である。
【0055】
次いで、動脈瘤の縦に対して垂直な断面画像データを小間隔で連続して生成する(ステップS403)。生成された複数のスライス画像データのうち、動脈瘤の断面積が最大となるスライス画像データを抽出する(ステップS404)。そうして、当該動脈瘤断面における相互に最も距離の遠い2点を探索し、両者を結ぶ線を動脈瘤の横とし、その距離を動脈瘤の横長として測定する(ステップS406)。図7(c)は、測定された動脈瘤の横長cを示した図である。
【0056】
最後に、動脈瘤の体積を測定する。動脈瘤の体積は、ステップS306において動脈瘤部と特定された元データ上の全ての画素の画素数に画像解像度を乗じたものを体積として抽出する(ステップS406)。
【0057】
この実施例における動脈瘤測定装置或いはプログラムは、例えば脳動脈の治療前評価としては十分臨床に応用することができる。とりわけ人為的な計測誤差を防ぐことができ、計測時間の短縮を図ることができる、という利点が認められる。こうした画一的な計測の実現により、施術に適切なコイル量、また将来的に予想される液体塞栓物質やコイルを封入するための、バルーンやステントの形状、長さを事前に見積もることができ、スムーズな施術に寄与する。
【0058】
また、この実施例のように、動脈瘤の測定位置を製品上定義することにより、各病院施設間での計測数値の不一致を防ぐことができ、治療ガイドライン上の数値がより有効なものとして機能する。
【0059】
なお、この実施例においては、動脈瘤を形状にて分類した場合におけるサイドウォール型を例として説明したが、同様のステップによる解析、測定により、他の形状の動脈瘤についてもその形状、体積を自動的に測定することができる。図8は各種形状の動脈瘤を示したものである。図8(a)は上記において説明したサイドウォール型の動脈瘤であり、母血管の芯線w、ネックn、動脈瘤の縦の長さl、動脈瘤の横の長さcがそれぞれ図示されたように模式的に示される。図8(b)は分岐型動脈瘤について、図8(c)は紡錘型動脈瘤について示したものである。これらの形状の動脈瘤においても同様に、母血管との境界面(ネック面)の特定、ネック長さの特定、動脈瘤の縦長の測定、動脈瘤の横長の特定、というステップで動脈瘤の形状、大きさが測定される。なおサイドウォール型及び分岐型においては、ネック面は周縁のある曲面状に現れ、紡錘型においては、ネック面は円筒状に現れることとなるが、いずれにおいても形状及び大きさを特定する基準として活用しうる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施例における動脈瘤測定装置のハードウェア構成図である。
【図2】図1における記憶手段に記憶されたソフトウェア概念図である。
【図3】動脈瘤測定の流れを示すフローチャートである。
【図4】動脈瘤測定の流れを示すフローチャートである。
【図5】図3における、正常血管モデル生成のサブルーチンである。
【図6(a)】動脈瘤部分の元データの3次元画像である。
【図6(b)】動脈瘤部分の元データにおいて流入部及び流出部の特定を行った画像である。
【図7(a)】図6の画像データの解析において測定されたネックを示す図である。
【図7(b)】同じく動脈瘤の縦長を示す図である。
【図7(c)】同じく動脈瘤の横長を示す図である。
【図8(a)】サイドウォール型動脈瘤のネック、縦、横を示す模式図である。
【図8(b)】分岐型動脈瘤のネック、縦、横を示す模式図である。
【図8(c)】紡錘型動脈瘤のネック、縦、横を示す模式図である。
【符号の説明】
【0061】
100 脳動脈瘤測定装置
101 CPU
102 ROM
103 RAM
107 表示装置
108 HDD
221 医療画像データ
231 動脈瘤測定プログラム
241 3次元画像処理ビューワ
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータを用いた3次元脳部画像から動脈瘤、とりわけ脳動脈瘤を検出しその形状を計測する動脈瘤計測方法、及びその装置並びにコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
脳動脈瘤とは、脳内の血管の分岐部などにおいて、血管壁が一部膨隆して生じた瘤のことをいう。小さな脳動脈瘤は、ほとんどのものが無症状だが、脳動脈瘤の壁は一部が薄くなっており、破れて出血を起こすとくも膜下出血となる。くも膜下出血は、発症した場合約40%が死亡、約30%は治療がうまくいって助かっても重大な後遺症が残り、社会復帰できる人は約30%とされる。未破裂脳動脈瘤の破裂率は、その大きさやくも膜下出血の既往の有無などに依るが、年間1〜2.3%とされている(非特許文献1参照)。
【0003】
脳動脈瘤の治療法として代表的なものには、開頭による直達手術(脳動脈瘤クリッピング術)と脳血管内治療による未破裂脳動脈瘤のコイル塞栓術とがある。前者は全身麻酔下にて頭蓋骨の一部をはずして脳の表面を露出し、顕微鏡下に脳の溝や骨との隙間を徐々に開いて、脳の深部にある脳動脈瘤に到達し、脳動脈瘤の根元に金属性のクリップをかけて、脳動脈瘤内へ流入する血流を遮断し、再出血を予防しようとする治療方法である。後者はカテーテルと呼ばれる細い管を足の付け根の血管から、レントゲンを見ながら脳血管内へ誘導し、脳動脈瘤内にコイルを詰めて閉塞させてしまう治療である(こうした塞栓術において用いられる検出方法及び検出装置について、例えば特許文献1参照)。またコイルに替えて液体状の塞栓物質による塞栓や、また動脈瘤の頚部にステントを配置して血流を変え、瘤内に血液が入りづらくする施術も検討されている。
【0004】
ところで、未破裂脳動脈瘤がある場合、常に積極的に治療すべきとは限らない。治療それ自体にリスクが伴う一方、上述の通り破裂率は必ずしも高くはないため、経過観察をもって足りる場合もあるからである。そうした治療方針の決定にあたって、脳動脈瘤の大きさの計測は重要な意味合いを持つ。また当然、コイル塞栓術による積極治療を行う場合にあっても、脳動脈瘤の大きさの計測は塞栓術の際のコイル量の選択にあたって重要である。
【0005】
このような、脳動脈瘤のサイズ把握の重要性については多方面で提唱されている。現在、ISUIA(国際未破裂動脈瘤調査)の報告も瘤のサイズ別で行われている他、AHA(アメリカ脳卒中協会)の治療方針でもサイズに応じた治療がうたわれている。国内でも脳ドックガイドライン、脳卒中ガイドライン2004においても脳動脈瘤のサイズ把握の重要性は明記している。
【0006】
それでいて従来、その計測手法及び計測基準については確立されたものがなく、施設間でばらつきが大きく、一定した測定方法がないのが実状であった。従来の手動計測においては、患部の3次元画像を基礎とし、必要に応じ断面画像を用い、サイズ測定を行っていた。しかし、ネック領域(=母血管と動脈瘤部との境界面)の適切な特定が手動では困難である上、ネック長(=ネック面における任意の二点間距離のうち最長のもの。動脈瘤中このネック長の中点から最大距離にある点までを結ぶ直線を瘤の縦、瘤の縦と直交する動脈瘤中の二点を結ぶ直線のうち最長のものを瘤の横とする)の軸方向が不規則に表れるため、手動での把握が困難であった。
【0007】
また、問題を有する血管を撮像した医療用画像をコンピュータ処理して所望の部位を解析する技術としては、例えば特許文献2のような、大動脈瘤の半自動分析システムや、特許文献3のような血管のCT断層像に基づいて血管壁の長さ、及び血栓部と血管部との体積比を求める画像処理方法が開示されている。しかし、上述の臨床的課題の解決に寄与する技術には未だ至っていないのが現状であった。
【0008】
【非特許文献1】Juvela S, Porres M, Heiskanen O:Natural history of unruptured intracranial aneurysms. J neurosurg 79:174-182, 1993.
【特許文献1】特開平10−118077
【特許文献2】特開2007−289704
【特許文献3】特開2004−201873
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、動脈瘤、とりわけ脳動脈瘤のサイズを測定するにあたり、手動計測において生じる誤差を防ぎ、画一化された計測処理を可能にするコンピュータを用いた動脈瘤計測方法、及びその装置並びにコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明にかかる動脈瘤計測方法、及びその装置並びにコンピュータプログラムは、以下の特徴を備える。
【0011】
(1)コンピュータを用いた3次元脳部画像から動脈瘤を検出しその形状を計測する動脈瘤計測方法であって、外部からの入力により動脈瘤を含む画像領域を特定し元データとする工程と、外部からの入力により血管内血流の流入部及び流出部を特定する工程と、前記特定された画像領域の細線化処理を行う工程と、前記細線化処理された画像データ及び前記特定された流入部及び流出部に基づき血管芯線を特定する工程と、前記特定された血管芯線に対し垂直な断面画像データを生成する工程と、前記生成された断面画像データにおいて血管断面に面積増大、円形度低下の特徴が表れる画像データを特定する工程と、前記特定された断面画像データ以外の画像データにおける血管断面に基づき、前記特定された断面画像データ上に正常血管を仮想的に配置した正常血管モデルを生成する工程と、前記元データから前記正常血管モデルを差分する工程と、前記差分により得られたデータのうち、前記正常血管モデルと連結し、かつ体積が最大の部分を動脈瘤部として抽出する工程と、前記抽出された部分以外をフィルタリング処理する工程と、前記元データから前記抽出した部分を差分し、更に正常血管モデルを含む部分を母血管として抽出する工程と、前記動脈瘤部と前記母血管部との境界面をネック面として特定する工程とを含むことを特徴とする動脈瘤計測方法(請求項1)。
【0012】
この発明によれば、3次元画像から認識される動脈瘤が形成されている血管域を手動で指定するだけで、母血管と動脈瘤との境界面を検知することができる。これにより、動脈瘤の体積、サイズを認識するにあたって手動計測による誤差を未然に防ぐことができる。
【0013】
(2)前記正常血管モデルを生成する工程において正しく正常血管モデルが生成されない場合、前記血管芯線を含む画素の距離値を利用して、前記血管芯線から血管表面までの最小半径を求め、血管芯線を当該最小半径まで膨張させることにより代替的に正常血管モデルを生成する工程を含むことを特徴とする動脈瘤計測方法(請求項2)。
【0014】
この発明によれば、血管のねじれや撓みがあるため、あるいは手動によって流入部や流出部を適切に指定できなかったために正常血管モデルを正しく生成できなかった場合であっても、精査領域内の血管太さのうち最細の太さが正常血管モデルにおける血管太さとして生成されるため、その後の動脈瘤計測処理にスムーズに進むことができる。
【0015】
(3)前記ネック面上の最も距離の遠い2点を探索し、当該2点を結ぶ直線をネックとし、当該ネックの長さを測定する工程と、前記ネックの中点から動脈瘤領域上最も遠い点を探索し、当該2点を結ぶ直線を動脈瘤の縦とし、当該動脈瘤の縦の長さを測定する工程と、前記動脈瘤の縦に対し垂直な断面画像データを生成する工程と、前記断面画像データ中、動脈瘤領域の面積が最大となる画像データを抽出する工程と、前記抽出された断面画像データ上の動脈瘤領域内で最も距離の遠い2点を探索し、当該2点を結ぶ直線を動脈瘤の横とし、当該動脈瘤の横の長さを測定する工程とを更に含むことを特徴とする動脈瘤計測方法(請求項3)。
【0016】
この発明によれば、さまざまな形状を有する可能性がある動脈瘤の形状を特定するにあたって、誤差の少ない形状把握を行うための指標を数値化したものが自動的に計測されるため、3次元画像で得られる患部イメージを形状を示す数値で補完することができ、治療方針の決定や施術前の準備を疎漏なく行うことに役立つ。
【0017】
(4)上記(1)ないし(3)記載の動脈瘤測定方法において、動脈瘤領域上の全ての画素の画素数に画像解像度を乗じた結果を動脈瘤の体積として抽出することを特徴とする動脈瘤計測方法(請求項4)。
【0018】
この発明によれば、3次元画像における動脈瘤に相当するデータを特定することにより当該動脈瘤の体積を把握することができる。
【0019】
(5)コンピュータを用いた3次元脳部画像から動脈瘤を検出しその形状を計測する動脈瘤計測方法であって、所定の手順により前記動脈瘤部と前記母血管部との境界面をネック面として特定する工程と、前記ネック面上の最も距離の遠い2点を探索し、当該2点を結ぶ直線をネックとし、当該ネックの長さを測定する工程と、前記ネックの中点から動脈瘤領域上最も遠い点を探索し、当該2点を結ぶ直線を動脈瘤の縦とし、当該動脈瘤の縦の長さを測定する工程と、前記動脈瘤の縦に対し垂直な断面画像データを生成する工程と、前記断面画像データ中、動脈瘤領域の面積が最大となる画像データを抽出する工程と、前記抽出された断面画像データ上の動脈瘤領域内で最も距離の遠い2点を探索し、当該2点を結ぶ直線を動脈瘤の横とし、当該動脈瘤の横の長さを測定する工程とを含むことを特徴とする動脈瘤計測方法(請求項5)。
【0020】
この発明によれば、さまざまな形状を有する可能性がある動脈瘤の形状を特定するにあたって、誤差の少ない形状把握を行うための指標を数値化したものが自動的に計測されるため、3次元画像で得られる患部イメージを形状を示す数値で補完することができ、治療方針の決定や施術前の準備を疎漏なく行うことに役立つ。とりわけ、動脈瘤のネック面すなわち本来的な血管と動脈瘤部分との境界面、ネックすなわち該境界面上の最長距離、動脈瘤の縦及び横という計測位置が一義的に定められることにより、いずれの医療機関において測定したとしても通有性のあるデータを抽出することができる。
【0021】
(6)外部からの入力により動脈瘤を含む画像領域を特定し元データとする元データ特定手段と、外部からの入力により血管内血流の流入部及び流出部を特定する流入部流出部特定手段と、前記特定された画像領域の細線化処理を行う細線化処理手段と、前記細線化処理された画像データ及び前記特定された流入部及び流出部に基づき血管芯線を特定する血管芯線特定手段と、前記特定された血管芯線に対し垂直な断面画像データを生成する対血管芯線垂直断面画像生成手段と、前記生成された断面画像データにおいて血管断面に面積増大、円形度低下の特徴が表れる画像データを特定する特徴断面特定手段と、前記特定された断面画像データ以外の画像データにおける血管断面に基づき、前記特定された断面画像データ上に正常血管を仮想的に配置した正常血管モデルを生成する正常血管モデル生成手段と、前記元データから前記正常血管モデルを差分する元データ‐正常血管モデル差分処理手段と、前記差分により得られたデータのうち、前記正常血管モデルと連結し、かつ体積が最大の部分を動脈瘤部として抽出する動脈瘤部抽出手段と、前記抽出された部分以外をフィルタリング処理するフィルタリング処理手段と、前記元データから前記抽出した部分を差分し、更に正常血管モデルを含む部分を母血管として抽出する母血管抽出手段と、前記動脈瘤部と前記母血管部との境界領域をネック領域として特定するネック領域特定手段とを含むことを特徴とする動脈瘤計測装置(請求項6)。
【0022】
この発明の装置によれば、3次元画像から認識される動脈瘤が形成されている血管域を手動で指定するだけで、母血管と動脈瘤との境界面を検知することができる。これにより、動脈瘤の体積、サイズを認識するにあたって手動計測による誤差を未然に防ぐことができる。
【0023】
(7)前記正常血管モデル生成手段において正しく正常血管モデルが生成されない場合、前記血管芯線を含む画素の距離値を利用して、前記血管芯線から血管表面までの最小半径を求め、血管芯線を当該最小半径まで膨張させることにより代替的に正常血管モデルを生成する代替的正常血管モデル生成手段を有することを特徴とする、(6)に記載の動脈瘤計測装置(請求項7)。
【0024】
この発明の装置によれば、血管のねじれや撓みがあるため、あるいは手動によって流入部や流出部を適切に指定できなかったために正常血管モデルを正しく生成できなかった場合であっても、精査領域内の血管太さのうち最細の太さが正常血管モデルにおける血管太さとして生成されるため、その後の動脈瘤計測処理にスムーズに進むことができる。
【0025】
(8)前記ネック領域上の最も距離の遠い2点を探索し、当該2点を結ぶ直線をネックとし、当該ネックの長さを測定するネック長測定手段と、前記ネックの中点から動脈瘤領域上最も遠い点を探索し、当該2点を結ぶ直線を動脈瘤の縦とし、当該動脈瘤の縦の長さを測定する動脈瘤縦長測定手段と、前記動脈瘤の縦に対し垂直な断面画像データを生成する対動脈瘤縦垂直断面画像生成手段と、前記生成された断面画像データ中、動脈瘤領域の面積が最大となる画像データを抽出する画像データ抽出手段と、前記抽出された断面画像データ上の動脈瘤領域内で最も距離の遠い2点を探索し、当該2点を結ぶ直線を動脈瘤の横とし、当該動脈瘤の横の長さを測定する動脈瘤横長測定手段と、を更に含むことを特徴とする(6)又は(7)に記載の動脈瘤計測装置(請求項8)。
【0026】
この発明の装置によれば、さまざまな形状を有する可能性がある動脈瘤の形状を特定するにあたって、誤差の少ない形状把握を行うための指標を数値化したものが自動的に計測されるため、3次元画像で得られる患部イメージを形状を示す数値で補完することができ、治療方針の決定や施術前の準備を疎漏なく行うことに役立つ。
【0027】
(9)動脈瘤領域上の全ての画素の画素数に画像解像度を乗じた結果を動脈瘤の体積として抽出する動脈瘤体積抽出手段を有することを特徴とする、(6)又は(7)に記載の動脈瘤計測装置(請求項9)。
【0028】
この発明によれば、3次元画像における動脈瘤に相当するデータを特定することにより当該動脈瘤の体積を把握することができる。
【0029】
(10)所定の手順により動脈瘤部と母血管部との境界領域をネック領域として特定するネック領域特定手段と、前記ネック領域上の最も距離の遠い2点を探索し、当該2点を結ぶ直線をネックとし、当該ネックの長さを測定するネック長測定手段と、前記ネックの中点から動脈瘤領域上最も遠い点を探索し、当該2点を結ぶ直線を動脈瘤の縦とし、当該動脈瘤の縦の長さを測定する動脈瘤縦長測定手段と、前記動脈瘤の縦に対し垂直な断面画像データを生成する対動脈瘤縦垂直断面画像生成手段と、前記生成された断面画像データ中、動脈瘤領域の面積が最大となる画像データを抽出する画像データ抽出手段と、前記抽出された断面画像データ上の動脈瘤領域内で最も距離の遠い2点を探索し、当該2点を結ぶ直線を動脈瘤の横とし、当該動脈瘤の横の長さを測定する動脈瘤横長測定手段とを含むことを特徴とする動脈瘤計測装置(請求項10)。
【0030】
この発明によれば、さまざまな形状を有する可能性がある動脈瘤の形状を特定するにあたって、誤差の少ない形状把握を行うための指標を数値化したものが自動的に計測されるため、3次元画像で得られる患部イメージを形状を示す数値で補完することができ、治療方針の決定や施術前の準備を疎漏なく行うことに役立つ。とりわけ、動脈瘤のネック面すなわち本来的な血管と動脈瘤部分との境界面、ネックすなわち該境界面上の最長距離、動脈瘤の縦及び横という計測位置が一義的に定められることにより、いずれの医療機関において測定したとしても通有性のあるデータを抽出することができる。
【0031】
(11)コンピュータに(1)から(5)の何れかに記載の動脈瘤計測方法を実行させるためのプログラム(請求項11)。
【0032】
この発明のプログラムを所定のプラットフォーム上で実行させることで、手動による動脈瘤の形状・サイズ計測では生じてしまいがちな誤差を極力排除することができる。特に未破裂脳動脈瘤の形状、サイズの把握は、治療方針そのものや手術前の必要資材量の把握には不可欠であり、これを規定化された所定の数値にて表現することにより、治療にあたる医師はこれを有効な情報として活用することができる。
【0033】
なお本発明において「血管断面に特徴が表れる」とは、連続する断面画像データ上の血管領域の面積増大や、血管領域形状の円形度の低下など、動脈瘤が存在する場合に断面画像データ上に現れうる特徴が生じることを意味する。面積の測定及び領域の周囲長の測定には、ラベリング処理等既存の方法を適用可能である。円形度とはどれだけ円に近いかをあらわすパラメータであり、(円形度)=(4π×(面積))/(周囲長の2乗)で求めることができる。特徴と認定する面積増大比率や円形度の低下率は、動脈瘤が現れる断面画像データを抽出できるよう適宜設定することができる。特徴が表れているか否かを判定するパラメータとしては、面積増大、円形度低下のいずれか一方でも良く、双方でも良い。また他の特徴を現すパラメータを複合的に参照してもよい。
【0034】
「細線化処理」とは、ThinningやSkeletonizationと呼ばれ、二値画像(白と黒の色だけで表現された2階調の画像)を幅1ピクセルの線画像に変換する処理をいう。また本発明において「血管芯線」とは、血管を血流方向と垂直の断面に現れる円の中心を連続させた仮想線をいう。また「正常血管モデル」とは、動脈瘤が発生していなかった場合の仮想的な血管をいう。また「フィルタリング処理」とは、3次元元データにおいて表れる、動脈瘤以外のノイズを除去するための処理をいい、メディアンフィルタ或いはモルフォロジカルフィルタなど任意のフィルタリング処理を適用することができる。
【0035】
また、本発明において「ネック面」とは、動脈瘤部と母血管部との境界面をいい、ネック面上の2点間のうち最長のものを結ぶ直線を「ネック」といい、その長さを「ネック長」という。また、「ネック」の中点から動脈瘤領域上最も遠い点を探索し、両点を結ぶ直線を「動脈瘤の縦」とし、その長さを「動脈瘤の縦長」とする。さらに「動脈瘤の縦」に垂直な断面を微小間隔で形成したときに、各断面に現れる動脈瘤の断面積が最大となる断面において、当該動脈瘤領域内の2点間の距離が最長となる2点を結ぶ直線を「動脈瘤の横」とし、その長さを「動脈瘤の横長」とする。
【0036】
このように、動脈瘤の形状についてその計測する箇所を一義的に定義することにより、異なる機関において計測を行った場合であっても同一の基準に基づいて動脈瘤の形状を把握することができるというメリットがある。本発明にかかる測定方法、測定装置及びプログラムにおいては、こうした一定の基準に基づいた動脈瘤の形状把握を行うことができ、しかもその測定の基礎となるネック面の把握を極力誤差が生じない態様により行うことができる。これによりいかなる医療機関で計測を行った場合であっても、人的な恣意が介在するのは、血管の流入部及び流出部の特定のみに絞られる。一般の医療従事者においては、血管の流入部及び流出部の特定を、3次元画像に基づいて行うことは容易であり、誰が行っても同じ結果の出る、再現性の高い動脈瘤計測を行うことができる。
【0037】
なお、本発明における「動脈瘤」とは、主として脳動脈瘤を念頭においているが、計測対象は必ずしもこれに限られず、脳以外の身体部位における動脈瘤にも適用可能である。更には、静脈瘤の測定にも用いることが可能である。明瞭簡便な記載の観点から「動脈瘤」の単一の用語を用いているが、その後の治療方法の相違はともかくとして、瘤の測定という観点では同一であり、静脈瘤の測定方法、測定装置、及び測定用プログラムを除外する趣旨ではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、図面を参照しつつ本発明に好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、全図を通じ同一部分には同一の符号を付すこととする。なお以下では典型的な適用例として、脳動脈瘤の測定例をもって説明する。
【0039】
図1は、本発明の一実施例である脳動脈瘤測定装置のハードウェア構成を表すブロック図である。脳動脈瘤測定装置100は、CPU101、ROM102、RAM103、バス104、I/F105、入力手段106、表示装置107、HDD108及び通信ポート109を有する。ROM102は不揮発性の記憶装置であり、ブートプログラム等の基本プログラムを記憶する。RAM103は揮発性の記憶装置であり、プログラムやデータを記憶する領域として、或いは、CPU101による処理に使用しているデータを格納する作業領域として利用される。これらの構成は、バス104及びI/F105を介して入力手段106、表示装置107、HDD108及び通信ポート109と接続している。
【0040】
入力手段106は、外部の操作者が入力操作を行うためのデバイスであり、具体的にはマウスやキーボードが一般的であるが、これらに限定されない。例えば、スキャナなどの患部画像データ取り込み手段なども含まれる。表示装置107は、例えば液晶ディスプレイや、CRTディスプレイ等の画像を表示する装置である。なお本実施例においては測定装置として他のノードと一体的な構成として説明しているが、当然これに限定されることはなく、例えば拡張端子(図示しない)を介して外部接続する表示装置であってもよい。
【0041】
HDD108は、OS(オペレーティングシステム)及び各種アプリケーションソフトを読み出し可能に記憶するほか、各種アプリケーションソフトにおける保存データを記憶する。通信ポート109は、ネットワーク110を介して外部の装置とのデータのやりとりの仲介を行う。
【0042】
図2は、HDD108に記憶されているソフトウェア群を示す概念図である。HDD108に記憶されているデータ及びプログラムとしては、OS(オペレーティングシステム)及びその関連プログラム210、アプリケーションソフトにおける保存データ220、アプリケーションソフト230などがある。本実施例における動脈瘤計測装置においては、後述する機能をハードウェアに機能させる動脈瘤測定プログラム231、及び3次元画像処理ビューワ241が記憶されている。また3次元画像処理ビューワで展開する医療画像データ221が記憶される領域を有している。
【0043】
3次元画像処理ビューワとしては、MRIやCTのDICOM画像などを編集可能なソフトウェアであればよく、例えば「REAL INTAGE」(株式会社ケイ・ジー・ティー製)などを採用することができる。記憶される医療画像データ221のフォーマットとしては、先述のDICOMの他、RAWデータ、TIFF、BMPなどが加工可能である。
【0044】
なお、本実施例においては、上記各アプリケーション及びそこで用いられる保存データの記憶領域をHDD108と規定しているが、説明の便宜のためであり、記憶装置としての物理的形状はHDDに特定されることはなく、例えばフラッシュメモリなどでも良く、また医療画像データについては外部メディア(図示しない)からRAM103の作業領域に逐次展開しても良い。
【0045】
次に、本実施例の動脈瘤測定装置における動脈瘤形状及び動脈瘤サイズの測定の流れを説明する。図3及び図4は動脈瘤測定のステップを示すフローチャートである。図3は対象となる動脈瘤画像から動脈瘤、母血管及びネック領域の特定を行う過程を示したものであり、図4はこれに基づき動脈瘤のネック長及び形状、体積を抽出する過程を示したものである。
【0046】
まず、医療画像データ221の中から測定対象が撮像された所定の医療画像データ221の選択を行う(ステップS301。以下医療画像データ221を「元データ」ということがある)。選択された元データは表示装置107上に表示される。この際、動脈瘤を含む血管部分をある程度抽出する。その後の手動による指定作業の便宜のためである。図6(a)はある程度抽出した動脈瘤を含む血管画像の元データである。
【0047】
次に、動脈瘤の母血管の流入側と流出側血管を指定する(ステップS302)。操作者は、表示装置107に表示された画像(図6(a)参照)を見つつ、入力手段106、例えばマウス等により画面上の流入側血管及び流出側血管を指定する。図6(a)は、元データから動脈瘤ANを含む血管をある程度抽出したものである。本事例では母血管MAから図示右上方向に動脈瘤が隆起した状態を示している。ここで操作者は、動脈瘤の母血管の流入側と流出側血管を指定する。この指定により、図6(b)に示されるように指定された箇所にマーキングmi、moがなされる。
【0048】
上記マーキングが完了すると、動脈瘤測定プログラム231は画像解析を開始する。まず元データの細線化処理を行い、血管芯線の抽出を行う(ステップS303)。細線化処理手法を用いることにより、血管内の管空構造を容易に把握することができる。脳動脈はとりわけ蛇行が著しく、血管の正断面を3次元画像上で把握することの困難性から解放される。
【0049】
次に、正常血管モデルの生成を行う(ステップS304)。図5は正常血管モデルの生成の詳細を示すサブルーチンである。まず、先に抽出された血管芯線に基づき、これと垂直な仮想断面による連続スライス画像を生成する(ステップS501)。ここで、処理対象となっている画像領域内には動脈瘤が包含されていることから、連続するスライス画像のうち動脈瘤にかかる部分においては、血管断面の膨張や血管断面以外の断面が現れることになる。これらを特徴として認識し、かかる特徴を含むスライス画像を特定する(ステップS502)。動脈瘤には様々なタイプがあり、その形状も不定形であるところ、断面の特徴値として把握することにより、正常な血管部(母血管)と患部(動脈瘤)との適切な峻別が可能となる。
【0050】
次に、前述の特徴を有するスライス画像以外のスライス画像に表れている血管断面は、略同一径となることから、これが動脈瘤がないと仮定した場合の血管径となる。そこでこの血管断面データを、面積増大、円形度低下の特徴を含むスライス画像上に、スライス画像の前後で連続性を有するように補完して配置する(ステップS503)。これらを結合して(ステップS504)、正常血管モデルとする。
【0051】
メインフロー(図3)に戻り、元データから、生成した正常血管モデルデータを差分する(ステップS305)。そして、差分により得られたデータのうち、正常血管モデルと連結し、かつ体積が最大となる部分を動脈瘤部として抽出する(ステップS306)。ここで正常血管モデルと連結としたのは、それ以外にも画像上に浮遊するノイズが発生しており、これらを除外することで正確な形状、体積を算出するためである。
【0052】
前記ノイズについては、任意のフィルタリング手段により除去する(ステップS307)。次いで元データから先に抽出した動脈瘤部を差分し、更に正常血管モデルを含む部分を母血管として抽出する(ステップS308)。この一連の流れにより、動脈瘤部と母血管部とが特定される。ここで特定された両者の境界領域が元データ上明らかになる。この境界領域をネック領域として特定する(ステップS309)。
【0053】
なお、正常血管モデル生成が諸般の原因、例えば流入部、流出部の手動指定が適切でないために正しく行われない場合がある。その場合、上記に代え、血管芯線を含む画素の距離値を利用して、血管芯線から血管表面までの最小半径を求め、血管芯線を当該最小半径まで膨張させることにより代替的に正常血管モデルを生成するようにしてもよい。
【0054】
次に、ネック領域上の最も距離の遠い2点を総当りで探索し、当該2点を結ぶ直線をネックとし、当該ネックの長さを測定する(ステップS401)。図7(a)は、図6の画像データの解析の結果測定されたネック長nを示した図である。次いでネックの中点を特定した上で、中点から動脈瘤領域上最も遠い点を探索し、中点と最も遠い点とを結ぶ直線を動脈瘤の縦とし、その長さを測定する(ステップS402)。図7(b)は、測定された動脈瘤の縦長lを示した図である。
【0055】
次いで、動脈瘤の縦に対して垂直な断面画像データを小間隔で連続して生成する(ステップS403)。生成された複数のスライス画像データのうち、動脈瘤の断面積が最大となるスライス画像データを抽出する(ステップS404)。そうして、当該動脈瘤断面における相互に最も距離の遠い2点を探索し、両者を結ぶ線を動脈瘤の横とし、その距離を動脈瘤の横長として測定する(ステップS406)。図7(c)は、測定された動脈瘤の横長cを示した図である。
【0056】
最後に、動脈瘤の体積を測定する。動脈瘤の体積は、ステップS306において動脈瘤部と特定された元データ上の全ての画素の画素数に画像解像度を乗じたものを体積として抽出する(ステップS406)。
【0057】
この実施例における動脈瘤測定装置或いはプログラムは、例えば脳動脈の治療前評価としては十分臨床に応用することができる。とりわけ人為的な計測誤差を防ぐことができ、計測時間の短縮を図ることができる、という利点が認められる。こうした画一的な計測の実現により、施術に適切なコイル量、また将来的に予想される液体塞栓物質やコイルを封入するための、バルーンやステントの形状、長さを事前に見積もることができ、スムーズな施術に寄与する。
【0058】
また、この実施例のように、動脈瘤の測定位置を製品上定義することにより、各病院施設間での計測数値の不一致を防ぐことができ、治療ガイドライン上の数値がより有効なものとして機能する。
【0059】
なお、この実施例においては、動脈瘤を形状にて分類した場合におけるサイドウォール型を例として説明したが、同様のステップによる解析、測定により、他の形状の動脈瘤についてもその形状、体積を自動的に測定することができる。図8は各種形状の動脈瘤を示したものである。図8(a)は上記において説明したサイドウォール型の動脈瘤であり、母血管の芯線w、ネックn、動脈瘤の縦の長さl、動脈瘤の横の長さcがそれぞれ図示されたように模式的に示される。図8(b)は分岐型動脈瘤について、図8(c)は紡錘型動脈瘤について示したものである。これらの形状の動脈瘤においても同様に、母血管との境界面(ネック面)の特定、ネック長さの特定、動脈瘤の縦長の測定、動脈瘤の横長の特定、というステップで動脈瘤の形状、大きさが測定される。なおサイドウォール型及び分岐型においては、ネック面は周縁のある曲面状に現れ、紡錘型においては、ネック面は円筒状に現れることとなるが、いずれにおいても形状及び大きさを特定する基準として活用しうる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施例における動脈瘤測定装置のハードウェア構成図である。
【図2】図1における記憶手段に記憶されたソフトウェア概念図である。
【図3】動脈瘤測定の流れを示すフローチャートである。
【図4】動脈瘤測定の流れを示すフローチャートである。
【図5】図3における、正常血管モデル生成のサブルーチンである。
【図6(a)】動脈瘤部分の元データの3次元画像である。
【図6(b)】動脈瘤部分の元データにおいて流入部及び流出部の特定を行った画像である。
【図7(a)】図6の画像データの解析において測定されたネックを示す図である。
【図7(b)】同じく動脈瘤の縦長を示す図である。
【図7(c)】同じく動脈瘤の横長を示す図である。
【図8(a)】サイドウォール型動脈瘤のネック、縦、横を示す模式図である。
【図8(b)】分岐型動脈瘤のネック、縦、横を示す模式図である。
【図8(c)】紡錘型動脈瘤のネック、縦、横を示す模式図である。
【符号の説明】
【0061】
100 脳動脈瘤測定装置
101 CPU
102 ROM
103 RAM
107 表示装置
108 HDD
221 医療画像データ
231 動脈瘤測定プログラム
241 3次元画像処理ビューワ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを用いた3次元脳部画像から動脈瘤を検出しその形状を計測する動脈瘤計測方法であって、
外部からの入力により動脈瘤を含む画像領域を特定し元データとする工程と、
外部からの入力により血管内血流の流入部及び流出部を特定する工程と、
前記特定された画像領域の細線化処理を行う工程と、
前記細線化処理された画像データ及び前記特定された流入部及び流出部とに基づき血管芯線を特定する工程と、
前記特定された血管芯線に対し垂直な断面画像データを生成する工程と、
前記生成された断面画像データにおいて血管断面に特徴が表れる断面画像データを特定する工程と、
前記特定された断面画像データ以外の画像データにおける血管断面に基づき、前記特定された断面画像データ上に正常血管を仮想的に配置した正常血管モデルを生成する工程と、
前記元データから前記正常血管モデルを差分する工程と、
前記差分により得られたデータのうち、前記正常血管モデルと連結し、かつ体積が最大の部分を動脈瘤部として抽出する工程と、
前記抽出された部分以外をフィルタリング処理する工程と、
前記元データから前記抽出した部分を差分し、更に正常血管モデルを含む部分を母血管として抽出する工程と、
前記動脈瘤部と前記母血管部との境界面をネック面として特定する工程と、
を含むことを特徴とする動脈瘤計測方法。
【請求項2】
前記正常血管モデルを生成する工程において正しく正常血管モデルが生成されない場合、前記血管芯線を含む画素の距離値を利用して、前記血管芯線から血管表面までの最小半径を求め、血管芯線を当該最小半径まで膨張させることにより代替的に正常血管モデルを生成する工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の動脈瘤計測方法。
【請求項3】
前記ネック面上の最も距離の遠い2点を探索し、当該2点を結ぶ直線をネックとし、当該ネックの長さを測定する工程と、
前記ネックの中点から動脈瘤領域上最も遠い点を探索し、当該2点を結ぶ直線を動脈瘤の縦とし、当該動脈瘤の縦の長さを測定する工程と、
前記動脈瘤の縦に対し垂直な断面画像データを生成する工程と、
前記断面画像データ中、動脈瘤領域の面積が最大となる画像データを抽出する工程と、
前記抽出された断面画像データ上の動脈瘤領域内で最も距離の遠い2点を探索し、当該2点を結ぶ直線を動脈瘤の横とし、当該動脈瘤の横の長さを測定する工程と、
を更に含むことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の動脈瘤計測方法。
【請求項4】
動脈瘤領域上の全ての画素の画素数に画像解像度を乗じた結果を動脈瘤の体積として抽出することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の動脈瘤計測方法。
【請求項5】
コンピュータを用いた3次元脳部画像から動脈瘤を検出しその形状を計測する動脈瘤計測方法であって、
所定の手順により前記動脈瘤部と前記母血管部との境界面をネック面として特定する工程と、
前記ネック面上の最も距離の遠い2点を探索し、当該2点を結ぶ直線をネックとし、当該ネックの長さを測定する工程と、
前記ネックの中点から動脈瘤領域上最も遠い点を探索し、当該2点を結ぶ直線を動脈瘤の縦とし、当該動脈瘤の縦の長さを測定する工程と、
前記動脈瘤の縦に対し垂直な断面画像データを生成する工程と、
前記断面画像データ中、動脈瘤領域の面積が最大となる画像データを抽出する工程と、
前記抽出された断面画像データ上の動脈瘤領域内で最も距離の遠い2点を探索し、当該2点を結ぶ直線を動脈瘤の横とし、当該動脈瘤の横の長さを測定する工程と、
を含むことを特徴とする動脈瘤計測方法。
【請求項6】
外部からの入力により動脈瘤を含む画像領域を特定し元データとする元データ特定手段と、
外部からの入力により血管内血流の流入部及び流出部を特定する流入部流出部特定手段と、
前記特定された画像領域の細線化処理を行う細線化処理手段と、
前記細線化処理された画像データ及び前記特定された流入部及び流出部とに基づき血管芯線を特定する血管芯線特定手段と、
前記特定された血管芯線に対し垂直な断面画像データを生成する対血管芯線垂直断面画像生成手段と、
前記生成された断面画像データにおいて血管断面に面積増大、円形度低下の特徴が表れる画像データを特定する特徴断面特定手段と、
前記特定された断面画像データ以外の画像データにおける血管断面に基づき、前記特定された断面画像データ上に正常血管を仮想的に配置した正常血管モデルを生成する正常血管モデル生成手段と、
前記元データから前記正常血管モデルを差分する元データ‐正常血管モデル差分処理手段と、
前記差分により得られたデータのうち、前記正常血管モデルと連結し、かつ体積が最大の部分を動脈瘤部として抽出する動脈瘤部抽出手段と、
前記抽出された部分以外をフィルタリング処理するフィルタリング処理手段と、
前記元データから前記抽出した部分を差分し、更に正常血管モデルを含む部分を母血管として抽出する母血管抽出手段と、
前記動脈瘤部と前記母血管部との境界領域をネック領域として特定するネック領域特定手段と、
を含むことを特徴とする動脈瘤計測装置。
【請求項7】
前記正常血管モデル生成手段において正しく正常血管モデルが生成されない場合、前記血管芯線を含む画素の距離値を利用して、前記血管芯線から血管表面までの最小半径を求め、血管芯線を当該最小半径まで膨張させることにより代替的に正常血管モデルを生成する代替的正常血管モデル生成手段を有することを特徴とする、請求項6に記載の動脈瘤計測装置。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の動脈瘤計測装置において、
前記ネック領域上の最も距離の遠い2点を探索し、当該2点を結ぶ直線をネックとし、当該ネックの長さを測定するネック長測定手段と、
前記ネックの中点から動脈瘤領域上最も遠い点を探索し、当該2点を結ぶ直線を動脈瘤の縦とし、当該動脈瘤の縦の長さを測定する動脈瘤縦長測定手段と、
前記動脈瘤の縦に対し垂直な断面画像データを生成する対動脈瘤縦垂直断面画像生成手段と、
前記生成された断面画像データ中、動脈瘤領域の面積が最大となる断面画像データを抽出する画像データ抽出手段と、
前記抽出された断面画像データ上の動脈瘤領域内で最も距離の遠い2点を探索し、当該2点を結ぶ直線を動脈瘤の横とし、当該動脈瘤の横の長さを測定する動脈瘤横長測定手段と、
を更に含むことを特徴とする、請求項6又は請求項7に記載の動脈瘤計測装置。
【請求項9】
動脈瘤領域上の全ての画素の画素数に画像解像度を乗じた結果を動脈瘤の体積として抽出する動脈瘤体積抽出手段を有することを特徴とする、請求項6又は請求項7に記載の動脈瘤計測装置。
【請求項10】
所定の手順により動脈瘤部と母血管部との境界領域をネック領域として特定するネック領域特定手段と、
前記ネック領域上の最も距離の遠い2点を探索し、当該2点を結ぶ直線をネックとし、当該ネックの長さを測定するネック長測定手段と、
前記ネックの中点から動脈瘤領域上最も遠い点を探索し、当該2点を結ぶ直線を動脈瘤の縦とし、当該動脈瘤の縦の長さを測定する動脈瘤縦長測定手段と、
前記動脈瘤の縦に対し垂直な断面画像データを生成する対動脈瘤縦垂直断面画像生成手段と、
前記生成された断面画像データ中、動脈瘤領域の面積が最大となる画像データを抽出する画像データ抽出手段と、
前記抽出された断面画像データ上の動脈瘤領域内で最も距離の遠い2点を探索し、当該2点を結ぶ直線を動脈瘤の横とし、当該動脈瘤の横の長さを測定する動脈瘤横長測定手段と、
を含むことを特徴とする動脈瘤計測装置。
【請求項11】
コンピュータに請求項1ないし請求項5の何れか1に記載の動脈瘤計測方法を実行させるためのプログラム。
【請求項1】
コンピュータを用いた3次元脳部画像から動脈瘤を検出しその形状を計測する動脈瘤計測方法であって、
外部からの入力により動脈瘤を含む画像領域を特定し元データとする工程と、
外部からの入力により血管内血流の流入部及び流出部を特定する工程と、
前記特定された画像領域の細線化処理を行う工程と、
前記細線化処理された画像データ及び前記特定された流入部及び流出部とに基づき血管芯線を特定する工程と、
前記特定された血管芯線に対し垂直な断面画像データを生成する工程と、
前記生成された断面画像データにおいて血管断面に特徴が表れる断面画像データを特定する工程と、
前記特定された断面画像データ以外の画像データにおける血管断面に基づき、前記特定された断面画像データ上に正常血管を仮想的に配置した正常血管モデルを生成する工程と、
前記元データから前記正常血管モデルを差分する工程と、
前記差分により得られたデータのうち、前記正常血管モデルと連結し、かつ体積が最大の部分を動脈瘤部として抽出する工程と、
前記抽出された部分以外をフィルタリング処理する工程と、
前記元データから前記抽出した部分を差分し、更に正常血管モデルを含む部分を母血管として抽出する工程と、
前記動脈瘤部と前記母血管部との境界面をネック面として特定する工程と、
を含むことを特徴とする動脈瘤計測方法。
【請求項2】
前記正常血管モデルを生成する工程において正しく正常血管モデルが生成されない場合、前記血管芯線を含む画素の距離値を利用して、前記血管芯線から血管表面までの最小半径を求め、血管芯線を当該最小半径まで膨張させることにより代替的に正常血管モデルを生成する工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の動脈瘤計測方法。
【請求項3】
前記ネック面上の最も距離の遠い2点を探索し、当該2点を結ぶ直線をネックとし、当該ネックの長さを測定する工程と、
前記ネックの中点から動脈瘤領域上最も遠い点を探索し、当該2点を結ぶ直線を動脈瘤の縦とし、当該動脈瘤の縦の長さを測定する工程と、
前記動脈瘤の縦に対し垂直な断面画像データを生成する工程と、
前記断面画像データ中、動脈瘤領域の面積が最大となる画像データを抽出する工程と、
前記抽出された断面画像データ上の動脈瘤領域内で最も距離の遠い2点を探索し、当該2点を結ぶ直線を動脈瘤の横とし、当該動脈瘤の横の長さを測定する工程と、
を更に含むことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の動脈瘤計測方法。
【請求項4】
動脈瘤領域上の全ての画素の画素数に画像解像度を乗じた結果を動脈瘤の体積として抽出することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の動脈瘤計測方法。
【請求項5】
コンピュータを用いた3次元脳部画像から動脈瘤を検出しその形状を計測する動脈瘤計測方法であって、
所定の手順により前記動脈瘤部と前記母血管部との境界面をネック面として特定する工程と、
前記ネック面上の最も距離の遠い2点を探索し、当該2点を結ぶ直線をネックとし、当該ネックの長さを測定する工程と、
前記ネックの中点から動脈瘤領域上最も遠い点を探索し、当該2点を結ぶ直線を動脈瘤の縦とし、当該動脈瘤の縦の長さを測定する工程と、
前記動脈瘤の縦に対し垂直な断面画像データを生成する工程と、
前記断面画像データ中、動脈瘤領域の面積が最大となる画像データを抽出する工程と、
前記抽出された断面画像データ上の動脈瘤領域内で最も距離の遠い2点を探索し、当該2点を結ぶ直線を動脈瘤の横とし、当該動脈瘤の横の長さを測定する工程と、
を含むことを特徴とする動脈瘤計測方法。
【請求項6】
外部からの入力により動脈瘤を含む画像領域を特定し元データとする元データ特定手段と、
外部からの入力により血管内血流の流入部及び流出部を特定する流入部流出部特定手段と、
前記特定された画像領域の細線化処理を行う細線化処理手段と、
前記細線化処理された画像データ及び前記特定された流入部及び流出部とに基づき血管芯線を特定する血管芯線特定手段と、
前記特定された血管芯線に対し垂直な断面画像データを生成する対血管芯線垂直断面画像生成手段と、
前記生成された断面画像データにおいて血管断面に面積増大、円形度低下の特徴が表れる画像データを特定する特徴断面特定手段と、
前記特定された断面画像データ以外の画像データにおける血管断面に基づき、前記特定された断面画像データ上に正常血管を仮想的に配置した正常血管モデルを生成する正常血管モデル生成手段と、
前記元データから前記正常血管モデルを差分する元データ‐正常血管モデル差分処理手段と、
前記差分により得られたデータのうち、前記正常血管モデルと連結し、かつ体積が最大の部分を動脈瘤部として抽出する動脈瘤部抽出手段と、
前記抽出された部分以外をフィルタリング処理するフィルタリング処理手段と、
前記元データから前記抽出した部分を差分し、更に正常血管モデルを含む部分を母血管として抽出する母血管抽出手段と、
前記動脈瘤部と前記母血管部との境界領域をネック領域として特定するネック領域特定手段と、
を含むことを特徴とする動脈瘤計測装置。
【請求項7】
前記正常血管モデル生成手段において正しく正常血管モデルが生成されない場合、前記血管芯線を含む画素の距離値を利用して、前記血管芯線から血管表面までの最小半径を求め、血管芯線を当該最小半径まで膨張させることにより代替的に正常血管モデルを生成する代替的正常血管モデル生成手段を有することを特徴とする、請求項6に記載の動脈瘤計測装置。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の動脈瘤計測装置において、
前記ネック領域上の最も距離の遠い2点を探索し、当該2点を結ぶ直線をネックとし、当該ネックの長さを測定するネック長測定手段と、
前記ネックの中点から動脈瘤領域上最も遠い点を探索し、当該2点を結ぶ直線を動脈瘤の縦とし、当該動脈瘤の縦の長さを測定する動脈瘤縦長測定手段と、
前記動脈瘤の縦に対し垂直な断面画像データを生成する対動脈瘤縦垂直断面画像生成手段と、
前記生成された断面画像データ中、動脈瘤領域の面積が最大となる断面画像データを抽出する画像データ抽出手段と、
前記抽出された断面画像データ上の動脈瘤領域内で最も距離の遠い2点を探索し、当該2点を結ぶ直線を動脈瘤の横とし、当該動脈瘤の横の長さを測定する動脈瘤横長測定手段と、
を更に含むことを特徴とする、請求項6又は請求項7に記載の動脈瘤計測装置。
【請求項9】
動脈瘤領域上の全ての画素の画素数に画像解像度を乗じた結果を動脈瘤の体積として抽出する動脈瘤体積抽出手段を有することを特徴とする、請求項6又は請求項7に記載の動脈瘤計測装置。
【請求項10】
所定の手順により動脈瘤部と母血管部との境界領域をネック領域として特定するネック領域特定手段と、
前記ネック領域上の最も距離の遠い2点を探索し、当該2点を結ぶ直線をネックとし、当該ネックの長さを測定するネック長測定手段と、
前記ネックの中点から動脈瘤領域上最も遠い点を探索し、当該2点を結ぶ直線を動脈瘤の縦とし、当該動脈瘤の縦の長さを測定する動脈瘤縦長測定手段と、
前記動脈瘤の縦に対し垂直な断面画像データを生成する対動脈瘤縦垂直断面画像生成手段と、
前記生成された断面画像データ中、動脈瘤領域の面積が最大となる画像データを抽出する画像データ抽出手段と、
前記抽出された断面画像データ上の動脈瘤領域内で最も距離の遠い2点を探索し、当該2点を結ぶ直線を動脈瘤の横とし、当該動脈瘤の横の長さを測定する動脈瘤横長測定手段と、
を含むことを特徴とする動脈瘤計測装置。
【請求項11】
コンピュータに請求項1ないし請求項5の何れか1に記載の動脈瘤計測方法を実行させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図7(c)】
【図8(a)】
【図8(b)】
【図8(c)】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図7(c)】
【図8(a)】
【図8(b)】
【図8(c)】
【公開番号】特開2009−240543(P2009−240543A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−91026(P2008−91026)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(399109908)株式会社ケイ・ジー・ティー (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(399109908)株式会社ケイ・ジー・ティー (5)
【Fターム(参考)】
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