説明

包装体

【課題】エダラボンなどのピラゾロン誘導体を有効成分として含有する水溶液剤をボトル等の容器に充填した注射剤容器等が着色せず、包装体外から内容物の変質等を確認することが出来、かつ有効成分の含有量が低下しない安定な保存用包装体を提供する。
【解決手段】プラスチック製容器に入れ密封した後、これを環状ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂層を最内層又は最内層と隣接する層として有するガスバリア性の外装材料で包装したことを特徴とする包装体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エダラボンなどのピラゾロン誘導体を有効成分として含有する水溶液剤の容器充填品の安定な保存用包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
エダラボン(3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン)などのピラゾロン誘導体は、脳梗塞急性期に伴う神経症候や日常生活動作障害及び機能障害の改善薬として点滴静注用として使用され、ラジカット注30mgとして、30mgのエダラボンを含む20mLの溶液をガラスアンプルに充填した形態で市販されている。
【0003】
しかし、ガラス製容器は重い上に破損しやすく、ガラス製アンプルの開封時には、ガラス微細片の薬液への混入やガラス破損時の手指の損傷が懸念される。特にエダラボン製剤は、発症後24時間以内に投与を開始する必要があり、緊急時の取扱いには、更なる注意が必要となる。さらに、ガラス製容器は使用済み容器の廃棄処理においても分別処理の問題などがあった。かかる問題の解決法として、プラスチック製容器が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、プラスチック製ディスポーザブル容器に充填された高濃度エダラボン注射液の提案がなされている。しかし、プラスチック製ディスポーザブル容器の吸着や透過などによるエダラボンの含有量の低下の問題に対しては認識されていない。
【0005】
有効成分の吸着に対して、特許文献2には、ピラゾロン化合物を含有する水溶液剤をポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン等の容器に充填し、容器の外装材料として気体難透過性の容器に脱酸素剤と共に収容することが提案されている。しかし、特許文献2においては、内溶液の着色、特に黄色方向の色度と容器との関係は開示されているが、ピラゾロン化合物の経時における容器への吸着、透過等の相互作用による含有量の低下の問題は認識されていない。しかも、容器を包装する気体難透過性容器としてアルミ容器が提案されているが、アルミ容器は、外部から内容物を確認することが出来ないので、容器の着色はもとより、容器の破損や異物混入などの検査を行うことが出来ないという問題を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−257020号公報
【特許文献2】WO2007/055312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、エダラボンなどのピラゾロン誘導体を有効成分として含有する水溶液剤を充填したプラスチック製の容器を外装材料で包装した包装体であって、プラスチック製容器が着色せず、包装体外から内容物の変質等を確認することが出来、かつ有効成分の含有量が低下しない安定な保存包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者は、上記課題を解決するため、プラスチック製容器及び包装材料への吸着及び着色の検討を行った結果、エダラボンなどのピラゾロン誘導体を有効成分として含有する水溶液剤を、プラスチック製容器に水溶液剤1mL中のピラゾロン誘導体の含有量A(mg)と、容器の内側表面積B(cm)の割合A/Bが、0.003以上となるように容器を形成して有効成分を溶解・充填した形態とし、その外側から環状ポリオレフィン(COP)系樹脂を主成分とする樹脂層と透明なガスバリア層を有する外装材料で包装することで、プラスチック製容器の着色防止のみならず、包装体外から内容物の変質等を確認することが出来、かつ有効成分の含有量低下も起こすことがない極めて安定な包装体となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の包装体を提供するものである。
請求項1の発明:ピラゾロン誘導体を有効成分として含有する水溶液剤をポリエチレン系樹脂又は/及びポリプロピレン系樹脂より成る容器に入れ密封した後、前記容器を、環状ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂層を最内層又は最内層と隣接する層として有し、且つその外側に透明なガスバリア層を有する外装材料で密封包装した包装体であって、前記水溶液剤1mL中のピラゾロン誘導体の含有量A(mg)と、前記容器の内側表面積B(cm)の割合A/Bが、0.003以上であることを特徴とする包装体。
請求項2の発明:前記包装体内における前記容器と外装材料との空間部に脱酸素剤を収納した請求項1に記載の包装体。
請求項3の発明:前記外装材料が深絞り成形又はブリスター成形されている請求項1または2に記載の包装体。
請求項4の発明:ピラゾロン誘導体を有効成分として含有する水溶液剤が注射用医薬製剤である請求項1〜3のいずれかに記載の包装体。
請求項5の発明:ピラゾロン誘導体がエダラボンである請求項1〜4のいずれかに記載の包装体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、利便性の高いプラスチック製容器を用いたエダラボンなどのピラゾロン誘導体を有効成分として含有する水溶液剤を、プラスチック製容器等の着色防止のみならず、包装体外から内容物の変質等を確認することが出来、かつ有効成分の含有量低下も起こすことがない極めて安定に保存可能な包装体を安価に提供することができる。
【0011】
請求項2の発明によれば、包装体内における前記容器と外装材料との空間部に脱酸素剤を収納したことで、速やかに包装体内の酸素を除去することが出来るので、成形容器等の着色、更には有効成分の含量低下を、より有効に防ぐことが可能であり、長期間にわたる保存を可能にすることができる。
【0012】
また、請求項3の発明によれば、外装材が深絞り成形又はブリスター成形されているので、注射剤の成形容器等をコンパクトな包装体とすることができる。さらに、剥離開封可能とすると取扱いに便利である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
エダラボンなどのピラゾロン誘導体を含有する水溶液剤を直接充填するプラスチック製容器は、医薬品等を収納するという性格から安全性が高いものであって、かつ、液体を通さない容器であれば特に制限はなく、ポリエチレン(PE)系樹脂又は/及びポリプロピレン(PP)系樹脂より成形されるボトル等の形状を有する成形容器であると好ましいが、ポリエチレン(PE)系樹脂又は/及びポリプロピレン(PP)系樹脂より成る袋状のソフトバッグであっても良い。その理由は、これらの樹脂は、着色されにくく、特にボトル等の成形容器はコスト的にも優れるからである。PE系樹脂やPP系樹脂がピラゾロン誘導体によって着色されにくい理由は、定かではないが、これらの樹脂は官能基を有しないので、ピラゾロン誘導体と反応しにくいためと推定される。すなわち、ガスバリア性を有する樹脂の容器は、EVOHやナイロン系樹脂などを使用した場合などは、内溶液と反応して着色してしまい好ましくないばかりか、容器を安価に製造するという目的を達成し得ない。
【0014】
本発明に用いられる容器の大きさは、水溶液剤1mL中のピラゾロン誘導体の含有量A(mg)と、容器の内側表面積B(cm)の割合A/Bが、0.003以上となるように内溶液と接液可能な容器の内側面積を極力少なくすることで、容器との反応及び容器を通した外部との反応が極力少なくなり、含有量の低下を一定レベルに保持することが可能で、また内溶液及び容器、外装材料への着色も起こさず、好ましい。A/Bが0.003を下回ると内溶液中の有効成分に対する容器及び容器外部からの影響により、内溶液の含量が低下したり、変色、着色等の減少がおこり好ましくない。
【0015】
本発明に用いられる成形容器の製造方法としては、特に制限はないが、従来公知の単層や多層の押出ブロー成形や射出ブロー成形が好適に採用される。多層の共押出ブロー成形の方法としては、少なくとも2台の押出機を有する多層押出機を用いて、溶融押出しを行い、各溶融樹脂層を多層パリソン成形用ダイの内部またはダイより吐出直後の外部で密着合流させ、管状の多層パリソンを得、次いでこの多層パリソンを溶融状態でブロー成形して多層容器を得る、いわゆるダイレクトブロー成形法や少なくとも2台の押出機を有する多層射出成形機を用いて射出成形によって多層パリソンを得てから、冷却途中に、あるいは冷却後再加熱してからブロー成形する方法が好適に採用される。多層パリソンをブロー成形する際には、延伸ブロー成形、特に二軸延伸ブロー成形することが好ましい。また水溶液剤の充填を成形と同時に行うブロー/フィル/シール方式を採用すると、より効率的に製造することが可能で好ましい。
また、ソフトバッグとする場合には、フィルムは多層あるいは単層のインフレーション成形あるいはTダイス押出し成形により得ることができる。容器の一部には内溶液を排出するための排出口(ポート)部及びゴム栓部が設けられていると好ましい。
【0016】
本発明に用いられる外装材料は、包装体内を外部より目視可能とする透明なガスバリア性包装材料である。すなわち、この包装材料は、透明なCOP系樹脂を主成分とする樹脂層(以下、「COPリッチ層」という場合がある。)を最内層又は最内層と隣接する層として有し、その外側に透明なガスバリア層を有する。この様な外装材料であると、成形容器のPE系樹脂やPP系樹脂の樹脂層がピラゾロン誘導体を透過させても、COPリッチ層によって外部と遮断されるので、有効成分の含有量低下を起こすことがない。そして、COPリッチ層の外側のガスバリア層によって酸素の侵入が阻止され、外装材料の最内層もピラゾロン誘導体と反応しにくい。その結果、外装材料の着色もなく、有効成分の含有量低下を起こすことがないので好ましい。特に外装材料の最内層がPEやPPのオレフィン系樹脂層であり、隣接する層が環状ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂層であると、成形容器が輸送時などに包装体内で動くことによる摩擦や接触によってCOPリッチ層を傷つけることがなく、有効成分の安定性の観点からより好ましい。
【0017】
このようなオレフィン系樹脂層としては、従来公知の樹脂を使用することが可能であり、高密度PE、直鎖状低密度PE(LLDPE)、中密度PE、PP及びそれらの熱可塑性エラストマーやこれらのブレンドを使用することが可能である。特にLLDPEを50質量%以上含んでいて、厚みが5μm以上50μm以下の範囲で最内層を構成すると、隣接するCOPリッチ層との接着強度も良く、また有効成分の含有量低下の問題も起こらずより好ましい。
【0018】
本発明に用いられる外装材料のガスバリア層としては、例えばエチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリビニルアルコールまたはそのコーティングフィルム、MXDナイロン、シリカやアルミナ等の透明な金属酸化物蒸着層、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)やPVDCコートしたフィルムからなる樹脂層を挙げることができ、これらのガスバリア層は、単独又は2種類以上を併用してもよい。また、外装材料は、COPリッチ層の外側に物理的強度を確保するためのPETやナイロン等の透明フィルムが積層されていてもよい。外装材料の製造方法は、接着剤を用いて各層をドライラミネートする方法や、溶融性樹脂を用いて押出ラミネートする方法、ヒートラミネーション、多層共押出し等の従来公知の方法を適宜採用することができる。ドライラミネートする場合には、二液硬化型のポリエステルウレタン系接着剤やポリエーテルウレタン系接着剤が接着性の観点から好ましい。
【0019】
COP系樹脂としては、特に制限はなく、従来公知の樹脂を使用することができる。例えば、種々の環状オレフィンモノマーの重合体や、環状オレフィンモノマーとエチレンなどの他のモノマーとの共重合体およびそれらの水素添加物などが挙げられる。環状オレフィンモノマーとしては、例えばノルボルネン、ノルボルナジエン、メチルノルボルネン、ジメチルノルボルネン、エチルノルボルネン、塩素化ノルボルネン、クロロメチルノルボルネン、トリメチルシリルノルボルネン、フェニルノルボルネン、シアノノルボルネン、ジシアノノルボルネン、メトキシカルボニルノルボルネン、ピリジルノルボルネン、ナヂック酸無水物、ナヂック酸イミドなどの二環シクロオレフィン;ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエンやそのアルキル、アルケニル、アルキリデン、アリール置換体などの三環シクロオレフィン;ジメタノヘキサヒドロナフタレン、ジメタノオクタヒドロナフタレンやそのアルキル、アルケニル、アルキリデン、アリール置換体などの四環シクロオレフィン;トリシクロペンタジエンなどの五環シクロオレフィン;ヘキサシクロヘプタデセンなどの六環シクロオレフィンなどが挙げられる。また、ジノルボルネン、二個のノルボルネン環を炭化水素鎖またはエステル基などで結合した化合物、これらのアルキル、アリール置換体などのノルボルネン環を含む化合物が挙げられる。本発明に用いるCOP系樹脂としては、ジシクロペンタジエン、ノルボルネン、テトラシクロドデセンといった、分子骨格中にノルボルネン骨格を含むノルボルネン系モノマーの1種または2種以上を重合して得られるポリノルボルネン系樹脂、またはその水素添加物、およびそれらを1種または2種以上を混合したものが、多層フィルムの最内層として使用すると、水溶液剤が容器に吸着又は収着することでその成分含有量が低下したり、容器との相互作用等により水溶液剤が劣化または汚染されることを防止することが可能で好ましい。
なお、本発明におけるCOP系樹脂のモノマー分子の重合方法や重合機構としては、開環重合であっても、付加重合であっても良い。また、複数種のモノマーを併用する場合の重合方法や重合機構としては、公知の方法を用いることができ、モノマー時に配合して共重合を行っても良いし、ある程度重合した後に配合してブロック共重合しても良い。
【0020】
上記COP系樹脂の具体的な構造としては、例えば、下記一般式(1)または(2)で表される構造式を示すことができる。
【化1】

(式中、R、R、RおよびRは互いに同一または異種の炭素数1〜20の有機基を示し、また、RとR、および/またはRとRは互いに環を形成していてもよい。m、pは0または1以上の整数を示す。l、nは1以上の整数を示す。)
上記炭素数1〜20の有機基として、より具体的には、例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、i−ペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、t−オクチル(1,1−ジメチル−3,3−ジメチルブチル)、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシル等のアルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等のシクロアルキル基;1−メチルシクロペンチル、1−メチルシクロヘキシル、1−メチル−4−i−プロピルシクロヘキシル等のアルキルシクロアルキル基;アリル、プロペニル、ブテニル、2−ブテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル等のアルケニル基;フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ビフェニル基、フェノキシフェニル基、クロロフェニル基、スルホフェニル基等のアリール基;ベンジル基、2−フェニルエチル基(フェネチル基)、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基等のアラルキル基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらは1種を単独で、あるいは2種以上を併用しても良い。
【0021】
このようなCOP系樹脂のガラス転移温度は、上記一般式(1)、(2)中のl、m、n、pの値、あるいは置換基を適宜選択することにより適宜調整することが可能である。上記一般式(1)、(2)以外のCOP系樹脂のガラス転移温度についても、用いるモノマー種、モノマー種の配合割合、モノマー配列、置換基の種類などを適宜設定することにより、任意に調整することができる。
上記一般式(1)で示されるCOP系樹脂としては市販品を用いることができ、例えば日本ゼオン株式会社製のゼオネックス、ゼオノアを好適に用いることができる。上記一般式(2)で示されるCOP系樹脂としては市販品を用いることができ、例えば三井化学株式会社製のアペル、TICONA社製のTOPASを好適に用いることができる。
【0022】
本発明に用いられる外装材料がトップ材とボトム材からなる深絞りまたはブリスター成形された包材であると、使用する外装材料の面積が少なくなり、安価で、コンパクトに収納できる包装体が得られるので、好ましい。また、トップ材とボトム材を剥離開封可能なイージーピールでヒートシールして包装すると、取扱いに便利である。イージーピールでヒートシールする方法には、最内層がCOPリッチ層である場合は、ヒートシール温度を低めに設定したり、スチレン系エラストマーに代表される熱可塑性エラストマーを少なくともどちらか一方に10質量%以上含有させる方法等がある。またトップ材とボトム材の少なくとも一方の最内層がPEやPPのオレフィン系樹脂層である場合は、他方の最内層をPEとPPの混合樹脂で形成したり、トップ材とボトム材の少なくとも一方の最内層をPEまたはPPとスチレン系エラストマーに代表される熱可塑性エラストマーを10質量%以上含有させる等による混合物で形成したりする方法等がある。
【0023】
深絞りまたはブリスター成形された後のCOPリッチ層の厚みは5μm以上100μm以下であると成形性と有効成分の含有量低下の問題もなく、且つ安価に製造することが可能であり好ましい。COPリッチ層の厚みが5μm未満であると、含有量低下を防止する効果が低くなり、またクラック発生の危険性も増すので好ましくなく、100μm以上あっても良いが、水溶液剤の有効成分の遮断効果は向上しないにもかかわらず、成形に時間がかかることと、非常に高価なCOP系樹脂の量が多くなり、コスト増加の要因となる。
【0024】
本発明に用いられる脱酸素剤は、包装体の内部空間の酸素を速やかに吸収し除去するもので、かつ酸素吸収量が多いものが好ましい。脱酸素剤には、例えば主成分として、アスコルビン酸又はエリソルビン酸およびそれらの塩などの還元性の多価アルコール類、鉄粉や亜硫酸塩第一鉄塩などの無機塩類を含むものが好適に採用される。そして、流通や保存在庫中の取扱いで包装体内に、万が一、微細なピンホールなどにより酸素が流入した場合に備えて、色の変化により識別できる酸素検知剤(例えば、三菱ガス化学(株)製エージレス・アイ)を脱酸素剤と共に包装体内に配置することが好ましい。
なお、本発明に用いられる外装材料がトップ材とボトム材からなる深絞りまたはブリスター成形された包材であると、成形容器と外装材料との空間部が大きくなる場合があるが、その場合は、この空間部に脱酸素剤を収納することが好ましい。
一方、外装材料が袋などの軟包材である場合は、真空包装すると残留酸素量が著しく小さくなるので好ましい。この場合は、成形容器と外装材料との空間部に脱酸素剤を収納しなくても良いが、脱酸素剤を収納すると本発明の効果がより確実となるので好ましい、
【0025】
つぎに、実施例、比較例および試験例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0026】
(実施例1)
エダラボン300mg、亜硫酸水素ナトリウム200mg、クエン酸500mg、塩化ナトリウム1500mgを溶解し、水酸化ナトリウム適量を用いてpHを調整した後、全量を200mLとし、メンブランフィルターでろ過し注射剤液を作成した。前記注射剤液20mLを内容量20mL、内側表面積約60cm、平均厚み800μmのポリエチレン製ボトルに充填し、ボトル内の空間部分を窒素で置換し、密封して注射剤容器を作成した。この容器を、ガスバリア性の透明な外装材料で包装して注射剤包装体を作成した。
注射剤包装体の作成に際して、トップ材とボトム材として下記のものを用いた。深絞り成形を行ったボトム材にプラスチック製容器を載置した後、注射剤包装体内における注射剤容器と外装材料との空間部にエージレスZ(脱酸素剤、登録商標、三菱ガス化学(株)製)を収納した後、イージーピール性を付与したトップ材をヒートシールで溶着して密封して注射剤包装体を作成した。この時のボトム材に使用したCOP系樹脂層の厚みは深絞り成形後の厚みで10μm以上であった。
【0027】
〔トップ材の層構成〕
外側から、シリカ蒸着PETフィルム(三菱化学製)12μmと、ナイロンフィルム(ユニチカ製)15μmと、LLDPE(日本ポリエチレン製)25μm/COP(ガラス転移温度102℃の日本ゼオン製)20μm/LLDPE(日本ポリエチレン製)5μm/PEとポリスチレンエラストマーの混合物からなるイージーピール層20μmの多層共押出しフィルム70μmとを、それぞれ2液硬化型のポリエステルウレタン系接着剤(三井化学製製)を使用してドライラミネート法にて積層した。「/」は共押出法にて積層した部分である。このトップ材の酸素ガスバリア性は、0.6cc(m・day・atm・30℃・70%RH)であった。
【0028】
〔ボトム材の層構成〕
外側からLLDPE(日本ポリエチレン製)30μm/接着性樹脂(三井化学製)20μm/EVOH(クラレ製)30μm/接着性樹脂(三井化学製)20μm/LLDPE(日本ポリエチレン製)30μmの多層共押出しフィルム130μmとLLDPE(日本ポリエチレン製)40μm/COP(ガラス転移温度102℃の日本ゼオン製)30μmの多層共押出しフィルム70μmを2液硬化型のポリエステルウレタン系接着剤(三井化学製製)を使用してドライラミネート法にて積層した。「/」は共押出法にて積層した部分である。このボトム材の酸素ガスバリア性は、0.8cc(m・day・atm・30℃・70%RH)であった。
【0029】
〔水溶液剤1mL中のピラゾロン誘導体の含有量Aと容器の内側表面積Bの割合A/B〕
水溶液剤1mL中の有効成分として含有するエダラボン1.5mgに対して、容器の内側表面積60cmであり、A/B=0.025であった。
【0030】
(実施例2)
注射剤容器を平均厚み600μmのポリプロピレン製に変えた以外は実施例1と同様にして注射剤容器を作成した。トップ材とボトム材として下記のものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして注射剤包装体を作成した。実施例1と同様、ボトム材に使用したCOP系樹脂層の厚みは深絞り成形後の厚みで10μm以上であった。
【0031】
〔トップ材の層構成〕
シリカ蒸着PETフィルム12μmをアルミナ蒸着PETフィルム(凸版印刷製)12μmに代えたこと以外は、実施例1と同様とした。このトップ材の酸素ガスバリア性は、0.5cc(m・day・atm・30℃・70%RH)であった。
【0032】
〔ボトム材構成〕
内側の多層共押出しフィルムを、外側からLLDPE(日本ポリエチレン製)25μm/COP(ガラス転移温度102℃の日本ゼオン製)20μm/LLDPE(日本ポリエチレン製)15μmの多層共押出しフィルム60μmとしたこと以外は、実施例1と同様とした。このボトム材の酸素ガスバリア性は、0.8cc(m・day・atm・30℃・70%RH)であった。
【0033】
〔水溶液剤1mL中のピラゾロン誘導体の含有量Aと容器の内側表面積Bの割合A/B〕
水溶液剤1mL中の有効成分として含有するエダラボン1.5mgに対して、容器の内側表面積60cmであり、A/B=0.025であった。
【0034】
(実施例3)
実施例1と同様にして作成した注射剤液20mLを希釈して50mLとし、内側表面積が約145cmでゴム栓体部と排出口部を有する平均厚み250μmのポリエチレン製多層ソフトバッグに充填し、ボトル内の空間部分を窒素で置換し、密封して注射剤容器を作成した。この容器を、ガスバリア性の透明な外装材料で包装して注射剤包装体を作成した。
注射剤包装体の作成に際して、外装材料として下記のものを用いた。プラスチック製容器(ソフトバッグ)を外装材で包装した後、注射剤包装体内における注射剤容器と外装材料との空間部にエージレスZ(脱酸素剤、登録商標、三菱ガス化学(株)製)を収納した後、溶着して密封して注射剤包装体を作成した。この時外装材料に使用したCOP系樹脂層の厚みは15μm以上であった。
【0035】
〔外装材料層構成〕
シリカ蒸着PETフィルム(三菱化学製)12μmと、ナイロンフィルム(ユニチカ製)15μmと、LLDPE(宇部丸善ポリエチレン製)15μm/COP(ガラス転移温度70℃の日本ゼオン製)15μm/LLDPE(宇部丸善ポリエチレン製)20μmの多層共押出しフィルム50μmとを、それぞれ2液硬化型のポリエステルウレタン系接着剤(三井化学製)を使用してドライラミネート法にて積層した。「/」は共押出法にて積層した部分である。この外装材料の酸素ガスバリア性は、0.2cc(m・day・atm・30℃・70%RH)であった。
【0036】
〔水溶液剤1mL中のピラゾロン誘導体の含有量Aと容器の内側表面積Bの割合A/B〕
水溶液剤1mL中の有効成分として含有するエダラボン0.6mgに対して、容器の内側表面積145cmであり、A/B=0.004であった。
【0037】
(比較例1)
実施例1と同様にして注射剤容器を作成した。この注射剤容器を外装材料で包装することなく保存した。この方法は特許文献1と同様の形態である。
【0038】
(比較例2)
外側からPET(東洋紡製)12μm、EVOH(クラレ製)20μm、ナイロン(ユニチカ製)15μm、スチレン系エラストマーを含有するイージーピールフィルム30μmをドライラミネート法により積層したガスバリア性の外装材料を深絞り成形しないで包装したこと以外は、実施例1と同様にして注射剤包装体を作成した。
【0039】
(比較例3)
PET(東洋紡製)12μm/アルミ箔(日本製箔製)9μm/LLDPE(日本ポリエチレン製)40μmをドライラミネート法にて積層したガスバリア性の外装材料を深絞り成形しないで包装したこと以外は、実施例1と同様にして注射剤包装体を作成した。この方法は特許文献2と同様の形態である。
【0040】
(比較例4)
実施例1と同様にして作成した注射剤液20mLを希釈して100mLとし、ソフトバッグを内側表面積が約250cmでゴム栓体部と排出口部を有する平均厚み200μmのポリプロピレン製多層バッグとした以外は実施例3と同様とした。
【0041】
〔水溶液剤1mL中のピラゾロン誘導体の含有量Aと容器の内側表面積Bの割合A/B〕
水溶液剤1mL中の有効成分として含有するエダラボン0.3mgに対して、容器の内側表面積250cmであり、A/B=0.0012であった。
【0042】
[外観検査]
実施例1、2、3及び比較例1、2、3、4の注射剤包装体を60℃で保存した後、注射剤容器及び包装材料の着色を調べる目的で、目視による外観確認を行った。経時における外観の変化を表1に示す。この時、アルミ箔を使用したものはそのままでは着色状態を確認することができないため、外装袋を開封して容器及び外装材料の内面の確認を行った。
【0043】
【表1】

【0044】
表1の結果によれば、比較例1においては1週間で容器の着色が認められ、比較例2及び3においては容器の着色は認められないものの、2週間で外装材料の着色が認められ、比較例4においては1週間で外装材料、2週間で容器の着色が認められた。
これに対して、実施例1〜3においては容器の着色が認められず、COPリッチ層を内側に有するガスバリア性の外装材で包装することで、外装材料への着色も抑えられることが分かった。
【0045】
[定量試験]
次に各注射剤包装体を60℃及び40℃で保存した後、エダラボン含量の変化を調べる目的で、エダラボンの定量試験を行った。製造直後の値を100.0%として、経時における残存率の結果を表2に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
表2の結果によれば、比較例1に示すとおり、比較例1のプラスチック製容器に充填しただけの注射剤液では、60℃、40℃のいずれの保管条件においても、実施例1〜3に比較して大幅なエダラボン含量の低下が認められた。
また、比較例2と3についても、比較例1と同様に、実施例1〜3に比較して大幅なエダラボン含量の低下が認められた。そして、比較例3の方法は、特許文献2に記載された方法であるが、この方法では、エダラボン含量の低下を抑制することができないことが判明した。また、比較例4では水溶液剤1mL中のピラゾロン誘導体の含有量Aと容器の内側表面積Bの割合A/Bは0.0012であり、エダラボン含量の低下を抑制できないことが判明した。
【0048】
以上の結果から、本発明の包装体であるCOPリッチ層を内側に有するガスバリア性の外装材料で注射剤容器を包装する事で安定な注射剤包装体となることが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピラゾロン誘導体を有効成分として含有する水溶液剤をポリエチレン系樹脂又は/及びポリプロピレン系樹脂より成る容器に入れ密封した後、前記容器を、環状ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂層を最内層又は最内層と隣接する層として有し、且つその外側に透明なガスバリア層を有する外装材料で密封包装した包装体であって、前記水溶液剤1mL中のピラゾロン誘導体の含有量A(mg)と、前記容器の内側表面積B(cm)の割合A/Bが、0.003以上であることを特徴とする包装体。
【請求項2】
前記包装体内における前記容器と外装材料との空間部に脱酸素剤を収納した請求項1に記載の包装体。
【請求項3】
前記外装材料が深絞り成形又はブリスター成形されている請求項1または2に記載の包装体。
【請求項4】
ピラゾロン誘導体を有効成分として含有する水溶液剤が注射用医薬製剤である請求項1〜3のいずれかに記載の包装体。
【請求項5】
ピラゾロン誘導体がエダラボンである請求項1〜4のいずれかに記載の包装体。

【公開番号】特開2010−162344(P2010−162344A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288432(P2009−288432)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【出願人】(398058382)日新製薬株式会社 (3)
【Fターム(参考)】