説明

包装容器内プラズマ処理方法およびその装置

【課題】 処理対象物に満遍なく、確実にプラズマ処理を施すことができるとともに、プラズマ処理後もプラズマ処理の効果を長く保持することができ、さらに、コスト面に優れた包装容器内プラズマ処理方法およびその装置を提供すること。
【解決手段】 包装容器4内に処理対象物6を入れるとともに、プラズマガスを封入した後、密閉するガス封入包装工程と、前記ガス封入包装工程終了後の前記包装容器4を大気圧下において離間配置された少なくとも一対の電極1A、1Bの中間位置に配置した後、前記一対の電極1A、1B間に電圧を印加して前記包装容器4内にプラズマ12を発生させる第2プラズマ処理工程とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装容器で包装された医療器具、食品および日用品などに、滅菌処理などのプラズマ処理を行うための包装容器内プラズマ処理方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の滅菌法には、熱によるもの、薬剤によるもの、紫外線によるもの、プラズマによるものなどが知られている。
【0003】
熱による方法は、確実な滅菌作用が期待でき、耐性菌の発生がない利点があるが、樹脂や熱により変成する食品などには使えない、エネルギーコストが高く、環境負荷が大きい、という欠点がある。
【0004】
薬剤による方法は簡便ではあるが、薬品が残留することによる二次被害、薬液廃液の処理、耐性菌の発生などの問題がある。
【0005】
また、紫外線による方法は、照射の陰になった部分では滅菌作用が期待できず、紫外線ランプを定期的に交換する必要があるほか、紫外線ランプ内には水銀が含まれているために環境負荷が大きい。また、ランプが破損した際、水銀の除染に多大な時間と費用を要するため、食品業界などでは敬遠されがちである。
【0006】
一方、プラズマによる滅菌法は、ラジカル、電界、紫外線、オゾンなどの滅菌作用が複合的に効果を及ぼすため、近年急激に期待が寄せられ、その開発が進められている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】永津雅章、プラズマ・核融合学会誌、83、4、p210(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述したいずれの滅菌法においても、処理対象物が最終的に出荷・運搬や保管などされる場合には、滅菌処理後の処理対象物を何らかの手段でピックアップし、しかるべき包装を施す必要があるため、その間に空中から落下した細菌などで再汚染してしまい、完全な滅菌処理を行うことができないという問題があった。
【0009】
また、従来の一般的なプラズマによる滅菌法は、低圧放電プラズマを用い、菌体に直接プラズマを照射する形態をとっている。そのため、プラズマの照射の影になる部分では滅菌処理が施されず、また、プラズマが浸透する距離が限られるため、確実な滅菌処理を行うことができないという問題があった。さらに、減圧チャンバーを用いる必要があるため、装置が大型となってしまう、減圧チャンバーおよび減圧ポンプなどの周辺機器を設置するコストや、これらを稼働するためのランニングコストがかかる、減圧チャンバー中をプラズマガスで満たすため、プラズマガスの消費量が多く、高コストであるなどの問題があった。
【0010】
そこで、本発明はこのような点に鑑み、処理対象物に満遍なく、確実にプラズマ処理を施すことができるとともに、プラズマ処理後もプラズマ処理の効果を長く保持することができ、さらに、コスト面に優れた包装容器内プラズマ処理方法およびその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の包装容器内プラズマ処理方法は、包装容器内に処理対象物を入れ、密閉する包装工程と、前記包装工程後の前記包装容器を大気圧下において離間配置された少なくとも一対の電極の中間位置に配置した後、前記一対の電極間に電圧を印加して前記包装容器内にプラズマを発生させる第1プラズマ処理工程とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明の包装容器内プラズマ処理方法は、その内部に処理対象物を入れて密閉した包装容器を大気下に離間配置した一対の電極の中間位置に配置し、包装容器の外部から電界をかける方法を採っている。ここで、一般的に、絶縁破壊電圧が低いガスと高いガスに同時に高電圧を印加すると、絶縁破壊電圧の低いガスの部分にだけプラズマが発生すること、および気体の絶縁破壊電圧はその気圧に比例して低下することが知られている。したがって、本発明においては、一対の電極が配置されている雰囲気(包装容器の外部の雰囲気)と比べて、陰圧となっている包装容器内にのみプラズマが発生する。その結果、包装容器内に満遍なくプラズマが行き渡るため、処理対象物に満遍なくプラズマが照射され、例えば、処理対象物が表面に凹凸のある複雑形状のものや食品の場合であっても、満遍なくプラズマ処理を施すことができる。
【0013】
また、包装容器中で処理対象物にプラズマ照射する構成を採用していることにより、プラズマ照射後も包装容器の封を開くまで、処理対象物が外部に晒されることがないため、長時間、プラズマ処理の効果を保持することができる。
【0014】
さらに、一対の電極を大気圧下に配置する構成を採ったことにより、従来のように減圧チャンバーを用いる必要がないため、減圧チャンバーや減圧ポンプなどの周辺機器を設置するコストや、これらを稼働させるためのランニングコストを削減することができる。
【0015】
また、本発明の請求項2に記載の包装容器内プラズマ処理方法は、包装容器内に処理対象物を入れるとともに、プラズマガスを封入した後、密閉するガス封入包装工程と、前記ガス封入包装工程終了後の前記包装容器を大気圧下において離間配置された少なくとも一対の電極の中間位置に配置した後、前記一対の電極間に電圧を印加して前記包装容器内にプラズマを発生させる第2プラズマ処理工程とを有することを特徴とする。
【0016】
本発明の包装容器内プラズマ処理方法は、その内部に処理対象物を入れて減圧した包装容器を大気下に配置した一対の電極の中間位置に配置し、包装容器の外部から電界をかける方法を採っている。ここで、前述したように、一般的に、絶縁破壊電圧が低いガスと高いガスに同時に高電圧を印加すると、絶縁破壊電圧の低いガスの部分にだけプラズマガスが発生することが知られている。したがって、本発明においては、一対の電極が配置されている雰囲気(包装容器の外部の雰囲気)である大気圧の空気に比べて、絶縁破壊電圧の低いプラズマガスで満たされている包装容器内にのみプラズマが発生する。その結果、包装容器内に満遍なくプラズマが行き渡るため、処理対象物に満遍なくプラズマが照射され、例えば、処理対象物が表面に凹凸のある複雑形状のものや食品の場合であっても、満遍なくプラズマ処理を施すことができる。
【0017】
また、本発明の包装容器内プラズマ処理方法によれば、使用するプラズマガスは包装容器内に封入する極微量で済むため、減圧チャンバーをプラズマガスで満たす従来のプラズマを用いた滅菌法に比べて、プラズマガスの消費量を大幅に削減することが可能となる。
【0018】
また、本発明の請求項3に記載の包装容器内プラズマ処理方法は、請求項2に記載の包装容器内プラズマ処理方法において、前記プラズマガスが、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、キセノンガスおよび窒素ガスから選択される第1のガスと、酸素ガス、窒素ガスと酸素ガスの混合ガス、過酸化水素ガス、水蒸気、酢酸ガス、塩素ガス、臭素ガスおよびフッ素ガスから選択される第2のガスとからなることを特徴とする。
【0019】
前記第1のガスは、空気に比べて絶縁破壊電圧が著しく低いガスであるため、これらのガスを包装容器内に封入することで、包装容器内における安定したプラズマの発生を担保することができる。そして、前記第2のガスはプラズマ化した際に高い滅菌作用を示す。すなわち、例えば、酸素を用いてプラズマを生成した場合には、酸化力の高いオゾンガスが生成し、このオゾンガスが菌体の細胞膜などを酸化することにより、菌体の生体組織に影響を与え、死滅に至らしめるとされている。また、過酸化水素雰囲下でプラズマを生成させた場合には、特に、プラズマ中に発生する反応性の高いOHラジカルなどが菌体の細胞膜などと化学反応することにより、菌体の生体組織に影響を与え、死滅に至らしめるとされている。したがって、第1のガスとともに第2のガスを包装容器内に封入することで、確実に滅菌処理を施すことが可能となる。
【0020】
また、本発明の請求項4に記載の包装容器内プラズマ処理方法は、請求項2に記載の包装容器内プラズマ処理方法において、前記プラズマガスが、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、キセノンガスおよび窒素ガスから選択される第1のガスと、キセノンガス、ヘリウムガス、水銀ガスおよびアルゴンガスから選択される第3のガスとからなることを特徴とする。
【0021】
前記第3のガスは、これらのガスにより生成されたプラズマ中の励起種が緩和することによって紫外線が発生し、この紫外線が主な要因となって滅菌作用を示す。すなわち、紫外線が微生物の核酸に照射されると、核酸の複製能を失い、その結果、微生物が増殖できなくなり、死滅に至るとされている。したがって、安定したプラズマの発生を担保するための第1のガスとともに、第3のガスを包装容器内に封入することで、確実に滅菌処理を施すことが可能となる。
【0022】
また、本発明の請求項5に記載の包装容器内プラズマ処理方法は、請求項2に記載の包装容器内プラズマ処理方法において、前記プラズマガスが、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、キセノンガスおよび窒素ガスから選択される第の1ガスと、窒素ガスおよび酸素ガスから選択される第4のガスとからなることを特徴とする。
【0023】
前記第4のガスを用いてプラズマを生成することにより、それぞれ反応性の高い窒素のラジカルおよび酸素のラジカルが生成されるため、これらのラジカルが主な要因となって滅菌作用を示す。すなわち、これらのラジカルが菌体のタンパク質や菌体周囲の物質と化学反応することにより、菌体の生体組織に影響を与え、死滅に至らしめるとされている。したがって、安定したプラズマの発生を担保するための第1のガスとともに第4のガスを包装容器内に封入することで、確実に滅菌処理を施すことが可能となる。
【0024】
また、本発明の請求項6に記載の包装容器内プラズマ処理方法は、請求項2に記載の包装容器内プラズマ処理方法において、前記プラズマガスが、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、キセノンガスおよび窒素ガスから選択される第の1ガスと、アルゴンガスおよび水素ガスから選択される第5のガスとからなることを特徴とする。
【0025】
前記第5のガスは、熱プラズマ(電子温度およびガス温度がともに高温であるプラズマ)を生成しやすい、いわゆる熱化しやすいガスであるため、菌体を熱的に破壊することにより、滅菌処理を施すことが可能である。したがって、安定したプラズマの発生を担保するための第1のガスとともに包装容器内に封入することで、確実に滅菌処理を施すことが可能となる。
【0026】
また、本発明の請求項7に記載の包装容器内プラズマ処理方法は、請求項2乃至請求項6のいずれか1項に記載の包装容器内プラズマ処理方法において、前記一対の電極がCOまたはSFの雰囲気中に離間配置されていることを特徴とする。
【0027】
前述した包装容器内に封入されるプラズマガス(空気も含む)に比べて、COおよびSFは絶縁破壊電圧が著しく高いガスであるため、これらのガスの雰囲気中に前記一対の電極を配置することで、前記包装容器内に安定してプラズマを発生させることができる。
【0028】
また、本発明の請求項8に記載の包装容器内プラズマ処理方法は、請求項2乃至請求項6のいずれか1項に記載の包装容器内プラズマ処理方法において、前記ガス封入包装工程において、前記包装容器内に前記プラズマガスを封入する前に包装容器内のガスを抜くことを特徴とする。
【0029】
これにより、プラズマガスを封入する際に包装容器内の細部にもプラズマガスを行き渡せることができるため、包装容器内の細部にもプラズマを発生させて、処理対象物に満遍なくプラズマ処理を施すことが可能となる。
【0030】
また、本発明の請求項9に記載の包装容器内プラズマ処理方法は、請求項2乃至請求項6のいずれか1項に記載の包装容器内プラズマ処理方法において、前記第1プラズマ処理工程終了後または前記第2プラズマ処理工程終了後において、前記包装容器内のガスを抜くことを特徴とする。
【0031】
例えば、食品などの空気中の酸素を嫌う処理対象物である場合や、プラズマガスにより劣化しやすい処理対象物である場合、包装容器内からガスを除去することで、その後の保存中に包装容器内に残存するガスによって処理対象物を劣化させることを防止することができる。
【0032】
また、本発明の請求項10に記載の包装容器内プラズマ処理方法は、請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の包装容器内プラズマ処理方法において、前記一対の電極間に印加される電圧は高周波電圧であって、高周波の周波数を掃引させることを特徴とする。
【0033】
本発明の包装容器内プラズマ処理方法によれば、定在波のできる場所を変えることで、満遍なくプラズマ処理を行うことができる。
【0034】
また、本発明の請求項11に記載の包装容器内プラズマ処理方法は、請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の包装容器内プラズマ処理方法において、前記一対の電極間に印加される電圧を供給する電源の位相を掃引させることを特徴とする。
【0035】
本発明の包装容器内プラズマ処理方法によれば、定在波のできる場所を変えることで、満遍なくプラズマ処理を行うことができる。
【0036】
また、本発明の請求項12に記載の包装容器内プラズマ処理方法は、請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の包装容器内プラズマ処理方法において、前記一対の電極間に印加される電圧がバースト状であることを特徴とする。
【0037】
本発明の包装容器内プラズマ処理方法によれば、プラズマ温度の上昇を抑え、処理対象物の温度上昇を抑えることができるため、熱に弱い処理対象物であっても、支障なく本発明の方法を用いることができる。
【0038】
また、本発明の請求項13に記載の包装容器内プラズマ処理方法は、請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の包装容器内プラズマ処理方法において、前記一対の電極間に印加される電圧がパルス状であって、パルス幅を短く設定されていることを特徴とする。
【0039】
本発明の包装容器内プラズマ処理方法によれば、包装容器内で生成されるプラズマの温度の上昇を抑えることができるため、熱に弱い処理対象物であっても、プラズマによる熱的損傷を防止することができる。
【0040】
また、本発明の請求項14に記載の包装容器内プラズマ処理方法は、請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載の包装容器内プラズマ処理方法において、前記第1プラズマ処理工程または前記第2プラズマ処理工程の際に前記包装容器を冷却することを特徴とする。
【0041】
本発明の包装容器内プラズマ処理方法によれば、包装容器内の温度上昇を抑えることができるため、熱に弱い処理対象物であっても、プラズマによる熱的損傷を軽減することができる。
【0042】
本発明の請求項15に記載の包装容器内プラズマ処理装置は、大気圧下において離間配置された少なくとも一対の電極と、前記一対の電極間に電圧を印加する電源と、内部に処理対象物を入れるとともに、プラズマガスを封入して密閉可能な包装容器とを備え、内部に処理対象物およびプラズマガスを密閉した包装容器を少なくとも前記一対の電極の中間位置に配置させた後、前記一対の電極間に電圧を印加することにより、前記包装容器内の前記処理対象物をプラズマ処理することを特徴とする。
【0043】
また、本発明の請求項16に記載の包装容器内プラズマ処理装置は、大気圧下において、垂直方向に離間して平行に配置された一対の板電極と、前記一対の板電極間に電圧を印加する電源と、前記一対の板電極の中間位置に前記一対の板電極と平行に配設された回転台と、前記回転台を水平面上において回転駆動する駆動手段と、内部に処理対象物を入れるとともに、プラズマガスを封入して密閉可能な包装容器とを備え、内部に処理対象物およびプラズマガスを密閉した包装容器を前記回転台の上に載置した後、前記回転台を回転駆動させて前記包装容器を自転させつつ、前記一対の電極間に電圧を印加することにより、前記包装容器内の処理対象物をプラズマ処理することを特徴とする。
【0044】
本発明の包装容器内プラズマ処理装置によれば、一対の電極間に形成される電界に対して包装容器の向きを変えることで、包装容器内により満遍なくプラズマが生成され、より満遍なくプラズマ処理を施すことが可能となる。
【発明の効果】
【0045】
以上説明したように、本発明の包装容器内プラズマ処理方法及びその装置によれば、包装容器内にのみプラズマを発生させ、包装容器内の処理対象物に満遍なくプラズマを照射し、確実なプラズマ処理を施すことができる。また、プラズマ処理後も包装容器の封を開くまで、処理対象物が外部に晒されることがないため、プラズマ処理の効果を長く保持することができる。さらに、従来のように、減圧チャンバーを用いることなく、減圧チャンバーや減圧ポンプなどの周辺機器を設置するコストや、これらを稼働させるためのランニングコストを削減することができる。また、使用するプラズマガスも包装容器内に封入する僅かな量で済み、減圧チャンバー中をプラズマガスで満たす必要がないため、プラズマガスの消費量を大幅に削減することができるため、コスト面に優れるなどの顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の包装容器内プラズマ処理装置の一例を示す概略図
【図2】第1実施形態の包装容器内プラズマ処理方法を示す工程図
【図3】第2実施形態の包装容器内プラズマ処理方法を示す工程図
【図4】実施例1に示す実験で用いた装置の概略図
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の包装容器内プラズマ処理方法およびその装置について、図1から図4により説明する。本発明の包装容器内プラズマ処理方法およびその装置は、医療器具、食品および日用品など(例えば、布団やパンも可能)の処理対象物について滅菌処理などのプラズマ処理を施すことができる。
【0048】
図1は本発明の包装容器内プラズマ処理装置の一例を示す概略図であり、図2、図3はそれぞれ第1、第2実施形態の包装容器内プラズマ処理方法を示す工程図であり、図4は実施例1の実験で用いた装置の概略図である。
【0049】
まず、本発明の包装容器内プラズマ処理装置について、図1を用いて説明する。
【0050】
図1に示すように、本発明の包装容器内プラズマ処理装置は、大気圧の空気、COまたはSFの雰囲気中において、垂直方向に離間して平行に配置された一対の板電極1A、1Bと、前記一対の板電極間に電圧を印加する電源2とを備えている。前記板電極1A、1Bとしては、アルミ板電極や銅板電極などを用いることができる。
【0051】
一対の板電極1A、1Bの中間位置には平板状の回転台3が、一対の板電極1A、1Bと平行に配設されており、駆動手段(図示せず)により、水平面上において回転駆動可能とされている。これにより、後述するように、その内部に処理対象物6を入れるとともに減圧し、あるいはプラズマガスを封入して、密閉した包装容器4を回転台3の上に載置した後、回転台3を回転駆動することにより、一対の板電極1A、1Bの中間位置において前記包装容器4を自転させることが可能となっている。
【0052】
また、本発明の包装容器内プラズマ処理装置は、内部に処理対象物6を入れるとともに、プラズマガスを封入して密閉可能な包装容器4を備えている。前記包装容器4としては、例えば、処理対象物6を入れるための導入口と、内部のガスを抜くことが可能なワンウェイバルブとが形成され、後述する包装容器4内の減圧に耐えられ、かつ表面から押圧して、内部のガスを抜くことができるように、ある程度の硬度と柔軟性を持つものを用いる。また、その内側に柱材が組み込まれた形状のものや、内側の表面をエンボス加工によって凹凸状に形成し、包装容器4と処理対象物6が密着するのを防ぎ、プラズマ12が入り込む空間を設けるようにしたものなどを用いてもよい。
【0053】
さらに、回転台3の斜め上方には冷却ファン5が配設されており、冷却ファン5から風を送って、回転台3上の処理対象物6が入った包装容器4の表面を冷却することにより、処理対象物6および包装容器4のプラズマ12による熱的損傷を防止することが可能となっている。
【0054】
なお、回転台3および前記駆動手段の代わりにベルトコンベア(図示せず)を設け、その搬送経路上に一対の板電極1A、1Bを配置してもよい。これにより、複数の処理対象物6について、連続的にプラズマ処理するようにしてもよい。また、この場合には、前記冷却ファン5で包装容器4の表面を冷却する代わりに、ベルトコンベアのベルトを冷却することで、包装容器4および処理対象物6のプラズマ12による熱的損傷を防止するようにしてもよい。
【0055】
一対の板電極1A、1Bの幅寸法と比べて大きな物を処理対象物6とする場合には、前記回転台3および駆動手段の代わりに、前記一対の板電極1A、1Bの中間位置において、水平方向に往復移動可能とされる長尺な搬送台(図示せず)を設け、処理対象物6が入った包装容器4を水平方向に往復搬送するようにしてもよい。
【0056】
前記電源2としては、例えば高周波電源を用いてもよい。そして、高周波電源の高周波の周波数を掃引させたり、あるいは高周波電源の位相を掃引させてもよい。これにより、定在波のできる場所を変えることで、満遍なくプラズマ処理することが可能となる。また、処理対象物6が熱に弱いものである場合には、一対の電極間にバースト状の電圧を印加したり、あるいはパルス状の電圧を印加し、そのパルス幅を短く設定してもよい。これにより、生成されるプラズマ12の温度を抑え、包装容器4および処理対象物6のプラズマ12による熱的損傷を防ぐことが可能である。
【0057】
また、一対の板電極1A、1Bを設ける代わりに、二対以上の板電極を設けてもよい。その場合、各一対の板電極が包装容器を挟んで対向するように配置されていればよく、例えば、各一対の板電極を水平方向に並列したり、垂直方向に離間配置された一対目の板電極に対して、二対目以降の板電極を水平方向に離間配置してもよい。
【0058】
さらに、前記一対の板電極1A、1Bのうち、一方の板電極1Aを羽根型に形成し、その近傍に電源2からの配線部を配置し、羽根型の板電極1Aを水平面上に高速回転させることで、前記配線部との接触状態と非接触状態を繰り返すようにしてもよい。これにより、一対の電極間の接続のON/OFFを高速で切り換え、プラズマ12の生成を間歇的に行うことで、プラズマ12の熱化を防ぎ、包装容器4および処理対象物6の熱的損傷を防ぐことができる。
【0059】
また、外部と遮断された庫内に包装容器内プラズマ処理装置を配設し、プラズマ処理を行う際に庫内の温度を下げることにより、包装容器4および処理対象物6の熱的損傷を防止してもよい。
【0060】
次に、本発明の包装容器内プラズマ処理方法について、図2の工程図に示す第1実施形態により説明する。
【0061】
本実施形態の包装容器内プラズマ処理方法を行うに際しては、前述したような、大気圧下において、垂直方向に離間して平行に配置された一対の板電極1A、1B、高周波電源2、回転台3、前記駆動手段、包装容器4および冷却ファン5を備えた包装容器内プラズマ処理装置を用いる(図1参照)。
【0062】
図2に示すように、本実施形態の包装容器内プラズマ処理方法は、まず、包装工程において、前記導入口を介して処理対象物6を包装容器4の中に入れた後(ステップST1)、導入口を閉じて包装容器4を密閉状態にする(ステップST2)。
【0063】
その後、第1プラズマ処理工程において、前記減圧包装処理後の包装容器4を前記回転台3の上に載置することにより、前記一対の板電極1A、1Bの中間位置に配置する(ステップST3)。次に、前記回転台3を回転駆動させることにより、一対の板電極1A、1Bの中間位置において包装容器4を自転させるとともに、前記冷却ファン5により風を送って包装容器4の表面を冷却しつつ、一対の電極間に電圧を印加する(ステップST4)。
【0064】
これにより、一対の板電極1A、1Bが配置されている雰囲気(包装容器4の外部の雰囲気)と比べて、陰圧となっている包装容器4内にのみプラズマ12が発生するため、包装容器4内に満遍なくプラズマ12が行き渡る。その結果、包装容器4に入った処理対象物6に確実に滅菌処理が施される。
【0065】
このとき、処理対象物6に滅菌作用を及ぼしているのは、主に、空気雰囲気中でプラズマ12を生成する際に発生する、強い還元力に富む窒素酸化物のガス(NO)であると考えられる。
【0066】
また、本実施形態においては、一対の電極間に電圧を印加する際に、処理対象物6が入った包装容器4を回転台3上で自転させていることにより、一対の板電極1A、1Bの中間位置に形成される電界に対して包装容器4の向きを変えることができる。そのため、包装容器4内にプラズマ12が均一に生成され、処理対象物6により満遍なく滅菌処理を施すことが可能となっている。
【0067】
その後、包装容器4のワンウェイバルブを開いた状態で、包装容器4をその表面から押圧することにより、包装容器4内のガスを抜く(ステップST5)。
【0068】
これにより、例えば、処理対象物6が食品などの空気中の酸素を嫌うものであっても、包装容器4内のガスをほぼ除去することで、その後の保存中に処理対象物6が劣化するのを防止することができる。
【0069】
そして、ワンウェイバルブを閉じて密閉状態にした後(ステップST6)、そのまま使用時まで保存する(ステップST7)。
【0070】
なお、処理対象物6の使用直前に、再度、上記と同様の滅菌処理を行ってもよい。すなわち、第1プラズマ処理工程後に保存されていた包装容器4を前記回転台3の上に載置することにより、一対の板電極1A、1Bの中間位置に配置した後(ステップST3)、一対の板電極1A、1B間に電圧を印加し(ステップST4)、再度、滅菌処理を施すことで、より確実な滅菌処理を行うことも可能である。
【0071】
本実施形態の包装容器内プラズマ処理方法によれば、その内部に処理対象物6を入れて減圧した包装容器4を大気下に離間配置した一対の板電極1A、1Bの中間位置に配置し、包装容器4の外部から電界をかけることで、包装容器4内にのみプラズマ12を発生させることができ、その結果、包装容器4内に満遍なくプラズマ12が行き渡り、処理対象物6を確実に滅菌処理をすることができる。
【0072】
また、包装容器4内で処理対象物6にプラズマ照射する構成を採用していることにより、滅菌処理後も包装容器4の封を開くまで、処理対象物6が外部に晒されることがないため、完全な滅菌状態を長く保つことができる。さらに、一対の板電極1A、1Bを大気圧下に配置する構成を採ったことにより、従来のように減圧チャンバーを用いる必要がないため、減圧チャンバーや減圧ポンプなどの周辺機器を設置するコストや、これらを稼働させるためのランニングコストを削減することができる。
【0073】
なお、大気圧下に一対の板電極1A、1Bを離間配置する代わりに、COまたはSFの雰囲気中に離間配置してもよい。COおよびSFは、包装容器4内に満たされている空気と比べて、絶縁破壊電圧が著しく高いため、これらのガスの雰囲気中に前記一対の板電極1A、1Bを離間配置することで、包装容器4内に安定してプラズマ12を発生させることが可能となる。
【0074】
また、図2のステップST3で包装容器を密閉する前に、例えば、ワンウェイバルブを開いた状態で、包装容器4をその表面から押圧することにより、包装容器4内のガスを抜き、包装容器4内を減圧状態にし、包装容器4内により確実にプラズマ12を発生させるようにしてもよい。
【0075】
次に、本発明の包装容器内プラズマ処理方法について、図3の工程図に示す第2実施形態により説明する。
【0076】
本実施形態の包装容器内プラズマ処理方法を行うに際しては、前述したような、大気圧下において、垂直方向に離間して平行に配置された一対の板電極1A、1B、高周波電源2、回転台3、前記駆動手段、包装容器4および冷却ファン5を備えた包装容器内プラズマ処理装置を用いる(図1参照)。
【0077】
また、後述するプラズマガスとしては、ヘリウムガス(以下、第1のガスという。)に酸素ガス(以下、第2のガスという。)を数%混合させたものを用いる。
【0078】
本実施形態の包装容器内プラズマ処理方法は、まず、ガス封入包装工程において、例えば、前記ワンウェイバルブを開いた状態で包装容器4をその表面から押圧することで、包装容器4内のガスを抜き、その後に封入されるプラズマガスが包装容器4の細部にも満遍なく行き渡るようにする(ステップST1)。次に、前記導入口を介して処理対象物6を包装容器4の中に入れ(ステップST2)、導入口を閉じる。そして、前記封入口を介して前記プラズマガスを包装容器4内に封入した後(ステップST3)、封入口を閉じて包装容器4を密閉状態にする(ステップST4)。
【0079】
その後、第2プラズマ処理工程において、前記ガス封入包装処理後の包装容器4を前記回転台3の上に載置することにより、前記一対の板電極1A、1Bの中間位置に配置する(ステップST5)。そして、前記回転台3を回転駆動させることにより、一対の電極の中間位置において処理対象物6が入った包装容器4を自転させるとともに、前記冷却ファン5によって風を送りつつ、一対の電極間に電圧を印加する(ステップST6)。
【0080】
ここで、前記プラズマガスを構成する第1のガスであるヘリウムガスは、空気に比べて絶縁破壊電圧が著しく低いガスであるため、第1のガスを包装容器4内に封入することにより、包装容器4内における安定したプラズマ12の発生を担保することができる。また、前記第2のガスである酸素ガスは、プラズマ12を発生させる際に、酸化力に富むオゾンガスが発生し、高い滅菌作用を示すため、第1のガスとともに包装容器4内に封入することで、処理対象物6に滅菌処理を施すことができる。
【0081】
したがって、前記一対の電極間に電圧を印加することにより、包装容器4内に安定してプラズマ12が生成し、包装容器4内に満遍なくプラズマ12が行き渡り、その結果、包装容器4内の処理対象物6に滅菌処理が施される。
【0082】
また、このとき、包装容器4内で生成したプラズマ12は、包装容器4の内側の表面にも照射されることになるため、その結果、包装容器4の内側の表面が改質され、その表面の親水性が高められる(すなわち、親水化処理される)。したがって、本実施形態においては、包装容器4内に入った処理対象物6が液体であっても、包装容器4の内側の表面が親水化処理されることにより、液体中に気泡が発生するのを防止することができる。
【0083】
また、本実施形態においては、一対の電極間に電圧を印加する際に、処理対象物6が入った包装容器4を回転台3上で自転させていることにより、一対の板電極1A、1Bの中間位置に形成される電界に対して包装容器4の向きを変えることができる。そのため、包装容器4内にプラズマ12が均一に生成され、処理対象物6により満遍なく滅菌処理を施すことが可能となっている。
【0084】
その後、包装容器4の前記ワンウェイバルブを開いた状態で、包装容器4をその表面から押圧することにより、包装容器4内のガスを抜く(ステップST7)。このとき、処理対象物6が液体物である場合には、ワンウェイバルブ側を上にして気体を集めた状態でガスを抜くとよい。
【0085】
これにより、例えば、処理対象物6が食品などの、第1のガスである酸素、若しくは空気中の酸素を嫌うものであったり、第2のガスであるヘリウムガスにより劣化しやすいものであっても、包装容器4内のガスをほぼ除去することにより、その後の保存中に処理対象物6が劣化するのを防止することができる。
【0086】
そして、ワンウェイバルブを閉じて密閉状態にした後(ステップST8)、そのまま使用時まで保存する(ステップST9)。
【0087】
なお、処理対象物6の使用直前に、再度、上記と同様の滅菌処理を行ってもよい。すなわち、第2プラズマ処理工程後に保存されていた包装容器4を前記回転台3の上に載置することにより、一対の板電極1A、1Bの中間位置に配置した後(ステップST5)、一対の電極間に電圧を印加し(ステップST6)、再度、滅菌処理を行ってもよい。これにより、より完全な滅菌処理を行うことができる。
【0088】
本実施形態の包装容器内プラズマ処理方法によれば、その内部に処理対象物6を入れ、プラズマガスを封入した包装容器4を大気下に離間配置した一対の板電極1A、1Bの中間位置に配置し、包装容器4の外部から電界をかけることで、包装容器4内にのみプラズマ12を発生させ、その結果、包装容器4内に満遍なくプラズマ12が行き渡らせ、処理対象物6に満遍なくプラズマ12が照射し、満遍なく滅菌処理を施すことができる。
【0089】
また、包装容器4中で処理対象物6にプラズマ照射する構成を採用していることにより、滅菌処理後も包装容器4の封を開くまで、処理対象物6が外部に晒されることがないため、完全な滅菌状態を長く保つことができる。
【0090】
さらに、一対の電極を大気圧下に配置する構成を採ったことにより、従来のように減圧チャンバーを用いる必要がないため、減圧チャンバーや減圧ポンプなどの周辺機器を設置するコストや、これらを稼働させるためのランニングコストを削減することができる。また、使用するプラズマガスは包装容器4内に封入する極微量で済むため、減圧チャンバーをプラズマガスで満たす従来のプラズマを用いた滅菌法に比べて、プラズマガスの消費量を大幅に削減することが可能となる。
【0091】
なお、上記実施形態においては、1種類のプラズマガスを用いて滅菌処理を行ったが、プラズマガスの種類を変えて複数回に亙って段階的に(例えば、一回目は脱臭処理、二回目は滅菌処理にするなど)プラズマ処理を行ってもよい。すなわち、図3のステップST7において、包装容器4内のガスを抜いた後、再度、ステップST3に戻り、別の種類のプラズマガスを封入し、密閉した後(ステップST4)、一対の板電極1A、1B間の位置に配置し(ステップST5)、電圧を印加することにより(ステップST6)、プラズマガスの種類を変えて、段階的にプラズマ処理を行ってもよい。
【0092】
また、上記実施形態においては、プラズマガスを構成する前記第1のガスとしてヘリウムガスを用いたが、ヘリウムガスの代わりに、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、キセノンガスまたは窒素ガスを用いてもよい。また、前記第2のガスとして酸素ガスを用いる代わりに、窒素ガスと酸素ガスの混合ガス、空気、過酸化水素ガス、水蒸気、酢酸ガス、塩素ガス、臭素ガスまたはフッ素ガスを用いてもよい。
【0093】
ここで、第1のガスとして例示した上記のガスは、いずれも空気に比べて絶縁破壊電圧が著しく低いガスであるため、これらのガスを包装容器4内に封入することで、包装容器4内における安定したプラズマ12の発生を担保することができる。また、前記第2のガスとして例示した上記のガスは、いずれもプラズマ12を発生させる際に高い滅菌作用を示すため(例えば、過酸化水素水の雰囲気下でプラズマ12を発生させると、過酸化水素が発生するため、高い滅菌作用を示す。)、第1のガスとともに包装容器4内に封入することで、確実に滅菌処理を施すことが可能となる。
【0094】
さらに、プラズマガスとして、前記第1のガスと、キセノンガス、ヘリウムガス、水銀ガス及びアルゴンガスから選択されるガス(以下、第3のガスという。)を数%混合させたもの、あるいは前記第1のガスと、窒素ガス及び酸素ガスから選択されるガス(以下、第4のガスという。)を数%混合させたもの、あるいは前記第1のガスと、アルゴンガス及び水素ガスから選択されるガス(以下、第5のガスという。)を数%混合させたものを用いてもよい。
【0095】
前記第3のガスとして例示した上記のガスは、いずれもプラズマ化することにより、そのプラズマ12中に励起種が緩和することによって、高い滅菌作用を示す紫外線が発生する。したがって、前記第1のガスとともに、第3のガスを包装容器4内に封入することで、確実に滅菌処理を施すことが可能となる。
【0096】
また、前記第4のガスとして例示した上記のガスは、いずれもプラズマ化する際に反応性の高い窒素のラジカルや酸素のラジカルが生成されるため、これらのラジカルが菌体のタンパク質や菌体周囲の物質と化学反応することにより、菌体の生体組織に影響を与えるため、滅菌作用が得られる。したがって、第1のガスとともに第4のガスを包装容器4内に封入することで、確実に滅菌処理を施すことが可能となる。
【0097】
また、前記第5のガスは、発生するプラズマ12が熱化しやすいガスであるため、前記第1のガスとともに包装容器4内に封入することで、菌体を熱的に滅菌処理し、確実に滅菌処理を施すことが可能となる。
【0098】
さらに、プラズマガスとして、第1のガスから第5のガスとして例示したガスの中から2種類以上のガスを任意の割合で混合したものを用いてもよい。
【0099】
また、大気圧下に一対の板電極1A、1Bを離間配置する代わりに、COまたはSFの雰囲気中に離間配置してもよい。COおよびSFは、包装容器4内に満たされている空気と比べて、絶縁破壊電圧が著しく高いため、これらのガスの雰囲気中に前記一対の板電極1A、1Bを離間配置することで、包装容器4内に安定してプラズマ12を発生させることができる。
【実施例1】
【0100】
次に、前述した本発明の装置を用いた包装容器内プラズマ処理方法を行った場合、包装容器4内にプラズマ12が発生するか否かを確認した実験について説明する。図4は、本実験に用いた装置の概略図である。
【0101】
本実験においては、発泡スチロール7の上に銅板電極8を載置し、その上方に離間してアルミメッシュ電極9を平行に配置し、銅板電極8とアルミメッシュ電極9に交流電力を印加するための交流電源10を接続しておく。また、その内部にプラズマガスとしてへリウムガスを封入し、密閉した状態のポリエチレン容器11を、前記銅板電極8およびアルミメッシュ電極9に触れないように、これらの電極の中間位置に配置した。なお、上方の電極にアルミメッシュ電極9を用いたことにより、ポリエチレン容器11の様子が視認できるようになっている。
【0102】
そして、交流電源10により2つの電極間に高電圧を印加し、周囲の照明を暗くしてポリエチレン容器11内の様子を観察した。その結果、ポリエチレン容器11の内部にのみ、しかも、ポリエチレン容器11内の細部に亙って均一にプラズマ12の生成による発光が観側された。
【0103】
この実験結果から、本発明の包装容器内プラズマ処理方法およびその装置によれば、前記一対の板電極1A、1B間に電圧を印加することにより、包装容器4内にのみプラズマ12が発生し、包装容器4内に満遍なくプラズマ12が行き渡っていることが確認された。したがって、本発明の包装容器内プラズマ処理方法およびその装置を用いてプラズマ処理することにより、包装容器4内の処理対象物6に満遍なく、確実にプラズマ処理を施していると考えられる。
【0104】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【0105】
例えば、上記実施形態においては、プラズマ生成の際に発生、あるいは生成される紫外線、ラジカル(例えば、前述した酸素ラジカルや窒素ラジカル、OHラジカルなど)、酸化力または還元力に富むガス、熱プラズマによる熱的効果によって滅菌作用の効果を得ているが、一対の板電極1A、1B間にパルス電界を与えることで、放電が生じた瞬間に衝撃波を発生させ、その衝撃圧を用いて菌体を物理的に破壊することで滅菌作用を得るようにしてもよい。
【0106】
また、上記実施形態においては、包装容器内プラズマ処理方法およびその装置を用いて、滅菌処理や包装容器4の内表面の親水化処理を行っているが、包装容器4内に入れた処理対象物6のコーティング処理、エッチング処理などに用いてもよい。前述したように、包装容器4内に満遍なくプラズマ12が行き渡るため、これらの処理についても、処理対象物6に満遍なく、確実に施すことが可能である。
【符号の説明】
【0107】
1A、1B 板電極
2 電源
3 回転台
4 包装容器
5 冷却ファン
6 処理対象物
7 発泡スチロール
8 銅板電極
9 アルミメッシュ電極
10 交流電源
11 ポリエチレン容器
12 プラズマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装容器内に処理対象物を入れ、密閉する包装工程と、前記包装工程後の前記包装容器を大気圧下において離間配置された少なくとも一対の電極の中間位置に配置した後、前記一対の電極間に電圧を印加して前記包装容器内にプラズマを発生させる第1プラズマ処理工程とを有することを特徴とする包装容器内プラズマ処理方法。
【請求項2】
包装容器内に処理対象物を入れるとともに、プラズマガスを封入した後、密閉するガス封入包装工程と、前記ガス封入包装工程終了後の前記包装容器を大気圧下において離間配置された少なくとも一対の電極の中間位置に配置した後、前記一対の電極間に電圧を印加して前記包装容器内にプラズマを発生させる第2プラズマ処理工程とを有することを特徴とする包装容器内プラズマ処理方法。
【請求項3】
前記プラズマガスは、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、キセノンガスおよび窒素ガスから選択される第1のガスと、酸素ガス、窒素ガスと酸素ガスの混合ガス、空気、過酸化水素ガス、水蒸気、酢酸ガス、塩素ガス、臭素ガスおよびフッ素ガスから選択される第2のガスとからなることを特徴とする請求項2に記載の包装容器内プラズマ処理方法。
【請求項4】
前記プラズマガスは、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、キセノンガスおよび窒素ガスから選択される第1のガスと、キセノンガス、ヘリウムガス、水銀ガスおよびアルゴンガスから選択される第3のガスとからなることを特徴とする請求項2に記載の包装容器内プラズマ処理方法。
【請求項5】
前記プラズマガスは、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、キセノンガスおよび窒素ガスから選択される第の1ガスと、窒素ガスおよび酸素ガスから選択される第4のガスとからなることを特徴とする請求項2に記載の包装容器内プラズマ処理方法。
【請求項6】
前記プラズマガスは、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、キセノンガスおよび窒素ガスから選択される第の1ガスと、アルゴンガスおよび水素ガスから選択される第5のガスとからなることを特徴とする請求項2に記載の包装容器内プラズマ処理方法。
【請求項7】
前記一対の電極はCOまたはSFの雰囲気中に離間配置されていることを特徴とする請求項2乃至請求項6のいずれか1項に記載の包装容器内プラズマ処理方法。
【請求項8】
前記ガス封入包装工程において、前記包装容器内に前記プラズマガスを封入する前に包装容器内のガスを抜くことを特徴とする請求項2乃至請求項7のいずれか1項に記載の包装容器内プラズマ処理方法。
【請求項9】
前記第1プラズマ処理工程終了後または前記第2プラズマ処理工程終了後において、前記包装容器内のガスを抜くことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の包装容器内プラズマ処理方法。
【請求項10】
前記一対の電極間に印加される電圧は高周波電圧であって、高周波の周波数を掃引させることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の包装容器内プラズマ処理方法。
【請求項11】
前記一対の電極間に印加される電圧を供給する電源の位相を掃引させることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の包装容器内プラズマ処理方法。
【請求項12】
前記一対の電極間に印加される電圧はバースト状であることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の包装容器内プラズマ処理方法。
【請求項13】
前記一対の電極間に印加される電圧はパルス状であって、パルス幅を短く設定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の包装容器内プラズマ処理方法。
【請求項14】
前記第1プラズマ処理工程または前記第2プラズマ処理工程において、前記包装容器を冷却することを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載の包装容器内プラズマ処理方法。
【請求項15】
大気圧下において離間配置された少なくとも一対の電極と、前記一対の電極間に電圧を印加する電源と、内部に処理対象物を入れるとともに、プラズマガスを封入して密閉可能な包装容器とを備え、内部に処理対象物およびプラズマガスを密閉した包装容器を少なくとも前記一対の電極の中間位置に配置させた後、前記一対の電極間に電圧を印加することにより、前記包装容器内の前記処理対象物をプラズマ処理することを特徴とする包装容器内プラズマ処理装置。
【請求項16】
大気圧下において、垂直方向に離間して平行に配置された一対の板電極と、前記一対の板電極間に電圧を印加する電源と、前記一対の板電極の中間位置に前記一対の板電極と平行に配設された回転台と、前記回転台を水平面上において回転駆動する駆動手段と、内部に処理対象物を入れるとともに、プラズマガスを封入して密閉可能な包装容器とを備え、内部に処理対象物およびプラズマガスを密閉した包装容器を前記回転台の上に載置した後、前記回転台を回転駆動させて前記包装容器を自転させつつ、前記一対の電極間に電圧を印加することにより、前記包装容器内の処理対象物をプラズマ処理することを特徴とする包装容器内プラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−110326(P2011−110326A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271522(P2009−271522)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】