説明

包装材料用組成物

【課題】良好に分散することができ、最終製品への白色顔料の添加量を減らし、添加量などに法規制が高い液体食品、牛乳用にも用途が広い包装材料用組成物、その組成物を用いた包装材料及び包装容器を提供する。
【解決手段】包装材料用組成物、その組成物を用いた包装材料及び包装容器は、熱可塑性ポリマーと、そのポリマー中に分散された純度99%以上の高純度酸化チタンとからのみなり、その高純度酸化チタンを多量に含有するマスターバッチを用いて製造され、その熱可塑性ポリマーが、メタロセン触媒で製造され、実質的に不純物を含まない純粋な直鎖状低密度ポリエチレンであって、密度890〜920kg/m、好ましくは900〜920kg/m、MFR8〜20g/10min(190℃)、好ましくは10〜15g/10min、及びダイスウェル比(DS)1.2〜1.7、好ましくは1.4〜1.6である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛乳、ジュース、アルコール飲料、ミネラルウォータ、緑茶、ドレッシング、スープ、ソース、ジャム、果肉入りジュース、菓子、砂糖、塩、化学調味料などを充填する包装材料用組成物、包装材料及び包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ジュース、牛乳、ミネラルウォータ、緑茶など低粘性液体食品、流動食品などの包装充填容器は、例えば、基材(例えば、紙などの繊維質及びプラスチック)/必要に応じてアルミ箔などのバリア層/ヒートシール層の積層体に、外観デザインが印刷されたウェブ状包装材料などの包装材料から得られる。
包装充填容器には、レンガ型包装容器、屋根型包装容器、紙製本体と本体端にインジェクション成形されたプラスチックの蓋とからなる複合容器、及び紙製本体と本体端に接合されたプラスチック頂部とからなる複合容器などがある。
【0003】
上記の包装材料及び包装容器に用いられるプラスチック(熱可塑性樹脂)は、主に、低密度ポリエチレン(LDPE)、線形低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン触媒による線形低密度ポリエチレン(mLLDPE)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンナフタレート、エチレンビニルアルコール、ポリアミド、メタキシレンジアミンとアジピン酸との縮合重合体、ポリビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンメタクリル酸共重合体、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレンメチルアクリレート共重合体、エチレンアクリル酸共重合体、環状オレフィンコポリマーから選ばれた1種若しくは2種以上のポリマーなどがある。
【0004】
包装容器に用いられるプラスチック(熱可塑性樹脂)には、用途に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、難燃化剤、無機および有機充填剤、塗料、顔料等の各種添加剤を適宜、添加される。白色顔料としては、亜鉛華、鉛白、リトポン、二酸化チタン、沈降性硫酸バリウムおよびバライト粉などがある。しかし、食品用途では、食品添加物に限定される。
食品衛生法適合の食品添加物である白色顔料の二酸化チタンとしては、99%以上の高純度酸化チタンがある。二酸化チタンの白色顔料は、衛生上、衛生管理上、及び食品の印象上から食品用途で意義を持つ。(特許文献1及び2参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−285621号公報
【特許文献2】特開2007−090876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
食品衛生法に適合した高純度酸化チタンは、一般的に分散性がある。しかしながら、ポリマー中に良好に均一に分散させることが難しく、特に、マスターバッチと呼ばれるプラスチック(樹脂)と多量の顔料等から構成される組成物では、ダマと呼ばれる不均一部分(分散不良箇所)が発生する。この発明は、良好に分散することができ、最終製品への白色顔料の添加量を減らし、添加量などに法規制が高い液体食品、牛乳用にも用途が広い包装材料用組成物、その組成物を用いた包装材料及び包装容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の包装材料用組成物、その組成物を用いた包装材料及び包装容器は、熱可塑性ポリマーと、そのポリマー中に分散された純度99%以上の高純度酸化チタンとからのみなり、その高純度酸化チタンを多量に含有するマスターバッチを用いて製造され、
その熱可塑性ポリマーが、メタロセン触媒で製造され、実質的に不純物を含まない純粋な直鎖状低密度ポリエチレンであって、密度890〜920kg/m、好ましくは900〜920kg/m、MFR8〜20g/10min(190℃)、好ましくは10〜15g/10min、及びダイスウェル比(DS)1.2〜1.7、好ましくは1.4〜1.6である
ことを特徴とする。
【0008】
この発明の好ましい態様において、マスターバッチが、分散助剤を用いずに、熱可塑性ポリマーと高純度酸化チタンとのみを、多軸コンパウンダーを用いて混練されたものである。
【発明の効果】
【0009】
上記の構成を有する本発明によれば、以下の作用機能を発揮し、有利な効果が得られる。
この発明の包装材料用組成物、その組成物を用いた包装材料及び包装容器は、熱可塑性ポリマーと、そのポリマー中に分散された純度99%以上の高純度酸化チタンとからのみなり、その高純度酸化チタンを多量(高濃度)に含有するマスターバッチを用いて製造される。
このマスターバッチは、熱可塑性ポリマーと多量(高濃度)の高純度酸化チタンとからのみから構成される組成物である。高濃度の白色組成物であるので、このマスターバッチを未着色の熱可塑性ポリマー(プラスチック)に少量添加することで、正確な色の濃度が得られるように設計することができる。
【0010】
この発明の特徴においては、純度99%以上の高純度酸化チタンが用いられる。この高純度酸化チタンは食品添加物であるので(食品衛生法:法6条、施行規則第3条、別表2指定添加物)、液体食品用の容器に特に食品に直接に触れる容器内壁にも、包装材料用組成物、その組成物を用いた包装材料及び包装容器として使用することができる。
更に、その熱可塑性ポリマーが、メタロセン触媒で製造され、実質的に不純物を含まない純粋な直鎖状低密度ポリエチレンである。上記の酸化チタンの食品衛生上の安全性と相俟って、純粋な直鎖状低密度ポリエチレンの熱可塑性ポリマーにおいても、食品に使用することができる。
【0011】
この発明の特徴において、直鎖状低密度ポリエチレンは、以下の特徴的なパラメータを持っている:
密度890〜920kg/m、好ましくは900〜920kg/m、MFR8〜20g/10min(190℃)、好ましくは10〜15g/10min、及びダイスウェル比(DS)1.2〜1.7、好ましくは1.4〜1.6
特徴的なパラメータの直鎖状低密度ポリエチレンは、均一微細な一次粒子でシャープな粒度分布を持つ高純度酸化チタンを、良好に分散することができる。言い換えれば、分散助剤を用いずに、直鎖状低密度ポリエチレンの熱可塑性ポリマーが、高純度酸化チタンを分散させることができる。
一般的に、ダイスウェルとは押出成形において溶融物の径がダイの径よりも大きくなる現象であり、ダイスウェルや溶融張力が大きい樹脂ほど内容積の大きい製品の成形が可能となる。
この発明において、ダイスウェル若しくはダイスウェル比とは、キャピラリー粘度測定器を使用し、ダイス径1.0mm、長さ10mm、温度190℃の測定条件において、ピストン速度を200mm、500mm/minに設定した時のストランド径をレーザー測定し、ダイス径1.0mmで割って得た値(比率)である。
【0012】
この発明の好ましい態様において、マスターバッチが、分散助剤を用いずに、熱可塑性ポリマーと高純度酸化チタンとのみを、多軸コンパウンダーを用いて混練されたものである。
分散助剤を用いずに多軸コンパウンダーで混練するので、添加量などに法規制が高い液体食品、牛乳用の包装材料として用いることができる。
【0013】
上述のように、熱可塑性ポリマー中に高純度酸化チタンを良好に分散することができ、最終製品への白色顔料の添加量を減らし、添加量などに法規制が高い液体食品、牛乳用にも用途が広い包装材料用組成物、その組成物を用いた包装材料及び包装容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明による実施例の包装材料用組成物のマスターバッチ及び比較例のマスターバッチの拡大断面写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
この形態の包装材料用組成物、その組成物を用いた包装材料及び包装容器は、熱可塑性ポリマーと、そのポリマー中に分散された純度99%以上の高純度酸化チタンとからのみなり、その高純度酸化チタンを多量(高濃度)に含有するマスターバッチを用いて製造される。
このマスターバッチの形態での高純度酸化チタンの含量は、30重量%〜80重量%、好ましくは、40〜70重量%である。この下限未満では、低濃度となり、マスターバッチの利点を生かすことができないからである。他方、上限を超すと、ポリマー内への均一な分散が難しくなり、ダマが発生する恐れがあるからである。
ここでのマスターバッチの利点は、高濃度白色組成物であることから、このマスターバッチを未着色の熱可塑性ポリマーに少量添加コントロールによって、正確な色の濃度が得られる。
【0016】
この形態においては、純度99%以上の高純度酸化チタンが用いられる。食品添加物の高純度酸化チタン(食品衛生法:法6条、施行規則第3条、別表2指定添加物)の使用によって、液体食品用の包装材料用組成物、その組成物を用いた包装材料及び包装容器として使用することができる。
純度99%以上の高純度酸化チタンには、高純度酸化チタン製品(東邦チタニウム株製、グレード:NA61、純度99.7%、昭和電工株製、スーパータイタニア)がある。
その製法は、例えば、四塩化チタンを原料として気相酸化法で製造される方法がある。その特長には、均一微細な一次粒子でシャープな粒度分布、非常に少ない金属不純物、及び、高結晶性がある。そお性状は、白色粉体である。
【0017】
この形態においては、熱可塑性ポリマーが、メタロセン触媒で製造され、実質的に不純物を含まない純粋な直鎖状低密度ポリエチレンである。
このポリマーがメタロセン触媒を用いて重合した狭い分子量分布を有する線形低密度ポリエチレン(mLLDPE)である。このmLLDPEとしては、例えば、二塩化ジルコノセンとメチルアルモキサンの組み合わせによる触媒等のメタロセン錯体とアルモキサンとの組み合わせによる触媒、すなわち、メタロセン触媒を使用して重合してなるエチレン−α・オレフィン共重合体を使用することができる。
このポリマーは酸化防止剤や安定剤等を添加していない無添加樹脂である。これらにより酸化チタンが、分散助剤を用いなくても良好な分散状態となる。
【0018】
この形態において、mLLDPEは、以下の特徴的なパラメータを持っている:
密度890〜920kg/m、好ましくは900〜920kg/m、MFR8〜20g/10min(190℃)、好ましくは10〜15g/10min、及びダイスウェル比(DS)1.2〜1.7、好ましくは1.4〜1.6
このパラメータの直鎖状低密度ポリエチレンが、分散助剤を用いず、高純度酸化チタンを分散させることができる。
【0019】
この態様において、マスターバッチは、マスターバッチの通常の製法で得ることができるが、好ましくは2軸型等の多軸コンパウンダーを用いて混練されて得る。混練に際して、分散助剤を用いずに、熱可塑性ポリマーと高純度酸化チタンとのみを用いる。
分散助剤を用いないので、添加量などに法規制が高い液体食品、牛乳用の包装材料として用いる。
【0020】
この形態のマスターバッチを用いて、更にポリマーなどを加えて得た包装材料用組成物、その組成物を用いて積層した包装材料及び、包装材料から成形した包装容器が製造される。
製造される包装容器には、レンガ型包装容器、屋根型包装容器、紙製本体と本体端にインジェクション成形されたプラスチックの蓋とからなる複合容器、及び紙製本体と本体端に接合されたプラスチック頂部とからなる複合容器などがある。
更に、上記のマスターバッチを用いて、容器用の蓋、ストローなどを成形することもできる。
【実施例】
【0021】
実施例として、密度912kg/m、MFR12g/10min(190C)のメタロセン触媒による直鎖状ポリエチレン(mLLDPE)に、2軸型コンパウンダーで、純度99.9%の酸化チタンを50wt%混ぜてマスターバッチを得た。
比較例として、密度918kg/m、MFR8g/10min(190C)の低密度ポリエチレン(LDPE)に,純度99.9%の酸化チタンを50wt%混ぜて作ったマスターバッチを調製した。
図1(A)及び(B)に、ポリマー中酸化チタンの分散状態を実証する、実施例の拡大断面写真及び比較例の拡大断面写真を各々示す。
比較例の図1(B)のばらつきに対し、実施例の図1(A)は均一で分散していることがわかる。
【0022】
その他の形態として、生乳容器対応白色顔料を使用した容器の蓋材を製造する。
上述で製造されたマスターバッチを使用し、容器の蓋材となるポリマーにブレンドする。このポリマーは、密度890〜920kg/m、MFR8〜20g/10min(190C)、ダイスウェル比は1.2〜1.6のメタロセン触媒で製造された純粋な直鎖状低密度ポリエチレン、または密度890〜920kg/m、MFR20〜40g/10min(190C)、ダイスウェル比は1.2〜1.6の低密度ポリエチレンを使用する。
両樹脂とも流動の弾性の小さなもの、あるいはクリープ変形の小さなもの、すなわち射出成型用のものが好まれる。
【0023】
その他の形態として、生乳容器対応白色顔料を使用した容器の一部を製造する。
上述で製造されたマスターバッチを使用し、容器の表裏面、主に表面の加飾用となるポリマーにブレンドする。その場合のポリマーは、密度890〜920kg/m、MFR8〜20g/10min(190C)、ダイスウェル比は1.4〜1.7のメタロセン触媒で製造された直鎖状低密度ポリエチレン、または密度890〜920kg/m、MFR3〜15g/10min(190C)、ダイスウェル比は1.5〜1.8の低密度ポリエチレンを使用する。
押出しラミネート法によって、紙、あるいはPET等の基材に直接コートしても良い。また、フィルムに加工後にサンドラミしてもよい。
【0024】
なお、本発明は実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0025】
この発明は、液体食品の包装充填の製造に適用することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 ・・・ポリマー
2 ・・・酸化チタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリマーと、該熱可塑性ポリマー中に分散された純度99%以上の高純度酸化チタンとからのみなり、該高純度酸化チタンを多量に含有するマスターバッチを用いて製造される包装材料用組成物において、
該熱可塑性ポリマーが、メタロセン触媒で製造され、実質的に不純物を含まない純粋な直鎖状低密度ポリエチレンであって、密度890〜920kg/m、MFR8〜20g/10min(190℃)及びダイスウェル比(DS)1.2〜1.7である
ことを特徴とする包装材料用組成物。
【請求項2】
該マスターバッチが、分散助剤を用いずに、該熱可塑性ポリマーと該高純度酸化チタンとのみを、多軸コンパウンダーを用いて混練されたものである、請求項1記載の包装材料用組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2012−116867(P2012−116867A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259550(P2010−259550)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000229232)日本テトラパック株式会社 (259)
【Fターム(参考)】