説明

包装材積層体

【課題】その積層体の端部における液体または湿分の浸透に対する高い抵抗を有するところの包装材積層体からつくられた食料品用包装物を提供する。
【解決手段】本発明は、紙または板紙の少なくとも1の基材層および少なくとも1の液体バリア層を含んでいる包装材積層体であって、ケテンダイマーおよびマルチマー、無水コハク酸、ロジンならびにこれらの混合物から成る群から選択されたサイズ剤を含んでおりかつアクリルアミドに基づいたポリマーも含んでいる配合物で、当該紙または板紙が処理されている包装材積層体に関する。本発明はさらに、包装材積層体の製造および使用方法、ならびに食料品または飲料品用の包装物およびその製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装材積層体、その製造方法および使用方法、ならびに食料品用包装物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも1層の紙または板紙を含んでいる包装材積層体は、食料品包装容器に広く使用されている。このような積層体の例は、たとえば特許文献1〜4に開示されている。
【0003】
完成された包装容器は、包装物を形成し、充填し、そしてシールする最新の包装および充填機械を用いて包装材積層体から製造されることができる。包装物の形成および充填に関連して、包装材積層体は、殺菌剤、たとえば水性過酸化水素で処理されることがある。長い保存期間用に食物が包装されるときは、包装物全体がレトルト中で高温度および超大気圧において、たとえば熱い水蒸気によって処理され、そして次に水との直接接触によって急速に冷却されることがある。これらの場合のいずれにおいても、液体または湿分が、紙または板紙層中にその端部が自由に露出されているところから浸透することがある。この問題を解消する様々な試みが開示されている。
【0004】
前述の特許文献1は、アルキルケテンダイマーの水性分散物を用いてストック(紙料)サイズ処理をすることによって、紙または板紙が疎水性にされるべきことを開示している。
【0005】
特許文献5は、15〜50%の光沢値、光沢の最小の変動、700〜850kg/mの範囲の密度を有する晒クラフトパルプの表面層を有し、かつ各層のサイズ剤処理によって疎水性である1以上の層から成る包装物用の板紙を開示している。
【0006】
特許文献6は、疎水性サイズ剤で処理された、繊維に基づいた包装物質を含んでおり、かつ該繊維基材の外面および/または内面に水の浸透を低減するための1以上の層を含んでいる、熱処理を意図された包装物を開示している。繊維基材は、湿潤紙力増強サイズ剤、疎水性サイズ剤ならびにアルミニウムおよび/またはカルシウム化合物の組み合わせを用いて処理される。
【0007】
特許文献7は、端部を湿分の浸透から保護するための、包装材積層体から容器を形成する方法を開示している。
【0008】
特許文献8は、湿分の端部浸透を最小化するための、包装物の特定の加熱サイクルを開示している。
【0009】
特許文献9は、熱可塑性ミクロスフェアを含有する断熱紙容器を記載している。紙の端部においてミクロスフェアの膨張を不能化することによって、エッジウィック(端部浸透防止性)が改良されることが開示されている。
【0010】
各種の用途のために紙の中に熱可塑性ミクロスフェアを使用することに関する他の開示は、特許文献10〜21および非特許文献1を含む。
【0011】
各種のサイズ剤配合物が、たとえば特許文献22〜31に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第02/090206号パンフレット
【特許文献2】国際公開第97/02140号パンフレット
【特許文献3】国際公開第97/02181号パンフレット
【特許文献4】国際公開第98/18680号パンフレット
【特許文献5】国際公開第03/021040号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2005/003460号パンフレット
【特許文献7】国際公開第03/106155号パンフレット
【特許文献8】国際公開第2004/056666号パンフレット
【特許文献9】特開2002−254532号公報
【特許文献10】米国特許第3556934号明細書
【特許文献11】米国特許第4133688号明細書
【特許文献12】米国特許第5125996号明細書
【特許文献13】米国特許第6379497号明細書
【特許文献14】特許第2689787号公報
【特許文献15】特開2003−105693号公報
【特許文献16】国際公開第01/54988号パンフレット
【特許文献17】国際公開第2004/099499号パンフレット
【特許文献18】国際公開第2004/101888号パンフレット
【特許文献19】国際公開第2004/113613号パンフレット
【特許文献20】国際公開第2006/068573号パンフレット
【特許文献21】米国特許出願公開第2001/0038893号明細書
【特許文献22】米国特許第4654386号明細書
【特許文献23】米国特許第5969011号明細書
【特許文献24】米国特許第6093217号明細書
【特許文献25】米国特許第6165259号明細書
【特許文献26】米国特許第6306255号明細書
【特許文献27】米国特許第6444024号明細書
【特許文献28】米国特許第6485555号明細書
【特許文献29】米国特許第6692560号明細書
【特許文献30】米国特許第6818100号明細書
【特許文献31】米国特許第6846384号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】O.Soderberg、「World Pulp & Paper Technology 1995/96、The International Review for the Pulp & Paper Industry」、143〜145ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、その積層体の端部における液体または湿分の浸透に対する高い抵抗を有するところの包装材積層体からつくられた食料品用包装物を提供することである。
【0015】
本発明のさらなる目的は、このような包装物に適した特性を有する、紙または板紙を含む包装材積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
紙または板紙用の特定の種類のサイズ剤配合物を使用することによって、これらの目的が達成されることができることが発見された。
【0017】
したがって、本発明の1の態様は、紙または板紙の少なくとも1の基材層および少なくとも1の液体バリア層、および好ましくは少なくとも1のガスバリア層を含んでいる包装材積層体であって、ケテンダイマーおよびマルチマー、無水コハク酸、ロジンならびにこれらの混合物から成る群から選択されたサイズ剤を含んでおりかつアクリルアミドに基づいたポリマーも含んでいる配合物で、当該紙または板紙がサイズ処理されている包装材積層体に関する。
【0018】
本発明の他の態様は、ケテンダイマーおよびマルチマー、無水コハク酸、ロジンならびにこれらの混合物から成る群から選択されたサイズ剤を含んでおりかつアクリルアミドに基づいたポリマーも含んでいる配合物でサイズ処理された紙のシートまたはウェブまたは板紙に、少なくとも1の液体バリア層および好ましくは少なくとも1のガスバリア層を施与する段階を含む、包装材積層体を製造する方法に関する。
【0019】
本発明のさらに他の態様は、食料品または飲料品用のシールされた包装物を製造するために、本明細書の包装材積層体を使用する方法に関する。
【0020】
本発明のさらなる態様は、本明細書に記載された包装材積層体から容器を形成する段階、該容器に食料品または飲料品を充填する段階、そして該容器をシールする段階を含む、シールされた包装物を製造する方法に関する。
【0021】
本発明のなおさらなる態様は、上述の包装材積層体からつくられたシールされた包装物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
1の実施態様では、本発明の包装物は、包装物が充填されそしてシールされた後に熱処理される必要がない食物または飲物を包装するのに適している。普通、このような包装物はミルク、ジュースおよび他のソフトドリンクのような飲物に使用され、したがって、使用される包装材積層体は本明細書では液体包装材積層体または液体包装板紙と以下呼ばれる。液体包装材積層体の望ましい特性は、包装物の液状内容物ならびに水性過酸化水素溶液のような液状殺菌剤に耐える能力を含む。
【0023】
他の実施態様では、該包装物は、内容物の保存寿命を伸ばすために、充填されそしてシールされた包装物が熱処理されるような食物または飲物に適している。このような包装物は、あらゆる種類の食料品、特に従来かんづめの缶に詰められるようなものに使用されることができ、本明細書ではレトルト可能包装物およびその材料、したがってレトルト可能包装材積層体またはレトルト可能板紙と以下呼ばれる。レトルト可能包装材積層体の望まれる特性は、約30分間〜約3時間、高温および高圧、たとえば約110〜約150℃の飽和水蒸気による処理に耐える能力を含む。
【0024】
本発明の包装材積層体は、普通、セルロース繊維を含んでいる紙または板紙の1層または数層の基材層を含んでいる。好ましくは、紙または板紙基材層は約30〜約2250g/m、または約50〜約1500g/m、最も好ましくは約65〜約500g/m、または約100〜約300g/mの坪量を有する。密度は好ましくは約100〜約1200kg/m、最も好ましくは約150〜約1000kg/m、または約200〜約900kg/mである。
【0025】
紙または板紙は様々な種類のパルプ、たとえば未使用のおよび/もしくはリサイクルの繊維に基づいた晒パルプまたは未晒パルプからつくられることができる。パルプは、化学パルプ、たとえば硫酸塩パルプ、亜硫酸パルプおよびオルガノソルブパルプ、機械パルプ、たとえば熱機械パルプ(TMP)、化学熱機械パルプ(CTMP)、叩解パルプおよび砕木パルプであって広葉樹および針葉樹の双方からのもの、からの繊維に基づいていることができ、またリサイクル繊維、任意的に脱インクパルプ(DIP)からのもの、およびこれらの混合物に基づいていることもできる。紙または板紙は、同じまたは異なった種類のパルプからの1層または数層を含んでいることができる。多層の組み合わせの例は、晒化学パルプの上層/DIP、CTMPまたは機械パルプの中層/晒化学パルプの裏層;晒化学パルプの上層/DIP、CTMPまたは機械パルプの中層/機械パルプの裏層;晒化学パルプの上層/DIP、CTMPまたは機械パルプの中層/未晒化学パルプの裏層;および晒化学パルプの上層/未晒化学パルプの裏層であって、上面が任意的にコーティングされおよび裏面が任意的にコーティングされたものを含む。上面とは、完成された包装物の外側に面することを意図された面をいう。多層の紙または板紙では、少なくとも1の層が本明細書に記載されたサイズ剤配合物でサイズ処理される。3以上の層を有する紙または板紙では、中層のうちの好ましくは少なくとも1の層が本明細書に記載されたサイズ剤配合物でサイズ処理される。
【0026】
単層の紙または板紙では、坪量は好ましくは約50〜約1500g/m、最も好ましくは約100〜約700g/m、または約150〜約500g/mである。密度は好ましくは約100〜約1200kg/m、最も好ましくは約150〜約1000kg/m、または約200〜約800kg/mである。
【0027】
2層の紙または板紙では、1層当たりの坪量は好ましくは約25〜約750g/m、最も好ましくは約50〜約400g/m、または約100〜約300g/mである。合計坪量は好ましくは約50〜約1500g/m、最も好ましくは約100〜約800g/m、または約200〜約600g/mである。合計密度は好ましくは約300〜約1200kg/m、最も好ましくは約400〜約1000kg/m、または約450〜約900kg/mである。
【0028】
3以上の層の紙または板紙では、外層は好ましくは約10〜約750g/m、最も好ましくは約20〜約400g/m、または約30〜約200g/mの坪量を有する。外層の密度は好ましくは約300〜約1200kg/m、最も好ましくは約400〜約1000kg/m、または約450〜約900kg/mである。中央の、または外層でない1または複数の層は好ましくは約10〜約750g/m、最も好ましくは約25〜約400g/m、または約50〜約200g/mの坪量を有する。中央の、または外層でない1または複数の層の密度は好ましくは約10〜約800kg/m、最も好ましくは約50〜約700kg/m、または約100〜約600kg/mである。合計坪量は好ましくは約30〜約2250g/m、最も好ましくは約65〜約800g/m、または約110〜約600g/mである。合計密度は好ましくは約100〜約1000kg/m、最も好ましくは約200〜約900kg/m、または約400〜約800kg/mである。
【0029】
レトルト可能包装材積層体の1の実施態様は、それぞれ、晒および未晒の針葉樹クラフトパルプからつくられた2層の紙または板紙の基材層を含む。しかし、様々な組成の単層または多層の紙または板紙の他の組み合わせも用いられることができる。
【0030】
液体包装材積層体の1の実施態様は、3層の紙または板紙の基材層を含み、そのうちの好ましくは少なくとも中層が、本明細書に記載されたサイズ剤配合物でサイズ処理される。層の組み合わせの例は、上述のものを含む。
【0031】
紙または板紙は、ケテンダイマーおよびマルチマー、無水コハク酸ならびにロジンのうちの1以上の中からのサイズ剤を用いてサイズ処理され、最も好ましくはストックサイズ処理をされる。多層の紙または板紙では、これは少なくとも1の層がこのようなサイズ剤でサイズ処理されることを意味する。紙または板紙中の異なった層に、同じまたは異なったサイズ剤が使用されることができる。たとえば、AKDまたはASAを1以上の層におよびロジンを1以上の他の層に使用することが可能である。使用されるサイズ剤の量は、好ましくは約0.1〜約10kg/紙トン、より好ましくは約0.3〜約5kg/紙トン、最も好ましくは約0.5〜約4.5kg/紙トン、または約2〜約4kg/紙トンである。
【0032】
好まれるケテンダイマーは、一般式(I)

を有し、この式で、RおよびRは同じまたは異なった、飽和または不飽和の炭化水素基、たとえばアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルを表す。炭化水素基は分枝状または直鎖状であることができ、好ましくは6〜36の炭素原子、最も好ましくは12〜20の炭素原子をまさに有する。炭化水素基の例は、分枝状および直鎖状のオクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコシル、ドコシル、テトラコシル、フェニル、ベンジル、ベータナフチル、シクロヘキシルおよびヘキサデシル基を含む。有用なケテンダイマーは、有機酸、たとえばモンタン酸、ナフテン酸、9,10−デシレン酸、9,10−ドデシレン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、エレオステアリン酸、天然に存在する脂肪酸の混合物であって、ココナッツ油、ババス油、パーム核油、パーム油、オリーブ油、ピーナツ油、ナタネ油、牛脂、豚脂、鯨の皮下脂肪中に認められるもの、および上で名指された脂肪酸の任意の混合物の互いから調製されたものを含む。炭化水素基に応じて、ケテンダイマーは室温(25℃)で固形または液状であることができる。
【0033】
ケテンダイマーもしくはマルチマー、無水アルキルコハク酸、ロジンまたはこれらの混合物が、同様にアクリルアミドに基づいたポリマー、特にアクリルアミドに基づいた荷電ポリマー、最も好ましくはアクリルアミドに基づいたカチオン性ポリマーも含んでいるサイズ剤配合物中に含められるならば、思いがけず良好な結果が達成されることが発見された。しかし、同様にアクリルアミドに基づいたアニオン性、両性および非イオン性のポリマーも使用されることができる。好適なサイズ剤配合物は、好まれる乾燥内容量約5〜約40重量%、最も好ましくは約15〜約30重量%を有する好ましくは水性の分散物である。配合物の乾燥内容量の好ましくは約50〜約99重量%、最も好ましくは約75〜約95重量%が上記のサイズ剤から構成されている。アクリルアミドに基づいたポリマーの量は、サイズ剤の乾燥含有量当たり好ましくは約1〜約50重量%、最も好ましくは約5〜約30重量%、または約10〜約20重量%である。
【0034】
サイズ剤配合物は、他の普通に使用される添加剤、たとえば分散剤、乳化剤または安定化剤として作用する化合物も含んでいることができ、その例は有機化合物、たとえばナフタレンスルフォネート、リグノスルフォネート、4級アンモニウム化合物およびその塩、セルロースおよびその誘導体、ならびにポリアルミニウム化合物のような無機化合物、たとえばポリアルミニウムクロライド、ポリアルミニウムサルフェートまたはポリアルミニウムシリケートサルフェートを含む。他の添加剤は、様々な種類の殺生物剤および消泡剤を含む。サイズ剤配合物中の有用な添加剤は、たとえば米国特許第6165259号、米国特許第5969011号、米国特許第6306255号および米国特許第6846384号にも記載されている。分散剤、乳化剤または安定化剤として作用する有機化合物の量は、乾燥内容量のたとえば約0.1〜約10重量%であることができる。ポリアルミニウム化合物の量は、乾燥内容量のたとえば約0.1〜約10重量%であることができる。殺生物剤の量は、乾燥内容量のたとえば約0.01〜約2重量%であることができる。
【0035】
アクリルアミドに基づいた好まれるポリマーは、少なくとも約10000、または少なくとも約50000の重量平均分子量を有する。ほとんどの場合、分子量は、好ましくは少なくとも約100000、または少なくとも約500000である。ほとんどの場合、分子量は約5千万以下、または約2千万以下、または約5百万以下であることが好まれる。
【0036】
アクリルアミドに基づいた有用なポリマーは、アクリルアミドまたはアクリルアミドに基づいたモノマーを、好ましくは1以上のエチレン性不飽和のカチオン性、潜在的カチオン性、アニオン性または潜在的アニオン性のモノマーと組み合わせて重合することによって得られることができる。本明細書で使用される「潜在的カチオン性モノマー」の語句は、潜在的にイオン化可能な基を持つモノマーをいい、該基はポリマー中に含められるとセルロース懸濁物に施与された後、カチオン性になる。本明細書で使用される「潜在的アニオン性モノマー」の語句は、ポリマー中に含められるとセルロース懸濁物に施与された後、アニオン性になる潜在的にイオン化可能な基を持つモノマーをいう。
【0037】
アクリルアミドおよびアクリルアミドに基づいたモノマーの例は、メタクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、たとえばN−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミドおよびN−イソブチル(メタ)アクリルアミド;N−アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド、たとえばN−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、およびN−イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド;N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、たとえばN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド;ならびにジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドを含む。
【0038】
有用なエチレン性不飽和のカチオン性および潜在的カチオン性モノマーは、好ましくは水溶性である。このようなモノマーの例は、ジアリルジアルキルアンモニウムハライド、たとえばジアリルジメチルアンモニウムクロライドおよび一般構造式(II)

によって表されるカチオン性モノマーを含み、この式で、RはHまたはCHであり;RおよびRは、互いに独立に、Hまたは好ましくは炭化水素基、好適には1〜3の炭素原子、好ましくは1〜2の炭素原子を有するアルキルであり;AはOまたはNHであり;Bは2〜8の炭素原子、好適には2〜4の炭素原子を有するアルキルもしくはアルキレン基、またはヒドロキシプロピレン基であり;RはHまたは好ましくは炭化水素基、好適には1〜4の炭素原子、好ましくは1〜2の炭素原子を有するアルキル、もしくは芳香族基、好適にはフェニル基もしくは置換フェニル基を有する置換基であって、普通には1〜3の炭素原子、好適には1〜2の炭素原子を有するアルキレン基を介して窒素に結合されることができるものであり、好適なRはベンジル基(−CH−C)を包含し;ならびにXはアニオン性対イオン、普通にはハロゲンイオン、たとえば塩素イオンである。
【0039】
一般構造式(II)によって表される有用なモノマーの例は、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、たとえばジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびジメチルアミノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、またはジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、たとえばジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、およびジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドを塩化メチルまたは塩化ベンジルで処理することによって得られることができる4級モノマーを含む。一般式(II)の好まれるカチオン性モノマーは、ジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル4級塩、ジメチルアミノエチルメタクリレート塩化メチル4級塩、ジメチルアミノエチルアクリレート塩化ベンジル4級塩、およびジメチルアミノエチルメタクリレート塩化ベンジル4級塩を包含する。
【0040】
有用な共重合性のアニオン性および潜在的アニオン性モノマーの例は、エチレン性不飽和カルボン酸およびその塩、たとえば(メタ)アクリル酸およびその塩;エチレン性不飽和スルホン酸およびその塩、たとえば2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォネート、スルホエチル(メタ)アクリレート、ビニルスルホン酸およびその塩、スチレンスルフォネート、およびパラビニルフェノール(ヒドロキシスチレン)およびその塩を含む。任意の塩、たとえばナトリウムまたは他のアルカリ金属の塩が使用されることができる。
【0041】
アクリルアミドに基づいた1以上のモノマー、エチレン性不飽和のアニオン性または潜在的アニオン性の1以上のモノマーおよび水溶性のエチレン性不飽和のカチオン性または潜在的カチオン性の1以上のモノマーを含んでいる混合物を重合することによって、アクリルアミドに基づいた両性のポリマーが得られることができる。好適なアニオン性および潜在的アニオン性モノマーの例は、上述のものを含む。
【0042】
アクリルアミドに基づいたポリマーを調製するためのモノマー混合物は、上述のエチレン性不飽和モノマーの他に1以上の多官能性架橋剤も含んでいることができる。モノマー混合物中に多官能性架橋剤が存在すると、ポリマーが水中に分散される能力が改良される。多官能性架橋剤は非イオン性、カチオン性、アニオン性または両性であることができる。好適な多官能性架橋剤の例は、少なくとも2のエチレン性不飽和結合を有する化合物、たとえばN,N−メチレン−ビス(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、N−ビニル(メタ)アクリルアミド、ジビニルベンゼン、トリアリルアンモニウム塩およびN−メチルアリル(メタ)アクリルアミド;エチレン性不飽和結合および反応性基を有する化合物、たとえばグリシジル(メタ)アクリレート、アクロレインおよびメチロール(メタ)アクリルアミド;ならびに少なくとも2の反応性基を有する化合物、たとえばグリオキサルのようなジアルデヒド、ジエポキシ化合物およびエピクロロヒドリンを含む。モノマー混合物中に存在するモノマー当たり、またはポリマー中に存在するモノマー単位当たり多官能性架橋剤少なくとも百万分の4モル部、好ましくは百万分の約4〜約6000モル部、最も好ましくは百万分の20〜4000モル部を使用して、好適な水分散性ポリマーは調製されることができる。有用な水分散性ポリマーの例は、米国特許第5167766号に開示された、アクリルアミドに基づいたポリマーを含む。
【0043】
アクリルアミドまたはアクリルアミドに基づいたモノマーと、荷電または潜在的荷電モノマーとの比は、好適な電荷密度を有する、アクリルアミドに基づいたポリマーを得るように選択される。アクリルアミドに基づいたカチオン性ポリマーの場合、電荷密度は好ましくは約0.1〜約11ミリ当量/g、または約0.5〜約10ミリ当量/g、最も好ましくは約0.6〜約8ミリ当量/g、または約1〜約5ミリ当量/gである。ある場合にはアクリルアミドに基づいたカチオン性ポリマーの電荷密度は、好ましくは約3〜約8ミリ当量/gである。アクリルアミドに基づいたアニオン性ポリマーの場合、電荷密度は好ましくは約0.5〜約10ミリ当量/g、最も好ましくは約2〜約8ミリ当量/gである。
【0044】
紙または板紙が熱可塑性ミクロスフェアを、好ましくは膨張されたまたは膨張されていない熱膨張可能なミクロスフェアを、好ましくは少なくとも紙または板紙の端部において含有する実施態様において、有利な特性が達成されることができる。多層の紙または板紙では、少なくとも1の層が好ましくは熱可塑性ミクロスフェアを含んでいる。3層以上を有する紙または板紙では、好ましくは中層のうちの少なくとも1層が熱可塑性ミクロスフェアを含んでいる。
【0045】
熱可塑性ミクロスフェアは、予め膨張されたミクロスフェアとしてか、あるいは膨張されていない熱膨張可能なミクロスフェアとして、好ましくは膨張されそして紙または板紙の製造の間に紙料に添加され、後者は好ましくは紙または板紙の製造プロセスの間に、たとえば熱がかけられる乾燥段階の間に、または別のプロセス段階において、たとえばシリンダーヒーターまたはラミネーター中で加熱によって膨張される。紙または板紙がまだ湿っているときにまたは紙または板紙が完全にもしくはほとんど完全に乾燥されたときに、ミクロスフェアは膨張されることができる。ミクロスフェアは、好ましくはその水性スラリーの形で添加され、これは紙料に供給するのが望ましい他の添加剤を任意的に含有することができる。添加される熱可塑性ミクロスフェアの量は、好ましくは約1〜約100kg/紙トン、最も好ましくは約1〜約50kg/紙トン、または約4〜約40kg/紙トンである。
【0046】
本明細書において言及されている熱膨張可能な熱可塑性ミクロスフェアは、好ましくは発泡剤を封じ込めている熱可塑性ポリマーのシェルを含んでいる。発泡剤は、好ましくは熱可塑性ポリマーシェルの軟化温度よりも高くない沸騰温度を有する液体である。加熱されると、シェルが軟化するのと同時に発泡剤は内部圧力を増加させて、ミクロスフェアの有意の膨張をもたらす。膨張性のおよび予め膨張された熱可塑性ミクロスフェアの双方が、Expancel(商標)(Akzo Nobel社)の商標下に商業的に入手可能であり、各種の形態で、たとえば乾燥自由流動性粒子として、水性スラリーとして、または部分的に脱水されたウェットケーキとして市販されている。これらはまた文献に、たとえば米国特許第3615972号、第3945956号、第4287308号、第5536756号、第6235800号、第6235394号および第6509384号に、米国特許出願公開第2005/0079352号に、欧州特許第486080号および欧州特許第1288272号に、国際公開第2004/072160号、国際公開第2007/091960号および国際公開第2007/091961号に、ならびに特開昭62−286534号、特開2005−213379号および2005−272633号に十分に記載されている。
【0047】
熱可塑性ミクロスフェアの熱可塑性ポリマーシェルは、好ましくはエチレン性不飽和モノマーを重合することによって得られたホモポリマーまたはコポリマーからつくられる。これらのモノマーは、例としてニトリル含有モノマー、たとえばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、フマロニトリルまたはクロトニトリル;アクリルエステル、たとえばメチルアクリレートまたはエチルアクリレート;メタクリルエステル、たとえばメチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレートまたはエチルメタクリレート;ハロゲン化ビニル、たとえば塩化ビニル;ビニルエステル、たとえば酢酸ビニル、ビニルエーテル、たとえばメチルビニルエーテルまたはエチルビニルエーテルのようなアルキルビニルエーテル、他のビニルモノマー、たとえばビニルピリジン;ハロゲン化ビニリデン、たとえば塩化ビニリデン;スチレン類、たとえばスチレン、ハロゲン化スチレンまたはα−メチルスチレン;またはジエン、たとえばブタジエン、イソプレンおよびクロロプレンであることができる。上述のモノマーの任意の混合物が使用されることもできる。
【0048】
熱可塑性ミクロスフェアの発泡剤は、炭化水素、たとえばプロパン、ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ネオヘキサン、ヘプタン、イソヘプタン、オクタンもしくはイソオクタン、またはこれらの混合物を含んでいることができる。これらの他に、他の種類の炭化水素、たとえば石油エーテル、または塩素化もしくはフッ素化炭化水素、たとえば塩化メチル、塩化メチレン、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、トリクロロフルオロメタン、パーフッ素化炭化水素等が使用されることもできる。
【0049】
本発明に適した膨張性熱可塑性ミクロスフェアは、好ましくは約1〜約500μm、より好ましくは約5〜約100μm、最も好ましくは約10〜約50μmの体積中位直径を有する。膨張が開始する温度は、T開始と呼ばれ、好ましくは約60〜約150℃、最も好ましくは約70〜約100℃である。最大膨張に達する温度は、T最大と呼ばれ、好ましくは約90〜約180℃、最も好ましくは約115〜約150℃である。
【0050】
本発明に適した予め膨張された熱可塑性ミクロスフェアは、好ましくは約10〜約120μm、最も好ましくは約20〜約80μmの体積中位直径を有する。密度は好ましくは約5〜約150g/dm、最も好ましくは約10〜約100g/dmである。予め膨張された熱可塑性ミクロスフェアそのものは商業的に入手可能であるけれども、たとえば膨張されていない膨張可能な熱可塑性ミクロスフェアが紙料に添加される直前にこれらを熱的に現場膨張することによって、予め膨張された熱可塑性ミクロスフェアを準備することも可能であり、加熱媒体として水蒸気が使用されることができるように膨張性ミクロスフェアが約100℃未満のT開始を有するならば、これは容易に行われる。
【0051】
紙または板紙はさらに、脱水の前に紙料に添加される湿潤紙力増強剤を含んでいることができる。好適な湿潤紙力増強剤は、ポリアミンエピハロヒドリン、ポリアミドエピハロヒドリン、ポリアミノアミドエピハロヒドリン、尿素/ホルムアルデヒド、尿素/メラミン/ホルムアルデヒド、フェノール/ホルムアルデヒド、ポリアクリルアミド/グリオキサル縮合物、ポリビニルアミン、ポリウレタン、ポリイソシアネート、およびこれらの混合物、である樹脂を包含し、これらのうちポリアミノアミドエピクロロヒドリン(PAAE)が特に好まれる。湿潤紙力増強剤の量は、好ましくは約0.1〜約10kg/紙トン、最も好ましくは約0.5〜約5kg/紙トンである。
【0052】
紙または板紙を製造するときに、少なくとも1のサイズ剤、好ましくはケテンダイマー、および湿潤紙力増強剤、好ましくはポリアミノアミドエピハロヒドリンが紙料に添加されることが特に好まれる。
【0053】
紙または板紙は、製紙に普通に使用される他の添加剤も含有することができ、脱水の前に紙料に添加されることができる。このような添加剤は、1以上のフィラー、例として鉱物フィラー、たとえばカオリン、陶土、二酸化チタン、石こう、タルク、白亜、大理石粉末または沈降炭酸カルシウムを包含することができる。他の普通に使用される添加剤は、歩留り向上剤、アルミニウム化合物、染料、蛍光増白剤等を包含することができる。アルミニウム化合物の例は、ミョウバン、アルミネートならびにポリアルミニウム化合物、たとえばポリアルミニウムクロライドおよびサルフェートを含む。歩留り向上剤の例は、アクリルアミドに基づいたポリマーのような有機ポリマーと組み合わされたカチオン性ポリマー、アニオン性無機物質、たとえばカチオン性有機ポリマーと組み合わされたベントナイトまたはカチオン性有機ポリマーもしくはカチオン性およびアニオン性有機ポリマーと組み合わされたシリカベースゾルを含む。
【0054】
歩留り向上剤に有用なカチオン性有機ポリマーの例は、たとえば国際公開第2006/068576号および国際公開第2006/123989号に記載されたものを含む。1の実施態様では、カチオン性有機ポリマーは、同じまたは異なった種類の1以上の芳香族基を含んでいる。該芳香族基はポリマー骨格(主鎖)中にまたはポリマー骨格に結合された置換基中に存在することができる。好適な芳香族基の例は、アリール、アラルキルおよびアルカリール基、たとえばフェニル、フェニレン、ナフチル、キシリレン、ベンジルおよびフェニルエチル;窒素含有芳香族(アリール)基、たとえばピリジニウムおよびキノリニウム、ならびにこれらの基、たとえばベンジルの誘導体を含む。カチオン性ポリマー中にならびに該カチオン性ポリマーを調製するために使用されるモノマー中に存在することができるカチオン荷電基の例は、4級アンモニウム基、3級アミノ基およびこれらの酸付加塩を含む。
【0055】
包装材積層体は、紙または板紙の1または複数の基材層の各面上に少なくとも1の、好ましくは少なくとも2の液体バリア層を含んでいる。液体バリア層は、水の浸透性を示さないかまたは有意でない浸透性を示す任意の物質からつくられることができる。好適な物質は、ポリエチレン、たとえば高密度または直鎖低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、PVC、ポリエステル、たとえばポリエチレンテレフタレート、およびこれらの物理的または機械的混合物、であるポリマーを包含する。またコポリマー、たとえばエチレンとプロピレンとのコポリマーが使用されることもできる。1または複数の液体バリア層は、任意の知られた様式で、たとえば各種の積層方法等で施与されることができる。
【0056】
包装材積層体は、さらにガスバリア層を、好ましくは基材層と包装物の内側に面するように意図された液体非浸透性層との間に含んでいることができる。酸素分子の浸透性を示さないかまたは有意でない浸透性を示す任意の物質が使用されることができる。該物質の例は、金属箔、たとえばアルミニウム箔、シリカコーティング、たとえば国際公開第2006/065196号に記載されたコロイドシリカと任意的な各種の添加剤とを含んでいるコーティング組成物として施与されたもの、またはプラズマ蒸着によって製造されたものを含む。他の可能性がある物質は、ポリビニルアルコールのようなポリマーまたはエチレンとビニルアルコールとのコポリマーを含む。ガスバリア層は、任意の知られた様式で、たとえば各種の積層方法等で施与されることができる。
【0057】
通常、別々の層がそれぞれ、液体バリアおよびガスバリアとなるために存在するが、1の実施態様では、液体およびガスのバリア特性の双方を有する物質の単層によって、液体バリア層およびガスバリア層が与えられる。
【0058】
本発明は以下の実施例に関連付けてさらに説明されるが、該実施例は本発明の範囲を限定するものと解釈されてはならない。他様に述べられない限り、すべての部およびパーセントは重量部および重量パーセントをいう。
【0059】
実施例において、以下の製品のうちの1以上が使用された。
ST1: 2,3−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドで0.042のD.S.まで修飾された、カチオンデンプンに基づいたバイオポリマーであって、約0.28ミリ当量/gのカチオン電荷密度を有するもの
ST2: 2,3−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドで0.02のD.S.まで修飾された、カチオンデンプンに基づいたバイオポリマーであって、約0.14ミリ当量/gのカチオン電荷密度を有するもの
ST3: 2,3−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドで0.035のD.S.まで修飾された、カチオンデンプンに基づいたバイオポリマーであって、約0.23ミリ当量/gのカチオン電荷密度を有するもの
WS1: 湿潤紙力増強剤PAAE(Eka社 WS XO)
WS2: 湿潤紙力増強剤PAAE(Eka社 WS 320)
SA1: AKDおよびAKD当たり10重量%のカチオン性ポリマーを有するサイズ剤配合物であって、該カチオン性ポリマーがアクリルアミド90モル%およびジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル4級塩10モル%を重合することによって調製され、重量平均分子量約1百万およびカチオン電荷密度約1.2ミリ当量/gを有するもの
SA2: デンプンで安定化されたサイズ剤AKD(Eka社 DR 28 HF)
SA3: デンプンで安定化されたサイズ剤AKD(Eka社 DR C223)
MS1: 平均粒子サイズ6〜9μmを有する膨張性ミクロスフェアExpancel(商標)(461WU20)
MS2: 平均粒子サイズ20〜30μmを有する予め膨張されたミクロスフェアExpancel(商標)(461WE20)
MS3: 平均粒子サイズ10〜16μmを有する膨張性ミクロスフェアExpancel(商標)(820SL40)
MS4: 平均粒子サイズ4〜6μmを有する画分である、膨張性ミクロスフェアExpancel(商標)(551DUX12)
PL1: アクリルアミド90モル%およびジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル4級塩10モル%の重合によって調製され、重量平均分子量約6百万およびカチオン電荷約1.2ミリ当量/gを有する、アクリルアミドに基づいたカチオン性ポリマー
PL2: アクリルアミド90モル%およびジメチルアミノエチルアクリレート塩化ベンジル4級塩10モル%の重合によって調製され、重量平均分子量約6百万およびカチオン電荷約1.2ミリ当量/gを有する、アクリルアミドに基づいたカチオン性ポリマー
NP1:S値<35を有し、比表面積約700m/gを有するシリカベース粒子を含有する、アルミニウムで修飾されたコロイドシリカゾルの形態をした、アニオン性無機質のケイ酸縮合ポリマー
【実施例1】
【0060】
紙料稠度0.5%および中性のpHを有する100%未晒化学熱機械パルプ(CTMP)繊維に基づいた紙料から、ダイナミックシートフォーマー(Formette Dynamic、スウェーデン国、Fibertech社によって納入された。)において、坪量約120g/mを有する液体包装板紙の中央層が製造された。
【0061】
紙料をポンプで混合槽から横断ノズルを通って回転ドラムに入れワイヤの表面上の水膜上へと送り、紙料を濾水してシートを形成し、シートを搾水しそして乾燥することによって、ダイナミックシートフォーマーにおいて紙シートが形成された。
【0062】
紙料への添加は、ポンプ送り出しの以下の(秒単位の)時間前に行われた。
90秒間前、カチオンデンプン
75秒間前、湿潤紙力増強剤PAAE
60秒間前、サイズ剤AKD
45秒間前、ミクロスフェアExpancel(商標)
30秒間前、カチオン性ポリマー
15秒間前、アニオン性シリカゾル
0秒間、ポンプ送り出し
【0063】
板紙シートは搾水されそしてシリンダー乾燥機中で140℃において乾燥されて、取り囲んでいる湿っているかあるいは乾燥した紙ウェブ中のミクロスフェアの熱処理および少なくとも膨張されていないミクロスフェアの膨張を起こさせた。以下の2の異なった乾燥方法が使用された。
湿式熱処理:予備乾燥2分間105℃(まだ湿っている。)+最終乾燥140℃
乾式熱処理:乾燥10分間105℃(乾燥している。)+最終乾燥140℃
【0064】
板紙材料をPVCと積層しそして75×25mm片に裁断することによって、サンプルが調製された。
【0065】
サンプルの裁ち端部浸透度(raw edge penetration、REP)が、以下の2の方法で試験された。
1.REP 水:水80℃、3時間
2.REP H:水性35%過酸化水素、70℃、10分間
【0066】
湿式熱処理における結果が表1に示され、他方、乾式熱処理における結果が表2に示される。添加レベルは乾燥紙料系当たりの乾燥生成物として計算され、ただしシリカに基づいた粒子は乾燥紙料系当たりのSiOとして計算される。
【表1】

【表2】

【実施例2】
【0067】
pH8.0にある、実施例1で使用されたのと同じパルプを用いて、XPM(実験用抄紙機)において液体包装板紙の中央層が製造された。
【0068】
紙料への添加は以下の順番で行われた。
カチオンデンプン1、50%
湿潤紙力増強剤PAAE
ミクロスフェアExpancel(商標)
カチオンデンプン2、50%
サイズ剤AKD
カチオン性ポリマー
アニオン性シリカゾル
【0069】
紙ウェブが、XPM(最大乾燥温度100℃)において最大100℃で乾燥された。ミクロスフェアが、シリンダー乾燥機中で140℃において乾式熱処理に付された。サンプルは、水性過酸化水素がわずか30%であることを除いて、実施例1におけるように調製され試験された。実施例1におけるように計算された添加レベルとともに、結果が表3に示される。
【表3】

【実施例3】
【0070】
液体包装板紙の中央層が製造され、そして実施例2におけるように水中REPを試験された。結果が表4に示される。
【表4】

【実施例4】
【0071】
100%晒針葉樹クラフト繊維に基づきかつ紙料稠度1.88%を有する紙料から、ノルウェー国、Hamjern Maskin社によって納入されたPFIシートフォーマーにおいて、坪量約250g/mを有するレトルト可能板紙が製造された。
【0072】
紙料への添加は、脱水の以下の(秒単位の)時間前に行われた。
75秒間前、サイズ剤AKD
60秒間前、ミクロスフェアExpancel(商標)
45秒間前、カチオンデンプン
30秒間前、カチオン性ポリマー
15秒間前、アニオン性シリカゾル
0秒間、脱水
【0073】
板紙シートは搾水されそしてシリンダー乾燥機中で140℃において乾燥されて、取り囲んでいる湿った紙ウェブ中のミクロスフェアの熱処理および少なくとも膨張されていないミクロスフェアの膨張を起こさせた。以下の方法が使用された。
湿式熱処理:シリンダードラム1時間85℃(まだ湿っている。)+最終乾燥140℃
【0074】
サンプルが実施例1におけるように調製され、そして130℃および2バールにおいてオートクレーブ中60分間の水蒸気を用いた処理によって、裁ち端部浸透度(REP)が試験された。オートクレーブは、オーストリア国、Certoclav Sterilizer社によって納入されたCertoclav TT 121であった。実施例1におけるように計算された添加レベルとともに、結果が表5に示される。
【表5】

【実施例5】
【0075】
100%未晒針葉樹クラフト繊維および紙料稠度1.75%に基づいた紙料を用いることを除いて実施例4におけると同じように、レトルト可能板紙が製造された。
【0076】
紙料への添加は、脱水の以下の(秒単位の)時間前に行われた。
75秒間前、サイズ剤AKD
65秒間前、湿潤紙力増強剤PAAE
55秒間前、ミクロスフェアExpancel(商標)
45秒間前、カチオンデンプン
30秒間前、カチオン性ポリマー
15秒間前、アニオン性シリカゾル
0秒間、脱水
【0077】
板紙シートは搾水されそしてシリンダー乾燥機中で160℃において乾燥されて、取り囲んでいる乾燥したまたは湿っている紙ウェブ中のミクロスフェアの熱処理および少なくとも膨張されていないミクロスフェアの膨張を起こさせた。以下の方法が使用された。
乾式熱処理:シリンダードラム3時間85℃(乾燥している。)+最終乾燥160℃
湿式熱処理:シリンダードラム1時間85℃(乾燥している。)+最終乾燥160℃
【0078】
サンプルが実施例1におけるように調製され、試験され、そして以下の2の異なった方法を用いて、裁ち端部浸透度REPが試験された。
1.REP 蒸気:水蒸気オートクレーブ130℃、60分間、2バール
2.REP H:水性35%過酸化水素、70℃、10分間
【0079】
実施例1におけるように計算された添加レベルとともに、乾式熱処理における結果が表6に示され、他方、湿式熱処理における結果が表7に示される。
【表6】

【表7】

【実施例6】
【0080】
紙料稠度2.1%を用いることを除いて実施例4におけると同じように、レトルト可能板紙が製造された。紙料への添加は、脱水の以下の(秒単位の)時間前に行われた。
75秒間前、サイズ剤AKD
60秒間前、ミクロスフェアExpancel(商標)
45秒間前、カチオンデンプン
30秒間前、カチオン性ポリマー
15秒間前、アニオン性シリカゾル
0秒間、脱水
【0081】
板紙シートは搾水されそしてシリンダー乾燥機中で乾燥されて、取り囲んでいる湿った紙ウェブ中のミクロスフェアの熱処理および少なくとも膨張されていないミクロスフェアの膨張を起こさせた。以下の方法が使用された。
1.シリンダードラム2時間70℃(まだ湿っている。)+最終乾燥140℃
2.シリンダードラム2時間70℃(まだ湿っている。)+最終乾燥160℃
【0082】
サンプルが実施例4におけるように調製され、そして以下の2の異なった方法を用いて裁ち端部浸透度REPが試験された。
1.REP 蒸気:水蒸気オートクレーブ130℃、60分間、2バール
2.REP 水:水80℃、3時間
【0083】
140℃で乾燥されたサンプルについてREP蒸気が試験され、また160℃で乾燥されたサンプルについてREP水が試験された。
【0084】
実施例1におけるように計算された添加レベルとともに、結果が表7に示される。
【表8】

【実施例7】
【0085】
実施例6におけるようにレトルト可能板紙が製造された。紙料への添加は、脱水の以下の(秒単位の)時間前に行われた。
75秒間前、サイズ剤AKD
60秒間前、ミクロスフェアExpancel(商標)
45秒間前、カチオンデンプン
30秒間前、カチオン性ポリマー
15秒間前、アニオン性シリカゾル
0秒間、脱水
【0086】
板紙シートは搾水されそしてシリンダー乾燥機中で乾燥されて、取り囲んでいる湿った紙ウェブ中のミクロスフェアの熱処理および少なくとも膨張されていないミクロスフェアの膨張を起こさせた。以下の方法が使用された。
湿式熱処理:シリンダードラム2時間70℃(まだ湿っている。)+最終乾燥140℃
【0087】
実施例1におけるようにサンプルが調製され試験された。実施例1におけるように計算された添加レベルとともに、結果が表8に示される。
【表9】

【実施例8】
【0088】
ダイナミックシートフォーマー(Formette Dynamic、スウェーデン国、Fibertech社によって納入された。)において、100%未晒針葉樹クラフト繊維および紙料稠度0.5%に基づいた紙料から50%を使用して底層を形成し、かつ100%晒針葉樹クラフト繊維および紙料稠度0.5%に基づいた紙料から50%を使用して上層を形成して、坪量約290g/mを有する2層のレトルト可能板紙が製造された。双方の紙料において、電導度は1.5mS/cmであり、pHはおおよそ中性であった。
【0089】
紙料をポンプで混合槽から横断ノズルを通って回転ドラムに入れワイヤの表面上の水膜上へと送り、紙料を濾水してシートを形成し、シートを搾水しそして乾燥することによって、ダイナミックシートフォーマーにおいて紙シートが形成された。
【0090】
紙料のそれぞれへの添加は、ポンプ送り出しの以下の(秒単位の)時間前に行われた。
90秒間前、カチオンデンプン
75秒間前、湿潤紙力増強剤PAAE
60秒間前、サイズ剤AKD
45秒間前、ミクロスフェアExpancel(商標)
30秒間前、カチオンデンプン
15秒間前、アニオン性シリカゾル
0秒間、ポンプ送り出し
【0091】
板紙シートは搾水されそしてオーブン乾燥されて、取り囲んでいる湿った紙ウェブ中のミクロスフェアの熱処理および少なくとも膨張されていないミクロスフェアの膨張を起こさせた。以下の方法が使用された。
乾式熱処理:乾燥20分間105℃(乾燥している。)+最終乾燥10分間105℃
【0092】
サンプルが実施例1におけるように調製され、そして以下の方法を用いて、裁ち端部浸透度REPが試験された。
REP 蒸気+水:水蒸気オートクレーブ130℃、60分間、2バール+水6℃、10分間
【0093】
スウェーデン国、Lorentzon&Wettre社によって納入されたL&W曲げ抵抗試験機タイプ16Dを使用することによって、SCAN P 29:95に従って、曲げ抵抗が測定された。曲げ抵抗を坪量の3乗で割ることによって、曲げ抵抗指数が計算された。実施例1におけるように計算された添加レベルとともに、結果が表9に示される。
【表9】

【0094】
低い裁ち端部浸透度および高い曲げ抵抗の双方を得ることが可能であるようである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙または板紙の少なくとも1の基材層および少なくとも1の液体バリア層を含んでいる包装材積層体であって、ケテンダイマーおよびマルチマー、無水コハク酸、ロジンならびにこれらの混合物から成る群から選択されたサイズ剤を含んでおりかつアクリルアミドに基づいたポリマーも含んでいる配合物で、当該紙または板紙がサイズ処理されている包装材積層体。
【請求項2】
少なくとも1のガスバリア層をさらに含んでいる、請求項1に従う包装材積層体。
【請求項3】
アクリルアミドに基づいたポリマーが、少なくとも約10000の重量平均分子量を有する、請求項1または2に従う包装材積層体。
【請求項4】
アクリルアミドに基づいたポリマーがカチオン性である、請求項1〜3のいずれか1項に従う包装材積層体。
【請求項5】
アクリルアミドに基づいたカチオン性ポリマーの電荷密度が、約0.1〜約11ミリ当量/gである、請求項4に従う包装材積層体。
【請求項6】
アクリルアミドに基づいたポリマーが、アクリルアミドまたはアクリルアミドに基づいたモノマーを、1以上のエチレン性不飽和の、カチオン性、潜在的カチオン性、アニオン性または潜在的アニオン性のモノマーと組み合わせて重合することによって得られることができるものである、請求項1〜5のいずれか1項に従う包装材積層体。
【請求項7】
アクリルアミドに基づいたポリマーが、アクリルアミドまたはアクリルアミドに基づいたモノマーを、1以上のエチレン性不飽和の、カチオン性または潜在的カチオン性のモノマーであって、ジアリルジアルキルアンモニウムハライドであるか、または一般構造式(II)

(この式で、RはHまたはCHであり;RおよびRは、互いに独立に、Hまたは炭化水素基であり;AはOまたはNHであり;Bは2〜8の炭素原子を有するアルキルもしくはアルキレン基またはヒドロキシプロピレン基であり;RはH、または1〜4の炭素原子を有する炭化水素基、またはアルキレン基を介して窒素に結合されていてもよい、芳香族基を有する置換基であり;ならびにXはアニオン性対イオンである。)によって表されるもの、と組み合わせて重合することによって得られることができるものである、請求項4〜6のいずれか1項に従う包装材積層体。
【請求項8】
少なくとも1のカチオン性モノマーが、ジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル4級塩、ジメチルアミノエチルメタクリレート塩化メチル4級塩、ジメチルアミノエチルアクリレート塩化ベンジル4級塩およびジメチルアミノエチルメタクリレート塩化ベンジル4級塩から成る群から選択されたものである、請求項7に従う包装材積層体。
【請求項9】
サイズ剤が、ケテンダイマーおよびマルチマーならびにこれらの混合物から成る群から選択されたものである、請求項1〜8のいずれか1項に従う包装材積層体。
【請求項10】
紙または板紙が、熱可塑性ミクロスフェアを含んでいる、請求項1〜9のいずれか1項に従う包装材積層体。
【請求項11】
熱可塑性ミクロスフェアが膨張されている、請求項10に従う包装材積層体。
【請求項12】
ケテンダイマーおよびマルチマー、無水コハク酸、ロジンならびにこれらの混合物から成る群から選択されたサイズ剤を含んでおりかつアクリルアミドに基づいたポリマーも含んでいる配合物でサイズ処理された紙のシートまたはウェブまたは板紙に、少なくとも1の液体バリア層を施与する段階を含む、包装材積層体を製造する方法。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項に従う包装材積層体を、食料品または飲料品用のシールされた包装物を製造するために使用する方法。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか1項に従う包装材積層体からつくられた、食料品または飲料品用のシールされた包装物。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれか1項に従う包装材積層体から容器を形成する段階、該容器に食料品または飲料品を充填する段階、そして該容器をシールする段階を含む、シールされた包装物を製造する方法。

【公表番号】特表2010−511798(P2010−511798A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539216(P2009−539216)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際出願番号】PCT/SE2007/050923
【国際公開番号】WO2008/066489
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(390009612)アクゾ ノーベル ナムローゼ フェンノートシャップ (132)
【氏名又は名称原語表記】Akzo Nobel N.V.
【Fターム(参考)】