説明

包装用二軸配向ポリエステルフィルム

【課題】包装材料としての重要特性である、耐屈曲ピンホール性に優れるだけでなく、フィルム長手方向と幅方向の物性バランスに優れていることで、耐突刺ピンホール性、金属化合物を蒸着した際のガスバリア性にも優れる二軸配向ポリエステルフィルムを提供すること。
【解決手段】上記課題は、ポリエチレンテレフタレートを主体とする二軸配向フィルムであって、面配向係数が0.168〜0.172、複屈折の絶対値が5未満、150℃におけるフィルム幅方向の熱収縮率が0.5〜2%であり、なおかつフィルム厚みが7〜20μmであることを特徴とする包装用二軸配向ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包装用二軸配向ポリエステルフィルムに関するものである。特に、耐熱性、耐突刺ピンホール性、耐屈曲ピンホール性に優れ、なおかつ金属や金属酸化物を蒸着した際に優れたガスバリア性を発現する、包装用資材として使用するに好適な二軸配向ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムの代表例であるポリエチレンテレフタレート二軸延伸フィルムは、良好な機械強度、熱的特性、湿度特性、その他多くの優れた特性から、工業材料、磁気記録材料、光学材料、情報通信材料、包装材料など幅広い分野において使用されている。しかし、耐屈曲ピンホール性や耐突刺ピンホール性が特に重要となる包装材料用途においては、ポリエチレンテレフタレートではその強靱さの裏返しである硬さ故に特性が不十分であり、柔軟性に優れる脂肪族ポリアミド二軸延伸フィルムが多く使用されている。
【0003】
ところが、脂肪族ポリアミドは、その化学構造から水との親和性が高いために吸水性が高く、湿度寸法安定性に劣ったり、平面性の悪化、フィルム物性の吸湿による経時変化などポリマー由来の本質的な問題があり、ガスバリア性を高めるための金属化合物の蒸着が困難であったり、吸湿により印刷や、ラミネート層との接着力が低下するという問題がある。一方、芳香族ポリアミドは芳香環を有することで吸湿性については改善されるが、溶融製膜が困難であり、溶液製膜であっても特殊で危険性の高い溶媒を使用しなければならず、生産性と経済的な点で包装材料に用いることは困難であるという問題がある。
【0004】
それに対して、ポリエステルは溶融製膜可能であり、吸湿性にも乏しいことから、ポリアミドのような問題は生じないが、先に述べたように包装材料に要求される耐屈曲ピンホール性、耐突刺ピンホール性に劣るという課題があった。
【0005】
これらの問題点に対して、ポリエステルフィルムの改良についてこれまでに以下のような提案がなされてきている。たとえば特許文献1、2(特開平11−10725号公報、特開2001−232739号公報)では高配向な蒸着用フィルムが開示されているが、屈折率の長手方向と幅方向の差(複屈折)がマイナスであったり、150℃における熱収縮率がフィルム幅方向で伸長することが好ましいとされているなど、幅方向に配向が偏っているフィルムが提案されており、その結果、これらのフィルムではフィルム長手方向と幅方向の配向バランスが悪いがために、耐突刺ピンホール性については不十分であった。
【0006】
また、たとえば、特許文献3、4(特開平11−320672号公報、特開平11−320789号公報)では面配向係数が0.166より大きい蒸着ガスバリアフィルムが開示されている。しかしながら、これらの提案では実際には面配向係数が0.168までしか開示されていない。さらにフィルムの長手方向と幅方向のバランス、均一性が不十分であるために、耐屈曲ピンホール性、耐突刺ピンホール性が不十分であった。
【0007】
さらに、たとえば、特許文献5(特開2001−342267号公報)には面配向係数が0.160〜0.180、厚さ方向の屈折率が1.495〜1.505であることを特徴とする透明蒸着用ポリエステルフィルムが開示されている。この提案では、実施例において具体的には、面配向係数が0.1605〜0.1650のフィルムと面配向係数が0.1723のフィルムが開示されている。しかしながら、面配向係数が前者では高配向化が不十分であり、耐突刺ピンホール性、耐屈曲ピンホール性が不十分である。また、後者の0.1723のフィルムでは高配向すぎて、実際の包装資材として使用する際にへき開はく離を起こすなど、実用性に乏しいものである。
【0008】
また、たとえば特許文献6(特開2002−370277号公報)にも面配向係数が0.160〜0.180の蒸着用ポリエステルフィルムが開示されている。この提案では、実施例において具体的には面配向係数が0.1593〜0.1672のフィルムが開示されているが、この面配向係数の範囲では、上記したように高配向化が不十分であり、耐突刺ピンホール性、耐屈曲ピンホール性が不十分である。
【0009】
たとえば、特許文献7、8(特開2004−114476号公報、特開2004−115782号公報)には面配向係数の上限が0.17であるフィルムが開示されている。これらの提案では、実施例において具体的には面配向係数が高々0.165のフィルムが開示されているに過ぎず、上記したように耐ピンホール性に劣るものである。さらに、これらの提案ではフィルム中にテトラメチレンテレフタレート単位やポリエーテル成分を含むことが開示されているが、これら成分を含有すると、包装資材として使用する場合の他素材との貼合せ工程における熱接着工程などで物性劣化が激しくなり、実用上問題となる場合があった。
【0010】
さらに、特許文献9〜14(特開2003−17360号公報、特開2001−219521号公報、特開2001−57315号公報、特開2001−301603号公報、特開2000−30973号公報、特開平9−1754号公報)には高配向であるポリエステルフィルムが開示されているが、これら提案はコンデンサー用フィルムに関するものであり、コンデンサーとしての特性を高めるためにはフィルムの薄膜化が必要であることから、フィルム厚みは6μm以下であることが好ましい。したがって、これらの提案のフィルムを包装用途に使用することを試みた場合、強度が不十分となり、耐ピンホールに劣るものである。このことは、記録容積を高める目的で薄膜化することが望ましい磁気材料用フィルムに関する提案でも同様であり、包装材料としては不十分ものである。磁気材料用フィルムの例としては、たとえば、特許文献15(特開平7−249219号公報)などを挙げることができる。
【特許文献1】特開平11−10725号公報
【特許文献2】特開2001−232739号公報
【特許文献3】特開平11−320672号公報
【特許文献4】特開平11−320789号公報
【特許文献5】特開2001−342267号公報
【特許文献6】特開2002−370277号公報
【特許文献7】特開2004−114476号公報
【特許文献8】特開2004−115782号公報
【特許文献9】特開2003−17360号公報
【特許文献10】特開2001−219521号公報
【特許文献11】特開2001−57315号公報
【特許文献12】特開2001−301603号公報
【特許文献13】特開2000−30973号公報
【特許文献14】特開平9−1754号公報
【特許文献15】特開平7−249219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は上記した従来技術の問題点を解消することにある。すなわち、包装材料として使用するのに重要視される特性である、耐屈曲ピンホール性に優れるだけでなく、フィルム長手方向と幅方向の物性バランスに優れていることで、耐突刺ピンホール性にも優れており、なおかつ金属化合物を蒸着した際のガスバリア性にも優れる二軸配向ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、ポリエチレンテレフタレートを主体とする二軸配向フィルムであって、面配向係数が0.168〜0.172、複屈折の絶対値が5未満、150℃におけるフィルム幅方向の熱収縮率が0.5〜2%であり、なおかつフィルム厚みが7〜20μmであることを特徴とする包装用二軸配向ポリエステルフィルムによって達成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の包装用二軸配向ポリエステルフィルムは包装材料として要求される様々な変形モードでの耐ピンホール性に優れており、なおかつ、金属化合物との蒸着により優れたガスバリア性を示すことから、包装用資材として好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のポリエステルフィルムは、ポリエチレンテレフタレートを主体とするポリエステル樹脂からなることが必要である。ここで、ポリエチレンテレフタレートを主体とするポリエステル樹脂とは、ポリエステルを構成するジカルボン酸成分の95モル%以上がテレフタル酸成分であること、およびグリコール成分の95モル%以上がエチレングリコール成分からなるポリエステル樹脂を意味している。ジカルボン酸成分およびグリコール成分として5モル%以下の範囲でテレフタル酸およびエチレングリコール以外の残基成分を含有してもよく、その含有の仕方としては共重合ポリエチレンテレフタレートでもよいし、ポリエチレンテレフタレートに他のポリエステル樹脂をブレンドして使用しても良い。耐熱性、寸法安定性の観点からは共重合やブレンドを行わないポリエチレンテレフタレート樹脂そのものを用いることが好ましい。
【0015】
テレフタル酸以外のジカルボン酸成分としては、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホンジカルボン酸、フタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、パラオキシ安息香酸などのオキシカルボン酸などを挙げることができる。
【0016】
また、エチレングリコール以外のグリコール成分としては1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジヒドロキシ化合物、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族ジヒドロキシ化合物などを挙げることができる。
【0017】
これらのジカルボン酸成分およびグリコール成分を用いるのであれば、共重合の場合、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールを用いることが好ましい。また、ポリエチレンテレフタレート樹脂にブレンドして使用する場合には、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを用いることが好ましい。
【0018】
本発明の包装用ポリエステルフィルムは二軸配向フィルムであることが必要であり、耐ピンホール性、寸法安定性、蒸着後のガスバリア性の観点から面配向係数が0.168〜0.172であることが必要である。さらに、耐ピンホール性と包装体とした時のシール強度の観点からは0.169〜0.171であればより好ましい。面配向係数が0.168未満であると突刺、屈曲の耐ピンホール性が劣り、なおかつ金属化合物を蒸着後のガスバリア性も劣る場合がある。また、面配向係数が0.172を越えると、ポリエステルフィルムと他の素材を貼合せて複合化し使用する包装資材において、ポリエステルフィルム内でのへき開はく離が起こったり、フィルムが裂けやすくなり、高配向化しすぎることで耐ピンホール性が劣る場合がある。面配向係数を0.168〜0.172の範囲とする方法としては、ポリエステルフィルムの製造時、特に逐次二軸延伸法を採用する場合には、まずフィルム長手方向に延伸した一軸延伸フィルムの複屈折(フィルム長手方向と幅方向屈折率の差×10)を70〜130とし、その後フィルム幅方向に延伸する方法が好ましい。ここで、一軸延伸フィルムの複屈折が70未満であると、幅方向に延伸した後のフィルム長手方向への配向が不十分であり、面配向係数が0.168以上とならない場合がある。一方、一軸延伸フィルムの複屈折が130を越えると、幅方向への延伸時にフィルム破れが発生しやすくなり、製膜安定性が大幅に劣化する。また、長手方向に延伸する際に、通常加熱ロールを用いて未延伸フィルムを加熱して行うが、延伸による樹脂自体の発熱により加熱ロールの温度よりも高温で延伸するとフィルム長手方向への配向が最適化しやすくて好ましい。また、幅方向への延伸の後、熱処理を行うが、230℃以上の高温で熱処理を行うと、フィルム中のポリエステル分子鎖の配向緩和が起こりやすくなり、面配向係数が低下する場合があるので、寸法安定性が悪化しない範囲で熱処理温度は低い方が良く、190〜235℃とするとより好ましく、200〜230℃だと特に好ましい。
【0019】
本発明のポリエステルフィルムは、特に耐突刺ピンホール性に優れた特性を有するために、複屈折の絶対値が5未満であることが必要である。ここで複屈折とはフィルムの長手方向の屈折率と幅方向の屈折率の差に1000を乗したものである。複屈折の絶対値が5を越えるとフィルムの面内に高配向方向と低配向方向が存在してしまうために、低配向方向の強度が低くなることで、耐突刺ピンホール性が劣ってしまう。耐突刺ピンホール性の観点からは、複屈折の絶対値は4未満であればより好ましい。また、フィルム面内の屈折率の最大値と最小値の差が5未満であれば、配向バランスに極めて優れているために、耐突刺ピンホール性に非常に優れたフィルムとなるので、特に好ましい。複屈折の絶対値を5未満とする方法としては、フィルム幅方向の延伸温度と延伸倍率を適宜制御することで調整可能であるが、延伸温度が120℃を越える場合、延伸よりも熱結晶化が先に進行してしまい、所謂ネッキング延伸となり配向が幅方向に偏ったフィルムとなる場合がある。また、80℃未満の場合、加熱が不十分でやはり配向が幅方向に偏ったフィルムとなる場合がある。延伸倍率は好ましくは3.5〜5.5倍であるが、実質上4.5倍以上延伸使用とするとフィルム破れが発生しやすくなることから、3.6〜4.4倍とすることが好ましい。また、二軸延伸後の熱処理工程において、190℃未満の熱処理温度であるとフィルム幅方向への偏った配向となる場合があるので、熱処理温度を190〜235℃とすることが好ましく、200〜230℃とすると特に好ましい。
【0020】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは厚み方向の屈折率が1.480〜1.495であることが好ましい。厚み方向の屈折率が1.480未満であると、面配向が進みすぎてへき開はく離が起こりやすくなる場合があり、逆に1.495を越えると耐ピンホール性に劣る場合がある。耐ピンホール性とへき開抑制の観点からは1.480〜1.490であればより好ましい。フィルムの厚み方向屈折率を1.480〜1.495とする方法としては、二軸延伸により面配向を高くしたフィルムを熱処理することで、さらに高面配向とする方法が望ましく、熱処理温度として200〜230℃とすることが特に好ましい。
【0021】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは耐ピンホール性、蒸着後のガスバリア性の観点から、150℃におけるフィルム幅方向の熱収縮率が0.5〜2%であることが必要である。150℃における熱収縮率が0.5%未満であると、蒸着時に高温である金属化合物、特に金属酸化物がフィルム表面で冷却固化する際に収縮する機構との兼ね合いで、蒸着膜とフィルムとの界面構造が粗になるために高ガスバリア性を達成できないと考えられる。一方、収縮率が2%を越えると包装資材としての印刷工程や他の素材との貼合せ工程において収縮が大きすぎるためにピッチズレや幅変動の原因となる。また、熱収縮することで構造変化し、耐ピンホール性が劣化する場合があるので、フィルム長手方向、幅方向共に150℃での熱収縮率は0.5〜1.5%であればより好ましい。150℃におけるフィルム幅方向の熱収縮率を0.5〜2%とする方法としては、フィルム幅方向に十分延伸した後、熱処理の際にリラックスしながら熱処理を行うことが好ましく、特にリラックス率として2〜10%とすることが好ましく、3〜7%だとより好ましい。また、リラックスを行う際に緊張下で熱処理を行い、ついで、緊張下熱処理温度から5〜30℃低い温度にてリラックス熱処理を行う、所謂低温リラックス法を用いると特に好ましい。また、長手方向の熱収縮率を好ましい範囲とする方法としては、緊張下での熱処理温度を200〜230℃とする方法が好ましい。
【0022】
本発明の包装用二軸配向ポリエステルフィルムは耐突刺ピンホール性、耐屈曲ピンホール性の観点からフィルム厚みが7〜20μmであることが必要である。フィルム厚みが7μm未満となると低突刺強さとなるために、包装体として内容物を充填する際にピンホールが発生しやすくなる。一方、厚みが20μmを越えると他の素材との貼合せでカールが発生するなど取扱いが困難になったり、強度的にオーバースペックとなり、なおかつ容器リサイクル法において、負担金が増加し、廃棄物重量が増加するという点で環境の面から好ましくない。強度と取扱性、経済性の観点から8〜18μmであればより好ましく、8〜16μmであれば特に好ましい。
【0023】
本発明の包装用二軸配向ポリエステルフィルムは、耐ピンホール性とガスバリア性の双方に優れた特性を発現させる観点で、フィルム長手方向と幅方向の破断強度が260〜400MPaであることが好ましい。ここで、破断強度とは25℃での引張試験における破断強度である。破断強度が260MPa未満であると、低強度である方向が存在することとなり、平面の面内方向を同時に変形させる突刺強度において、低強度方向の存在がピンホールを発生させやすくする場合がある。一方、破断強度が400MPaを越えると包装体とした場合に内容物を取り出すための、カット性が悪化してしまう場合がある。耐ピンホール性とカット性を両立させる点で、長手方向及び幅方向の破断強度は265〜350MPaであればより好ましく、270〜330MPaであれば特に好ましい。フィルムの引張破断強度を掛かる好ましい範囲とする方法としては、上記した本発明の要件である面配向係数、複屈折を満足すると共に、フィルムの固有粘度が0.60〜0.70であることが好ましい。フィルム固有粘度が0.60未満であると、ポリエステル樹脂の分子量が小さいために脆くなり、逆に固有粘度が0.70を越えるとフィルム面内の配向バランスを調整することが困難となる。
【0024】
以下に、本発明の包装用二軸配向用ポリエステルフィルムの製造方法を具体的に説明する。本発明は以下の製造方法に限られるものではない。まず、本発明のフィルムで使用するポリエチレンテレフタレートを主体とするポリエステル樹脂については、市販されているポリエチレンテレフタレート樹脂をそのまま用いることができるが、以下のように重縮合反応を経て製造し、使用してもよい。
【0025】
テレフタル酸ジメチル100質量部とエチレングリコール70質量部の混合物に0.09質量部の酢酸マグネシウムと0.03質量部の三酸化アンチモンとを添加して、徐々に加熱し、最終的に220℃でメタノールを留出させながらエステル交換反応を行い、ポリエチレンテレフタレートの前駆体を合成する。ついで、該前駆体に0.02質量部のリン酸85%水溶液を添加し、重縮合反応釜に移行する。重縮合反応釜で加熱昇温しながら反応系を徐々に減圧して1hPaの減圧下、290℃で重縮合反応を行い、所望の分子量であるポリエチレンテレフタレート樹脂を得ることができる。なお、粒子を添加する場合には、エチレングリコールに粒子を分散させたスラリーを所定の粒子濃度となるように重縮合反応釜に添加して、重縮合反応を行うことが好ましい。
【0026】
次にポリエステル樹脂を用いて本発明のフィルムを製造する好ましい方法について具体的に記述する。まず、使用するポリエステル樹脂を減圧下や窒素雰囲気下で加熱し、たとえば150℃5時間の乾燥を行い、好ましくは樹脂中の水分率を50ppm以下とする。その後、押出機に供給し溶融押出を行う。なお、ベント式二軸押出機を用いる場合は、乾燥工程を省略しても良い。また、複数のポリエステル樹脂を混合して使用する場合は、所定の混合比率となるように乾燥工程で混合しても良いし、押出機に供給する際に、混合比率を計量しながら供給しても良い。このようにして、溶融押出を行った樹脂は、溶融状態のままフィルターで異物を除去し、ギアポンプにて押出量を計量し、Tダイより冷却ロール上に吐出する。その際、ワイヤー電極などを用いて静電印加することで溶融ポリマーを冷却ロールに密着させて固化させ、未延伸フィルムシートを得ることが、最終フィルムの厚み斑、表面状態が良好となるので好ましい。
【0027】
次に、得られた未延伸フィルムを二軸配向させる方法については、長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する、あるいは、幅方向に延伸した後、長手方向に延伸する逐次二軸延伸方法により、または、フィルムの長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方法などにより延伸を行なう。
【0028】
かかる延伸方法における延伸倍率としては、それぞれの方向に、好ましくは3〜6倍、さらに好ましくは3.5〜5.5倍延伸することが好ましい。また、延伸速度は1,000〜200,000%/分であることが望ましいが、高配向を実現する観点からは10,000〜200,000%/分とすることがより好ましい。好ましい延伸温度としてはガラス転移点〜(ガラス転移点+50℃)の温度が採用されるが、さらに好ましくは逐次二軸延伸の場合、長手方向への延伸は80〜120℃であることが好ましく、延伸前の予熱段階では80〜100℃に加熱し、延伸時にポリエステルが自発的に発熱し、95〜120℃で延伸されると長手方向に高配向された一軸延伸フィルムとなるのでより好ましい。次にこの一軸延伸フィルムを幅方向に延伸するが、延伸温度を80〜120℃とすることがより好ましい。また、同時二軸延伸の場合も80〜120℃で延伸することがより好ましい。また、延伸は各方向に複数回行っても良い。
【0029】
次に、二軸延伸したフィルムの熱処理を行う。熱処理はオーブン中、加熱ロール上などで行うことができるが、平面性の点でオーブン中で行うことが好ましい。熱処理温度としては170〜240℃とするのが好ましいが、耐ピンホール性と寸法安定性を両立させる観点で、190〜235℃とするとより好ましく、200〜230℃だと特に好ましい。熱処理を行う時間は通常1〜60秒間であり、より好ましくは1〜30秒間である。なお、熱処理はフィルムを長手方向および/または幅方向に弛緩させて行ってもよい。また、上記したように、緊張下で熱処理を行った後、該処理温度の10〜30℃低温で弛緩熱処理を行うことは好ましいことである。さらに、インク印刷層や接着剤、蒸着層との接着力を向上させるため、フィルム表面にコーティング層を設けることもできる。
【0030】
コーティング層をフィルム製造工程内のインラインで設ける方法としては、少なくとも一軸延伸を行ったフィルム上にコーティング層組成物を水に分散させたものをメタリングリングバーなどを用いて均一に塗布し、延伸を施しながら塗剤を乾燥させる方法が好ましく、その際コーティング層厚みとしては0.01〜0.5μmとするのが好ましい。
【0031】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは包装材料として他の素材との貼り合せや接着剤などのコーティング、印刷や金属化合物などの蒸着をフィルム表面に容易に施す観点から、フィルムの少なくとも片面の表面自由エネルギーが45〜60mN/mであることが好ましい。密着力の観点からは48〜58mN/mであればより好ましい。表面自由エネルギーを掛かる好ましい範囲とする方法としては、フィルム表面に空気中、窒素ガス雰囲気中などでコロナ放電などによる表面処理を行う方法や火炎による表面処理を施す方法などを挙げることができる。
【0032】
また、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムはフィルムの少なくとも片面に金属あるいは金属酸化物を蒸着し、蒸着膜を形成することでガスバリアフィルムとして使用することが好ましい。蒸着膜を生成するために用いる金属または金属酸化物としては、周期表2A族であるマグネシウム、カルシウム、バリウム、2B族であるチタン、ジルコニウム、3B族であるアルミニウム、インジウム、4B族のケイ素、ゲルマニウム、スズおよびこれらの酸化物を挙げることができる。これらの中でも、特にアルミニウム、ケイ素およびその酸化物が好ましい。また、これらの金属およびその酸化物は複数を組み合わせて蒸着膜を形成しても良い。
【0033】
蒸着膜の形成方法としては、真空蒸着法、EB蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などを用いることができる。なお、ポリエステルフィルムと蒸着層との密着性を向上させるために、フィルムの表面にがコロナ処理などの表面処理だけでなくアンカーコート剤を塗布するなどの方法で前処理しておくことは望ましいことである。また、蒸着膜の厚みとしては、1〜500nmであれば好ましく、3〜300nmであればより好ましい。生産性の点からは3〜200nmであることが好ましい。
【0034】
本発明の二軸配向ポリエステルは包装体として用いるのに好適な構成として、シーラントと積層することが好ましい。ここで、シーラントとは無延伸ポリプロピレンフィルムや無延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体無延伸フィルムなどのヒートシール性を有している無延伸フィルムのことである。これらシーラントと二軸配向ポリエステルフィルムの積層方法としては、エステル系やウレタン系などの接着剤を用いたドライラミネート法やポリエチレンのドライラミネート法などの方法を採用することができる。本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは優れた耐熱性を有していることから、特に押出ラミネート法によりシーラントと積層した後も耐ピンホール性が変化しない優れた特性を有している。
【実施例】
【0035】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。なお、特性は以下の方法により測定、評価した。
【0036】
(1)融点
示差走査熱量計(セイコー電子工業製、RDC220)を用いて測定した。試料5mgをサンプルに用い、25℃から20℃/分で300℃まで昇温した際の吸熱ピーク温度を融点とした。
【0037】
(2)屈折率
ナトリウムD線(波長589nm)を光源とし、マウント液としてヨウ化メチレンを用い、25℃にてアッベ屈折計を用いてフィルム長手方向、幅方向および厚み方向の屈折率(各々、nMD、nTD、nZD)を求めた。求めた屈折率から下記の式により、面配向係数(fn)および複屈折(Δn)を算出した。なお、測定は製膜時のTダイから吐出後、冷却ドラムに密着した表面側で行い、任意の3ヶ所での測定値の平均で評価した。
【0038】
fn=(nMD+nTD)/2−nZD
Δn=(nMD−nTD)×1000。
【0039】
(3)フィルム厚み
300×200mmの大きさにカットしたフィルム10枚の質量を測定し、フィルムの比重を1.4×10−3(g/mm)として以下の式により、質量平均厚みとしてフィルム厚みを求めた。
【0040】
T=W/(1.4×10−3×300×200×10)
ただし、T:フィルム厚み(mm)、W:フィルム10枚の質量(g)。
【0041】
(4)熱収縮率
フィルムを長手方向および幅方向に長さ150mm×幅10mmの矩形に切り出しサンプルとした。サンプルに100mmの間隔で標線を描き、3gの錘を吊して150℃に加熱した熱風オーブン内に30分間設置し加熱処理を行った。熱処理後の標線間距離を測定し、加熱前後の標線間距離の変化から熱収縮率を算出し、寸法安定性の指標とした。測定は各フィルムとも長手方向および幅方向に5サンプル実施して平均値で評価を行った。
【0042】
(5)破断強度
フィルムを長手方向および幅方向に長さ150mm×幅10mmの矩形に切り出しサンプルとした。引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT−100)を用いて、初期チャック間距離50mmとし、引張速度を300mm/分としてフィルムの長手方向と幅方向にそれぞれ引張試験を行った。サンプルが破断する直前のフィルムにかかっていた荷重を読み取り、試験前の試料の断面積(フィルム厚み×10mm)で除した値を破断強度とした。なお、測定は各サンプル、各方向に5回ずつ行い、その平均値で評価を行った。
【0043】
(6)固有粘度
ポリエステル樹脂およびフィルムの固有粘度は、ポリエステルをオルソクロロフェノールに溶解し、オストワルド粘度系を用いて25℃にて測定した。
【0044】
(7)耐屈曲ピンホール性
ポリエステルフィルムに酢酸エチルで4倍に希釈した接着剤(三井武田ケミカル(株)製タケラックA−616、タケネートA−65を質量比で16:1で混合して用いた)を接着剤塗布厚み3g/mとなるようにメタリングバーで塗布し、60℃で1分間乾燥後、厚さ50μmの無延伸の直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(東セロ(株)製FCD−MCS)を貼り合わせた。40℃で7時間エージングを行い評価に供した。評価は、ASTM F−392に準じて、300×210mmの大きさに切り出したラミネートフィルムをゲルボフレックステスターを使用し、23℃の雰囲気にて、500回の繰り返し屈曲試験を実施した。なお、装置に取り付ける際、ポリエステルフィルムが内面となるようにした。試験を5回行い、ピンホール個数の平均値を算出した。
【0045】
(8)耐突刺ピンホール性(ドライラミ)
ポリエステルフィルムに酢酸エチルで4倍に希釈した接着剤(三井武田ケミカル(株)製タケラックA−616、タケネートA−65を質量比で16:1で混合して用いた)を接着剤塗布厚み3g/mとなるようにメタリングバーで塗布し、60℃で1分間乾燥後、厚さ20μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(東レフィルム加工(株)製トレファンNO 9141)とを貼り合わせた。該ラミネートフィルムを直径40mmのリングにフィルムを弛みのないように張り、先端角度60度、先端R0.5mmのサファイア製針を使用し、円の中央を50mm/分の速度でポリプロピレンフィルム側から突き刺し、針が貫通するときの荷重(N)を突刺強さとした。
【0046】
(9)耐突刺ピンホール性(押出ラミ)
二軸配向ポリエステルフィルムと厚さ20μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(東レフィルム加工(株)製トレファンNO 9160)とを、ポリエチレンを樹脂温度330℃でポリエステルフィルム上に押出ラミし、これを接着剤として貼合せを行った。該ラミネートフィルムを直径40mmのリングにフィルムを弛みのないように張り、先端角度60度、先端R0.5mmのサファイア製針を使用し、円の中央を50mm/分の速度でポリプロピレンフィルム側から突き刺し、針が貫通するときの荷重(N)を突刺強さとした。
【0047】
(10)蒸着バリア性
ポリエステルフィルムに連続式真空蒸着機によりアルミニウムを蒸着層厚さ25nmに蒸着した。該アルミニウム蒸着フィルムを使用して、酸素透過率はASTM D−3985に準じて、モダンコントロール(株)製酸素透過率測定装置OX−TRAN100を用いて、20℃、0%RHの条件にて測定した。一方、水蒸気透過率は同様に蒸着したフィルムを使用して、モダンコントロール(株)製水蒸気透過率計PERMATRAN−W1Aを用いて、40℃、90%RHの条件で測定した。
【0048】
(ポリエステル樹脂の準備)
実施例には以下に記載の方法で製造したポリエステル樹脂を使用した。
【0049】
ポリエステルA
テレフタル酸ジメチル100質量部、およびエチレングリコール70質量部の混合物に、0.09質量部の酢酸マグネシウムと0.03質量部の三酸化アンチモンとを添加して、徐々に昇温し、最終的には220℃でメタノールを留出させながらエステル交換反応を行う。ついで、該エステル交換反応生成物に、0.020質量部のリン酸85%水溶液を添加した後、重縮合反応釜に移行する。さらに、加熱昇温しながら反応系を徐々に減圧して1hPaの減圧下、290℃で常法により重縮合反応を行い、固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート樹脂を作製した。これを、以下、ポリエステルAとする。
【0050】
ポリエステルB
ポリエステルAの重合においてテレフタル酸ジメチル100質量部の代わりに、テレフタル酸ジメチル96質量部、およびイソフタル酸ジメチル4質量部を用いてポリエステルAと同様の方法で重合を行い、固有粘度0.66のイソフタル酸4モル%共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(融点247℃)を作製した。これを、以下、ポリエステルBとする。
【0051】
ポリエステルC
ポリエステルAの重合においてテレフタル酸ジメチル100質量部の代わりに、テレフタル酸ジメチル88質量部、およびイソフタル酸ジメチル12質量部を用いてポリエステルAと同様の方法で重合を行い、固有粘度0.68のイソフタル酸12モル%共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(融点227℃)を作製した。これを、以下、ポリエステルCとする。
【0052】
粒子マスター
上記した各ポリエステルの重合時において、エステル交換反応後に平均粒子径2μmの凝集シリカ粒子のエチレングリコールスラリーを添加してから重縮合反応を行い、ポリマー中の粒子濃度2質量%の粒子マスターA〜Cを作製した。
【0053】
(実施例1)
ポリエステルAと粒子マスターAを質量比で97:3で混合して使用した。まず、回転式真空乾燥機にて180℃3時間の乾燥を行い、ついで単軸の溶融押出機に供給し280℃のシリンダー温度で押し出した。溶融ポリマーを20μmカットの焼結フィルターを使用して異物を除去し、ついでギアポンプを使用して流量を計量、均整化した後、Tダイより20℃に温度制御した冷却ロール上に吐出した。その際、静電印加により溶融ポリマーをロールに密着させ、冷却固化した。このようにして得た未延伸フィルムを加熱ロールにて95℃まで加熱し、100℃に加熱したロールと40℃に温度制御した冷却ロール間にてフィルム長手方向に3.8倍延伸した。延伸区間でロール温度を測定すると105℃となっていた。長手方向に一軸延伸したフィルムを一旦冷却後、テンター式横延伸機に導入した。予熱温度90℃、延伸ゾーン温度110℃で幅方向に3.7倍延伸後、そのまま220℃で1.5秒間熱処理し、ついで幅方向に5%のリラックスを掛けながら200℃で1.5秒間熱処理を行い、最終的に厚み8μmの二軸配向フィルムを得た。
【0054】
(実施例2)
実施例1と同様にポリエステル樹脂を計量混合、乾燥したのち、同様に押出機に供給して冷却ドラム上にTダイよりシート状に押出を行い、未延伸フィルムを得た。該未延伸フィルムを加熱ロールにて95℃まで加熱し、100℃に加熱したロールと40℃に温度制御した冷却ロール間にてフィルム長手方向に3.8倍延伸した。延伸区間でロール温度を測定すると105℃となっていた。長手方向に一軸延伸したフィルムを一旦冷却後、テンター式横延伸機に導入した。予熱温度90℃、延伸ゾーン温度110℃で幅方向に3.8倍延伸後、そのまま215℃で2秒間熱処理し、ついで幅方向に3%のリラックスを掛けながら215℃で2秒間熱処理を行い、最終的に厚み12μmの二軸配向フィルムを得た。
【0055】
(実施例3)
ポリエステルAと粒子マスターAを質量比で96:4で混合して使用した。まず、回転式真空乾燥機にて180℃4時間の乾燥を行い、ついで単軸の溶融押出機に供給し280℃のシリンダー温度で押し出した。溶融ポリマーを20μmカットの焼結フィルターを使用して異物を除去し、ついでギアポンプを使用して流量を計量、均整化した後、Tダイより25℃に温度制御した冷却ロール上に吐出した。その際、静電印加により溶融ポリマーをロールに密着させ、冷却固化した。このようにして得た未延伸フィルムを加熱ロールにて97℃まで加熱し、103℃に加熱したロールと45℃に温度制御した冷却ロール間にてフィルム長手方向に3.7倍延伸した。延伸区間でロール温度を測定すると107℃となっていた。長手方向に一軸延伸したフィルムを一旦冷却後、テンター式横延伸機に導入した。予熱温度95℃、延伸ゾーン温度110℃で幅方向に3.7倍延伸後、そのまま210℃で3秒間熱処理し、ついで幅方向に3%のリラックスを掛けながら200℃で3秒間熱処理を行い、最終的に厚み16μmの二軸配向フィルムを得た。
【0056】
(実施例4)
ポリエステルBと粒子マスターBを質量比で97:3で混合して使用した。まず、回転式真空乾燥機にて150℃5時間の乾燥を行い、ついで単軸の溶融押出機に供給し275℃のシリンダー温度で押し出した。溶融ポリマーを20μmカットの焼結フィルターを使用して異物を除去し、ついでギアポンプを使用して流量を計量、均整化した後、Tダイより20℃に温度制御した冷却ロール上に吐出した。その際、静電印加により溶融ポリマーをロールに密着させ、冷却固化した。このようにして得た未延伸フィルムを加熱ロールにて90℃まで加熱し、100℃に加熱したロールと40℃に温度制御した冷却ロール間にてフィルム長手方向に3.7倍延伸した。長手方向に一軸延伸したフィルムを一旦冷却後、テンター式横延伸機に導入した。予熱温度85℃、延伸ゾーン温度110℃で幅方向に3.7倍延伸後、そのまま200℃で6秒間熱処理し、最終的に厚み18μmの二軸配向フィルムを得た。
【0057】
(比較例1)
ポリエステルAとポリエステルBを98:2の質量比で混合し、回転式真空乾燥機にて180℃3時間の乾燥を行った。ついで、単軸の溶融押出機に供給し、280℃のシリンダー温度で押出を行った。実施例1と同様にしてTダイより吐出して、静電印加しながら25℃に制御した冷却ロール上で密着固化させて未延伸フィルムを得た。該未延伸フィルムを105℃に加熱後長手方向に3.1倍延伸した。ついで、テンター式延伸装置に導入して、予熱100℃、延伸温度110℃で幅方向に4.0倍延伸し、さらに230℃で5秒間の熱処理を行い、厚み12μmの二軸配向フィルムを得た。
【0058】
(比較例2)
ポリエステルAとポリエステルBを98:2の質量比で混合し、回転式真空乾燥機にて180℃3時間の乾燥を行った。ついで、単軸の溶融押出機に供給し、300℃のシリンダー温度で押出を行った。実施例1と同様にしてTダイより吐出して、静電印加しながら30℃に制御した冷却ロール上で密着固化させて未延伸フィルムを得た。該未延伸フィルムを80、90、105、110、117℃に加熱したロールを用いて徐々にフィルムを加熱した後、長手方向に4.3倍延伸した。ついで、テンター式延伸機に導入して、予熱80℃、延伸温度135℃で幅方向に4.0倍延伸し、さらに230℃で3秒間の熱処理を行い、厚み12μmの二軸配向フィルムを得た。
【0059】
(比較例3)
ポリエステルAと粒子マスターAを94:6の質量比で混合し、回転式真空乾燥機にて180℃3時間の乾燥を行った。ついで、押出機に供給し280℃で溶融押出を行い、10μmカットのフィルムターでろ過後、Tダイよりシート状に押出を行い、25℃の冷却ロールに静電印加により密着固化し未延伸フィルムを得た。該未延伸フィルムを120℃に加熱して長手方向に2.2倍、さらに120℃で1.2倍、最終的に115℃で2.4倍延伸し、トータル長手方向に6.3倍した。ついで、テンター式延伸機にて予熱温度100℃、延伸温度105℃で幅方向に3.9倍した。このまま緊張熱処理を225℃で3秒間行い、さらに5%リラックスで225℃3秒間の弛緩熱処理を行い12μmの二軸配向フィルムを得た。
【0060】
(比較例4)
ポリエステルAと粒子マスターAを97:3の質量比で混合し、回転式真空乾燥機にて180℃3時間の乾燥を行った。ついで、押出機に供給し280℃で溶融押出を行い、10μmカットのフィルムターでろ過後、Tダイよりシート状に押出を行い、25℃の冷却ロールに静電印加により密着固化し未延伸フィルムを得た。該未延伸フィルムを115℃に加熱して長手方向に1.2倍、さらに125℃で1.48倍、最終的に113℃で2.62倍延伸し、トータル長手方向に4.65倍した。ついで、テンター式延伸機にて予熱温度100℃、延伸温度105℃で幅方向に3.9倍した。このまま緊張熱処理を233℃で3秒間行い、さらに5%リラックスで233℃3秒間の弛緩熱処理を行い12μmの二軸配向フィルムを得た。
【0061】
(比較例5)
ポリエステルAと粒子マスターAを94:6の質量比で混合し、回転式真空乾燥機にて180℃3時間の乾燥を行った。ついで、押出機に供給し280℃で溶融押出を行い、10μmカットのフィルムターでろ過後、Tダイよりシート状に押出を行い、25℃の冷却ロールに静電印加により密着固化し未延伸フィルムを得た。該未延伸フィルムを100℃に加熱して長手方向に1.15倍、ついで105℃で3.0倍延伸し、トータル長手方向に3.45倍した。ついで、テンター式延伸機にて予熱温度100℃、延伸温度105℃で幅方向に3.9倍した。このまま緊張熱処理を200℃で3秒間行い、さらに4%リラックスで200℃3秒間の弛緩熱処理を行い12μmの二軸配向フィルムを得た。
【0062】
(比較例6)
ポリエステルAと粒子マスターBに東レ製ポリブチレンテレフタレート樹脂(“トレコン1200S”)を90:3:7の質量比で混合して使用した。まず、回転式真空乾燥機にて150℃5時間の乾燥を行い、ついで単軸の溶融押出機に供給し275℃のシリンダー温度で押し出した。溶融ポリマーを20μmカットの焼結フィルターを使用して異物を除去し、ついでギアポンプを使用して流量を計量、均整化した後、Tダイより20℃に温度制御した冷却ロール上に吐出した。その際、静電印加により溶融ポリマーをロールに密着させ、冷却固化した。このようにして得た未延伸フィルムを加熱ロールにて95℃に加熱したロールと40℃に温度制御した冷却ロール間にてフィルム長手方向に3.4倍延伸した。一軸延伸したフィルムを一旦冷却後、テンター式延伸機に導入し、予熱温度85℃、延伸温度105℃で幅方向に3.7倍延伸後、そのまま210℃で5秒間熱処理し、さらに3%リラックスで210℃3秒間の熱処理を行い、最終的に厚み12μmの二軸配向フィルムを得た。
【0063】
(比較例7)
ポリエステルAと粒子マスターAを98:2の質量比で混合し、回転式真空乾燥機にて180℃3時間の乾燥を行った。ついで、押出機に供給し290℃で溶融してシート状に押出し、静電印加しながら冷却ロール上で密着固化し、未延伸フィルムを得た。該未延伸フィルムを84℃で2.9倍後、70℃で1.7倍し、ついでテンター式延伸機で110℃で4.1倍延伸し245℃で熱処理を行って、厚み5μmの二軸配向フィルムを得た。
【0064】
(比較例8)
ポリエステルCと粒子マスターCを96:4の質量比で混合し、150℃4時間の真空乾燥を行った。単軸押出機に供給して270℃で溶融し、Tダイからシート状に押出した。35℃の冷却ロール上に静電印加しながら密着固化させ、未延伸フィルムを得た。該未延伸フィルムを85℃に加熱して3.8倍延伸し、ついでテンター式延伸機で予熱温度85℃、延伸温度105℃で4.0倍延伸した。そして、そのまま215℃で5秒間の熱処理を行い厚み12μmの二軸配向フィルムを得た。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

ただし、表中の略号は以下の通り。PET:ポリエチレンテレフタレート。PBT:ポリブチレンテレフタレート。PET−I:イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート。Δn:複屈折(フィルム長手方向と幅方向の屈折率の差を1000倍した数値)。nZD:フィルム厚み方向の屈折率。MD:フィルム長手方向。TD:フィルム幅方向。
【0068】
表より、実施例の各フィルムは耐屈曲ピンホール性、耐突刺ピンホール性、さらには蒸着後のガスバリア性に優れていた。一方、比較例の各フィルムはフィルム長手方向と幅方向の配向バランスが悪いがために耐突刺ピンホール性に劣っていたり、配向が高すぎるためにへき開破壊によるピンホールの発生が見られるなど、包装材料としては不十分な特性であった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のフィルムは耐屈曲ピンホール性に優れるだけでなく、なおかつフィルム長手方向と幅方向の物性バランスに優れていることで、耐突刺ピンホール性、金属化合物を蒸着した際のガスバリア性にも優れていることから、食品包装などの構成体として好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレートを主体とする二軸配向フィルムであって、
面配向係数が0.168〜0.172、
複屈折の絶対値が5未満、
150℃におけるフィルム幅方向の熱収縮率が0.5〜2%であり、
なおかつフィルム厚みが7〜20μmである
ことを特徴とする包装用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項2】
フィルムの厚み方向屈折率が1.480〜1.495であることを特徴とする請求項1に記載の包装用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項3】
フィルムの長手方向および幅方向の引張破断強度が260〜400MPaであることを特徴とする請求項1または2に記載の包装用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の包装用二軸配向ポリエステルフィルムに、金属もしくは金属酸化物を蒸着してなることを特徴とする包装用ガスバリアフィルム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステルフィルムとシーラントを積層してなることを特徴とする包装体。

【公開番号】特開2007−118476(P2007−118476A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−315916(P2005−315916)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】