説明

包装用積層フィルムおよびそれを用いた液体注出ノズル

【課題】ベースフィルム層を、蒸着コストの低い二軸延伸フィルムによって構成して、二軸延伸フィルムに固有の、各種のすぐれたバリア性の確保に加え、全体にわたる十分均一な蒸着膜の形成を可能とし、しかも、液体注出ノズルの引裂きの、所期した通りの方向への直線的もしくは曲線的な進行を確実に担保することができる包装用フィルムを提供する。
【解決手段】二層のシーラント層3、4間に、蒸着層を有することのある二軸延伸ベースフィルム層2を介装してなるものにおいて、二軸延伸ベースフィルム層2に、レーザ光線の照射による、間欠的もしくは連続的な溶融痕6からなる引裂誘導傷5を設けてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体注出ノズルに用いて、そのノズルの、手指による所期した通りの引裂き開封を、簡易かつ確実なものとする包装用積層フィルムおよび、それを用いた液体注出ノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、100mlを越える体積の液体等を、包装袋から、複数回に分けて注出する場合に用いてすぐれた逆止機能を発揮する液体注出ノズルとしては、出願人が先に特許文献1に開示したものがあり、これは、軟質な包装袋本体の側部もしくは頂部で、その包装袋本体の内表面に、最外層のシーラント層によって基端部を融着接合されるものであって、熱可塑性の、一軸もしくは二軸延伸ベースフィルム層と、それを挟んで積層したそれぞれのシーラント層とを具える、表裏のそれぞれの側の積層フィルム、たとえば、表裏二枚の積層フィルムまたは、中央部で表裏に折返してなる一枚の積層フィルムを、一方のシーラント層の相互の対向姿勢で、基端辺を除く周辺部分で相互に融着させたものである。
【0003】
ところで、このような液体注出ノズルを設けた包装袋に充填包装した袋内被包装の使用、消費等に当ってのそれの注出は、液体注出ノズルの先端の融着部分を、手指による引裂き切断等によって除去することでノズルに先端開口を形成し、次いで、その包装袋を、ノズルの先端開口が下方に向く姿勢となるように傾動させることによって行うことができ、この場合、軟質の積層フィルムからなる注出ノズルは、被包装物の水頭圧の作用下で表裏側に離隔して先端開口を開放し、被包装物の、所要に応じた注出を許容する。
なお、被包装物をこのようにして注出するときは、軟質な包装袋本体は、被包装物の注出に伴って、外気の吸い込みなしに、注出体積に対応する量だけ収縮ないしは潰れ変形することになる。
【0004】
包装袋の傾動によって所要量の被包装物を注出した後は、包装袋を元の起立姿勢に復帰させて注出を停止し、この注出の停止に基き、注出ノズルはそれと同時に、注出ノズルの表裏のフィルムの幅方向、いいかえれば上下方向の全体にわたる相互の密着をもたらして包装袋内への外気の進入を確実に阻止する。
従って、この注出ノズルを具える包装袋では、袋内被包装物は、被包装物の注出前はもちろん、注出中および注出後においても外気との接触から十分に保護されることになり、袋内被包装物の酸化、汚損等が有効に防止されることになる。
【0005】
なお、注出ノズルの表裏のフィルムの、ここにおけるこのような密着は、包装袋の起立復帰によって、注出ノズルが水頭圧の作用から解放されて製造時の元形状に復帰することに加え、注出ノズル内の被包装物が包装袋本体内へ戻流するに際して表裏のフィルムが減圧雰囲気に晒されて相互に負圧吸着されること等によって自動的に行われることになり、このような密着は、包装袋からの被包装物の注出に伴って、収縮ないしは潰れ変形された包装袋本体が、それに固有の弾性復元力に基いて、その内部を減圧傾向とすることによってアシストされることになる。
かくしてここでは、注出ノズルに対する特別の操作等なしに、包装袋の起立復帰と併せて、それの先端開口を自動的に密着封止させることができ、注出ノズルにすぐれた逆止機能を発揮させることができる。
【0006】
注出ノズルをこのように機能させるに当っての、それの先端融着部分の、手指による引裂き除去のためには、積層フィルムの、幅方向に対抗するそれぞれの融着部分の少なくとも一方に、ノズルの予定開封位置と対応して位置するV字状折曲部を設けることが好ましいとし、これによれば、融着部分それ自体がV字状に折れ曲がるので、融着部分にVノッチ、−ノッチ等の引裂き始端疵を別途形成することなしに、その引裂きを十分に誘導することができ、また、引裂き誘導個所の視認を極めて容易にすることができるとする。
【0007】
また、この注出ノズルでは、それを構成する表裏の積層フィルムは、20〜100μmの厚みとすることが、ノズルとしての機能を適正に発揮させてなお、十分な軟質性および圧力応答性等を確保する上で好ましいとし、20μm未満では、ノズルの腰弱感が否めず、袋内被包装物を所期した位置に適正に注出することが難しくなる一方で、100μmを越えると、フィルムの腰が強くなりすぎて、上述したような吸着密閉の円滑さが損われるおそれがあるとする。
【特許文献1】特開2005−59958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、このような液体注出ノズルでは、上述したように逆止機能の確実なる発揮を担保するべく、それを構成する積層フィルム、直接的には一軸もしくは二軸延伸ベースフィルム層の厚みを相当薄肉として、積層フィルムに高い可撓性を付与しており、この一方で、その薄肉化によって不足することとなるガスバリア性、水蒸気バリア性等のバリア性を、アルミニウムその他の金属材料または、ガラスその他の無機材料の蒸着膜をそのベースフィルム層に形成することとしている。
【0009】
これがため、包装袋に充填包装した袋内被包装物を注出する場合の、液体注出ノズルの先端部の引裂き開封に当り、積層フィルムのベースフィルム層が二軸延伸フィルムであるときは、その積層フィルムの、いわゆる腰が弱すぎるため、液体注出ノズルの、手指によるその引裂きを、引裂き始端疵の有無にかかわらず、所期した通りの方向へ、直線状等に常に正確に進行させることが困難であり、また、ベースフィルム層が一軸延伸フィルムであるときは、引裂きの進行方向を、二軸延伸フィルムに比して、所要の方向へ進行させ易くはなるものの、引裂きの進行方向の偶発的な変化の発生が否めず、その上、一軸延伸フィルムは、そこへの蒸着膜の形成に際する熱収縮量が多いため、そもそも、二軸延伸フィルムに比して各種のバリア性の低い一軸延伸フィルムのバリア性が不安定になるという問題があった。
【0010】
この発明は、従来技術が抱えるこのような問題点を解決することを課題とするものであり、それの目的とするところは、ベースフィルム層を、蒸着コストの低い二軸延伸フィルムによって構成して、二軸延伸フィルムに固有の、各種のすぐれたバリア性の確保に加え、蒸着膜の形成に際する、少ない熱収縮量の下での、全体にわたる十分均一な蒸着膜の形成を可能とし、しかも、液体注出ノズルの引裂きの、所期した通りの方向への直線的もしくは曲線的な進行を確実に担保することができる包装用フィルムおよび、それを用いた液体注出ノズルを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係る包装用積層フィルムは、二層のシーラント層間に、金属材料、無機材料等の蒸着層を含むことのある二軸延伸ベースフィルム層を介装してなるものであって、レーザ光の吸収率の高い、または高くしたその二軸延伸ベースフィルム層に、レーザ光線の照射による溶融および冷却固化によって、間欠的もしくは連続的に形成した溶融痕からなる引裂誘導傷を設けたものである。
ここで、間欠的もしくは連続的な溶融痕の深さは、それの形成態様のいかんにかかわらず、二軸延伸ベースフィルム層に貫通する深さ、または、それの厚みの途中で終了する深さとすることができる。
【0012】
またここでは、二軸延伸ベースフィルム層を、8〜30μm、なかでも10〜25μmの厚みのポリエチレンテレフタレートフィルム、ナイロン樹脂フィルム、ポリプロピレンフィルムまたは、エチレンビニルアルコール共重合体フィルムにて構成することが好ましく、一方、シーラント層は、10〜60μm、とくに15〜50μmの厚みのポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンアクリル酸エチル共重合体またはアイオノマーにて構成することが好ましい。
【0013】
そして、この発明に係る液体注出ノズルは、軟質の包装袋本体の側部もしくは頂部で、その包装袋本体の内表面に、最外側のシーラント層によって、基端部を融着接合されて、包装袋本体から突出するものであり、蒸着層を有することのある二軸延伸ベースフィルム層と、それを挟んで積層したそれぞれのシーラント層とを具える表裏のそれぞれの側の包装用積層フィルム、たとえば、相互に別体になる表裏二枚のフィルムまたは、中央部で表裏に折返してなる一枚のフィルムを、一方のシーラント層の対向姿勢で、基端辺を除く周辺部分で相互に融着させるとともに、それぞれの二軸延伸ベースフィルム層に、レーザ光線の照射による、先に述べたような間欠的もしくは連続的な溶融痕によって形成した引裂誘導傷を、引裂き開口の形成予定線上に設けたものである。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係る包装用積層フィルムでは、所要の蒸着層を有することのある二軸延伸ベースフィルム層と、それの表裏両面に積層してなるそれぞれのシーラント層とを具える積層フィルムに対し、それのいずれか一方のシーラント層側からレーザ光線を照射して、レーザ光の透過率の高い、たとえば透明のそのシーラント層を経て、レーザ光の吸収率の高い、また吸収率を高めた二軸延伸ベースフィルム層を所要の深さに溶融させるとともに冷却固化させ、このことを、レーザ光線の照射位置と積層フィルムとの相対変位の下に、間欠的にまたは連続的に行うことで、その二軸延伸ベースフィルム層、ひいては、積層フィルムに、直線状または曲線状での、所期した通りの引裂誘導傷を形成することができる。
【0015】
この場合、レーザ光線としては、炭酸ガスレーザ、ヤグレーザ等を用いることができる。
またここで、二軸延伸ベースフィルム層の溶融および冷却固化とは、レーザ光線を吸収し、発熱して溶融したフィルム材料部分を、レーザ衝撃によって、二軸延伸ベースフィルム層と、それに積層されたシーラント層との間に一旦分散させ、その後、溶融フィルム部分を、冷却凝固した状態にすることをいう。
【0016】
なお、溶融されたフィルム材料部分がガス化すると、体積の増加に起因して、積層フィルムの層間剥離が生じることもあるが、その剥離部分は、極めて狭小な範囲であり、また、溶融フィルム部分の冷却に伴って再度接着することになるので、積層フィルムの接合強度上の問題が生じることはない。
【0017】
二軸延伸ベースフィルム層にこのようにして形成した引裂誘導傷は、積層フィルム全体としての腰が弱くても、たとえば、二枚の積層フィルムを融着接合させて構成した液体注出ノズルの、手指による引裂きを、その引裂誘導傷を辿って常に確実に進行させるべく機能することができ、引裂きの進行方向の、意図しない変化を十分に防止するべく機能することができる。
【0018】
かくして、この積層フィルムでは、二軸延伸フィルムからなるベースフィルム層に、所要の物性の蒸着膜を十分安価に、かつ適正に形成することができ、しかも、引裂きの、所期した通りの方向への進行を、引裂誘導傷の作用下で効果的に担保することができる。
【0019】
そしてこれらのことは、二軸延伸ベースフィルム層に、連続的に形成した溶融痕からなる引裂誘導傷を設けた場合および、間欠的、好ましくは5mm以下、より好ましくは2mm以下の間隔をおいて間欠的に形成した溶融痕からなる引裂誘導傷を設けた場合にも同様である。
【0020】
ところで、溶融痕の深さは、それを二軸延伸ベースフィルム層に貫通する深さとしたときは、その溶融痕を間欠的に形成すると、連続的に形成するとの別なく、引裂きの進行方向をより効果的に特定することができ、この一方で、二軸延伸ベースフィルム層の厚みの途中で終了する深さとしたときは、引裂きの進行方向の特定と併せて、二軸延伸ベースフィルム層に、それ本来の物性を、蒸着層とともに有利に発揮させることができる。
【0021】
このような包装用積層フィルムにおいて、二軸延伸ベースフィルム層を、8〜30μmの厚みのポリエチレンテレフタレートフィルム、ナイロン樹脂フィルム、ポリプロピレンフィルムまたは、エチレンビニルアルコール共重合体フィルムにて構成したときは、透明性、光沢性、強さ等を確保しつつ、積層フィルムそれ自体に、所要に応じた水蒸気バリア性、ガスバリア性等を発揮させることができる。
【0022】
ここで、ベースフィルム層の厚みが8μm未満では、蒸着層を形成してなお、水蒸気、ガス等のバリア性その他の物性が不足するおそれがあり、一方、30μmを越える厚みとしたときは、積層フィルムの腰ないしは曲げ強さが大きくなりすぎて、被包装物の注出の停止に際する、ノズル内表面の密着性その他の性能が損われるおそれがある。
【0023】
また、シーラント層を、10〜60μmの厚みのポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンアクリル酸エチル共重合体またはアイオノマーにて構成したときは、比較的低い温度でのヒートシール等によってすぐれたシール強度を発揮させることができる。
【0024】
なおここで、シーラント層が10μm未満では、十分なシール強度を確保できないおそれがあり、60μmを越えると、積層フィルムの腰ないしは曲げ強度が大きくなりすぎるおそれがある。
【0025】
そして、この発明に係る液体注出ノズルは、それを、上述した包装用積層フィルムによって構成することにより、十分安価な積層フィルムをもって、所要に応じた各種のバリア性を十分に発揮させることができるとともに、袋内被包装物の注出の停止に伴う、ノズル内表面の、確実にして十分な密着をもたらして、外気の、包装袋内への進入を確実に阻止することができる。
【0026】
しかも、この注出ノズルでは、表裏両側の積層フィルムの二軸延伸ベースフィルム層に、間欠的もしくは連続的な溶融痕からなる引裂誘導傷を設けることにより、液体注出ノズルの先端部の、手指による引裂き開封を、その引裂誘導傷に沿って十分円滑に、かつ確実に進行させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は、この発明に係る包装用積層フィルムの実施形態を示す図であり、この包装用積層フィルム1は、所要の物性の蒸着膜を有することのある二軸延伸ベースフィルム層2と、この延伸ベースフィルム層2の表裏両面に積層したそれぞれのシーラント層3、4とを具える。
【0028】
ここで、二軸延伸ベースフィルム層2は、たとえば、8〜30μm、なかでも10〜25μmの厚みのポリエチレンテレフタレートフィルム、ナイロン樹脂フィルム、ポリプロピレンフィルムまたはエチレンビニルアルコール共重合体フィルム等にて構成することが好ましく、また、シーラント層3、4は、たとえば、10〜60μm、とくには15〜50μmの厚みのポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンアクリル酸エチル共重合体またはアイオノマー等にて構成することが好ましい。
【0029】
またこの包装用積層フィルム1は、中間層としての二軸延伸ベースフィルム層2に、図1(a)に示すように、それの長さ方向に直線状に、もしくは、それの長さ方向と所要の角度で交差する方向に、直線状に延在する、または、所要の曲線状に延在する引裂誘導傷5を具える。
【0030】
ここで、この引裂誘導傷5は、レーザ光の吸収率の高い、または吸収率を高めた二軸延伸ベースフィルム層2に、レーザ光の吸収率の低いシーラント層3、4のいずれか一方側から、炭酸ガスレーザ、ヤグレーザ等のレーザ光線を、たとえば、特開平6−24462号公報に開示されているように照射することで、二軸延伸ベースフィルム層2を所要の深さに溶融させるとともに、冷却固化してなる、間欠的もしくは連続的な溶融痕6により形成する。この場合の溶融痕6の深さは、図1(b)に示すように、ベースフィルム層2の厚みの途中までの深さとする他、図1(c)に例示するように、ベースフィルム層2の厚みに相当する深さとすることもできる。
【0031】
なお、二軸延伸ベースフィルム層2のこのような局部的な溶融および冷却固化によって形成される溶融痕6は通常は、溶融したベースフィルム樹脂および、この溶融ベースフィルム樹脂によって間接的に溶融されたシーラント樹脂によって再び埋め込まれて存在することになる。
【0032】
図2は、二軸延伸ベースフィルム層2の溶融態様を模式的に例示する斜視図であり、図2(a)に示すものは、間欠的に溶融させて、そして、図2(b)に示すものは、連続的に溶融させてそれぞれ溶融痕6を形成するものであり、図2(c)に示すものは、浅い連続溝を溶融形成するとともに、この連続溝の溝底に間欠貫通孔を溶融形成することによって溶融痕6を形成するものであり、この図に示すところにおいて、図2(a)および(c)に示す間欠溶融部ならびに、図2(b)に示す連続溶融部は、図1(b)に示すように、ベースフィルム層2の厚みに途中で終了させることができる他、図1(c)に示すように、ベースフィルム層に貫通させることもできる。
【0033】
ここで、図2(a)に示す間欠溶融部は、たとえば、積層フィルム1をそれの長さ方向に一定速度で連続移動させながら、レーザ光線をそのフィルム1に間欠的に照射することで、また、図2(b)に示す連続溶融部は、レーザ光線を積層フィルム1に、一定強度で連続的に照射することでそれぞれ形成することができ、そして、図2(c)に示す複合溶融部は、積層フィルム1を連続移動させながらレーザ光線の照射エネルギーに、たとえば、特開平6−24462号公報に開示されているようにして間欠的に強弱をつけることによって形成することができる。
【0034】
以上のような包装用積層フィルム1によれば、二軸延伸ベースフィルム層2を薄肉としてなお、そこに所要の物性の蒸着膜を付与することで、所期した通りのバリア性を安定的に発揮することができ、また、引裂誘導傷5の作用下で、ベースフィルム層2の延伸配向方向のいかんにかかわらず、誘導傷5を辿って常に円滑に、かつ、それから逸れることなく確実に手指をもって引裂くことができる。
【0035】
図3は、上述した包装用積層フィルムによって構成される、この発明に係る液体注出ノズルの実施形態を、軟質の包装袋本体に関連させて示す平面図である。
これは、表面側および裏面側のそれぞれに位置する表裏二枚の積層フィルム1または、折返し状態の一枚の積層フィルム1の引裂誘導傷5を、表裏の両側で相互に整合させた姿勢として、積層フィルム1の一方のシーラント層を、基端辺を除く周辺部分で、図に斜線を施して示すように、ヒートシールその他によって融着させるとともに、不要な外縁部分を切断除去し、好ましくは、このようにして形成される融着部7の、引裂誘導傷5の形成位置と対応する少なくとも一方側の位置、図では上方側の対応位置にV字状の折曲部8を設けたものである。
【0036】
このようにして構成してなる液体注出ノズル9では、表裏のフィルム1の引裂誘導傷5は、その液体注出ノズル9への引裂き開口の、所要の形成予定線上に延在する。
【0037】
従って、この液体注出ノズル9によれば、融着部7のV字状折曲部8より先端側の部分を手指で把持して、その折曲部8の位置から引裂きを開始することで、その引裂きを、引裂誘導傷5の形成位置を辿って、円滑にかつ常に正確に進行させることができる。
【0038】
ところで、かかる液体注出ノズル9は、軟質の包装袋本体の側部もしくは頂部で、図3に仮想線で部分的に例示するところでは、包装袋本体10の上端部分の側部で、包装袋本体10の内表面のシーラント層に、その注出ノズル9の基端部の最外側のシーラント層を、図に斜線を施して示すように、ヒートシールその他によって融着接合させて、その注出ノズル9を包装袋本体10に、それの側方への突出姿勢で一体化させることにより、包装袋11の一部とされる。
【0039】
このような包装袋11を液体等の被包装物の充填包装に供した場合において、その被包装物を包装袋11から注出する必要が生じたときは、液体注出ノズル9の融着部7の、V字状折曲部8より先端側部分を手指で把持して、その注出ノズル9の先端側部分に、図4に例示するように、それの基端側部分とは逆方向の力を作用させることにより、液体注出ノズル9を、先に述べたように、引裂誘導傷5を辿って、簡易に、しかも、常に所期した通りに適正に引裂き開封することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明に係る包装用積層フィルムの実施形態を示す図である。
【図2】二軸延伸ベースフィルム層の溶融態様を模式的に例示する斜視図である。
【図3】この発明に係る液体注出ノズルの実施形態を、包装袋本体と関連させて示す平面図である。
【図4】液体注出ノズルの引裂き開封例を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1 包装用積層フィルム
2 二軸延伸ベースフィルム層
3、4 シーラント層
5 引裂誘導傷
6 溶融痕
7 融着部
8 折曲部
9 液体注出ノズル
10 包装袋本体
11 包装袋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二層のシーラント層間に、蒸着層を有することのある二軸延伸ベースフィルム層を介装してなる包装用積層フィルムであって、
二軸延伸ベースフィルム層に、レーザ光線の照射による、間欠的もしくは連続的な溶融痕からなる引裂誘導傷を設けてなる包装用積層フィルム。
【請求項2】
間欠的もしくは連続的な溶融痕の深さを、二軸延伸ベースフィルム層に貫通する深さ、または、それの厚みの途中で終了する深さとしてなる請求項1に記載の包装用積層フィルム。
【請求項3】
二軸延伸ベースフィルム層を、8〜30μmの厚みのポリエチレンテレフタレートフィルム、ナイロン樹脂フィルム、ポリプロピレンフィルムまたはエチレンビニルアルコール共重合体フィルムにて構成してなる請求項1もしくは2に記載の包装用積層フィルム。
【請求項4】
シーラント層を、10〜60μmの厚みのポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンアクリル酸エチル共重合体またはアイオノマーにて構成してなる請求項1〜3のいずれかに記載の包装用積層フィルム。
【請求項5】
軟質の包装袋本体の側部もしくは頂部で、その包装袋本体の内表面に、最外側のシーラント層によって、基端部を融着接合されて、包装袋本体から突出する液体注出ノズルであって、
蒸着層を有することのある二軸延伸ベースフィルム層と、それを挟んで積層したそれぞれのシーラント層とを具える表裏のそれぞれの側の包装用積層フィルムを、一方のシーラント層の相互の対向姿勢で、基端辺を除く周辺部分で相互に融着させるとともに、それぞれの二軸延伸ベースフィルム層に、レーザ光線の照射による、間欠的もしくは連続的な溶融痕によって形成した引裂誘導傷を、引裂き開口の形成予定線上に設けてなる液体注出ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−302314(P2007−302314A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−134012(P2006−134012)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(000206233)大成ラミック株式会社 (56)
【Fターム(参考)】