説明

包装用緩衝パッド

【課題】底トレイ(2)の側面(2g)と被包装物である製品(5)の側板(5a)との間の隙間に入れて製品を保護するように段ボールのブランクを折り曲げて形成される包装用緩衝パッド(10)によって製品(5)の強度の弱い部分が損傷してしまうのを防止する。
【解決手段】製品(5)の側板(5a)に沿う方向へ延在する脚部(21)を包装用緩衝パッド(10)に設ける。脚部(21)には、製品(5)の側板(5a)の縁部の所定幅に形成される第1領域(A1)に対応する第1緩衝部(B1)と、第1領域(A1)よりも低強度の第2領域(A2)に対応する第2緩衝部(B2)を設ける。第1緩衝部(B1)で荷役時や輸送時の荷重を主として受けるように構成する一方、第2緩衝部(B2)には、より小さな荷重で側板(5a)の移動を許容する移動許容部(23)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボール製のブランクを折り曲げて形成される包装用の緩衝パッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、段ボールのブランクを折り曲げて形成した包装用緩衝パッドは、種々の製品(被包装物)を包装する際に用いられている。例えば、この包装用緩衝パッドは、業務用空調機の室内ユニットのような直方体形状の製品を梱包する際に、底トレイや天トレイなどの梱包外装材とともに用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この緩衝パッドは、製品の側板が梱包外装材の側面に接触しないように、梱包外装材の底面や天面の側縁部(底面や天面の四辺のうちの少なくとも対向する二辺)に入れられる。こうすることにより、製品を包装したとき、梱包外装材の側面と製品の側板との間の隙間を緩衝パッドで維持することができるので、荷役時の衝撃および輸送時の振動で製品の側板に衝撃が加わるのを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−103462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、業務用空調機の室内ユニットのように、ケーシングが金属の薄いプレートを稜部で接合した構成である場合、ケーシングの稜部の接合部のわずかな範囲(例えば稜部近辺の20mm程度の範囲)だけは強度が強くなるが、稜部近辺から離れた部分(例えば上記の20mmを超える範囲)ではケーシングの強度が弱くなる。そのため、荷役時の衝撃や輸送時の振動などで上記包装用緩衝パッドが製品強度の弱い部分に当接すると、ケーシングの側板が変形するなど、損傷してしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みて創案されたものであり、その目的は、梱包外装材の底面や天面の側縁部に入れて製品を保護する包装用緩衝パッドにより製品強度の弱い部分が損傷するのを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、段ボールのブランク(20)を折り曲げることにより形成されるとともに、被包装物(5)の高さ方向の端部において底トレイ(2)や天トレイ(3)などの梱包外装材(2,3)の側面と被包装物(5)の側板(5a)との間の隙間に装着される包装用緩衝パッドを前提としている。
【0008】
そして、この包装用緩衝パッドは、上記ブランク(20)に形成された折り込み片(22)を折り曲げることにより上記被包装物(5)の側板(5a)と直交する向きで該側板(5a)の高さ方向へ延在する脚部(21)を有し、上記脚部(21)は、被包装物(5)の縁部の所定幅に形成される側板(5a)の第1領域(A1)に対応する範囲に形成される基部である第1緩衝部(B1)と、該被包装物(5)の縁部よりも低強度で側板(5a)の第1領域(A1)に隣接する第2領域(A2)に対応する範囲に形成される先端部である第2緩衝部(B2)とを備え、上記第1緩衝部(B1)が荷役時および輸送時の荷重を主として受けるように構成される一方、上記第2緩衝部(B2)は上記荷重よりも小さな荷重で上記第2領域(A2)の移動を許容する移動許容部(23)を備えていることを特徴としている。
【0009】
この第1の発明では、被包装物(5)は包装用緩衝パッドとともに梱包外装材(2,3)で梱包される。このとき、包装用緩衝パッドは、被包装物(5)の側板(5a)の強度が相対的に強い第1領域(A1)に第1緩衝部(B1)が対応して位置し、被包装物(5)の側板(5a)の強度が相対的に弱い第2領域(A2)に第2緩衝部(B2)が対応して位置する。そして、被包装物(5)の荷役や輸送をしているときに梱包外装材(2,3)に衝撃や振動が加わると、その荷重は、上記第1緩衝部(B1)で受けることになる。一方、第2緩衝部(B2)は移動許容部(23)を有しているので、荷役時の衝撃や輸送時の振動などが生じても被包装物(5)の側板(5a)の位置変化が可能となり、被包装物(5)の側板(5a)の強度が弱い第2領域(A2)に加わる力が低減される。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、上記第1緩衝部(B1)における被包装物(5)側の内側端面が被包装物(5)の側板(5a)に当接して被包装物(5)の衝撃荷重を受ける一方、第2緩衝部(B2)の内側端面は被包装物(5)の側板(5a)との間に隙間が形成されるように構成されていることを特徴としている。
【0011】
この第2の発明では、第1緩衝部(B1)が被包装物(5)の側板(5a)の第1領域(A1)に当接して梱包外装材(2,3)の荷役時や輸送時の荷重を受ける。また、第2緩衝部(B2)は、通常は被包装物(5)の側板(5a)の第2領域(A2)とは当接しないし、梱包外装材(2,3)に荷役時や輸送時の荷重が加わっても被包装物(5)が移動できるため、第2領域(A2)に衝撃荷重が加わるのを阻止できる。
【0012】
第3の発明は、第2の発明において、上記第2緩衝部(B2)の内側端面が、第2緩衝部(B2)の先端側端部から第1緩衝部(B1)の基部側端部へ向かって、被包装物(5)の側板(5a)との間の隙間が大きくなるように傾斜していることを特徴としている。
【0013】
この第3の発明では、第2緩衝部(B2)の内側端面に傾斜を付けているので、梱包外装材(2,3)に荷役時や輸送時の荷重が加わっても被包装物(5)が移動できるうえ、第1緩衝部(B1)に近くて衝撃の大きな箇所ほど移動可能量に余裕があるため、被包装物(5)の側板(5a)の第2領域(A2)に衝撃荷重が加わるのを効果的に阻止できる。
【0014】
第4の発明は、第1の発明において、上記第1緩衝部(B1)の内側端面は全体が一体的に被包装物(5)の側板(5a)に当接する当接面として形成される一方、上記第2緩衝部(B2)は、該第2緩衝部(B2)の内側端面を複数に分断する切り込み(24)が形成されることにより、第1緩衝部(B1)よりも変形容易に構成されていることを特徴としている。
【0015】
この第4の発明では、第2緩衝部(B2)の内側端面に切り込み(24)を形成しているので、梱包外装材(2,3)に荷役時や輸送時の荷重が加わっても第2緩衝部(B2)が変形して被包装物(5)が移動でき、第2領域(A2)に衝撃荷重が加わるのを効果的に阻止できる。
【0016】
第5の発明は、第1から第4の発明の何れか1つにおいて、上記第1緩衝部(B1)と第2緩衝部(B2)を覆って被包装物(5)に沿って延在するガイドフラップ(16)を有し、該ガイドフラップ(16)は、第1緩衝部(B1)の基部側端部から第2緩衝部(B2)の先端側端部へ向かって、被包装物(5)の側板(5a)から離れるように傾斜していることを特徴としている。
【0017】
この第5の発明では、梱包外装材(2,3)の底面や天面の側縁部に先に包装用緩衝パッドを装着した状態で被包装物(5)を梱包する際に、ガイドフラップ(16)の傾斜に沿って被包装物(5)を入れることができる。
【0018】
第6の発明は、第5の発明において、上記ガイドフラップ(16)における傾斜の先端側端部と、第2緩衝部(B2)の先端側端部の位置が実質的に一致していることを特徴としている。
【0019】
この第6の発明では、ガイドフラップ(16)における傾斜の先端側端部と、第2緩衝部(B2)の先端側端部の位置が実質的に一致するようにしているので、第2緩衝部(B2)の先端側端部の幅を大きくすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、被包装物(5)の側板(5a)の強度が相対的に強い第1領域(A1)に対応する第1緩衝部(B1)と、該側板(5a)の強度が相対的に弱い第2領域(A2)に対応する第2緩衝部(B2)とを包装用緩衝パッドに設け、主として第1緩衝部(B1)で荷役時や輸送時の荷重を受ける一方、第2緩衝部(B2)はそれよりも弱い荷重で容易に変形するようにしているので、梱包外装材(2,3)に荷重が加わっても、被包装物(5)の側板(5a)の強度が弱い第2領域(A2)には大きな衝撃荷重は与えられない。このように、本発明によれば、被包装物(5)の側板(5a)の強度が弱い第2領域(A2)を効果的に保護できるので、被包装物(5)の側板(5a)が変形したり損傷したりするのを防ぐことが可能になる。
【0021】
上記第2の発明によれば、上記第1緩衝部(B1)における被包装物(5)側の内側端面が被包装物(5)の側板(5a)に当接して被包装物(5)の荷重を受ける一方、第2緩衝部(B2)の内側端面は被包装物(5)の側板(5a)との間に隙間が形成されるようにしているので、梱包外装材(2,3)の荷役時や輸送時の荷重を包装用緩衝パッドの第1緩衝部(B1)で受けることができるとともに、被包装物(5)の第2領域(A2)は包装用緩衝パッドの第2緩衝部(B2)で保護できる。
【0022】
上記第3の発明によれば、上記第1緩衝部(B1)における被包装物(5)側の内側端面が被包装物(5)の側板(5a)に当接して被包装物(5)の衝撃荷重を受ける一方、第2緩衝部(B2)の内側端面は被包装物(5)の側板(5a)との間に傾斜を付けた隙間が形成されるようにしているので、梱包外装材(2,3)に荷役時や輸送時の荷重が加わっても被包装物(5)が移動できるうえ、第1緩衝部(B1)に近くて衝撃の大きな箇所ほど移動可能量に余裕がある。したがって、被包装物(5)の第2領域(A2)に衝撃荷重が加わるのを効果的に阻止できる。
【0023】
上記第4の発明によれば、上記第1緩衝部(B1)の内側端面全体が一体的に被包装物(5)の側板(5a)に当接して被包装物(5)の衝撃荷重を受ける一方、第2緩衝部(B2)の内側端面に切り込み(24)を形成しているので、梱包外装材(2,3)に荷役時や輸送時の荷重が加わっても被包装物(5)が移動でき、第2領域(A2)に衝撃荷重が加わるのを効果的に阻止できる。
【0024】
上記第5の発明によれば、梱包外装材(2,3)の底面や天面の側縁部に先に包装用緩衝パッドを装着した状態で被包装物(5)を詰める際に、ガイドフラップ(16)の傾斜に沿って被包装物(5)を案内することができるので、包装作業を容易に行うことができる。また、ガイドフラップ(16)を設けることにより、被包装物(5)が包装用緩衝パッドに乗り上げて位置がずれてしまうのを防止できる。
【0025】
上記第6の発明によれば、ガイドフラップ(16)における傾斜の先端側端部と、第2緩衝部(B2)の先端側端部の位置を実質的に一致させることにより、第2緩衝部(B2)の先端部側の幅を大きくできるようにしているので、脚部(21)の強度を確保できるとともに、梱包外装材(2,3)で被包装物(5)を梱包するときのガイド機能を最大限に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明に係る包装用緩衝パッドを用いて空気調和装置の室内機を梱包する状態を示す斜視図である。
【図2】図2は、室内機を梱包外装材で梱包した状態を示す部分断面図である。
【図3】図3は、包装用緩衝パッドの部分斜視図である。
【図4】図4(A)は上記室内機の平面図、図4(B)は室内機の側面図である。
【図5】図5は、包装用緩衝パッドを形成するためのブランクの平面図である。
【図6】図6(A),(B),(C)は、ブランクを折り曲げて包装用緩衝パッドを組み立てる状態を段階的に示す斜視図である。
【図7】図7は、底トレイの展開形状と組立状態を示す斜視図である。
【図8】図8は、包装用緩衝パッドを底トレイに取り付ける状態を示す斜視図である。
【図9】図9は、変形例に係る包装用緩衝パッドを用いて室内機を梱包外装材で梱包した状態を示す部分断面図である。
【図10】図10(A),(B)は、他の変形例に係る包装用緩衝パッドの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。この実施形態は、被包装物である空気調和装置の室内機を梱包外装材(底トレイと天トレイ)で梱包する例を示す実施形態である。
【0028】
図1は、梱包外装材である底トレイ(2)および天トレイ(3)と本発明に係る包装用緩衝パッド(10)を用いて上記室内機(5)を梱包する状態を示す斜視図、図2は、上記室内機(5)を梱包外装材(2,3)で梱包した状態を示す部分拡大断面図、図3は、包装用緩衝パッド(10)の部分斜視図、図4(A)は上記室内機(5)の平面図、図4(B)は室内機(5)の側面図である。
【0029】
上記室内機(5)は、図4に示すように平面から見て長方形で箱形のケーシング(6)を有している。このケーシング(6)の内部には、室内ファン(7)や室内熱交換器(図示せず)が収納されている。室内機(5)のケーシング(6)の天面には、空気吸込口(8a)と空気吹出口(8b)が形成されている。空気吸込口(8a)は室内ファン(7)に対応した位置に形成された円形の開口により構成され、空気吹出口(8b)は、ケーシング(6)の長手方向に沿う細長い開口により構成されている。ケーシング(6)は、金属の薄いプレート材を稜部で接合することにより構成されている。
【0030】
この室内機(5)は、室外に設置される室外機(図示せず)と冷媒配管で接続されて、冷媒回路が構成されるようになっている。そして、空気吸込口(8a)から室内空気を吸い込む一方、冷媒回路内を冷媒が循環する際に、室内空気を室内ファン(7)で室内熱交換器に通過させて該室内空気を冷却または加熱し、この空気を空気吹出口(8b)から室内に供給することで室内の冷房または暖房が行われる。
【0031】
上記包装用緩衝パッド(10)は、図1及び図2に示すように、底トレイ(2)の底面や天トレイ(3)の天面の側縁部において、底トレイ(2)および天トレイ(3)の側面(底トレイ2の側面:2g)の内側と室内機(5)の側板(5a)との間の隙間に装着されるようになっている。つまり、包装用緩衝パッド(10)は室内機(5)の高さ方向の端部に装着される。包装用緩衝パッド(10)は、具体的には、底トレイ(2)に組み付けられている。底トレイ(2)は、段ボールで形成された長方形のトレイである。そして、上記包装用緩衝パッド(10)は、底トレイ(2)の短辺側の縁部に組み付けられて保持された状態で、底トレイ(2)と一緒になっている。
【0032】
また、包装用緩衝パッド(10)は、天トレイ(3)の側面内側にも組み付けられる。天トレイ(3)も長辺寸法と短辺寸法が底トレイ(2)と同様に構成されている。天板側の包装用緩衝パッド(10)は、天トレイ(3)の短辺側の縁部に組み付けられるようになっている。本実施形態では、底板側の包装用緩衝パッド(10)についてのみ説明し、天板側の包装用緩衝パッド(10)については説明を省略する。天板側の包装用緩衝パッド(10)と底板側の包装用緩衝パッド(10)は形状は若干異なるものの、基本的な構成はほぼ同じである。なお、包装用緩衝パッド(10)は、底板側と天板側が同じものであってもよい。
【0033】
上記包装用緩衝パッド(10)は、段ボール製の1枚のブランク(20)(図5参照)を折り曲げることにより形成されている。包装用緩衝パッド(10)は、図1〜図3に示すように、底板(11)と背板(12)と天板(13)と前板(14)とからほぼ角形の筒状に形成されるとともに、筒の両端を閉塞する側板(15)を有している(図3では前板(14)と側板(15)を省略している)。この包装用緩衝パッド(10)には、上記ブランク(20)に形成された折り込み片(22)を折り曲げることにより、上記室内機(5)の側板(5a)とほぼ直交する向きで該側板(5a)の高さ方向へ延在する脚部(21)が形成されている。
【0034】
上記室内機(5)は、側板(5a)における上下の縁部の所定幅(例えばケーシング(6)の上下端の稜部から幅20mm)の領域を第1領域(A1)とし、側板(15)における第1領域(A1)を除く領域を第2領域(A2)とすると、第1領域(A1)はケーシング(6)の稜部で金属のプレート材同士を接合した箇所またはその近傍の部位であるから比較的高強度であり、第1領域(A1)に隣接する第2領域(A2)は上記稜部の接合箇所から離れた領域であるため、第1領域(A1)よりも低強度である。
【0035】
そして、上記緩衝パッド(10)の脚部(21)は、上記室内機(5)の側板(5a)の第1領域(A1)に対応する範囲に形成される基部である第1緩衝部(B1)と、上記室内機(5)の側板(5a)の第2領域(A2)に対応する範囲に形成される先端部である第2緩衝部(B2)とを備えている。この脚部(21)では、第1緩衝部(B1)が荷役時や輸送時の荷重を主として受けるように構成されている。一方、第2緩衝部(B2)は、上記荷重よりも小さな荷重で側板(5a)の第2領域(A2)の移動を許容する移動許容部(23)を備えている。
【0036】
具体的に、上記脚部(21)の第1緩衝部(B1)における内側端面(室内機(5)側の端面)は、室内機(5)の側板に当接して室内機(5)の衝撃荷重を受けるように構成されている。一方、第2緩衝部(B2)の内側端面は、室内機(5)の側板(5a)との間に隙間が形成されるように構成されている。
【0037】
また、上記包装用緩衝パッド(10)は、上記第1緩衝部(B1)と第2緩衝部(B2)を覆い、室内機(5)に沿って延在するガイドフラップ(16)を有している。このガイドフラップ(16)は、第1緩衝部(B1)の基部側端部から第2緩衝部(B2)の先端側端部へ向かって、室内機(5)の側板(5a)から離れるように傾斜している。さらに、脚部(21)の第2緩衝部(B2)の内側端面は、第2緩衝部(B2)の先端側端部から第1緩衝部(B1)の基部側端部へ向かって、室内機(5)の側板(15)との間の隙間が大きくなるように、ガイドフラップ(16)とは逆方向へ傾斜している。そして、上記ガイドフラップ(16)における傾斜の先端側端部(図2における上端部)と、第2緩衝部(B2)の先端側端部の位置は、実質的に一致している。
【0038】
次に、上記包装用緩衝パッド(10)を形成するためのブランク(20)の構成について説明する。
【0039】
図5は、包装用緩衝パッド(10)を形成するためのブランク(20)の平面図(包装用緩衝パッド(10)の展開図)である。このブランク(20)は、横長の1枚の段ボールにより形成され、図5の下方から順に、底板部(25)、背板部(26)、天板部(27)及び前板部(28)(ガイドフラップ(16))を有している。また、このブランク(20)には、底板部(25)と背板部(26)の間、背板部(26)と天板部(27)の間、天板部(27)と前板部(28)の間に、それぞれ折り曲げ罫線(L1,L2,L3)が形成されている。なお、図における折り曲げ罫線(L1,L2,L3)の実線部分は切り込み線になっている。
【0040】
このブランク(20)の段ボールは波板の両側に厚紙が貼り付けられた両面段ボールである。ブランク(20)の波板(20a)の波の畝ないし稜線の方向(P)は、上記の各折り曲げ罫線(L1,L2,L3)と直交する方向に設定され、梱包外装材(2,3)に加わる荷重に対して底板部(25)や天板部(27)が変形しにくくなるようにしている。
【0041】
前板部(28)の先端部分には底板部(25)と重ねられる折り返し部(29)が形成され、前板部(28)と折り返し部(29)との間にも折り曲げ罫線(L4)が形成されている。底板部(25)の中央には折り返し部(29)を留めるためのスリット(25a)が形成されている。折り返し部(29)には、このスリット(25a)に挿入される保持片(29a)が形成されている。保持片(29a)の先端部には、スリット(25a)からの抜け止めのために、幅方向の両側に張り出した先端係止部(29b)が形成されている。
【0042】
底板部(25)と背板部(26)と前板部(28)のそれぞれの両端部には、側板構成片(30a,30b,30c)が形成されている。このブランク(20)は、底板部(25)と背板部(26)と天板部(27)と前板部(28)を折り曲げ罫線(L1,L2,L3)で折り曲げて包装用緩衝パッド(10)を筒状に形成した状態で、各側板構成片(30a,30b,30c)を内側に折り曲げて互いに噛み合わせて留めるとともに、折り返し部(29)の保持片(29a)が底板部(25)のスリット(25a)に挿入される。角筒状の包装用緩衝パッド(10)の両端は、それぞれ3枚の側板構成片(30a,30b,30c)からなる側板部(30)で閉塞される。
【0043】
ブランク(20)の天板部(27)には、切り込みを入れることにより折り込み片(22)が形成されている。この折り込み片(22)は、天板(13)の支持部(13a)の左右両側に形成され、支持部(13a)に対して折り曲げ罫線(L5)で側板部(30)とほぼ平行になるように折り曲げられる。この折り込み片(22)により、被包装物である室内機(5)の側板(5a)に沿う方向へ延在する上述の脚部(21)が構成されている。
【0044】
上記ブランク(20)から包装用緩衝パッド(10)を組み上げた状態で上記脚部(21)を固定するために、上記ブランク(20)には、底板部(25)から背板部(26)にかけて形成された切り込み線(L6)と、この切り込み線(L6)の端部同士を結んで形成された折り曲げ罫線(L7)とにより、保持板部(31)が形成されている。そして、この保持板部(31)と上記脚部(21)には、互いに噛み合うスリット(21a,31a)が形成されている。
【0045】
図6(A)〜(C)はブランク(20)を折り曲げて包装用緩衝パッド(10)を組み立てる状態を段階的に示す斜視図である。上記ブランク(20)は、まず、図6(A)に示すように、底板部(25)、背板部(26)、天板部(27)及び前板部(28)を折り曲げ罫線(L1,L2,L3)で折り曲げながら、脚部(21)を構成する折り込み片(22)のスリット(21a)と保持板部(31)のスリット(31a)を噛み合わせる。そして、側板構成片(30a,30b,30c)を内側に折り曲げることにより図6(B)において側板部(30)を閉じ、図6(C)に示す包装用緩衝パッド(10)を形成する。
【0046】
一方、底トレイ(2)は、展開形状と組立状態を表す図7に示すように、長方形形状の底板部(2a)と、底板部(2a)の短辺側の縁部に連接する短辺側側板部(2b)と、底板部(2a)の長辺側の縁部に連接する長辺側側板部(2c)とを有し、包装用緩衝パッド(10)と同様に段ボールにより構成されている。
【0047】
この底トレイ(2)は、底板部(2a)に対して短辺側側板部(2b)を折り曲げて立ち上げ、短辺側側縁部(2b)の両端のフラップ(2d)を二重構造の長辺側側板部(2c)で挟み込み、さらに長辺側側板部(2c)の先端の係合凸部(2e)を底板部(2a)の係合凹部(2f)に差し込んで留めることにより組み立てられる。
【0048】
そして、図7で組み立てた底トレイ(2)に、図6で組み立てた包装用緩衝パッド(10)を図8に示すようにして取り付けて、室外機(5)の梱包が行われる。
【0049】
このとき、包装用緩衝パッド(10)は、図2に示しているように、上記脚部(21)の第1緩衝部(B1)が、室内機(5)のケーシング(6)の強度が高い第1領域(A1)に対応して位置し、主として荷役時や輸送時の荷重を受ける。また、上記ケーシング(6)の強度が低い第2領域(A2)に対応して位置する第2緩衝部(B2)には、上記室内機(5)の側板(5a)との間に隙間が形成され、この隙間を形成することにより移動許容部(23)が構成されている。脚部(21)の第2緩衝部(B2)におけるケーシング(6)の側板(15)側の端縁は、その隙間が下端部ほど広くなるようなテーパ形状に形成され、移動許容部(23)が構成されている。
【0050】
この実施形態において、室内機(5)の荷役や輸送をするときに梱包外装材(2,3)に振動や衝撃が加わると、その荷重は、上記第1緩衝部(B1)から側板(5a)の第1領域(A1)に伝わるが、第1領域(A1)は強度が強いので変形を抑えられる。一方、第2緩衝部(B2)は移動許容部(23)を有しているので、通常は室内機(5)の側板(5a)の第2領域(A2)とは当接しないし、梱包外装材(2,3)に輸送時の振動や衝撃が加わっても室内機(5)が移動する余裕があるため、第2領域(A2)に衝撃荷重が加わるのを阻止できる。
【0051】
また、この実施形態では、第2緩衝部(B2)の内側端面に傾斜(テーパ)を付けているうえ、第1緩衝部(B1)に近くて衝撃の大きな箇所ほど移動可能量に余裕があるため、第2領域(A2)に衝撃荷重が加わるのを効果的に阻止できる。
【0052】
さらに、この実施形態では、梱包外装材(2,3)の底面や天面の側縁部に先に包装用緩衝パッド(10)を装着した状態で室内機(5)を梱包する際に、ガイドフラップ(16)の傾斜に沿って室内機(5)を入れることができる。
【0053】
また、ガイドフラップ(16)における傾斜の先端側端部と、第2緩衝部(B2)の先端側端部の位置が実質的に一致するようにしているので、第2緩衝部(B2)の先端側端部の幅を大きくすることができ、脚部(21)が弱くなるのを防止できる。
【0054】
−実施形態の効果−
本実施形態によれば、室内機(5)の側板(5a)の強度が相対的に強い第1領域(A1)に対応して位置する第1緩衝部(B1)と、該側板(5a)の強度が相対的に弱い第2第域(A2)に対応して位置する第2緩衝部(B2)を包装用緩衝パッド(10)に設け、主として第1緩衝部(B1)で荷役時や輸送時の荷重を受ける一方、第2緩衝部(B2)はそれよりも弱い荷重で側板(5a)が移動できるようにしているので、梱包外装材(2,3)に衝撃が加わっても、室内機(5)の側板(5a)の強度が弱い第2領域(A2)には大きな衝撃荷重は与えられない。このように、本実施形態によれば、室内機(5)の側板(5a)の強度が弱い第2領域(A2)を効果的に保護できるので、室内機(5)の側板(5a)が変形したり損傷したりするのを防ぐことが可能になる。
【0055】
また、本実施形態によれば、上記第1緩衝部(B1)における室内機(5)側の内側端面が室内機(5)の側板(5a)に当接して室内機(5)の衝撃荷重を受ける一方、第2緩衝部(B2)の内側端面は室内機(5)の側板(5a)との間に傾斜を付けた隙間が形成されるようにして、第1緩衝部(B1)に近くて衝撃の大きな箇所ほど移動可能量に余裕ができるようにしているので、室内機(5)の第2領域(A2)に衝撃荷重が加わるのを効果的に阻止できる。
【0056】
また、本実施形態によれば、梱包外装材(2,3)の底面や天面の側縁部に先に包装用緩衝パッド(10)を装着した状態で室内機(5)を詰める際に、ガイドフラップ(16)の傾斜に沿って室内機(5)を入れることができるので、包装作業を容易に行うことができる。また、ガイドフラップ(16)を設けることにより、室内機(5)が包装用緩衝パッド(10)に乗り上げて位置がずれてしまうのを防止できる。
【0057】
また、ガイドフラップ(16)における傾斜の先端側端部と、第2緩衝部(B2)の先端側端部の位置を実質的に一致させることにより、第2緩衝部(B2)の先端部側の幅を大きくできるようにしているので、脚部(21)の強度低下を防止できるとともに、梱包外装材(2,3)を室内機(5)に入れるときのガイド機能を最大限に発揮することができる。
【0058】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0059】
例えば、上記実施形態では、第2緩衝部(B2)と室内機(5)との間に隙間を形成することにより脚部(21)に移動許容部(23)を形成しているが、脚部(21)の構成を変更してもよい。例えば、図9に示すように、上記第1緩衝部(B1)の内側端面を、全体が一体的に室内機(5)の側板(5a)に当接する当接面として形成する一方で、上記第2緩衝部(B2)に、該第2緩衝部(B2)の内側端面を複数に分断する切り込み(24)を形成することにより、第2緩衝部(B2)を第1緩衝部(B1)よりも変形容易にしてもよい。
【0060】
このように第2緩衝部(B2)の内側端面に切り込み(24)を形成すると、梱包外装材(2,3)に荷役時や輸送時の荷重が加わっても第2緩衝部(B2)が変形して室内機(5)が移動できる。したがって、この第2緩衝部(B2)の変形する部分が移動許容部(23)になり、第2領域(A2)に衝撃荷重が加わるのを効果的に阻止できる。
【0061】
また、上記実施形態では、上記ガイドフラップ(16)における傾斜の先端側端部と、第2緩衝部(B2)の先端側端部の位置が実質的に一致するようにしているが、図10(A)に示すように、ガイドフラップ(16)における傾斜の先端側端部と第2緩衝部(B2)の先端側端部の位置は必ずしも一致しなくてもよい。また、図10(B)に示すように、第2緩衝部の内側端縁を背板(12)と平行になるように形成したり、図2とは逆方向に傾斜するテーパ形状にしてもよい。
【0062】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上説明したように、本発明は、段ボール製のブランクを折り曲げて形成される包装用緩衝パッドについて有用である。
【符号の説明】
【0064】
2 底トレイ(梱包外装材)
3 天トレイ(梱包外装材)
5 室内機(被包装物)
5a 側板
10 包装用緩衝パッド
16 ガイドフラップ
20 ブランク
22 折り込み片
21 脚部
23 移動許容部
24 切り込み
A1 第1領域
A2 第2領域
B1 第1緩衝部
B2 第2緩衝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
段ボールのブランク(20)を折り曲げることにより形成されるとともに、被包装物(5)の高さ方向の端部において梱包外装材(2,3)の側面と被包装物(5)の側板(5a)との間の隙間に装着される包装用緩衝パッドであって、
上記ブランク(20)に形成された折り込み片(22)を折り曲げることにより上記被包装物(5)の側板(5a)と直交する向きで該側板(5a)の高さ方向へ延在する脚部(21)を有し、
上記脚部(21)は、被包装物(5)の側板(5a)の縁部の所定幅に形成される第1領域(A1)に対応する範囲に形成される基部である第1緩衝部(B1)と、該被包装物(5)の縁部よりも低強度で側板(5a)の第1領域(A1)に隣接する第2領域(A2)に対応する範囲に形成される先端部である第2緩衝部(B2)とを備え、
上記第1緩衝部(B1)が荷役時および輸送時の荷重を主として受けるように構成される一方、上記第2緩衝部(B2)は上記荷重よりも小さな荷重で上記第2領域(A2)の移動を許容する移動許容部(23)を備えていることを特徴とする包装用緩衝パッド。
【請求項2】
請求項1において、
上記第1緩衝部(B1)における被包装物(5)側の内側端面が被包装物(5)の側板(5a)に当接して被包装物(5)の衝撃荷重を受ける一方、第2緩衝部(B2)の内側端面は被包装物(5)の側板(5a)との間に隙間が形成されるように構成されていることを特徴とする包装用緩衝パッド。
【請求項3】
請求項2において、
上記第2緩衝部(B2)の内側端面は、第2緩衝部(B2)の先端側端部から第1緩衝部(B1)の基部側端部へ向かって、被包装物(5)の側板(5a)との間の隙間が大きくなるように傾斜していることを特徴とする包装用緩衝パッド。
【請求項4】
請求項1において、
上記第1緩衝部(B1)の内側端面は全体が一体的に被包装物(5)の側板(5a)に当接する当接面として形成される一方、上記第2緩衝部(B2)は、該第2緩衝部(B2)の内側端面を複数に分断する切り込み(24)が形成されることにより、第1緩衝部(B1)よりも変形容易に構成されていることを特徴とする包装用緩衝パッド。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1つにおいて、
上記第1緩衝部(B1)と第2緩衝部(B2)を覆って被包装物(5)に沿って延在するガイドフラップ(16)を有し、該ガイドフラップ(16)は、第1緩衝部(B1)の基部側端部から第2緩衝部(B2)の先端側端部へ向かって、被包装物(5)の側板(5a)から離れるように傾斜していることを特徴とする包装用緩衝パッド。
【請求項6】
請求項5において、
上記ガイドフラップ(16)における傾斜の先端側端部と、第2緩衝部(B2)の先端側端部の位置が実質的に一致していることを特徴とする包装用緩衝パッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−71754(P2013−71754A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212299(P2011−212299)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】