説明

包装用緩衝体及び包装箱

【課題】衝撃吸収性、リサイクル性、経済性、信頼性などを向上させることができる包装用緩衝体及び包装箱の提供を目的とする。
【解決手段】包装用緩衝体1は、気泡シートからなる基板部2と、気泡シートからなり、基板部2に対して井の字状に立設された側板部3とを備え、交差する第一側板部31の中段部に、孔311が形成され、交差する第二側板部32の上端及び下端から、切り込み部321が形成され、第二側板部32の端部が、第一側板部31の孔311に装入され、孔311及び切り込み部321によって、第一側板部31と第二側板部32とが係合する構成としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装用緩衝体及び包装箱に関し、特に、衝撃吸収性、リサイクル性、経済性、信頼性などを向上させることができる包装用緩衝体及び包装箱に関する。
【背景技術】
【0002】
被包装物を輸送中の衝撃などから効果的に保護するために、プチプチ(登録商標)などの緩衝材が、広く普及している。また、様々な被包装物に対応することを目的として、あるいは、緩衝材における衝撃吸収性や経済性などを向上させることを目的として、様々な緩衝体や包装用容器などが開発されている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、物品を収容するための収容空間部を備えており、折曲部を介して連結され、紙製材料で形成されている一対のケーシング本体と、両方のケーシング本体の開口部側に張設してあり、物品の挟持面を構成する柔軟性シートまたは柔軟性フィルムとを備えており、両方のケーシング本体を折曲部で折り曲げて上記挟持面を向かい合わせることにより、上記柔軟性シートまたは柔軟性フィルム間で物品を挟持して、物品を上記収容空間部の中空位置で保持するようにしたことを特徴とする包装用容器の技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、2枚の弾性シートの間で被包装物を把持し、被包装物を包装容器の壁面から離した状態で保持する一対の緩衝部材からなる緩衝体であって、緩衝部材が、第1開口部が形成された第1板面と、第1板面の四辺において第1板面に対して垂直に設けられた第2板面とを有する第1緩衝部材と、第1板面上に配置され、第1開口部に対応する第2開口部を有する板状に形成され、弾性シートが少なくとも第2開口部を覆うように設けられた第2緩衝部材とを備え、一対の緩衝部材は、第2緩衝部材どうしが対向するように配置された状態で前記包装容器に収納されることを特徴とする緩衝体の技術が開示されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、一対の緩衝材を相対向させて両者間に被包装物を収容し保持する緩衝包装材の技術が開示されている。この緩衝包装材は、一対の緩衝材が、それぞれ、適度の剛性を有する合成樹脂発泡体を素材とし、相対向面に被包装物を収容する収容凹部を形成した保持部材と、柔軟な弾力性のある合成樹脂発泡体を素材とし、保持部材の収容凹部の裏面側で縦横の井桁状をなし、かつ裏面から側面に連続して各面で突出状をなすように凹溝に嵌め込んで装着した縦横2つずつの脚部材とよりなることを特徴としている。
【0006】
また、特許文献4には、段ボール製の中仕切部品に補強板を取り付けた梱包用部品の技術が開示されている。この梱包用部品は、差し違い状態に挿入され井桁形状に組み立てられた一対の保持板A及び保持板Bを有する中仕切部品に、一対の補強板A及び補強板Bを、それぞれの先端面が中仕切部品の四方向の外側面に当接又は近接するように、差し違いに挿入したことを特徴としている。
【0007】
また、特許文献5には、段ボール箱の内容物を一対の半割りケースで収容保護する包装用緩衝材の技術が開示されている。この包装用緩衝材は、半割りケースが、段ボールシートの対向二辺を折り起こして一対の側板部と底板部を形成した外シートと、段ボールシートの対向二辺を折り起こして一対の側板部と底板部を形成すると共に、当該底板部の自由端側の対向二辺を側板部と逆方向へ折り起こしてその底板部を支持する一対の脚板部を形成した内シートとで製箱される組立て箱で成り、当該組立て箱が、内シートの脚板部を外シートの側板部と平行させてその外シートの底板部に載せると共に、内シートの側板部と外シートの側板部を井の字の形に組むように相欠き継ぎして、四周面が井桁状に組み立てられることを特徴としている。
【0008】
また、特許文献6には、物品を載置する載置板を設け、載置板の包装箱の底板側に格子状体を設けた緩衝体の技術が開示されている。この緩衝体は、格子状体が、可撓性板材からなる縦緩衝板と、それに交差する可撓性板材からなる横緩衝板とによって形成されていることを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−130637号公報
【特許文献2】特開2007−290741号公報
【特許文献3】特開2000−159270号公報
【特許文献4】特開2003−341744号公報
【特許文献5】特開2000−142811号公報
【特許文献6】特開平8−91442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載された包装用容器や特許文献2に記載された緩衝体は、ケーシング本体や第1緩衝部材などが、紙製の段ボールを用いているため、湿度に弱く、衝撃吸収性やその信頼性が低下する場合があるといった課題があった。
また、段ボールとプラスチックフィルムなどの分離が難しいために、リサイクルされずに廃棄され、地球環境を保護する観点から改善する必要があった。
さらに、製造する際、段ボールにプラスチックフィルムなどを貼るために、熱シールや糊などを用いるので、製造原価のコストダウンを図ることができないといった課題があった。
【0011】
また、特許文献3〜6に記載された技術は、井の字状又は格子状に、部材を交差させる構造を有しており、本発明に関連する技術ではあるものの、上記の課題を解決することはできない。
すなわち、特許文献3に記載された緩衝包装材は、所定形状の被包装物にのみ対応する技術であり、また、金型費用などにより製造原価のコストダウンを図ることができないといった課題があった。また、特許文献4〜6に記載された梱包用部品、包装用緩衝材及び緩衝体は、紙製の段ボールを用いているため、上記の課題を解決することはできず、さらに、たとえば、気泡シートなどと比べると、衝撃吸収性などが低いといった課題があった。
【0012】
本発明は、以上のような問題を解決するために提案されたものであり、衝撃吸収性、リサイクル性、経済性、信頼性などを向上させることができる包装用緩衝体及び包装箱の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の包装用緩衝体は、衝撃吸収性を有するシートからなる基板部と、衝撃吸収性を有するシートからなり、基板部に対して井の字状に立設された支持板部とを備え、交差する一方の支持板部の中段部に、孔が形成され、交差する他方の支持板部の上端及び下端から、切り込み部が形成され、他方の支持板部の端部が、一方の支持板部の孔に装入され、孔及び切り込み部によって、交差する支持板部どうしが係合している構成としてある。
【0014】
また、本発明の包装箱は、上述した包装用緩衝体と、被包装物及び包装用緩衝体を収納する外箱とを備え、包装用緩衝体が、被包装物を挟むように保持する構成としてある。
【発明の効果】
【0015】
本発明の包装用緩衝体及び包装箱によれば、衝撃吸収性、リサイクル性、経済性、信頼性などを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の第一実施形態にかかる包装用緩衝体の概略斜視図を示している。
【図2】図2は、本発明の第一実施形態にかかる包装用緩衝体の概略分解斜視図を示している。
【図3】図3は、本発明の第一実施形態にかかる包装用緩衝体に用いられる気泡シートを説明するための概略拡大図であり、(a)は平らな部分の断面図を示しており、(b)は折り曲げられた状態の断面図を示している。
【図4】図4は、本発明の第二実施形態にかかる包装用緩衝体の概略斜視図を示している。
【図5】図5は、本発明の第二実施形態にかかる包装用緩衝体の概略分解斜視図を示している。
【図6】図6は、本発明の第一実施形態にかかる包装箱を説明するための概略斜視図を示している。
【図7】図7は、本発明の第一実施形態にかかる包装箱の包装状態を説明するための概略拡大断面図を示している。
【図8】図8は、本発明の第二実施形態にかかる包装箱を説明するための概略斜視図を示している。
【図9】図9は、本発明の第二実施形態にかかる包装箱の包装状態を説明するための概略拡大断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[包装用緩衝体の第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態にかかる包装用緩衝体の概略斜視図を示している。
また、図2は、本発明の第一実施形態にかかる包装用緩衝体の概略分解斜視図を示している。
図1及び図2において、本実施形態の包装用緩衝体1は、衝撃吸収性を有するシートからなる基板部2と、衝撃吸収性を有するシートからなり、基板部2に対して井の字状に立設された側板部3(すなわち、第一側板部31、第二側板部32、第三側板部33及び第四側板部34)とを備えている。また、本実施形態では、後述するように、衝撃吸収性を有するシートとして、三層(バックフィルム101、キャップフィルム102及びライナーフィルム103)からなる気泡シート100を用いている(図3(a)参照)。
この包装用緩衝体1(通常、一対の包装用緩衝体1)は、たとえば、図6及び図7に示すように、基板部2どうしが被包装物10を挟むように保持する状態で、外箱41に収納されることによって、被包装物10への衝撃を吸収する。
【0018】
(基板部)
基板部2は、ほぼ正方形状としてあり、被包装物10と当接し、被包装物10を保持する(図6及び図7参照)。
なお、基板部2は、上記の形状に限定されるものではない。たとえば、ほぼ矩形状であってもよく、また、被包装物10を保持することのできる形状であればよい。
また、基板部2の大きさは、側板部3によって囲まれた領域を覆う大きさとしてあるが、これに限定されるものではなく、たとえば、側板部3を覆い隠す大きさとしてもよい。
さらに、基板部2は、ほぼ平坦としてあるが、これに限定されるものではなく、たとえば、被包装物10の形状に対応する凹凸部(図示せず)などを有する構成としてもよい。
【0019】
本実施形態の基板部2は、一辺が第一側板部31とつながっており、第一側板部31に対してほぼ直角に折り曲げられている。すなわち、基板部2と第一側板部31は、一枚の気泡シート100からなり、基板部2が、第一側板部31に対して折り曲げられている。このようにすると、部品点数などが低減でき、製造原価のコストダウンを図ることができる。また、折曲げ構造を採用することにより、たとえば、接合部が離れるといった不具合を回避し、耐久性などを向上させることができる。
【0020】
なお、上記の折り曲げ部には、ヒートシール装置(図示せず)によって、シールライン104(バックフィルム101、キャップフィルム102及びライナーフィルム103を熱溶着したライン)が形成されている(図3(b)参照)。これにより、折り曲げた状態が容易に維持される。
また、基板部2及び第一側板部31は、気泡シート100を打ち抜くことにより、容易に形成することができる。
さらに、本実施形態では、基板部2に第一側板部31がつながっている構成としてあるが、これに限定されるものではなく、たとえば、図示してないが、基板部2に第一側板部31及び第四側板部34がつながっている構成としてもよい。
【0021】
また、基板部2は、第四側板部34側の辺(縁部)に連結部21が形成されている。連結部21は、第四側板部34の幅のほぼ1/2以上の幅を有しており、両側が面取りされており、さらに、基板部2と連結部21との境界に、上述したシールライン104が形成されている。この連結部21は、下方に折り曲げられ、二つ折りされた第四側板部34の気泡シート100どうしの間に装入される。
これにより、基板部2は、第四側板部34側の辺が第四側板部34と係合するので、大きな衝撃を受けた場合であっても、第四側板部34や基板部2が有する衝撃吸収能力、及び、上記の係合部による衝撃吸収能力によって、効果的に衝撃を吸収することができる。
【0022】
さらに、基板部2は、第二側板部32側の辺(縁部)及び第三側板部33側の辺(縁部)に連結部22が形成されている。連結部22は、第二側板部32や第三側板部33の幅のほぼ1/2以上の幅を有しており、両側が面取りされており、さらに、基板部2と連結部22との境界に、上述したシールライン104が形成されている。また、本実施形態では、連結部21と同じ形状の連結部に、ほぼ三等分するように二箇所に切欠221を形成することにより、各辺に三つの連結部22を形成してある。これらの連結部22は、下方に折り曲げられ、二つ折りされた第二側板部32や第三側板部33の気泡シート100どうしの間に装入される。
これにより、基板部2は、第二側板部32側の辺が第二側板部32と係合し、第三側板部33側の辺が第三側板部33と係合するので、大きな衝撃を受けた場合であっても、第二側板部32、第三側板部33及び基板部2が有する衝撃吸収能力、及び、上記の係合部による衝撃吸収能力によって、効果的に衝撃を吸収することができる。また、切欠221が形成されることにより、連結部22を装入する際、基板部2が上方に凸状に湾曲しやすくなり(すなわち、切欠221が縮み代として機能し)、連結部22を容易に装入することができる。さらに、切欠221が形成されることにより、基板部2は、連結部22の並設された方向に湾曲しやすくなり、衝撃を受けた際のクッション性を向上させることができる。
【0023】
なお、本実施形態では、第四側板部34側の辺(縁部)に連結部21を形成し、第二側板部32側の辺(縁部)及び第三側板部33側の辺(縁部)に連結部22を形成する構成としてあるが、これに限定されるものではない。たとえば、第四側板部34側の辺に連結部22を形成し、第二側板部32側の辺及び第三側板部33側の辺に連結部21を形成してもよい。また、上記の三辺に連結部21を形成してもよく、あるいは、上記の三辺に連結部22を形成してもよい。
また、切欠221は、それぞれ二箇所に形成してあるが、これに限定されるものではなく、たとえば、一箇所や三箇所以上であってもよい。
さらに、図示してないが、連結部21や連結部22を形成せず、基板部2の各辺と、第四側板部34、第二側板部32及び第三側板部33の上部とを熱溶着などによって接合してもよい。
【0024】
(側板部)
側板部3は、上述したように、第一側板部31、第二側板部32、第三側板部33及び第四側板部34とからなっている。
第一側板部31は、水平方向に細長いほぼ矩形状としてあり、その長さは、基板部2の一辺の長さより所定の長さ(たとえば、数cm)だけ長くしてある。また、第一側板部31は、基板部2の一辺の長さに対応する位置の中段部に、第一側板部31の幅の約1/2の長さを有するほぼ長円状の孔311が垂直方向に形成されている。
【0025】
ここで、好ましくは、第一側板部31は、二枚の気泡シート100を有しているとよい。すなわち、第一側板部31は、シールライン104を介して、下部が上方に折り返された構造としてある。このようにすると、水平方向(第一側板部31にとっては、座屈方向)からの衝撃に対して、衝撃吸収性を大幅に向上させることができる。
なお、本実施形態では、二つ折りされた上方の端部どうしは、接合されていないが、これに限定されるものではなく、たとえば、上方の端部どうしを熱融着などによって接合する構成としてもよい。このようにすると、機械的強度がさらに向上し、より大きな衝撃を吸収することができる。
また、本実施形態では、二枚の気泡シート100を有しているが、これに限定されるものではなく、たとえば、気泡シート100を三つ折りとし、三枚の気泡シート100を有する構成としてもよい。
【0026】
第四側板部34は、第一側板部31が基板部2とつながっている点を除いて、第一側板部31とほぼ同様な構成としてある。
また、第二側板部32及び第三側板部33は、孔341の代わりに切り込み部321及び切り込み部331を形成した点を除いて、第四側板部34とほぼ同様な構成としてある。すなわち、第二側板部32及び第三側板部33は、基板部2の一辺の長さに対応する位置の上端及び下端から、第二側板部32及び第三側板部33の幅の約1/4の長さを有する切り込み部321及び切り込み部331が垂直方向に形成されている。
【0027】
また、本実施形態では、衝撃吸収性を有するシートとして、三層(バックフィルム101、キャップフィルム102及びライナーフィルム103)からなる気泡シート100を用いている。気泡シート100を構成するバックフィルム101、キャップフィルム102及びライナーフィルム103の材料は、通常、ポリエチレン(10〜30重量%)とポリプロピレン(90〜70重量%)とからなる合成樹脂としてある。
このようにすると、湿度などの変化によって、機械的強度が低下することもないので、衝撃吸収の信頼性を向上させることができる。また、気泡シート100は、断熱性を有しているので、包装用緩衝体1の付加価値を向上させることができる。さらに、素材が全て樹脂製(上述したように、ポリエチレンやポリプロピレンなどの単一素材が用いられる。)であることによって、廃棄する際、たとえば、紙と樹脂とを分ける必要がなく、リサイクル性を大幅に向上させることができる。これにより、環境破壊や二酸化炭素の排出を抑制することができる。
【0028】
また、気泡シート100の機械的強度などは、バックフィルム101、キャップフィルム1020及びライナーフィルム103の厚さなどによって容易に調整できる。また、合成樹脂の種類や配合などを変更することにより、気泡シート100の柔軟性(あるいは、剛性)や滑り性などを任意に調整することができる。したがって、包装用緩衝体1は、適度な弾性を有することによって、優れた(特に、柔らかい)緩衝性(たとえば、気泡シートや発泡体(図示せず)を敷き詰めたような緩衝性)を発揮することができる。
さらに、気泡シート100は、プチプチ(登録商標)として広く普及しており、経済性などに優れている。
なお、衝撃吸収性を有するシートとして、気泡シート100を用いているが、これに限定されるものではない。たとえば、板状やシート状の発泡体(発泡スチロールやスポンジなど)、あるいは、プラスチック段ボールなどを用いてもよい。すなわち、シートとして、気泡シート100、プラスチック段ボール、発泡体、又は、これらの複合材などを用いてもよい。
【0029】
次に、上記包装用緩衝体1の組立て方などについて説明する。
まず、第三側板部33は、通常、第四側板部34側の端部が、切り込み部331の底部付近を折り目として(すなわち、第三側板部33の端部の幅寸法が、ほぼ長円状の孔341の長手寸法より短くなるように)、三つ折りされ(図示せず)、この状態で、第三側板部33の端部は、第四側板部34の孔341に装入される。上記の三つ折りによって、第三側板部33の端部は、第四側板部34の孔341に容易に装入される。続いて、三つ折りされた端部が、気泡シート100の復元力によって元の状態に戻り、孔341及び切り込み部331によって、交差した第三側板部33と第四側板部34とが係合する。
このようにすると、たとえば、上述した特許文献4などのように切り込み部どうしを係止した場合と比べると、垂直方向の衝撃などを受けでも、第三側板部33と第四側板部34との係合状態が解除されることはないので、衝撃吸収の信頼性などを向上させることができる。また、水平方向の衝撃などを受けても、切り込み部331や孔341は、垂直方向にほぼ対称形状としてあるので、偏って応力が作用するといった不具合を回避でき、衝撃吸収性を向上させることができる。さらに、切り込み部どうしを係止した場合と比べると、切り込み部331や孔341による係合は、強固に(あるいは、緩まないように)接合されるので、係合部による衝撃吸収性を向上させることができる。
【0030】
上記とほぼ同様にして、孔341及び切り込み部321による係合によって、第二側板部32と第四側板部34は交差し、孔311及び切り込み部331による係合によって、第三側板部33と第一側板部31は交差し、孔311及び切り込み部321による係合によって、第二側板部32と第一側板部31は交差する。
なお、係合させる順番などは、特に限定されるものではない。
【0031】
次に、基板部2の連結部22が、第二側板部32や第三側板部33の気泡シート100どうしの間に装入され、さらに、連結部21が第四側板部34の気泡シート100どうしの間に装入される。すなわち、基板部2と、第二側板部32、第三側板部33及び第四側板部34は、連結部21や連結部22が装入されることにより接合されている。
このようにすると、熱溶着や接着などによって接合する場合と比べると、衝撃を受けた際、接合部自体が、緩衝機能を有しているので、衝撃吸収性を向上させることができる。また、接着などを用いる場合と比べると、容易に製造することができ、製造原価のコストダウンを図ることができる。さらに、連結部21や連結部22を装入することにより、側板部3の機械的強度などを向上させることができる。
なお、基板部2と側板部3の接合は、上記の組立方式に限定されるものではない。したがって、熱溶着、接着、テープなどを用いてもよい。
【0032】
以上説明したように、本実施形態の包装用緩衝体1によれば、上下方向や水平方向などの衝撃に対して、優れた(特に、柔らかい)衝撃吸収性(たとえば、気泡シートや発泡体(図示せず)を敷き詰めたような衝撃吸収性)を実現することができる。また、リサイクル性、経済性、信頼性などを向上させることができる。
【0033】
[包装用緩衝体の第二実施形態]
図4は、本発明の第二実施形態にかかる包装用緩衝体の概略斜視図を示している。
また、図5は、本発明の第二実施形態にかかる包装用緩衝体の概略分解斜視図を示している。
図4及び図5において、本実施形態の包装用緩衝体1aは、上述した第一実施形態の包装用緩衝体1と比べると、基板部2の代わりに、基板部2aを備えた点、及び、基板部2aと対向する基板部2a´を備えた点などが相違する。なお、本実施形態の他の構成は、包装用緩衝体1とほぼ同様としてある。
したがって、図4、5において、図1、2と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0034】
基板部2aは、第一実施形態の基板部2と比べると、連結部21の代わりに、三つの連結部22を形成した点などが相違する。なお、他の構成は、基板部2とほぼ同様としてある。
また、第一側板部31aは、第一実施形態の第一側板部31と比べると、下部のほぼ中央に、基板部2a´の真中の連結部22を装入するスリット312が形成された点などが相違する。さらに、第一実施形態と同様に、基板部2a及び第一側板部31aは、一枚の気泡シート100から形成されている。なお、他の構成は、第一側板部31とほぼ同様としてある。
【0035】
基板部2a´及び第四側板部34aは、上記基板部2a及び第一側板部31aと同じ構成としてあり、基板部2aに対して180°反転した状態で組み立てられる。これにより、部品の共有化などを図ることができ、製造原価のコストダウンを図ることができる。
なお、第四側板部34aは、スリット312に対応して、スリット342が形成されている。
【0036】
第二側板部32a及び第三側板部33aは、第一実施形態の第二側板部32及び第三側板部33と比べると、下部のほぼ中央に、基板部2a´の真中の連結部22を装入するスリット322及びスリット332が形成された点などが相違する。なお、他の構成は、第二側板部32及び第三側板部33とほぼ同様としてある。
【0037】
次に、上記包装用緩衝体1aの組立て方などについて説明する。
まず、第一実施形態とほぼ同様にして、孔341及び切り込み部331による係合によって、第三側板部33aと第四側板部34aは交差し、孔341及び切り込み部321による係合によって、第二側板部32aと第四側板部34aは交差し、孔311及び切り込み部331による係合によって、第三側板部33aと第一側板部31aは交差し、孔311及び切り込み部321による係合によって、第二側板部32aと第一側板部31aは交差する。
【0038】
次に、基板部2a´の連結部22(各辺の真中の連結部22)が、スリット322、スリット332及びスリット312に装入され、この際、残りの連結部22(各辺の両側の連結部22)が、側板部3aで囲まれた領域に収められる。すなわち、基板部2a´と、第二側板部32a、第三側板部33a及び第一側板部31aは、それぞれ連結部22が装入されることにより接合されている。
続いて、基板部2aの連結部22(第二側板部32a側及び第三側板部33a側の連結部22)が、第二側板部32aや第三側板部33aの気泡シート100どうしの間に装入される。さらに、連結部22(第四側板部34a側の真中の連結部22)が、スリット342に装入され、この際、残りの連結部22(第四側板部34a側の両側の連結部22)が、側板部3aで囲まれた領域に収められる。すなわち、基板部2aと、第二側板部32a、第三側板部33a及び第一側板部31aは、上述したように連結部22が装入されることにより接合されている。
このようにすると、包装用緩衝体1aは、ほぼ矩形箱状となるので、機械的強度が大幅に向上し、より大きな衝撃を吸収することができる。
【0039】
なお、側板部3aで囲まれた領域に収められた連結部22は、上記の構成に限定されるものではなく、たとえば、側板部3aで囲まれた領域の外側に位置する状態で折り曲げられてもよい。
また、基板部2a´を底板のように機能させるために、基板部2a´の連結部22(各辺の両側の連結部22)を、側板部3aで囲まれた領域に収め、さらに、基板部2a´が下方に開かないように、第二側板部32a、第三側板部33a及び第一側板部31aと熱溶着などによって接合してもよい。このようにすると、包装用緩衝体1aは、回動する上蓋(基板部2a)を有する内箱として用いられることが可能となり、包装用緩衝体1aの付加価値を向上させることができる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態の包装用緩衝体1aによれば、第一実施形態の包装用緩衝体1とほぼ同様の効果を奏するとともに、機械的強度が大幅に向上し、より大きな衝撃を吸収することができる。さらに、基板部2を開けて、被包装物10を収納する内箱として用いることもでき、付加価値を向上させることができる。
【0041】
[包装箱の第一実施形態]
また、本発明は、包装箱の発明としても有効である。
図6は、本発明の第一実施形態にかかる包装箱を説明するための概略斜視図を示している。
また、図7は、本発明の第一実施形態にかかる包装箱の包装状態を説明するための概略拡大断面図を示している。
図6及び図7において、本実施形態の包装箱4は、被包装物10を挟むように保持する一対の上述した包装用緩衝体1と、被包装物10及び一対の包装用緩衝体1を収納する外箱41とを備えた構成としてある。
【0042】
外箱41は、段ボール製の箱であり、被包装物10を挟むように保持した一対の包装用緩衝体1が嵌入される形状としてある。すなわち、外箱41は、内部側壁が、収納された包装用緩衝体1の第一側板部31、第二側板部32、第三側板部33及び第四側板部34の水平方向の両端部と当接し、また、外箱41の上蓋が閉められる際、この上蓋が、上側の包装用緩衝体1の第一側板部31、第二側板部32、第三側板部33及び第四側板部34を下方に所定の距離(たとえば、数mm〜十数mm)だけ押圧する形状としてある。
このようにすると、一対の包装用緩衝体1がガタつくことなく外箱41に収まり、かつ、対向する一対の基板部2が、被包装物10を押圧した状態で挟むように保持する。これにより、包装箱4は、上述した包装用緩衝体1の優れた衝撃吸収性などを発揮することができる。
【0043】
なお、本実施形態では、外箱41の材質を(紙製の)段ボールとしてあるが、これに限定されるものではなく、たとえば、プラスチック段ボールや気泡シート100などとしてもよい。このようにすると、湿度などの悪影響を受けることなく、被包装物10をハンモック包装することができる。また、気泡シート100を用いた場合、包装用緩衝体1及び外箱41が同一の素材からなるので、リサイクル性をさらに向上させることができる。
さらに、本実施形態では、包装用緩衝体1を備える構成としてあるが、これに限定されるものではなく、たとえば、包装用緩衝体1の代わりに、包装用緩衝体1aを備える構成としてもよい。
【0044】
次に、上記包装箱4の使用方法などについて説明する。
まず、外箱41に、基板部2を上向きとして包装用緩衝体1を嵌入する。次に、上記基板部2のほぼ中央に、被包装物10を載置する。続いて、外箱41に、基板部2を下向きとして包装用緩衝体1を嵌入し、上蓋を閉める。このように、包装箱4によれば、被包装物10を短時間で、かつ、容易に包装することができる。
また、被包装物10は、図7に示すように、一対の包装用緩衝体1の基板部2によって、ハンモック状態で包装され、包装用緩衝体1による優れた衝撃吸収の効果を受けることができる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の包装箱4によれば、包装用緩衝体1が、上下方向や水平方向の衝撃などに対して、優れた衝撃吸収性を発揮することができ、包装箱としての衝撃吸収性を大幅に向上させることができる。さらに、不定形の緩衝材(図示せず)を敷き詰めるようにして使用する場合と比べると、作業性や衝撃吸収の信頼性(たとえば、敷き詰めが不十分であるといった人為的ミスが排除されることによる信頼性)を大幅に向上させることができ、また、緩衝材の使用料を低減することができる。
【0046】
[包装箱の第二実施形態]
図8は、本発明の第二実施形態にかかる包装箱を説明するための概略斜視図を示している。
また、図9は、本発明の第二実施形態にかかる包装箱の包装状態を説明するための概略拡大断面図を示している。
図8及び図9において、本実施形態の包装箱4aは、上述した包装箱4と比べると、被包装物10を収納する内箱として包装用緩衝体1aを備えている点、及び、気泡シート100からなる外箱41aを備えている点などが相違する。なお、本実施形態の他の構成は、包装箱4とほぼ同様としてある。
したがって、図8、9において、図6、7と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0047】
外箱41aは、気泡シート100からなる箱であり、断面正方形の筒部43と、この筒部43の上下方向にそれぞれ延設された四つの正方形部42とからなっている。また、包装箱4aは、外箱41a、包装用緩衝体1及び包装用緩衝体1aが気泡シート100からなるので、リサイクル性などを向上させることができる。
【0048】
筒部43は、被包装物10を挟むように保持する一対の包装用緩衝体1や、被包装物10の収納された包装用緩衝体1aが嵌入される形状としてある。また、筒部43の高さは、包装用緩衝体1、包装用緩衝体1a及び包装用緩衝体1の各高さの合計とほぼ同じとしてある。このようにすると、一対の包装用緩衝体1や包装用緩衝体1aがガタつくことなく外箱41aに収まり、かつ、対向する一対の基板部2が、被包装物10の収納された包装用緩衝体1aを挟むように保持する。これにより、包装箱4aは、上述した包装用緩衝体1や包装用緩衝体1aの優れた衝撃吸収性などを発揮することができる。
【0049】
また、四つの正方形部42は、正方形部42どうしの境界に角部シールライン421が形成され、筒部43との境界に面部シールライン422が形成され、さらに、正方形部42の対角線上に対角シールライン423が形成されている。この四つの正方形部42は、角部シールライン421及び面部シールライン422を山折りとし、対角シールライン423を谷折りとすることにより、外箱41aの底板や上蓋となる。このようにすると、テープなどを使用しなくても済み(必要に応じて、使用してもよい。)、また、上蓋の開閉を容易に行うことができる。
なお、底板や上蓋の構成は、上記に限定されるものではなく、たとえば、図示してないが、係止機能を有する観音扉のような構成としてもよい。
【0050】
次に、上記包装箱4aの使用方法などについて説明する。
まず、外箱41aに、基板部2を上向きとして包装用緩衝体1を嵌入する。次に、基板部2aを開けて、被包装物10を包装用緩衝体1aに収納し、この包装用緩衝体1aを外箱41aに嵌入する。続いて、外箱41に、基板部2を下向きとして包装用緩衝体1を嵌入し、上蓋を閉める。この上蓋は、上述したように、四つの正方形部42であり、角部シールライン421及び面部シールライン422を山折りとし、対角シールライン423を谷折りとすることにより閉まる。このように、包装箱4aによれば、被包装物10を短時間で、かつ、容易に包装することができる。
また、被包装物10は、図9に示すように、一対の包装用緩衝体1や包装用緩衝体1aによる優れた衝撃吸収の効果を受けることができる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態の包装箱4aによれば、包装用緩衝体1や包装用緩衝体1aが、上下方向や水平方向の衝撃などに対して、優れた衝撃吸収性を発揮することができ、包装箱としての衝撃吸収性を大幅に向上させることができる。また、外箱41a、包装用緩衝体1及び包装用緩衝体1aが気泡シート100からなるので、リサイクル性などを向上させることができる。さらに、正方形部42からなる上蓋を容易に開閉することができるので、たとえば、工場における通い箱などとして有効に使用される。
【0052】
以上、本発明の包装用緩衝体及び包装箱について、好ましい実施形態などを示して説明したが、本発明に係る包装用緩衝体及び包装箱は、上述した実施形態などにのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、包装用緩衝体1などにおいて、第一側板部31と第四側板部34との間や、第二側板部32と第三側板部33との間に、第二側板部32とほぼ同様の構造を有するリブ(図示せず)を設けてもよい。このようにすると、包装用緩衝体1の機械的強度がさらに向上するので、より大きな衝撃を吸収することができる。
【符号の説明】
【0053】
1、1a 包装用緩衝体
2、2a、2a´ 基板部
3、3a 側板部
4、4a 包装箱
10 被包装物
21 連結部
22 連結部
31、31a 第一側板部
32、32a 第二側板部
33、33a 第三側板部
34、34a 第四側板部
41、41a 外箱
42 正方形部
43 筒部
100 気泡シート
101 バックフィルム
102 キャップフィルム
103 ライナーフィルム
104 シールライン
221 切欠
311 孔
312 スリット
321 切り込み部
322 スリット
331 切り込み部
332 スリット
341 孔
342 スリット
421 角部シールライン
422 面部シールライン
423 対角シールライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝撃吸収性を有するシートからなる基板部と、
衝撃吸収性を有するシートからなり、前記基板部に対して井の字状に立設された支持板部と
を備え、
交差する一方の前記支持板部の中段部に、孔が形成され、交差する他方の前記支持板部の上端及び下端から、切り込み部が形成され、前記他方の支持板部の端部が、前記一方の支持板部の孔に装入され、前記孔及び前記切り込み部によって、前記交差する支持板部どうしが係合していることを特徴とする包装用緩衝体。
【請求項2】
前記シートが、気泡シート、プラスチック段ボール、発泡体、又は、これらの複合材であることを特徴とする請求項1に記載の包装用緩衝体。
【請求項3】
前記基板部と、対向する一対の前記支持板部の少なくとも一つとが、一枚の前記シートからなり、前記対向する一対の支持板部の少なくとも一つが、前記基板部に対して折り曲げられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の包装用緩衝体。
【請求項4】
前記支持板部が、少なくとも二枚の前記シートを有し、前記基板部の縁に形成された連結部が、折り曲げられて、前記シートどうしの間に装入されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の包装用緩衝体。
【請求項5】
前記連結部に、一又は二以上の切欠を形成したことを特徴とする請求項4に記載の包装用緩衝体。
【請求項6】
上述した請求項1〜5のいずれか一項に記載の包装用緩衝体と、
被包装物及び前記包装用緩衝体を収納する外箱と
を備え、
前記包装用緩衝体が、前記被包装物を挟むように保持することを特徴とする包装箱。
【請求項7】
前記外箱の素材が気泡シートであることを特徴とする請求項6に記載の包装用緩衝体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−168291(P2011−168291A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32270(P2010−32270)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000199979)川上産業株式会社 (203)
【Fターム(参考)】