説明

包装袋及び縦形製袋充填包装機

【課題】 合掌シール部を横断して意図した方向へ円滑に開封することのできる包装袋を提供する。
【解決手段】 フィルムを合掌貼りして合掌シール部2を形成するとともに、当該合掌シール部2を横断して開封する構成の袋状本体1を備える。超音波シール装置110と受け部112は、合掌シール部2の基部2bを溶融押圧して渡り部10を形成する。この渡り部10は、合掌シール部2の基部2bにおけるフィルムの両端部Fa、Fbの境界部分2aを平坦にしたものである。袋状本体1の側縁部には開封用の切れ目5が形成されており、この切れ目5から直線状に切り進めて形成される開封ラインが、合掌シール部2を横断する。渡り部10は、開封ラインが横断する部位に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、縦方向に合掌シール部を備えた包装袋に係り、特に開封時に合掌シール部を横断して引き裂かれる包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
図6(a)に示すように、フィルムの両端部を合掌貼りして、縦方向に合掌シール部2を形成した袋状本体1からなる包装袋には、開封時に、一方の側縁部に設けられた切れ目5から他方の側縁部に向かって横方向に引き裂いて開封される構成のものがある。この種の包装袋は、開封に際して開封ラインが途中に存在する合掌シール部2を乗り越えなければならない。
【0003】
しかしながら、袋状本体1の合掌シール部2は、フィルムを二重に貼り合わせているため、厚みが増しており開封に際して抵抗が大きい。しかも、合掌シール部2の基部におけるフィルムの両端部の境界部分に不連続部があるため、この不連続部において図6(b)に示すように、袋状本体1の開封ラインが、横方向に円滑に進まず、意図しない方向へ開封ラインが向かってしまうおそれがあった。このような合掌シール部2の開封性の悪さを解消するために、従来から種々の提案がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1のシートは、基材フィルム層と熱融着性樹脂層とを含む多層フィルムからなり、基材フィルム層に合掌シール帯のサイドY側の帯片の基部側の領域から袋の背面のサイドY側の反面に若干入り込む領域にかけて傷帯域を設けている。この傷帯域は、回転刃による刀傷、ピンによる刺し傷、レーザー光による溶融傷などにより傷を付した帯域である。特許文献1の易開封性合掌貼り袋では、合掌シール帯を容易に乗り越えるために、この傷帯域に対して開封ラインを進めようとしている。
【特許文献1】特開平11−227800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の易開封性合掌貼り袋は、シートが重ね合わされたX側帯片とY側帯片との境界部分にシートの不連続部が残ったままである。このため易開封性合掌貼り袋を開封する場合、たとえ開封ラインが傷帯域内を進んだとしても、この不連続部分において進行が一旦途切れてしまうことになり、合掌シール帯の開封性の悪さを完全に解消することができない。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたもので、合掌シール部を有する包装袋において、容易に製作でき、密封性を確保しつつ、合掌シール部を横断して意図した方向へ円滑に開封することのできる包装袋の提供を第1の目的とする。また、かかる包装袋を容易に製造することのできる縦形製袋充填包装機の提供を第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記第1の目的を達成するために、フィルムの両端部を合掌貼りして合掌シール部を形成するとともに、当該合掌シール部を横断して開封する構成の袋状本体からなる包装袋であって、
合掌シール部の基部を溶融押圧して、当該基部におけるフィルムの両端部の境界部分を平坦にする渡り部を形成したことを特徴とする。
かかる構成のように、合掌シール部の基部において、フィルムの両端部の境界部分を平坦にする渡り部を形成しておけば、この平坦状の渡り部を通って開封ラインが合掌シール部を横断することで、引っ掛かりなく円滑に合掌シール部を横断して包装袋を開封することが可能となり、しかもその開封ラインを意図した方向へ直線的に切り進めることができる。しかも、渡り部は、溶融押圧するだけで容易に形成することができるので、生産性も高く、安価な製造コストで製作が可能である。
【0008】
また、袋状本体の側縁部に開封用の切れ目が形成されるとともに、当該切れ目から直線状に切り進めて形成される開封ラインが、合掌シール部を横断する構成の包装袋にあっては、上記渡り部を、開封ラインが横断する部位に形成することが好ましい。
これにより、直線状に切り進められてきた開封ラインが、自然に渡り部へ至り、渡り部に沿って円滑に進行するので、いっそう円滑に合掌シール部を横断して包装袋を開封することが可能であるとともに、その開封ラインを意図した方向へ直線的に切り進めることができる。
【0009】
ここで、渡り部は、フィルムの両端部の境界部分を平坦な線条として形成したものであり、合掌シール部の横断直交方向にそれぞれ間隙をあけて複数本形成してあることが好ましい。
このように構成すれば、開封ラインの進行方向が若干ずれても、並べて形成した複数本の線条のいずれかに開封ラインが到達して、当該線条に沿って円滑に合掌シール部を横断することができる。
【0010】
また、上記第2の目的を達成するために、本発明の縦形製袋充填包装機は、外周面に帯状のフィルムが巻きつけ筒状に成形するための製袋筒と、当該製袋筒の外周面に巻き付けられたフィルムの両端部を合掌貼りして合掌シール部を形成する縦シーラと、を含む縦形製袋充填包装機であって、
縦シーラにより形成された合掌シール部を挟んで、筒状のフィルムの外側に溶融押圧手段を設けるとともに、筒状のフィルムの内側に受け部を設け、これら溶融押圧手段と受け部とが協働して、合掌シール部の基部を溶融押圧し、当該基部におけるフィルムの両端部の境界部分を平坦にする渡り部を形成することを特徴とする。
このような構成を備えた縦形製袋充填包装機によれば、溶融押圧手段と受け部とにより、合掌シール部へ容易に渡り部を形成することができる。
【0011】
ここで、溶融押圧手段を超音波シール装置によって構成すれば、平滑度や厚みが高精度に調整された渡り部を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明の包装袋によれば、合掌シール部の基部において、フィルムの両端部の境界部分を平坦にする渡り部を形成しておくだけの簡易な構成をもって、この渡り部を通って開封ラインが合掌シール部を横断し、引っ掛かりなく円滑に包装袋を開封することが可能となり、しかもその開封ラインを意図した方向へ直線的に切り進めることができる。
また、本発明の縦形製袋充填包装機によれば、溶融押圧部と受け部とにより、合掌シール部へ容易に渡り部を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
〔包装袋の構成〕
図1は、本発明の実施形態に係る包装袋を概略的に示す図であり、(a)は斜視図、(b)は正面図である。
同図に示すように、本実施形態の包装袋は、シート状のフィルムを袋状に形成してなる袋状本体1をもって構成されている。この袋状本体1は、シート状のフィルムの両端部を合掌状態に重ね合わせて熱シールすることで縦方向に延びる合掌シール部2が形成されており、さらに上下の端部を熱シールして横シール部3、4が形成されている。なお、袋状本体1の内部には、下端の横シール部4が形成された後、製品が充填され、続いて上端の横シール部3が形成されて密封される。
また、合掌シール部2は、袋状本体1の表面と接触するように横方向へ折り倒してある。
【0014】
また、袋状本体1の一方の側縁部には、開封用の切れ目5が形成してある。この切れ目5は、合掌シール部2が折り倒された方向とは逆側(図1中では左側)にある側縁部に形成されている。詳しくは、袋状本体1の当該側縁部を一部熱シールして融着領域6を形成し、この融着領域6に側端縁から切り込みを入れて切れ目5が形成されている。
なお、図1に示す切れ目5は、V字形状のノッチとして描かれているが、U字形状や矩形状でもよく、また単に切込線が横方向に切り込んであるだけもよい。
【0015】
図2は、本実施形態に係る包装袋の要部である渡り部を拡大して示す図であり、(a)は正面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。また、図3(a)は従来の縦シール部を示す拡大横断面図、同図(b)は従来の縦シール部における開封時の問題点を示す拡大横断面図、同図(c)は本実施形態における渡り部の拡大横断面図、同図(d)は本実施形態における渡り部の作用を示す拡大横断面図である。
【0016】
図2に示すように、本実施形態の袋状本体1は、合掌シール部2の基部2bを含む領域に渡り部10が形成してある。この渡り部10は、合掌シール部2の基部2bを含む領域を溶融押圧して、当該基部2bにおけるフィルムの両端部の境界部分2aを平坦にしたものである。
すなわち、図3(a)に示すように合掌シール部2の基部2b内面にあるフィルムの両端部FaとFbの境界部分2aでは、フィルムの両端部Fa、Fbが不連続部となっている。同図(b)に示すように、境界部分2aにある不連続部に開封ラインが到達すると、当該不連続部で引き裂き抵抗が大きくなるため、意図しない方向へ開封ラインが進んで袋状本体1が開封され、その結果、内容物が溢れ落ちてしまうおそれがある。
本実施形態の袋状本体1は、図3(c)に示すように、渡り部10によってフィルムの両端部Fa、Fbの境界部分2aが平坦に形成され、フィルムの両端部Fa、Fbの不連続部を無くしている。このため図3(d)に示すように、フィルムの両端部Fa、Fbの境界部分2aにおいても、渡り部10を通って開封ラインが進むことで引き裂き抵抗がなく、円滑に意図した方向へ円滑に袋状本体1を開封することが可能となる。
【0017】
ここで、渡り部10は、袋状本体1の側縁部に設けた切れ目5から横方向へ直線状に切り進めて形成される開封ラインが横断する部位に形成してある。
また、渡り部10は、図2(a)(b)に示すように、溶融押圧して平坦状に形成された線条であって、複数本形成されている。これら各線条(渡り部10)は、合掌シール部2の基部を横断する方向へ延びている。また、複数本の各線条(渡り部10)は、合掌シール部2の横断直交方向にそれぞれ間隙をあけて形成してある。渡り部10の溶融押圧時には、渡り部10を押し潰した分のフィルム材料が各渡り部10の間隙11に押し出される。このため、間隙11は盛り上がった壁を形成する。そして、包装袋の開封時には、各線条のいずれかに到達した開封ラインが、この盛り上がった壁に案内されて線条に沿って進行する。よって、意図しない方向へ開封ラインが進むおそれがない。しかも、線条の渡り部10を一定の幅領域にわたり複数本並べて形成してあるので、切れ目5から横方向に切り進んできた開封ラインが多少ずれた方向に進行しても、いずれかの線条(渡り部10)に到達して、円滑に合掌シール部2を切り裂くことが可能である。
【0018】
〔縦形製袋充填包装機〕
次に、上述した構成の包装袋の製造に適した縦形製袋充填包装機の実施形態について説明する。
図4は、本実施形態に係る縦形製袋充填包装機を概略的に示す斜視図であり、図5は、図4のB−B線断面を拡大して示す図である。
図4に示すように、縦形製袋充填包装機100は、フィルムリール101と、製袋筒102と、繰出しベルト103と、縦シーラ104と、横シーラ105と、超音波シール装置(溶融押圧手段)110とを含む構成である。
【0019】
縦形製袋充填包装機100のフィルムリール101には、帯状のフィルムFが巻回してある。フィルムFは、搬送ローラ等によってフィルムリール101から繰り出され、所定の搬送経路を経由して搬送され、フォーマ102a及び製袋筒102に案内される。
【0020】
製袋筒102は、円筒状に形成されており、フォーマ102aの内側で垂直方向に延在している。この製袋筒102の側方には、繰出しベルト103及び縦シーラ104が設けられている。フォーマ102aに案内されたフィルムFは、製袋筒102の外周面に巻きつけられて、繰り出しベルト103によって下方へ搬送される。この搬送時には、フィルムFの両端部Fa、Fbが合掌するように重ね合わされて、縦シーラ104により熱シールされる。これにより合掌シール部2を備えた筒状のフィルムFに成形される。
【0021】
筒状のフィルムFは、製袋筒102の下方において搬送方向と直交するように設けられた一対の横シーラ105の間に搬送される。筒状のフィルムFは、横シーラ105に挟み込まれて底部が幅方向に熱シールされ、上部が開口した筒状のフィルムFに製袋される。この製袋後に、製袋筒102内から被充填物が排出され、筒状のフィルムF内に充填される。
【0022】
被充填物の充填が終了すると、上部が開口した筒状のフィルムFは下方へ繰り出され、横シーラ105により筒状のフィルムFの上部が幅方向に熱シールされるとともに、横シーラ105に付設したカッター106により熱シール部のほぼ中央が切断される。
以上のようにして、縦形製袋充填包装機100は、被充填物を充填したピロータイプの袋状本体1を完成することができる。
【0023】
超音波シール装置110は、縦形製袋充填包装機100の縦シーラ104の下方に配置され、先端部分が製袋筒102と対向している。この超音波シール装置110の先端部分111は、内部の振動子により超音波を発生し、搬送されるフィルムFをこの超音波をもって溶融することができる。このように超音波シール装置110をもってフィルムFを溶融押圧することで、平滑度や厚みが高精度に調整された渡り部10を容易に形成することができる。
【0024】
また、縦形製袋充填包装機100は、図5(a)に示すように、超音波シール装置110の先端部分111と対向する製袋筒102の外周面に受け部112が設けられている。この受け部112は、金属板をフィルムFの繰出し方向に凹凸状に形成したものであり、超音波シール装置110の先端部分111と協働して、筒状のフィルムFに線条の渡り部10を形成する受け台となる。
【0025】
包装袋に製袋されるフィルムFは、縦シーラ104において合掌シール部2が形成された後、渡り部10の形成予定領域が受け部112上に配置される。その後、図5(b)に示すように、超音波シール装置110の先端部分111が受け部112に向かって移動し、合掌シール部2の基部2bを含む領域を押圧し、さらに超音波によりフィルムFを溶融することで、合掌シール部2の基部2b内面にあるフィルムの両端部Fa、Fbの境界部分2aが平坦になった複数の渡り部10が形成される。
【0026】
以上のように本実施形態の縦形製袋充填包装機100は、渡り部10を容易に形成することができる。このような溶融押圧手段(超音波シール装置110)による渡り部10の形成は、特許文献1に開示されたシートに傷帯域を設ける場合と比べて、押圧力等の調整が容易である。
なお、渡り部10を形成する溶融押圧手段は、超音波シール装置110に限定されるものではなく、例えば、フィルムを熱で溶融するヒータブロックにて構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係る包装袋を概略的に示す図であり、(a)は斜視図、(b)は正面図である。
【図2】本実施形態に係る包装袋の要部である渡り部を拡大して示す図であり、(a)は正面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図3】(a)は従来の縦シール部を示す拡大横断面図、同図(b)は従来の縦シール部における開封時の問題点を示す拡大横断面図、同図(c)は本実施形態における渡り部の拡大横断面図、同図(d)は本実施形態における渡り部の作用を示す拡大横断面図である。
【図4】本実施形態に係る縦形製袋充填包装機を概略的に示す斜視図である。
【図5】図4のB−B線断面を拡大して示す図である。
【図6】従来の包装袋を概略的に示す図であり、(a)は斜視図、(b)は開封時の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1:袋状本体、2:合掌シール部、2a:境界部分、2b:基部、3:横シール部(上端部)、4:横シール部(下端部)、5:切れ目、6:融着領域、
10:渡り部(線条)、11:間隙、
100:縦形製袋充填包装機、101:フィルムリール、102:製袋筒、102a:フォーマ、103:繰出しベルト、104:縦シーラ、105:横シーラ、106:カッター、
110:超音波シール装置、111:先端部分、112:受け部
F:フィルム、Fa、Fb:両端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムの両端部を合掌貼りして合掌シール部を形成するとともに、当該合掌シール部を横断して開封する構成の袋状本体からなる包装袋であって、
前記合掌シール部の基部を溶融押圧して、当該基部におけるフィルムの両端部の境界部分を平坦にする渡り部を形成したことを特徴とする包装袋。
【請求項2】
前記袋状本体の側縁部に開封用の切れ目が形成されるとともに、当該切れ目から直線状に切り進めて形成される開封ラインが、前記合掌シール部を横断する構成の請求項1記載の包装袋であって、
前記渡り部を、前記開封ラインが横断する部位に形成したことを特徴とする包装袋。
【請求項3】
前記渡り部は、フィルムの両端部の境界部分を平坦にする線条であって、前記合掌シール部の横断直交方向にそれぞれ間隙をあけて複数本形成してあることを特徴とする請求項1又は2の包装袋。
【請求項4】
外周面に帯状のフィルムが巻きつけ筒状に成形するための製袋筒と、当該製袋筒の外周面に巻き付けられたフィルムの両端部を合掌貼りして合掌シール部を形成する縦シーラと、を含む縦形製袋充填包装機であって、
前記縦シーラにより形成された合掌シール部を挟んで、筒状のフィルムの外側に溶融押圧手段を設けるとともに、筒状のフィルムの内側に受け部を設け、これら溶融押圧手段と受け部とが協働して、前記合掌シール部の基部を溶融押圧し、当該基部におけるフィルムの両端部の境界部分を平坦にする渡り部を形成することを特徴とする縦形製袋充填包装機。
【請求項5】
前記溶融押圧手段は、超音波シール装置によって構成されていることを特徴とする請求項4の縦形製袋充填包装機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−214907(P2009−214907A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−59863(P2008−59863)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(000151461)株式会社東京自働機械製作所 (106)
【Fターム(参考)】