説明

化学照射線硬化性コーティングを施与するためのスプレーガン及び方法

本発明は、スプレーノズル及び少なくとも一つの化学照射線出口を有する、コーティングを施与するためのスプレーガンにおいて、少なくとも一つの化学照射線出口が外部に配置されており、かつ該照射出口及びスプレーノズルが、コーティングされるべき基体に同時に向けることができることを特徴とするスプレーガン、及び化学照射線により少なくとも部分的に硬化可能であるところのコーティング組成物を施与する方法に関する。本発明に従うスプレーガンは、たとえ、化学照射線により開始と硬化反応の実際の開始との間の誘導期間がないとしても、化学照射線硬化性コーティング組成物の全てのタイプのために適している。施与直後のコーティング物質の流れと乾燥速度とのバランスが特に有利である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプレーノズル及び少なくとも一つの化学照射線出口を有する、コーティングを施与するためのスプレーガン、及び化学照射線により少なくとも部分的に硬化可能であるところのコーティング組成物を施与する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許出願公開第1 002 587号公報は、スプレーノズルの直ぐ隣に配置された一つ以上のUV点源を備えた、塗料施与のためのUV光補助されたスプレーガンを開示している。コーティング組成物は、スプレーガンを離れる前又は後に直ちに照射される。UV硬化性コーティング組成物の架橋はスプレーノズルの直近で開始される。これは、UV光による開始と架橋反応の実際の開始との間の誘導期間を必要とする。この要求は好ましくない、このスプレーガンにより施与され得るところの照射硬化性コーティング組成物に選択を制限する。照射が単にスプレーノズルに直近で生ずる故に、施与直後のコーティング物質の流れと乾燥速度とのバランスが負に作用されるであろう。これは、トップコートの外観及びプライマーの接着性を損ない得る。
【0003】
加えて、スプレーガン内側の照射線出口の表面に、操作の間に厚みにおいて増加するところの架橋されたコーティング物質の層が沈積され得るであろう。該沈積は、硬化反応の開始のために利用できるところの照射線量を限定する。結局、スプレーガン内側の架橋されたコーティング物質の沈積は閉塞をもたらし得る。また、架橋された物質がスプレーガン中に形成されかつ取り残されるなら、スプレーノズルの閉塞が生じ得る。スプレープロセスが中断されるとき、既に照射されたコーティング物質はスプレーノズルの中に残存する。
【0004】
更に、欧州特許出願公開第1 002 587号公報から公知のスプレーガンにおける硬化反応の不十分又は不完全な開始は、開始のための化学照射線の比較的高い線量を要求するコーティング組成物と共に生じ得る。何故ならば、コーティング物質がスプレーガンを離れる前又は後に単に直ちに照射が生ずるからである。これは、施与されたコーティングの遅れた又は不完全な硬化をもたらし得る。この場合に、追加のUV照射装置が、迅速かつ完全な硬化を確保するために施与されたコーティングの更なる照射のために必要とされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は今、上記の欠点により制限されないところの上記のタイプのスプレーガン及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスプレーガンは、スプレーノズル及び少なくとも一つの化学照射線出口を有する、コーティングを施与するためのスプレーガンであり、少なくとも一つの化学照射線出口が外部に配置されており、かつ該照射線出口及びスプレーノズルが、コーティングされるべき基体に同時に向けることができることを特徴とする。この幾何学的配置が、スプレーガンの操作の間に、少なくとも一部の化学照射線がコーティングされた基体に到達することを確保する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の従うスプレーガンは、たとえ、化学照射線による開始と硬化反応の実際の開始との間の誘導期間がないとしても、化学照射線硬化性コーティング組成物の全てのタイプのために適している。何故ならば、硬化反応の開始は、フィルム形成の間及び後に生じ、かつスプレーノズルの直近に限定されないからである。施与直後のコーティング物質の流れと乾燥速度とのバランスは特に有利である。
【0008】
コーティング物質がスプレーノズルを離れた後に開始がスプレーガンの外で生ずる故に、照射及び硬化されたコーティング物質によるスプレーノズルの閉塞が、スプレープロセスが中断されるときでさえ、本発明に従うスプレーガンで生じない。本発明に従うスプレーガンの化学照射線出口の表面が、化学照射線硬化性コーティング組成物と直接接触しない故に、照射線出口における架橋された物質の沈積及びそれに付随する問題は遭遇されないであろう。
【0009】
更に、照射期間が、コーティング物質がスプレーガンを離れる前又は後の直ぐ瞬間に限定されない故に、また、開始のための化学照射線の比較的高い線量を要求するコーティング組成物が、完全にかつ遅れなしで硬化され得る。所望なら、コーティングされた表面の追加の照射が、コーティング物質のスプレーなしに本発明に従うスプレーガンにより実行され得る。
【0010】
本発明に従うスプレーガンの更なる実施態様は、化学照射線の平均的伝播方向とノズルにおけるコーティングの平均的流れ方向との間の角度が、90度未満、好ましくは45度未満である。この幾何学的外形において、化学照射線の増加された部分が、スプレーガンの操作の間にコーティングされた基体に到達する。
【0011】
スプレーガンの好ましい実施態様において、少なくとも一つの光活性化下照射線出口及びのズルが、化学照射線とスプレーノズルのスプレー領域との間の重なりを許すように互いに方向付けることができる。スプレーノズルのスプレー領域は、スプレーガンの操作の間にスプレーミストにより到達されるところの空間を意味する。この好ましい態様の幾何学的外形は、スプレーガンの操作の間に、スプレーミスト及び新たにコーティングされた基体が化学照射線により照射されることを確保する。
【0012】
化学照射線は、化学反応を開始することができる電磁波を意味する。本発明に従うスプレーガンに使用される化学照射線の波長は広範囲に亘って変化され得る。特定の場合に適切な波長は、スプレーガンでスプレーされかつ硬化されるべきところのコーティング系に依存する。通常可視光及び紫外(UV)照射が適切な波長を有する。化学照射線の特に適切な波長は、600nm未満、とりわけ500nm未満、かつ特に450nm未満である。約320〜約400nmの波長範囲におけるUV‐A照射線として公知の電磁波長スペクトルの一部が、とりわけ好ましいタイプの化学照射線である。一方で生物学的活性と付随する健康の危険性とのバランス及び他方で化学反応を開始するために能力が、UV‐A照射線について特に許容し得る。従って、スプレーガンの好ましい実施態様は、少なくとも一つの化学照射線出口がUV‐A照射線出口であることを特徴とする。
【0013】
しかし、より短い波長、例えば、280nm、200nm以下、例えば、100nm又は20nmを持つ化学照射線がまた適している。フィルターは、化学照射線からの所望されない波長をカットするために使用され得る。例えば、いわゆるブラックライトフィルターが、化学照射線から可視光の波長を除外するために使用され得る。
【0014】
本発明に従うスプレーガンに使用されるべき適切な化学照射線源は商業的に入手可能である。例として、蛍光管、重水素ハロゲン光源、レーザー光源、水銀ランプ、水銀‐キセノンランプ、及び金属ハロゲン化物ランプが挙げられ得る。化学照射線を連続的に提供するところのランプに加えて、不連続な化学照射線源、例えば、キセノンフラッシュランプ又はパルス化されたレーザーを使用することがまた可能である。化学照射線源がUV‐A照射線源であることが好ましい。化学照射線源が点源、例えば、Panacol‐Elosol製UV‐P 280/2であることがまた好ましい。
【0015】
あるいは、化学照射線は、少なくとも一つのUV光放出ダイオード(UV‐LED)により提供される。本発明のスプレーガンにおけるUV‐LEDの使用はいくつかの利点を有する。UV‐LEDは、UV照射線源の即時のオン/オフ切り替えを可能にし、これは、組み合わされたスプレー及び照射プロセスに融通性を加える。更に、UV‐LEDの運転寿命は通常、慣用のUV源の運転寿命より有意的に長く、例えば、慣用のUVランプのための約1,000時間に比較してUV‐LEDのための最大50,000時間である。更に、UV‐LEDは通常、狭い波長分布を有し、かつピーク波長をあつらえるための可能性を提供する。UV‐LEDは、UV照射線への電気エネルギーの効率の良い転化により特徴付けられる。これは低い熱発生を引き起こし、かつ冷却要素の省略又ほんの小さな要素の使用を可能にし、これは、スプレーガンへの取付のために有利である。UV‐LEDの他の利点は、それらの比較的低い作動電圧であり、これは、通常のUVランプのために必要なより高い電圧と比較して塗料スプレーブースの環境において好ましい。
【0016】
上記のような化学照射線源は、スプレーミスト及びコーティングされた基体に化学照射線を向けるように本発明に従うスプレーガンの外側に据え付けられ得る。あるいは、少なくとも一つの化学照射線出口は、光ガイドにより化学照射線源に接続される。この場合、化学照射線源はスプレーガンから離れて位置付けられ得る。光ガイドは、全反射の使用により光の流れを導くために、透明な物質から作られる。光ガイドは、化学照射線源に対してスプレーガンの動きを可能にするように可撓性物質から作られることが好ましい。光ガイドのための物質の例は、多数の細い光ガイドファイバーから成る、プラスチックファイバー光ガイド、及び液状光ガイドである。
【0017】
上記のように、本発明に従うスプレーガンは少なくとも一つの化学照射線出口を有する。しかし、スプレーガンは、複数の化学照射線出口、例えば、2、3、4個又はそれ以上の化学照射線出口を有することがまた可能である。上記のような個々のUV‐LEDはしばしばむしろ小さな寸法であり、かつ比較的低い水準の化学照射線を発する。従って、もし、そのようなUV‐LEDが化学照射線源として使用されるなら、複数のUV‐LEDがいわゆるUV‐LEDアレイ中に一緒にグループ化されることが好ましい。UV‐LEDアレイ中の個々のUV‐LEDの数は、所望の寸法、形状、及び所望の化学照射線出力に依存してあつらえられ得る。UV‐LEDアレイは、数百又は数千さえの個々のUV‐LEDを含み得る。少なくとも一つの化学照射線出口の形状は重要ではない。それは任意の適切な形状であり得る。例として、スプレーガンのノズルの周囲に据え付けられた環状のUV‐LEDアレイが挙げられ得る。
【0018】
もし、本発明に従うスプレーガンが、一つより多い化学照射線出口を有するなら、これらの出口は、例えば、好ましくはスプレーガン操作の間に、スプレーミスト及び新しくコーティングされた基体が化学照射線により照射されるように、本質的に同一の方向からそこに発射された化学照射線を方向付けるように配置され得る。
【0019】
あるいは、少なくとも一つの化学照射線出口が、スプレーミストに支配的に化学照射線を方向付けるために配置され得、その一方、少なくとも一つの他の化学照射線出口がスプレーミストを横切ることなしにコーティングされた基体に本質的に化学照射線を向けるために配置される。従って、スプレーミストを横切る化学照射線対新しくコーティングされた基体に直接到達する化学照射線の分配比は変化され得る。特定の場合のために選ばれる分配比は、本発明に従うスプレーガンにより施与されるべきコーティング系に依存され得る。従って、スプレーミストを経て化学照射線の主要な部分を届けるようにスプレーガンを設計することができる。所望及び/又は適切なら、化学照射線の分配比を反対にすることがまた可能であり、従って、ほんの少しの部分がスプレーミストを通過する。化学照射線の特定分布比の選択は、いくつかの因子、例えば、コーティング物質の硬化速度並びに施与及び硬化されるべきコーティングの層厚さに依存するであろう。
【0020】
化学照射線の分布比を調節するために適した手段は、スプレーガンのスプレーノズルに対して少なくとも一つの化学照射線出口の特定位置の選択、少なくとも一つの化学照射線出口から出る化学照射線の平均的伝播方向とノズルにおけるコーティングの平均的流れ方向との間の角度の変化、並びに化学照射線出口の数の変化である。化学照射線の分配及び伝播方向を制御するために化学照射線ビームに適切なレンズ及び/又は反射材を導入することがまた可能である。任意的に調節し得るところの開口がまた、化学照射線の量及び分配比を制御するために使用され得る。これらの実施態様の組み合わせ及び変化がもちろん可能である。
【0021】
スプレーガンがコーティング物質をスプレーするために適している限りは、本発明に従って使用され得るところのスプレーガンのタイプに関する制限はない。好ましいスプレーガンは液状コーティング組成物のためのスプレーガンである。そのようなスプレーガンは通常当業者に公知であり、かつLehrbuch fur Fahrzeuglackierer, Audin Verlag, ミュンヘン 1999年、第124〜132頁においてKlaus Chorにより開示されている。適切なスプレーガンの例は、重力フィード、吸込みフィード、及び圧力フィードによる手持ち式スプレーガン;高圧及び低圧エアースプレーガン並びにエアーレススプレーガン;多成分スプレーガン、例えば、二成分スプレーガン;及び静電スプレーのためのスプレーガンを含む。空気スプレーガンが好ましい。
【0022】
一つの特定な実施態様において、本発明に従うスプレーガンは、自動化されたコーティング系、例えば、コーティングロボットの一部を形成する。一つの実施態様において、スプレーガンは、例えば、スプレーガンの引金に化学照射線源ためのスイッチを含めることにより、スプレー及び化学照射線による照射を同時に開始及び停止するための手段を有する。しかし、コーティングの硬化速度を増加しかつコーティングの完全な硬化を確保するためにスプレーの後にコーティングされた基体を更に照射することができるように、もし、化学照射線が別々に開始され得るならまた有利である。
【0023】
本発明はまた、スプレーノズル及び少なくとも一つの化学照射線出口を有するスプレーガンが使用されるところの、化学照射線により少なくとも部分的に硬化可能であるところのコーティング組成物を施与する方法に関し、少なくとも一つの化学照射線出口が外部に配置され、かつ出口及びノズルがコーティングされるべき基体に同時に向けられることを特徴とする。
【0024】
該方法の特定の実施態様は、コーティングの施与後、新しく施与されたコーティング層が更に化学照射線により照射されることを特徴とする。
【0025】
本発明に従う方法は、化学照射線により少なくとも部分的に硬化可能であるところの任意のコーティング組成物により実施され得る。そのようなコーティング組成物に使用するための適切なモノマー、オリゴマー、ポリマー、及び光開始剤は当業者に公知であり、かつ例えば、Kirk-Othmer, Encyclopedia of Chemical Technology, 第3版, 第19巻, 第607〜624頁、および本明細書に引用された引例に開示されている。
【0026】
化学照射線硬化性コーティング組成物の例は、フリーラジカル重合性モノマー、オリゴマー、及びポリマーに基づいたフリーラジカル硬化性組成物である。フリーラジカル重合性基として、(メタ)アクリレート基、アリル基、及びビニル基が挙げられ得る。他のタイプの化学照射線硬化性コーティング組成物は、カチオンメカニズム、例えば、カチオン開環重合又はカチオン及び/若しくは酸触媒架橋メカニズムにより硬化する。この場合に、化学照射線硬化性コーティング組成物は光潜伏性酸を含む。カチオン開環重合を受け易い適切な基は、環状エーテル基、例えば、エポキシド基又はオキセタン基を含む。カチオン及び/又は酸触媒架橋メカニズムを受け易い適切な基の例は、ビニルエーテル基又はメラミンオリゴマーとヒドロキシル含有ポリマーとの組み合わせである。化学照射線により単に部分的に硬化されかつ熱的に十分に硬化されるべきコーティング組成物がまた可能である。この場合に、熱硬化反応は、化学照射線誘導された硬化反応と同一又は異なり得る。従って、コーティング組成物はまた、化学照射線誘導された硬化を受け易くないところの基を含み得る。
【0027】
本発明に従うスプレーガンは、上記の方法の実施態様において特に有利に使用され得、ここで、コーティング組成物は、光潜伏性塩基及び塩基触媒された重合性又は硬化性物質を含む。硬化反応は、光潜伏性塩基が、化学照射線の実行により非潜伏性塩基に変えられた後に、殆ど遅れず又は全く遅れずに開始するであろう。公知のスプレーガンより本発明に従うスプレーガンの利点が従って十分に活用され得る。
【0028】
適切な光潜伏性塩基の例は、欧州特許出願公開第0 882 072号公報、国際特許出願公開第94/28075号公報、及び国際特許出願公開第01/92362号公報に開示されている。
【0029】
光潜伏性塩基は好ましくは、任意的にアルキルエーテル及び/又はアルキルエステル基により置換されていてもよい4‐(オルト‐ニトロフェニル)ジヒドロピリジン、第四級有機ホウ素光開始剤、及びα‐アミノアセトフェノンから選ばれる。好ましいα‐アミノアセトフェノンは、次式(I):
【化2】


に従う化合物である。
【0030】
ミカエルドナー、例えば、多官能性アセトアセテート又はマロネート、及び多官能性ミカエルアクセプター、例えば、アクリロイル官能性化合物を含む混合物が、塩基触媒された硬化性物質として適している。そのような混合物は、上記の欧州特許出願公開第0 882 072号公報及び国際特許出願公開第94/28075号公報中により詳細に記載されている。
【0031】
好ましい実施態様において、塩基触媒された硬化性物質は、少なくとも一つのポリイソシアネート及び少なくとも一つのチオール基を含む少なくとも一つの化合物を含む。そのようなコーティング組成物は、国際特許出願公開第01/92362号公報に開示されている。
【0032】
本発明に従う方法に使用されるべきコーティング組成物は、通常の添加物及び成分、例えば、溶剤、フィラー、レベリング剤、乳化剤、消泡剤及びレオロジーコントロール剤、還元剤、酸化防止剤、HALS‐安定剤、UV‐安定剤、水捕捉剤、例えば、モレキュラーシーブ、及び沈降防止剤を含み得る。
【0033】
該方法はまた、着色されたコーティング組成物のために適している。好ましい実施態様において、該方法において使用されるべきコーティング組成物は、クリアコート又はトップコート組成物である。もし、コーティング組成物がクリアコート組成物なら、クリアコートが多層ラッカー系、例えば、ベースコート‐クリアコート系において一層を形成する。
【0034】
本発明の方法は任意の基体に適用され得る。該基体は、例えば、金属、例えば、鉄、鋼、及びアルミニウム、プラスチック、木、ガラス、合成物質、紙、皮、又は他のコーティング層であり得る。他のコーティング層は、本発明の方法に従って施与され得、又はそれは異なる方法により施与され得る。
【0035】
該方法は、物体、例えば、橋、パイプライン、工業プラント又は建造物、油及びガス設備、又は船舶をコーティングするために適している。本発明に従う方法は、自動車及び大型輸送手段、例えば、汽車、トラック、バス、及び飛行機を仕上げるため及び再仕上げするために特に適している。
【0036】
本発明は、図面及び下記の実施例に関して更に説明される。
【0037】
図1は、本発明に従うスプレーガン(1)の例を示す。二つの光ガイド(5)の二つの化学照射線出口(2)が、スプレーノズル(6)の隣の外部に配置されている。化学照射線出口(2)及びスプレーノズル(6)は、コーティングされるべき基体(4)に向けられている。化学照射線はスプレーミスト(3)に向けられている。矢印(7)及び(8)は夫々、化学照射線の平均的伝播方向、及びノズルにおけるコーティングの平均的流れ方向を示している。スプレーガン(1)はDeVilbiss製モデルGT1である。光ガイド(5)はUV点源(図1に示されていない)に接続されている。
【0038】
実施例1
光活性化性コーティング組成物が下記の成分から製造された。ここで、pbwは重量部を意味する。
【0039】
ペンタエリトリトールテトラキス(3‐メルカプトプロピオネート) 10.0pbw
Tolonate(商標)HDT-LV 17.9pbw
Byk(商標)306の酢酸ブチル中の10%溶液 0.6pbw
式(I)のα‐アミノアセトフェノンの酢酸ブチル中の10%溶液 1.1pbw
【0040】
Tolonate(商標)HDT-LVは、Rhodia製ヘキサメチレンジイソシアネートの環状三量体である。Byk(商標)306は、Byk Chemie製界面活性剤である。
【0041】
該組成物のポットライフは6時間であった。光活性化性コーティング組成物は、図1に従うスプレーガンによりクリアコートとしてスプレーされた。
【0042】
第一の実験において、照射はスプレーの間にのみ実行された。コーティングの乾燥時間は約15分間であった。
【0043】
第二の実験において、新しくスプレーされたフィルムが、スプレーの間と同一の時間、スプレー後に照射された。コーティングの乾燥時間は約3分間であった。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、本発明に従うスプレーガンの例を示す。
【符号の説明】
【0045】
1:スプレーガン
2:化学照射線出口
3:スプレーミスト
4:基体
5:光ガイド
6:スプレーノズル
7:化学照射線の平均的伝播方向
8:ノズルにおけるコーティングの平均的流れ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプレーノズル及び少なくとも一つの化学照射線出口を有する、コーティングを施与するためのスプレーガンにおいて、少なくとも一つの化学照射線出口が外部に配置されており、かつ該照射線出口及びスプレーノズルが、コーティングされるべき基体に同時に向けることができることを特徴とするスプレーガン。
【請求項2】
化学照射線の平均的伝播方向とノズルにおけるコーティングの平均的流れ方向との間の角度が90度未満であることを特徴とする請求項1記載のスプレーガン。
【請求項3】
化学照射線の平均的伝播方向とノズルにおけるコーティングの平均的流れ方向との間の角度が45度未満であることを特徴とする請求項1又は2記載のスプレーガン。
【請求項4】
少なくとも一つの化学照射線出口及びノズルが、化学照射線とスプレーノズルのスプレー領域との間の重なりを許すように互いに方向付けることができることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のスプレーガン。
【請求項5】
スプレーガンがエアースプレーガンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のスプレーガン。
【請求項6】
スプレーガンが自動化されたコーティングシステムの一部を形成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載のスプレーガン。
【請求項7】
少なくとも一つの化学照射線出口がUV‐A照射線出口であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載のスプレーガン。
【請求項8】
化学照射線が点源により提供されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載のスプレーガン。
【請求項9】
少なくとも一つの化学照射線出口が、光ガイドにより化学照射線源に接続されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載のスプレーガン。
【請求項10】
化学照射線が、少なくとも一つのUV光放出ダイオード(UV‐LED)により提供されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載のスプレーガン。
【請求項11】
複数のUV‐LEDがUV‐LEDアレイ中で一緒にグループ化されていることを特徴とする請求項10記載のスプレーガン。
【請求項12】
化学照射線により少なくとも部分的に硬化可能であるところのコーティング組成物を施与する方法において、請求項1〜11のいずれか一つに記載のスプレーガンが使用されることを特徴とする方法。
【請求項13】
コーティングを施与した後に、新たに施与されたコーティング層が更に化学照射線により照射されることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
化学照射線により少なくとも部分的に硬化可能であるところのコーティング組成物として、光潜伏性塩基及び塩基触媒された重合性又は硬化性物質を含む組成物が使用されることを特徴とする請求項12又は13記載の方法。
【請求項15】
光潜伏性塩基が、任意的にアルキルエーテル及び/又はアルキルエステル基により置換されていてもよい4‐(オルト‐ニトロフェニル)ジヒドロピリジン、第四級有機ホウ素光開始剤、並びにα‐アミノアセトフェノンから選ばれることを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項16】
α‐アミノアセトフェノンが、式(I)
【化1】


のものであることを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項17】
少なくとも一つのポリイソシアネート及び少なくとも一つのチオール基を含む少なくとも一つの化合物を含む塩基触媒された硬化性物質が使用されることを特徴とする請求項14〜16のいずれか一つに記載の方法。
【請求項18】
化学照射線により少なくとも部分的に硬化可能であるところのコーティング組成物が、クリアコート又はトップコート組成物であることを特徴とする請求項12〜17のいずれか一つに記載の方法。
【請求項19】
クリアコートが多層ラッカー系において一層を形成することを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項20】
自動車又は大型輸送手段の仕上げ又は再仕上げのために適用されることを特徴とする請求項12〜19のいずれか一つに記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2006−520679(P2006−520679A)
【公表日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501779(P2006−501779)
【出願日】平成16年2月4日(2004.2.4)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001165
【国際公開番号】WO2004/069427
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(500286643)アクゾ ノーベル コーティングス インターナショナル ビー ヴィ (67)
【Fターム(参考)】