説明

化学物質、調製方法、及び、新規結晶形態

本発明は、結晶質塩形態にあるβ2アドレナリン受容体作動薬の調製に関する。特に、本発明は、化合物(I)の結晶質塩、特に、結晶質一塩酸塩の調製に関する。本発明は、さらにまた、化合物(Ia)の一塩酸塩の新規結晶質形態(多形体)及びその調製方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶質塩形態にあるβ2アドレナリン作動薬の調製に関する。特に、本発明は、下記で定義されている化合物(I)の結晶質塩の調製に関する。より詳細には、本発明は、下記で定義されている化合物(Ia)の結晶質一塩酸塩の調製方法に関する。本発明は、さらにまた、化合物(Ia)の一塩酸塩の新規結晶質形態(多形体)にも関する。
【背景技術】
【0002】
β2アドレナリン受容体作動薬は、喘息及び慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎及び肺気腫などを包含する)などの肺疾患の治療に有効な薬物であると認識されている。β2アドレナリン受容体作動薬は、さらに、早期分娩の治療にも有効であると認識されており、神経障害及び心疾患の治療にも潜在的に有用である。
【0003】
国際特許出願WO01/42193及び対応する米国特許第6,576,793号には、とりわけ、式(I):
【化1】

【0004】
[式中、*C及び**Cにおける立体化学は、とりわけ、(R)及び(R)であり得る]
で表される新規化合物が開示されている。この化合物は、より詳細には、式(Ia):
【化2】

【0005】
で表すことができる。
【0006】
化合物(Ia)は、以下の化学名によってさまざまに称することができる: N-{2-[4-((R)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチルアミノ)フェニル]エチル}-(R)-2-ヒドロキシ-2-(3-ホルムアミド-4-ヒドロキシフェニル)エチルアミン; N-[3-[(1R)-1-ヒドロキシ-2-[[2-[4-[((2R)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)アミノ]フェニル]エチル]アミノ]エチル-6-ヒドロキシフェニル]-ホルムアミド、及び、(α-R)-3-ホルムアミド-4-ヒドロキシ-(α-[[[p-(N-((2R)-ヒドロキシ-フェネチル))-アミノ-フェネチル]アミノ]メチルベンジルアルコール。CAS形式では、化合物(Ia)は、以下のように示される:N-[2-ヒドロキシ-5-[(1R)-1-ヒドロキシ-2-[[2-4-[[(2R)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル]アミノ]フェニル]エチル]アミノ]エチル]フェニル]-ホルムアミド。
【0007】
WO01/42193及び米国特許第6,576,793号には、化合物(Ia)は強力なβ2アドレナリン受容体作動薬として開示されている。
【0008】
WO01/42193及び米国特許第6,576,793号には、立体異性体の混合物としての化合物(Ia)、即ち、*Cの立体化学が(RS)であり且つ**Cの立体化学が(RS)である化合物(Ia)の調製について記載されており、ここで、当該調製は、以下の反応スキームに従う。
【0009】
スキーム1
【化3】


【0010】
ここで、Bnは、ベンジル保護基を表す。
【0011】
米国特許第10/627,555号及び対応する国際特許出願公開WO04/011416には、化合物(Ia)の結晶質二塩酸塩及びその塩の調製方法が記載されている。上記出願においては、化合物(Ia)は、以下の反応スキーム2に従って調製されている。
【0012】
スキーム2
【化4】

【0013】
スキーム2においては、使用されている略語は以下の意味を有する。
【0014】
NaHMDS: ナトリウムヘキサメチルジシラザン
THF: テトラヒドロフラン
DMPU: 1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)ピリミジノン
TBDMSCl: t-ブチルジメチルシリルクロリド
DMF: ジメチルホルムアミド
DMSO: ジメチルスルホキシド
TREAT HF: トリエチルアミントリヒドロフルオリド
スキーム2における化合物の番号付けは、WO04/011416に従っているが、スキーム2における化合物(1)が本明細書の化合物(Ia)と同じものであることは理解されるであろう。
【0015】
WO04/011416によれば、化合物(1)の二塩酸塩は、化合物(1)を極性溶媒に溶解させて第一の溶液を形成させ、塩酸を添加して第二の溶液を形成させ、その第二の溶液から結晶化により二塩酸塩を形成させることにより調製されている。
【0016】
WO2004/106279(優先権主張 米国特許出願番号60/473,423に)には、N-{2-[4-((R)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチルアミノ)フェニル]エチル}-(R)-2-ヒドロキシ-2-(3-ホルムアミド-4-ヒドロキシフェニル)エチルアミン一塩酸塩の結晶質形態が記載されている。
【0017】
WO2004/106279には、とりわけ、化合物(1)の結晶質一塩酸塩の下記調製方法が記載されている:
(i) 極性溶媒(例えば、イソプロパノール又は水)に溶解させた活性化合物(1)に約0.9〜約1モル当量の水性塩酸を添加する;
(ii) 極性水溶性溶媒に溶解させた活性化合物(1)にモル過剰量の無機塩化物水溶液(pH約5〜約6)を添加する[適切な塩化物イオン源は塩化アンモニウムであり、適切な極性溶媒は、イソプロパノールである。例えば、化合物(1)をイソプロパノールに溶解させ、水性塩化アンモニウムを添加し、得られた溶液を室温で一晩静置することにより、結晶質一HCl塩を形成させることができる。その結晶質生成物は、濾過し乾燥させることにより、単離可能である。];
(iii) 対応する二塩酸塩の水スラリー(ここで、該スラリーは、化合物(1)の二HCl塩に水を添加することにより形成させることができる)から、
(iv) 化合物(1)の1モル当たり1〜2当量の塩素を有する化合物(1)の塩酸塩を再結晶させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明者らは、化合物(I)の一塩酸塩の、特に、化合物(Ia)の一塩酸塩の、最も好ましくは、化合物(Ia)の結晶質一塩酸塩の改善された調製方法を見いだした。
【0019】
式(I)で表される化合物が2つの不斉中心を有していること、即ち、式(I)において*C及び**Cで表されている炭素原子において不斉中心を有しているということは、上記の記載から理解されるであろう。本明細書において式(I)で表される化合物について言及されている場合、それは、実質的に純粋な形態にあるか又は任意の割合で混合されている*C及び**Cにおける(S)エナンチオマー及び(R)エナンチオマーの両方を包含する。従って、*C及び**Cにおける立体化学は、(RS)と(RS)、(R)と(R)、(R)と(S)、(S)と(R)又は(S)と(S)であり得る。
【0020】
以下の記載において、化合物(I)について言及されている場合、それは、特に別途規定されていない限り、特に化合物(Ia)を包含していると理解されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
かくして、本発明は、第一の態様において、化合物(I)の一塩酸塩を調製するための方法(A)を提供し、ここで、該方法は、
(Aa) 化合物(I)又は化合物(Ia)の保護されている形態(以下の記載においては、それぞれ、化合物(II)又は化合物(IIa)):
【化5】

【0022】
[ここで、P1はヒドロキシル保護基を表し、P2及びP3は、それぞれ独立して、水素又はヒドロキシル保護基を表す]
を弱酸と接触させて、選択的にプロトン化するステップ;
(Ab) (a)の生成物を塩化物イオン源と接触させて陰イオン交換させるステップ;
(Ac) (b)の生成物を脱保護してP1を除去し、また、必要な場合には、P2及びP3を除去するステップ;
及び
(Ad) 化合物(I)又は化合物(Ia)を一塩酸塩として単離するステップ;
を含み、場合により、
(Ae) 化合物(I)又は化合物(Ia)を結晶化又は再結晶化させるステップ;
も含んでいる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
好ましい実施形態では、本発明は、化合物(Ia)の一塩酸塩を調製するための上記方法を提供し、特に、化合物(Ia)の結晶質一塩酸塩を調製するための上記方法を提供する。
【0024】
ヒドロキシル保護基P1、P2及びP3は、当技術分野でよく知られている原理を使用する公知保護基の広い範囲から選択することができる。ヒドロキシル保護基P1の例には、アリールアルキル、例えば、ベンジルなどがある。P2とP3の一方又は両方が保護基を表す場合、それらは、P1が同様に除去されることのない条件下で選択的に除去可能な基であり得る。かくして、P2及びP3は、それぞれ、例えば、シリル基、例えば、トリアルキルシリル基、例えば、t-ブチルジメチルシリルなどであり得る。本発明の一実施形態では、P1は保護基を表し、P2及びP3はいずれも水素を表す。保護基を用いるか否かについて、また、用いる場合には、保護基の選択については、当業者の範囲内であり、過度の実験を行うことなく達成可能である。
【0025】
化合物(I)及び化合物(Ia)が2個の塩基性窒素原子を含んでおり、従って、両方の窒素原子で塩を形成する可能性を有していることは、当業者には理解されるであろう。一塩酸塩を直接得るためには、即ち、化合物(II)又は化合物(IIa)を塩酸と反応させることにより一塩酸塩を得るためには、正確な化学量論を達成して例えば二塩酸塩などの形成を避けるために、当該反応は、注意深く制御されなければならない。
【0026】
本発明者らは、酢酸などの弱酸を用いて最初にプロトン化することにより、一方の窒素原子(より塩基性が強い窒素原子)のみが選択的にプロトン化されること、及び、陰イオン交換を行った後、化学量論的に正確な一塩酸塩が形成されることを見いだした。本発明の調製方法は、さらに、強酸を使用することなく塩酸塩を調製することが可能であるという有利点も有している。強酸を使用すると親化合物が脱ホルミル化されることがあり得るので、強酸の使用は回避するのが望ましい。
【0027】
本発明の調製方法のステップ(Aa)では、式(II)又は式(IIa)で表される化合物を、弱酸と接触させ得る。好都合には、このステップは、有機溶媒中で、例えば、ケトン(例えば、2-ブタノン(メチルエチルケトン)又はジエチルケトン)中で、又は、水不混和性アルコール(例えば、1-ペンタノール)中で、実施することができる。使用可能な弱酸としては、例えば、酢酸、2-メトキシ安息香酸又は4-メトキシ安息香酸などがあり、酢酸が好ましい。該弱酸は、例えば、4〜5の範囲のpKaを有し得る。このステップは、好都合には、僅かに高温で、例えば、約25℃〜約50℃の範囲の温度で実施し得る。
【0028】
ステップ(Ab)は、好都合には、ステップ(Aa)の生成物を単離することなく実施することができる。従って、例えば、ステップ(Aa)で得た溶液を、例えば水性塩化ナトリウムを使用して、塩化物イオン源と接触させることができる。このステップも、好都合には、約25℃〜約50℃の範囲の温度で実施することができる。この段階で、慣習的な方法を用いて中間生成物を単離して、化合物(II)又は化合物(IIa)の一塩酸塩を提供することができる。この生成物は、結晶質形態で得られ得る。必要に応じ、撹拌、冷却、スクラッチング又は結晶種導入などの標準的な方法により、結晶化を促進することができる。
【0029】
ステップ(Ac)による(II)又は(IIa)の脱保護は、慣習的な方法で実施することができる。かくして、P2及びP3の一方又は両方がシリル基を表す場合、これは、例えば、ジエチルケトン、メチルエチルケトン若しくは酢酸n-ブチルなどのさらなる溶媒と場合により混合されていても良いメタノールなどの有機溶媒中でフッ化セシウムを使用して除去することができるか、又は、テトラヒドロフランなどの溶媒中でトリエチルアミントリフルオリドを使用して除去することができる。保護基P1は、例えば、好都合には有機溶媒(例えば、N-メチルピロリドン)中で、パラジウム触媒又は白金触媒(例えば、Pd/C)を使用する水素化により、除去することができる。
【0030】
本発明に従い調製された化合物(I)又は化合物(Ia)の一塩酸塩は、慣習的な方法で単離することができる。有利には、該化合物(Ia)一塩酸塩は、水性有機溶液から沈殿により、結晶質形態で得ることができる。特定の実施形態では、結晶質(Ia)一塩酸塩は、N-メチルピロリドン及びイソプロピルアルコール(好ましくは、1:1)の混合物を含んでいる有機溶液を約60℃〜約80℃の範囲の温度に加熱し、水を添加し、次いで、得られた水性溶液をさらなるイソプロピルアルコールと接触させることにより、当該有機溶液から得ることができる。さらなるイソプロピルアルコールの添加に際しては、温度を、最初に、約15℃〜約25℃の範囲に低下させ、次に、約0℃〜約10℃の範囲に低下させる。
【0031】
化合物(Ia)の一塩酸塩の再結晶化は、該化合物を、水と混合させた適切な溶媒(例えば、工業用メタノール変性アルコール又はメタノール)に懸濁させるか又は溶解させることにより実施することができる。得られた懸濁液又は溶液は、必要に応じ、例えば、約60℃〜約80℃の範囲の温度に加熱しても良い。結晶化は、慣習的な方法で、例えば、冷却するか及び/又は結晶種を導入することにより、開始させることができる。
【0032】
初期の実験において、本発明者らは、結晶質化合物(Ia)一塩酸塩が、WO2004/106279において記載され及び特徴付けられている結晶質形態(以下、形態1)と同じ結晶質形態のみではなく、新しい結晶質形態(本明細書においては、形態2と称する)でも得られるということを見いだした。本発明者らは、さらに、形態2の結晶が、形態1の結晶よりも熱力学的に安定であるということも見いだした。
【0033】
さらに、本発明者らは、例えば化合物(Ia)一塩酸塩の形態1結晶と形態2結晶の混合物を水性工業用メタノール変性アルコール又はメタノールなどの溶媒に懸濁させることによりスラリーとして約10℃〜約50℃の範囲の温度で長期間(例えば、最大で10日間)撹拌することにより、又は、温度サイクルでの再結晶化を含んでいるプロセスにより、化合物(Ia)一塩酸塩の形態1結晶と形態2結晶の混合物を実質的に純粋な形態2の結晶に変換可能であることを見いだした。そのような方法を用いて、形態2材料の結晶種を提供することができる。
【0034】
かくして、調製方法Aの特定の実施形態では、得られた一塩酸塩の再結晶化は、(Ia)一塩酸塩の懸濁液を加熱と冷却の繰り返しサイクルに付すことにより実施することができる。加熱は、約50℃〜約60℃の範囲の温度で実施可能であり、冷却は、約15℃〜25℃の範囲の温度で実施可能である。加熱及び/又は冷却の各相の後で、その溶液又は懸濁液を熟成させても良い。加熱と冷却のステップは、数サイクル(例えば、2〜5サイクル)繰り返すことができる。
【0035】
結晶質(Ia)一塩酸塩の形態1及び形態2は、以下において説明する示差走査熱量測定分析、X線粉末回折及び/又は赤外分光法を用いて区別することができる。形態2の結晶質(Ia)一塩酸塩は、形態1よりも熱力学的に安定であることが分かった。
【0036】
本発明は、従って、さらに、約125℃未満では識別可能な吸熱特性が存在していないこと及び約130℃〜約180℃における2以上のマイナーな吸熱イベント及び約229℃で有意な吸熱性熱流が開始されることを示す示差走査熱量測定トレースを特徴とする形態(形態2)にある、結晶質(Ia)一塩酸塩(即ち、結晶質N-{2-[4-((R)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチルアミノ)フェニル]エチル}-(R)-2-ヒドロキシ-2-(3-ホルムアミド-4-ヒドロキシフェニル)エチルアミン一塩酸塩)も提供する。例えば、該マイナーな吸熱イベントは、約133℃及び約151℃で起こり得る;さらなるマイナーな吸熱イベントは、約170℃で起こり得る。
【0037】
形態2の結晶質(Ia)一塩酸塩は、さらにまた、赤外分光法により特徴付けを行うこともできる。かくして、PerkinElmer Universal ATR(減衰全反射)サンプリングアクセサリーを備えたPerkinElmer Spectrum One FT-IR分光計を用いて4000〜650cm-1の波数範囲にわたって赤外吸収スペクトルを記録した場合、形態2の結晶質(Ia)一塩酸塩では、約663、698、747、764、788、809、827、875、969、995、1024、1056、1081、1101、1212、1294、1371、1440、1520、1543、1596、1659、3371及び3552cm-1に有意な吸収バンドを有する赤外吸収スペクトルが得られる。
【0038】
形態2の結晶質(Ia)一塩酸塩は、さらにまた、例えば以下の図1及び図2におけるような、X線粉末回折によっても特徴付けることができる。
【0039】
さらに別の実施形態では、本発明は、実質的に純粋な形態にある形態2の結晶質(Ia)一塩酸塩を提供する。本明細書で使用される場合、用語「実質的に純粋な」は、50重量%を超えるものが形態2である結晶質(Ia)一塩酸塩、適切には、少なくとも75重量%が形態2である結晶質(Ia)一塩酸塩、例えば、少なくとも80%、適切には、少なくとも85%、好ましくは、少なくとも90重量%が形態2である結晶質(Ia)一塩酸塩を意味する。
【0040】
形態2の結晶質(Ia)一塩酸塩は、例えば本発明の調製方法のステップ(e)において、(Ia)一塩酸塩の結晶化又は再結晶化を制御することにより、実質的に純粋な形態で得ることができる。一般に、上記で説明したような温度サイクルで結晶化を実施するのが望ましい。
【0041】
かくして、さらに別の態様において、本発明は、形態2の結晶質(Ia)一塩酸塩(本明細書で定義されている)を得るための調製方法(B)も提供し、ここで、該方法は、
(Ba) N-{2-[4-((R)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチルアミノ)フェニル]エチル}-(R)-2-ヒドロキシ-2-(3-ホルムアミド-4-ヒドロキシフェニル)エチルアミン一塩酸塩と水性有機溶媒を接触させ、約60℃〜約70℃の範囲、例えば、約65℃に加熱することにより、該一塩酸塩と該溶媒の混合物を形成させること;
(Bb) 前記混合物の温度を、約52℃〜約58℃の範囲、例えば、約55℃に調節すること;
(Bc) 前記混合物に、形態2の結晶の結晶種を入れること;
(Bd) 前記混合物を、約15℃〜25℃の範囲の温度に冷却すること;
(Be) 前記混合物を、約47℃〜約52℃の範囲の温度、例えば、約50℃に加熱すること;
及び、
(Bf) ステップ(Bd)とステップ(Be)を繰り返して、所望の形態2を得ること;
を含む。
【0042】
上記調製方法のステップ(Ba)において、水性有機溶媒は、例えば、水性アルコール、例えば、水性メタノール又は水性工業用メタノール変性アルコールなどであり得る。特定の温度範囲で加熱することで、該混合物は、有機溶媒中の溶液を形成することとなる。この段階において、必要な場合又は望ましい場合には、該溶液は、例えば濾過するか又は不純物を取り除くことにより、浄化してもよい。
【0043】
ステップ(Bc)において、結晶種の導入は、上記で説明したように調製した結晶質材料を用いて実施し得る。結晶種の導入後、懸濁液が形成される。その混合物を、加熱及び/又は冷却の各相の後で、熟成させても良い。熟成の期間は、例えば、約0.25時間〜約3.00時間であり得る。加熱と冷却のステップであるステップ(Bd)及び(Be)は、数サイクル(例えば、2〜5サイクル)繰り返すことができる。従って、例えば、(Ia)一塩酸塩の該溶液又は懸濁液を、最初に、約60℃〜約70℃の範囲の温度(例えば、65±2℃)に加熱し、50℃〜60℃の範囲の温度(例えば55±2℃)に冷却し、結晶種を導入し、約30分間熟成し、次いで、約2時間かけて約20℃に冷却することができる。その後のサイクルでは、該溶液又は懸濁液を、約50℃に加熱し、また、約10℃に冷却し得る。
【0044】
形態2を調製するための出発物質として使用されるN-{2-[4-((R)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチルアミノ)フェニル]エチル}-(R)-2-ヒドロキシ-2-(3-ホルムアミド-4-ヒドロキシフェニル)エチルアミン一塩酸塩は、例えば、上記調製方法Aの方法又はWO04/011416に記載されている方法により、調製することができる。
【0045】
P2とP3が両方とも水素を表す式(II)又は式(IIa)の化合物は、式(III):
【化6】

【0046】
[式中、P1及びP3は、化合物(II)について定義されているとおりであり、P2'は、ヒドロキシル保護基である]
で表される対応する化合物から得ることができる。P2'は、当技術分野で知られているヒドロキシル保護基、例えば、シリル基(例えば、t-ブチルジメチルシリル)などから選択することができる。P1、P2'及びP3は、P1が同様に除去されることのない条件下でP2'及びP3を除去することができるように、選択されるべきであるということは理解されるであろう。
【0047】
P2'がt-ブチルジメチルシリル基を表す場合、これは、好都合には、ジエチルケトン、メチルエチルケトン又は酢酸n-ブチルなどのさらなる溶媒と場合により混合されていても良いメタノールなどの有機溶媒中でフッ化セシウムを使用して除去することができる。
【0048】
化合物(Ia)を得るのが望まれる場合は、この段階及び以下で記載されている段階において、適切なキラルな中間体を用いるのが望ましいということは、理解されるであろう。従って、構造(III)、構造(IV)及び構造(V)は、個々のキラル形態及びそれらの混合物を表していると解釈されるべきである。
【0049】
化合物(III)は、化合物(IV):
【化7】

【0050】
[ここで、Halは、ハロ脱離基、例えば、ブロモなどであり、P2'は、式(III)について定義されているとおりである]
を化合物(V):
【化8】

【0051】
[ここで、P3は、式(III)について定義されているとおりである]
又はその塩、例えば、臭化水素酸塩などと反応させることにより得ることができる。
【0052】
(IV)と(V)の反応は、好都合には、N,N-ジメチルアセトアミド又はN-メチルピロリドンなどの溶媒中、炭酸カリウムなどの塩基の存在下で実施することができる。
【0053】
化合物(IV)と化合物(V)は、N,N-ジメチルアセトアミド又はジメチルスルホキシドなどの溶媒中で、炭酸カリウム及び水酸化ナトリウム又はヨウ化ナトリウムを添加し、約90℃〜約140℃の範囲の温度に加熱することによりカップリングさせることが可能であり、それにより化合物(III)を形成させることができる。この化合物(III)は、単離することなくさらに反応させることができる。
【0054】
化合物(V)は、2-(4-アミノフェニル)エチルアミンとスチレンオキシドをカップリングさせることにより得ることができる。
【化9】

【0055】
化合物(Ia)を調製するためには化合物(V)の正確はキラル形態を使用すべきであることは理解されるであろう。これは、上記反応で(R)-スチレンオキシドを用いることにより調製することができる。
【0056】
上記アミンは、場合により塩として提供されるが、そのアミンを、4-アミノ基を実質的に脱プロトン化するために、第一に、pKa値が約18よりも大きい約1当量〜約1.2当量の塩基と反応させることが可能であり、そして、該アミン反応の生成物に(R)-スチレンオキシドを添加する。有用な塩基性化合物としては、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(あるいは、ナトリウムヘキサメチルジシラザン(NaHMDS)としても知られている)、リチウムジイソプロピルアミド及びn-ブチルリチウムなどを挙げることができる。該反応は、好ましくは、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)ピリミジノン(DMPU)などの極性非プロトン性溶媒を含んでいる溶媒系の中で実施する。非プロトン性極性溶媒のさらなる例としては、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラメチルエチレンジアミン及びヘキサメチルホスホルアミドなどを挙げることができる。水性抽出後、カップリング反応の生成物は、水性塩酸又は水性臭化水素酸を添加することにより、イソプロパノールなどの溶媒から、塩(例えば、塩酸塩又は臭化水素酸塩)として結晶化させることができる。結晶化の手順により、反応中に形成された副生成物から所望の生成物が効率よく分離される。得られた塩酸塩を10N水性水酸化ナトリウムで再度溶解させて、2-[4-((R)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチルアミノ)フェニル]エチルアミン(化合物(V))を得ることができる。しかしながら、該臭化水素酸塩は、次のステップで直接使用することができる。
【0057】
対応する(S)立体異性体である2-[4-((S)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチルアミノ)フェニル]エチルアミンは、化合物(V)を合成するための上記手順において、(R)-スチレンオキシドを(S)-スチレンオキシドで置き換えることにより調製することができる。
【0058】
式(IV)で表される化合物は、当技術分野では既知の方法で調製することができる。かくして、例えば、式(IV)[式中、P2は水素である]で表される化合物は、米国特許第6,268,533 B1号及び文献(R. Hett et al., Organic Process Research and Development, 1998, 2, 96-99)に記載されているようにして調製することができるか、又は、Hongら(Tetrahedron Ltt., 1994, 35, 6631)により記載されている手順と同様の手順若しくは米国特許第5,495,054号に記載されている手順と同様の手順を用いて調製することができる。保護基P2は、標準的な方法により、例えば、t-ブチルジメチルシリルクロリド(TBDMS-Cl)を添加し、ジクロロメタンなどの適切な溶媒に溶解させることにより導入することができる。
【0059】
さらに別の態様において、本発明は、ヒトなどの哺乳動物におけるβ2-アドレナリン受容体作動薬の適応症である臨床状態を予防又は治療する方法を提供し、ここで、該方法は、治療上有効量の形態2の結晶質(Ia)一塩酸塩を投与することを含んでなる。特に、本発明は、可逆的な気道閉塞を伴う疾患、例えば、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気道感染症又は上部気道疾患などを予防又は治療するための上記方法を提供する。
【0060】
別の態様では、薬物療法で使用するための形態2の結晶質(Ia)一塩酸塩、特に、ヒトなどの哺乳動物におけるβ2-アドレナリン受容体作動薬の適応症である臨床状態の予防又は治療で使用するための形態2の結晶質(Ia)一塩酸塩も提供される。特に、可逆的な気道閉塞を伴う疾患、例えば、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気道感染症又は上部気道疾患などを予防又は治療するための形態2の結晶質(Ia)一塩酸塩が提供される。
【0061】
本発明は、さらにまた、β2-アドレナリン受容体作動薬の適応症である臨床状態、例えば、可逆的な気道閉塞を伴う疾患、例えば、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気道感染症又は上部気道疾患などを予防又は治療するための薬物の製造における形態2の結晶質(Ia)一塩酸塩の使用も提供する。
【0062】
治療効果を達成するのに必要とされる形態2の結晶質(Ia)一塩酸塩の量は、もちろん、投与経路、治療を受けている被験者、及び、治療対象の特定の障害又は疾患により変わり得る。本発明の化合物は、0.0005mg〜1mg、好ましくは、0.001mg〜0.1mg、例えば、0.005mg〜0.05mgなどの用量で、吸入により投与し得る。ヒト成人に対する用量範囲は、一般に、1日当たり0.0005mg〜0.5mg、例えば、1日当たり0.0005mg〜0.1mg、好都合には、1日当たり0.001mg〜0.05mg、例えば、1日当たり0.005mg〜0.05mgである。
【0063】
形態2の結晶質(Ia)一塩酸塩は単独でも投与することが可能であるが、医薬製剤として供するのが好ましい。
【0064】
従って、本発明は、さらに、形態2結晶質(Ia)一塩酸塩及び製薬上許容される担体又は賦形剤を含んでいる医薬製剤も提供し、ここで、該医薬製剤は、場合により1種類以上の別の治療用成分も含んでいてよい。
【0065】
以下において、用語「活性成分」は、形態2結晶質(Ia)一塩酸塩又は該結晶質形態から誘導された化合物(Ia)の特定の形態を意味する。
【0066】
そのような製剤には、経口投与、非経口投与(皮下投与、皮内投与、筋肉内投与、静脈内投与及び関節内投与など)、吸入投与(さまざまなタイプの定量加圧エーロゾル、噴霧器又は吹き入れ器により生成させ得る微粒子状粉体又はミストなど)、直腸内投与及び局所投与(皮膚投与、口内投与及び、舌下投与及び眼内投与など)に適した製剤などが包含されるが、最も適切な経路は、例えば、レシピエントの状態及び障害に依存する。該製剤は、好都合には、単位投与形態で供することができる。該製剤は、製薬学の技術分野でよく知られている方法のいずれかを用いて調製することができる。全ての方法には、活性成分を1種類以上の副成分を構成する担体と合するステップが含まれている。一般に、該製剤は、該活性成分を液体担体又は微粉砕された固体担体又はそれらの両方と均一に且つ充分に混合し、次いで、必要に応じて、その生成物を所望の製剤に成形することにより調製する。
【0067】
吸入により肺に局所送達するための乾燥粉末組成物は、吸入器又は吹き入れ器で使用するために、例えば、カプセル若しくはカートリッジ(例えば、ゼラチン製)又はブリスター(例えば、積層アルミニウムホイル製)に入れて供することができる。粉末配合製剤は、一般に、本発明化合物と単糖類、二糖類又は多糖類(例えば、乳糖又はデンプン)などの適切な粉末基剤(担体/希釈剤/賦形剤物質)からなる吸入用混合粉体を含んでいる。乳糖を使用するのが好ましい。粉末配合製剤には、さらに、糖エステル(例えば、オクタ酢酸セロビオース)又はステアリン酸塩(例えば、ステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸カルシウム)などの第三番目の作用物質を含ませても良い。
【0068】
各カプセル又はカートリッジは、一般に、20μg〜10mgの活性成分を含有することができ、その際、該活性成分は、場合により、別の治療活性成分と組み合わされていてもよい。あるいは、本発明の化合物は、賦形剤なしで供することもできる。該製剤の包装は、単位用量送達又は複数容量送達に適し得る。複数用量送達の場合、該製剤は、予め計量しておくことが可能であるか(例えば、Diskus(以下を参照されたい:GB-2242134、米国特許第6,632,666号、米国特許第5,860,419号、米国特許第5,873,360号及び米国特許第5,590,645号)、又は、Diskhaler(以下を参照されたい:GB-2178965、GB-2129691及びGB-2169265、米国特許第4,778,054号、米国特許第4,811,731号及び米国特許第5,035,237号)、又は、使用に際して計量することが可能である(例えば、Turbuhaler(以下を参照されたい:EP-69715又は米国特許第6,321,747号に記載されている装置)。単位用量装置の例は、Rotahaler(以下を参照されたい:GB-2064336及び米国特許第4,353,656号)である。Diskus吸入装置は、その縦に沿って配置された複数の凹穴を有するベースシート及び複数の容器を画定するするためにベースシートに密閉しているが剥離可能にシールされているリッドシート(lid sheet)から形成された細長いストリップを含んでおり、ここで、各容器は、その中に、好ましくは乳糖と混合された活性成分を含んでいる吸入可能な製剤を有している。好ましくは、該ストリップは、巻き取ってロールとするのに充分な柔軟性を有している。該リッドシート及びベースシートは、好ましくは、互いにシールされていない先端部分を有しており、該先端部分の少なくとも1つは、巻き上げ手段に付着するように構築されている。さらにまた、好ましくは、ベースシートとリッドシートの間の気密シールは、それらの幅全体に及んでいる。該リッドシートは、好ましくは、該ベースシートの第一の端部から縦方向に剥がすことができる。あるいは、該製剤は、必要に応じて、1種類以上の別の治療薬と一緒に吸入装置に入れて供することができるが、ここで、該吸入装置は、個々の治療薬を同時に投与することが可能であるが
、貯蔵は、WO03/061743に記載されているように、例えば、別々の医薬組成物に含ませて別々に行う(又は、三種の組合せの場合には、完全に別々に又は部分的に別々に貯蔵する)。
【0069】
吸入により肺に局所送達するための噴霧用組成物(spray composition)は、例えば、水溶液若しくは水性懸濁液として製剤し得るか、又は、適切な液化噴射剤を用いて定量吸入器などの加圧パックから送達されるエーロゾルとして製剤し得る。吸入に適したエーロゾル組成物は、懸濁液又は溶液のいずれかであることが可能であり、そして、一般に、場合により別の治療活性成分と組み合わされていてもよい本発明の活性成分と、適切な噴射剤、例えば、フルオロカーボン又は水素含有クロロフルオロカーボン又はそれらの混合物、特に、ヒドロフルオロアルカン、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、特に、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロ-n-プロパン又はそれらの混合物を含有することができる。二酸化炭素又は他の適切なガスも、噴射剤として使用することができる。該エーロゾル組成物は、賦形剤を含んでいなくても良いか、又は、場合により、当技術分野でよく知られている付加的な製剤用賦形剤(formulation excipient)、例えば、界面活性剤、例えば、オレイン酸又はレシチン、及び、共溶媒、例えば、 エタノールなどを含んでいても良い。加圧製剤は、一般に、吸口が付いている作動装置にはめ込まれていてバルブ(例えば、計量バルブ)で閉じられている缶(例えば、アルミニウム製缶)の中に保持することができる。
【0070】
吸入により投与するための薬剤は、制御された粒径を有するのが望ましい。気管支系への吸入に最適な粒径は、通常、1〜10μm、好ましくは、2〜5μmである。20μmを超える寸法を有する粒子は、一般に、吸入した場合に大きすぎて末梢気道へは到達できない。上記粒径を達成するために、生成された当該活性成分の粒子は、慣習的な手段で、例えば、微粉化により、その寸法を低減させることができる。空気分級又は篩い分けにより、望ましいフラクションを分離させることができる。好ましくは、該粒子は、結晶質である。乳糖などの賦形剤を使用する場合、一般に、当該賦形剤の粒径は、本発明の範囲内の吸入される薬剤よりもはるかに大きい。該賦形剤が乳糖である場合、それは、典型的には、製粉された乳糖として存在するが、ここで、乳糖粒子の85%以下が60〜90μmのMMDを有し、15%以上が15μm未満のMMDを有する。
【0071】
鼻腔内噴霧は、水性又は非水性のビヒクルを用いて、それに、増粘剤、pHを調節するためのバッファー塩若しくは酸若しくはアルカリ、等張性調節剤又は酸化防止剤などの作用物質を添加して製剤することができる。
【0072】
噴霧(nebulation)による吸入のための溶液は、水性ビヒクルを用いて、それに、酸若しくはアルカリ、バッファー塩、等張性調節剤又は抗菌剤などの作用物質を添加して製剤することができる。それらは、濾過若しくはオートクレーブ内での加熱により滅菌し得るか、又は、非滅菌生成物として供し得る。
【0073】
好ましい単位投与製剤は、当該活性成分の下記において説明される有効な用量又はその適切なフラクションを含んでいる製剤である。
【0074】
上記で特に言及されている成分に加えて、本発明の製剤には、当該製剤のタイプを考慮して、当技術分野で慣習的な他の作用物質も含有させることができることは理解されるべきである。例えば、経口投与に適した作用物質には、矯味矯臭剤などが包含され得る。
【0075】
本発明の化合物及び医薬製剤は、1種類以上の別の治療薬、例えば、抗炎症薬、抗コリン作動薬(特に、M1受容体拮抗薬、M2受容体拮抗薬、M1/M2受容体拮抗薬又はM3受容体拮抗薬)、別のβ2-アドレナリン受容体作動薬、抗感染症薬(例えば、抗生物質、抗ウイルス薬)又は抗ヒスタミン薬から選択される1種類以上の別の治療薬と組み合わせて使用することができるか、又は、そのような1種類以上の別の治療薬を含有することができる。かくして、本発明は、さらに別の態様において、1種類以上の別の治療活性薬、例えば、抗炎症薬(例えば、コルチコステロイド又はNSAID)、抗コリン作動薬、別のβ2-アドレナリン受容体作動薬、抗感染症薬(例えば、抗生物質又は抗ウイルス薬)又は抗ヒスタミン薬から選択される1種類以上の別の治療活性薬と一緒に形態2結晶質(Ia)一塩酸塩を含んでいる組合せを提供する。コルチコステロイド及び/又は抗コリン作動薬及び/又はPDE-4阻害薬と一緒に形態2結晶質(Ia)一塩酸塩を含んでいる組合せが好ましい。好ましい組合せは、1種類又は2種類の別の治療薬を含んでいる組合せである。
【0076】
該別の1種類以上の治療用成分の活性及び/又は安定性及び/又は物理的特性(例えば、溶解性)を最適化するために、適切な場合には、当該別の治療用成分を、塩(例えば、アルカリ金属塩若しくはアミン塩として、又は、酸付加塩として)の形態で、又は、プロドラッグの形態で、又は、エステル(例えば、低級アルキルエステル)として、又は、溶媒和物(例えば、水和物)として使用することができるということは、当業者には明らかである。さらにまた、適切な場合には、当該治療用成分を光学的に純粋な形態で使用することできるということも明らかである。
【0077】
抗炎症薬には、コルチコステロイドなどがある。好ましいコルチコステロイドとしては、プロピオン酸フルチカゾン、6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-17α-[(4-メチル-1,3-チアゾール-5-カルボニル)オキシ]-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸 S-フルオロメチルエステル、及び、6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸 S-フルオロメチルエステルなどを挙げることができる。さらに好ましいのは、6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸 S-フルオロメチルエステルである。
【0078】
抗炎症薬には、さらに、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)も包含される。NSAIDとしては、クロモグリク酸ナトリウム、ネドクロミルナトリウム、ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害薬(例えば、テオフィリン、PDE4阻害薬又は混合PDE3/PDE4阻害薬)、ロイコトリエン拮抗薬、ロイコトリエン合成の阻害薬(例えば、モンテルカスト)、iNOS阻害薬、トリプターゼ及びエラスターゼ阻害薬、β-2インテグリン拮抗薬及びアデノシン受容体作動薬若しくは拮抗薬(例えば、アデノシン2a作動薬)、サイトカイン拮抗薬(例えば、ケモカイン拮抗薬、例えば、CCR3拮抗薬)若しくはサイトカイン合成の阻害薬、又は、5-リポキシゲナーゼ阻害薬などを挙げることができる。
【0079】
PDE4-特異的阻害薬は、PDE4酵素を阻害することが知られている任意の化合物であり得るか、又は、PDE4阻害薬として作用することが見いだされている任意の化合物であり得るが、PDE4-特異的阻害薬は、PDE4のみの阻害薬である化合物であって、PDE3及びPDE5などのPDEファミリーの別のメンバーとPDE4を阻害する化合物ではない。
【0080】
興味深い化合物としては、シス-4-シアノ-4-(3-シクロペンチルオキシ-4-メトキシフェニル)シクロヘキサン-1-カルボン酸、2-カルボメトキシ-4-シアノ-4-(3-シクロプロピルメトキシ-4-ジフルオロメトキシフェニル)シクロヘキサン-1-オン及びシス-[4-シアノ-4-(3-シクロプロピルメトキシ-4-ジフルオロメトキシフェニル)シクロヘキサン-1-オール]などを挙げることができる。興味深い別の化合物は、シス-4-シアノ-4-[3-(シクロペンチルオキシ)-4-メトキシフェニル]シクロヘキサン-1-カルボン酸(シロミラストとしても知られている)及びその塩、エステル、プロドラッグ又は物理的形態であり、これは、米国特許第5,552,438号に記載されている。興味深いさらに別の化合物は、公開された国際特許出願WO04/024728(Glaxo Group Ltd)、PCT/EP2003/014867(Glaxo Group Ltd)及びPCT/EP2004/005494(Glaxo Group Ltd)に開示されている。
【0081】
興味深い抗コリン作動薬は、ムスカリン受容体では拮抗薬として作用する化合物、特に、M1受容体若しくはM3受容体の拮抗薬である化合物、M1/M3受容体若しくはM2/M3受容体の二重拮抗薬である化合物、又は、M1/M2/M3受容体の全ての拮抗薬である化合物である。吸入により投与するための代表的な化合物は、イプラトロピウム(例えば、臭化物として、CAS 22254-24-6、「Atrovent」の名称で販売されている)、オキシトロピウム(例えば、臭化物として、CAS 30286-75-0)及びチオトロピウム(例えば、臭化物として、CAS 136310-93-5、 「Spiriva」の名称で販売されている)。
【0082】
興味深い抗ヒスタミン薬(H1-受容体拮抗薬とも称される)には、H1-受容体を阻害して且つヒトでの使用が安全であることが知られている多くの種類の拮抗薬のうちの任意の1つ以上のものが包含される。第一世代の拮抗薬には、エタノールアミン類、エチレンジアミン類及びアルキルアミン類の誘導体、例えば、ジフェニルヒドラミン、ピリラミン、クレマスチン、クロルフェニラミンなどがある。第二世代の拮抗薬は鎮静作用を有さないが、そのような第二世代の拮抗薬には、ロラチジン(loratidine)、デスロラチジン(desloratidine)、テルフェナジン、アステミゾール、アクリバスチン、アゼラスチン、レボセチリジン、フェキソフェナジン及びセチリジンなどがある。
【0083】
かくして、本発明は、さらに別の態様において、PDE4阻害薬と一緒に形態2結晶質(Ia)一塩酸塩を含んでいる組合せを提供する。好ましくは、本発明は、上記で記載した好ましいPDE4阻害薬(例えば、シス-4-シアノ-4-[3-(シクロペンチルオキシ)-4-メトキシフェニル]シクロヘキサン-1-カルボン酸)と一緒に形態2結晶質(Ia)一塩酸塩を含んでいる組合せを提供する。
【0084】
かくして、本発明は、さらに別の態様において、コルチコステロイドと一緒に形態2結晶質(Ia)一塩酸塩を含んでいる組合せを提供する。好ましくは、本発明は、上記で記載した好ましいコルチコステロイド(例えば、プロピオン酸フルチカゾン、6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-17α-[(4-メチル-1,3-チアゾール-5-カルボニル)オキシ]-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸 S-フルオロメチルエステル、及び、6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸 S-フルオロメチルエステル)と一緒に形態2結晶質(Ia)一塩酸塩を含んでいる組合せを提供する。
【0085】
かくして、本発明は、さらに別の態様において、抗コリン作動薬と一緒に形態2結晶質(Ia)一塩酸塩を含んでいる組合せを提供する。好ましくは、本発明は、上記で記載した好ましい抗コリン作動薬(例えば、イプラトロピウム、オキシトロピウム及びチオトロピウム)と一緒に形態2結晶質(Ia)一塩酸塩を含んでいる組合せを提供する。
【0086】
かくして、本発明は、さらに別の態様において、抗ヒスタミン薬と一緒に形態2結晶質(Ia)一塩酸塩を含んでいる組合せを提供する。好ましくは、本発明は、上記で記載した好ましい抗ヒスタミン薬と一緒に形態2結晶質(Ia)一塩酸塩を含んでいる組合せを提供する。
【0087】
かくして、本発明は、さらに別の態様において、PDE4阻害薬及びコルチコステロイドと一緒に形態2結晶質(Ia)一塩酸塩を含んでいる組合せを提供する。好ましくは、本発明は、上記で記載した好ましい抗ヒスタミン薬及び好ましいコルチコステロイドと一緒に形態2結晶質(Ia)一塩酸塩を含んでいる組合せを提供する。
【0088】
かくして、本発明は、さらに別の態様において、抗コリン作動薬及びPDE-4阻害薬と一緒に形態2結晶質(Ia)一塩酸塩を含んでいる組合せを提供する。好ましくは、本発明は、上記で記載した好ましいPDE-4阻害薬及び好ましい抗コリン作動薬と一緒に形態2結晶質(Ia)一塩酸塩を含んでいる組合せを提供する。
【0089】
上記で言及した組合せは、好都合には、医薬製剤の形態での使用に供することができる。かくして、製薬上許容される希釈剤又は担体と一緒に上記で定義した組合せを含んでいる医薬製剤は、本発明のさらに別の態様を示す。
【0090】
上記組合せの個々の化合物は、個別の医薬製剤又は組合せ医薬製剤中に含ませて、順次に投与することができるか又は同時に投与することができる。既知治療薬の適切な用量については、当業者は容易に認識することができる。
【0091】
図面の簡単な説明
図1は、実施例1(iv)に対応する形態2の結晶質N-{2-[4-((R)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチルアミノ)フェニル]エチル}-(R)-2-ヒドロキシ-2-(3-ホルムアミド-4-ヒドロキシフェニル)エチルアミン一塩酸塩(化合物(Ia)一塩酸塩)のX線粉末回折を示している。
【0092】
図2は、実施例3に対応する形態2の結晶質N-{2-[4-((R)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチルアミノ)フェニル]エチル}-(R)-2-ヒドロキシ-2-(3-ホルムアミド-4-ヒドロキシフェニル)エチルアミン一塩酸塩のX線粉末回折を示している。
【0093】
図3は、実施例3に対応する形態2の結晶質N-{2-[4-((R)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチルアミノ)フェニル]エチル}-(R)-2-ヒドロキシ-2-(3-ホルムアミド-4-ヒドロキシフェニル)エチルアミン一塩酸塩についてのDSCトレースを示している。一連のマイナーな吸熱イベントは、約125℃を超える温度で見られる。135.7℃(イベント1)、149.3℃(イベント2)及び170.3℃(イベント3)で開始する吸熱が存在している。これに続いて、227.2℃で開始するより大きな吸熱が存在している。
【実施例】
【0094】
本発明についての理解をさらによくするために、例証することを目的として以下の実施例を提供する。
【0095】
分析法
図1に示されているXRPD分析は、Bruker X-ray 粉末回折計, 型 D8 Advance, 製造番号 ROE 2357で実施した。該方法は、2〜40度2θで実施し、刻み幅は0.0145度2θであり、各刻み幅当たりの収集時間は1秒である。
【0096】
実施例3のX線粉末回折(XRPD)分析(図2に示されている)は、X'Celerator 検出器を使用してPANalytical X'Pert Pro 粉末回折計、型 PW3040/60, 製造番号 DY1850で実施した。取得条件は以下のとおりであった:放射線:Cu Kα、発生機電圧:40kV、発生機電流:45mA、開始角:3.0度2θ、刻み幅:0.017度2θ、刻み幅当たりの時間:9205秒。サンプルは、外径0.5mmのガラスキャピラリーを用いて調製した。特徴的なXRPD角及びd-間隔は、表1に記載してある。
【0097】
赤外吸収スペクトルは、PerkinElmer Universal ATR(減衰全反射)サンプリングアクセサリーを備えたPerkinElmer Spectrum One FT-IR分光計を用いて4000〜650cm-1の波数範囲にわたって記録した。
【0098】
1H-NMRスペクトルは、300Kで400MHz Bruker DPX400分光計で取得した。CDCl3又はdmso-d6にサンプルを溶解させ、TMSシグナル(0ppm)に対する化学シフトをppmで記録した。
【0099】
実施例1(iv)についての示差走査熱量測定分析は、Perkin Elmer装置, 型 Pyris 1を用いて取得した。サンプルを秤量して50μL容のアルミニウム製パンに入れ、サンプルの上にアルミニウム製の蓋を置き、真鍮製の棒で圧縮した。該パンの上にアルミニウム製のカバーを置き、万能プレス機を用いてシールした。空のパン、蓋及びカバーを、対照とする。サンプルを30℃で平衡させ、1分間当たり10℃で300℃まで加熱した。機器は、インジウム標準、スズ標準及び鉛標準を用いて校正した。
【0100】
実施例3の生成物のDSCトレースは図3に示してあるが、それは、TA Instruments Q1000 熱量計を用いて取得した。サンプルを秤量してアルミニウム製パンに入れ、その上にパンの蓋を置き、パンをシールはせずに蓋の端を軽く曲げた。この実験は、10℃分-1の加熱速度で実施した。
【0101】
略語
TBDMS-Cl: t-ブチルジメチルシリルクロリド
DCM: ジクロロメタン
DMA: N,N-ジメチルアセトアミド
MEK: 2-ブタノン(メチルエチルケトン)
NMP: N-メチルピロリドン
IPA: イソプロピルアルコール
IMS: 工業用メタノール変性アルコール
(以下の実施例では、IMSの組成は、エタノール96%、メタノール4%である)
参照実施例(WO2004/106279による、結晶質(Ia)一塩酸塩の調製)
(a) 2-[4-((R)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチルアミノ)フェニル]エチルアミン(2)の合成
1000mL容の三つ口フラスコに、10g(74mmol)の2-(4-アミノフェニル)エチルアミン及び15mLの1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)ピリミジノン(DMPU)を添加した。その反応フラスコに、頭上撹拌機(overhead stirrer)、125mL容の添加漏斗及び温度計を取り付けた。その反応フラスコに窒素をパージし、冷水浴内に置いた。添加漏斗に、83mL(83mmol)のテトラヒドロフラン中1.0Mナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドを入れた。激しく撹拌しながら、そのナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド溶液を、30分間かけて滴下して加えた。添加漏斗を除去し、代わりにゴム製隔膜を付けた。(R)-スチレンオキシド(8.4mL, 74mmol)をシリンジで10分間かけて滴下して加えた。温度が35℃未満に維持されるように添加速度を制御した。1時間経過した後、88mLの水を滴下して加えることにより反応をクエンチした。その反応混合物を分液漏斗に移し、56mLの酢酸イソプロピルで希釈し、84mLの飽和水性塩化ナトリウムで洗浄した。有機層を、84mLの水と84mLの飽和水性塩化ナトリウムの混合物で二度目の洗浄を実施し、最後に、84mLの飽和水性塩化ナトリウムで洗浄した。その有機層を減圧下に濃縮した。残渣をイソプロパノール(毎回55mL)から2回再濃縮し、次いで、イソプロパノール(235mL)に再度溶解させ、撹拌しながら70℃に加熱した。濃塩酸(13.2mL, 160mmol)を2分間かけて添加した。その混合物を室温まで冷却し、14時間撹拌した。沈殿した生成物を濾過により単離し、イソプロパノール及び酢酸イソプロピルで洗浄した。その生成物を減圧下で3時間乾燥させた後、56mLの水に溶解させ、分液漏斗に移した。酢酸イソプロピル(56mL)及び10N水性水酸化ナトリウム(19mL, 190mmol)を添加した。その分液漏斗を振盪し、相を分離させた。有機層を硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮して、生成物(2)を橙褐色の油状物(11g, 44mmol, 59%)として得た。
【0102】
m/z:[M+H+] C16H20N2Oについての計算値 257.2; 実測値 257.2。
【0103】
(b) 2-ブロモ-(R)-1-t-ブチルジメチルシロキシ-1-(3-ホルムアミド-4-ベンジルオキシフェニル)エタン(4)の合成
(R)-2-ブロモ-1-(3-ホルムアミド-4-ベンジルオキシフェニル)エタノール(中間体(3))(9.9g, 28mmol)を36mLのジメチルホルムアミドに溶解させた。イミダゾール(2.3g, 34mmol)及びt-ブチルジメチルシリルクロリド(4.7g, 31mmol)を添加した。その溶液を窒素雰囲気下で72時間撹拌した。追加のイミダゾール(0.39g, 5.7mmol)及びt-ブチルジメチルシリルクロリド(0.64g, 4.3mmol)を添加し、その反応物をさらに20時間撹拌した。その反応物を、酢酸イソプロピル(53mL)とヘキサン(27mL)の混合物で希釈し、分液漏斗に移した。有機層を水(27mL)と飽和水性塩化ナトリウム(27mL)の混合物で2回洗浄し、次いで、最後に、飽和水性塩化ナトリウム(27mL)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで脱水した。シリカゲル(23.6 g)及びヘキサン(27mL)を添加し、得られた懸濁液を10分間撹拌した。濾過により固体を除去し、濾液を減圧下に濃縮した。残渣をヘキサン(45mL)から結晶化させて、8.85g(19mmol, 68%)の中間体(4)を白色の固体として得た。
【0104】
m/z:[M+H+] C22H30NO3SiBrについての計算値 464.1, 466.1; 実測値 464.2, 466.4。
【0105】
(c) N-{2-[4((R)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチルアミノ)フェニル]エチル}(R)-2-t-ブチルジメチルシロキシ-2-(3-ホルムアミド-4-ベンジルオキシフェニル)エチルアミン(5)の合成
中間体(4)(5.0g, 11mmol)、中間体(2)(3.5g, 14mmol)及びジメチルスルホキシド(10mL)を100mL容の丸底フラスコ内で合し、撹拌して、均一な溶液を形成させた。炭酸カリウム(6.0g, 43mmol)及びヨウ化ナトリウム(1.7g, 11mmol)を添加し、得られた反応混合物を140℃に加熱した。その反応混合物を140℃で10分間維持した後、室温まで冷却し、水(24mL)及び酢酸イソプロピル(28mL)で希釈した。その反応物を、全ての固体が溶解するまで撹拌し、次いで、分液漏斗に移した。有機層を水(17mL)で洗浄した後、酢酸バッファー(水中の5%v/v酢酸、12%w/v酢酸ナトリウム三水和物, 18mL)で洗浄し、次いで、重炭酸ナトリウム溶液(水中5%w/v, 17mL)で洗浄し、次いで、飽和水性塩化ナトリウム(17mL)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮して、中間体(5)を褐色のゼラチン状固体(7.0g, 11mmol, >99%)として得た。
【0106】
m/z:[M+H+] C38H49N3O4Siについての計算値 640.4; 実測値 640.6。
【0107】
(d) N-{2-[4-((R)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチルアミノ)フェニル]エチル}-(R)-2-ヒドロキシ-2-(3-ホルムアミド-4-ベンジルオキシフェニル)エチルアミン(6)の合成
中間体(5)(5.2g, 8.1mmol)をテトラヒドロフラン(26mL)に溶解させ、トリエチルアミントリヒドロフルオリド(1.4mL, 8.6mmol)を添加した。その溶液を20時間撹拌した。水(7.6mL)とそれに続き10.0N水酸化ナトリウム(3.8mL, 38mmol)を添加して、反応をクエンチした。3分後、その反応物を酢酸イソプロピル(20mL)で希釈し、分液漏斗に移した。その混合物を振盪し、二相混合物をセライトで濾過して、未溶解固体を除去した。濾液を分液漏斗に戻し、相を分離させた。有機層を、9mLの水と9mLの飽和水性塩化ナトリウムの混合物で洗浄した後、15mLの飽和水性塩化ナトリウムで洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮して、生成物(6)を褐色のゼラチン状固体(4.2g, 8.0mmol, 99%)として得た。
【0108】
m/z:[M+H+] C32H35N3O4についての計算値 526.3; 実測値 526.4。
【0109】
(e) N-{2-[4-((R)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチルアミノ)フェニル]エチル}-(R)-2-ヒドロキシ-2-(3-ホルムアミド-4-ヒドロキシフェニル)エチルアミン(1)の合成
中間体(6)(2.5g, 4.8mmol)を8.0mLのエタノールに溶解させ、活性炭Darco G-60(1.25g)で処理した。得られた懸濁液を50℃で20分間撹拌した後、濾過してDarcoを除去した。濾液に活性炭担持10%パラジウム(250mg)を添加し、その懸濁液をParr shaker上に配置した。その反応物を、30psiの水素ガス下で10時間振盪した。反応物をセライトで濾過し、減圧下に濃縮して、化合物(1)を褐色のゼラチン状固体(1.9g, 4.3mmol, 91%)として得た。
【0110】
1H-NMR(300MHz, DMSO-d6)δ 2.40-2.68(m, 6H), 2.92-3.18(m, 2H), 4.35-4.45(m, 1H), 4.60-4.69(m, 1H), 5.22-5.30(m, 1H), 6.82(s, 1H), 6.85(s, 1H), 6.68-6.86(m, 4H), 7.12-7.36(m, 5H), 7.95(d, 1H, J=1.4Hz), 8.19(s, 1H), 9.49(br s, 1H);
m/z:[M+H+] C25H29N3O4についての計算値 436.2; 実測値 436.4。
【0111】
(f) N-{2-[4-((R)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチルアミノ)フェニル]エチル}-(R)-2-ヒドロキシ-2-(3-ホルムアミド-4-ヒドロキシフェニル)エチルアミン一塩酸塩の結晶化
500mL容の丸底フラスコ内で、187.9mLのイソプロピルアルコールを40℃で撹拌しながら、それに、化合物(1)(5.2g, 11.9mmol)を溶解させた。10分以内に完全に溶解した。次いで、そのフラスコに、1.0N HCl(11.3mL, 11.3mmol, 0.95eq.)とH2O(29.6mL)を含んでいる溶液を入れた。その溶液を撹拌し、生成物を数時間かけて結晶化させた。6時間経過した後、濾過により結晶を単離し、15mLの氷冷したイソプロピルアルコール中の15%水の溶液で洗浄し、次いで、15mLのイソプロピルアルコールで洗浄した。その結晶を家庭用真空(house vacuum)で12〜16時間乾燥させて、化合物(1)の一塩酸塩(3.92g, 8.3mmol, 収率70%, HPLCによる純度98.89%)を白色の結晶質固体として得た。
【0112】
水分含有量 0.2%;
1H-NMR(300MHz, DMSO-d6):δ(ppm) 10.13(s, 1H), 9.62(m, 1H), 8.93(br s, 1H), 8.66(br s, 1H), 8.27(d, 1H, J=1.92), 8.13(d, 1H, J=1.65), 7.21-7.40(m, 5H), 6.86-6.94(m, 4H), 6.57(d, 2H, J=8.52), 6.05(d, 1H, J=3.57), 5.45-5.55(m, 2H), 4.80(m, 1H), 4.70(m, 1H), 2.70-3.24(m, 8H);
C25H29N3O4.HClに対する元素分析(重量%)
計算値:C, 63.62;H, 6.41;N, 8.90;Cl, 7.51;
実測値:C, 63.47;H, 6.54;N, 8.81;Cl, 7.78。
【0113】
実施例1
(i) 2-ブロモ-(R)-1-t-ブチルジメチルシロキシ-1-(3-ホルムアミド-4-ベンジルオキシフェニル)エタン
TBDMS-Cl(40.1g, 0.26 mol)をDCM(37.5mL)に溶解させた溶液を、DCM(260mL)中のイミダゾール(21.86g, 0.32mol)と(R)-2-ブロモ-1-(3-ホルムアミド-4-ベンジルオキシフェニル)エタノール(74.54g, 0.21mol)のスラリーに8分間かけて添加した。その混合物を22時間撹拌した。水(190mL)を用いて反応をクエンチし、水性層をDCM(37.5mL)で抽出した。DCM層を合し、大気圧下で蒸留して容積を約110mLとした。冷却し、自然に結晶化が起こった。イソオクタン(750mL)を20分間かけて滴下して加えた。得られたスラリーを0℃に冷却し、濾過により固体を採集した後、9:1(v/v)のイソオクタン:DCM(3×75mL)で洗浄し、減圧下に乾燥させて、標題化合物を無色の固体(89.65g, 90%th)として得た。
【0114】
構造に一致した1H-NMR(400MHz, CDCl3)δ(ppm):-0.06(3H)s;0.11(3H)s;*0.12(3H)s;*0.89(9H)s;0.90(9H)s;*3.38-3.49(2H)m;4.78-4.87(1H)m;*5.09(2H)s;5.10(2H)s;6.96(1H)d, J=8.6Hz;*7.06(1H)d of d, J=8.3, 2.0Hz;7.11(1H)d of d, J=8.3Hz, 2.0Hz;7.25-7.27(1H)m;7.36-7.45(5H)m;*7.70(1H)d, J=11.0Hz;7.79(1H)s;8.38(1H)d, J=2.0Hz;8.42(1H)d, J=1.5Hz;*8.76(1H)d, J=11.8Hz.
* ピークは、マイナーな回転異性体の約25M%に起因している。
【0115】
(ii) N-{2-[4-((R)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチルアミノ)フェニル]エチル}-(R)-2-ヒドロキシ-2-(3-ホルムアミド-4-ベンジルオキシフェニル)エチルアミン一塩酸塩
2-[4-((R)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチルアミノ)フェニル]エチルアミン(19.8g, 60mmol)を水(80mL)に溶解させた。撹拌しながら、酢酸イソプロピル(100mL)を添加した。撹拌しながら、8分間かけて、32%(w/v)水酸化ナトリウム水溶液(17.2mL)を添加した。有機層を水(100mL)で洗浄した後、大気圧下で蒸留して容積を約70mLとした。
【0116】
この溶液にDMA(50mL)を添加した後、2-ブロモ-(R)-1-t-ブチルジメチルシロキシ-1-(3-ホルムアミド-4-ベンジルオキシフェニル)エタン(20g, 43mmol)及び炭酸カリウム(7.44g, 54mmol)を添加した。その混合物を90℃(油浴温度)で17時間加熱した後、50℃まで冷却した。水(150mL)を添加し、その混合物をさらに室温まで冷却した。MEK(150mL)を添加し、層を分離させた。有機層を17:40:340(v/w/v)の酢酸:酢酸ナトリウム:水(100mL)で洗浄した後、29%(w/v)塩化ナトリウム水溶液(100mL)で洗浄した。有機層をMEK(50mL)で希釈し、次いで、大気圧下で蒸留して容積を約150mLとした後、さらにMEK(50mL)を添加した。その混合物を37℃に加熱し、フッ化セシウム(8.1g, 51.6mmol)をメタノール(100mL)に溶解させた溶液を添加した。37℃での加熱を7.5時間継続し、次いで、その混合物を30℃に冷却した。44%(w/v)炭酸カリウム水溶液(100mL)で反応をクエンチし、水(20mL)を添加した。有機層を29%(w/v)塩化ナトリウム水溶液(100mL)で洗浄した後、酢酸(3.7mL, 64.6mmol)で処理した。その混合物を、29%(w/v)塩化ナトリウム水溶液(100mL)で洗浄した後、6%(w/v)塩化ナトリウム水溶液(3×100mL)で洗浄した。
【0117】
その溶液をMEK(100mL)で希釈し、次いで、蒸留して容積を約120mLとした。MEK(80mL)を添加し、その混合物に、標題化合物の結晶種+を入れた。その混合物を再度蒸留して、容積を約140mLとした。さらにMEK(60mL)を添加し、その混合物を室温まで冷却した。濾過により固体を採集し、MEK(3×20mL)で洗浄し、減圧下に乾燥させて、標題化合物を無色の固体(18.64g, 77%th)として得た。
【0118】
構造に一致した1H-NMR(400MHz, DMSO-d6)δ(ppm):2.70-2.89(2H)m;2.95(1H)m;3.01-3.14(4H)m;3.14-3.23(1H)m;4.71(1H)m;4.81(1H)m;*5.17(1H)s;5.23(1H)s;5.46(1H)d, J=4.4Hz;5.50(1H)m;6.10(1H)d, J=3.2Hz;6.59(2H)d, J=8.3Hz;6.94(2H)d, J=8.3Hz;7.03(1H)d of d, J=8.6, 2.0Hz;7.12(1H)d, J=8.6Hz;7.25(1H)m;7.30-7.36(3H)m;7.36-7.42(4H)m;7.50(2H)d, J=7.3Hz;8.26(1H)d, J=2.0Hz;8.35(1H)d, J=1.7Hz;*8.54(1H)d, J=11.0Hz;8.63(2H)broad res;*9.64(1H)m;9.67(1H)s.
* ピークは、マイナーな回転異性体の約11.5M%に起因している。
【0119】
+ 結晶種は、上記で記載した方法を用いて得ることができる。
【0120】
(iii) N-{2-[4-((R)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチルアミノ)フェニル]エチル}-(R)-2-ヒドロキシ-2-(3-ホルムアミド-4-ヒドロキシフェニル)エチルアミン一塩酸塩
NMP(120ml)中のN-{2-[4-((R)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチルアミノ)フェニル]エチル}-(R)-2-ヒドロキシ-2-(3-ホルムアミド-4-ベンジルオキシフェニル)エチルアミン一塩酸塩(40g)と5%Pd/C触媒(Englehard 167, 水で50%湿潤)(200mg)の混合物を、水素下、22±2℃で撹拌した。その反応混合物をHPLC(220nmでの検出)で分析して出発物質(実施例1(ii)の生成物)が0.5%(面積による)未満であることが示されたときに、その混合物を濾過した(Whatman GF/Fフィルター)。得られたフィルターケーキを、NMPとIPAの混合物(1:1)(80mL)で洗浄した。
【0121】
濾液を合して撹拌し、69±3℃に加熱した。水(10mL)を添加した。温度が69±3℃に維持されるような速度でIPA(100mL)を添加した。種結晶(0.8g)を添加した。IPA(50ml)を15分間かけて添加した。得られた混合物を約0.75時間撹拌した。次いで、IPA(250ml)を約2.5時間かけた添加した。得られたスラリーを20±3℃までゆっくりと冷却し、その温度で16時間撹拌した。
【0122】
得られたスラリーを3±3℃に冷却し、その温度で4時間撹拌した。そのスラリーを濾過し、採集した固体を、順次、IPA/水(10:1)(80ml)及びIPA(160ml)で洗浄した。その固体を減圧下に約50℃で乾燥させて、標題化合物を白色の固体(29.7g)として得た。
【0123】
収率:88%th, 74%w/w;
NMR:(400MHz, DMSO-d6)δ(ppm):2.73-2.89(2H)m;2.95(1H)m;3.01-3.14(4H)m;3.15-3.24(1H)m;4.72(1H)m;4.82(1H)m;5.46(1H)d, J=4.7Hz;5.48(1H)m;6.03(1H)d, J=3.4Hz;6.59(2H)d, J=8.6Hz;6.89(1H)d, J=8.1Hz;6.91-6.98(3H)m;*7.01(1H)d, J=8.6Hz;*7.14(1H)s;7.25(1H)t, J=7.3Hz;7.33(2H)t, J=7.3, 7.6Hz;7.39(2H)d, J=7.6Hz;8.13(1H)d, J=1.5Hz;8.29(1H)d, J=1.7Hz;*8.53(1H)d, J=11.0Hz;8.57-9.08(2H)broad res;*9.36(1H)d, J=11.0Hz;9.60(1H)s;*9.92(1H)s;10.10(1H)s.
* ピークは、マイナーな回転異性体の約11M%に起因している。
【0124】
(iv) N-{2-[4-((R)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチルアミノ)フェニル]エチル}-(R)-2-ヒドロキシ-2-(3-ホルムアミド-4-ヒドロキシフェニル)エチルアミン一塩酸塩の再結晶化
標題の一塩酸塩(5g)を、100mL容丸底フラスコ内の水性工業用メタノール変性アルコール(IMS)(2:1 IMS:水, 72.5mL)に懸濁させた。その混合物を78℃まで昇温させて、透明な溶液を得た。それを濾過し、水性IMS(2:1 IMS:水, 2.5mL)で洗浄した。その溶液を再度78℃まで昇温させて、濾過中に沈殿した固体を再度溶解させた。温度を65℃に調節し、一塩酸塩(10mg)の結晶種を入れた。その混合物を60〜65℃に2時間維持した後、20〜25℃に冷却し、その温度で14時間撹拌した。得られた懸濁液を0〜5℃に冷却し、その温度に3時間維持した。濾過により生成物を採集し、水性IMS(2:1 IMS:水, 2×7.5mL)で洗浄し、次いで、IMS(3×7.5mL)で洗浄して、標題化合物を白色の固体として得た。この白色の固体を減圧下に約50℃で一晩乾燥させた(60.28g)。
【0125】
予想された収率:80%th, 80%w/w。
【0126】
この生成物のXRPDは、図1に示してある。
【0127】
この生成物の示差走査熱量測定トレースは、約125℃未満では識別可能な吸熱特性が存在しておらず、約133℃、約151℃及び約170℃でマイナーな吸熱イベントが開始されることを示している。
【0128】
実施例2
N-{2-[4-((R)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチルアミノ)フェニル]エチル}-(R)-2-ヒドロキシ-2-(3-ホルムアミド-4-ベンジルオキシフェニル)エチルアミン一塩酸塩の代替的調製方法
2-ブロモ-(R)-1-t-ブチルジメチルシロキシ-1-(3-ホルムアミド-4-ベンジルオキシフェニル)エタン(100g, 215mmol)、2-[4-((R)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチルアミノ)フェニル]エチルアミンビス臭化水素酸塩(99g, 237mmol)及び炭酸カリウム(119g, 861mmol)を反応器の中に入れた。NMP(500mL)を添加し、得られた混合物を110〜115℃で5時間加熱した後、50℃に冷却した。水(900mL)を添加し、次いで、1-ペンタノール(500mL)を添加した。その混合物をさらに室温(35℃以下)まで冷却し、層を分離させた。有機層を水(500mL)で洗浄した後、2%(w/v)塩化ナトリウム水溶液(500mL)で洗浄した。
【0129】
その有機層に酢酸(20mL, 350mmol)を添加し、次いで、フッ化セシウム(39g, 257mmol)をメタノール(500mL)に溶解させた溶液を添加した。その混合物を55℃で4時間加熱した。37%(w/v)炭酸カリウム水溶液(500mL)で反応をクエンチし、次いで、30℃(35℃以下)に冷却した。有機層を10%(w/v)塩化ナトリウム水溶液(500mL)で洗浄し、次いで、酢酸(18.5mL, 324mmol)で処理した。その混合物を10%(w/v)塩化ナトリウム水溶液(2×500mL)で洗浄した。
【0130】
その溶液を1-ペンタノール(1L)で希釈し、標題化合物の結晶種(0.2g)を入れ、30分間熟成させた。その混合物を減圧下で蒸留して容積を約1.4Lとした。その混合物を室温まで冷却した。濾過により固体を採集し、1-ペンタノール(2×300mL)で洗浄した後、酢酸エチル(300mL)で洗浄し、減圧下に乾燥させて、標題化合物を無色の固体(86.09g, 71%th)として得た。
【0131】
構造に一致した1H-NMR(400MHz, DMSO-d6)δ(ppm):2.70-2.89(2H)m;2.95(1H)m;3.01-3.14(4H)m;3.14-3.23(1H)m;4.71(1H)m;4.81(1H)m;*5.17(1H)s;5.23(1H)s;5.46(1H)d, J=4.4Hz;5.50(1H)m;6.10(1H)d, J=3.2Hz;6.59(2H)d, J=8.3Hz;6.94(2H)d, J=8.3Hz;7.03(1H)d of d, J=8.6, 2.0Hz;7.12(1H)d, J=8.6Hz;7.25(1H)m;7.30-7.36(3H)m;7.36-7.42(4H)m;7.50(2H)d, J=7.3Hz;8.26(1H)d, J=2.0Hz;8.35(1H)d, J=1.7Hz;*8.54(1H)d, J=11.0Hz;8.63(2H)broad res;*9.64(1H)m;9.67(1H)s.
* ピークは、マイナーな回転異性体の約11.5M%に起因している。
【0132】
実施例3
N-{2-[4-((R)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチルアミノ)フェニル]エチル}-(R)-2-ヒドロキシ-2-(3-ホルムアミド-4-ヒドロキシフェニル)エチルアミン一塩酸塩の再結晶化
標題の一塩化物(30g)を、1L容反応器内の水性メタノール(2:1 メタノール:水, 600mL)に懸濁させた。その混合物を64℃まで昇温させて透明な溶液を得た。これを濾過し、得られた溶液を再度昇温させて、濾過中に沈殿した固体を再溶解させた。温度を56℃に調節し、標題化合物の結晶種+(0.6g)を入れた。その混合物を56℃に30分間維持し、次いで、2時間かけて20℃まで冷却した。その懸濁液を1時間かけて50℃まで昇温させ、50℃に1時間維持した。その混合物を2.5時間かけて20℃まで冷却した。その懸濁液を1時間かけて50℃まで昇温させ、50℃に1時間維持した。その混合物を2.5時間かけて10℃まで冷却し、10℃に8時間維持した。濾過により生成物を採集し、水性メタノール(2:1 メタノール:水, 60mL)で洗浄し、次いで、メタノール(60mL)で洗浄して、標題化合物を白色の固体として得た。これを減圧下に40℃で一晩乾燥させた。
【0133】
収率:76%th
IR(上記で説明したようにして測定した)により、以下の有意な吸収バンドが得られた:約663、698、747、764、788、809、827、875、969、995、1024、1056、1081、1101、1212、1294、1371、1440、1520、1543、1596、1659、3371、及び、3552cm-1
【0134】
生成物のX線粉末回折(XRPD)分析は、図2に示してある。特徴的なXRPD角及びd-間隔は、表1に記載してある。
【0135】
+ 結晶種は、上記で記載した方法を用いて得ることができる。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】実施例1(iv)に対応する形態2の結晶質N-{2-[4-((R)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチルアミノ)フェニル]エチル}-(R)-2-ヒドロキシ-2-(3-ホルムアミド-4-ヒドロキシフェニル)エチルアミン一塩酸塩(化合物(Ia)一塩酸塩)のX線粉末回折を示す図である。
【図2】実施例3に対応する形態2の結晶質N-{2-[4-((R)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチルアミノ)フェニル]エチル}-(R)-2-ヒドロキシ-2-(3-ホルムアミド-4-ヒドロキシフェニル)エチルアミン一塩酸塩のX線粉末回折を示す図である。
【図3】実施例3に対応する形態2結晶質N-{2-[4-((R)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチルアミノ)フェニル]エチル}-(R)-2-ヒドロキシ-2-(3-ホルムアミド-4-ヒドロキシフェニル)エチルアミン一塩酸塩についてのDSCトレースを示す図である。一連のマイナーな吸熱イベントは、約125℃を超える温度で見られる。135.7℃(イベント1)、149.3℃(イベント2)及び170.3℃(イベント3)で開始する吸熱が存在している。これに続いて、227.2℃で開始するより大きな吸熱が存在している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物(I):
【化1】

[ここで、*C及び**Cは、不斉炭素原子を表す]
の一塩酸塩を調製する方法であって、
(a) 式(II):
【化2】

[式中、P1はヒドロキシル保護基を表し、P2及びP3は、それぞれ独立して、水素又は保護基を表す]
で表される化合物を弱酸と接触させて、選択的にプロトン化するステップ;
(b) (a)の生成物を塩化物イオン源と接触させて陰イオン交換させるステップ;
(c) 脱保護してP1を除去し、また、必要な場合には、P2及びP3を除去するステップ;
及び
(d) 化合物(I)を一塩酸塩として単離するステップ;
を含み、場合により、
(e) 化合物(I)を結晶化又は再結晶化させるステップ;
も含んでいる、前記方法。
【請求項2】
式(I)で表される化合物が化合物(Ia):
【化3】

であり、且つ、式(II)で表される化合物が化合物(IIa):
【化4】

[ここで、P1は、請求項1で定義されているとおりである]
である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記弱酸が酢酸である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
基P1がベンジルを表す、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記塩化物イオン源が塩化ナトリウムである、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
式(Ia)で表される化合物の結晶質一塩酸塩を調製するための、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記調製方法の生成物が、ピーク位置が図1に示されているX線粉末回折図のピーク位置と実質的に一致しているX線粉末回折図を特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
約125℃未満では識別可能な吸熱特性が存在していないことを示す示差走査熱量測定トレースを特徴とする、結晶質(Ia)一塩酸塩。
【請求項9】
約125℃未満では識別可能な吸熱特性が存在していないこと及び約229℃で有意な吸熱性熱流が開始されることを示す示差走査熱量測定トレースを特徴とする、請求項8に記載の結晶質(Ia)一塩酸塩。
【請求項10】
約125℃未満では識別可能な吸熱特性が存在していないこと及び約130℃〜約180℃における2以上のマイナーな吸熱イベント及び約229℃で有意な吸熱性熱流が開始されることを示す示差走査熱量測定トレースを特徴とする、請求項8又は9に記載の結晶質(Ia)一塩酸塩。
【請求項11】
前記マイナーな吸熱イベントが、約133℃、約151℃及び約170℃で起こる、請求項10に記載の結晶質(Ia)一塩酸塩。
【請求項12】
実質的に純粋な形態にある、形態2の結晶質(Ia)一塩酸塩。
【請求項13】
実質的に純粋な形態にある形態2の結晶質(Ia)一塩酸塩を得るための方法であって、
(Ba) N-{2-[4-((R)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチルアミノ)フェニル]エチル}-(R)-2-ヒドロキシ-2-(3-ホルムアミド-4-ヒドロキシフェニル)エチルアミン一塩酸塩と水性有機溶媒を接触させ、約60℃〜約70℃の範囲、例えば、約65℃に加熱することにより、該一塩酸塩と該溶媒の混合物を形成させること;
(Bb) 前記混合物の温度を、約52℃〜約58℃の範囲、例えば、約55℃に調節すること;
(Bc) 前記混合物に、形態2の結晶の結晶種を入れること;
(Bd) 前記混合物を、約15℃〜25℃の範囲の温度に冷却すること;
(Be) 前記混合物を、約47℃〜約52℃の範囲の温度、例えば、約50℃に加熱すること;
及び、
(Bf) ステップ(Bd)とステップ(Be)を繰り返して、所望の形態2を得ること;
を含む、前記方法。
【請求項14】
哺乳動物、例えば、ヒトにおける選択的β2-アドレナリン受容体作動薬の適応症である臨床状態を予防又は治療する方法であって、治療上有効量の形態2の結晶質(Ia)一塩酸塩を投与することを含む、前記方法。
【請求項15】
薬物療法で使用するための、形態2の結晶質(Ia)一塩酸塩。
【請求項16】
選択的β2-アドレナリン受容体作動薬の適応症である臨床状態を予防又は治療するための薬物の製造における、形態2の結晶質(Ia)一塩酸塩の使用。
【請求項17】
形態2の結晶質(Ia)一塩酸塩及び製薬上許容される担体又は賦形剤を含み、さらに、場合により、治療効果を有する別の1種類以上の成分を含んでいても良い、医薬製剤。
【請求項18】
形態2の結晶質(Ia)一塩酸塩と治療効果を有する別の1種類以上の成分の組合せ。
【請求項19】
治療効果を有する別の成分が、PDE4阻害薬又は抗コリン作動薬又はコルチコステロイドである、請求項17に記載の組合せ。
【請求項20】
形態2の結晶質(Ia)一塩酸塩と6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸 S-フルオロメチルエステルを含んでいる、請求項17又は18に記載の組合せ。
【請求項21】
形態2の結晶質(Ia)一塩酸塩と6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-17α-[(4-メチル-1,3-チアゾール-5-カルボニル)オキシ]-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸 S-フルオロメチルエステルを含んでいる、請求項17又は18に記載の組合せ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−530652(P2007−530652A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505632(P2007−505632)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【国際出願番号】PCT/GB2005/001241
【国際公開番号】WO2005/095328
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】