説明

化学療法への反応を予測するための2つの抗SPARC抗体の使用

本発明は、化学療法に対する反応を予測するための、抗SPARK抗体に基づく技術を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2009年5月28日に出願された米国仮特許出願第61/182081号(参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
酸性でシステインに富んだ分泌タンパク質(Secreted protein acidic and rich in cysteine)(オステオネクチン、BM40、又はSPARCとしても知られている)(以後、「SPARC」)は、マトリックス関連タンパク質であって、細胞形状の変化を引き起こし、細胞周期の進行を阻害し、細胞外マトリックスの合成に影響する(Bradshaw et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA 100: 6045-6050 (2003))。マウスSPARC遺伝子は1986年にクローニングされ(Mason et al., EMBO J. 5: 1465-1472 (1986))、またヒトSPARCの全長cDNAは1987年にクローニングされ、配列決定されている(Swaroop et al., Genomics 2: 37-47 (1988))。SPARC発現は、発生的に調節されており、SPARCは正常な発生の間又は傷害への応答で再構築している組織において主に発現している。例えば、高レベルのSPARCタンパク質が、発生中の骨及び歯において発現する(例えば、Lane et al., FASEB J., 8, 163 173(1994);Yan & Sage, J. Histochem. Cytochem. 47:1495-1505 (1999)を参照のこと)。
【0003】
SPARCは、数種の侵襲性の癌において上方調節されているが、対応する正常な組織には存在しない(Porter et al., J. Histochem. Cytochem., 43, 791(1995))。SPARC発現は、種々の腫瘍(例えば、膀胱、肝臓、卵巣、腎臓、腸、及び乳房)で誘導される。例えば、膀胱癌において、SPARC発現は進行癌と関連付けられている。ステージT2又はより晩期の浸潤性膀胱腫瘍は、ステージT1の膀胱腫瘍(又はより早期の表在性腫瘍)と比較して、より高レベルのSPARCを発現することが示されており、また予後がより不良である(例えば、Yamanaka et al., J. Urology, 166, 2495 2499(2001)を参照のこと)。髄膜腫において、SPARC発現は、浸潤性腫瘍とのみ関連付けられている(例えば、Rempel et al., Clincal Cancer Res., 5, 237 241(1999)を参照のこと)。SPARC発現はまた、非浸潤性の侵襲性乳癌病変の74.5%(例えば、Bellahcene, et al., Am. J. Pathol., 146, 95 100(1995)を参照のこと)、及び浸潤性乳管癌の54.2%(例えば、Kim et al., J. Korean Med. Sci., 13, 652 657(1998)を参照のこと)において検出されている。SPARC発現は、乳癌における頻繁な微小石灰化にも関連付けられており(例えば、Bellahcene et al., 上掲、を参照のこと)、SPARC発現が、乳房転移の骨に対する親和性に関与し得ることを示唆している。
【0004】
驚くべきことに、SPARCはまた、いくつかの系において抗腫瘍活性を有することも示されている。SPARCは強力な細胞周期阻害物質であり、細胞をG1中期で停止させ(Yan & Sage, J. Histochem. Cytochem. 47:1495-1505 (1999))、またSPARCの誘導性発現は、インビトロのモデル系において乳癌細胞の増殖を阻害することが示されている(Dhanesuan et al., Breast Cancer Res. Treat. 75:73-85 (2002))。同様に、外因性のSPARCは、濃度依存的にHOSE(ヒト卵巣表面上皮)及び卵巣癌細胞の両方の増殖を減少させることができる。加えて、SPARCは卵巣癌細胞においてアポトーシスを誘導する。SPARC受容体が卵巣上皮細胞などの細胞に存在するという更なる証拠が報告されている。SPARCのその受容体への結合は組織特異的なシグナル伝達経路を始動させ、それが腫瘍抑制機能を媒介するらしいことが提案されている(Yiu et al., Am. J. Pathol. 159:609-622 (2001))。精製されたSPARCもまた、インビボの異種移植片モデル系において、血管形成を強力に阻害し、かつ神経芽細胞腫の腫瘍増殖を著しく妨げることが報告されている(Chlenski et al., Cancer Res. 62:7357-7363 (2002))。
【0005】
現在、癌は外科手術、放射線、及び化学療法という3種類の療法の一つ又は組み合わせで主に治療されている。外科手術は、一般に、初期段階の癌の治療のためにのみ有効である。50%より多くの癌個人にとって、診断前に彼らはもはや有効な外科治療の候補ではなくなっている。放射線療法は、癌の初期及び中期段階にある臨床的に限局性の疾患を呈する個人に対してのみ有効であり、転移を伴う後期段階の癌には有効でない。
【0006】
化学療法は、細胞複製又は細胞代謝の障害を伴う。化学療法は有効であり得るが、例えば嘔吐、低白血球(WBC)、脱毛、体重減少、その他の毒性作用といった重度の副作用がある。激しい毒性の副作用のため、多くの癌個人は、化学療法の計画の完全な終了を成功できない。化学療法により引き起こされる副作用は、個人の生活の質に著しく影響を及ぼし、治療に対する個人のコンプライアンスに大きく影響し得る。また、化学療法剤に関連する有害な副作用は、一般に、これらの薬剤の投与における主要な用量制限毒性(dose limiting toxicity;DLT)である。例えば、粘膜炎は、代謝拮抗細胞毒性剤である5−FU、メトトレキサート、及び、ドキソルビシンなどの抗腫瘍性抗生物質を含むいくつかの抗癌剤についての主要な用量制限毒性の一つである。これらの化学療法により引き起こされる副作用の多くは、重度の場合には、入院に繋がり得るか、或いは痛みの治療のための鎮痛剤による治療を必要とし得る。癌個人の中には、その化学療法に対する耐性が乏しいために、化学療法が原因で死亡する者もいる。抗癌薬の激しい副作用は、このような薬物の乏しい標的特異性により引き起こされる。薬物は、個人の殆どの正常な臓器と、意図する標的腫瘍とを通じて循環する。乏しい標的特異性は、副作用を引き起こし、そしてまた、薬物のごく一部しか正しく標的化されないため、化学療法の有効性を低減させる。化学療法の有効性は、標的腫瘍内での抗癌薬の保持が乏しいことにより更に低減される。
【0007】
癌が深刻で幅広いことに起因して、外科手術、化学療法、及び放射線治療の欠点を克服する、そのような疾患又は障害の有効な治療に対する大きな必要性が存在する。特に、化学療法に関連する深刻な副作用を考慮すると、腫瘍が化学療法レジメンに対して反応するのか、それともしないのかを同定する必要がある。
【発明の概要】
【0008】
発明の要旨
本発明は、動物の腫瘍の化学療法レジメンに対する反応を予測するための方法、又は、1つ以上の抗SPARC抗体で腫瘍の組織切片を免疫染色することに基づいて化学療法レジメンで動物を治療するための方法を提供する。
【0009】
一つの態様において、本発明は、動物の腫瘍の化学療法レジメンに対する反応を予測するための方法を提供し、該方法は、(a)該腫瘍の組織切片に対して第1の抗SPARC抗体を適用すること(該第1の抗SPARC抗体は、腫瘍細胞中のSPARCを選択的に免疫染色する);(b)(a)の組織切片又は該腫瘍の第2の組織切片に対して第2の抗SPARC抗体を適用すること(該第2の抗SPARC抗体は、線維芽細胞中のSPARCを選択的に免疫染色する);及び(c)該第1の抗SPARC抗体及び該第2の抗SPARC抗体が該組織切片(単数又は複数)を免疫染色した場合に、該化学療法レジメンに対する陽性の反応を予測すること、を含む。
【0010】
別の態様において、本発明は、動物の腫瘍の化学療法レジメンに対する反応を予測するための方法を提供し、該方法は、(a)該腫瘍の組織切片に対して第1の抗SPARC抗体を適用すること(該第1の抗SPARC抗体は、腫瘍細胞中のSPARCを選択的に免疫染色する);(b)(a)の組織切片又は該腫瘍の第2の組織切片に対して第2の抗SPARC抗体を適用すること(該第2の抗SPARC抗体は、線維芽細胞中のSPARCを選択的に免疫染色する);かつ(c)該第2の抗SPARC抗体が該組織切片(単数又は複数)を免疫染色した場合に、該化学療法レジメンに対する陽性の反応を予測すること、を含む。
【0011】
別の態様において、本発明は、動物の腫瘍の化学療法レジメンに対する反応を予測するための方法を提供し、該方法は、(a)該腫瘍の組織切片に対して第1の抗SPARC抗体を適用すること(該第1の抗SPARC抗体は、モノクローナル抗体MAB941により認識されるSPARCエピトープを認識する);(b)(a)の組織切片又は該腫瘍の第2の組織切片に対して第2の抗SPARC抗体を適用すること(該第2の抗体は、ポリクローナル抗体AF941により認識されるSPARCエピトープを認識する);及び(c)該第1の抗SPARC抗体及び該第2の抗SPARC抗体が該組織切片(単数又は複数)を免疫染色した場合に、該化学療法レジメンに対する陽性の反応を予測すること、を含む。
【0012】
更なる態様において、本発明は、動物の腫瘍の化学療法レジメンに対する反応を予測するための方法を提供し、該方法は、(a)該腫瘍の組織切片に対して第1の抗SPARC抗体を適用すること(該第1の抗SPARC抗体は、モノクローナル抗体MAB941により認識されるSPARCエピトープを認識する);(b)(a)の組織切片又は該腫瘍の第2の組織切片に対して第2の抗SPARC抗体を適用すること(該第2の抗体は、ポリクローナル抗体AF941により認識される免疫優性のSPARCエピトープを認識する);及び(c)該第2の抗SPARC抗体が該組織切片(単数又は複数)を免疫染色した場合に、該化学療法レジメンに対する陽性の反応を予測すること、を含む。
【0013】
また別の態様において、本発明は、化学療法レジメンで動物の腫瘍を治療する方法を提供し、該方法は、(a)該腫瘍の組織切片に対して第1の抗SPARC抗体を適用すること(該第1の抗SPARC抗体は、腫瘍細胞中のSPARCを選択的に免疫染色する);(b)(a)の組織切片又は該腫瘍の第2の組織切片に対して第2の抗SPARC抗体を適用すること(該第2の抗SPARC抗体は、線維芽細胞中のSPARCを選択的に免疫染色する);及び(c)該第1の抗SPARC抗体及び該第2の抗SPARC抗体が該組織切片(単数又は複数)を免疫染色した場合に、該化学療法レジメンを投与すること、を含む。
【0014】
別の態様において、本発明は、化学療法レジメンで動物の腫瘍を治療する方法を提供し、該方法は、(a)該腫瘍の組織切片に対して第1の抗SPARC抗体を適用すること(該第1の抗SPARC抗体は、モノクローナル抗体MAB941により認識されるSPARCエピトープを認識する);(b)(a)の組織切片又は該腫瘍の第2の組織切片に対して第2の抗SPARC抗体を適用すること(該第2の抗体は、ポリクローナル抗体AF941により認識されるSPARCエピトープを認識する);及び(c)該第1の抗SPARC抗体及び該第2の抗SPARC抗体が該組織切片(単数又は複数)を免疫染色した場合に、該化学療法レジメンを投与すること、を含む。
【0015】
更に別の態様において、本発明は、動物の腫瘍の化学療法レジメンに対する反応を予測するための方法を提供し、該方法は、(a)該腫瘍の組織切片に対して抗SPARC抗体を適用すること(該抗SPARC抗体は、モノクローナル抗体MAB941により認識されるSPARCエピトープを認識する);(b)該抗SPARC抗体が該組織切片(単数又は複数)を免疫染色した場合に、該化学療法レジメンに対する陰性の(poor)反応を予測すること、を含む。
【0016】
別の態様において、本発明は、動物の腫瘍の化学療法レジメンに対する反応を予測するための方法を提供し、該方法は、(a)(a)の組織切片又は該腫瘍の第2の組織切片に対して抗SPARC抗体を適用すること(該第2の抗体は、ポリクローナル抗体AF941により認識される免疫優性のSPARCエピトープを認識する);及び(b)該抗SPARC抗体が該組織切片(単数又は複数)を免疫染色した場合に、該化学療法レジメンに対する陽性の反応を予測すること、を含む。
【0017】
特に、本発明は、腫瘍の化学療法レジメンに対する反応を予測するための方法を提供し、ここで、該腫瘍は、黒色腫又は膵臓癌であり、かつ該化学療法レジメンは、アルブミン結合ナノ粒子パクリタキセルを単独で又は1つ以上の他の薬剤との組み合わせで投与することを含む。腫瘍が膵臓癌である場合、化学療法レジメンは、アルブミン結合ナノ粒子パクリタキセル、及び、ゲムシタビンを投与することを含む。腫瘍が黒色腫である場合、化学療法レジメンは、アルブミン結合ナノ粒子パクリタキセル、及び、カルボプラチンを投与することを含む。
【0018】
本発明により提供されるこれらの方法のいずれも、哺乳動物がヒト患者である方法を含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、黒色腫の全生存曲線を示す。
【図2】図2は、膵臓癌の無進行生存曲線を示す。
【図3】図3は、膵臓癌の全生存曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
腫瘍におけるSPARCの発現は複雑であり、間質、線維芽細胞、腫瘍、炎症細胞、正常組織、神経組織、及び血管を含む多くの成分がSPARCの発現を示す。本発明は、予後へのSPARCの影響に関与すると思われる、SPARCの発現パターン全体の成分に関する。本発明は、SPARCの発現を解析するための包括的なアプローチであって、広範囲の癌の治療に対する反応をより正確に予測することができるものを提供する。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「腫瘍」とは、それが良性であれ悪性(癌性)であれ、原発部位の病変であれ転移であれ、任意の腫瘍性成長、増殖、又は細胞塊をいう。本明細書で使用される場合、用語「癌」とは、正常な増殖制御への感受性を失った細胞の増殖により引き起こされる又は特徴付けられる増殖性障害をいう。同じ組織型の癌は、通常同じ組織に由来し、その生物学的特徴に基づいて異なるサブタイプに分類され得る。癌の4つの一般的なカテゴリーは、癌腫(上皮組織由来)、肉腫(結合組織又は中胚葉由来)、白血病(造血組織由来)、及びリンパ腫(リンパ組織由来)である。200を超える異なる種類の癌が知られており、身体のあらゆる臓器及び組織が侵され得る。癌の具体例(癌の定義を限定するものではない)としては、黒色腫、白血病、星状細胞腫、膠芽細胞腫、網膜芽細胞腫、リンパ腫、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、及び慢性リンパ性白血病を挙げることができる。種々の癌に侵され得る臓器及び組織の例としては、膵臓、乳房、甲状腺、卵巣、子宮、睾丸、前立腺、甲状腺、下垂体、副腎、腎臓、胃、食道若しくは直腸、頭頸部、骨、神経系、皮膚、血液、鼻咽頭組織、肺、尿路、子宮頸部、膣、外分泌腺及び内分泌腺が挙げられる。或いは、癌は、多中心性又は原発不明癌(CUPS)であってもよい。
【0022】
本明細書で使用される場合、「癌性細胞」とは、形質転換事象を経験した細胞であって、その増殖がもはや、該形質転換事象の前と同程度には調節されないものをいう。
【0023】
本明細書で使用される場合、「医薬」は、患者又は試験対象へと投与され得る、効果をもたらすことができる組成物である。該効果は化学的、生物学的又は物理的であり得、患者又は試験対象は、ヒト、又は非ヒト動物(げっ歯類又はトランスジェニックマウスなど)であり得る。組成物は、合成的に作られた、天然に見出される、又は部分的に合成起源の、明確な分子組成を有する、有機又は無機の小分子を含み得る。この群の中には、ヌクレオチド、核酸、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、又はこれらのもののうち少なくとも1つを含む複合体が含まれる。医薬は、有効な組成物を、単独で、又は医薬上許容される賦形剤と組み合わせて含み得る。
【0024】
本明細書で使用される場合、「医薬上許容される賦形剤」としては、生理学的に適合性の、いずれかの及び全ての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗細菌剤、抗菌剤又は抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などが挙げられる。賦形剤は、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、髄腔内投与又は経口投与に適合し得る。賦形剤は、無菌注射液又は分散物の即時調製用の、無菌水性溶液又は分散物を含み得る。医薬の調製用のこのような媒体の使用は当該分野において公知である。
【0025】
本明細書中で使用される場合、医薬の「薬理学的有効量」とは、薬物が使用される期間にわたって治療レベルの該薬物が送達されるような濃度で存在する医薬の量を使用することをいう。これは、送達の様式、投薬の期間、医薬を投与される対象の年齢、体重、全体的健康、性別及び食事に左右され得る。どのような用量が「薬理学的有効量」であるかの決定は、通常の最適化を必要とし、それは当業者の能力の範囲内である。
【0026】
癌又は癌性細胞は、癌細胞を殺すか若しくは腫瘍サイズを減少させ、全体的癌増殖を低下させ(即ち、血管形成の低下を介して)、且つ/又は転移を阻害する、そのレジメンの能力に基づいて、所定の治療レジメン又は化学療法剤に「感受性」又は「抵抗性」と記載され得る。治療レジメンに抵抗性の癌細胞は、該レジメンに応答しないかもしれず、増殖し続けるかもしれない。治療レジメンに感受性の癌細胞は、該レジメンに応答して細胞死、腫瘍サイズの減少、全体的増殖(腫瘍負荷)の低下、又は転移の阻害をもたらし得る。
【0027】
本明細書で使用される用語「治療すること」、「治療」、「療法」、及び「治療的処置」とは、治癒的療法、予防的療法(prophylactic therapy)、又は予防的療法(preventative therapy)をいう。「予防的療法(preventative therapy)」の例としては、標的化された疾患(例えば、癌若しくは他の増殖性疾患)又はそれに関連する状態の可能性を防止し又は減少させることである。治療を必要とする者としては、疾患又は状態を既に有している者、及び予防されるべき疾患又は状態になりやすい者が挙げられる。本明細書で使用される用語「治療すること」、「治療」、「療法」、及び「治療的処置」は、疾患又は関連する状態と闘う目的での哺乳動物の管理及びケアも表し、症候、副作用、又は疾患、状態の他の合併症を軽減するための組成物の投与を含む。癌の治療的処置としては、以下に限定されないが、外科手術、化学療法、放射線療法、遺伝子治療、免疫療法、代替治療レジメン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0028】
本明細書で使用される場合、用語「薬剤」又は「薬物」又は「治療剤」とは、化合物、化合物の混合物、生物学的巨大分子、又は細菌、植物、真菌若しくは動物(特に哺乳動物)の細胞若しくは組織等の生物材料から作られた抽出物であって、治療的性質を有するとみられるものをいう。薬剤又は薬物は、精製され、実質的に精製され、又は部分的に精製されたものであり得る。本発明による「薬剤」には、放射線療法剤又は「化学療法剤(chemotherapuetic agent)」も含まれる。
【0029】
本明細書で使用される場合、「化学療法」とは、癌性細胞を破壊するために、有害である少なくとも1つの化学療法剤を投与することをいう。無数のそのような化学療法剤が臨床医にとって利用可能である。化学療法剤は、対象に単回ボーラス用量で投与されてもよいし、又は長い時間をかけてより小用量で投与されてもよい。1つの化学療法剤が使用されてもよいし(単剤療法)、又は1つより多くの薬剤が組み合わせて使用されてもよい(併用療法)。化学療法は、ある種の癌を治療するために、単独で使用され得る。或いは、化学療法は、他の種類の治療、例えば本明細書に記載の放射線療法又は代替療法(例えば免疫療法)と組み合わせて使用され得る。また、化学療法増感剤が、化学療法剤との併用療法として投与され得る。
【0030】
本明細書で使用される場合、「化学療法剤」又は「抗癌剤」とは、癌を治療するために使用され得る医薬であって、一般に癌性細胞を直接殺す能力を有するものをいう。化学療法剤の例としては、アルキル化剤、代謝拮抗剤、天然生成物、ホルモン及びアンタゴニスト、及び種々の薬剤が挙げられる。別名の例は括弧内に示される。アルキル化剤の例としては、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン(L−サルコリシン)、及びクロラムブシルなどのナイトロジェンマスタード;ヘキサメチルメラミン及びチオテパなどのエチレンイミン及びメチルメラミン;ブスルファンなどのスルホン酸アルキル;カルムスチン(BCNU)、セムスチン(メチル−CCNU)、ロムスチン(CCNU)及びストレプトゾシン(ストレプトゾトシン)などのニトロソウレア;リン酸エストラムスチンなどのDNA合成アンタゴニスト;並びにデカルバジン(DTIC、ジメチル−トリアゼノイミダゾールカルボキサミド)及びテモゾロミドなどのトリアジンが挙げられる。代謝拮抗剤の例としては、メトトレキセート(アメトプテリン)などの葉酸アナログ;フルオロウラシル(fluorouracin)(5−フルオロウラシル、5−FU、5FU)、フロクスウリジン(フルオロデオキシウリジン、FUdR)、シタラビン(シトシンアラビノシド)、及びゲムシタビンなどのピリミジンアナログ;メルカプトプリン(6−メルカプトプリン、6−MP)、チオグアニン(6−チオグアニン、TG)、及びペントスタチン(2’−デオキシコホルマイシン、デオキシコホルマイシン)、クラドリビン及びフルダラビンなどのプリンアナログ;並びにアムサクリンなどのトポイソメラーゼ阻害剤が挙げられる。天然生成物の例としては、ビンブラスチン(VLB)及びビンクリスチンなどのビンカアルカロイド;パクリタキセル及びドセタキセル(タキソテール)などのタキサン;エトポシド及びテニポシドなどのエピポドフィロトキシン;トポテカン及びイリノテカンなどのカンプトテシン;ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン(ダウノマイシン、ルビドマイシン)、ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン(マイトマイシンC)、イダルビシン、エピルビシンなどの抗生物質;L−アスパラギナーゼなどの酵素;並びにインターフェロンα及びインターロイキン2などの生物学的反応修飾物質が挙げられる。ホルモン及びアンタゴニストの例としては、ブセレリンなどの黄体形成放出ホルモンアゴニスト(luteinising releasing hormone agonists);プレドニゾンなどのアドレノコルチコステロイド並びに関連調製物;カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン及び酢酸メゲストロールなどのプロゲスチン;ジエチルスチルベストロール及びエチニルエストラジオールなどのエストロゲン並びに関連調製物;タモキシフェン及びアナストロゾールなどのエストロゲンアンタゴニスト;プロピオン酸テストステロン及びフルオキシメステロンなどのアンドロゲン並びに関連調製物;フルタミド及びビカルタミドなどのアンドロゲンアンタゴニスト;並びにロイプロリドなどのゴナドトロピン放出ホルモンアナログが挙げられる。種々の薬剤の例としては、サリドマイド;シスプラチン(cis−DDP)、オキサリプラチン及びカルボプラチンなどのプラチナ配位錯体;ミトキサントロンなどのアントラセンジオン;ヒドロキシウレアなどの置換ウレア;プロカルバジン(N−メチルヒドラジン、MIH)などのメチルヒドラジン誘導体;ミトタン(o,p’−DDD)及びアミノグルテチミドなどの副腎皮質抑制剤;ベキサロテンなどのRXRアゴニスト;並びにイマチニブなどのチロシンキナーゼ阻害剤が挙げられる。これら及び追加の化学療法剤の例の別名及び商品名、並びに投薬及び投与レジメンを含むそれらの使用方法は当業者に公知であろう。特に、本発明による使用に適した化学療法剤としては、以下に限定されないが、アルブミン結合ナノ粒子パクリタキセルが挙げられる。
【0031】
ABI−007としても知られるアブラキサン(商標)は、好ましい化学療法剤である。アブラキサン(商標)は、パクリタキセルのアルブミン結合ナノ粒子製剤である。ビヒクルとしてアルブミンナノ粒子を使用したことにより、生理食塩水で再構成されたときにコロイドを形成する。アブラキサン(商標)の使用は、タキソール(商標)と比較して過敏性反応が低減されているという特徴があることが臨床研究に基づいて示されている。従って、アブラキサン(商標)を投与されている患者にとって、前投薬は必要とされない。
【0032】
アルブミンナノ粒子製剤の別の利点としては、毒性の乳化剤を除いたことにより、タキソール(商標)で可能であるよりも頻繁な間隔でより高用量のパクリタキセルを投与できることである。(i)より高い許容用量(300mg/m)、(ii)より長い半減期、(iii)局所腫瘍による長期の利用能、及び/又は、(iv)持続したインビボでのアブラキサン(商標)の放出、の結果として、固形腫瘍における有効性の向上が見られ得る可能性がある。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「放射線療法レジメン」又は「放射線療法」とは、癌性細胞を殺すための放射線の投与をいう。放射線は、細胞内の種々の分子と相互作用するが、細胞死をもたらす主要な標的は、デオキシリボ核酸(DNA)である。しかしながら、放射線療法は、しばしば細胞膜及び核膜、並びに他のオルガネラにも損傷をもたらす。DNA損傷は、通常、糖−リン酸骨格における一本鎖切断及び二本鎖切断を含む。更に、細胞機能を破壊し得る、DNA及びタンパク質の架橋があり得る。放射線の種類に応じて、DNA損傷のメカニズムは、生物学的効果比と同様に変化し得る。例えば、重粒子(即ち、プロトン、中性子)は、DNAを直接損傷し、より大きな生物学的効果比を有する。電磁放射線は、主として細胞水のイオン化により生成される短寿命のヒドロキシルフリーラジカルを介して作用する、間接イオン化をもたらす。放射線の臨床応用は、外照射(外部供給源からの)及び密封小線源療法(患者体内に移植又は挿入した放射線源を使用する)からなる。外照射は、X線及び/又はガンマ線からなるのに対し、密封小線源療法は、崩壊してガンマ線とともにアルファ粒子又はベータ粒子を放射する放射性核種を用いる。
【0034】
放射線療法は更に、併用化学療法において、放射線増感剤として作用する化学療法剤と共に使用され得る。個々の患者に適した放射線療法の具体的選択は、癌の組織及び病期を考慮して、治療の時点で当業者によって決定され得る。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「代替治療レジメン」又は「代替療法」は、例えば、生物学的反応修飾物質(ポリペプチド−、炭化水素−、及び脂質−生物学的反応修飾物質を含む)、毒素、レクチン、血管新生阻害剤、レセプターチロシンキナーゼ阻害剤(例えばIressa(商標)(ゲフィチニブ)、Tarceva(商標)(エルロチニブ)、Erbitux(商標)(セツキシマブ)、メシル酸イマチニブ(imatinib mesilate)(Gleevec(商標))、プロテオソーム阻害剤(例えばボルテゾミブ、ベルケイド(商標));PTK787(ZK222584)などのVEGFR2阻害剤、オーロラキナーゼ阻害剤(例えばZM447439);哺乳類のラパマイシン標的(mTOR)阻害剤、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害剤、ラパマイシン阻害剤(例えばシロリムス、ラパミューン(商標));ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(例えばチピファルニブ、ザルネストラ(Zarnestra));マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤(例えばBAY 12−9566;硫酸化多糖テコガラン);血管新生阻害剤(例えばアバスチン(商標)(ベバシズマブ);TNP−4などのフマギリンのアナログ;カルボキシアミノトリアゾール;BB−94及びBB−2516;サリドマイド;インターロイキン−12;リノミド;ペプチド断片;並びに血管増殖因子及び血管増殖因子受容体に対する抗体);血小板由来増殖因子受容体阻害剤、プロテインキナーゼC阻害剤、マイトジェン活性化キナーゼ阻害剤、マイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼ阻害剤、ラウス肉腫ウイルス形質転換癌遺伝子(SRC)阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、低分子(small)低酸素誘導因子阻害剤、ヘッジホッグ阻害剤、及びTGF−βシグナル伝達阻害剤を含み得る。更に、免疫療法剤も、代替治療レジメンとみなされる。例としては、ケモカイン、ケモタキシン、サイトカイン、インターロイキン、又は組織因子が挙げられる。適切な免疫療法剤としては、予め形成された抗体を含む血清又はガンマグロブリン;非特異的免疫刺激アジュバント;能動的特異的免疫療法;及び養子免疫療法も挙げられる。また、代替療法は、ポリヌクレオチドなどの他の生物学に基づく化学物質(アンチセンス分子、ポリペプチド、抗体、遺伝子療法ベクターなどを含む)を含み得る。このような代替療法は、単独で若しくは組み合わせて投与されてもよいし、又は本明細書に記載の他の治療レジメンと組み合わせて投与されてもよい。代替治療レジメンに使用されるこれらの薬剤及び代替治療レジメンに使用される薬剤の追加の例の別名及び商品名、並びに投薬及び投与レジメンを含むそれらの使用方法は、当該分野において精通した医師に公知である。更に、併用療法における代替治療レジメン(投薬及び投与レジメンを含む)において使用される化学療法剤及び他の薬剤の使用方法も、当業者に公知である。
【0036】
特に、適切な代替治療レジメンとしては、Her2に対する抗体(例えば、トラスツズマブ)、EGFに対する抗体若しくはEGF受容体に対する抗体、VEGFに対する抗体(例えば、ベバシズマブ)若しくはVEGF受容体に対する抗体、CD20に対する抗体などの、癌細胞の表面上の分子に対する抗体が挙げられるが、これらに限定されない。治療剤は、補体活性化、細胞媒介性細胞傷害、アポトーシスの誘導、細胞死の誘導、及びオプソニン化(opsinization)の1以上を仲介する任意の抗体又は抗体断片を更に含み得る。例えば、このような抗体断片は、完全又は部分Fcドメインであり得る。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「組織切片」とは、組織試料の薄片であって、顕微鏡のスライド上にマウントするため及びいずれかの適切なプロトコールで染色するために適したものをいう。本明細書で使用される場合、「組織切片を免疫染色する」とは、細胞の成分に対する抗体の結合の結果として、組織切片の細胞及び細胞内マトリックスを染色することをいい、細胞内マトリックスである。本明細書で使用される場合、ある構造を「主に」又は「選択的に」染色するために(例えば、線維芽細胞に対して癌細胞)、組織切片中の選択的に染色される構造の免疫染色(imunostaining)は、当業者により顕微鏡で観察された場合に3/3の強度であり、十分に全ての他の構造は1/3のみの強度で染色されるか、又は0/3の染色(染色なし)を示すべきである。
【0038】
本明細書で使用される場合、用語「エピトープ」とは、抗体によって結合される三次元構造をいい、特に、抗体によって標的化されるアミノ酸配列をいう。本明細書で使用される場合、用語「MAB941モノクローナル抗体により認識されるエピトープ」とは、MAB941モノクローナル抗体(monoclonal anybody)(SPARCモノクローナル抗体(R&D Systems, ミネアポリス, MN), カタログ番号MAB941)により結合されるSPARC中のアミノ酸配列をいう。
【0039】
本明細書で使用される場合、「免疫優性(imunodominant)エピトープ」とは、最も大きな総体的な親和性で、抗体のポリクローナル抗血清の購入(buying)により結合される三次元構造をいう。特に、そのポリクローナル抗血清を用いる免疫染色のプロトコールでの染色パターンに関与するエピトープである。本明細書で使用される場合、用語「AF941ポリクローナル(polyconal)抗体により認識される免疫優性(imunodominant)SPARCエピトープとは」、AF941ポリクローナル(polyconal)抗血清による最も大きな親和性を有すると見出されたSPARCのペプチド及びアミノ酸配列をいう。従って、これらのSPARCのペプチド及びアミノ酸配列への結合及び染色は、観察される免疫染色の大部分をもたらす(results and)。(SPARCポリクローナル抗体(R&D Systems, ミネアポリス, MN), カタログ番号AF941)
【0040】
「抗体」は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ダイマー、マルチマー、多重特異性抗体(例えば、二特異性抗体)を意味するが、これらに限定されない。抗体は、ネズミ、ヒト、ヒト化、キメラ、又は他の種由来のものであり得る。抗体は、特異的抗原を認識し、それに結合することができる、免疫系により作り出されるタンパク質である。一般的に標的抗原は、複数の抗体上のCDRにより認識される非常に多くの結合部位(エピトープとも呼ばれる)を有する。異なるエピトープに特異的に結合する各抗体は、異なる構造を有する。従って、1つの抗原は、2以上の対応する抗体を有し得る。
【0041】
抗体としては、全長免疫グロブリン分子、又は全長免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分(即ち、目的の標的の抗原又はその一部に免疫学的に特異的に結合する抗原結合部位を含む分子)が挙げられる。標的としては、癌細胞、又は自己免疫疾患と関連する自己免疫抗体を産生する他の細胞が挙げられる。
【0042】
本明細書に開示される免疫グロブリンは、免疫グロブリン分子の任意のクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、及びIgA)又はサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)のものであり得る。免疫グロブリンは、任意の種由来であり得る。
【0043】
「抗体断片」は、所望の生物学的活性を維持する全長抗体の部分を含む。「抗体断片」は、一般的にはその抗原結合領域又は可変領域である。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFv断片;二特異性抗体;直鎖抗体;Fab発現ライブラリーにより製造される断片、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、CDR(相補性(complementary)決定領域)、及び癌細胞抗原、ウイルス抗原又は微生物抗原に免疫学的に特異的に結合する上記のいずれかのエピトープ結合断片、一本鎖抗体分子;並びに抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。
【0044】
本明細書で言及されるモノクローナル抗体としては、具体的には、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定種由来の抗体における対応する配列と同一又は相同であるか或いは特定の抗体クラス又はサブクラスに属するが、鎖(複数可)の残りの部分は、別の種由来の抗体における対応する配列と同一又は相同であるか或いは別の抗体クラス又はサブクラスに属する「キメラ」抗体、並びに、所望の生物活性を示す限り、そのような抗体の断片が挙げられる(米国特許第4,816,567号)。本明細書中の目的のキメラ抗体としては、非ヒト霊長類(例えば、旧世界ザル又は類人猿)由来の可変ドメイン抗原結合配列及びヒト定常領域配列を含む「霊長類化」抗体が挙げられる。
【0045】
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」及び「ADCC」とは、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)が標的細胞上の結合抗体を認識し、続いて標的細胞の溶解を引き起こす、細胞媒介性反応をいう。ADCCを媒介する一次細胞、NK細胞はFcγRIIIのみを発現するが、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。目的の分子のADCC活性を評価するには、in vitro ADCCアッセイが実施され得る(米国特許第5,003,621号;米国特許第5,821,337号)。このようなアッセイのために有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核球(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。
【0046】
「細胞死を誘導する」抗体は、生存細胞を生存できなくさせる抗体である。in vitroでの細胞死は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)又は補体依存性細胞傷害(CDC)により誘導される細胞死を区別するために、補体及び免疫エフェクター細胞の非存在下で測定され得る。従って、細胞死についてのアッセイは、熱不活化血清を使用して(即ち、補体非存在下で)、免疫エフェクター細胞の非存在下で実施され得る。抗体が細胞死を誘導できるか否かを決定するために、ヨウ化プロピジウム(PI)、トリパンブルー又は7AADの取り込みにより評価される膜の完全性の喪失が、非処理細胞と比較して評価され得る。細胞死誘導抗体は、BT474細胞におけるPI取り込みアッセイにおいてPI取り込みを誘導する抗体である。
【0047】
「アポトーシスを誘導する」抗体は、アネキシンVの結合、DNAの断片化、細胞収縮、小胞体の拡張、細胞の断片化、及び/又は膜小胞(アポトーシス小体と呼ばれる)の形成により決定されるプログラム細胞死を誘導する抗体である。
【0048】
本明細書で使用される場合、「化学療法増感剤」又は「増感剤」は、化学療法剤、放射線療法処置又は代替治療レジメンの治療効果を増強し、従ってそのような処置又は薬剤の有効性を改善し得る医薬である。処置への腫瘍又は癌性細胞の感受性又は抵抗性は、動物(ヒト又は齧歯類など)において、例えば、ある期間にわたり、腫瘍サイズ、腫瘍負荷又は転移の発生率を測定することによっても、測定され得る。例えば、ヒトについては約2、約3、約4又は約6カ月であり、マウスについては約2〜4、約3〜5、又は約4〜6週間である。組成物又は治療方法は、治療感受性の増大又は抵抗性の低下が、そのような組成物又は方法の非存在下での治療感受性又は抵抗性と比較して、約10%以上、例えば、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、又はそれより多くから、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約10倍、約15倍、約20倍、又はそれより多くである場合、治療的処置への腫瘍又は癌性細胞の応答を増感し得る。治療的処置への感受性又は抵抗性の決定は、当該分野においてありふれたものであり、当業者の技術範囲内である。
【0049】
用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」は、互換的に使用され得、ペプチド結合又は修飾ペプチド結合により共有結合している少なくとも2アミノ酸残基を含む化合物(例えば、半減期の増加など、ペプチドに更なる所望の特性を提供し得るペプチドアイソスター(修飾ペプチド結合))をいう。ペプチドは、少なくとも2アミノ酸を含み得る。本明細書中に記載されるペプチド又はタンパク質を構成するアミノ酸は、天然のプロセス(翻訳後プロセシングなど)、又は当該分野において周知の化学修飾技術のいずれかにより、修飾されてもよい。修飾は、ペプチド中のどこでも(ペプチド骨格、アミノ酸側鎖及びアミノ末端若しくはカルボキシル末端を含む)、起こり得る。同じ種類の修飾が、所定のペプチド中のいくつかの部位において、同じ程度で又は異なる程度で存在し得ることが理解される。
【0050】
診断方法及び治療方法
【0051】
本発明は、動物の腫瘍の化学療法レジメンに対する反応を予測するための診断方法を提供し、該方法では、腫瘍細胞中のSPARC及び/又は線維芽細胞中のSPARCを選択的に免疫染色できる1つ以上の抗SPARC抗体が該腫瘍の1つ以上の組織切片に対して適用される。次いで、該化学療法レジメンに対する反応が、該組織切片(複数可)において観察された免疫染色に基づいて予測され得る。
【0052】
ある実施形態では、本発明は、(a)腫瘍の組織切片に対して第1の抗SPARC抗体を適用すること(該第1の抗SPARC抗体は、腫瘍細胞中のSPARCを選択的に免疫染色する);(b)(a)の組織切片又は該腫瘍の第2の組織切片に対して第2の抗SPARC抗体を適用すること(該第2の抗SPARC抗体は、線維芽細胞中のSPARCを選択的に免疫染色する);及び(c)該第1の抗SPARC抗体及び該第2の抗SPARC抗体が該組織切片(単数又は複数)を免疫染色した場合に、該化学療法レジメンに対する陽性の反応を予測すること、を含む方法を提供する。
【0053】
他の実施形態では、本発明は、(a)腫瘍の組織切片に対して第1の抗SPARC抗体を適用すること(該第1の抗SPARC抗体は、腫瘍細胞中のSPARCを選択的に免疫染色する);(b)(a)の組織切片又は該腫瘍の第2の組織切片に対して第2の抗SPARC抗体を適用する(該第2の抗SPARC抗体は、線維芽細胞中のSPARCを選択的に免疫染色する);及び(c)該第2の抗SPARC抗体がそれが適用された組織切片を免疫染色した場合に、該化学療法レジメンに対する陽性の反応を予測すること、を含む方法を提供する。
【0054】
更なる実施形態では、本発明は、(a)腫瘍の組織切片に対して抗SPARC抗体を適用すること(該抗SPARC抗体は腫瘍細胞中のSPARCを選択的に免疫染色する);及び(b)該抗SPARC抗体が該組織切片(単数又は複数)を免疫染色した場合に、該化学療法レジメンに対する陰性の反応を予測すること、を含む方法を提供する。より詳細には、腫瘍細胞中のSPARCを選択的に免疫染色する抗SPARC抗体(例えば、MAB941、又はMAB941により認識されるSPARCエピトープを認識する別の抗体)による腫瘍細胞の免疫染色により、負の転帰が予測され得る。陰性の反応を予測するための好ましい実施形態では、腫瘍は膵臓癌であり、かつ化学療法レジメンは、ナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル単独、又はゲムシタビンとの組み合わせである。しかしながら、この方法に従って任意の固形癌性腫瘍が評価され得ることが理解されるであろう。
【0055】
別の態様において、本発明は、化学療法レジメンを用いて動物の腫瘍を治療するための方法を提供する。ある実施形態では、該方法は、(a)腫瘍の組織切片に対して第1の抗SPARC抗体を適用すること(該第1の抗SPARC抗体は、腫瘍細胞中のSPARCを選択的に免疫染色する);(b)(a)の組織切片又は該腫瘍の第2の組織切片に対して第2の抗SPARC抗体を適用すること(該第2の抗SPARC抗体は、線維芽細胞中のSPARCを選択的に免疫染色する);及び(c)該第1の抗SPARC抗体及び該第2の抗SPARC抗体が該組織切片(単数又は複数)を免疫染色した場合に、該動物に対して化学療法レジメンを投与すること、を含む。
【0056】
ある実施形態では、該第1の抗SPARC抗体は、MAB941抗体により認識されるSPARCエピトープを認識する。例えば、該第1の抗SPARC抗体は、MAB941抗体であり得る。しかしながら、特異性を伴ってこのエピトープに結合できる他の抗SPARC抗体もまた、本発明において使用され得ることが理解されるであろう。ある実施形態では、該第2の抗SPARC抗体は、AF941抗体により認識されるSPARCエピトープを認識し、好ましくは、AF941抗体により認識される免疫優性のSPARCエピトープを認識する。例えば、該第2の抗SPARC抗体は、AF941抗体であり得る。
【0057】
しかしながら、特異性を伴ってこのエピトープに結合できる他の抗SPARC抗体もまた、本発明において使用され得ることが理解されるであろう。エピトープマッピングは、当該分野において公知の標準技術を用いて行うことができる。例えば、Ed Harlow及びDavid LaneによるUsing Antibodiesの第11章"Epitope Mapping"にあるプロトコール。Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, USA, 1999(参照することにより、その全体が本明細書に組み込まれる。)。エピトープをマッピングすることにより、エピトープ特異的な抗体を標準技術により容易に生成できる。
【0058】
好適な抗SPARC抗体は、組織マイクロアレイを用いて腫瘍及び線維芽細胞のSPARCの染色の正確な分布についてアッセイすることにより同定できる。組織マイクロアレイは、当業者に公知の任意の方法を用いて作製できる。当該分野で公知の標準技術により作製されたモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を使用できる。腫瘍のSPARC及び線維芽細胞のSPARCの両方に対して特異性を有する抗体もまた調製できる。二重特異性抗体又は本明細書で特定されるエピトープに対して二重の特異性を有するその他の抗体は、本発明の方法において特に好ましい。
【0059】
本発明で企図される併用療法としては、以下に限定されないが、抗体投与、ワクチン投与、細胞毒性剤、天然アミノ酸ポリペプチド、核酸、ヌクレオチドアナログ、及び生物学的反応修飾物質の投与が挙げられる。2つ以上を組み合わせた化合物を一緒に又は順次に用いてもよい。化学療法剤の例としては、アルキル化剤、代謝拮抗剤、天然生成物、ホルモン及びアンタゴニスト、及び種々の薬剤が挙げられる。アルキル化剤の例としては、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン(L−サルコリシン)、及びクロラムブシルなどのナイトロジェンマスタード;ヘキサメチルメラミン及びチオテパなどのエチレンイミン及びメチルメラミン;ブスルファンなどのスルホン酸アルキル;カルムスチン(BCNU)、セムスチン(メチル−CCNU)、ロムスチン(CCNU)及びストレプトゾシン(ストレプトゾトシン)などのニトロソウレア;リン酸エストラムスチンなどのDNA合成アンタゴニスト;並びにデカルバジン(DTIC、ジメチル−トリアゼノイミダゾールカルボキサミド)及びテモゾロミドなどのトリアジンが挙げられる。代謝拮抗剤の例としては、メトトレキセート(アメトプテリン)などの葉酸アナログ;フルオロウラシン(fluorouracin)(5−フルオロウラシル、5−FU、5FU)、フロクスウリジン(フルオロデオキシウリジン、FUdR)、シタラビン(シトシンアラビノシド)、及びゲムシタビンなどのピリミジンアナログ;メルカプトプリン(6−ニエルカプトプリン(6-niercaptopurine)、6−MP)、チオグアニン(6−チオグアニン、TG)、及びペントスタチン(2’−デオキシコホルマイシン、デオキシコホルマイシン)、クラドリビン及びフルダラビンなどのプリンアナログ;並びにアムサクリンなどのトポイソメラーゼ阻害剤が挙げられる。天然生成物の例としては、ビンブラスチン(VLB)及びビンクリスチンなどのビンカアルカロイド;パクリタキセル(アブラキサン(商標))及びドセタキセル(タキソテール(商標))などのタキサン;エトポシド及びテニポシドなどのエピポドフィロトキシン;トポテカン及びイリノテカンなどのカンプトテシン;ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン(ダウノマイシン、ルビドマイシン)、ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン(マイトマイシンC)、イダルビシン、エピルビシンなどの抗生物質;L−アスパラギナーゼなどの酵素;並びにインターフェロンα及びインターロイキン2などの生物学的反応修飾物質が挙げられる。ホルモン及びアンタゴニストの例としては、ブセレリンなどの黄体形成ホルモン放出ホルモンアゴニスト;プレドニゾンなどのアドレノコルチコステロイド並びに関連調製物;カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン及び酢酸メゲストロールなどのプロゲスチン;ジエチルスチルベストロール及びエチニルエストラジオールなどのエストロゲン並びに関連調製物;タモキシフェン及びアナストロゾールなどのエストロゲンアンタゴニスト;プロピオン酸テストステロン及びフルオキシメステロンなどのアンドロゲン並びに関連調製物;フルタミド及びビカルタミドなどのアンドロゲンアンタゴニスト;並びにロイプロリドなどのゴナドトロピン放出ホルモンアナログが挙げられる。種々の薬剤の例としては、サリドマイド;シスプラチン(czs−DDP)、オキサリプラチン及びカルボプラチンなどのプラチナ配位錯体;ミトキサントロンなどのアントラセンジオン;ヒドロキシウレアなどの置換ウレア;プロカルバジン(N−メチルヒドラジン、MIH)などのメチルヒドラジン誘導体;ミトタン(o,p’−DDD)及びアミノグルテチミドなどの副腎皮質抑制剤;ベキサロテンなどのRXRアゴニスト;並びにイマチニブなどのチロシンキナーゼ阻害剤が挙げられる。
【0060】
抗SPARC抗体が組織切片を免疫染色するか否か、すなわち、組織切片がSPARC陽性であるか否かの決定は、当業者の技術の範囲内であることが理解されるであろう。ある実施形態では、免疫染色のレベルを病理学において標準的な任意の方法を用いて定量化してもよく、それにより予め定められたレベルを上回る免疫染色の任意のレベルがSPAC陽性試料を構成するものと理解される。例えば、免疫染色は0〜3のスケールで評価することができ、ここで0=陰性(5%未満の細胞の染色)、1=非常に弱い、2=中程度の染色(すなわち、5〜50%の細胞が、適当な細胞内分布で弱〜中強度の染色を示す)、3=強い染色(すなわち、適当な細胞内分布で、5%の細胞が非常に強い染色を示すか、或いは50%を上回る細胞が弱〜中強度の染色を示す)である。そのようなスケールが用いられる場合、好ましくは、スコアが3の時に試料はSPARC陽性であると決定される。他の実施形態では、スコアが2の時に又は1の時であっても試料はSPARC陽性であると決定され得る。他の実施形態では、例えば陽性又は陰性の対照試料との比較により、免疫染色のレベルは定性的に決定されてもよい。例えば、組織切片が、SPARC陽性であると以前に又は別々に決定された試料と同等又はそれより高い免疫染色を示す場合に、該組織切片はSPARC陽性であると理解される。同様に、組織切片が、SPARC陰性であると以前に又は別々に決定された試料と同等又はそれより低い免疫染色を示す場合に、該組織切片はSPARC陰性であると理解される。同様に、既知のSPARC陽性試料の免疫染色と既知のSPARC陰性試料の免疫染色との間の免疫染色を示す組織切片をSPARC陽性として特徴付けるべきか、それともSPARC陰性として特徴付けるべきかを当業者は決定できるであろう。
【0061】
SPARC免疫染色のスコア付け又は定性的評価は、化学療法レジメンに対する陽性又は陰性の反応を予測するために使用できる。本発明の方法で予測される陽性反応としては、以下に限定されないが、尺度における少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、更により好ましくは少なくとも20%、最も好ましくは少なくとも25%又はそれより大きい改善により示される、病理学的反応(腫瘍のサイズ又は負荷の減少)、全生存、又は無進行生存が挙げられる。或いは、該尺度が、治療無し、以前の治療、又は代替療法と比較して統計的に有意な量の改善を示す。陰性反応としては、以下に限定されないが、病理の進行、全生存の減少、又は無進行生存の減少が挙げられる。
【0062】
腫瘍は当業者に知られるあらゆる種類の腫瘍であり得る。好ましい実施形態では、腫瘍は固形癌性腫瘍である。本発明の方法で評価又は治療され得る例示的な腫瘍としては、口腔腫瘍、咽頭腫瘍、消化器系腫瘍、呼吸器系腫瘍、骨腫瘍、軟骨性腫瘍、骨転移、肉腫、皮膚腫瘍、黒色腫、乳房腫瘍、生殖器系腫瘍、尿路腫瘍、眼窩腫瘍、脳及び中枢神経系の腫瘍、神経膠腫、内分泌系腫瘍、甲状腺腫瘍、食道腫瘍、胃腫瘍、小腸腫瘍、結腸腫瘍、直腸腫瘍、肛門腫瘍、肝臓腫瘍、胆嚢腫瘍、膵臓腫瘍、喉頭腫瘍、肺の腫瘍、気管支腫瘍、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、子宮頸腫瘍、子宮体部腫瘍、卵巣腫瘍、外陰部腫瘍、膣腫瘍、前立腺腫瘍、前立腺癌、精巣腫瘍、陰茎の腫瘍、膀胱腫瘍、腎臓の腫瘍、腎盂の腫瘍、尿管の腫瘍、頭頸部腫瘍、副甲状腺癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、及び肛門腫瘍を挙げることができる。エストロゲン受容体陽性(ER+)腫瘍もまた、本発明の方法において好ましい。最も好ましい実施形態では、腫瘍は黒色腫、乳房腫瘍、頭部及び/又は頸部腫瘍、又は膵臓癌である。
【0063】
企図される化学療法レジメンとしては、上掲の任意の化学療法処置又は抗癌剤を挙げることができる。ある実施形態では、化学療法レジメンはタキサンを含む。好ましい実施形態では、化学療法レジメンはパクリタキセルを含む。好ましい実施形態では、化学療法レジメンは、癌及び/又は腫瘍の種類に従って選択される。例えば、腫瘍が膵臓癌である場合、化学療法レジメンは、パクリタキセル、好ましくはナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル(アブラキサン(商標))、ゲムシタビン、又はそれらの組み合わせを含む。腫瘍が黒色腫である場合、化学療法レジメンは、パクリタキセル、好ましくはナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル(アブラキサン(商標))、カルボプラチン、又はそれらの組み合わせを含む。腫瘍がエストロゲン受容体陽性である場合、化学療法レジメンは、パクリタキセル、好ましくはナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル(アブラキサン(商標))、エストロゲンアンタゴニスト若しくはER+除去療法、又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0064】
本発明の方法には、例えば、動物が外科手術、化学療法、放射線療法、温熱療法、免疫療法、ホルモン療法及びレーザー療法からなる群から選択される1つ以上の癌治療も受けている併用療法が含まれる。用語「共投与」及び「併用療法」とは、2つ以上の治療的に活性の薬剤を対象に投与することをいう。これらの薬剤は単一の医薬組成物中に含有されて同時に投与されてもよいし、或いは、これらの薬剤は別々の製剤中に含有されて対象に対して順次に投与されてもよい。2つの薬剤が対象において同時に検出できる限り、当該2つの薬剤は共投与されたという。
【0065】
本発明の医薬組成物の投与は、任意の適切な経路(静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、腫瘍内、経口、直腸、膣内、膀胱内、及び吸入による投与が挙げられるが、これらに限定されず、静脈内及び腫瘍内投与が最も好ましい)によって達成され得る。組成物は、特に組成物の安定性の増強及び/又はその最終用途のために、任意の他の適切な構成成分を更に含み得る。従って、本発明の組成物の、広範な種々の適切な製剤がある。以下の製剤及び方法は、例示に過ぎず、決して限定するものではない。
【0066】
医薬組成物は、所望の場合、追加の治療剤又は生物活性剤も含み得る。例えば、特定の適応症の治療において有用な治療因子が存在し得る。炎症を制御する因子(イブプロフェン又はステロイドなど)が組成物の一部であり得、医薬組成物のin vivo投与に伴う腫大及び炎症並びに生理的苦痛を低減し得る。
【0067】
担体は典型的には液体であるが、固体、又は液体及び固体の成分の組み合わせでもあり得る。担体は望ましくは、生理学的に許容される(例えば、医薬的又は薬理学的に許容される)担体(例、賦形剤又は希釈剤)である。生理学的に許容される担体は周知であり、容易に入手可能である。担体の選択は、少なくとも一部は、標的組織及び/又は細胞の場所、並びに組成物を投与するために使用される特定の方法によって決定されよう。
【0068】
典型的には、このような組成物は、液体の溶液又は懸濁液のいずれかとして、注射剤として調製され得る;注射前の液体添加により溶液又は懸濁液を調製するために使用するのに適した固体形態もまた、調製され得る;これらの調製物は乳化もされ得る。注射剤での使用に適した医薬製剤としては、無菌の水溶液又は水性分散物;公知のタンパク質安定剤及び凍結保護剤を含む製剤、ゴマ油、ピーナッツ油又は水性プロピレングリコールを含む製剤、及び無菌の注射可能な溶液又は分散物の即時の調製のための無菌粉末、が挙げられる。全ての場合において、製剤は無菌でなければならず、容易な注射可能性が存在する程度まで流動的でなければならない。製剤は、製造及び保存の条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。遊離塩基又は薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、界面活性剤(ヒドロキシセルロースなど)と適切に混合した水中で調製され得る。分散物は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物中、並びに油中でも調製され得る。保存及び使用の通常の条件下で、これらの調製物は微生物の増殖を防止するための保存剤を含む。
【0069】
医薬的に許容される塩としては、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基と形成される)が挙げられ、それらは無機酸(例えば、塩酸又はリン酸など)又は有機酸(酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸など)などと形成される。遊離カルボキシル基と形成される塩も、無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、又は水酸化第二鉄など)及び有機塩基(イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなど)などから誘導され得る。
【0070】
非経口投与に適した製剤としては、水性及び非水性の、等張の無菌注射溶液(これは、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、及びこの製剤を意図されたレシピエントの血液と等張にする溶質を含み得る)、並びに水性及び非水性の無菌懸濁液(これは、懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、及び保存剤を含み得る)が挙げられる。これらの製剤は、単回用量又は複数用量の密封容器(アンプル及びバイアルなど)中で提示され得、使用直前に、例えば水などの注射用無菌液体賦形剤の添加のみを要する、フリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存され得る。即席の注射溶液及び懸濁液は、以前に記載された種類の無菌の粉末、顆粒、及び錠剤から調製され得る。本発明の好ましい実施形態において、ペプチドリガンドドメイン含有コンジュゲートが注射(例、非経口投与)のために製剤化される。これに関して、製剤は望ましくは腫瘍内投与に適しているが、静脈内注射、腹腔内注射、皮下注射などのためにも製剤化され得る。
【0071】
吸入による投与に適した製剤としては、エアロゾル製剤が挙げられる。エアロゾル製剤は、加圧された許容される噴霧剤(ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素など)中に配置され得る。それらは、ネブライザー又はアトマイザーからの送達のために、非加圧調製物としても製剤化され得る。
【0072】
肛門投与に適した製剤は、活性成分を種々の基剤(乳化基剤又は水溶性基剤など)と混合することによって坐剤として調製され得る。膣投与に適した製剤は、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、又はスプレー製剤として提示され得、これらは、活性成分に加えて、適切であることが当該分野で公知の担体を含む。
【0073】
また、本発明の組成物は、追加の治療剤又は生物活性剤を含み得る。例えば、特定の適応症の治療において有用な治療因子が存在し得る。炎症を制御する因子(イブプロフェン又はステロイドなど)が、組成物の一部であり得、医薬組成物のin vivo投与に伴う腫大及び炎症並びに生理学的苦痛を低減し得る。
【0074】
吸入治療の場合、本発明の医薬組成物は、望ましくは、エアロゾルの形態である。固体形態の場合、薬剤を投与するためのエアロゾル及びスプレー発生器が利用可能である。これらの発生器は、呼吸できるか又は吸入できる粒子を提供し、ヒト投与に適した速度で、医薬の所定の計量された用量を含む、ある体積のエアロゾルを発生させる。このようなエアロゾル及びスプレー発生器の例としては、当該分野で公知の、計量された用量の吸入器(inhalers)及び吸入器(insufflators)が挙げられる。液体形態の場合、本発明の医薬組成物は、任意の適切な装置によりエアロゾル化され得る。
【0075】
静脈内、腹腔内又は腫瘍内投与に関連して使用される場合、本発明の医薬組成物は、活性化合物の無菌の水性及び非水性の注射溶液、懸濁液又は乳剤を含み得、これらの調製物は好ましくは意図されたレシピエントの血液と等張である。これらの調製物は、酸化防止剤、緩衝剤、界面活性剤、共溶媒、静菌剤、この組成物を意図されたレシピエントの血液と等張にする溶質、及び当該分野で公知の他の製剤成分の1つ以上を含み得る。水性及び非水性の無菌懸濁液は、懸濁剤及び増粘剤を含み得る。組成物は、単回用量又は複数用量の容器(例えば、密封アンプル及びバイアル)中で提示され得る。
【0076】
本発明は、所望の場合、ペプチドが「代替療法」として投与され、そしてこのようなペプチドが、ポリエチレングリコール(PEG)に更にコンジュゲートされていてもよい実施形態も提供する。PEGコンジュゲート化は、これらのポリペプチドの循環半減期を増大させ、ポリペプチドの免疫原性及び抗原性を低下させ、それらの生物活性を改善し得る。使用される場合、PEGコンジュゲート化の任意の適切な方法が使用され得、該方法としては、メトキシ−PEGをペプチドの利用可能なアミノ基(複数可)又は他の反応性部位(例えば、ヒスチジン又はシステインなど)と反応させることが挙げられるが、これに限定されない。また、組換えDNAアプローチが、PEG反応性基を有するアミノ酸をペプチドリガンドドメイン含有コンジュゲートに付加するために使用され得る。更に、放出可能なハイブリッドPEG化戦略が、本発明の態様に従って使用され得る(ペプチドリガンドドメイン含有コンジュゲート分子中の特定の部位に付加されたPEG分子がin vivoで放出されるようなポリペプチドのPEG化など)。PEGコンジュゲート化方法の例は、当該分野で公知である。例えば、Greenwald et al., Adv. Drug Delivery Rev. 55:217-250 (2003)を参照のこと。
【0077】
動物は、治療又は診断を必要とする任意の患者又は対象であり得る。好ましい実施形態では、動物は哺乳動物である。特に好ましい実施形態では、動物はヒトである。他の実施形態では、動物は、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、ブタ、ヒツジ、ウマ、ウシ、又は非ヒト霊長類であり得る。
【0078】
以下の実施例により本発明を更に説明するが、当然ながら、これらの実施例は本発明の範囲を何ら限定するものでないと解釈されるべきである。
【実施例】
【0079】
実施例1
【0080】
本実施例は、遡及的な腫瘍のSPARCの状態を考慮した、アブラキサン(商標)アルブミン結合ナノ粒子パクリタキセルへの患者の反応性の解析を記載する。
【0081】
頭頸部癌を有する54患者を動脈内アブラキサン(商標)アルブミン結合ナノ粒子パクリタキセルで治療し、腫瘍をX線写真で測定して治療に対する反応性を決定した。そのようなデータを入手できた16患者について、遡及的に腫瘍のSPARCの状態を決定した。
【0082】
全患者(n=54)について、アブラキサン(商標)アルブミン結合ナノ粒子パクリタキセルに対する全体的な陽性反応は45/54(78%)であった。腫瘍のSPARCの状態が既知の患者について、SPARC陽性腫瘍を有する12患者のうち10名(83%)がアブラキサン(商標)に反応した。対照的に、SPARC陰性腫瘍を有する患者について、4患者のうち1名のみ(25%)がそのような治療に反応した。結果は、フィッシャーの正確確率検定を用いてP=0.06まで有意である。
【0083】
これらの結果は、腫瘍のSPARC陽性の状態と、アブラキサン(商標)アルブミン結合ナノ粒子パクリタキセル化学療法への反応性との間に相関があるらしいことを示している。
【0084】
実施例2
【0085】
本実施例は、腫瘍の微小環境におけるSPARC発現の異なる成分の同定、及び予後情報の提供におけるそれらの使用を記載する。
【0086】
SPARCに対する一連の抗体を、様々な正常組織及び腫瘍組織における結合特性について評価した。腫瘍細胞、血管、線維芽細胞、間質、炎症細胞、及び隣接する正常組織におけるSPARC発現レベルを含む、腫瘍の種々の成分において、免疫染色により決定されるSPARC発現パターンを決定した。SPARCに対する示差的な親和性を有する2つの抗体を特定し、これらを追跡研究において用いた。具体的には、染色パターンをモノクローナル抗体(「抗体M」)(SPARCモノクローナル抗体(R&D Systems,ミネアポリス,MN),カタログ番号MAB941,ロット番号ECH045011,トリスベースの希釈剤中で1:100に希釈)及びポリクローナル抗体(「抗体P」)(SPARCポリクローナル抗体(R&D Systems,ミネアポリス,MN,カタログ番号AF941,ロット番号EWN04,トリスベースの希釈剤中で1:50に希釈)を用いて決定した。
【0087】
腫瘍の組織切片をスライド上に調製し、標準的な免疫染色プロトコールを用いて染色した。簡潔に述べれば、ホルマリン固定され、パラフィン包埋された腫瘍のブロックからの組織のコア(ブロックあたり最も代表的な領域からの2つのコア)を配列して(Beecher Instruments, シルバースプリング, Md)、各2.0mmの大きさのコアの組織マイクロアレイを作り、正に帯電したスライド上に配置した。次いで標本を有するスライドを60℃のオーブンに1時間配置し、冷却し、脱パラフィン化し、キシレン及び段階的なエタノール溶液を経て水まで再水和した。自動化された染色機器(Dako Cytomation Autostainer, Dako, カーピンテリア, CA)を用いて全てのスライドを染色した。
【0088】
全てのスライドを3%過酸化水素水溶液中で5分間クエンチし、内在性ペルオキシダーゼをブロッキングした。緩衝液でのリンス後、スライドを抗体M又は陰性対照の試薬と共に30分間インキュベートした。マウス西洋ワサビペルオキシダーゼポリマーキット(Mouse MACH 3 HRP Polymer Kit, Biocare Medical, コンコード, CA)を試薬あたり20分間インキュベートした。もう一度緩衝液でリンスした後、DAB発色剤(Dako, カーピンテリア, CA)を10分間適用した。ヘマトキシリンを用いてスライドを対比染色した。同じプロトコールを抗体Pでの免疫染色標本に対して用いたが、HRP検出キットの代わりにアビジン−ビオチン検出キット(Biocare Medical, コンコード, CA)を用い、試薬あたり15分間インキュベートした。
【0089】
一連の腫瘍におけるSPARC発現の詳細な病理学的評価が有資格の病理学者により行われた。免疫組織化学により決定されたSPARC発現のレベルを異なる腫瘍の成分についてスコア付けした。当該分野で一般に行われ、当業者に周知であるようにして、0〜3のスケール(3が最も陽性のスコアである)でスコアをSPARC発現レベルに付与した。用いたモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体により、表1に示されるように、異なるパターンのSPARC発現が検出された。
【0090】
【表1】

【0091】
ポリクローナル抗体は、線維芽細胞においてSPARCの選択的染色を示した。一方、モノクローナル抗体は、腫瘍細胞においてSPARCを好ましく染色した。これらの染色選択性から、一連の腫瘍における予測的価値について以下のSPARCパターンを分析した。
【0092】
3+がいずれかの成分において見られた場合、A。
【0093】
3+がモノクローナル抗SPARC抗体でいずれかの成分において見られた場合、B。
【0094】
3+がモノクローナル抗SPARC抗体でいずれかの成分において見られた場合、C。
【0095】
3+が両方の抗SPARC抗体で腫瘍細胞において見られた場合、D。
【0096】
3+が両方の抗SPARC抗体で線維芽細胞において見られた場合、E。
【0097】
ロジスティック回帰及び比例ハザードを用いて、SPARCパターンに対する、反応、無進行生存(「PFS」)及び全生存(「OS」)の間の相関を決定した。
【0098】
腫瘍のセットの一つは、切除不能の第4期の黒色腫を有する患者におけるカルボプラチン及びnab−パクリタキセル(ABI-007)の第2相試験であった。具体的には、nab-パクリタキセル(100 mg/m2)及びカルボプラチン(AUC2)を28日サイクルの1日目、8日目及び15日目に投与した。図1に示されるように、Dパターン(すなわち、3+が両方の抗SPARC抗体で腫瘍細胞において見られた場合)と全生存との間に統計的に有意な相関があった。
【0099】
28日サイクルの1日目、8日目及び15日目に与えられるアブラキサン(商標)アルブミン結合ナノ粒子パクリタキセル(100-150 mg/m2)及びゲンシタビン(Gencitabine)(1000 mg/m2)で治療されている進行性膵臓腺癌を有する患者から、別のセットの腫瘍を得た。これらの患者において、治療に対する反応が表2に示される通りに観察された。
【0100】
【表2】

【0101】
これらの患者において、反応と、ポリクローナル抗SPARC抗体での染色により決定される腫瘍細胞のSPARC発現との間に有意な相関があった(片側t検定, p = 0.027)。一方、モノクローナル抗体での腫瘍細胞の染色により、より悪い全生存及び無進行生存が予測された。
【0102】
更に、Bパターンの染色(すなわち、3+がモノクローナル抗SPARC抗体でいずれかの成分において見られた場合)は、膵臓腺癌を有するこれらの患者における、このレジメンでの最悪の無進行生存を予測するものであった。
【0103】
これらの結果は、ナノ粒子パクリタキセルベースのレジメン(具体的には、アブラキサン(商標)ベースのレジメン)に対する患者の反応と、腫瘍の異なる細胞型におけるSPARC発現パターンとの間の統計的に有意な関係を示している。
【0104】
実施例3
【0105】
本実施例は、SPARC発現が乳癌におけるエストロゲン受容体(ER)陽性と何らかの相関を有するかどうかを評価する。
【0106】
2つの術前補助乳房試験からの54のER陽性(ER+)及び52のER陰性(ER−)乳房腫瘍試料を、2つの抗SPARC抗体の組み合わせで評価した。モノクローナル抗SPARC抗体での腫瘍細胞の染色は、ER陽性と有意に相関していた(p=0.01)。54のER+腫瘍のうち、44.44%(n=24)はmAT SPARC陽性であり、55.58%(n=30)はSPARC陰性であった。52のER−腫瘍のうち、78.5%(n=41)はSPARC陰性でもあり、21.15%(n=l1)はSPARC陽性であった。
【0107】
ER陽性は、乳癌における良好な予後指標と考えられているが、これらの結果は、それはSPARC陽性にも関連していることを示している。
【0108】
実施例4
【0109】
本実施例は、組織切片の調製及び免疫学的染色のための例示的なプロトコールを提供する。
【0110】
ホルマリン固定され、パラフィン包埋された腫瘍のブロックからの組織のコア(ブロックあたり最も代表的な領域からの2つのコア)を配列して(Beecher Instruments, シルバースプリング, Md)、各2.0mmの大きさのコアの組織マイクロアレイを作り、正に帯電したスライド上に配置する。標本を有するスライドを60℃のオーブンに1時間配置し、冷却し、脱パラフィン化し、キシレン及び段階的なエタノール溶液を経て水まで再水和する。全てのスライドを3%過酸化水素水溶液中で5分間クエンチし、内在性ペルオキシダーゼをブロッキングする。抗原回復は加熱法により行う。加熱法では、標本がクエン酸溶液(pH 6.1;code S 1699, Dako, カーピンテリア, CA)中に野菜用スチーマーを用いて94℃で20分間配置された後、15分間冷却された。次いで、好適な抗体を用いる免疫組織化学での使用のために、スライドを免疫染色システム(Dako Cytomation Autostainer (Dako, カーピンテリア, CA)など)に配置する。
【0111】
この方法は、(1)局在する抗原に対する一次抗体、(2)ビオチン化架橋抗体、(3)酵素コンジュゲート化ストレプトアビジン、及び(4)基質発色剤(DAB)の連続的な適用に基づく。次いで、スライドをRichard-Allanヘマトキシリン(カラマズー, MI)中で対比染色し、段階的なエタノール溶液を通じて脱水し、カバースリップを乗せる。
【0112】
実施例5
【0113】
本実施例は、複数の免疫染色を同時に用いる(「二色二重免疫染色」)、組織切片の調製及び免疫染色のための例示的なプロトコールを提供する。
【0114】
上記実施例4におけるように、パラフィン包埋した組織ブロックを4μmにカットし、正に帯電したスライド上に配置する。次いで標本を有するスライドを60℃のオーブンに1時間配置し、冷却し、脱パラフィン化し、キシレン及び段階的なエタノール溶液を経て水まで再水和する。次いで、全てのスライドを3%過酸化水素水溶液中で5分間クエンチし、内在性ペルオキシダーゼをブロッキングする。抗原回復は加熱法により行う。加熱法では、野菜用スチーマーを用いて、標本がクエン酸溶液(pH 6.1)中に94℃で(以前に述べた個々の抗体についての20分間と対比して)25分間配置された後、15分間冷却される。次いで、免疫組織化学での使用のために、スライドを免疫染色システム(Dako, カーピンテリア, CA)に配置する。
【0115】
第1の一次抗体を室温で30分間インキュベートする。検出システムEnVision+ dual link(Dako, code K4061, カーピンテリア, CA)を30分間インキュベートする。最後に、DAB発色剤である。第2の一次抗体を適用する前に、無血清のタンパク質ブロックを添加し(Dako, code X0909, カーピンテリア, CA)、バックグラウンド及び一次抗体間の交差を最小化する。第2の一次抗体を室温で1時間インキュベートする。EnVision+ dual link(Dako, code K4061, カーピンテリア, CA)を検出システムとして再び用い、30分間インキュベートする。2つの抗体による染色が容易に識別できるように、NovaRED(Vector Laboratories, バーリンゲーム, Calif)を第2の一次抗体と共に用いる。次いで、スライドをRichard-Allanヘマトキシリン中で対比染色し、段階的なエタノール溶液を通じて脱水し、カバースリップを乗せる。
【0116】
本明細書で挙げた出版物、特許出願、及び特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が参照することにより組み込まれることが個別におよび具体的に示され、かつその全体が本明細書に記載されているのと同程度に、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0117】
本発明(特に添付の特許請求の範囲に関して)を記載することに関して、用語「a」及び「an」及び「the」並びに同様の指示対象の使用は、本明細書中に別途示されない限り、又は文脈に明らかに矛盾しない限り、単数及び複数の両方を含むと解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including
)」、及び「含む(containing)」は、別途言及されない限り、オープンエンドな用語(即ち、「含むが、それに限定されない」を意味する)と解釈されるべきである。本明細書中の値の範囲の列挙は、本明細書中に別途示されない限り、この範囲内に入るそれぞれ別々の値に個々に言及する省略方法として機能することを意図するに過ぎず、それぞれ別々の値は、それが本明細書中に個々に列挙されたかのように、本明細書中に組み込まれる。本明細書中に記載される全ての方法は、本明細書中に別途示されない限り、又はさもなければ文脈に明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施されうる。本明細書中に提供されるあらゆる、そして全ての例示、又は例示的語句(例えば、「など(such as)」)の使用は、本発明をより明確にすることを意図するに過ぎず、別途主張されない限り、本発明の範囲を限定しない。本明細書中のいかなる語句も、主張されていない任意の要素を本発明の実施に必須なものとして示していると解釈されるべきではない。
【0118】
本発明の好ましい実施形態が本明細書中に記載されており、本発明を実施するための、本発明者らが知る最良の形態を含む。それらの好ましい実施形態のバリエーションは、前述の記載を読めば、当業者に明らかになりうる。本発明者らは、当業者が必要に応じてこのようなバリエーションを使用することを予期し、また本発明者らは、本明細書中に具体的に記載されたもの以外の方法で、本発明が実施されることを意図する。従って、本発明は、適用法により許容されるような、本明細書に添付された特許請求の範囲に記載された対象の全ての改変物及び均等物を含む。更に、全ての可能なバリエーションでの上記要素の任意の組み合わせが、本明細書中に別途示されない限り、又はさもなくば文脈に明らかに矛盾しない限り、本発明により包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の腫瘍の化学療法レジメンに対する反応を予測するための方法であって、
(a)該腫瘍の組織切片に対して第1の抗SPARC抗体を適用すること;
(b)(a)の組織切片又は該腫瘍の第2の組織切片に対して第2の抗SPARC抗体を適用すること;及び
(c)該第1の抗SPARC抗体及び該第2の抗SPARC抗体が該組織切片を免疫染色した場合に、該化学療法レジメンに対する陽性の反応を予測すること
を含み、該第1の抗SPARC抗体は、腫瘍細胞中のSPARCを選択的に免疫染色し、該第2の抗SPARC抗体は、線維芽細胞中のSPARCを選択的に免疫染色する、方法。
【請求項2】
動物の腫瘍の化学療法レジメンに対する反応を予測するための方法であって、
(a)該腫瘍の組織切片に対して第1の抗SPARC抗体を適用すること;
(b)(a)の組織切片又は該腫瘍の第2の組織切片に対して第2の抗SPARC抗体を適用すること;及び
(c)該第2の抗SPARC抗体が該組織切片を免疫染色した場合に、該化学療法レジメンに対する陽性の反応を予測すること
を含み、該第1の抗SPARC抗体は、腫瘍細胞中のSPARCを選択的に免疫染色し、該第2の抗SPARC抗体は、線維芽細胞中のSPARCを選択的に免疫染色する、方法。
【請求項3】
動物の腫瘍の化学療法レジメンに対する反応を予測するための方法であって、
(a)該腫瘍の組織切片に対して第1の抗SPARC抗体を適用すること;
(b)(a)の組織切片又は該腫瘍の第2の組織切片に対して第2の抗SPARC抗体を適用すること;及び
(c)該第1の抗SPARC抗体及び該第2の抗SPARC抗体が該組織切片を免疫染色した場合に、該化学療法レジメンに対する陽性の反応を予測すること
を含み、該第1の抗SPARC抗体は、モノクローナル抗体MAB941により認識されるSPARCエピトープを認識し、該第2の抗体は、ポリクローナル抗体AF941により認識されるSPARCエピトープを認識する、方法。
【請求項4】
動物の腫瘍の化学療法レジメンに対する反応を予測するための方法であって、
(a)該腫瘍の組織切片に対して第1の抗SPARC抗体を適用すること;
(b)(a)の組織切片又は該腫瘍の第2の組織切片に対して第2の抗SPARC抗体を適用すること;及び
(c)該第2の抗SPARC抗体が該組織切片を免疫染色した場合に、該化学療法レジメンに対する陽性の反応を予測すること
を含み、該第1の抗SPARC抗体は、モノクローナル抗体MAB941により認識されるSPARCエピトープを認識し、該第2の抗体は、ポリクローナル抗体AF941により認識される免疫優性のSPARCエピトープを認識する、方法。
【請求項5】
化学療法レジメンで動物の腫瘍を治療する方法であって、
(a)該腫瘍の組織切片に対して第1の抗SPARC抗体を適用すること;
(b)(a)の組織切片又は該腫瘍の第2の組織切片に対して第2の抗SPARC抗体を適用すること;及び
(c)該第1の抗SPARC抗体及び該第2の抗SPARC抗体が該組織切片を免疫染色した場合に、該化学療法レジメンを投与すること
を含み、該第1の抗SPARC抗体は、腫瘍細胞中のSPARCを選択的に免疫染色し、該第2の抗SPARC抗体は、線維芽細胞中のSPARCを選択的に免疫染色する、方法。
【請求項6】
化学療法レジメンで動物の腫瘍を治療する方法であって、
(a)該腫瘍の組織切片に対して第1の抗SPARC抗体を適用すること;
(b)(a)の組織切片又は該腫瘍の第2の組織切片に対して第2の抗SPARC抗体を適用すること;及び
(c)該第1の抗SPARC抗体及び該第2の抗SPARC抗体が該組織切片を免疫染色した場合に、該化学療法レジメンを投与すること
を含み、該第1の抗SPARC抗体は、モノクローナル抗体MAB941により認識されるSPARCエピトープを認識し、該第2の抗体は、ポリクローナル抗体AF941により認識されるSPARCエピトープを認識する、方法。
【請求項7】
動物の腫瘍の化学療法レジメンに対する反応を予測するための方法であって、
(a)該腫瘍の組織切片に対して抗SPARC抗体を適用すること;
(b)該抗SPARC抗体が該組織切片を免疫染色した場合に、該化学療法レジメンに対する陰性の反応を予測すること
を含み、該抗SPARC抗体は、モノクローナル抗体MAB941により認識されるSPARCエピトープを認識する、方法。
【請求項8】
動物の腫瘍の化学療法レジメンに対する反応を予測するための方法であって、
(a)(a)の組織切片又は該腫瘍の第2の組織切片に対して抗SPARC抗体を適用すること;及び
(b)該抗SPARC抗体が該組織切片を免疫染色した場合に、該化学療法レジメンに対する陽性の反応を予測すること
を含み、該第2の抗体は、ポリクローナル抗体AF941により認識される免疫優性のSPARCエピトープを認識する、方法。
【請求項9】
該腫瘍が、口腔腫瘍、咽頭腫瘍、消化器系腫瘍、呼吸器系腫瘍、骨腫瘍、軟骨性腫瘍、骨転移、肉腫、皮膚腫瘍、黒色腫、乳房腫瘍、生殖器系腫瘍、尿路腫瘍、眼窩腫瘍、脳及び中枢神経系の腫瘍、神経膠腫、内分泌系腫瘍、甲状腺腫瘍、食道腫瘍、胃腫瘍、小腸腫瘍、結腸腫瘍、直腸腫瘍、肛門腫瘍、肝臓腫瘍、胆嚢腫瘍、膵臓腫瘍、喉頭腫瘍、肺の腫瘍、気管支腫瘍、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、子宮頸腫瘍、子宮体部腫瘍、卵巣腫瘍、外陰部腫瘍、膣腫瘍、前立腺腫瘍、前立腺癌、精巣腫瘍、陰茎の腫瘍、膀胱腫瘍、腎臓の腫瘍、腎盂の腫瘍、尿管の腫瘍、頭頸部腫瘍、副甲状腺癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、及び肛門腫瘍からなる群から選択される、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
化学療法レジメンが、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン(L−サルコリシン)、クロラムブシル、エチレンイミン、メチルメラミン、ヘキサメチルメラミン、チオテパ、ブスルファン、カルムスチン(BCNU)、セムスチン(メチル−CCNU)、ロムスチン(CCNU)、ストレプトゾシン(ストレプトゾトシン)、リン酸エストラムスチン、デカルバジン(DTIC、ジメチル−トリアゼノイミダゾールカルボキサミド)、テモゾロミド、メトトレキセート(アメトプテリン)、フルオロウラシル(fluorouracin)(5−フルオロウラシル、5−FU、5FU)、フロクスウリジン(フルオロデオキシウリジン、FUdR)、シタラビン(シトシンアラビノシド)、ゲムシタビン、メルカプトプリン(6−メルカプトプリン、6−MP)、チオグアニン(6−チオグアニン、TG)、ペントスタチン(2’−デオキシコホルマイシン、デオキシコホルマイシン)、クラドリビン、フルダラビン、アムサクリン、ビンブラスチン(VLB)、ビンクリスチン、パクリタキセル、ドセタキセル(タキソテール);エピポドフィロトキシン、エトポシド、テニポシド、カンプトテシン、トポテカン、イリノテカン、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン(ダウノマイシン、ルビドマイシン)、ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン(マイトマイシンC)、イダルビシン、エピルビシン、L−アスパラギナーゼ、インターフェロンα、インターロイキン2、ブセレリン、アドレノコルチコステロイド、プレドニゾン、プロゲスチン、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール;エストロゲン、ジエチルスチルベストロール、エチニルエストラジオール、タモキシフェン、アナストロゾール、プロピオン酸テストステロン、フルオキシメステロン、フルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、サリドマイド、シスプラチン(cis−DDP)、オキサリプラチン、カルボプラチン、アントラセンジオン、ミトキサントロン、ヒドロキシウレア;メチルヒドラジン、プロカルバジン(N−メチルヒドラジン、MIH)、ミトタン(o,p’−DDD)、アミノグルテチミド、ベキサロテン;チロシンキナーゼ阻害剤、イマチニブ、血管新生阻害剤、及び生物学的反応修飾物質のうちの1つ以上を投与することを含む、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
該治療レジメンが、治療有効量の代替療法を更に含む、請求項9記載の方法。
【請求項12】
該治療レジメンが、治療有効量の、毒素、レクチン、血管新生阻害剤、レセプターチロシンキナーゼ阻害剤、ゲフィチニブ、エルロチニブ、セツキシマブ、メシル酸イマチニブ(imatinib mesilate)、プロテオソーム阻害剤、ボルテゾミブ、VEGFR2阻害剤、PTK787、オーロラキナーゼ阻害剤、ZM447439;mTOR阻害剤、シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤、ラパマイシン、シロリムス、ラパミューン(商標)、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、チピファルニブ、ザルネストラ、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、BAY 12−9566;硫酸化多糖テコガラン、血管新生阻害剤、ベバシズマブ、フマギリンのアナログ、TNP−4、カルボキシアミノトリアゾール、BB−94、BB−2516、サリドマイド、インターロイキン−12;リノミド、血管増殖因子に対する抗体、血管増殖因子受容体に対する抗体、血小板由来増殖因子受容体阻害剤、プロテインキナーゼC阻害剤、マイトジェン活性化キナーゼ阻害剤、マイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼ阻害剤、ラウス肉腫ウイルス形質転換癌遺伝子(SRC)阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、低分子低酸素誘導因子阻害剤、ヘッジホッグ阻害剤、及びTGF−βシグナル伝達阻害剤、又はこれらの組み合わせを投与することを更に含む、請求項9記載の方法。
【請求項13】
該腫瘍が黒色腫である、請求項1又は5のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
該化学療法レジメンが、ナノ粒子のアルブミン結合パクリタキセル、およびカルボプラチンを含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
該腫瘍が膵臓癌である、請求項2、4または7に記載の方法。
【請求項16】
該化学療法レジメンが、ナノ粒子のアルブミン結合パクリタキセルを含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
該第1の抗SPARC抗体がモノクローナル抗体である、請求項1、3、5または9〜16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
該第2の抗SPARK抗体がポリクローナル抗体である、請求項1、3、5または9〜16のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
該第1の抗SPARK抗体での染色および該第2の抗SPARK抗体での染色が、該腫瘍の同じ組織切片に対して同時に為される、請求項1〜18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
該第1の抗SPARK抗体での染色および該第2の抗SPARK抗体での染色が、該腫瘍の異なる組織切片に対して別々に為される、請求項1〜18のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
該第1の抗SPARK抗体がMAB941モノクローナル抗体である、請求項1、3、5または9〜21のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
該第2の抗SPARK抗体がAF941ポリクローナル抗体である、請求項1、3、5または9〜21のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
該動物がヒト患者である、請求項1〜22のいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−528337(P2012−528337A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513301(P2012−513301)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/036615
【国際公開番号】WO2010/138839
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(508235494)アブラクシス バイオサイエンス リミテッド ライアビリティー カンパニー (22)
【Fターム(参考)】