化学的機械的研磨用の研磨パッド
本発明は、一実施形態において、化学的機械的研磨用の研磨パッド(100)を提供する。研磨パッドは、研磨本体(110)を備えている。研磨本体は、凹面セル(125)を備えた表面(120)を有する熱可塑性発泡体基板(115)を備えている。研磨剤(130)は、凹面セルの内部表面(135)を被覆する。研磨剤は、炭化物または窒化物を含有する無機金属酸化物を含む。本発明の別の実施形態は、研磨パッド(200)を製造するための方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス、半導体、誘電体、金属およびそれらの複合材料、磁性大容量記憶媒体および集積回路などの物品上に、平滑な、超平坦面を作りだすための化学的機械的研磨を対象とする。
【背景技術】
【0002】
化学的機械的研磨(CMP)は、金属および誘電体薄膜の両方を平坦化するために、成功裏に使用されてきた。1つの妥当な平坦化機構においては、研磨工程では、スラリーの存在下でウエハ表面およびパッド材料の高い部分が緊密に接触することが必要であると考えられている。この筋書きでは、スラリーと研磨されつつあるウエハ表面との反応から生じた腐食された材料が、パッド−ウエハ界面で剪断によって除去される。パッド材料の弾性的特性は、最終の平坦性および研磨速度に大きく影響する。その結果、弾性的特性は、固有のポリマーおよびその発泡構造物の両方の関数である。
【0003】
歴史的には、ポリウレタンベースのパッドが、高強度、高硬度、高弾性率および破壊時の伸びが大きいために、CMP用に使用されてきた。そのようなパッドは、良好な均一性を有し、かつ効果的に形態を縮小しうるが、急速かつ均一に表面材料を除去するパッドの能力は、使用することにより急速に低下する。ポリウレタンベースのパッドについて観測される、時間に依存した材料除去速度の低下は、臨界剪断力の条件下にあるそのような研磨パッドの機械的な応答の変化によるものとされてきた。ポリウレタンベースのCMPパッドの機能が低下するのは、研磨時に使用されるパッドおよびスラリー間の相互作用によりパッドが分解するためであると一般に考えられている。
【0004】
さらに、ポリウレタンパッドの場合は、分解により、均一な研磨にとって有害となりうる、パッド内およびパッド自体の表面改変が生じる。別法として、いくつかの例においては、CMP研磨に使用される材料の表面改変により、使用時の性能を改善しうる。しかし、そのような改変は一時的なものであり、したがって、CMPパッドの交換または再処理が頻繁に必要になる。また、ポリウレタンパッドでは、研磨前の試運転期間、さらに使用後の整備および再処理が通常必要である。また、研磨装置が活動を停止している間、伝統的なパッドを湿った状態に保持することが、しばしば必要になる。これらの特性により、ポリウレタンまたはこれと類似の従来のパッドを使用する場合は、望ましくないことにCMPの全体としての効率が低下する。
【特許文献1】米国特許第6579604号
【特許文献2】米国特許出願第10/241074号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、必要なものは、CMPの間に高度に平坦な表面を作りだし、寿命を改善し、その一方で、上述の諸問題を経験しなくて済むことができる改善されたCMPパッドである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記で考察した従来技術の欠陥に対処するために、本発明は、一実施形態において、化学的機械的研磨用の研磨パッドを提供する。研磨パッドは、熱可塑性発泡体基板を備えた研磨本体を含む。熱可塑性発泡体基板は、凹面のセルを備えた表面を含む。凹面セルの内部表面を被覆する研磨剤は、炭化物または窒化物を含む無機金属酸化物を含む。
【0007】
本発明の別の実施形態は、研磨パッドを製造するための方法を対象とする。この方法は、熱可塑性発泡体基板の内部にある独立セルを露出させて、凹面セルを含む基板表面をもたらすことを含む。この方法は、さらに、無機金属酸化物を含む研磨剤により凹面セルの内部表面を被覆することを含み、被覆する間に炭化物および窒化物は無機金属酸化物中に取り込まれる。
【0008】
本発明をより完全に理解するために、添付図と共に以下の説明を参照することにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、凹面セル上に研磨剤の均一な被覆を堆積させるための基板として熱可塑性ポリマーを使用するという、以前には気づいていなかった利点から利益を得る。凹面セルの内部表面は、研磨剤の均一な被覆を収容するための優れた容器を形成することが分かった。中心のセルの表面エネルギーは最も低いので、凹面セルの中心は、被覆のための優れた核形成点として働くと仮定される。この地点で被覆が開始すると、凹面セルの内部表面を研磨剤により均一に覆いやすくなり、その結果、そのような表面を有するパッドの研磨性能を促進するとみられる。
【0010】
本発明の研磨剤は、窒化物または炭化物を含む無機金属酸化物を含む。パッド表面を被覆するためにそのような金属酸化物を使用することにより、有利にも研磨パッド表面を永久に親水性にすることができる。好ましくは、無機金属酸化物は、窒化物または炭化物を格子中に取り入れた原子の格子を有する。そのような研磨剤の表面被覆を使用することにより、研磨パッドの表面の機械的特性が改変され、研磨が向上する。
【0011】
例えば、特定の無機金属酸化物中の窒化物または炭化物の含有量を変化させることにより、研磨パッド表面の機械的特性を微調整して、研磨されつつある表面に適した機械的特性にすることができる。その結果、研磨パッド表面の機械的特性を研磨されつつある表面に適したものにすることにより、研磨速度の選択性を向上させ、工程によって引き起こされる欠陥、例えば引っ掻き傷などを減少させることができる。表面の機械的特性の微調整は、プラズマ支援化学蒸着(PECVD)による表面被覆および大部分の熱可塑性基板内の二次熱誘起反応により生じた熱可塑性ポリマー基板の改変を利用して達成することができる。
【0012】
本発明の一実施形態は、半導体デバイスを化学的機械的に研磨するための研磨パッドである。図1は、本発明の例示的な研磨パッド100を示す。この研磨パッド100は、研磨本体110を備えている。研磨本体110は、凹面セル125を含む表面120を有する熱可塑性発泡体基板115を備えている。凹面セル125の内部表面135を被覆する研磨剤130は、炭化物または窒化物を含む無機金属酸化物を含む。
【0013】
研磨剤130は、プラズマ支援化学蒸着(PECVD)法において、熱可塑性発泡体基板115表面120上で二次反応物のグラフティング(grafting)によって形成された、1種または複数種の無機金属酸化物から構成されたセラミック化合物を含む。以下でさらに説明されるように、本発明においては、無機金属酸化物内に炭化物または窒化物が含有されるのを促進するように、PECVD法を変更することができる。
【0014】
炭化物または窒化物の一方または両方が無機金属酸化物の格子に取り込まれていることが好ましい。例えば、無機金属酸化物が酸化ケイ素を含む場合、格子は、四面体および歪んだ四面体配置を持つ、重合したSi−O−Si構造内にケイ酸塩を含むことができる。窒化物は、これらの格子に取り込まれた窒化ケイ素を含むことができる。別法として、無機金属酸化物が酸化チタンを含む場合は、窒化物は、酸化チタンの格子に取り込まれた窒化チタンを含むことができる。同様に、炭化ケイ素および炭化チタンは、無機金属酸化物が、それぞれ、酸化ケイ素および酸化チタンを含む研磨剤130に取り込まれることができる。いくつかの好ましい実施形態においては、窒化ケイ素などの窒化物は研磨剤130を約10モル%含み、一方、別の実施形態においては、炭化ケイ素などの炭化物は研磨剤を約10モル%含む。いくつかの好ましい実施形態においては、研磨剤130は、これらの濃度の窒化物および炭化物を共に含む。
【0015】
PECVD法が長時間に及ぶと、研磨剤130中のシラノール濃度は減少し、酸素のケイ素に対する比の減少をもたらす。研磨剤130が酸化ケイ素を含む研磨パッド100のいくつかの有利な実施形態においては、O:Si比は、少なくとも約8:1、およびいくつかの場合は、少なくとも約9.9:1である。
【0016】
研磨剤130に窒化物および炭化物を含ませることにより、研磨パッド100の機械的特性を変化させ、それによりパッドの研磨特性を変化させるというこれまでは気づいていなかった、追加の手段がもたらされる。いくつかの好ましい実施形態においては、研磨パッド100は、60KPaを超える、より好ましくは70KPaを超える硬度を有する。その他の好ましい実施形態では、研磨パッド100は約62KPaから70KPaの間の硬度を有する。特定の好ましい実施形態においては、研磨パッド100は、約3MPaをほぼ超える、より好ましくは4MPa以上の弾性率を有する。他の好ましい実施形態においては、研磨パッドは、それぞれ、約4MPaおよび8.2MPaの間の弾性率を有する。その他の実施形態においては、研磨パッド100は、約0.4MPa以上の、およびより好ましくは、少なくとも約0.6MPaの損失弾性率を有する。
【0017】
参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6579604号および米国特許出願第10/241074号に開示されているように、研磨剤130の無機金属酸化物は、PECVD法において二次反応物として使用される、さまざまな酸素含有有機金属化合物から製造されうる。例えば、二次プラズマ混合物は、チタン、マンガン、またはタンタルなどの遷移金属を含むことができる。しかし、1つまたは複数の酸素原子を含有する金属エステルなどの揮発性有機金属化合物を形成し、かつポリマー表面にグラフトされうるどの金属元素でも適している。また、ケイ素も有機金属二次プラズマ混合物の金属部分として用いることができる。これらの実施形態において、有機金属試薬の有機部分は、エステル、酢酸、またはアルコキシ・フラグメントでありうる。好ましい実施形態においては、研磨剤130の無機金属酸化物には、それぞれ、二酸化ケイ素または二酸化チタンなどの酸化ケイ素または酸化チタン;テトラエトキシシランポリマー;またはチタンアルコキシドポリマーが含まれる。
【0018】
その他の二次プラズマ反応物には、オゾン、アルコキシシラン、水、アンモニア、アルコール、ミネラルスピリットまたは過酸化水素が含まれる。いくつかの好ましい実施形態においては、二次プラズマ反応物には、チタンエステル;アルコキシド部分が、1〜5個の炭素原子を有するタンタルアルコキシドを含むタンタルアルコキシド;水に溶解した酢酸マンガン溶液;ミネラルスピリットに溶解したマンガンアルコキシド;酢酸マンガン;アセチルアセトナトマンガン;アルミニウムアルコキシド;アルコキシアルミネート(alkoxy aluminate);酸化アルミニウム;アルコキシドが1〜5個の炭素原子を有するジルコニウムアルコキシド;アルコキシジルコネート(alkoxy zirconate);酢酸マグネシウム;およびアセチルアセトナトマグネシウムが含まれる。また、他の実施例は、二次プラズマ反応物、例えば、アルコキシシランおよびオゾン、アルコキシシランおよびアンモニア、チタンエステルおよび水、チタンエステルおよびアルコール、またはチタンエステルおよびオゾンのために企図されている。
【0019】
熱可塑性発泡体基板115のいくつかの好ましい実施形態は、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびそれらの組合せなどの架橋ポリオレフィンを含む。特定の好ましい実施形態においては、熱可塑性発泡体基板115は、架橋ホモポリマーまたはコポリマーの独立セルの泡を含む。ポリエチレン(PE)を含む、独立セルの発泡体架橋ホモポリマーの例には、Voltek(ローレンス、マサチューセッツ州)からのVolara(商標)およびVolextra(商標);JMS Plastics Supply、Inc.(ネプチューン、ニュージャージー州)からのAliplast(商標);またはSenflex T−cell(商標)(Rogers Corp.、ロジャーズ、コネチカット州)が含まれる。ポリエチレンおよびエチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)を含む架橋コポリマーの独立セルの発泡体の例には、Volara(商標)およびVolextra(商標)(Voltek Corp.から);Senflex EVA(商標)(Rogers Corp.から);およびJ−foam(商標)(JMS Plastics JMS Plastics Supply、Inc.から)が含まれる。
【0020】
その他の好ましい実施形態においては、独立セルの熱可塑性発泡体基板115は、架橋エチレン酢酸ビニルコポリマーおよび低密度ポリエチレンコポリマー(すなわち、好ましくは、約0.1から約0.3gm/ccの間にある)のブレンドを含む。その他の有利な実施形態においては、ブレンドは、約1:9から約9:1の間にあるエチレン酢酸ビニル:ポリエチレンの重量比を有する。特定の好ましい実施形態においては、ブレンドは、約5から約45重量%、好ましくは、約6から約25重量%、およびより好ましくは、約12から約24重量%にわたるEVAを含む。そのようなブレンドは、熱可塑性発泡体基板115の、小さな寸法(例えば、約10から約500ミクロン、より好ましくは、50から150ミクロンの間にある直径)を有する独立セル140を、望ましく製造することに貢献すると考えられている。さらに、より好ましい実施形態においては、ブレンドは、約0.6:9.4から約1.8:8.2の間にあるエチレン酢酸ビニル:ポリエチレンの重量比を有する。さらに、より好ましい実施形態においては、ブレンドは、約0.6:9.4から約1.2:8.8の間にあるエチレン酢酸ビニル:ポリエチレンの重量比を有する。
【0021】
図1においてさらに例示されているように、熱可塑性発泡体基板115は、独立セル140を含む。本明細書において使用される独立セル140という用語は、基板115内部の膜によって画定され、空気、または窒素またはヘリウムなどの発泡剤として使用されるその他の気体によって占有された、任意の体積を指す。独立セル140は、基板115の皮を剥ぎ取る際に形成される、実質的に凹面であるセル135を形成する。しかし、凹面セル135は、滑らかなまたは曲線状の壁を有する必要はない。むしろ、凹面セル135は、不規則な形および寸法を有することができる。熱可塑性発泡体基板115の組成および熱可塑性発泡体基板115を製造するために使用された手順などのいくつかの要因が、独立セル140および凹面セル135の形および寸法に影響しうる。
【0022】
図1においてさらに例示されているように、熱可塑性発泡体基板115は、場合により、基材145に結合されうる。いくつかの好ましい実施形態においては、基材145は剛性である。剛性の裏打ちは、研磨中の発泡体の圧縮性および伸びを制限し、その結果、CMPによる金属研磨の間に生じる腐食および皿押し作業(dishing)効果を有利に低減させる。いくつかの場合は、基材145は、高密度ポリエチレン(すなわち、約0.98gm/ccを超える)、およびより好ましくは濃縮高密度ポリエチレンを含む。ある場合は、熱可塑性発泡体基板115への結合は、当業者には公知であるエポキシまたはその他の材料などの、従来の接着剤150を使用した化学結合によって達成される。いくつかの好ましい実施形態においては、結合は、熱可塑性発泡体基板115の上に、融解した基材145を押出しコーティングすることによって達成される。さらにその他の好ましい実施形態においては、基材145は、熱可塑性発泡体基板115に熱的に溶接される。
【0023】
本発明の別の態様は、化学的機械的研磨用の研磨パッドを製造するための方法である。図2から4は、研磨パッド200を製造する例示的方法において選択されたステップを示す。上記の一次および二次プラズマ反応物を含む、研磨パッドおよびその構成要素の実施形態のいずれでも、研磨パッド200を製造する方法の中に取り入れることができる。
【0024】
次に図2を参照すると、凹面セル240を備えた基板表面230を提供するために、研磨パッド200の熱可塑性発泡体基板220の内部にある独立セル210を露出させた後の、一部が組み立てられた研磨パッド200が示されている。凹面セル240は、剥ぎ取りによって基板表面230上に形成される。本明細書において使用される剥ぎ取りという用語は、熱可塑性発泡体基板220の内部にある凹面セル240を露出させるために、基板220の表面の薄層を切り離すいかなる方法をも意味する。剥ぎ取りは、当業者にはよく知られている従来の技術を使用することによって達成されうる。
【0025】
図3および4には、表面被覆工程における選択された段階が図示されている。最初に図3を参照すると、PECVD法において、基板表面230を最初のプラズマ反応物に曝露し、次いで、二次プラズマ反応物に曝露した後の、部分的に完成した研磨パッド200が図示されている。
【0026】
最初のプラズマ反応物への曝露により、熱可塑性発泡体基板220の改変された表面310が形成される。プラズマ処理の条件および時間を注意深く制御して、熱可塑性発泡体基板220に対する過度な損傷を避けることが重要である。例えば、ラジオ・フロー放電電極(radio flow discharge electrode)の温度が、過度に高いかまたは制御されていない場合は、熱可塑性発泡体基板220を融解させ、捻れさせ、または基板に亀裂を発生させる。この方法のいくつかの好ましい実施形態においては、ラジオ・フロー放電電極の温度は、約20℃から100℃、およびより好ましくは約30℃から50℃の間で維持される。いくつかの場合は、約250から約1000ワット、およびより好ましくは、約300ワットから400ワット間の高周波操作電力が使用される。特定の好ましい実施形態においては、最初のプラズマ反応物は、ネオン、およびより好ましくは、アルゴンまたはヘリウムなどの不活性ガスを含む。いくつかの場合には、最初のプラズマへの曝露が、約1秒から60秒の間、より好ましくは約30秒間進行する。いくつかの実施形態においては、PECVD反応室は、約300ミリトールから約400ミリトールの間に、およびより好ましくは、約350ミリトールに維持される。
【0027】
また、図3には、改変された表面310を二次プラズマ反応物に曝露した後の、部分的に完成した研磨パッド200が示されている。いくつかの好ましい実施形態においては、二次プラズマ反応物は、テトラエトキシシラン(TEOS)またはチタンアルコキシド(TYZOR)を含む。いくつかの場合には、また、二次プラズマ反応物には、一次プラズマ反応物、例えば、ヘリウムまたはアルゴン・ガスと混合されたTEOSまたはTYZOR蒸気が含まれている。二次プラズマ反応物への曝露により、二次プラズマ反応物の、改変された表面310へのグラフティングが生じ、無機金属酸化物を含む研磨剤320を形成する。研磨剤320は、凹面セル240の内部表面330を被覆する。
【0028】
再び、二次プラズマ反応物に曝露する条件および時間を注意深く制御して、熱可塑性発泡体基板220、または研磨剤320を損傷することを避け、研磨剤320の長持ちする被覆を達成させる。いくつかの実施形態においては、PECVD反応室は、約300ミリトールから約400ミリの間に、およびより好ましくは、約350ミリに維持される。いくつかの例では、ラジオ・フロー放電電極の温度は、約20℃から100℃の間、およびより好ましくは、約30℃から50℃の間に維持される。いくつかの場合は、約50から約500ワット、およびより好ましくは、約250から約350ワットの間の高周波操作電力が使用される。
【0029】
次に、図4を参照すると、二次プラズマ反応物に少なくとも約30分間曝露した後の、部分的に完成した研磨パッド200が図示されている。いくつかの好ましい実施例においては、二次プラズマ反応物への曝露を、約30分から約60分の間行う。別の好ましい実施例においては、二次プラズマ反応物への曝露を、約30分から約45分の間行う。そのような長さの時間曝露することにより、研磨剤320の無機金属酸化物中へ、窒化物または炭化物、またはその両方を取り込むことが、有利に増強される。この方法のいくつかの実施形態においては、熱可塑性発泡体基板220の独立セル410の内部には、窒素ガスが含まれる。窒素ガスは、二次プラズマ反応物と反応して窒化物を形成する。この方法の別の実施形態においては、熱可塑性発泡体基板220の少なくとも一部は、二次プラズマ反応物と反応して炭化物を形成する。例えば、いくつかの実施形態においては、改変された表面310から、熱可塑性発泡体基板220の約1ミクロンの深さ以内にある炭素ラジカル種は、二次プラズマ反応物と反応することができる。
【0030】
上で考察され、以下の実施例で説明されるように、PECVDによって研磨剤320を蒸着することにより、ポリオレフィン発泡体などの特定の熱可塑性発泡体230の表面特性を改変する。約30分までの間の、研磨剤320による熱可塑性発泡体表面310の表面被覆は、1つの機構により生じる。しかし、この時間を過ぎると、表面被覆は異なった機構によって生じる。その結果、このことにより、被覆時間に応じて表面のマイクロメカニックスおよび化学的性質が明らかに異なる研磨パッド表面410が製造される。
【0031】
いくつかの場合に、被覆時間が長くなると、熱可塑性発泡体基板220の温度は高くなる。その結果、このことにより、基板220を発泡する際に使用され、基板240の独立セル410内に存在している窒素ガスのガス放出が生じる。例えば、研磨剤320が酸化ケイ素を含むいくつかの実施形態においては、放出された窒素ガスは、パッド表面上のケイ素種と反応し、SiO4からSi3N4への化学量論的変換におけるSi3N4種を形成させるもとになる。勿論、研磨剤が酸化チタンなどのその他の金属酸化物を含む実施形態においては、類似の反応が起こりうる。
【0032】
同様に、被覆時間が長い場合は、熱可塑性発泡体基板240の表面310をイオン衝撃することにより、パッド200の表面310上にかなりの量の炭素ラジカルが発生する。例えば、研磨剤320が酸化ケイ素を含むいくつかの実施形態においては、これらのラジカルはケイ素種と反応して炭化ケイ素(SiC)を形成し、その後、炭化ケイ素はパッド200を被覆する研磨剤320中に取り込まれる。
【0033】
Si3N4およびSiCなどの種が研磨剤320に取り込まれると、研磨パッド200の特性を改変し、例えば、出発の熱可塑性発泡体基板または短時間の被覆を受けた基板と比較して、剛性、硬度を増強し、弾性率を変化させる。
【0034】
本発明を説明してきたが、以下の実験を参照することによって、同じことが一層明らかになるはずである。実験は、説明の目的のためにのみ提示されるものであり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解すべきである。例えば、以下に記載の実験は、実験室の環境で実行されうるが、当業者は、具体的な数、大きさおよび量を、実物大の装置の環境のための適切な値に調節することができるはずである。
【0035】
実験
実験は、1)研磨剤によって被覆された熱可塑性発泡体基板の化学組成を、被覆時間の関数として特性決定するために、2)研磨剤によって被覆された熱可塑性発泡体基板の機械的特性を特性決定するために、および3)研磨剤によって被覆された研磨パッドの研磨特性を被覆時間の関数として特性決定するために行われた。
【0036】
熱可塑性発泡体基板を、ほぼ120cmの直径と約0.3cmの厚さとを有する円形研磨パッドに成形した。「J−60SE」と呼ばれる市販の熱可塑性発泡体基板(JMS Plastics、ネプチューン、ニュージャージー州からのJ−foam)は、約18%のEVA、約16から約20%のタルク、および残余のポリエチレンおよび市販の基板内に存在するその他の添加物、例えばケイ酸塩などを含む。J−60のシートを、市販の切刃(型番D5100 K1、フェッケン−キルフェル社(Fecken−Kirfel)、アーヘン、ドイツから)により剥ぎ取った。次いで、水/イソプロピルアルコール溶液によって、手を使ってシートを洗浄した。
【0037】
次いで、温度制御された電極配置を有する従来の市販の高周波グロー放電(RFGD)プラズマ反応室(モデルPE−2、Advanced Energy Systems、メドフォード、ニューヨーク)に、剥ぎ取った基板を設置することにより、テトラエトキシシラン(TEOS)を含む研磨剤によって、J−60SE基板を被覆した。350ミリに維持した反応室内で、一次プラズマ反応物であるアルゴンを30秒間導入することから、基板のプラズマ処理を開始した。電極温度を30℃に維持し、300ワットの高周波操作電力を使用した。次いで、HeまたはArガスが混合したTEOSを含む二次反応物を、0.10SLMの流量で、約0から約45分間の間導入した。ガス流中の二次反応物の量は、モノマー貯蔵容器の温度(MRT;50±10℃)における二次反応物モノマーの蒸気の背圧(BP)によって調整した。
【0038】
約4000オングストロームの厚さのタングステン表面およびその下の250オングストロームの厚さのタンタル障壁層を有するウエハを研磨することによって、J60SE研磨パッドの研磨特性を試験した。市販の研磨機(製造番号EP0222;Ebara Technologies、サクラメント、カリフォルニア州から)を用いて、タングステンの研磨特性を評価した。特段の記述がない限り、タングステン研磨の除去速度は、基板を抑える約25kPaのダウンフォース(下向きの力)、約100から約250rpmのテーブル速度を用いて評価した(製造番号MSW2000;Rodel、ニューアーク、デラウェア州から)。pHを約2に調節した従来のスラリー(製造番号MSW2000;Rodel、ニューアーク、デラウェア州から)を使用した。
【0039】
図5は、さまざまな長さの時間でTEOSを被覆した後の、基板表面のFTIRスペクトルを示す。FTIR分光計(FTIR1727、Perkin−Elmer System 検出器:シリーズ−I FTIR顕微鏡(MCT検出器)を装備し、10000から370cm−1のスペクトル範囲を有する)を使用して、スペクトルを得た。約1010および約950cm−1の信号を、それぞれ、シリカの非対称性Si−O−Si伸縮およびケイ酸塩のSi−O−X伸縮(ただし、Xは、四面体配置をしていない、ポリマー状の−(Si−O−Si)n−構造物を指す)に帰属させた。850cm−1の信号は、遊離および会合したシラノール(Si−O−H)による。シラノールは、水素結合を媒介して会合し、会合の程度は、シラノールの表面濃度が高くなるにつれて増大する。
【0040】
図6に示されているように、被覆時間が約30分に達するまでは、被覆時間が長くなるにつれて、Si−Oの表面濃度が正味で減少するために、これらの信号は両方とも単調に減少した。その後は、蒸着の速度論および機構が変化し、表面のSi−O濃度が上昇することを示した。後者の観測は、TEOSの蒸着機構および速度論の、一般に受け入れられている概念と矛盾し、被覆過程、特に30分より後の被覆時間における被覆過程のさらなる研究を促進するものである。
【0041】
ナノ押込み試験を用いて、表面をコーティングした被覆の機械的特性の評価、より具体的には、弾性率および硬度の測定を行った。押込みは、さまざまな時間で研磨剤により被覆された熱可塑性発泡体基板上において実行された。NANOTEST 600(登録商標)、Advanced Material and Characterization Facility(AMPAC、オーランド、フロリダ州)に設置されているNanoindenterを、すべての測定に使用した。機械装置は、振動遮断テーブル上に置かれ、温度制御された箱の中に収容されている。箱の前面の両側に設置された2つの別々のヒータが、熱障壁を形成している。予想される安定性が±0.1℃である温度制御器を、室温より約2または3℃高い値に設定した。実験を開始する前に熱安定性を得るために、少なくとも30分間、押込み圧子を安定化させることができた。
【0042】
押込み圧子の型、最大深さおよび負荷/除荷速度などの押込みパラメータは、被覆された研磨パッドの予備試験を実施することによって確定した。研磨パッド表面は、数ミクロン程度のさまざまな大きさの凸凹および細孔を含有していることが分かった。これらの観測に基づいて、約1mmの先端直径を有する球形の押込み圧子を選択し、押込み圧子がパッド材料を十分に試験できるようにした。同じ理由から、500ミクロンを超える空間分解能を選択した。押込みは、機械装置パラメータである最初の負荷を0.1mNとする、超低負荷範囲で実施した。制御パラメータを制御された深さに設定し、それぞれのパッドを、10000ナノメートルの最大深さを有する、さまざまな深さで押込んだ。通常、10個の押込みを平均した結果を吟味した。Oliver−Pharr法およびHertz法を用いて結果を評価し、その正当性を立証した。ナノ押込み圧子から得られた、負荷−深さ(P−h)曲線を、Oliver−Pharr法を用いて分析した。
【0043】
研磨剤を被覆された研磨パッドは、押込み実験の間、不均一な貫入を示した。押込み(P−h)曲線の目視検査から、いくつかの特性が分かる。図7に示すように、「pop−in」(Xb)、「pop−out」または「kink−back」(Xc)と標識された、別々の事象が曲線から識別できる。例えば、「pop−in」は、押込み圧子の先端が試料中へ突然貫入する場合に、圧縮サイクル中に生じる。これらの事象は、被覆時間、負荷/除荷速度および押込み圧子の深さなどのいくつかの実験パラメータと相関している。被覆された研磨パッドによって示された混合応答により、「pop−in」の事象は、1000ナノメートル付近の深さの押込み圧子の貫入の場合に、よりしばしば生じたこと、「pop−out」の事象は、押込み深さには影響されないように見えたこと、および負荷/除荷速度はこれらの事象の両方に影響を与えたことが明らかになった。
【0044】
さまざまな深さおよび種々の被覆時間について、P−h曲線をさらに分析することによって、負荷曲線は急速に上昇し、減少することが分かった。このX座標、またはこの転移点の深さをXaと呼ぶ。同様に、XbおよびXcは、対応するX座標またはナノメートルで表した深さである。押込み圧子の先端が被覆中へ、そのように不均一に貫入することは、おそらく、塑性変形が開始されたことから生じる。塑性変形は、CMPパッドの重要な属性であり、CMP工程の効率に影響する。したがって、負荷−深さ曲線における上記の事象は、パッドの性能を予告するものであると仮定した。初期の表面貫入の事象(Xa)は、PECVD被覆時間、最大貫入深さおよび負荷速度の関数であることが分かった。例えば、図8は、XaとTEOS被覆時間との代表的な相関を示す。このデータは、Xaが、誘電体被覆によって改変された表面発泡体の厚さに関係していることを示唆する。
【0045】
図9および図10は、Oliver−Pharr法を用いて計算した、さまざまなTEOS被覆時間を有する研磨パッドの硬度および弾性率を、それぞれ図示したものである。有効表面弾性率および硬度は、被覆時間が増大するにつれて上昇することが分かった。30分、40分および45分の被覆時間では、研磨パッドは、それぞれ、約65KPa、62KPaおよび70Kpaの硬度の値を有していた。研磨時間がより短い場合は、硬度は60KPa以下であった。30分、40分および45分の被覆時間では、研磨パッドは、それぞれ、約4MPa、5.5MPaおよび8.2MPaの弾性率の値を有していた。研磨時間がより短い場合は、弾性率の値は3MPa以下であった。
【0046】
パッド表面の機械的特性の変化は、発泡体基板上に蒸着した被覆の効果による。これらのデータは、FTIRデータにおける以前に記述した不連続が、TEOSから誘導された被覆の正味の除去ではなく、パッド表面の化学的性質の変化を示唆していることを示す。
【0047】
5℃/分の、プログラムされた加熱速度で−125から200℃まで、引張モードで、周波数1Hz、振幅10ミクロンで稼働する市販の装置を用いて、被覆された研磨パッドの試料の動的機械分析(DMA)を行った。液体窒素を使用して、周辺温度より低い温度を達成した。測定を行う前に、所定の初期温度で10分間、試料を平衡させた。研磨パッド試料のすべてを、15cm×5cmの同一寸法を有するように製造し、DMA測定の前に、24時間、真空乾燥(約1×10−2で30℃)し、湿気の影響を考慮する必要がないようにした。
【0048】
図11に示すように、DMAによる研究から、長時間のPECVD被覆においては損失弾性率が急激に変化することが示される。10分から40分の被覆時間の間に、損失弾性率の値が0.37から0.23に変化するのと比べて、被覆時間が45分の時点で、損失弾性率は約0.6MPaへ急上昇する。
【0049】
このことは、PECVD被覆は基板の表面を改変するのみであるという一般に受け入れられている見解とは対立するものである。この驚くべき結果は、表面被覆を行っている間に、発泡体基板のバルクの機械的特性を変える、別の過程が生じていることを示唆する。熱可塑性発泡体基板中の残留反応物が、PECVD被覆を行っている間、時間に依存するやり方で反応し続けたと仮定した。
【0050】
X線光電子分光法(XPS)を用いて、種々の時間で被覆された研磨パッドの表面改変を、さらに特性決定した。市販のX線光電子分光計を10−10の基準圧力下で操作し、金属の金標準(Au(4f7/2):84.0±0.1eV)を用いて分光計を較正した。250Wのパワーで1253eVのエネルギーを有する、非単色のMgK∝ X線源を分析に使用した。285.0eVにおける不定(adventitious)の炭素線の水素部分の結合エネルギーを基準とした結合エネルギー・スケールを使用することにより、研磨パッド試料によって生じたチャージング・シフトを除去した。市販のソフトウェアを使用して、ピークのデコンボリューションを行った。
【0051】
XPS分析により、TEOSの吸着および解離から生じたトポグラフィの化学的性質に関するいくつかの洞察がもたらされた。炭素(1s)の信号は、3つの主要なピークに分解された:C−CおよびC−H結合に対応する約285.0eVにおける2つのピーク、およびC−O結合に対応する約286.5eVにおいて観測されたピークである。約289から約289.3eVを中心とするピークは、熱可塑性発泡体基板の製造工程で使用された発泡剤の残留物に由来するカルバミド[−O−C(NH2)=O]官能基に帰属された。それぞれ、40および45分間被覆された試料については、約283.6eV付近に別のピークが観測され、仮にC−Si結合に帰属された。
【0052】
図12は、TEOSにより、(a)10分、(b)20分、(c)30分、(d)40分、および(e)45分間被覆した後のパッドから得たSi(2p)エンベロープのXPS信号に当てはめた、例示的なピーク包絡線を示す。ピークは、(1)Si−O、(2)ケイ酸塩、(3)Si−N、および(4)Si−C結合として同定された。各スペクトルを、それぞれ、ケイ酸塩およびSi−O種における結合に対応する、約102.3および約103.4eVにおける2つの主要なピークにデコンボリューションした。
【0053】
これらのデータは、被覆時間が短い(例えば、約30分未満)場合、パッド表面はシラノールに富んでおり、TEOS薄膜が低い工程温度で蒸着されることと矛盾しないことを示す。図13においてさらに示すように、XPSデータから計算した酸素のSiに対する強度比は、被覆の初期において高く、蒸着された被覆中のシラノールの濃度が高いことを示す。シラノール濃度は、30分までは被覆時間と共に減少し、それから上昇し始める。例えば、図9に示されているように、約10分、20分、30分、40分および45分間被覆された後では、O:Siの比は、それぞれ、約7.4、4.8、3.6、7.1および9.9に等しい。
【0054】
再び図12を参照すると、30、40および45分の被覆時間については、Si−N結合に対応する小さなピークが、約102.1eVにおいて観測される。この同一時間の間に、SiのNに対する比が急激に減少し、表面上の窒素種が増加したことを示す。
【0055】
これらの観測から、PECVDベースの被覆には、いくつかの過程間の競争が伴うことが示唆される。PECVDベースの被覆により、発泡体表面上の(SiOxおよびSiO2)上にシリカおよびケイ酸塩が形成される。さらに、基板の表面化学は、被覆時間の関数として変化する。30分以内の被覆時間では、Arイオンが表面を衝撃することによって、デポジットの正味のエッチングが発生する。また、プラズマによって試料も加熱され、熱的過程も生じる。被覆時間が増大すると、基板表面上のケイ酸塩含有量が減少し始め、パッドは密になり、パッドの硬度を増すようになる。
【0056】
30分以上の被覆時間では、基板温度が十分高くなり、基板を発泡させるために使用した窒素ガスのガス放出または発泡体中に残された残留発泡剤の分解を引き起こし、窒素ガスを生成する。窒素は、気相中のSi含有中間体またはパッド表面上のSi種と反応し、SiO2を消費しながらSi3N4などの窒化物を形成する。そのような窒化物は、10モル%までの濃度で研磨剤中に取り込まれる。さらに、そのような被覆時間では、発泡体表面のイオン衝撃により、パッド表面上に炭素ラジカルがかなりの量で発生する。これらのラジカルは、ケイ素種と反応して、例えば、炭化ケイ素(SiC)などの炭化物を形成し、形成された炭化物は10モル%までの濃度で研磨剤中に取り込まれる。
【0057】
図14は、TEOSによる、異なった時間の被覆をされた熱可塑性発泡体基板について、相対的なブランケット・タングステン除去速度(W−RR)と静的な摩擦係数(COF)とを比較したものである。W−RRおよびCOFの両方とも、30分までは、被覆時間が長くなるにつれて増大し、研磨剤の厚さが増すことを意味する。30から60分までの被覆時間では、W−RRおよびCOFの両方とも減少し、次いで、増大する。これらの結果は、表面のマイクロメカニックスおよび化学的特性が異なるために、パッドが、30分までの時間で被覆された表面については1つの機構による、30分を超える時間で被覆された表面については異なった機構による研磨剤のように見えることを示唆する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の研磨パッドの断面図である。
【図2】研磨パッドを製造するための、本発明の方法において選択された段階の断面図である。
【図3】研磨パッドを製造するための、本発明の方法において選択された段階の断面図である。
【図4】研磨パッドを製造するための、本発明の方法において選択された段階の断面図である。
【図5】テトラエトキシシラン(TEOS)を含む研磨剤前駆体によって、さまざまな時間で被覆した後の、熱可塑性発泡体研磨パッド試料の近赤外スペクトルである。
【図6】TEOSに、さまざまな時間曝露した後の、代表的な熱可塑性発泡体研磨パッドの近赤外信号の変化を示すグラフである。
【図7】TEOSによって被覆された後の、熱可塑性発泡体研磨パッドの例示的な押込み曲線である。
【図8】TEOSによる被覆時間の関数としての(Xa)、即ち熱可塑性発泡体研磨パッドの「pop−in」の代表的な変化を示すグラフである。
【図9】TEOSによる被覆時間の関数としての、熱可塑性発泡体研磨パッドの硬度の代表的な変化を示すグラフである。
【図10】TEOSによる被覆時間の関数としての、熱可塑性発泡体研磨パッドの弾性率の代表的な変化を示すグラフである。
【図11】TEOSによる被覆時間の関数としての、熱可塑性発泡体研磨パッドの貯蔵および損失弾性率の代表的な変化を示すグラフである。
【図12】TEOSによってさまざまな時間で被覆した後の、研磨パッドの代表的なXPSスペクトルである。
【図13】TEOSによってさまざまな時間で被覆した後の、研磨パッドのXPSスペクトルから計算した、酸素のSiに対する強度比の値の変化を示すグラフである。
【図14】TEOSによる被覆時間の関数としての、熱可塑性発泡体研磨パッドの相対的なブランケット・タングステン除去速度(WRR)および静的摩擦係数(COF)の変化を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス、半導体、誘電体、金属およびそれらの複合材料、磁性大容量記憶媒体および集積回路などの物品上に、平滑な、超平坦面を作りだすための化学的機械的研磨を対象とする。
【背景技術】
【0002】
化学的機械的研磨(CMP)は、金属および誘電体薄膜の両方を平坦化するために、成功裏に使用されてきた。1つの妥当な平坦化機構においては、研磨工程では、スラリーの存在下でウエハ表面およびパッド材料の高い部分が緊密に接触することが必要であると考えられている。この筋書きでは、スラリーと研磨されつつあるウエハ表面との反応から生じた腐食された材料が、パッド−ウエハ界面で剪断によって除去される。パッド材料の弾性的特性は、最終の平坦性および研磨速度に大きく影響する。その結果、弾性的特性は、固有のポリマーおよびその発泡構造物の両方の関数である。
【0003】
歴史的には、ポリウレタンベースのパッドが、高強度、高硬度、高弾性率および破壊時の伸びが大きいために、CMP用に使用されてきた。そのようなパッドは、良好な均一性を有し、かつ効果的に形態を縮小しうるが、急速かつ均一に表面材料を除去するパッドの能力は、使用することにより急速に低下する。ポリウレタンベースのパッドについて観測される、時間に依存した材料除去速度の低下は、臨界剪断力の条件下にあるそのような研磨パッドの機械的な応答の変化によるものとされてきた。ポリウレタンベースのCMPパッドの機能が低下するのは、研磨時に使用されるパッドおよびスラリー間の相互作用によりパッドが分解するためであると一般に考えられている。
【0004】
さらに、ポリウレタンパッドの場合は、分解により、均一な研磨にとって有害となりうる、パッド内およびパッド自体の表面改変が生じる。別法として、いくつかの例においては、CMP研磨に使用される材料の表面改変により、使用時の性能を改善しうる。しかし、そのような改変は一時的なものであり、したがって、CMPパッドの交換または再処理が頻繁に必要になる。また、ポリウレタンパッドでは、研磨前の試運転期間、さらに使用後の整備および再処理が通常必要である。また、研磨装置が活動を停止している間、伝統的なパッドを湿った状態に保持することが、しばしば必要になる。これらの特性により、ポリウレタンまたはこれと類似の従来のパッドを使用する場合は、望ましくないことにCMPの全体としての効率が低下する。
【特許文献1】米国特許第6579604号
【特許文献2】米国特許出願第10/241074号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、必要なものは、CMPの間に高度に平坦な表面を作りだし、寿命を改善し、その一方で、上述の諸問題を経験しなくて済むことができる改善されたCMPパッドである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記で考察した従来技術の欠陥に対処するために、本発明は、一実施形態において、化学的機械的研磨用の研磨パッドを提供する。研磨パッドは、熱可塑性発泡体基板を備えた研磨本体を含む。熱可塑性発泡体基板は、凹面のセルを備えた表面を含む。凹面セルの内部表面を被覆する研磨剤は、炭化物または窒化物を含む無機金属酸化物を含む。
【0007】
本発明の別の実施形態は、研磨パッドを製造するための方法を対象とする。この方法は、熱可塑性発泡体基板の内部にある独立セルを露出させて、凹面セルを含む基板表面をもたらすことを含む。この方法は、さらに、無機金属酸化物を含む研磨剤により凹面セルの内部表面を被覆することを含み、被覆する間に炭化物および窒化物は無機金属酸化物中に取り込まれる。
【0008】
本発明をより完全に理解するために、添付図と共に以下の説明を参照することにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、凹面セル上に研磨剤の均一な被覆を堆積させるための基板として熱可塑性ポリマーを使用するという、以前には気づいていなかった利点から利益を得る。凹面セルの内部表面は、研磨剤の均一な被覆を収容するための優れた容器を形成することが分かった。中心のセルの表面エネルギーは最も低いので、凹面セルの中心は、被覆のための優れた核形成点として働くと仮定される。この地点で被覆が開始すると、凹面セルの内部表面を研磨剤により均一に覆いやすくなり、その結果、そのような表面を有するパッドの研磨性能を促進するとみられる。
【0010】
本発明の研磨剤は、窒化物または炭化物を含む無機金属酸化物を含む。パッド表面を被覆するためにそのような金属酸化物を使用することにより、有利にも研磨パッド表面を永久に親水性にすることができる。好ましくは、無機金属酸化物は、窒化物または炭化物を格子中に取り入れた原子の格子を有する。そのような研磨剤の表面被覆を使用することにより、研磨パッドの表面の機械的特性が改変され、研磨が向上する。
【0011】
例えば、特定の無機金属酸化物中の窒化物または炭化物の含有量を変化させることにより、研磨パッド表面の機械的特性を微調整して、研磨されつつある表面に適した機械的特性にすることができる。その結果、研磨パッド表面の機械的特性を研磨されつつある表面に適したものにすることにより、研磨速度の選択性を向上させ、工程によって引き起こされる欠陥、例えば引っ掻き傷などを減少させることができる。表面の機械的特性の微調整は、プラズマ支援化学蒸着(PECVD)による表面被覆および大部分の熱可塑性基板内の二次熱誘起反応により生じた熱可塑性ポリマー基板の改変を利用して達成することができる。
【0012】
本発明の一実施形態は、半導体デバイスを化学的機械的に研磨するための研磨パッドである。図1は、本発明の例示的な研磨パッド100を示す。この研磨パッド100は、研磨本体110を備えている。研磨本体110は、凹面セル125を含む表面120を有する熱可塑性発泡体基板115を備えている。凹面セル125の内部表面135を被覆する研磨剤130は、炭化物または窒化物を含む無機金属酸化物を含む。
【0013】
研磨剤130は、プラズマ支援化学蒸着(PECVD)法において、熱可塑性発泡体基板115表面120上で二次反応物のグラフティング(grafting)によって形成された、1種または複数種の無機金属酸化物から構成されたセラミック化合物を含む。以下でさらに説明されるように、本発明においては、無機金属酸化物内に炭化物または窒化物が含有されるのを促進するように、PECVD法を変更することができる。
【0014】
炭化物または窒化物の一方または両方が無機金属酸化物の格子に取り込まれていることが好ましい。例えば、無機金属酸化物が酸化ケイ素を含む場合、格子は、四面体および歪んだ四面体配置を持つ、重合したSi−O−Si構造内にケイ酸塩を含むことができる。窒化物は、これらの格子に取り込まれた窒化ケイ素を含むことができる。別法として、無機金属酸化物が酸化チタンを含む場合は、窒化物は、酸化チタンの格子に取り込まれた窒化チタンを含むことができる。同様に、炭化ケイ素および炭化チタンは、無機金属酸化物が、それぞれ、酸化ケイ素および酸化チタンを含む研磨剤130に取り込まれることができる。いくつかの好ましい実施形態においては、窒化ケイ素などの窒化物は研磨剤130を約10モル%含み、一方、別の実施形態においては、炭化ケイ素などの炭化物は研磨剤を約10モル%含む。いくつかの好ましい実施形態においては、研磨剤130は、これらの濃度の窒化物および炭化物を共に含む。
【0015】
PECVD法が長時間に及ぶと、研磨剤130中のシラノール濃度は減少し、酸素のケイ素に対する比の減少をもたらす。研磨剤130が酸化ケイ素を含む研磨パッド100のいくつかの有利な実施形態においては、O:Si比は、少なくとも約8:1、およびいくつかの場合は、少なくとも約9.9:1である。
【0016】
研磨剤130に窒化物および炭化物を含ませることにより、研磨パッド100の機械的特性を変化させ、それによりパッドの研磨特性を変化させるというこれまでは気づいていなかった、追加の手段がもたらされる。いくつかの好ましい実施形態においては、研磨パッド100は、60KPaを超える、より好ましくは70KPaを超える硬度を有する。その他の好ましい実施形態では、研磨パッド100は約62KPaから70KPaの間の硬度を有する。特定の好ましい実施形態においては、研磨パッド100は、約3MPaをほぼ超える、より好ましくは4MPa以上の弾性率を有する。他の好ましい実施形態においては、研磨パッドは、それぞれ、約4MPaおよび8.2MPaの間の弾性率を有する。その他の実施形態においては、研磨パッド100は、約0.4MPa以上の、およびより好ましくは、少なくとも約0.6MPaの損失弾性率を有する。
【0017】
参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6579604号および米国特許出願第10/241074号に開示されているように、研磨剤130の無機金属酸化物は、PECVD法において二次反応物として使用される、さまざまな酸素含有有機金属化合物から製造されうる。例えば、二次プラズマ混合物は、チタン、マンガン、またはタンタルなどの遷移金属を含むことができる。しかし、1つまたは複数の酸素原子を含有する金属エステルなどの揮発性有機金属化合物を形成し、かつポリマー表面にグラフトされうるどの金属元素でも適している。また、ケイ素も有機金属二次プラズマ混合物の金属部分として用いることができる。これらの実施形態において、有機金属試薬の有機部分は、エステル、酢酸、またはアルコキシ・フラグメントでありうる。好ましい実施形態においては、研磨剤130の無機金属酸化物には、それぞれ、二酸化ケイ素または二酸化チタンなどの酸化ケイ素または酸化チタン;テトラエトキシシランポリマー;またはチタンアルコキシドポリマーが含まれる。
【0018】
その他の二次プラズマ反応物には、オゾン、アルコキシシラン、水、アンモニア、アルコール、ミネラルスピリットまたは過酸化水素が含まれる。いくつかの好ましい実施形態においては、二次プラズマ反応物には、チタンエステル;アルコキシド部分が、1〜5個の炭素原子を有するタンタルアルコキシドを含むタンタルアルコキシド;水に溶解した酢酸マンガン溶液;ミネラルスピリットに溶解したマンガンアルコキシド;酢酸マンガン;アセチルアセトナトマンガン;アルミニウムアルコキシド;アルコキシアルミネート(alkoxy aluminate);酸化アルミニウム;アルコキシドが1〜5個の炭素原子を有するジルコニウムアルコキシド;アルコキシジルコネート(alkoxy zirconate);酢酸マグネシウム;およびアセチルアセトナトマグネシウムが含まれる。また、他の実施例は、二次プラズマ反応物、例えば、アルコキシシランおよびオゾン、アルコキシシランおよびアンモニア、チタンエステルおよび水、チタンエステルおよびアルコール、またはチタンエステルおよびオゾンのために企図されている。
【0019】
熱可塑性発泡体基板115のいくつかの好ましい実施形態は、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびそれらの組合せなどの架橋ポリオレフィンを含む。特定の好ましい実施形態においては、熱可塑性発泡体基板115は、架橋ホモポリマーまたはコポリマーの独立セルの泡を含む。ポリエチレン(PE)を含む、独立セルの発泡体架橋ホモポリマーの例には、Voltek(ローレンス、マサチューセッツ州)からのVolara(商標)およびVolextra(商標);JMS Plastics Supply、Inc.(ネプチューン、ニュージャージー州)からのAliplast(商標);またはSenflex T−cell(商標)(Rogers Corp.、ロジャーズ、コネチカット州)が含まれる。ポリエチレンおよびエチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)を含む架橋コポリマーの独立セルの発泡体の例には、Volara(商標)およびVolextra(商標)(Voltek Corp.から);Senflex EVA(商標)(Rogers Corp.から);およびJ−foam(商標)(JMS Plastics JMS Plastics Supply、Inc.から)が含まれる。
【0020】
その他の好ましい実施形態においては、独立セルの熱可塑性発泡体基板115は、架橋エチレン酢酸ビニルコポリマーおよび低密度ポリエチレンコポリマー(すなわち、好ましくは、約0.1から約0.3gm/ccの間にある)のブレンドを含む。その他の有利な実施形態においては、ブレンドは、約1:9から約9:1の間にあるエチレン酢酸ビニル:ポリエチレンの重量比を有する。特定の好ましい実施形態においては、ブレンドは、約5から約45重量%、好ましくは、約6から約25重量%、およびより好ましくは、約12から約24重量%にわたるEVAを含む。そのようなブレンドは、熱可塑性発泡体基板115の、小さな寸法(例えば、約10から約500ミクロン、より好ましくは、50から150ミクロンの間にある直径)を有する独立セル140を、望ましく製造することに貢献すると考えられている。さらに、より好ましい実施形態においては、ブレンドは、約0.6:9.4から約1.8:8.2の間にあるエチレン酢酸ビニル:ポリエチレンの重量比を有する。さらに、より好ましい実施形態においては、ブレンドは、約0.6:9.4から約1.2:8.8の間にあるエチレン酢酸ビニル:ポリエチレンの重量比を有する。
【0021】
図1においてさらに例示されているように、熱可塑性発泡体基板115は、独立セル140を含む。本明細書において使用される独立セル140という用語は、基板115内部の膜によって画定され、空気、または窒素またはヘリウムなどの発泡剤として使用されるその他の気体によって占有された、任意の体積を指す。独立セル140は、基板115の皮を剥ぎ取る際に形成される、実質的に凹面であるセル135を形成する。しかし、凹面セル135は、滑らかなまたは曲線状の壁を有する必要はない。むしろ、凹面セル135は、不規則な形および寸法を有することができる。熱可塑性発泡体基板115の組成および熱可塑性発泡体基板115を製造するために使用された手順などのいくつかの要因が、独立セル140および凹面セル135の形および寸法に影響しうる。
【0022】
図1においてさらに例示されているように、熱可塑性発泡体基板115は、場合により、基材145に結合されうる。いくつかの好ましい実施形態においては、基材145は剛性である。剛性の裏打ちは、研磨中の発泡体の圧縮性および伸びを制限し、その結果、CMPによる金属研磨の間に生じる腐食および皿押し作業(dishing)効果を有利に低減させる。いくつかの場合は、基材145は、高密度ポリエチレン(すなわち、約0.98gm/ccを超える)、およびより好ましくは濃縮高密度ポリエチレンを含む。ある場合は、熱可塑性発泡体基板115への結合は、当業者には公知であるエポキシまたはその他の材料などの、従来の接着剤150を使用した化学結合によって達成される。いくつかの好ましい実施形態においては、結合は、熱可塑性発泡体基板115の上に、融解した基材145を押出しコーティングすることによって達成される。さらにその他の好ましい実施形態においては、基材145は、熱可塑性発泡体基板115に熱的に溶接される。
【0023】
本発明の別の態様は、化学的機械的研磨用の研磨パッドを製造するための方法である。図2から4は、研磨パッド200を製造する例示的方法において選択されたステップを示す。上記の一次および二次プラズマ反応物を含む、研磨パッドおよびその構成要素の実施形態のいずれでも、研磨パッド200を製造する方法の中に取り入れることができる。
【0024】
次に図2を参照すると、凹面セル240を備えた基板表面230を提供するために、研磨パッド200の熱可塑性発泡体基板220の内部にある独立セル210を露出させた後の、一部が組み立てられた研磨パッド200が示されている。凹面セル240は、剥ぎ取りによって基板表面230上に形成される。本明細書において使用される剥ぎ取りという用語は、熱可塑性発泡体基板220の内部にある凹面セル240を露出させるために、基板220の表面の薄層を切り離すいかなる方法をも意味する。剥ぎ取りは、当業者にはよく知られている従来の技術を使用することによって達成されうる。
【0025】
図3および4には、表面被覆工程における選択された段階が図示されている。最初に図3を参照すると、PECVD法において、基板表面230を最初のプラズマ反応物に曝露し、次いで、二次プラズマ反応物に曝露した後の、部分的に完成した研磨パッド200が図示されている。
【0026】
最初のプラズマ反応物への曝露により、熱可塑性発泡体基板220の改変された表面310が形成される。プラズマ処理の条件および時間を注意深く制御して、熱可塑性発泡体基板220に対する過度な損傷を避けることが重要である。例えば、ラジオ・フロー放電電極(radio flow discharge electrode)の温度が、過度に高いかまたは制御されていない場合は、熱可塑性発泡体基板220を融解させ、捻れさせ、または基板に亀裂を発生させる。この方法のいくつかの好ましい実施形態においては、ラジオ・フロー放電電極の温度は、約20℃から100℃、およびより好ましくは約30℃から50℃の間で維持される。いくつかの場合は、約250から約1000ワット、およびより好ましくは、約300ワットから400ワット間の高周波操作電力が使用される。特定の好ましい実施形態においては、最初のプラズマ反応物は、ネオン、およびより好ましくは、アルゴンまたはヘリウムなどの不活性ガスを含む。いくつかの場合には、最初のプラズマへの曝露が、約1秒から60秒の間、より好ましくは約30秒間進行する。いくつかの実施形態においては、PECVD反応室は、約300ミリトールから約400ミリトールの間に、およびより好ましくは、約350ミリトールに維持される。
【0027】
また、図3には、改変された表面310を二次プラズマ反応物に曝露した後の、部分的に完成した研磨パッド200が示されている。いくつかの好ましい実施形態においては、二次プラズマ反応物は、テトラエトキシシラン(TEOS)またはチタンアルコキシド(TYZOR)を含む。いくつかの場合には、また、二次プラズマ反応物には、一次プラズマ反応物、例えば、ヘリウムまたはアルゴン・ガスと混合されたTEOSまたはTYZOR蒸気が含まれている。二次プラズマ反応物への曝露により、二次プラズマ反応物の、改変された表面310へのグラフティングが生じ、無機金属酸化物を含む研磨剤320を形成する。研磨剤320は、凹面セル240の内部表面330を被覆する。
【0028】
再び、二次プラズマ反応物に曝露する条件および時間を注意深く制御して、熱可塑性発泡体基板220、または研磨剤320を損傷することを避け、研磨剤320の長持ちする被覆を達成させる。いくつかの実施形態においては、PECVD反応室は、約300ミリトールから約400ミリの間に、およびより好ましくは、約350ミリに維持される。いくつかの例では、ラジオ・フロー放電電極の温度は、約20℃から100℃の間、およびより好ましくは、約30℃から50℃の間に維持される。いくつかの場合は、約50から約500ワット、およびより好ましくは、約250から約350ワットの間の高周波操作電力が使用される。
【0029】
次に、図4を参照すると、二次プラズマ反応物に少なくとも約30分間曝露した後の、部分的に完成した研磨パッド200が図示されている。いくつかの好ましい実施例においては、二次プラズマ反応物への曝露を、約30分から約60分の間行う。別の好ましい実施例においては、二次プラズマ反応物への曝露を、約30分から約45分の間行う。そのような長さの時間曝露することにより、研磨剤320の無機金属酸化物中へ、窒化物または炭化物、またはその両方を取り込むことが、有利に増強される。この方法のいくつかの実施形態においては、熱可塑性発泡体基板220の独立セル410の内部には、窒素ガスが含まれる。窒素ガスは、二次プラズマ反応物と反応して窒化物を形成する。この方法の別の実施形態においては、熱可塑性発泡体基板220の少なくとも一部は、二次プラズマ反応物と反応して炭化物を形成する。例えば、いくつかの実施形態においては、改変された表面310から、熱可塑性発泡体基板220の約1ミクロンの深さ以内にある炭素ラジカル種は、二次プラズマ反応物と反応することができる。
【0030】
上で考察され、以下の実施例で説明されるように、PECVDによって研磨剤320を蒸着することにより、ポリオレフィン発泡体などの特定の熱可塑性発泡体230の表面特性を改変する。約30分までの間の、研磨剤320による熱可塑性発泡体表面310の表面被覆は、1つの機構により生じる。しかし、この時間を過ぎると、表面被覆は異なった機構によって生じる。その結果、このことにより、被覆時間に応じて表面のマイクロメカニックスおよび化学的性質が明らかに異なる研磨パッド表面410が製造される。
【0031】
いくつかの場合に、被覆時間が長くなると、熱可塑性発泡体基板220の温度は高くなる。その結果、このことにより、基板220を発泡する際に使用され、基板240の独立セル410内に存在している窒素ガスのガス放出が生じる。例えば、研磨剤320が酸化ケイ素を含むいくつかの実施形態においては、放出された窒素ガスは、パッド表面上のケイ素種と反応し、SiO4からSi3N4への化学量論的変換におけるSi3N4種を形成させるもとになる。勿論、研磨剤が酸化チタンなどのその他の金属酸化物を含む実施形態においては、類似の反応が起こりうる。
【0032】
同様に、被覆時間が長い場合は、熱可塑性発泡体基板240の表面310をイオン衝撃することにより、パッド200の表面310上にかなりの量の炭素ラジカルが発生する。例えば、研磨剤320が酸化ケイ素を含むいくつかの実施形態においては、これらのラジカルはケイ素種と反応して炭化ケイ素(SiC)を形成し、その後、炭化ケイ素はパッド200を被覆する研磨剤320中に取り込まれる。
【0033】
Si3N4およびSiCなどの種が研磨剤320に取り込まれると、研磨パッド200の特性を改変し、例えば、出発の熱可塑性発泡体基板または短時間の被覆を受けた基板と比較して、剛性、硬度を増強し、弾性率を変化させる。
【0034】
本発明を説明してきたが、以下の実験を参照することによって、同じことが一層明らかになるはずである。実験は、説明の目的のためにのみ提示されるものであり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解すべきである。例えば、以下に記載の実験は、実験室の環境で実行されうるが、当業者は、具体的な数、大きさおよび量を、実物大の装置の環境のための適切な値に調節することができるはずである。
【0035】
実験
実験は、1)研磨剤によって被覆された熱可塑性発泡体基板の化学組成を、被覆時間の関数として特性決定するために、2)研磨剤によって被覆された熱可塑性発泡体基板の機械的特性を特性決定するために、および3)研磨剤によって被覆された研磨パッドの研磨特性を被覆時間の関数として特性決定するために行われた。
【0036】
熱可塑性発泡体基板を、ほぼ120cmの直径と約0.3cmの厚さとを有する円形研磨パッドに成形した。「J−60SE」と呼ばれる市販の熱可塑性発泡体基板(JMS Plastics、ネプチューン、ニュージャージー州からのJ−foam)は、約18%のEVA、約16から約20%のタルク、および残余のポリエチレンおよび市販の基板内に存在するその他の添加物、例えばケイ酸塩などを含む。J−60のシートを、市販の切刃(型番D5100 K1、フェッケン−キルフェル社(Fecken−Kirfel)、アーヘン、ドイツから)により剥ぎ取った。次いで、水/イソプロピルアルコール溶液によって、手を使ってシートを洗浄した。
【0037】
次いで、温度制御された電極配置を有する従来の市販の高周波グロー放電(RFGD)プラズマ反応室(モデルPE−2、Advanced Energy Systems、メドフォード、ニューヨーク)に、剥ぎ取った基板を設置することにより、テトラエトキシシラン(TEOS)を含む研磨剤によって、J−60SE基板を被覆した。350ミリに維持した反応室内で、一次プラズマ反応物であるアルゴンを30秒間導入することから、基板のプラズマ処理を開始した。電極温度を30℃に維持し、300ワットの高周波操作電力を使用した。次いで、HeまたはArガスが混合したTEOSを含む二次反応物を、0.10SLMの流量で、約0から約45分間の間導入した。ガス流中の二次反応物の量は、モノマー貯蔵容器の温度(MRT;50±10℃)における二次反応物モノマーの蒸気の背圧(BP)によって調整した。
【0038】
約4000オングストロームの厚さのタングステン表面およびその下の250オングストロームの厚さのタンタル障壁層を有するウエハを研磨することによって、J60SE研磨パッドの研磨特性を試験した。市販の研磨機(製造番号EP0222;Ebara Technologies、サクラメント、カリフォルニア州から)を用いて、タングステンの研磨特性を評価した。特段の記述がない限り、タングステン研磨の除去速度は、基板を抑える約25kPaのダウンフォース(下向きの力)、約100から約250rpmのテーブル速度を用いて評価した(製造番号MSW2000;Rodel、ニューアーク、デラウェア州から)。pHを約2に調節した従来のスラリー(製造番号MSW2000;Rodel、ニューアーク、デラウェア州から)を使用した。
【0039】
図5は、さまざまな長さの時間でTEOSを被覆した後の、基板表面のFTIRスペクトルを示す。FTIR分光計(FTIR1727、Perkin−Elmer System 検出器:シリーズ−I FTIR顕微鏡(MCT検出器)を装備し、10000から370cm−1のスペクトル範囲を有する)を使用して、スペクトルを得た。約1010および約950cm−1の信号を、それぞれ、シリカの非対称性Si−O−Si伸縮およびケイ酸塩のSi−O−X伸縮(ただし、Xは、四面体配置をしていない、ポリマー状の−(Si−O−Si)n−構造物を指す)に帰属させた。850cm−1の信号は、遊離および会合したシラノール(Si−O−H)による。シラノールは、水素結合を媒介して会合し、会合の程度は、シラノールの表面濃度が高くなるにつれて増大する。
【0040】
図6に示されているように、被覆時間が約30分に達するまでは、被覆時間が長くなるにつれて、Si−Oの表面濃度が正味で減少するために、これらの信号は両方とも単調に減少した。その後は、蒸着の速度論および機構が変化し、表面のSi−O濃度が上昇することを示した。後者の観測は、TEOSの蒸着機構および速度論の、一般に受け入れられている概念と矛盾し、被覆過程、特に30分より後の被覆時間における被覆過程のさらなる研究を促進するものである。
【0041】
ナノ押込み試験を用いて、表面をコーティングした被覆の機械的特性の評価、より具体的には、弾性率および硬度の測定を行った。押込みは、さまざまな時間で研磨剤により被覆された熱可塑性発泡体基板上において実行された。NANOTEST 600(登録商標)、Advanced Material and Characterization Facility(AMPAC、オーランド、フロリダ州)に設置されているNanoindenterを、すべての測定に使用した。機械装置は、振動遮断テーブル上に置かれ、温度制御された箱の中に収容されている。箱の前面の両側に設置された2つの別々のヒータが、熱障壁を形成している。予想される安定性が±0.1℃である温度制御器を、室温より約2または3℃高い値に設定した。実験を開始する前に熱安定性を得るために、少なくとも30分間、押込み圧子を安定化させることができた。
【0042】
押込み圧子の型、最大深さおよび負荷/除荷速度などの押込みパラメータは、被覆された研磨パッドの予備試験を実施することによって確定した。研磨パッド表面は、数ミクロン程度のさまざまな大きさの凸凹および細孔を含有していることが分かった。これらの観測に基づいて、約1mmの先端直径を有する球形の押込み圧子を選択し、押込み圧子がパッド材料を十分に試験できるようにした。同じ理由から、500ミクロンを超える空間分解能を選択した。押込みは、機械装置パラメータである最初の負荷を0.1mNとする、超低負荷範囲で実施した。制御パラメータを制御された深さに設定し、それぞれのパッドを、10000ナノメートルの最大深さを有する、さまざまな深さで押込んだ。通常、10個の押込みを平均した結果を吟味した。Oliver−Pharr法およびHertz法を用いて結果を評価し、その正当性を立証した。ナノ押込み圧子から得られた、負荷−深さ(P−h)曲線を、Oliver−Pharr法を用いて分析した。
【0043】
研磨剤を被覆された研磨パッドは、押込み実験の間、不均一な貫入を示した。押込み(P−h)曲線の目視検査から、いくつかの特性が分かる。図7に示すように、「pop−in」(Xb)、「pop−out」または「kink−back」(Xc)と標識された、別々の事象が曲線から識別できる。例えば、「pop−in」は、押込み圧子の先端が試料中へ突然貫入する場合に、圧縮サイクル中に生じる。これらの事象は、被覆時間、負荷/除荷速度および押込み圧子の深さなどのいくつかの実験パラメータと相関している。被覆された研磨パッドによって示された混合応答により、「pop−in」の事象は、1000ナノメートル付近の深さの押込み圧子の貫入の場合に、よりしばしば生じたこと、「pop−out」の事象は、押込み深さには影響されないように見えたこと、および負荷/除荷速度はこれらの事象の両方に影響を与えたことが明らかになった。
【0044】
さまざまな深さおよび種々の被覆時間について、P−h曲線をさらに分析することによって、負荷曲線は急速に上昇し、減少することが分かった。このX座標、またはこの転移点の深さをXaと呼ぶ。同様に、XbおよびXcは、対応するX座標またはナノメートルで表した深さである。押込み圧子の先端が被覆中へ、そのように不均一に貫入することは、おそらく、塑性変形が開始されたことから生じる。塑性変形は、CMPパッドの重要な属性であり、CMP工程の効率に影響する。したがって、負荷−深さ曲線における上記の事象は、パッドの性能を予告するものであると仮定した。初期の表面貫入の事象(Xa)は、PECVD被覆時間、最大貫入深さおよび負荷速度の関数であることが分かった。例えば、図8は、XaとTEOS被覆時間との代表的な相関を示す。このデータは、Xaが、誘電体被覆によって改変された表面発泡体の厚さに関係していることを示唆する。
【0045】
図9および図10は、Oliver−Pharr法を用いて計算した、さまざまなTEOS被覆時間を有する研磨パッドの硬度および弾性率を、それぞれ図示したものである。有効表面弾性率および硬度は、被覆時間が増大するにつれて上昇することが分かった。30分、40分および45分の被覆時間では、研磨パッドは、それぞれ、約65KPa、62KPaおよび70Kpaの硬度の値を有していた。研磨時間がより短い場合は、硬度は60KPa以下であった。30分、40分および45分の被覆時間では、研磨パッドは、それぞれ、約4MPa、5.5MPaおよび8.2MPaの弾性率の値を有していた。研磨時間がより短い場合は、弾性率の値は3MPa以下であった。
【0046】
パッド表面の機械的特性の変化は、発泡体基板上に蒸着した被覆の効果による。これらのデータは、FTIRデータにおける以前に記述した不連続が、TEOSから誘導された被覆の正味の除去ではなく、パッド表面の化学的性質の変化を示唆していることを示す。
【0047】
5℃/分の、プログラムされた加熱速度で−125から200℃まで、引張モードで、周波数1Hz、振幅10ミクロンで稼働する市販の装置を用いて、被覆された研磨パッドの試料の動的機械分析(DMA)を行った。液体窒素を使用して、周辺温度より低い温度を達成した。測定を行う前に、所定の初期温度で10分間、試料を平衡させた。研磨パッド試料のすべてを、15cm×5cmの同一寸法を有するように製造し、DMA測定の前に、24時間、真空乾燥(約1×10−2で30℃)し、湿気の影響を考慮する必要がないようにした。
【0048】
図11に示すように、DMAによる研究から、長時間のPECVD被覆においては損失弾性率が急激に変化することが示される。10分から40分の被覆時間の間に、損失弾性率の値が0.37から0.23に変化するのと比べて、被覆時間が45分の時点で、損失弾性率は約0.6MPaへ急上昇する。
【0049】
このことは、PECVD被覆は基板の表面を改変するのみであるという一般に受け入れられている見解とは対立するものである。この驚くべき結果は、表面被覆を行っている間に、発泡体基板のバルクの機械的特性を変える、別の過程が生じていることを示唆する。熱可塑性発泡体基板中の残留反応物が、PECVD被覆を行っている間、時間に依存するやり方で反応し続けたと仮定した。
【0050】
X線光電子分光法(XPS)を用いて、種々の時間で被覆された研磨パッドの表面改変を、さらに特性決定した。市販のX線光電子分光計を10−10の基準圧力下で操作し、金属の金標準(Au(4f7/2):84.0±0.1eV)を用いて分光計を較正した。250Wのパワーで1253eVのエネルギーを有する、非単色のMgK∝ X線源を分析に使用した。285.0eVにおける不定(adventitious)の炭素線の水素部分の結合エネルギーを基準とした結合エネルギー・スケールを使用することにより、研磨パッド試料によって生じたチャージング・シフトを除去した。市販のソフトウェアを使用して、ピークのデコンボリューションを行った。
【0051】
XPS分析により、TEOSの吸着および解離から生じたトポグラフィの化学的性質に関するいくつかの洞察がもたらされた。炭素(1s)の信号は、3つの主要なピークに分解された:C−CおよびC−H結合に対応する約285.0eVにおける2つのピーク、およびC−O結合に対応する約286.5eVにおいて観測されたピークである。約289から約289.3eVを中心とするピークは、熱可塑性発泡体基板の製造工程で使用された発泡剤の残留物に由来するカルバミド[−O−C(NH2)=O]官能基に帰属された。それぞれ、40および45分間被覆された試料については、約283.6eV付近に別のピークが観測され、仮にC−Si結合に帰属された。
【0052】
図12は、TEOSにより、(a)10分、(b)20分、(c)30分、(d)40分、および(e)45分間被覆した後のパッドから得たSi(2p)エンベロープのXPS信号に当てはめた、例示的なピーク包絡線を示す。ピークは、(1)Si−O、(2)ケイ酸塩、(3)Si−N、および(4)Si−C結合として同定された。各スペクトルを、それぞれ、ケイ酸塩およびSi−O種における結合に対応する、約102.3および約103.4eVにおける2つの主要なピークにデコンボリューションした。
【0053】
これらのデータは、被覆時間が短い(例えば、約30分未満)場合、パッド表面はシラノールに富んでおり、TEOS薄膜が低い工程温度で蒸着されることと矛盾しないことを示す。図13においてさらに示すように、XPSデータから計算した酸素のSiに対する強度比は、被覆の初期において高く、蒸着された被覆中のシラノールの濃度が高いことを示す。シラノール濃度は、30分までは被覆時間と共に減少し、それから上昇し始める。例えば、図9に示されているように、約10分、20分、30分、40分および45分間被覆された後では、O:Siの比は、それぞれ、約7.4、4.8、3.6、7.1および9.9に等しい。
【0054】
再び図12を参照すると、30、40および45分の被覆時間については、Si−N結合に対応する小さなピークが、約102.1eVにおいて観測される。この同一時間の間に、SiのNに対する比が急激に減少し、表面上の窒素種が増加したことを示す。
【0055】
これらの観測から、PECVDベースの被覆には、いくつかの過程間の競争が伴うことが示唆される。PECVDベースの被覆により、発泡体表面上の(SiOxおよびSiO2)上にシリカおよびケイ酸塩が形成される。さらに、基板の表面化学は、被覆時間の関数として変化する。30分以内の被覆時間では、Arイオンが表面を衝撃することによって、デポジットの正味のエッチングが発生する。また、プラズマによって試料も加熱され、熱的過程も生じる。被覆時間が増大すると、基板表面上のケイ酸塩含有量が減少し始め、パッドは密になり、パッドの硬度を増すようになる。
【0056】
30分以上の被覆時間では、基板温度が十分高くなり、基板を発泡させるために使用した窒素ガスのガス放出または発泡体中に残された残留発泡剤の分解を引き起こし、窒素ガスを生成する。窒素は、気相中のSi含有中間体またはパッド表面上のSi種と反応し、SiO2を消費しながらSi3N4などの窒化物を形成する。そのような窒化物は、10モル%までの濃度で研磨剤中に取り込まれる。さらに、そのような被覆時間では、発泡体表面のイオン衝撃により、パッド表面上に炭素ラジカルがかなりの量で発生する。これらのラジカルは、ケイ素種と反応して、例えば、炭化ケイ素(SiC)などの炭化物を形成し、形成された炭化物は10モル%までの濃度で研磨剤中に取り込まれる。
【0057】
図14は、TEOSによる、異なった時間の被覆をされた熱可塑性発泡体基板について、相対的なブランケット・タングステン除去速度(W−RR)と静的な摩擦係数(COF)とを比較したものである。W−RRおよびCOFの両方とも、30分までは、被覆時間が長くなるにつれて増大し、研磨剤の厚さが増すことを意味する。30から60分までの被覆時間では、W−RRおよびCOFの両方とも減少し、次いで、増大する。これらの結果は、表面のマイクロメカニックスおよび化学的特性が異なるために、パッドが、30分までの時間で被覆された表面については1つの機構による、30分を超える時間で被覆された表面については異なった機構による研磨剤のように見えることを示唆する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の研磨パッドの断面図である。
【図2】研磨パッドを製造するための、本発明の方法において選択された段階の断面図である。
【図3】研磨パッドを製造するための、本発明の方法において選択された段階の断面図である。
【図4】研磨パッドを製造するための、本発明の方法において選択された段階の断面図である。
【図5】テトラエトキシシラン(TEOS)を含む研磨剤前駆体によって、さまざまな時間で被覆した後の、熱可塑性発泡体研磨パッド試料の近赤外スペクトルである。
【図6】TEOSに、さまざまな時間曝露した後の、代表的な熱可塑性発泡体研磨パッドの近赤外信号の変化を示すグラフである。
【図7】TEOSによって被覆された後の、熱可塑性発泡体研磨パッドの例示的な押込み曲線である。
【図8】TEOSによる被覆時間の関数としての(Xa)、即ち熱可塑性発泡体研磨パッドの「pop−in」の代表的な変化を示すグラフである。
【図9】TEOSによる被覆時間の関数としての、熱可塑性発泡体研磨パッドの硬度の代表的な変化を示すグラフである。
【図10】TEOSによる被覆時間の関数としての、熱可塑性発泡体研磨パッドの弾性率の代表的な変化を示すグラフである。
【図11】TEOSによる被覆時間の関数としての、熱可塑性発泡体研磨パッドの貯蔵および損失弾性率の代表的な変化を示すグラフである。
【図12】TEOSによってさまざまな時間で被覆した後の、研磨パッドの代表的なXPSスペクトルである。
【図13】TEOSによってさまざまな時間で被覆した後の、研磨パッドのXPSスペクトルから計算した、酸素のSiに対する強度比の値の変化を示すグラフである。
【図14】TEOSによる被覆時間の関数としての、熱可塑性発泡体研磨パッドの相対的なブランケット・タングステン除去速度(WRR)および静的摩擦係数(COF)の変化を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹面セルを含む表面を有する熱可塑性発泡体基板を備えた研磨本体、および
前記凹面セルの内部表面を被覆し、炭化物または窒化物を含有する無機金属酸化物を含む研磨剤
を含む化学的機械的研磨用の研磨パッド。
【請求項2】
前記炭化物または窒化物は前記無機金属酸化物の格子中に取り入れられている、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記窒化物は窒化ケイ素または窒化チタンを含み、前記炭化物は炭化ケイ素または炭化チタンを含む、請求項2に記載の研磨パッド。
【請求項4】
前記研磨パッドは70KPa以上の硬度を有する、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項5】
前記研磨パッドは5MPa以上の弾性率を有する、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項6】
化学的機械的研磨用の研磨パッドを製造するための方法であって、
熱可塑性発泡体基板内部の独立セルを露出して凹面セルを含む基板表面をもたらすこと、および
前記凹面セルの内部表面を、無機金属酸化物を含む研磨剤によって被覆すること
を含み、前記被覆を実施する間に炭化物および窒化物が前記無機金属酸化物中に取り入れられる方法。
【請求項7】
被覆は、プラズマ支援化学蒸着(PECVD)法における初期プラズマ反応物に前記基板表面を曝露し、その上に改変された表面を製造すること、および
前記PECVD法における二次プラズマ反応物に前記改変された表面を曝露し、前記研磨剤を形成すること
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
二次プラズマ反応物への曝露は、30分から60分間続行する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記独立セルの内部に窒素ガスが含まれ、前記窒素ガスは前記二次プラズマ反応物と反応して前記窒化物を形成する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記熱可塑性発泡体基板は、前記二次プラズマ反応物と反応して前記炭化物を形成する、請求項7に記載の方法。
【請求項1】
凹面セルを含む表面を有する熱可塑性発泡体基板を備えた研磨本体、および
前記凹面セルの内部表面を被覆し、炭化物または窒化物を含有する無機金属酸化物を含む研磨剤
を含む化学的機械的研磨用の研磨パッド。
【請求項2】
前記炭化物または窒化物は前記無機金属酸化物の格子中に取り入れられている、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記窒化物は窒化ケイ素または窒化チタンを含み、前記炭化物は炭化ケイ素または炭化チタンを含む、請求項2に記載の研磨パッド。
【請求項4】
前記研磨パッドは70KPa以上の硬度を有する、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項5】
前記研磨パッドは5MPa以上の弾性率を有する、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項6】
化学的機械的研磨用の研磨パッドを製造するための方法であって、
熱可塑性発泡体基板内部の独立セルを露出して凹面セルを含む基板表面をもたらすこと、および
前記凹面セルの内部表面を、無機金属酸化物を含む研磨剤によって被覆すること
を含み、前記被覆を実施する間に炭化物および窒化物が前記無機金属酸化物中に取り入れられる方法。
【請求項7】
被覆は、プラズマ支援化学蒸着(PECVD)法における初期プラズマ反応物に前記基板表面を曝露し、その上に改変された表面を製造すること、および
前記PECVD法における二次プラズマ反応物に前記改変された表面を曝露し、前記研磨剤を形成すること
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
二次プラズマ反応物への曝露は、30分から60分間続行する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記独立セルの内部に窒素ガスが含まれ、前記窒素ガスは前記二次プラズマ反応物と反応して前記窒化物を形成する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記熱可塑性発泡体基板は、前記二次プラズマ反応物と反応して前記炭化物を形成する、請求項7に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2007−505749(P2007−505749A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526974(P2006−526974)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/030013
【国際公開番号】WO2005/028157
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(503195067)サイロクエスト インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/030013
【国際公開番号】WO2005/028157
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(503195067)サイロクエスト インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】
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