説明

化学線硬化性基を有する特に反応性で低粘性のアロファネートの製造方法および特に耐引掻性の被覆物の製造のためのその使用

【課題】本発明の目的は、化学線の作用下で重合によって反応する活性化エチレン不飽和基を有するポリイソシアネートの、特に反応性で低粘性の反応生成物の製造方法、および被覆組成物における該反応生成物の使用、およびそれから得られる特に耐引掻性の被覆物を提供する。
【解決手段】反応性における顕著な改良、放射線硬化性アロファネートの粘度におけるさらなる低減、それから得られる被覆物の耐引掻性における顕著な向上は、ヒドロキシアルキルアクリレートの適当な混合物に加えて、カプロラクトン変性ヒドロキシアルキルアクリレートおよびいくつかのアクリレート基を有するヒドロキシアクリレートを用いる場合に達成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学線の作用下で重合によって反応する活性化エチレン性不飽和基を有するポリイソシアネートの特に反応性で低粘性の反応生成物の製造方法および被覆組成物におけるこれらの反応生成物の使用、およびそれから得られる特に耐引掻性の被覆物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明では、用語「反応性の」とは、化学線による硬化に対する反応度、すなわち、放射線の影響下での架橋傾向に関する。
【0003】
化学線、例えば紫外線、赤外線または電子線等による活性化二重結合を有する被覆物系の硬化は既知であり、工業的に確立されている。これは被覆技術における最も速い硬化法の一つである。従って、かかる原理に基づく被覆組成物は、放射線−または化学線−硬化または−硬化性系と呼ばれる。
【0004】
粘度を調節するために可能な限り少量の有機溶媒を用いる、または有機溶媒を用いない現代のラッカー系の環境的および経済的な要求のため、既に低粘性であるラッカー原料を用いることが望まれている。アロファネート構造を有するポリイソシアネートは、とりわけEP−A682012に記載され、以前から知られている。
【0005】
工業的には、モノ−または多価アルコールと過剰量の脂肪族および/または脂環式ジイソシアネートとの反応によって調製される(GB−A994890、EP−A0000194またはEP−A0712840を参照)。次いで、未反応ジイソシアネートを真空により蒸留することによって除去する。DE−A19860041に従えば、該方法は、活性化二重結合を有するOH官能性化合物、例えばヒドロキシアルキルアクリレート等を用いて実施することもできるが、特に低モノマー含有量の生成物の製造が困難である。蒸留工程は、残留イソシアネート含有量を十分に低下(<0.5重量%の残留モノマー)させるために135℃までの温度で進行させなければならないので、精製中、二重結合が熱開始下での重合によって既に反応することができ、完全な生成物を得ることができない。
【0006】
低モノマー含有量のアロファネート含有放射線硬化性ポリウレタン系樹脂の調製は、EP−A0867457およびUS−A573925に記載されている。それにも拘わらず、これらのバインダーは、活性化二重結合を有さないが、未反応性アリルエーテル基(構造R−O−CH−CH=CH)を有する。従って、必要なUV反応性を導入する反応性希釈剤(アクリル酸の低分子量エステル)の添加が要求される。
【0007】
同様に、ウレタンおよびイソシアネート以外のイソシアネート誘導体から間接的にアロファネートを製造する試みもなされていない。従って、EP−A0825211には、オキサジアジントリオンからアロファネート構造を製造するための方法が記載されているが、活性化二重結合を有する放射線硬化性誘導体は記載されていない。放射線硬化性系の具体的な環境への適用はWO2004/033522に記載されている。
【0008】
他の経路は、アロファネート構造を得るためのウレットジオンの開環であり(水性、高固体およびパウダーコーティングの国際シンポジウム2001年の議事録(Proceedings of the International Waterborne、High−Solids、and Powder Coatings、Symposium 2001)、第28回、第405〜419頁、およびUS−A20030153713を参照)、これは同様に放射線硬化性系へ首尾よく適用することが可能であった(WO2005/092942)。
【0009】
いずれの経路も、精製された出発分子を必要とし、副生成物を多く含むアロファネート生成物のみを生じさせる。
【0010】
US5777024には、活性化二重結合を有するヒドロキシ官能性モノマーと、アロファネート変性イソシアヌレートポリイソシアネートのイソシアネート基との反応による、低粘性放射線硬化性アロファネートの製造が記載されている。アロファネート基により結合された基は飽和され、その結果、より高い官能価の可能性が排除される。
【0011】
EP−B694531には、放射線硬化性基を有する親水性化アロファネートを製造するための多段法が記載されている。しかしながら、該方法では、NCO−およびアクリレート−官能性ウレタンがまず調製され、これらは親水性化され、さらなるNCO−およびアクリレート−官能性ウレタンの添加後、アロファネート化される。100〜110℃の温度が、アロファネート化のためのプロセス温度として記載されている。
【0012】
最後に、欧州特許EP−A1645582には、生成物の蒸留を伴わずにヒドロキシ官能性アクリレートとの反応によって単純なジイソシアネートから出発する低粘性アロファネートを生じさせる方法が記載されている。それでもなお、該方法の欠点は、十分な反応速度が入手困難なアンモニウム塩でのみ達成されるという点である。また、記載の生成物の粘度、例えばEP−A0825211に記載の方法によって得られるアロファネートの粘度ほど低くはない。さらに、反応性もまた改良が必要である。
【0013】
より低い粘度は、EP−A2031005に記載のような適当な塩基性亜鉛触媒作用を用いることによりEP−A1645582に記載の方法によって達成することができる。粘度におけるさらなる改良は、EP−A2031003が教示する通り、種々のヒドロキシアクリレートの適当なブレンドを用いる場合に達成することもできる。中でも、2つの方法の組み合わせは極めて低い粘度を有する生成物を生じさせる。それにも拘わらず、このようなバインダーに基づく被覆物の耐引掻性はとりわけ改良する必要がある。反応性もまた、このようにして向上させることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許出願公開第682012号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第994890号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0000194号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第0712840号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第19860041号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第0867457号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第573925号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第0825211号明細書
【特許文献9】国際出願第2004/033522号パンフレット
【特許文献10】米国特許出願公開第20030153713号明細書
【特許文献11】国際出願第2005/092942号パンフレット
【特許文献12】米国特許第5777024号明細書
【特許文献13】欧州特許第694531号明細書
【特許文献14】欧州特許出願公開第1645582号明細書
【特許文献15】欧州特許出願公開第2031005号明細書
【特許文献16】欧州特許出願公開第2031003号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Proceedings of the International Waterborne、High−Solids、and Powder Coatings、Symposium 2001、第28回、第405〜419頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本発明の目的は、化学線によって架橋することができ、向上した反応性を有する極めて低粘性のアロファネート(放射線硬化性アロファネート)を製造することができる方法を提供すること、および特に高い耐引掻性を有する被覆物を生じさせる、該アロファネートに基づく被覆組成物を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0017】
EP−A1645582を根幹に、反応性における著しい向上および放射線硬化性アロファネートの粘度におけるさらなる低減、それから得られる被覆物の耐引掻性における著しい向上は、ヒドロキシアルキルアクリレートの適当な混合物に加えて、カプロラクトン変性ヒドロキシアルキルアクリレートおよびいくつかのアクリレート基を有するヒドロキシアクリレートを用いる場合に達成することができることを見出した。このような多官能性アクリレートモノオールの高い増粘性作用をカプロラクトン変性ヒドロキシアルキルアクリレートによって単に十分に補うことができるだけではなく、アロファネートの反応性および耐引掻性および得られる被覆物の耐性を実質的に低下させないことは特に驚くべきことであると評価されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施態様は、0.5重量%未満の残留モノマー含有量および1重量%未満のNCO含有量を有する放射線硬化性アロファネートを製造するための方法であり、該方法は、
(1)A)NCO基を含む化合物、
B)I)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、
II)カプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、および
III)少なくとも2つの(メタ)アクリレート基およびOH基を含む1000g/モル未満の数平均分子量を有する化合物
を含む混合物、
C)必要に応じて、NCO反応性基を含む、B)とは異なった放射線硬化性化合物、
D)必要に応じて、NCO反応性基を含み、放射線硬化性基を有さない化合物
から、
E)必要に応じて触媒の存在下で
NCO基および放射線硬化性基を含むウレタンを調製する工程、および
(2)次いで、または同時に、さらなるNCO基を含む化合物を添加することなく、前記NCO基および放射線硬化性基を含むウレタンを、
F)アロファネート触媒、および
G)必要に応じて第三級アミン
の存在下で反応させて、最終生成物を形成する工程
を含み、A)の化合物のNCO基と、B)、必要に応じてC)および必要に応じてD)の化合物のOH基との比は1.45:1.0〜1.1:1.0の範囲である。
【0019】
本発明の他の実施態様は、成分B)が30〜60モル%のI)、15〜35モル%のII)および15〜35モル%のIII)の混合物である上記の方法であり、但しいずれの場合にもI)、II)およびIII)の合計が100モル%となり、および用語モルは工業グレード混合物においてOH基に関する。
【0020】
本発明の他の実施態様は、I)が20〜80モル%の2−ヒドロキシエチルアクリレートおよび80〜20モル%の2−ヒドロキシプロピルアクリレートを含む上記の方法であり、但しいずれの場合にも前記2−ヒドロキシエチルアクリレートおよび2−ヒドロキシプロピルアクリレートの合計は100モル%である。
【0021】
本発明の他の実施態様は、II)がε−カプロラクトンで変性された2−ヒドロキシエチルアクリートを含んでなる上記の方法である。
【0022】
本発明の他の実施態様は、III)がペンタエリトリトールトリアクリレートを含む上記の方法である。
【0023】
本発明の他の実施態様は、A)がヘキサメチレン−ジイソシアネート、イソホロン−ジイソシアネートおよび/または4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンを含む上記の方法である。
【0024】
本発明の他の実施態様は、A)の化合物のNCO基とB)、必要に応じてC)および必要に応じてD)の化合物のOH基との比が1.35:1.0〜1.3:1.0の範囲である上記の方法である。
【0025】
本発明の他の実施態様は、(2)を、前記最終生成物が0.2重量%未満のNCO含有量を有するまで実施する上記の方法である。
【0026】
本発明のさらなる他の実施態様は、上記の方法によって調製された放射線硬化性アロファネートである。
【0027】
本発明のさらなる他の実施態様は、被覆物、ラッカー、接着剤、印刷インキ、注型用樹脂、歯科用組成物、サイズ剤、フォトレジスト、ステレオリソグラフィー系、複合材料用樹脂、または上記の放射線硬化性アロファネートを含む封止用組成物である。
【0028】
本発明のさらなる他の実施態様は、
a)上記の放射線硬化性アロファネート、
b)必要に応じて、化学線の作用下で重合によってエチレン性不飽和化合物と反応する基を含有しない、遊離イソシアネート基またはブロックトイソシアネート基を有するポリイソシアネート、
c)必要に応じて、化学線の作用下で重合によってエチレン性不飽和化合物と反応する基および必要に応じて遊離イソシアネート基またはブロックトイソシアネート基を有する、a)とは異なったさらなる化合物、
d)必要に応じて、イソシアネートと反応し、および活性水素を含有する化合物、
e)開始剤、
f)必要に応じて溶媒、および
g)必要に応じて、1以上の補助物質および/または添加剤
を含む被覆組成物である。
【0029】
本発明のさらなる他の実施態様は、上記の放射線硬化性アロファネートから調製された被覆物で被覆された基材である。
【0030】
従って、本発明は、
A)NCO基を有する化合物、
B)I)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、
II)カプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、および
III)OH基に加えて少なくとも2つの(メタ)アクリレート基を有する、低分子量化合物(Mn<1000g/モル)
を含む混合物、
C)必要に応じて、NCO反応性基を含む、B)とは異なった放射線硬化性化合物、
D)必要に応じて、NCO反応性基を有し、反応性硬化性を有さない化合物
から、
E)必要に応じて触媒の存在下で
NCO基を有し、および放射線硬化性基を有するウレタンを形成し、次いでまたは同時に、これを、さらなるNCO基を有する化合物を添加することなく、
F)アロファネート触媒、および
G)必要に応じて第三級アミン
の存在下で反応させ、
A)からの化合物のNCO基と、B)、必要に応じてC)および必要に応じてD)の化合物からのOH基との比は、1.45:1.0〜1.1:1.0である、0.5重量%未満の残留モノマー含有量および1重量%未満のNCO含有量を有する放射線硬化性アロファネートを製造するための方法を提供する。
【0031】
本発明による方法は、30〜60モル%の範囲のパートI)、15〜35モル%の範囲のパートII)および15〜35モル%の範囲のパートIII)を含む混合物を成分B)に用いる場合に有利であり、但しいずれの場合にも3つのパートの合計は100モル%となりおよび工業グレード混合物における用語モルはOH基に関する。
【0032】
本発明による方法は、成分B)において、パートI)が20〜80モル%の範囲の2−ヒドロキシエチルアクリレートおよび80〜20モル%の範囲の2−ヒドロキシプロピルアクリレートを含む場合に有利であり、但しいずれの場合にも前記2つのパートの合計は100モル%である。
【0033】
本発明による方法は、成分B)パートII)がグリセロールアクリレートメタクリレートおよび/またはペンタエリトリトールトリアクリレートを含む場合に有利である。
【0034】
本発明による方法は、ヘキサメチレン−ジイソシアネート(HDI)、イソホロン−ジイソシアネート(IPDI)および/または4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンが成分A)に含まれる場合に有利である。
【0035】
本発明による方法は、A)からの化合物のNCO基とB)、必要に応じてC)および必要に応じてD)からの化合物のOH基との比が1.35:1.0〜1.3:1.0である場合に有利である。
【0036】
本発明による方法は、アロファネート化を、最終生成物が0.2重量%未満のNCO含有量を有するまで実施する場合に有利である。
【0037】
本発明はまた、本発明による方法によって得られる放射線硬化性アロファネートを提供する。
【0038】
本発明はまた、被覆物およびラッカー並びに接着剤、印刷インキ、注型用樹脂、歯科用組成物、サイズ剤、フォトレジスト、ステレオリソグラフィー系、複合材料用樹脂および封止用組成物の製造のための、本発明による方法によって得られる放射線硬化性アロファネート使用をさらに提供する。
【0039】
本発明はまた、
a)本発明による方法によって得られる1以上の放射線硬化性アロファネート、
b)必要に応じて、化学線の作用下で重合によってエチレン性不飽和化合物と反応する基を含有しない、遊離イソシアネート基またはブロックトイソシアネート基を有するポリイソシアネート、
c)必要に応じて、化学線の作用下で重合によってエチレン性不飽和化合物と反応する基、および必要に応じて遊離イソシアネート基またはブロックトイソシアネート基を有する、a)とは異なったさらなる化合物、
d)必要に応じて、イソシアネートと反応し、および活性水素を含有する化合物、
e)開始剤、
f)必要に応じて溶媒、および
g)必要に応じて、1以上の補助物質および/または添加剤
を含む被覆組成物である。
【0040】
本発明のさらなる他の実施態様は、上記の放射線硬化性アロファネートから調製された被覆物で被覆された基材である。
【0041】
好適には、A)からの化合物のNCO基とB)、必要に応じてC)および必要に応じてD)からの化合物のOH基との比が1.43:1.0〜1.2:1.0、特に好適には1.35:1.0〜1.3:1.0の範囲である。
【0042】
可能性のあるイソシアネート含有化合物A)は、芳香族、脂肪族および脂環族のポリイソシアネートである。適当なポリイソシアネートは、800未満の平均分子量を有する式Q(NCO)〔式中、nは2〜4の数を表し、およびQは芳香族C〜C15−炭化水素基、脂肪族C〜C12−炭化水素基または脂環族C〜C15−炭化水素基を表す〕で示される化合物であり、例えば、系列2,4−/2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、トリイソシアナトノナン(TIN)、ナフチルジイソシアネート(NDI)、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、3−イソシアナトメチル−3,3,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート=IPDI)、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2−メチルペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレン−4−ジイソシアネート(THDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシル−2,2−プロパン、3−イソシアナトメチル−1−メチル−1−イソシアナトシクロヘキサン(MCI)、1,3−ジイソオクチルシアナト−4−メチルシクロヘキサン、1,3−ジイソシアナト−2−メチルシクロヘキサンおよびα,α,α’,α’−テトラメチル−m−または−p−キシリレンジイソシアネート(TMXDI)およびこれらの化合物を含む混合物からのジイソシアネートである。
【0043】
例えばウレットジオン(例えばDesmodur(登録商標)N3400、Bayer MaterialScience、レーフェルクーゼン、ドイツ国)またはイソシアヌレート(例えばDesmodur(登録商標)N3300(高粘度型)またはDesmodur(登録商標)N3600(低粘度型)、いずれもBayer MaterialScience、レーフェルクーゼン、ドイツ国)を生じさせる、上記のイソシアネートの反応生成物または上記のイソシアネートと他のイソシアネートとの反応生成物は、イソシアネート含有化合物Aとして同じく適当である。
【0044】
プレポリマーを生じさせる上記のイソシアネートと他のイソシアネート反応性化合物との反応生成物は、イソシアネート含有化合物A)としてさらに適当である。このようなイソシアネート反応性化合物は、中でも、ポリオール、例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートおよび多価アルコールである。より高い分子量のヒドロキシ化合物およびより少ない量での低分子量のヒドロキシ化合物をポリオールとして用いることもできる。
【0045】
従って、成分A)の化合物は、本発明による方法に直接用いてよく、または本発明による方法を実施する前に任意の所望の前駆物質から出発する予備反応によって調製する。
【0046】
モノマージイソシアネートの使用は、成分A)として好適である。ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)および/または4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンの使用は特に好適であり、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の使用は極めて特に好適である。
【0047】
本発明では、放射線硬化性基とは、化学線の作用下での重合によってエチレン性不飽和化合物と反応する基を意味すると理解される。これらは、ビニルエーテル基、マレイル基、フマリル基、マレイミド基、ジシクロペンタジエニル基、アクリルアミド基、アクリル基およびメタクリル基であり、ビニルエーテル基、アクリレート基および/またはメタクリレート基は好適であり、アクリレート基は特に好適である。
【0048】
化学線は、電磁電離放射線、特に電子線、紫外線ならびに可視光を意味すると理解される(Roche Lexikon Medizin、第4版;Urban & Fischer Verlag、ミュンヘン、1999年)。
【0049】
本発明による方法のために、I)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、II)カプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよびIII)OH基に加えて少なくとも2つの(メタ)アクリレート基を有する低分子量化合物(Mn<1000g/モル)を成分B)として用いる。
【0050】
本発明に用いるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(I)は、OH基に加えてアクリレート基またはメタアクリレート基を含有する、200g/モル未満の分子量(Mn)を有する化合物である。その例として、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートおよび3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよび2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが好適に用いられ、2−ヒドロキシエチルアクリレートおよび2−ヒドロキシプロピルアクリレートは特に好適であり、2−ヒドロキシエチルアクリレートおよび2−ヒドロキシプロピルアクリレートの混合物は特に好適である。このような混合物は、20〜80モル%の2−ヒドロキシエチルアクリレートおよび80〜20モル%の2−ヒドロキシプロピルアクリレート、特に好適には40〜60モル%の2−ヒドロキシエチルアクリレートおよび60〜40モル%の2−ヒドロキシプロピルアクリレートを好適に含み、但し2−ヒドロキシエチルアクリレートおよび2−ヒドロキシプロピルアクリレートの合計は100モル%である。
【0051】
本発明に用いるカプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(II)は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、好適にはヒドロキシアルキルアクリレート、特に好適には、2−ヒドロキシエチルアクリレート、例えばI)に記載されているようなもの等であり、これは開環エステル化によりε−カプロラクトンと反応させる。本発明では、200g/モルから2500g/モル、好適には200g/モル〜1000g/モル、極めて特に好適には230g/モルから500g/モルの分子量(Mn)を有する、ヒドロキシル基および(メタ)アクリレート基、好適にはアクリレート基を有するポリエステル含有分子が生じるように、平均1〜20個、好適には1〜8個のε−カプロラクトン分子を組み込む。このような生成物は、市販されており、その例として、Tone M100(登録商標)(Dow、シュバルバッハ、ドイツ国)、Miramer M100(登録商標)(Rahn AG、チューリッヒ、スイス国)、Pemcure 12a(登録商標)(Cognis、モンハイム、ドイツ国)またはSR 495(Sartomer、パリ、フランス国)が挙げられる。
【0052】
OH基に加えて少なくとも2つの(メタ)アクリレート基を有する、本発明に用いる低分子量化合物(Mn<1000g/モル)(III)は、平均少なくとも2つの(メタ)アクリレートがエステル結合によって結合している低分子量ポリオールをベースとする生成物である。副生成物として、OH基を含まない化合物、2未満のOH基を有する化合物または2未満のアクリレート基を有する化合物を含有する工業用混合物であることも全く可能である。その例として、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ジ(トリメチロールプロパン)トリ(メタ)アクリレートまたはジ(ペンタエリトリトール)ペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。相当するエトキシル化またはプロポキシル化された種類も同じく用いることができる。グリセロールアクリレートメタアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ジ(トリメチロールプロパン)トリアクリレートまたはジ(ペンタエリトリトール)ペンタアクリレートは好ましく用いられ、ペンタエリトリトールトリアクリレート、グリセロールアクリレートメタアクリレートまたはこれらの2つのアクリレートの混合物の使用は特に好適であり、ペンタエリトリトールトリアクリレートの使用は極めて特に好適である。
【0053】
成分B)は、20〜80モル%のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(I)、10〜50モル%のカプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(II)およびOH基に加えて少なくとも2つの(メタ)アクリレート基を有する10〜50モル%の低分子量化合物(Mn<1000g/モル)(III)、好適には30〜60モル%のI、15〜35モル%のIIおよび15〜35モル%のIIIを含み、但しこれらの成分の合計はいずれの場合にも100モル%であり、工業グレード混合物の場合には用語モルはOH基に関する。
【0054】
成分B)の構成成分は、合成のために予備混合することができるが、好適には成分A)に首尾良く計量投入される。この場合、順番は重要ではない。
【0055】
成分B)のOH官能性不飽和化合物に加えて、本発明による方法において、B)とは異なり、化学線の作用下で硬化することができ、NCO反応性基、例えばOH,SHまたはNHなどを有するさらなる化合物C)を、好ましくはないが用いることもあり得る。
【0056】
本発明では、C)における成分として用いることができる化合物は、1以上のOH基、SH基またはNH基に加えて1以上のビニルエーテル基、マレイル基、フマリル基、マレイミド基、ジシクロペンタジエニル基またはアクリルアミド基をさらに含有する化合物を意味すると理解される。成分B)の定義に該当しない、OH基、SH基またはNH基およびアクリル基またはメタクリル基を含有する化合物も同様に成分C)として用いることができる。
【0057】
ヒドロキシル基を含有する成分C)の適当な化合物の例は、ポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート(例えばPEA6/PEM6;Laporte Performance Chemicals Ltd.、英国)、ポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート(例えば、PPA6、PPM5S;Laporte Performance Chemicals Ltd.、英国)、ポリアルキレンオキシドモノ(メタ)アクリレート(例えば、PEM63P、Laporte Performance Chemicals Ltd.、英国)またはヒドロキシブチルビニルエーテルである。
【0058】
二重結合を含有する酸と必要に応じて二重結合を有するエポキシド化合物との反応から得られるアルコール、例えば(メタ)アクリル酸およびビスフェノールAジグリシジルエーテルの反応生成物も同様にC)の構成物質として適当である。
【0059】
さらに、OH基および不飽和基を含有するポリエステル、例えば無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸または(メタ)アクリル酸を含有するポリエステルを用いることもできる。
【0060】
成分B)のOH官能性不飽和化合物および必要に応じてC)に加えて、化学線の作用下で非反応性である、NCO反応性基、例えばOH、SHまたはNHなどを含有する化合物D)も本発明による方法において用いることもできる。
【0061】
例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールおよび多価アルコールは、成分D)として併用して生成物特性に影響を与えることができる。より高い分子量のヒドロキシ化合物およびより少ない量での低分子量のヒドロキシ化合物をポリオールとして用いることができる。
【0062】
より高い分子量のヒドロキシ化合物として、いずれの場合にも400〜8000g/モルの平均分子量を有する、ポリウレタン化学において通常のヒドロキシポリエステル、ヒドロキシポリエーテル、ヒドロキシポリチオエーテル、ヒドロキシポリアセタール、ヒドロキシポリカーボネート、二量体脂肪アルコールおよび/またはエステルアミドが挙げられ、500〜6500g/モルの平均分子量を有するものが好ましい。好適なより高い分子量のヒドロキシル化合物は、ヒドロキシポリエーテル、ヒドロキシポリエステルおよびヒドロキシポリカーボネートである。
【0063】
62〜399の分子量を有する、ポリウレタン化学において通常のポリオール、例えばエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロパン−1,2−ジオールおよび−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオールおよび−1,3−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、オクタン−1,8−ジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビス(ヒドロキシメチル)−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンまたは1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ポリブチレングリコール、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、グリセロール、トリメチロールプロパン、ヘキサン−1,2,6−トリオール、ブタン−1,2,4−トリオール、ペンタエリトリトール、キニトール、マンニトール、ソルビトール、メチルグリコシドおよび4,3,6−ジアンヒドロへキシトール等を低分子量ポリヒドロキシル化合物として用いることができる。
【0064】
適当なポリエーテルポリオールは、ポリウレタン化学において通常のポリエーテルであり、例えば、水または上記ポリオールまたは1〜4個のNH結合を有するアミンのような2官能性乃至6官能性の出発分子を用いて調製された、テトラヒドロフラン、スチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドまたはエピクロロヒドリンの付加化合物または混合付加化合物、特にエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドの付加化合物または混合付加化合物などである。平均2〜4のヒドロキシル基を含有する、50重量%までの組み込まれたポリエチレンオキシド単位を含有し得る、プロピレンオキシドポリエーテルが好ましい。
【0065】
適当なポリエステルポリオールの例は、例えば多価アルコール、好ましくは二価アルコールおよび任意に付加的に三価アルコールと、多塩基カルボン酸、好ましくは二塩基カルボン酸との反応生成物である。遊離ポリカルボン酸の代わりに、対応するポリカルボン酸無水物または対応する低級アルコールのポリカルボン酸エステルまたはこれらの混合物をポリエステルを調製するために使用することもできる。ポリカルボン酸は、実際は、脂肪族、脂環式、芳香族および/または複素環式であり得、必要に応じて例えばハロゲン原子によって置換されていてもよく、および/または不飽和であってもよい。その例として、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、コハク酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、トリメリット酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水グルタル酸、無水テトラクロロフタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、(場合により単量体脂肪酸との混合物としての)オレイン酸のような二量体および三量体脂肪酸、テレフタル酸ジメチルエステル、またはテレフタル酸ビス−グリコールエステルが挙げられる。60℃未満で溶融する、2または3つの末端OH基を有する、ヒドロキシポリエステルが好ましい。
【0066】
可能性のあるポリカーボネートポリオールは、炭酸誘導体、例えば炭酸ジフェニル、炭酸ジメチルまたはホスゲンとジオールとの反応によって得られる。可能性のあるこのようなジオールは、例えばエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロパン−1,2−ジオールおよび−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオールおよび−1,3−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、オクタン−1,8−ジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンまたは1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ポリブチレングリコール、ビスフェノールAおよびテトラブロモビスフェノールA、または上記ジオールの混合物である。ジオール成分は、好ましくは、40重量%〜100重量%の、ヘキサンジオール、好ましくはヘキサン−1,6−ジオール、および/またはヘキサンジオール誘導体、好ましくは末端OH基に加えてエーテル基またはエステル基を含有するヘキサンジオール誘導体を含み、例えば、DE−A1770245に従って1モルのヘキサンジオールと少なくとも1モル、好ましくは1〜2モルのカプロラクトンとの反応により得られる生成物、またはヘキサンジオール自体のエーテル化によりジ−またはトリヘキシレングリコールを得ることにより得られる生成物である。このような誘導体の製造方法は、例えばDE−A 1 570 540から既知である。DE−A3717060に記載されているポリエーテル−ポリカーボネートジオールも、極めて容易に使用することもできる。
【0067】
ヒドロキシポリカーボネートは、実質上、直鎖であるべきである。しかしながら、多官能性成分、特に低分子量ポリオールの組み込みによって、ヒドロキシポリカーボネートは、場合により少し分岐されていてもよい。たとえば、トリメチロールプロパン、ヘキサン−1,2,6−トリオール、グリセロール、ブタン−1,2,4−トリオール、ペンタエリトリトール、キニトール、マンニトール、ソルビトール、メチルグリコシドおよび4,3,6−ジアンヒドロへキシトールはこの目的に適当である。
【0068】
加えて、特に、例えば水性塗料ラッカーにおいて、水性媒体からの使用が想定される場合、親水化作用を有する基を組み込むことができる。親水化作用を有する基は、事実上カチオン性またはアニオン性のいずれかであってよいイオン基、および/または非イオン親水性基である。カチオン性、アニオン性または非イオン性分散作用を有する化合物は、例えば、スルホニウム基、アンモニウム基、ホスホニウム基、カルボキシレート基、スルホネート基またはホスホネート基、或いは塩の形成によって上記基に変換することができる基(潜在的イオン基)、またはポリエーテル基を含有する化合物であり、存在するイソシアネート反応性基によって組み込むことができる。ヒドロキシル基およびアミン基は好ましく適当なイソシアネート反応性基である。
【0069】
イオン基または潜在的イオン基を含有する適当な化合物は、例えばモノ−およびジヒドロキシカルボン酸、モノ−およびジアミノカルボン酸、モノ−およびジヒドロキシスルホン酸、モノ−およびジアミノスルホン酸、並びにモノ−およびジヒドロキシホスホン酸、またはモノ−およびジアミノホスホン酸、並びにそれらの塩、例えばジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ヒドロキシピバリン酸、N−(2−アミノエチル)−β−アラニン、2−(2−アミノエチルアミノ)−エタンスルホン酸、エチレンジアミン−プロピル−またはブチルスルホン酸、1,2−または1,3−プロピレンジアミン−β−エチルスルホン酸、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、グリシン、アラニン、タウリン、リジン、3,5−ジアミノ安息香酸、IPDIとアクリル酸の付加物(EP−A 0 916 647、実施例1)並びにそのアルカリ金属塩および/またはアンモニウム塩;重亜硫酸ナトリウムのブト−2−エン−1,4−ジオールによる付加物、ポリエーテルスルホネート、例えばDE−A2446440(第5〜9頁、式I〜III)に記載されている、2−ブテンジオールおよびNaHSOのプロポキシル化付加物、並びに親水性ビルダー成分としてN−メチルジエタノールアミンのようなカチオン基に転化され得る単位である。好ましいイオン化合物または潜在的イオン化合物は、カルボキシル基またはカルボキシレート基および/またはスルホネート基および/またはアンモニウム基を有する化合物である。特に好ましいイオン化合物は、イオン基または潜在的イオン基として、カルボキシル基および/またはスルホネート基を含有する化合物であり、例えば、N−(2−アミノエチル)−β−アラニンの塩、2−(2−アミノエチルアミノ)エタンスルホン酸の塩、またはIPDIとアクリル酸の付加物(EP−A0916647、実施例1)の塩、並びにジメチロールプロピオン酸の塩である。
【0070】
適当な非イオン性親水化化合物は、例えば、少なくとも1つのヒドロキシル基またはアミノ基を含有するポリオキシアルキレンエーテルである。これらのポリエーテルは、エチレンオキシドから誘導された単位の30重量%〜100重量%の画分を含有する。可能性のある化合物は、1〜3の官能価を有する直鎖構造のポリエーテル、並びに一般式(I):
【化1】

〔式中、RおよびRは、互いに独立に、各々、酸素および/または窒素原子によって中断されていてもよい1〜18個の炭素原子を有する二価の脂肪族、脂環式または芳香族基を表し、および
は、アルコキシ末端ポリエチレンオキシド基を表す〕
で示される化合物である。
【0071】
非イオン性親水化作用を有する化合物は、例えば、適当なスターター分子をアルコキシル化することによりそれ自体既知の方法により得ることができるような、統計的平均として、一分子あたり5〜70個、好ましくは7〜55個のエチレンオキシド単位を含有する単官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールである(例えば、Ullmanns EncycloPaedie der technischen Chemie, 第4版、第19巻、Verlag Chemie, ワインハイム、第31〜38頁)。
【0072】
適当なスターター分子は、例えば飽和モノアルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、ペンタノール、異性体ペンタノール、ヘキサノール、オクタノールおよびノナノール、n−デカノール、n−ドデカノール、n−テトラデカノール、n−ヘキサデカノール、n−オクタデカノール、シクロヘキサノール、異性体メチルシクロヘキサノールまたはヒドロキシメチルシクロヘキサン、3−エチル−3−ヒドロキシ−メチルオキセタンまたはテトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテルのようなジエチレングリコールモノアルキルエーテルなど)、不飽和アルコール(例えばアリルアルコール、1,1−ジメチルアリルアルコールまたはオレイルアルコール)、芳香族アルコール(例えばフェノール、異性体クレゾールまたはメトキシフェノール)、芳香脂肪族アルコール(例えばベンジルアルコール、アニシルアルコールまたはシンナミルアルコール)、第二級モノアミン(例えばジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、N−メチル−およびN−エチルシクロヘキシルアミンまたはジシクロヘキシルアミン)、および複素環式第二級アミン(例えば、モルホリン、ピロリジン、ピペリジンまたは1H−ピラゾール)である。好ましいスターター分子は飽和モノアルコールである。スターター分子として、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを使用することが特に好ましい。
【0073】
アルコキシル化反応に適したアルキレンオキシドは、特に、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドであり、それらは、アルコキシル化反応において順不同でまたは混合物として使用することができる。
【0074】
ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールは、純粋なポリエチレンオキシドポリエーテル、またはアルキレンオキシド単位が少なくとも30モル%の範囲、好ましくは少なくとも40モル%の範囲のエチレンオキシド単位を含む混合ポリアルキレンオキシドポリエーテルのいずれかである。好ましい非イオン性化合物は、少なくとも40モル%のエチレンオキシド単位および60モル%以下のプロピレンオキシド単位を含有する単官能性混合ポリアルキレンオキシドポリエーテルである。
【0075】
特にイオン基を含有する親水性化剤を使用する場合、触媒E)および上記の全てのF)の作用への影響を調べなければならない。この理由のため、親水化剤として非イオン性化剤が好ましい。
【0076】
触媒成分E)の可能性のある化合物は、有機錫化合物、亜鉛化合物またはアミン触媒のような当業者にそれ自体知られているウレタン化触媒である。その例として挙げることができる有機錫化合物は、以下のものを挙げることができる:二酢酸ジブチル錫、ジラウリン酸ジブチル錫、ジブチル錫ビス−アセトアセトネートおよび例えばオクタン酸錫のようなカルボン酸錫。記載した錫触媒を、必要に応じて、アミノシランまたは1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンのようなアミン触媒と組み合わせて使用することもできる。亜鉛化合物として、例えば、亜鉛アセチルアセトネート、またはオクタン酸亜鉛を使用できる。
【0077】
好ましくは、ジラウリン酸ジブチル錫またはオクタン酸亜鉛を、E)におけるウレタン化触媒として使用する。
【0078】
本発明による方法において、触媒成分E)は、使用される場合は、本発明の方法の生成物の固形分に基づいて、0.001重量%〜5.0重量%、好ましくは0.001重量%〜0.1重量%の量で併用される。
【0079】
当業者にそれ自体既知のアロファネート化触媒、例えば亜鉛塩オクタン酸亜鉛、アセチルアセトン酸亜鉛および2−エチルカプロエート亜鉛、またはテトラアルキルアンモニウム亜鉛、例えばN,N,N−トリメチル−N−2−ヒドロキシプロピルアンモニウムヒドロキシドまたはN,N,N−トリメチル−N−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム2−エチルヘキサノエートまたはコリン2−エチルヘキサノエートなどを触媒F)として用いることができる。オクタン酸亜鉛の使用は好適である。
【0080】
本発明では、用語「オクタン酸亜鉛」は、工業用異性体生成物混合物を意味すると理解され、これは、種々の異性体オクトエートに加えてC〜C19脂肪酸の亜鉛塩の含有量を含有することもできる。用い得る好適な生成物の例は、Borchers GmbH(ランゲンフェルト、ドイツ国)製Borchi Kat 22、またはGoldschmidt GmbH(エッセン、ドイツ国)製Tegokat(登録商標)620である。
【0081】
アロファネート化触媒は、本発明の方法の生成物の固形分に基づいて、0.001重量%〜5.0重量%、好ましくは0.001重量%〜1.0重量%、より好ましくは0.05重量%〜0.5重量%の量で使用される。
【0082】
原則として、アロファネート化触媒F)は既に、E)によるウレタン化反応に用いることができ、二段階の手順を一段階の反応に単純化することができる。
【0083】
触媒F)は、一度に全て、または何回かに分けて、或いは連続して添加し得る。一度に全て添加することが好ましい。
【0084】
好適なオクタン酸亜鉛をアロファネート化触媒として用いる場合には、EP−A2031005の教示によるアロファネート化反応は極めて遅く、しばしば不完全なことがあるので、この場合には第三級アミンを成分G)として用いることが好適である。適当な第三級アミンは好ましくは、少なくとも9個の炭素原子を有し、芳香族基および脂肪族基は両方含有することができ、これらは互いに架橋していてもよい。アミンは好ましくは、更なる官能基を含有しない。適当な化合物の例は、N,N,N−ベンジルジメチルアミン、N,N,N−ジベンジルメチルアミン、N,N,N−シクロヘキシルジメチルアミン、N−メチルモルホリン、N,N,N−トリベンジルアミン、N,N,N−トリプロピルアミン、N,N,N−トリブチルアミン、N,N,N−トリペンチルアミンまたはN,N,N−トリヘキシルアミンである。本発明では、N,N,N−ベンジルジメチルアミンの使用が好ましい。
【0085】
第三級アミンは、併用する場合には、本発明の方法の生成物の固形分に基づいて、0.01重量%〜5.0重量%、好ましくは0.01重量%〜1.0重量%、より好ましくは0.05重量%〜0.5重量%の量で使用される。
【0086】
アロファネート化反応は好適には、生成物のNCO含有量が0.5重量%未満、特に好適には0.2重量%未満になるまで実施する。
【0087】
原則として、アロファネート化反応が終了した際、NCO基の残留含有物を例えばアルコールのようなNCO反応性化合物と反応させることができる。これにより、極めて特に低いNCO含有量を有する生成物が得られる。
【0088】
触媒E)および/またはF)を、当業者に既知の方法によって支持材料に適用することもでき、それらを不均一触媒として使用することもできる。
【0089】
本発明の方法では、溶媒または反応性希釈剤を必要に応じて、本発明による方法において所望の時点で用いることができる。しかしながら、このことはあまり好ましくない。
【0090】
ラッカー技術において使用されている溶媒、例えば、炭化水素、ケトンおよびエステル、例えば、トルエン、キシレン、イソオクタン、アセトン、ブタノン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミドおよびジメチルホルムアミドなどは適当であるが、好ましくは溶媒を添加しない。
【0091】
UV硬化中に同様に(共)重合し、従ってポリマーネットワークに組み込まれ、NCO基に対して不活性である化合物を、反応性希釈剤として併用することができる。このような反応性希釈剤は、例えば、P.K.T.Oldring(編)、Chemistry & Technology of UV & EB Formulations For Coatings,Inks & Paints、第2巻、1991年、SITA Technology、ロンドン、第237〜285頁に記載されている。これらは、アクリル酸またはメタクリル酸、好ましくはアクリル酸と、単官能性または多官能性アルコールとのエステルであってよい。適当なアルコールは、例えば、異性体のブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノールおよびデカノール並びに脂環式アルコール(例えば、イソボルノール、シクロヘキサノールおよびアルキル化シクロヘキサノール、ジシクロペンタノール)、芳香脂肪族アルコール(例えば、フェノキシエタノールおよびノニルフェニルエタノール)、並びにテトラヒドロフルフリルアルコールである。更に、これらのアルコールのアルコキシル化誘導体を使用することができる。適当な二価アルコールは、例えばエチレングリコール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、異性体のブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサン−1,6−ジオール、2−エチルヘキサンジオールおよびトリプロピレングリコールのようなアルコール、またはこれらのアルコールのアルコキシル化誘導体である。好ましい二価アルコールは、ヘキサン−1,6−ジオール、ジプロピレングリコールおよびトリプロピレングリコールである。適当な三価アルコールは、グリセロールまたはトリメチロールプロパンまたはそれらのアルコキシル化誘導体である。四価アルコールは、ペンタエリトリトールまたはそのアルコキシル化誘導体である。
【0092】
本発明によるバインダーは、尚早な重合に対して安定化されなければならない。従って、成分A)またはB)の構成成分として、反応前および/または反応中に、重合を禁止する安定剤を添加する。好ましくはフェノチアジンが使用される。他の可能性のある安定剤は、フェノール、例えばパラ−メトキシフェノール、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノンまたは2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等である。また、安定化のために、N−Oxy化合物、例えば2,2,6,6−テトラメチルピペリジンN−オキシド(TEMPO)またはその誘導体等も適当である。また、安定剤はバインダーに化学的に組み込まれてよく、上記種類の化合物が、特にそれらが更なる遊離脂肪族アルコール基または第一級または第二級アミン基を有し、従って、ウレタン基またはウレア基によって、成分A)の化合物に化学的に結合できる場合、適当である。この目的に特に適当なものは、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンN−オキシドである。
【0093】
他の安定剤、例えば、HALS(HALS=ヒンダードアミン光安定剤)の種類の化合物が、余り好ましくはないがA)またはB)に使用されるが、それらは、このような有効な安定化を可能とせず、むしろ、不飽和基の「クリーピング」遊離ラジカル重合を生じさせることができると知られているからである。
【0094】
安定剤は、それらが触媒E)およびF)の影響下で安定性であり、反応条件下、本発明による方法の成分と反応しないように選択されるべきである。これは、安定化特性の損失を導き得る。
【0095】
尚早な重合に対して反応混合物、特に不飽和基を安定化するために、酸素含有ガス、好ましくは空気を、反応混合物中におよび/または反応混合物上を流通させることができる。イソシアネートの存在下、望まれていない反応を避けるために、ガスが極めて低い可能な含水量を有することが好ましい。
【0096】
通常、安定剤を、本発明によるバインダーの製造中に添加し、終了時、長期間の安定性を達成するために、フェノール安定剤を用いて後安定化を再度行い、必要に応じて反応生成物を空気で飽和させる。
【0097】
安定剤成分は通常、本発明の方法の生成物の固形分に基づいて0.001重量%〜5.0重量%、好ましくは0.01重量%〜2.0重量%、より好ましくは0.05重量%〜1.0重量%の量で本発明による方法に使用される。
【0098】
本発明による方法は、高くとも100℃、好ましくは20〜100℃、特に好ましくは40〜100℃、特に60〜90℃の温度で行う。
【0099】
本発明による方法の一方または両方の段階を、例えば、スタティックミキサー、押出機またはニーダー中で連続的に行うか、或いは、例えば撹拌反応器中で不連続的に行うかは重要ではない。
【0100】
好ましくは、本発明による方法は、撹拌反応器中で行う。
【0101】
反応の過程は、反応容器に取り付けられた適当な測定装置を用いて、および/または取り出した試料の分析により、監視することができる。適当な方法は当業者に既知である。それらは例えば、粘度測定、NCO含有量の測定、屈折率の測定、OH含有量の測定、ガスクロマトグラフィー(GC)、核磁気共鳴分光法(NMR)、赤外線分光法(IR)および近赤外線分光法(NIR)である。存在する遊離NCO基(脂肪族NCO基について約ν=2272cm−1でのバンド)のIR監視、並びにA)、B)、必要に応じてC)および必要に応じてD)からの未反応化合物についてのGC分析が好ましい。
【0102】
本発明による方法によって得られる不飽和アロファネート、特に、好ましく使用されるHDIに基づく不飽和アロファネートは、好適には、100000mPas以下、特に好ましくは50000mPas以下、特に30000mPas未満の23℃での剪断粘度を有する。
【0103】
本発明による方法によって得られる不飽和アロファネート、特に、好ましく使用されるHDIに基づく不飽和アロファネートは、好適には、600〜5000g/モル、特に好ましくは750〜2500g/モルの数平均分子量Mを有する。
【0104】
本発明による方法によって得られる不飽和アロファネートは、好ましくは0.5重量%未満、特に好ましくは0.1重量%未満の遊離ジ−および/またはトリイソシアネートモノマーの含有量を有する。
【0105】
本発明による放射線硬化性アロファネートは、被覆物およびラッカー並びに接着剤、印刷インキ、注型用樹脂、歯科用配合物、サイズ剤、フォトレジスト、ステレオリソグラフィー系、複合材料用樹脂および封止用組成物の製造に使用することができる。しかしながら、接着または封止の場合には、紫外線による硬化中に、互いに接着または封止すべき基材の少なくとも1つが紫外線に対し透過性、すなわち通常透明でなければならない。電子線による放射中に、電子の十分な透過が確実とされるべきである。ラッカーおよび被覆剤における使用が好ましい。
【0106】
本発明はまた、
a)本発明による1以上の放射線硬化性アロファネート、
b)必要に応じて、化学線の作用下で重合によってエチレン性不飽和化合物と反応する基を含有しない、遊離イソシアネート基またはブロックトイソシアネート基を有するポリイソシアネート、
c)必要に応じて、化学線の作用下で重合によってエチレン性不飽和化合物と反応する基、および必要に応じて遊離イソシアネート基またはブロックトNCO基を有する、a)とは異なったさらなる化合物、
d)必要に応じて、イソシアネートと反応し、および活性水素を含有する1以上の化合物、
e)開始剤、
f)必要に応じて溶媒、および
g)必要に応じて、補助物質および/または添加剤
を含む被覆組成物を提供する。
【0107】
成分b)のポリイソシアネートは、当業者にそれ自体既知である。本発明では、場合によりイソシアヌレート基、アロファネート基、ビウレット基、ウレトジオン基および/またはイミノオキサジアジントリオン基で変性された、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンおよび/またはトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートに基づく化合物を好ましく使用する。
【0108】
この場合、NCO基はブロックされていてもよく、使用されるブロック剤は、成分A)の記載に既に示した化合物である。
【0109】
成分c)の化合物として、好ましくはヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンおよび/またはトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートに基づき、場合によりイソシアヌレート基、アロファネート基、ビウレット基、ウレトジオン基および/またはイミノオキサジアジントリオン基で変性されていてもよく、活性水素を含有するイソシアネート基に対して反応性である官能基を含有しない、ウレタンアクリレートが挙げられる。
【0110】
NCO含有ウレタンアクリレートは、Bayer AG(ドイツ国レーフエルクーゼン)から、Desmolux(登録商標)D 100、Desmolux(登録商標)VP LS 2396またはDesmolux(登録商標)XP 2510として市販されている。
【0111】
放射線硬化性被覆物の分野で既知の、既に記載の反応性希釈剤を、これらがNCO基と反応する基を含有しない場合には、c)の構成物質としてさらに使用してもよい。
【0112】
成分d)の化合物は、飽和または不飽和であってよい。NCO基と反応する化学官能基は、活性化水素原子を含有する官能基、例えばヒドロキシル、アミンまたはチオール等である。
【0113】
飽和ポリヒドロキシ化合物が好ましく、その例は、被覆剤、接着剤、印刷インキまたは封止用組成物の技術からそれ自体既知であり、化学線の作用下で重合によってエチレン性不飽和化合物と反応する基を含有しない、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(メタ)アクリレートポリオールおよび/またはポリウレタンポリオールである。
【0114】
不飽和ヒドロキシ官能性化合物は、例えば、放射線硬化性被覆物の分野で既知であり、30〜300mgKOH/gのOH価を有する、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ウレタンアクリレートおよびアクリル化ポリアクリレートである。
【0115】
放射線硬化性被覆剤の分野で既知の既に記載の反応性希釈剤を、これらがNCO基と反応する基を含有しない場合には、d)の構成成分として使用することができる。
【0116】
放射線および/または熱的によって活性化することができる開始剤を、ラジカル重合のための成分e)の開始剤として使用することができる。本発明では、紫外線または可視光によって活性化される光開始剤が好ましい。光開始剤は、それ自体既知の市販の化合物であり、単分子(I型)開始剤と二分子(II型)開始剤とに区別されている。適当な(I型)系は、芳香族ケトン化合物、例えば第三級アミンと組み合わせたベンゾフェノン、アルキルベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、アントロンおよびハロゲン化ベンゾフェノンまたは上記タイプの混合物である。(II型)開始剤、例えばベンゾインおよびその誘導体、ベンジルケタール、アシルホスフィンオキシド、例えば2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、フェニルグリオキシル酸エステル、カンファーキノン、α−アミノアルキルフェノン、α,α−ジアルコキシアセトフェノンおよびα−ヒドロキシアルキルフェノンがさらに適当である。
【0117】
開始剤は、ラッカーバインダーの重量を基準として0.1重量%〜10重量%、好ましくは0.1重量%〜5重量%の量で使用され、個々の物質として、または度々得られる有利な相乗効果のために互いに組合せて、使用することができる。
【0118】
電子線を紫外線の代わりに使用する場合、光開始剤は必要とされない。当業者に知られているように、電子線は、熱放射によって発生し、電位差によって加速される。そして、高エネルギー電子は、チタンフィルムを通過し、硬化されるバインダー上に誘導される。電子線硬化の一般原理は、“Chemistry & Technology of UV & EB Formulations for Coatings, Inks & Paints”、第1巻、P K T Oldring(編)、SITA Technology、ロンドン、イングランド、第101〜157頁、1991年に詳細に記載されている。
【0119】
また、活性化二重結合の熱硬化の場合、これは、フリーラジカルを形成する熱解離剤を添加することによって行うことができる。当業者に既知であるように、適当な剤は、例えばペルオキシ化合物、例えばジアルコキシジカーボネート(例えばビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート)、ジアルキルペルオキシド(例えばジラウリルペルオキシド)、芳香族または脂肪族酸の過エステル(例えばtert−ブチルペルベンゾエートまたはtert−アミルペルオキシ2−エチルヘキサノエート)、無機ペルオキシド(例えばペルオキソ二硫酸アンモニウムまたはペルオキソ二硫酸カリウム)、または有機ペルオキシド(例えば2,2−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ブタン、過酸化ジクミルまたはtert−ブチルヒドロペルオキシド)、またはアゾ化合物(例えば2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、1−[(シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミドおよび2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド)である。また、高置換1,2−ジフェニルエタン(ベンズピナコール)、例えば3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、1,1,2,2−テトラフェニルエタン−1,2−ジオールまたはそれらのシリル化誘導体も可能である。
【0120】
紫外線によって活性化することができる開始剤および熱的に活性化可能な開始剤の組合せを使用することもできる。
【0121】
成分f)としては、溶媒、例えば炭化水素、ケトンおよびエステル、例えばトルエン、キシレン、イソオクタン、アセトン、ブタノン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミドおよびジメチルホルムアミドが挙げられる。
【0122】
更に、成分g)は、硬化ラッカー層の気候に対する安定性を高めるために、紫外線吸収剤および/またはHALS安定剤を含むこともできる。その組合せが好ましい。紫外線吸収剤は、390nm以下の吸収範囲を有すべきであり、例えばトリフェニルトリアジン型(例えばTinuvin(登録商標)400(Ciba Spezialitaetenchemie GmbH、ランペルトハイム、ドイツ国))、ベンゾトリアゾール(例えばTinuvin(登録商標)622(Ciba Spezialitaetenchemie GmbH、ランペルトハイム、ドイツ国))またはシュウ酸ジアニリド(例えばSanduvor(登録商標)3206(Clariant、ムテンツ、スイス国))が挙げられ、固体樹脂に基づいて0.5重量%〜3.5重量%で添加される。適当なHALS安定剤は、市販されている(Tinuvin(登録商標)292またはTinuvin(登録商標)123(Ciba Spezialitaetenchemie GmbH(、ランペルトハイム、ドイツ国))またはHostavin(登録商標)3258(Clariant、ムテンツ、スイス国))。好ましい量は、固体樹脂に基づいて0.5〜2.5重量%である。
【0123】
顔料、染料、充填材、並びに流量および通風剤を、同様にg)に含有させることができる。
【0124】
必要に応じて、g)はNCO/OH反応を促進するためのポリウレタン化学から既知の触媒を含有することができる。これらは、例えば、錫塩または亜鉛塩或いは有機錫化合物、または錫石鹸および/または亜鉛石鹸、例えばオクタン酸錫、ジラウリン酸ジブチル錫または酸化ジブチル錫、または第三級アミン、例えばジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)である。
【0125】
被覆される材料への本発明による被覆組成物の適用は、被覆技術において通常および既知の方法、例えば噴霧、ナイフ塗布、ロール塗り、流し込み、浸漬、スピン塗布、はけ塗りまたは吹き付けなどを用いて、或いは印刷技術、例えばスクリーン、グラビア、フレキソ印刷またはオフセット印刷などによって、および転写法によって行う。
【0126】
適当な基材は、例えば、木材、金属、特にいわゆるワイヤー、コイル、缶または容器のラッカーの用途に使用される金属、およびプラスチック、フィルムの形態でのプラスチック、特にABS、AMMA、ASA、CA、CAB、EP、UF、CF、MF、MPF、PF、PAN、PA、PE、HDPE、LDPE、LLDPE、UHMWPE、PET、PMMA、PP、PS、SB、PU、PVC、RF、SAN、PBT、PPE、POM、PU−RIM、SMC、BMC、PP−EPDMおよびUP(DIN 7728T1に従った略語)、紙、皮革、繊維製品、フェルト、ガラス、木材、木質材料、コルク、無機結合基材、例えば木質および繊維セメントボード、電子組立部品または無機基材である。また、種々の上記材料を含む基材、または既に被覆された基材、例えば車両、航空機または船舶およびそれらの部品など、特に車体または付属品をラッカー塗りすることもできる。また、例えばフィルムを製造するために、被覆組成物を基材に一時的に適用し、次いで、それらを部分的または完全に硬化させ、場合によりそれらを再び引き離すこともできる。
【0127】
硬化のため、例えば、存在する溶媒を、空気中に蒸発させることによって完全にまたは部分的に除去することができる。
【0128】
その後または同時に、必要に応じて熱的法または光化学硬化法を、連続してまたは同時に行うことができる。
【0129】
必要に応じて、熱硬化性は室温で実施することができるが、高温で、好適には40〜160℃で、より好適には60〜130℃で、特に好適には80〜110℃で実施することができる。
【0130】
光開始剤をe)に使用する場合、放射線硬化は、高エネルギー放射線、即ち紫外線または日光、例えば波長200〜700nmの光の作用によって、或いは高エネルギー電子(電子線、150〜300keV)の照射によって好適に実施する。例えば、高圧または中圧水銀ランプは光または紫外線のための放射線源として働く。水銀蒸気は、ガリウムまたは鉄のような他の元素でのドープにより変性することができる。UV領域で放出する、レーザー、パルスランプ(UV閃光ランプの名称で知られている)、ハロゲンランプ、エキシマーランプおよびLEDも同様に可能である。ランプは、UVスペクトルの一部の放出が妨げられないように、それらの設計の固有の部分として、または特別なフィルターおよび/または反射体の使用によって備え付けることができる。例えば職業衛生のため、例えば、UV−C、またはUV−CおよびUV−Bに割り当てられた放射線は、フィルターで除去することができる。ランプを固定位置に設置して、放射される物品を機械的装置によって放射線源を通過して移動させるようにしてもよく、またはランプを可動性にして、放射される物品を硬化中にその位置を変化させなくてもよい。UV硬化では、架橋に通常十分である放射線量は、80〜5000mJ/cmの範囲内である。
【0131】
照射は、酸素を除去、例えば、不活性ガス雰囲気下または低酸素雰囲気下で実施することもできる。適当な不活性ガスは、好ましくは、窒素、二酸化炭素、希ガスまたは燃焼ガスである。更に、照射は、放射線のために透過な媒体で被覆物を覆うことによって実施してもよい。これらの例は、例えばプラスチックのフィルム、ガラスまたは液体、例えば水などである。
【0132】
必要に応じて使用される任意の開始剤のタイプおよび濃度を、放射線量および硬化条件に応じて当業者に既知の方法で変化させる。
【0133】
特に好ましくは、固定設置状態の高圧水銀ランプを硬化のために用いる。その場合、光開始剤を、被覆物の固体を基準として0.1〜10重量%、特に好ましくは0.2〜3.0重量%の濃度で使用する。これらの被覆物を硬化するため、200〜600nmの波長範囲で測定された、20〜3000mJ/cm、好適には80〜1500mJ/cmの量を好適に使用する。
【0134】
熱的に活性化可能な開始剤をe)に使用する場合、温度を上昇させることによって実施される。この場合、熱エネルギーは、放射線、熱伝導および/または熱対流によって、被覆剤中に導入することができ、被覆剤技術において一般的な赤外線ランプ、近赤外線ランプおよび/またはオーブンを用いる。
【0135】
適用されたフィルム厚(硬化前)は通常、0.5および5000μmの間、好ましくは5および1000μmの間、特に好適には15および200μmの間である。溶媒を使用する場合、溶媒は、適用後、硬化前に通常の方法によって除去される。
【0136】
上記の全ての文献を、全ての有用な目的のために、その全体を引用することによって組み込む。
【0137】
本発明を具体化するある特定の構造を示し、および記載したが、根本的な本発明の概念の精神および範囲から逸脱することなく種々の修正および部分の再配置をなし得ることおよびこれらが本明細書で示し、および記載した特定の構造に限定されないことは当業者には明らかであろう。
【実施例】
【0138】
全てのパーセントデータは、他に記載のない限り重量パーセントに関する。
NCO含有量(%)の決定は、DIN EN ISO 11909に基づいて、ブチルアミンとの反応後、0.1モル/Lの塩酸による逆滴定によって行った。
粘度測定は、ISO/DIS 3219:1990に従って、47.94/秒の剪断速度で、プレート−プレート回転粘度計(Haake社(ドイツ国)製Roto Visko 1)を用いて行った。
実験を行った時点で最も一般的であった23℃の周囲温度を、RTと称する。
【0139】
実施例1:
本発明によるアロファネート含有バインダー(NCO/OH=1.33:1、25モル%の2−ヒドロキシエチルアクリレート、25モル%の2−ヒドロキシプロピルアクリレート、16.7モル%のペンタエリトリトールトリアクリレート、33.3モル%のカプロラクトン変性2−ヒドロキシエチルアクリレート)
還流冷却器、加熱用油浴、機械式撹拌機、空気通過用配管(1L/時)、内部温度計および滴下漏斗を備えた1000ml四口丸底フラスコに、157.58gのヘキサメチレンジイソシアネート(Desmodur(登録商標)H、Bayer MaterialScience、レーフェルクーゼン)および50mgのフェノチアジンを初期導入し、70℃まで加熱した。300gのオクタン酸亜鉛(Borchers GmbH製(ランゲンフェルト、ドイツ国)Borchi Kat 22)を添加し、まず161.15gのTone M100(登録商標)(Dow、シュバルバッハ、ドイツ国)、次いで40.80gのヒドロキシエチルアクリレート、さらに91.25gのペンタエリトリトールトリアクリレート(2885(PETIA)、AgiSyn(登録商標)、台北、台湾国)および最後に45.67gのヒドロキシプロピルアクリレートを温度が80℃を超えないように滴加した。6.90gのN,N−ジメチルベンジルアミンの添加後、NCO含有量が0.2%未満に低下するまで、該混合物を80℃で(約18時間)撹拌した。最後に0.5gの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを安定剤として混合した。0%の残留NCO含有量および16500mPas(23℃)の粘度を有する黄色がかった樹脂を得た。
【0140】
実施例2:
本発明によるアロファネート含有バインダー(NCO/OH=1.33:1、33モル%の2−ヒドロキシエチルアクリレート、33モル%の2−ヒドロキシプロピルアクリレート、17モル%のペンタエリトリトールトリアクリレート、17モル%のカプロラクトン変性2−ヒドロキシエチルアクリレート)
還流冷却器、加熱用油浴、機械式撹拌機、空気通過用配管(3L/時)、内部温度計および滴下漏斗を備えた3000ml四口丸底フラスコに、708.96gのヘキサメチレンジイソシアネート(Desmodur(登録商標)H、Bayer MaterialScience、レーフェルクーゼン)および0.2gのフェノチアジンを初期導入し、70℃まで加熱した。12.01gのオクタン酸亜鉛(Borchers GmbH製(ランゲンフェルト、ドイツ国)Borchi Kat 22)を添加し、まず362.92gのTone M100(登録商標)(Dow、シュバルバッハ、ドイツ国)、次いで244.97gのヒドロキシエチルアクリレート、さらに411.01gのペンタエリトリトールトリアクリレート(2885(PETIA)、AgiSyn(登録商標)、台北、台湾国)および最後に274.51gのヒドロキシプロピルアクリレートを温度が80℃を超えないように滴加した。14.1gのN,N−ジメチルベンジルアミンの添加後、NCO含有量が0.2%未満に低下するまで、該混合物を80℃で(約19時間)撹拌した。最後に2.0gの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを安定剤として混合した。0%の残留NCO含有量および25000mPas(23℃)の粘度を有するほぼ無色の樹脂を得た。
【0141】
比較例1:
本発明に従わないアロファネート含有バインダー、ヒドロキシアルキルアクリレートのみ(NCO/OH=1.33:1、20モル%の2−ヒドロキシエチルアクリレート、80モル%の2−ヒドロキシプロピルアクリレート)
還流冷却器、加熱用油浴、機械式撹拌機、空気通過用配管(2L/時)、内部温度計および滴下漏斗を備えた2000mlスルホン化ビーカーに、470.4gのヘキサメチレンジイソシアネート(Desmodur(登録商標)H、Bayer MaterialScience、レーフェルクーゼン)および100mgのフェノチアジンを初期導入し、70℃まで加熱した。50mgのジブチル錫ジラウレート(Desmorapid Z、Bayer MaterialScience、レーフェルクーゼン)を添加し、まず437.14gのヒドロキシプロピルアクリレート、次いで97.52gのヒドロキシエチルアクリレートを温度が80℃を超えないように滴加した。次いで、理論NCO値が5.83%に達するまで撹拌した。次いで、3.98gのN,N−ジメチルベンジルアミンを添加し、均一になるまで該混合物を約5分間撹拌した。次いで3.02gのオクタン酸亜鉛(Borchers GmbH(ランゲンフェルト、ドイツ国)製Borchi(登録商標)Kat 22)を混合し、NCO含有量が0.2%未満に低下するまで、該混合物を80℃で(約20時間)撹拌した。0.11%の残留NCO含有量および342000mPas(23℃)の粘度を有する無色樹脂を得た。
【0142】
比較例2:
本発明に従わないアロファネート含有バインダー、カプロラクトン変性ヒドロキシプロピルアクリレートでのヒドロキシアルキルアクリレートのみ、モノヒドロキシ−オリゴアクリレートを用いない(NCO/OH=1.33:1、33モル%の2−ヒドロキシプロピルアクリレート、67モル%のカプロラクトン変性2−ヒドロキシエチルアクリレート)
還流冷却器、加熱用油浴、機械式撹拌機、空気通過用配管(3L/時)、内部温度計および滴下漏斗を備えた3000ml四口丸底フラスコに、582.29gのヘキサメチレンジイソシアネート(Desmodur(登録商標)H、Bayer MaterialScience、レーフェルクーゼン)および0.2gのフェノチアジンを初期導入し、70℃まで加熱した。6.0gのオクタン酸亜鉛(Borchers GmbH製(ランゲンフェルト、ドイツ国)Borchi Kat 22)を添加し、まず1192.30gのTone M100(登録商標)(Dow、シュバルバッハ、ドイツ国)、次いで225.29gのヒドロキシプロピルアクリレートを温度が80℃を超えないように滴加した。4.91gのN,N−ジメチルベンジルアミンの添加後、NCO含有量が0.2%未満に低下するまで、該混合物を80℃で(約24時間)撹拌した。最後に2.0gの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを安定剤として混合した。0%の残留NCO含有量および7220mPas(23℃)の粘度を有する無色樹脂を得た。
【0143】
比較例3:
カプロラクトン変性ヒドロキシプロピルアクリレートによらない、モノヒドロキシ−オリゴアクリレートによるヒドロキシアルキルアクリレートのみの本発明に従わないアロファネート含有バインダー(NCO/OH=1.33:1、33モル%の2−ヒドロキシエチルアクリレート、50モル%の2−ヒドロキシプロピルアクリレート、17モル%のPETIA)
還流冷却器、加熱用油浴、機械式撹拌機、空気通過用配管(1L/時)、内部温度計および滴下漏斗を備えた1000ml四口丸底フラスコに、198.26gのヘキサメチレンジイソシアネート(Desmodur(登録商標)H、Bayer MaterialScience、レーフェルクーゼン)および50mgのフェノチアジンを初期導入し、70℃まで加熱した。30mgのジブチル錫ジラウレート(Desmorapid Z、Bayer MaterialScience、レーフェルクーゼン)を添加し、まず68.44gのヒドロキシエチルアクリレート、次いで128.09gのペンタエリトリトールトリアクリレート(2885(PETIA)、AgiSyn(登録商標)、台北、台湾国)および最後に114.93gのヒドロキシプロピルアクリレートを温度が80℃を超えないように滴加した。3.05gのN,N−ジメチルベンジルアミンおよび3.06gのオクタン酸亜鉛(Borchers GmbH(ランゲンフェルト、ドイツ国)製Borchi(登録商標)Kat 22)の添加後、NCO含有量が0.2%未満に低下するまで、該混合物を80℃で(約18時間)撹拌した。最後に0.5gの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを安定剤として混合した。0%の残留NCO含有量および45200mPas(23℃)の粘度を有する黄色がかった樹脂を得た。
【0144】
実施例5:
ラッカー処方およびラッカーの使用試験
いずれの場合にも、全ての実施例および比較例からの生成物の一部を3.0%の光開始剤Darocur(登録商標)1173(光開始剤、Ciba Spezialitaetenchemie GmbHの市販生成物、ランペルトハイム、ドイツ国)および0.3%のByk(登録商標)306(Byk Chemie GmbH、ウェーゼル)と混合した。
反応性(1)は、着色ボール紙に250g/mのラッカーを塗布することによって決定した。該ボール紙を、種々の量のUV放射線(中圧水銀ランプ、SUPERFICI/ELMAG, It、型:TU−RE 3000 PLUS、700mJ/cm)で照射し、段ボールの色が酢酸ブチル(接触重量1kg)で100回拭くことによって拭き取ることができなくなるまでの量を決定した(ラッカーを通しての摩擦)。本発明では、少ない量がラッカーの高い反応性を示す。
【0145】
耐引掻性(2)およびペンジュラム硬度(3)を試験するために、120μmのギャップでボーンナイフを用いて、ラッカーを薄膜としてMDFボードに適用した。UV照射(中圧水銀ランプ、SUPERFICI/ELMAG, It、型:TU−RE 3000 PLUS、700mJ/cm)後、透明硬質被覆物を得た。ペンジュラム硬度を、ペンジュラム装置(型5854、Byk Gardner)を用いて決定した。次いで、フィルムの耐引掻性を光沢測定装置(MicroTriGloss、型4520、Byk Gardner)を用いてまず60°で光沢を決定することによって決定した。次いで、Scotch Brite(登録商標)grey(型S、グレードSFN)を固定した800gの重さのハンマー(接触面積25×25mm)をラッカー上で50回前後に動かした後、光沢測定を再度行った。耐引掻性値は、元の光沢のどれぐらいの割合が引掻後に未だ存在するかを示す。本発明では、70%を越える値は、純粋なバインダーについて非常に良好であると見なすことができる。
【0146】
使用試験の結果を以下の表に集約する:
【0147】
【表1】

【0148】
概要:
本発明によるバインダーに基づくラッカーだけが粘度、反応性、耐引掻性およびペンジュラム硬度に対する特性の最適プロフィールを有することを明確に見ることができる。カプロラクトン変性ヒドロキシアルキルアクリレートおよびモノヒドロキシオリゴアクリレートを含まない場合(比較例1)には、高粘度および高い機械的応力下での不十分な耐引掻性を有し、本発明によるバインダーよりも著しく低い反応性であるラッカー塗りが生じる。カプロラクトン変性ヒドロキシアルキルアクリレートによる変性(比較例2)は、著しく低い粘度を示すが、その代わりペンジュラム硬度は、ゴム状被覆物が得られるだけであるので完全に崩壊している(多くの被覆物用途について、80秒を越えるペンジュラム硬度を有するラッカーだけを用いることができる)。他方、単にモノヒドロキシオリゴアクリレートによる変性(比較例3)は著しく高い粘度を生じさせる。成分の組み合わせが全ての特性について正の効果のみを有し、しかも耐引掻性に対して高い値を生じさせることは極めて驚くべきこととして評価されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.5重量%未満の残留モノマー含有量および1重量%未満のNCO含有量を有する放射線硬化性アロファネートの製造方法であって、
(1)A)NCO基を含む化合物、
B)I)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、
II)カプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、および
III)少なくとも2つの(メタ)アクリレート基およびOH基を含む、1000g/モル未満の数平均分子量を有する化合物
を含む混合物、
C)必要に応じて、NCO反応性基を含む、B)とは異なった放射線硬化性化合物、および
D)必要に応じて、NCO反応性基を含み、放射線硬化性基を含まない化合物
から、
E)必要に応じて触媒の存在下で
NCO基および放射線硬化性基を含むウレタンを調製する工程、および
(2)引き続いてまたは同時に、およびNCO基を含む化合物をさらに添加することなく、前記NCO基および放射線硬化性基を含むウレタンを、
F)アロファネート化触媒、および
G)必要に応じて第三級アミン
の存在下で反応させて、最終生成物を形成する工程
を含み、A)の化合物のNCO基と、B)、必要に応じてC)および必要に応じてD)の化合物のOH基との比が1.45:1.0〜1.1:1.0の範囲である、前記方法。
【請求項2】
成分B)は、30〜60モル%のI)、15〜35モル%のII)および15〜35モル%のIII)の混合物であり、但し、いずれの場合にもI)、II)およびIII)の合計は100モル%であり、および用語モルは工業グレード混合物においてOH基に関する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
I)は、20〜80モル%の2−ヒドロキシエチルアクリレートおよび80〜20モル%の2−ヒドロキシプロピルアクリレートを含み、但し、いずれの場合にも前記2−ヒドロキシエチルアクリレートおよび前記2−ヒドロキシプロピルアクリレートの合計は100モル%である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
II)は、ε−カプロラクトンで変性された2−ヒドロキシエチルアクリレートを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
III)は、ペンタエリトリトールトリアクリレートを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
A)は、ヘキサメチレン−ジイソシアネート、イソホロン−ジイソシアネートおよび/または4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
A)の化合物のNCO基と、B)、必要に応じてC)および必要に応じてD)の化合物のOH基との比は、1.35:1.0〜1.3:1.0の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
(2)を、前記最終生成物が0.2重量%未満のNCO含有量を有するまで実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法によって調製される放射線硬化性アロファネート。
【請求項10】
請求項9に記載の放射線硬化性アロファネートを含んでなる、被覆物、ラッカー、接着剤、印刷インキ、注型用樹脂、歯科用組成物、サイズ剤、フォトレジスト、ステレオリソグラフィー系、複合材料用樹脂または封止用組成物。
【請求項11】
a)請求項9に記載の放射線硬化性アロファネート、
b)必要に応じて、化学線の作用下で重合によってエチレン性不飽和化合物と反応する基を有さない、遊離イソシアネート基またはブロックトイソシアネート基を有するポリイソシアネート、
c)必要に応じて、化学線の作用下で重合によってエチレン性不飽和化合物と反応する基および必要に応じて遊離NCO基またはブロックトNCO基を含む、a)とは異なったさらなる化合物、
d)必要に応じて、イソシアネートと反応し、および活性水素を含有する化合物、
e)開始剤、
f)必要に応じて溶媒、および
g)必要に応じて、1以上の補助物質および/または添加剤
を含んでなる、被覆組成物。
【請求項12】
請求項9に記載の放射線硬化性アロファネートから調製された被覆物で被覆された基材。

【公開番号】特開2010−185074(P2010−185074A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−27562(P2010−27562)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】