説明

化粧シート及び化粧シートの製造方法

【課題】良好な耐汚染性を有し、かつ表面に製品ラベルや装飾部材を容易に貼付することのできる化粧シート及び該化粧シートの製造方法を提供すること。
【解決手段】基材2上に少なくとも表面保護層4を有する化粧シートであって、該表面保護層が硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものであり、かつ、該表面保護層の表面に表面張力が30dyne/cm以上である部分(a)が存在することを特徴とする化粧シート及び表面保護層の表面の少なくとも一部をコロナ放電処理又はプラズマ処理する化粧シートの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に少なくとも表面保護層を有する化粧シートに関し、詳しくは製品ラベルや装飾部材を容易に貼付することができる化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
家具や台所製品のキャビネットなどの表面化粧板としては、一般に木質系材料、無機系材料、合成樹脂系材料、鋼板などの金属系材料などに、例えば木目調柄などを印刷した化粧シートを接着剤で貼り合わせた構造のものが用いられている。
このような表面化粧板に使用される化粧シートには、ラミネート加工、ラッピング加工、Vカット加工などの二次加工のための適度な柔軟性、切削性、耐破断性などの加工適性、使用状態における耐候性、耐光性、耐熱性、耐水性、耐溶剤性、表面硬度、耐摩耗性、耐擦傷性など、種々の特性が要求される。
こうした要求を満たすために、上記加工適性を十分に満足する基材を用い、該基材の表面に表面保護層を施すことが行われており、表面保護層としては電離放射線硬化性樹脂組成物が好ましく用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このように表面保護層を有する化粧シートは、上記のような表面物性が得られる一方で、化粧シートの表面に製品ラベルや装飾部材を貼付することが困難な場合があり、特に表面の耐汚染性を改良すべく離型剤等を添加した場合には、この傾向が顕著である。そこで、優れた耐汚染性を有し、かつ、製品ラベルや装飾部材を容易に貼付し得る化粧シートが求められていた。
【0004】
【特許文献1】特開2001−199028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような状況下で、良好な耐汚染性を有し、かつ表面に製品ラベルを貼付する部分や装飾部材を形成する部分の表面張力を高め、これら貼着物を容易に貼付することのできる化粧シート及び該化粧シートの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、基材上に少なくとも表面保護層を有する化粧シートであって、該表面保護層が硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものであり、該表面保護層の表面の製品ラベルや装飾品部材を貼付する部分の表面張力を30dyne/cm以上になるように表面処理することによって、前記課題を解決し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)基材上に少なくとも表面保護層を有する化粧シートであって、該表面保護層が硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものであり、かつ、該表面保護層の表面に表面張力が30dyne/cm以上である部分(a)が存在することを特徴とする化粧シート、
(2)前記部分(a)以外の部分の表面張力が22.6dyne/cm未満である上記(1)に記載の化粧シート、
(3)前記部分(a)がコロナ放電処理又はプラズマ処理されたものである上記(1)又は(2)に記載の化粧シート、
(4)プラズマ処理が大気圧プラズマ処理である上記(3)に記載の化粧シート、
(5)表面保護層を構成する硬化性樹脂組成物中に表面張力降下剤を含有する上記(1)〜(4)のいずれかに記載の化粧シート、
(6)前記表面張力降下剤がシリコーン化合物又はフッ素化合物である上記(5)に記載の化粧シート、
(7)硬化性樹脂組成物が電離放射線硬化性樹脂組成物である上記(1)〜(6)のいずれかに記載の化粧シート、
(8)電離放射線硬化性樹脂組成物が電子線硬化性樹脂組成物である上記(7)に記載の化粧シート、
(9)基材がポリエステル樹脂フィルムである上記(1)〜(8)のいずれかに記載の化粧シート、
(10)電離放射線硬化性樹脂組成物が(メタ)アクリレート系モノマーを含有してなる上記(7)〜(9)のいずれかに記載の化粧シート、
(11)(メタ)アクリレート系モノマーが多官能性(メタ)アクリレート系モノマーである上記(10)に記載の化粧シート、
(12)電離放射線硬化性樹脂組成物がさらに重合性オリゴマーを含有してなる上記(10)又は(11)に記載の化粧シート、
(13)上記(1)〜(12)のいずれかに記載の化粧シートを基板に貼付した化粧板、及び
(14)表面保護層の表面の少なくとも一部をコロナ放電処理又はプラズマ処理する上記(1)〜(12)のいずれかに記載の化粧シートの製造方法
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、表面の耐汚染性が高く、かつ、製品ラベルや装飾部材などを容易に表面に貼付することのできる化粧シートを提供することができる。また、本発明によれば、化粧シートにおける表面保護層の表面の任意の部分に、任意の大きさ、任意の形状に表面張力の高い部分を設けることができ、製品ラベルや装飾部材などを容易に貼付することができる方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の化粧シートは、基材上に少なくとも表面保護層を有する化粧シートであって、該表面保護層が硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものである。
本発明の化粧シートの典型的な構造を、図1を用いて説明する。図1は本発明の化粧シート1の断面を示す模式図である。図1に示す例では、基材2上に全面を被覆する一様均一なプライマー層5、絵柄層3、硬化性樹脂組成物が架橋硬化した表面保護層4がこの順に積層されたものである。
【0010】
本発明で用いられる基材2としては、通常化粧シートの基材として用いられるものであれば、特に限定されず、各種の紙類、プラスチックフィルム、プラスチックシート、金属箔、金属シート、金属板、木材などの木質系の板、窯業系素材等を用途に応じて適宜選択することができる。これらの材料はそれぞれ単独で使用してもよいが、紙同士の複合体や紙とプラスチックフィルムの複合体等、任意の組み合わせによる積層体であってもよい。
これらの基材、特にプラスチックフィルムやプラスチックシートを基材として用いる場合には、その上に設けられる層との密着性を向上させるために、所望により、片面または両面に酸化法や凹凸化法などの物理的または化学的表面処理を施すことができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
【0011】
基材として用いられる各種の紙類としては、薄葉紙、クラフト紙、チタン紙などが使用できる。これらの紙基材は、紙基材の繊維間ないしは他層と紙基材との層間強度を強化したり、ケバ立ち防止のため、これら紙基材に、更に、アクリル樹脂、スチレンブタジエンゴム、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂を添加(抄造後樹脂含浸、又は抄造時に内填)させたものでもよい。例えば、紙間強化紙、樹脂含浸紙等である。
これらの他、リンター紙、板紙、石膏ボード用原紙、又は紙の表面に塩化ビニル樹脂層を設けたビニル壁紙原反等、建材分野で使われることの多い各種紙が挙げられる。さらには、事務分野や通常の印刷、包装などに用いられるコート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙、パラフィン紙、又は和紙等を用いることもできる。また、これらの紙とは区別されるが、紙に似た外観と性状を持つ各種繊維の織布や不織布も基材として使用することができる。各種繊維としてはガラス繊維、石綿繊維、チタン酸カリウム繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、若しくは炭素繊維等の無機質繊維、又はポリエステル繊維、アクリル繊維、若しくはビニロン繊維などの合成樹脂繊維が挙げられる。
【0012】
基材として用いられるプラスチックフィルム又はプラスチックシートとしては、各種の合成樹脂からなるものが挙げられる。合成樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、ナイロン6又はナイロン66等で代表されるポリアミド樹脂、三酢酸セルロース樹脂、セロファン、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、又はポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0013】
金属箔、金属シート、又は金属板としては、例えばアルミニウム、鉄、ステンレス鋼、又は銅等からなるものを用いることができ、またこれらの金属をめっき等によって施したものを使用することもできる。各種の木質系の板としては、木材の単板、合板、集成材、パーティクルボード、又はMDF(中密度繊維板)等の木質繊維板が挙げられる。窯業系素材としては、石膏板、珪酸カルシウム板、木片セメント板などの窯業系建材、陶磁器、ガラス、琺瑯、焼成タイル等が例示される。これらの他、繊維強化プラスチック(FRP)の板、ペーパーハニカムの両面に鉄板を貼ったもの、2枚のアルミニウム板でポリエチレン樹脂を挟んだもの等、各種の素材の複合体も基材として使用できる。
【0014】
上述の基材として用いられる各種材料のうち、ポリエステル樹脂フィルムが好ましい。
ここで、ポリエステル樹脂フィルムは、いわゆる押出口金から溶融押し出されたポリエステル樹脂フィルムであって、通常、無延伸又は縦方向および横方向の二軸方向に配向させたフィルムである。このポリエステル樹脂フィルムには、ジカルボン酸とグリコールとから縮重合によって得られたポリマーが用いられる。ここで、ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバチン酸などが挙げられ、またグリコールとしては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。具体的には例えばポリエチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレン−p−オキシベンゾエート、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートなどが挙げられる。本発明の場合、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。ポリエステル樹脂等の樹脂フィルムの厚みとしては20〜100μm、コストおよび使用上の取扱の良さから40〜50μmが好ましい。紙基材を用いる場合には、坪量は、通常20〜150g/m2程度、好ましくは30〜100g/m2の範囲である。
【0015】
基材2に用いられるポリエステル樹脂フィルムとしては、着色ポリエステル樹脂フィルムが好ましい。そして、着色されるためには、顔料および/または染料が配合されていることが必要である。顔料としては、無機顔料と有機顔料とに分類することができ、無機顔料としては、酸化チタン白、亜鉛華、鉛白、カーボンブラック、弁柄、朱、黄鉛、群青、コバルト青、コバルト紫、ジンククロメートなどが挙げられる。有機顔料としては、フタロシアニン系、ジオキサジン系、アントラキノン系などの顔料が挙げられ、代表的なものとして、キナクリドン、ウォッチアングレッド、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。また染料としては、天然染料と合成染料に分類することができ、天然染料としては、インジゴ(藍)等が代表される。合成染料としては、アゾ染料、インジゴイド染料、硫化染料、ニトロ染料、ニトロソ染料等が挙げられる。これらの顔料および染料は、1種または2種以上併用して使用することができ、耐光性に優れ、基材に隠蔽性を持たすようにするためには、無機顔料が最適である。ポリエステル樹脂フィルムに着色される色は白色であることが絵柄層3等の色調を変えにくいので好ましい。また、必要に応じ、蛍光増白剤をポリエステル樹脂フィルムに含有させると、絵柄層3等の美感が増し好ましい。
また該基材はプライマー層5を形成する等の処理を施してもよいし、色彩を整えるための塗装や、デザイン的な観点での模様があらかじめ形成されていてもよい。
【0016】
図1に示される絵柄層3は基材2に装飾性を与えるものであり、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される。模様としては、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様等があり、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様もある。これらの模様は通常の黄色、赤色、青色、および黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成される他、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成される。
【0017】
次に、表面保護層4は硬化性樹脂組成物が架橋硬化したもので構成される。硬化性樹脂組成物としては、熱硬化性樹脂組成物、電離放射線硬化性樹脂組成物等が挙げられ、電離放射線硬化性樹脂組成物、特に電子線硬化性樹脂組成物が好ましい。
熱硬化性樹脂組成物としては、フェノール樹脂、フェノール−ホルマリン樹脂、尿素樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、汎用の2液硬化型アクリル樹脂(アクリルポリオール硬化物)などを例示することができる。
ここで、電離放射線硬化性樹脂組成物とは、電磁波または荷電粒子線の中で分子を架橋、重合させ得るエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線または電子線などを照射することにより、架橋、硬化する樹脂組成物を指す。具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂組成物として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。
代表的には、重合性モノマーとして、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。なお、ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
本発明においては、前記多官能性(メタ)アクリレートとともに、その粘度を低下させるなどの目的で、単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
次に、重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えばエポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系などが挙げられる。ここで、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0020】
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等の分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマーなどがある。
【0021】
電離放射線硬化性樹脂組成物として紫外線硬化性樹脂組成物を用いる場合には、光重合用開始剤を樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが望ましい。光重合用開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができ、特に限定されず、例えば、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する重合性モノマーや重合性オリゴマーに対しては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタールなどが挙げられる。
また、分子中にカチオン重合性官能基を有する重合性オリゴマー等に対しては、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等が挙げられる。
また、光増感剤としては、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤などを用いることができる。
本発明においては、電離放射線硬化性樹脂組成物として電子線硬化性樹脂組成物を用いることが好ましい。電子線硬化性樹脂組成物は無溶剤化が可能であって、環境や健康の観点からより好ましく、また光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるからである。
本発明において、電離放射線硬化性樹脂を用いる場合には、後に詳述するように、表面保護層を構成する未硬化樹脂層に、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させる。
【0022】
本発明は、こうして形成した表面保護層の表面に表面張力が30dyne/cm以上である部分(a)が存在することを特徴とする。表面張力を30dyne/cm以上とすることで、当該部分において、製品ラベルや装飾部材を容易に貼付し得る。以上の点から、部分(a)の表面張力は35dyne/cm以上であることが好ましく、さらには40dyne/cm以上であることが好ましい。部分(a)の表面張力の上限については特に制限はないが、実現可能な表面張力は56dyne/cm程度である。
なお、ここで表面張力とはJIS K 6768に準拠して測定したものである。
【0023】
表面保護層に表面張力が30dyne/cm以上である部分(a)を得る方法としては特に制限はないが、コロナ放電処理する方法が好適に挙げられる。コロナ放電処理は、乾式操作で済み、装置が簡易であり、かつ、均一で高速の処理が可能である。また、必要な部分のみ処理することによって、表面の一部のみの表面張力を簡易に増大させることができる。コロナ放電処理により、表面保護層の表面に>C=O、もしくは−COOH等の酸化によって生じた官能基が生成して、製品ラベルや装飾部材の接着性が向上するものと思われる。
【0024】
コロナ放電処理の具体的方法としては、例えば、本発明の化粧シートの表面を、金属ロール上に接触させて走行させ、化粧シートの上方に、化粧シートの幅方向の向きに棒状電極を表面から数mm〜数十mmの間隔を保って設置しておき、金属ロール〜棒状電極間に高周波、高電圧の電界を作用させて、放電を起こさせることにより行なうことができる。
コロナ放電処理の条件を変更することにより、表面保護層の表面の表面張力を制御することができ、具体的には、化粧シートと化粧シートの上方に設置する電極との間隔、化粧シートが電極間を通過する速度、いわゆる加工速度を変化させることにより行なう。これら条件の変更は、コロナ放電処理装置によって異なるので、一概には言えないが、一例として、通常の加工条件においては、電極との間隔を、通常0.5〜3mmの範囲で制御し、かつ、通常の加工条件においては、加工速度を10〜30m/分程度とすればよい。
【0025】
また、表面保護層に表面張力30dyne/cm以上である部分(a)を得る方法として、プラズマ処理が挙げられる。プラズマ処理はエネルギーが高いため、効果的な方法であり特に好ましい。プラズマ処理は市販のプラズマ表面処理装置を使用することができる。雰囲気としては大気圧下又は減圧下のいずれでもよく、特に大気圧下ペン型ノズルを用いることが、所望の形、大きさで表面張力30dyne/cm以上である部分(a)を設けることができ好ましい。さらにプラズマ処理の条件を変更することにより、表面保護層の表面の表面張力を制御することができ、具体的には、化粧シートとプラズマを発生するガンとの間隔、プラズマの照射時間を変化させることにより行なうことができる。
【0026】
本発明の化粧シートにおいては前記部分(a)以外の部分の表面張力が22.6dyne/cm未満であることが好ましい。22.6dyne/cm未満であると特に良好な耐汚染性が得られる。部分(a)以外の部分の表面張力を22.6dyne/cm未満とするためには、種々の方法があるが、表面保護層の硬化性樹脂組成物に表面張力降下剤を加えることで達成される。なお、通常の試薬法で測定し得る表面張力の測定下限は22.6dyne/cmである。
また、表面張力を降下させることにより、化粧シートの耐汚染性、マジック消去性、耐セロファンテープ性、レベリング性、表面平滑性、くもり性(透明度)が向上し、かつ、すべり性がおさえられる。
【0027】
表面張力を降下させる具体的方法としては、表面保護層を構成する硬化性樹脂組成物中に、一般に界面活性剤として知られる化合物を含有させる方法がある。
ここで用い得る界面活性剤としては特に制限はなく、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、及び両性界面活性剤を使用することができる。アニオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルファスルフォ脂肪酸エステル、アルファオレフィンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸エステル塩、アルカンスルホン酸塩などが挙げられる。カチオン界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アミン塩系などが挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。両性界面活性剤としては、アルキルアミノ脂肪酸塩、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシドなどが挙げられる。
【0028】
また、表面張力降下剤としてシリコーン系化合物及びフッ素系化合物を用いることも好適である。
シリコーン系化合物としては、ポリシロキサンからなるシリコーンオイル、アニオン型シリコーン系界面活性剤、ノニオン型シリコーン系界面活性剤、カチオン型シリコーン系界面活性剤及び両性型シリコーン系界面活性剤が挙げられる。アニオン型シリコーン系界面活性剤としては、カルボン酸塩変性シリコーン、スルホン酸塩変性シリコーン、硫酸エステル塩変性シリコーン及びリン酸エステル塩変性シリコーンなどが挙げられ、ノニオン型シリコーン系界面活性剤としては、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、(ポリ)グリセリン変性シリコーン、糖類変性シリコーンなどが挙げられ、カチオン型シリコーン系界面活性剤としては、4級アンモニウム変性シリコーンなどが挙げられ、両性型シリコーン系界面活性剤としては、ベタイン変性シリコーンなどを挙げることができる。
また、フッ素系化合物としては、フルオロアルキルスルホン酸またはその塩、フルオロアルキルカルボン酸またはその塩を挙げることができ、具体的には、パーフルオロオクタンスルホン酸カリウム、パーフルオロオクタンスルホン酸リチウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム等を挙げることができる。
【0029】
上記表面張力降下剤は一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
また、上記表面張力降下剤の含有量は、硬化性樹脂組成物を基準に0.01〜10質量%の範囲であることが好ましい。0.01質量%以上であると、部分(a)以外の部分の表面張力を十分に低下させ、十分な耐汚染性を得ることができる。一方、10質量%以下であるとインキの泡立ちに起因するクレータやロービングがなく、塗工面の油膜等の外観上の不具合が少ない均一な塗工面を形成しやすい。また、シートを巻き取る際に、表面張力降下剤のシート裏面側への移行を抑制することができる。さらに経済性の点でも有利である。以上の点から表面張力降下剤の含有量は0.5〜5質量%の範囲がさらに好ましい。
【0030】
表面張力を降下させる他の方法としては、本発明における表面保護層の電離放射線硬化性樹脂組成物に用いられる単官能性(メタ)アクリレートおよび多官能性(メタ)アクリレート中に表面張力降下剤として、1乃至2官能シリコーンメタクリレートおよび多官能シリコーンアクリレートを少なくともその一部に用いる方法がある。
ここで、表面保護層の電離放射線硬化性樹脂に含有される1乃至2官能シリコーンメタクリレートは、表面張力を降下させ、主に耐汚染性、マジック消去性、耐セロファンテープ性を付与し、多官能シリコーンアクリレートは主にレベリング性、表面平滑性、くもり性(透明度)の向上及びすべり性を減じる特性を付与するものである。
【0031】
上述のシリコーンメタクリレートは、ポリシロキサンからなるシリコーンオイルのうち、片方乃至両方の末端にメタクリル基を導入した変性シリコーンオイルの中の一つである。シリコーンメタクリレートに用いる1乃至2官能シリコーンメタクリレートとしては、従来公知のものが使用でき、有機基がメタクリル基であり、該有機基を1乃至2つ有する変性シリコーンオイルであれば、特に限定されない。また、変性シリコーンオイルの構造は、置換される有機基の結合位置によって、側鎖型、両末端型、片末端型、側鎖両末端型に大別されるが、有機基の結合位置には、特に制限はない。
このようなシリコーンメタクリレートとしては、好ましくは分子量1000〜6000、より好ましくは3000〜6000、官能基当量(分子量/官能基数)好ましくは500〜3000、より好ましくは1500〜3000の条件を有するものが用いられる。
【0032】
また、シリコーンアクリレートに用いる多官能シリコーンアクリレートとしては、従来公知のものが使用でき、有機基がアクリル基であって該有機基を複数、好ましくは4つ以上を、さらには4〜6つ有する変性シリコーンオイルであれば、特に限定されない。また、変性シリコーンオイルの構造は、置換される有機基の結合位置によって、側鎖型、両末端型、片末端型、側鎖両末端型に大別されるが、有機基の結合位置には、特に制限はない。
このようなシリコーンアクリレートとしては、好ましくは分子量3000〜100000、より好ましくは10000〜30000、官能基当量(分子量/官能基数)好ましくは750〜25000、より好ましくは3000〜6000の条件を有するものが用いられる。
【0033】
上記1乃至2官能シリコーンメタクリレートの含有量は、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して好ましくは1.5〜20質量部、より好ましくは2〜4質量部である。また、上記多官能シリコーンアクリレートの含有量は、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して好ましくは1〜20質量部、より好ましくは1〜10質量部である。
また、シリコーンメタクリレートとシリコーンアクリレートとの含有量の比は、好ましくは1:1〜1:5、より好ましくは1:2〜1:3(いずれも質量比)である。
【0034】
また本発明における硬化性樹脂組成物には、得られる硬化樹脂層の所望物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤などが挙げられる。
ここで、耐候性改善剤としては、紫外線吸収剤や光安定剤を用いることができる。紫外線吸収剤は、無機系、有機系のいずれでもよく、無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径が5〜120nm程度の二酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛などを好ましく用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、具体的には、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコールの3−[3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸エステルなどが挙げられる。一方、光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系、具体的には2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2’−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどが挙げられる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基などの重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。
【0035】
耐摩耗性向上剤としては、例えば無機物ではα−アルミナ、シリカ、カオリナイト、酸化鉄、ダイヤモンド、炭化ケイ素等の球状粒子が挙げられる。粒子形状は、球、楕円体、多面体、鱗片形等が挙げられ、特に制限はないが、球状が好ましい。有機物では架橋アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の合成樹脂ビーズが挙げられる。粒径は、通常膜厚の30〜200%程度とする。これらの中でも球状のα−アルミナは、硬度が高く、耐摩耗性の向上に対する効果が大きいこと、また、球状の粒子を比較的得やすい点で特に好ましいものである。
重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、t−ブチルカテコールなどが、架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物などが用いられる。
充填剤としては、例えば硫酸バリウム、タルク、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどが用いられる。
着色剤としては、例えばキナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタン、カーボンブラックなどの公知の着色用顔料などが用いられる。
赤外線吸収剤としては、例えば、ジチオール系金属錯体、フタロシアニン系化合物、ジインモニウム化合物等が用いられる。
【0036】
本発明において、表面保護層として電離放射線硬化性樹脂を用いる場合には、前記の電離放射線硬化成分である重合性モノマーや重合性オリゴマー及び各種添加剤を、それぞれ所定の割合で均質に混合し、電離放射線硬化性樹脂組成物からなる塗工液を調製する。また、熱硬化性樹脂を用いる場合には、前記の硬化性樹脂を一種又は二種以上及び各種添加剤を、それぞれ所定の割合で均質に混合し、熱硬化性樹脂組成物からなる塗工液を調製する。これらの塗工液の粘度は、後述の塗工方式により、基材の表面に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよく、特に制限はない。
本発明においては、このようにして調製された塗工液を、基材の表面に、硬化後の厚さが1〜20μmになるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗工し、未硬化樹脂層を形成させる。硬化後の厚さが1μm以上であると所望の機能を有する硬化樹脂層が得られる。硬化後の表面保護層の厚さは、好ましくは2〜20μm程度である。
【0037】
電離放射線硬化性樹脂を用いる場合には、上述のようにして形成された未硬化樹脂層に、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させる。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
なお、電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、基材として電子線により劣化する基材を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基材への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
【0038】
さらに、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈等が用いられる。
このようにして、形成された硬化樹脂層には、各種の添加剤を添加して各種の機能、例えば、高硬度で耐擦傷性を有する、いわゆるハードコート機能、防曇コート機能、防汚コート機能、防眩コート機能、反射防止コート機能、紫外線遮蔽コート機能、赤外線遮蔽コート機能などを付与することもできる。
【0039】
本発明の化粧シートは、各種基板に貼着して化粧板として使用することができる。即ち、基板に接着剤層を介して本発明の化粧シートを貼着するものである。
被着体となる基板は、特に限定されず、プラスチックシート、金属板、木材などの木質系の板、窯業系素材等を用途に応じて適宜選択することができる。これらの基板、特にプラスチックシートを基板として用いる場合には、化粧シートとの密着性を向上させるために、所望により、片面または両面に酸化法や凹凸化法などの物理的または化学的表面処理を施すことができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
【0040】
プラスチックシートとしては、各種の合成樹脂からなるものが挙げられる。合成樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート−イソフタレート共重合樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリメタクリル酸エチル樹脂、ポリアクリル酸ブチル樹脂、ナイロン6又はナイロン66等で代表されるポリアミド樹脂、三酢酸セルロース樹脂、セロファン、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、又はポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0041】
金属板としては、例えばアルミニウム、鉄、ステンレス鋼、又は銅等からなるものを用いることができ、またこれらの金属をめっき等によって施したものを使用することもできる。
木質系の板としては、杉、檜、欅、松、ラワン、チーク、メラピー等各種素材の突板、木材単板、木材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)等の木質材等が挙げられる。これらは単独で、または積層して用いることもできる。なお、木質系の板には、木質板に限らず、紙粉入りのプラスチック板や、補強され強度を有する紙類も包含される。
窯業系素材としては、石膏板、珪酸カルシウム板、木片セメント板などの窯業系建材、陶磁器、ガラス、琺瑯、焼成タイル、火山灰を主原料とした板等が例示される。
これらの他、繊維強化プラスチック(FRP)の板、ペーパーハニカムの両面に鉄板を貼ったもの、2枚のアルミニウム板でポリエチレン樹脂を挟んだもの等、各種の素材の複合体も基材として使用できる。
【0042】
また該基板はプライマー層を形成する等の処理を施してもよいし、色彩を整えるための塗装や、デザイン的な観点での模様があらかじめ形成されていてもよい。被着体となる基板としては各種素材の平板、曲面板等の板材、或いは上記素材が単体か或いは複合された立体形状物品(成形品)が対象となる。
【0043】
化粧シートに、和紙、洋紙、合成紙、不織布、織布、寒冷紗、含浸紙、合成樹脂シート等の裏打ち材を貼着して用いてもよい。裏打ち材を貼着することにより、化粧シート自体の補強、化粧シートの割れや破け防止、接着剤の化粧シート表面への染み出し防止等の作用がなされ、不良品の発生が防止されると共に、取り扱いが容易となることとなり、生産性を向上することができる。
【0044】
このようにして接着剤を介して毎葉ごとにあるいは連続して化粧シートが載置された基板を、コールドプレス、ホットプレス、ロールプレス、ラミネーター、ラッピング、縁貼り機,真空プレス等の貼着装置を用いて圧締して、化粧シートを基板表面に接着し、化粧板とする。
【0045】
接着剤はスプレー、スプレッダー、バーコーター等の塗布装置を用いて塗布する。この接着剤には、酢酸ビニル樹脂系、ユリア樹脂系、メラミン樹脂系、フェノール樹脂系、イソシアネート系等の接着剤を、単独であるいは任意混合した混合型接着剤として用いられる。接着剤には、必要に応じてタルク、炭酸カルシウム、クレー、チタン白等の無機質粉末、小麦粉、木粉、プラスチック粉、着色剤、防虫剤、防カビ剤等を添加混合して用いることができる。一般に、接着剤は固形分を35〜80質量%とし、塗布量50〜300g/m2の範囲で基板表面に塗布される。
化粧シートの基板上への貼着は、通常、本発明の化粧シートの裏面に接着剤層を形成し、基板を貼着するか基板の上に接着剤を塗布し、化粧シートを貼着する等の方法による。
【0046】
以上のようにして製造される化粧板は、また、該化粧板を任意切断し、表面や木口部にルーター、カッター等の切削加工機を用いて溝加工、面取加工等の任意加飾を施すことができる。そして種々の用途、例えば、壁、天井、床等の建築物の内装または外装材、窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具の表面化粧板、キッチン、家具又は弱電、OA機器等のキャビネットの表面化粧板、車両の内装、外装等に用いることができる。
【実施例】
【0047】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
(評価方法)
各実施例で得られた化粧シートについて、以下の方法で評価した。
(1)耐汚染性
JIS K−6902に準拠して、汚染物を化粧シート表面に塗布し、ふき取った後の汚染物の残存具合を目視にて観察した。判定基準を以下のようにして評価した。
○ 汚染物の残存は全くない
△ 汚染物の残存はあるものの軽微なもので実用上問題がない
× 汚染物の残存が著しい
(2)表面張力
JIS K6768に準じて測定した。
(3)ラベルの接着性
JIS Z0237(90度引き剥がし粘着力の測定)に準拠して測定した。試験には3M社製スコッチテープ(品番#600)を使用し、剥離力(g/inch)によって評価した。
【0048】
実施例1
厚さ50μmの白色ポリエステル樹脂フィルム(ダイヤホイル(株)製、W−410と同一仕様で、白色とし、蛍光増白剤であるKyaphor NV liquid(日本化薬カラーズ製)を0.01%添加したもの)よりなる基材2の表面に、透明ポリエステル系ウレタン樹脂を3〜5g/m2(ドライ)塗布することによりプライマー処理を行い、プライマー層5を形成した後、ニトロセルロース・アルキッド系樹脂(ザ・インクテック(株)製、KL−MAX)からなるインキを使用して木目模様の絵柄層3をグラビア印刷した。
次に絵柄層3の上に3官能アクリレートモノマーであるエチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリアクリレートを60質量部と6官能アクリレートモノマーであるジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを40質量部、平均粒子径5μmのシリカ粒子2質量部及びシリコーンアクリレートプレポリマー1質量部よりなる電子線硬化性樹脂組成物を5g/m2 でグラビアオフセットコータ法により塗工した。塗工後、加速電圧175kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させて、表面保護層4とした。次いで、70℃で24時間の養生を行い、化粧シートを得た。
この化粧シートの耐汚染性について評価した。また、この化粧シートの一部に、以下の条件でコロナ放電処理を行い、該部分(a)における表面張力の測定及びラベルの接着性について評価した。その結果を第1表に示す。
コロナ放電処理の条件;ナビタス(株)製「MultiDyne」を使用し、出力500W・min/m、電極と被処理体との距離3mmで処理した。
【0049】
実施例2
実施例1で製造した化粧シートの一部に、以下の条件でプラズマ処理を行い、該部分(a)における表面張力の測定及びラベルの接着性について評価した。その結果を第1表に示す。
プラズマ処理の条件;ARCOTEC社製「Plasma Generator Arcospot PGS061」を使用し、出力0.9kVA、電極と被処理体との距離15mm、処理速度100m/minで処理した。
なお、ここで用いた装置は部分的なプラズマ処理が可能であり、電極を移動操作することにより、任意の位置に処理部分(a)を形成することができた。
【0050】
比較例1
実施例1と同様にして化粧シートを得、コロナ放電処理及びプラズマ処理を行わなかったこと以外は実施例1と同様に評価した。その結果を第1表に示す。
【0051】
実施例3
実施例1で製造した化粧シートを幅500mmに裁断し、その一部を絶縁性テープ(住友スリーエム(株)製No.8403)で覆うことでマスキングした。次いで、特開2003−93870の図1に示される装置を用い、化粧シート全体に対して放電プラズマ処理を行った。化粧シートの搬送速度は100mm/minとし、処理ガスとして、乾燥空気をガス流速2m/secの速度で、ガス供給ノズルから放電空間に吹き出した。また、電極と化粧シートとの距離を15mmとし、プラズマの出力を0.9kVAとした。
プラズマ処理後、マスキングテープを剥離し、マスキング部分と処理部分(a)とのラベルの接着性について、上記方法にて評価したところ、マスキング部分のテープ密着強度が40g/inchであり、処理部分(a)のテープ密着強度が187g/inchであった。以上のように本方法によれば、所望のマスキングパターンに応じて、製品ラベルや装飾部材を容易に貼付することができる。
【0052】
【表1】

【0053】
*1 試薬法における測定下限値である22.6dyne/cm未満であることを意味する。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の化粧シートは、表面の耐汚染性が高く、かつ、製品ラベルや装飾部材などを設ける部分は、表面処理により容易に表面に貼付することができるため、例えば、化粧シートの製品ラベルによる製品管理が容易になり、また化粧シートに鏡を貼付した建築部材などを容易に製造することができる。また、本発明の方法によれば、化粧シートにおける表面保護層の表面の任意の部分に、任意の大きさ、任意の形状に表面張力の高い部分を設けることができ、製品ラベルや装飾部材などを容易に貼付することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の化粧シートの断面を示す模式図である。
【符号の説明】
【0056】
1.化粧シート
2.基材
3.絵柄層
4.表面保護層
5.プライマー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に少なくとも表面保護層を有する化粧シートであって、該表面保護層が硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものであり、かつ、該表面保護層の表面に表面張力が30dyne/cm以上である部分(a)が存在することを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記部分(a)以外の部分の表面張力が22.6dyne/cm未満である請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記部分(a)がコロナ放電処理又はプラズマ処理されたものである請求項1又は2に記載の化粧シート。
【請求項4】
プラズマ処理が大気圧プラズマ処理である請求項3に記載の化粧シート。
【請求項5】
表面保護層を構成する硬化性樹脂組成物中に表面張力降下剤を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項6】
前記表面張力降下剤がシリコーン化合物又はフッ素化合物である請求項5に記載の化粧シート。
【請求項7】
硬化性樹脂組成物が電離放射線硬化性樹脂組成物である請求項1〜6のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項8】
電離放射線硬化性樹脂組成物が電子線硬化性樹脂組成物である請求項7に記載の化粧シート。
【請求項9】
基材がポリエステル樹脂フィルムである請求項1〜8のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項10】
電離放射線硬化性樹脂組成物が(メタ)アクリレート系モノマーを含有してなる請求項7〜9のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項11】
(メタ)アクリレート系モノマーが多官能性(メタ)アクリレート系モノマーである請求項10に記載の化粧シート。
【請求項12】
電離放射線硬化性樹脂組成物がさらに重合性オリゴマーを含有してなる請求項10又は11に記載の化粧シート。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の化粧シートを基板に貼付した化粧板。
【請求項14】
表面保護層の表面の少なくとも一部をコロナ放電処理又はプラズマ処理する請求項1〜12のいずれかに記載の化粧シートの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−268935(P2007−268935A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−99709(P2006−99709)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】