説明

化粧シート及び化粧シート用いた床材

【課題】立体感に富み高意匠性を有する化粧シートを提供すること。
【解決手段】基材層1の一方の面に、第一絵柄層2、第二絵柄層3、最表面に形成される表面保護層6とをこの順で積層してなる化粧シート10であって、前記第一絵柄層2と前記第二絵柄層3との間には少なくとも透明樹脂層4、透明プライマー層5とがこの順で積層されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シート及び化粧シートを用いた床材に関し、特に、高意匠性に優れた化粧シート及び化粧シートを用いた床材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基材シートに木目調の印刷がされた絵柄層、透明樹脂層、表面保護層とを積層してなる化粧シートが知られている。このような化粧シートによれば化粧シート表面に木目調の状態を表現することができ、室内用の床材や家具等の部材等様々な分野で利用されている。
【0003】
しかしながら、かかる化粧シートによればその表面に木目調の状態を表現することができるものの、絵柄層は印刷により形成されることから絵柄層の表面は平滑であり、天然木のような質感や立体感をその表面に表現させることができない。このような化粧シートは、天然木を使った床に表現される質感や立体感等に劣ることから、近時、天然木と同様の質感や立体感を有する化粧シートの開発が望まれている。
【0004】
このような状況において、特許文献1には、印刷網点のように配列した凹部に着色剤を充填することにより立体感を付与することのできる化粧シートについての記載がされており、特許文献2には内部と表面の両方に凹凸模様を設けることで立体感を付与することのできる化粧シートについて記載がされている。特許文献1の化粧シートによれば、網点の配列の不規則性を利用して立体感を付与することができるものの、絵柄層自体の厚みは10μm以下が一般的でありその立体感は限定的である。また、特許文献2に記載の化粧シートによれば、光輝性層と絵柄層が設けられた表面の凹凸によりその上に形成された絵柄層に立体感を付与することができるものの、凹凸が形成された位置により表現される立体感が異なることから、立体感を表現する位置に応じて凹凸をそれぞれ形成しなければならず、複雑な印刷が施された絵柄層等には適さない。
【特許文献1】特開2008−055721号公報
【特許文献2】特開平8−150692号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、絵柄層間に透明樹脂層を設けることで、立体感に富み高意匠性を有する化粧シートを提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明は、基材層の一方の面に、第一絵柄層、第二絵柄層、最表面に形成される表面保護層とをこの順で積層してなる化粧シートであって、前記第一絵柄層と前記第二絵柄層との間には少なくとも透明樹脂層、透明プライマー層とがこの順で積層されていることを特徴とする。
【0007】
また、前記第一絵柄層が光輝性着色層であってもよい。
【0008】
また、前記透明プライマー層が、紫外線吸収剤を含むこととしてもよい。
【0009】
また、前記表面保護層が、電離放射線硬化型樹脂層であってもよい。
【0010】
また、前記基材層の他方の面に合成樹脂層が積層されていてもよい。
【0011】
上記課題を解決するための本発明は、化粧シートと被着材とを貼着してなる床材であって、前記化粧シートが請求項1乃至5のいずれか1項に記載の化粧シートであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、化粧シートを構成する絵柄層の間に透明樹脂層を設けることで、化粧シート表面から第一絵柄層までの距離と、化粧シート表面から第二絵柄層までの距離とを異ならせることができ、化粧シート表面に表現される絵柄に立体感を付与することができ高意匠性に優れた化粧シートを得ることができる。さらに、透明樹脂層と第二絵柄層との間に透明プライマー層を設けた本発明によれば、透明樹脂層と第二絵柄層との密着性を向上させることができ、化粧シートの耐侯性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の化粧シートについて図面を用いて具体的に説明する。
【0014】
図1は、本発明の化粧シートの層構成を示す概略断面図である。
【0015】
図示するように本発明の化粧シートは、基材層1の一方の面(図1に示す場合には基材層1の上面側)に、第一絵柄層2、第二絵柄層3、表面保護層6とを積層することにより形成されている。
【0016】
ここで、本発明は第一絵柄層2と、第二絵柄層3との間に透明樹脂層4、透明プライマー層5が積層されていることに特徴を有する。
【0017】
したがって、本発明の化粧シート10によれば、透明樹脂層4と透明プライマー層5を第一絵柄層2と第二絵柄層3との間に設けることで、化粧シート表面から第一絵柄層2までの距離と、化粧シート表面から第二絵柄層3までの距離とを異ならせることができ、化粧シート表面に表現される絵柄に立体感を付与することができ高意匠性に優れた化粧シートを得ることができる。さらに、透明樹脂層と第二絵柄層との間に透明プライマー層を設けた本発明によれば、透明樹脂層と第二絵柄層との密着性を向上させることができ、化粧シートの耐侯性を向上させることができる。
【0018】
以下、化粧シートを構成する各層について図1を用いてさらに詳細に説明する。
【0019】
(基材層)
基材層1は本発明の化粧シート10における必須の構成であり、化粧シート10の土台となる層である。
【0020】
本発明で用いられる基材層1の樹脂としては、通常化粧シートの基材として用いられるものであれば、特に限定されず、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート−イソフタレート共重合樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリメタクリル酸エチル樹脂、ポリアクリル酸ブチル樹脂、ナイロン6又はナイロン66等で代表されるポリアミド樹脂、三酢酸セルロース樹脂、セロファン、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、又はポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0021】
これらの樹脂のうち、環境の点を考慮するとポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0022】
上記基材層1を構成する樹脂中には着色剤を含有してもよい。着色剤としては、チタン白、亜鉛華、弁柄、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、黄鉛、カーボンブラック等の無機顔料;イソインドリノン、ハンザイエローA、キナクリドン、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー等の有機顔料;染料;アルミニウム、真鍮等の箔粉からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸亜鉛等の箔粉からなる真珠光沢顔料等が用いられる。これらの着色剤は基材に必要な色彩を持たせるために添加され、透明着色と不透明(隠蔽)着色のいずれでも構わないが、一般的には被着体を隠蔽するために不透明色が好ましい。着色剤の添加量としては、通常、着色基材を基準として5〜60質量%の範囲である。
【0023】
また、基材層1には必要に応じて、無機充填剤を添加してもよく、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク、シリカ(二酸化珪素)、アルミナ(酸化アルミニウム)等の粉末等が挙げられ、その添加量は通常、着色基材を基準として5〜60質量%の範囲である。
【0024】
これらの基材層1は、その上に設けられる層との密着性を向上させるために、所望により、酸化法や凹凸化法などの物理的または化学的表面処理などの易接着処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
基材層1には、化粧シートの表面層として必要な機能を補強するために、必要に応じて各種添加剤、補強材、充填剤、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤等が添加される。紫外線吸収剤、光安定剤は、基材層1に、より良好な耐候性(耐光性)を付与するためのものであり、その添加量は、通常、紫外線吸収剤、光安定剤共に0.5〜10質量%程度である。一般的には、紫外線吸収剤と光安定剤を併用するのが好ましい。また、基材層1の厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度であり、30〜100μm程度であることが好ましい。
【0025】
(第一絵柄層)
第一絵柄層2は、本発明の化粧シート10における必須の構成であり、第二絵柄層3よりも化粧シート10表面からの距離が遠い位置に設けられ、化粧シート10の表面に表現される絵柄の下地絵柄としての機能を有するとともに、第二絵柄層3との組合せにより化粧シート表面に表現される絵柄に立体感を付与するために設けられる層である。
【0026】
第一絵柄層2の絵柄は、後述の第二絵柄層3の絵柄との組合せに基づいて適宜選択することができ、絵柄について特に限定はされない。例えば、公知の光輝性着色剤(例えば、光輝性顔料等)を結着材樹脂とともに溶剤(例えば、分散材)中に溶解又は分散させて得られる着色インキ、コーティング剤等を用い、基材層1の全面に印刷してもよく、光輝性着色剤にかえて着色剤(染料、顔料等)を用い所望の絵柄(例えば、木目模様、石目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等)を基材層1の一部又は全面に印刷してもよい。さらには光輝性顔料等からなる光輝性着色剤と染料、顔料等からなる着色剤とを適宜組み合わせて絵柄を形成することとしてもよい。
【0027】
なお、上述したように第一絵柄層2は、化粧シート表面に表現される絵柄の下地絵柄としての役割を果たすことから、第一絵柄層2を光輝性着色剤により形成された光輝性着色層とすることがより好ましい。第一絵柄層2を光輝性着色剤により形成された光輝性着色層とすることで、第二絵柄層3との組合せにより化粧シート表面に表現される絵柄の意匠性を高めるとともに立体感を向上させることができる。
【0028】
光輝性着色剤としては、パール顔料(マイカや、マイカの微粒子に酸化チタンや酸化鉄を焼きつけたもの)、金属粉(例えば、銅、アルミニウム、真鍮、青銅、金、銀等の微粒子)などが挙げられ、結着剤樹脂として、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられ、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0029】
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料、アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料、アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉顔料、酸化チタン被覆雲母、酸化塩化ビスマス等の真珠光沢顔料、蛍光顔料、夜光顔料等が挙げられ、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0030】
溶剤(又は分散剤)としては、例えば、石油系有機溶剤、エステル系有機溶剤、アルコール系有機溶剤、ケトン系有機溶剤、エーテル系有機溶剤、塩素系有機溶剤、水等の無機溶剤が挙げられ、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0031】
光輝性着色剤を用いて第一絵柄層2を形成する場合には、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等従来公知の技術を用いて形成することができ、基材層1上の全面にベタ状に形成してもよく、基材層1の一部に形成してもよい。
【0032】
また、光輝性着色剤に代えて着色剤を用い第一絵柄層2を形成する場合には、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法等従来公知の技術を用いて所望の絵柄を、基材層1の一部又は全部に形成することができる。
【0033】
第一絵柄層2の厚みは、第二絵柄層3との組合せにより適宜選択することができ特に制限はないが、塗工時の厚みが1〜15μm程度で、乾燥時の厚みが0.1〜10μm程度であることが好ましい。
【0034】
(透明樹脂層)
透明樹脂層4は、第一絵柄層2と第二絵柄層3との間に形成され、化粧シート10表面から第一絵柄層2までの距離と、化粧シート10表面から第二絵柄層3までの距離を異ならせ、絵柄層毎の奥行き感を異ならせ、化粧シート10に立体感を付与するために設けられる層である。
【0035】
化粧シート表面に表現される絵柄は透明樹脂層4を介して第二絵柄層3と第一絵柄層とが組み合わされた絵柄であり、透明樹脂層4のヘイズ値が高いと、透明樹脂層4の下層に形成された第一絵柄層2を視認することが困難となる。したがって、透明樹脂層4のヘイズ値は60%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましい。ここで、ヘイズ値とは、被測定物質に可視光を照射した時の全光透過率に対する拡散透過率の割合を示す。なお、この値が低いほど透明性を示す。本発明では、ヘイズ値は、JIS K 7105に準拠して測定したものである。
【0036】
透明樹脂層4として使用される樹脂は上記効果を奏することができれば特に限定されることはなく従来公知の透明樹脂層4を適宜選択して用いることができる。このような透明樹脂層4として、例えば、熱可塑性樹脂が挙げられる。中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性ポリエステル系樹脂;ポリ塩化ビニル;ポリスチレン;ポリカーボネート;ABS樹脂;アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂を好適に用いることができ、これらのうち、使用後の廃材処理性を良好とし、環境負荷を少なくするとの観点から、ポリオレフィン系樹脂及びポリエステル系樹脂をより好適に用いることができる。また、化粧シート表面から透明樹脂層4を介して第一絵柄層2が視認可能であることが必要であり、このような点を考慮すると、透明樹脂層4に結晶化核剤が添加されていることが好ましい。透明樹脂層4に結晶化核剤を添加することで、樹脂の結晶化が均一になり透明樹脂層4の透明性を向上させることができ化粧シート10表面からの第一絵柄層2の視認性を向上させることができる。
【0037】
透明樹脂層4を形成する方法についても特に限定はされず、例えば、カレンダー法、インフレーション法、Tダイ押出法等により形成することができる。
【0038】
透明樹脂層4の厚みは特に限定はされないが、透明樹脂層4の厚みが20μmより薄いと、化粧シート表面から第一絵柄層2までの距離と化粧シート表面から第二絵柄層3までの距離に差が生じず、化粧シート表面に表現される絵柄に立体感を付与することができない。このような点を考慮すると、透明樹脂層4の厚みは20μm以上であることが好ましく、30μm以上150μm以下がより好ましい。
【0039】
(透明プライマー層)
上述したように、本願発明は第一絵柄層2と第二絵柄層3との間に透明樹脂層4を設け、化粧シート10表面から第一絵柄層2までの距離と、化粧シート10表面から第二絵柄層までの距離を異ならせることで化粧シート表面に表現される絵柄に立体感を付与するとともに意匠性を向上させる点に特徴を有する。しかしながら、透明樹脂層4と第二絵柄層3との密着性は低く、単に第一絵柄層2上に透明樹脂層4を介して直接第二絵柄層3を形成した場合には、化粧シート10の耐候性が低下してしまう。このような点に考慮した本願発明は、透明樹脂層4と第二絵柄層3との間に第一絵柄層2を化粧シート表面から視認できる程度の透明性を有する透明プライマー層5が設けられている点にさらに特徴を有する。なお、透明プライマー層5は透明性である限り、無色透明、着色透明、半透明等のいずれも含む。
【0040】
このように透明プライマー層5は、第一絵柄層2を化粧シート表面から視認でき、透明樹脂層4及び第二絵柄層3との密着強度を向上させる目的で設けられることから、透明性及び透明樹脂層4と第二絵柄層3との密着性を有する必要がある。このような透明プライマー層5として、エステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ニトロセルロース樹脂等の樹脂が挙げられる。
【0041】
また、前記透明プライマー層5に紫外線吸収剤が添加されていることが好ましい。紫外線吸収剤をプライマー層5に添加することで、層間密着強度の耐候劣化を効果的に防止することができ、透明プライマー層5と第二絵柄層3との密着性をより向上させることができる。このような紫外線吸収剤として、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系等の有機紫外線吸収剤、二酸化チタン、酸化セリウム、有機亜鉛等の無機系紫外線吸収剤を好適に用いることができる。
【0042】
透明プライマー層5の厚みは特に制限はされないが、一般的に0.01μm〜10μm程度であり、0.1μm〜5μm程度が好ましい。
【0043】
(第二絵柄層3)
第二絵柄層3は、本発明の化粧シート10における必須の構成であり、本発明の化粧シート10絵柄による意匠性を与えるとともに、下地絵柄となる第一絵柄層2との組合せにより化粧シート表面に表現される絵柄に立体感を付与するための表面絵柄として設けられる。
【0044】
第二絵柄層3を構成する絵柄を形成する印刷方法は、第一絵柄層2と同様の方法を用いて行うことができ、詳細な説明は省略する。また、第二絵柄層3の絵柄についても限定されず第一絵柄層2の絵柄との組合せにより適宜選択して用いることができ、第一絵柄層2が見えるように、第二絵柄層3の一部に隠蔽性を有する柄を用いることにより、さらに立体的な表現が可能になる。例えば、光輝性のパールインキにて第一絵柄層2を形成し、石目柄の絵柄を第二絵柄層3に形成した場合には、化粧シート表面から遠いところに光輝性のパールインキにて形成された第一絵柄層2に奥行き感を持たせつつ、化粧シート表面に近いところに形成された石目柄の絵柄からなる第二絵柄層3を浮かび上がらせるように表現させることができる。また、色彩の濃度を異ならせるように第一絵柄層2と第二絵柄層3を形成した場合には化粧シート10の表面に奥行きを出し、立体感を持たせることができる。
【0045】
また、第二絵柄層3以外に更に複数の他の絵柄層を化粧シート10に設けてもよく、第一絵柄層2上に他の絵柄層を直接的に積層させた後、透明樹脂層4、透明プライマー層5を介して第二絵柄層3を積層させることとしてもよい。また、複数の絵柄層を設け、各絵柄層間に透明樹脂層4、透明プライマー層5を設けることとしてもよい。つまり、本発明は、絵柄層同士の間に透明樹脂層4、透明プライマー層5を設けることで化粧シート10表面から各絵柄層までの距離を異ならせ化粧シート表面に表現される絵柄に立体感を持たせることができ、立体感を付与させたい絵柄層の間に透明樹脂層4、透明プライマー層5を設けることで足りる。
【0046】
第二絵柄層3の厚みは第一絵柄層2との組合せにより適宜選択することができ特に制限はないが、塗工時の厚みが0.2〜10μm程度で、乾燥時の厚みが0.1〜5μm程度であることが好ましい。
【0047】
(表面保護層)
表面保護層6は、化粧シート10に耐擦傷性、耐摩耗性、耐水性、耐侯性等の表面物性を付与するために設けられる層であり化粧シート10の最表面に形成される。
【0048】
表面保護層6を構成する樹脂としては、電離放射線硬化型樹脂や、熱硬化型樹脂等の硬化型樹脂が好ましく、電離放射線硬化型樹脂がより好ましい。電離放射線硬化型樹脂は熱硬化型樹脂と比較して、架橋密度を高くできるので、熱硬化型樹脂に比べてより優れた耐擦傷性が得られ、化粧シートを貼着して得た化粧板を積み重ねて運搬時でも、化粧シート表面に擦り傷が付き難くなる。また、表面保護層6の硬化後に、その上から熱圧によるエンボス加工によって良好なる凹凸模様を賦形する事も可能となり、透明プライマー層5との密着性も良好となる。
【0049】
電離放射線硬化型樹脂は、電子線又は紫外線等の電離放射線により硬化可能な組成物であり、具体的には、分子中にラジカル重合性不飽和結合、又はカチオン重合性官能基を有する、プレポリマー(所謂オリゴマーも包含する)及び/又はモノマーを適宜混合した電離放射線により硬化可能な組成物が好ましくは用いられる。これらプレポリマー又はモノマーは単体又は複数種を混合して用いる。なお、硬化反応は、通常、架橋硬化反応となる。
【0050】
上記プレポリマー又はモノマーは、具体的には、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、エポキシ基等のカチオン重合性官能基等を有する化合物からなる。また、ポリエンとポリチオールとの組み合わせによるポリエン/チオール系のプレポリマーも好ましくは用いられる。なお、例えば(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基の意味である。ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマー(オリゴマー)の例としては、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等が使用できる。分子量としては、通常250〜100,000程度のものが用いられる。
【0051】
さらに電離放射線硬化型樹脂として、電子線硬化型樹脂が好ましい。電子線は、紫外線に比べて、硬化反応速度と温度との関りが少なく、また、シート加熱の影響も少なく、高速硬化で加工速度の向上が容易であるからである。更に、耐候性向上の為には表面保護層中に、添加が有利又は不可欠である紫外線吸収剤を添加しても、硬化には影響せず、紫外線吸収剤を添加する事もできるという利点が得られるからである。従って、耐候性の点でも有利となる。
【0052】
表面保護層6を形成する方法についても特に限定はされず、例えば、電離放射線硬化型樹脂又は2液硬化型ウレタン系樹脂をグラビアコート、ロールコート等の公知の塗工法により塗工することができる。
【0053】
なお、電離放射線としては、電離放射線硬化型樹脂(組成物)中の分子を硬化反応させ得るエネルギーを有する電磁波又は荷電粒子が用いられる。通常用いられるものは、紫外線又は電子線であるが、この他、可視光線、X線、イオン線等を用いる事も可能である。紫外線源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト、メタルハライドランプ等の光源が使用される。紫外線の波長としては通常190〜380nmの波長域が主として用いられる。電子線源としては、コッククロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、或いは、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用い、100〜1000keV、好ましくは、100〜300keVのエネルギーをもつ電子を照射するものが使用される。

表面保護層6の厚さは、特に限定されず化粧シート10の用途に応じて適宜設定することができ、1μm〜20μmが一般的である。
【0054】
また、表面保護層6の物性を向上させるために、溶剤、酸化防止剤、分散剤、光安定剤、ツヤ調整剤、ブロッキング防止剤、滑剤等の添加剤を適宜配合し添加することとしてもよい。
【0055】
(エンボス加工)
化粧シート10は、表面保護層側からエンボス加工が施されていてもよい。エンボス加工は、化粧シート10に木目模様等の所望のテクスチャーを付与するために行う。例えば、加熱ドラム上で表面保護層6を加熱軟化させた後、さらに赤外線輻射ヒーターで140〜170℃に加熱し、所望の形の凹凸模様を有するエンボス板で加圧・賦形し、冷却固定することによりテクスチャーを付与する。エンボス加工は、公知の枚葉又は輪転式エンボス機で行うことができる。
【0056】
エンボス加工の凹凸模様としては、例えば、木目導管溝、浮造模様(浮出した年輪の凹凸模様)、ヘアライン、砂目、梨地等が挙げられる。また、エンボス加工を施した場合には、必要に応じて、エンボス凹部にワイピング加工によりインキを充填してもよい。例えば、エンボス凹部にドクターブレードで表面をかきながらインキを充填することができる。充填するインキ(ワイピングインキ)としては、通常は2液硬化型のウレタン樹脂をバインダーとするインキを用いることができる。特に木目導管溝凹凸に対してワイピング加工を行うことによって、より実際の木目に近い意匠を表現することができ、化粧シート10の商品価値を高めることができる。
【0057】
(合成樹脂層)
また、図1に示すように基材層1の他方の面(図1に示す場合は下側)には合成樹脂層7を積層することとしてもよい。合成樹脂層7を基材層1の他方の面に積層することにより、化粧シート10の表面に均一な平滑感、良好な耐傷性等を付与し、また被着材と貼り合せて床材とした場合には、耐衝撃性、耐キャスター性能を高めるとともに、立体感をより高めることができる。
【0058】
合成樹脂層7は、単層であっても良いし、2層以上からなる構成であっても良い。2層以上とする場合、その積層方法は、例えば、押し出し法等の公知の方法を適宜選択して積層することができる。
【0059】
合成樹脂層の材質は特に限定されず、例えば、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン)、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、ポリプロピレン、メタクリル樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PET)、ポリアリレート等が挙げられる。
【0060】
合成樹脂層の厚みは特に限定されないが、一般的には150〜600μm程度が好ましく、200μm〜500μm程度がより好ましい。
【0061】
(透明接着剤層)
また、図1に示すように透明接着剤層8を介して第一絵柄層2又は第二絵柄層3と、透明樹脂層4を積層することとしてもよい。第一絵柄層2又は第二絵柄層3と透明樹脂層4との間に透明接着剤層8を設けることにより第一絵柄層2又は第二絵柄層3と透明樹脂層4との密着性を向上させることができる。
【0062】
透明接着剤層8は、透明接着剤を絵柄層(第一絵柄層2又は第二絵柄層3)側か或いは透明樹脂層4側に塗布して、乾燥させた後、両シートを重ね合わせて圧着し積層一体化させるものである。接着剤としては従来公知の接着剤を用いることができ、例えば、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリ酢酸ビニ系等の樹脂からなる熱硬化型または紫外線硬化型等の接着剤が使用できる。
【0063】
透明接着剤層8の厚みは特に制限はないが、乾燥後の厚みが0.1〜30μmが一般的である
【0064】
(床材)
また、本発明の化粧シート10は、各種被着材と接合することにより床材(図示しない)とすることができる。被着材の材質は特に限定されず、例えば、無機非金属系材質、金属系材質、木質系材質、プラスチック系材質等の材質が挙げられる。具体的には、無機非金属系材質として、抄造セメント、押出しセメント、スラグセメント、ALC(軽量気泡コンクリート)、GRC(ガラス繊維強化コンクリート)、パルプセメント、木片セメント、石綿セメント、硅酸カルシウム、石膏、石膏スラグ等の非陶磁器窯業系材料、土器、陶器、磁器、セッ器、硝子、琺瑯等のセラミックス材料等が挙げられる。また、金属系材質として、鉄、アルミニウム、銅等の金属材料(金属鋼板)等が挙げられる。また、木質系材質として、杉、檜、樫、ラワン、チーク等からなる単板、合板、パーティクルボード、繊維板、集成材等が挙げられる。また、プラスチック系材質として、ポリプロピレン、ABS樹脂、フェノール樹脂等の樹脂材料等が挙げられる。
【0065】
また、このような被着体の形状は特に限定されず床材の使用目的等に応じて適宜選択して用いることができる。通常はフローリング等への設置を考慮して平板とすればよい。
【0066】
また、本発明の化粧シート10と被着材と接合後は、例えば、最終製品の特性に応じて、裁断、テノーナーを用いてサネ加工、V字形状の条溝付与、四辺の面取り等を施してもよい。
【0067】
このように、化粧シート10と被着材とを接合してなる本願発明の床材によれば、耐侯性を有し、床材表面に表現される絵柄に立体感を付与することができ高意匠性に優れた床材を得ることができる。
【実施例】
【0068】
以下に、実施例と比較例を挙げて、本発明について更に詳しく説明する。
【0069】
(実施例1)
基材層1としての両面コロナ処理を施したポリプロピレン系着色樹脂(厚み60μm)の上面に2液硬化型のアクリル−ウレタン樹脂からなる印刷インキと、光輝性材料を添加したアクリル−ウレタン樹脂からなる印刷インキで第一絵柄層2をグラビア塗工法により形成し、その上に透明接着剤層8としてのウレタン系接着剤(厚み3μm)を介して、Tダイ押出機で80μmの厚さとなるようにポリプロピレン系樹脂を押出して透明樹脂層4を形成した。次にトリアジン系紫外線吸収剤を添加したポリカ系ウレタン・アクリル共重合/アクリルポリオールをバインダーとした溶液をグラビア塗工法で2μmの厚さとなるように塗工して透明プライマー層5を形成し、その上に1液のアクリル−ウレタン樹脂からなる印刷インキを用いてグラビア印刷法にて第二絵柄層3を形成し、その上に上記と同様の透明接着剤層8(厚み3μm)、透明樹脂層4(厚み80μm)、透明プライマー層5(厚み2μm)を順次積層した。次に、透明プライマー層5上に、表面保護層6として電子放射線硬化型樹脂層をロールコート法で乾燥後に15μmの厚さとなるように塗布・乾燥して未硬化の電子放射線硬化型樹脂層を形成し、該未硬化の電子線放射線樹脂層に酸素濃度200ppm以下の環境下で電子線(加速電圧125KeV、5Mrad)を照射することにより硬化させ表面保護層6を形成するとともに、該表面保護層6側からエンボス加工を行って凹凸模様を形成した。その後、基材層1の下面に250μmの厚さとなるように押出ししたポリプロピレンを熱ラミネートしてバッカー層を形成し、さらにウレタン系樹脂溶液をグラビア塗工法により裏面プライマー層(2μm)を形成し、実施例1の化粧シートを作成した。
【0070】
(実施例2)
12mm×945mm幅×1840mm長の合板に、中央理化工業製BA−10L/BA−11B接着剤を8g/尺2を合板表面に塗布し、実施例1で作製した化粧シートを貼り合わせ、床材を作製した。
【0071】
(比較例)
実施例1の透明樹脂層4と透明プライマー層5以外は全て同様の方法により比較例の化粧シートを作成した。
【0072】
(絵柄視認性試験)
実施例1、及び比較例の化粧シート及び実施例2の床材の絵柄視認性試験を行った。絵柄視認性試験は化粧シート(実施例2にあっては床材)表面から第一絵柄層2と第二絵柄層3を構成する絵柄を認識できるか否かを目視により行った。このとき、第一絵柄層2及び第二絵柄層3の両絵柄層を良好に視認することができたものを◎とした。評価結果を表1に合せて示した。
【0073】
(立体性評価試験)
実施例1及び比較例の化粧シート及び実施例2の床材の立体性評価試験を行った。立体性評価試験は、化粧シート表面(実施例2にあっては床材)に表現される絵柄の奥行き感、立体感を目視により行い、立体感を有するものを○、立体感を有しないものを×とした。評価結果を表1に合せて示した。
【0074】
【表1】

【0075】
(評価結果)
表1からも明らかなように、第一絵柄層2と第二絵柄層3との間に透明樹脂層4及び透明プライマー層5を設けた実施例1の化粧シート及び実施例2の床材は、絵柄層間に透明樹脂層4及び透明プライマー層5を設けない比較例の化粧シート同様、化粧シート(床材)表面から第一絵柄層及び第二絵柄層3を構成する絵柄を視認することができ良好な視認性を示した。
【0076】
また、表1からも明らかなように、第一絵柄層2と第二絵柄層3との間に透明樹脂層4を設け、化粧シート表面から第一絵柄層2までの距離と、化粧シート表面から第二絵柄層3までの距離とを異ならせた実施例1の化粧シート及び実施例2の床材は、化粧シート(床材)表面に表現される絵柄に立体感を付与することができた。一方、化粧シート表面から第一絵柄層2までの距離と化粧シート表面から第二絵柄層3までの距離の差が殆どない比較例の化粧シートは、化粧シート表面に表現される絵柄に立体感がないことが確認された。
【0077】
以上の結果から、透明性を有する透明樹脂層4と透明プライマー層5を第一絵柄層2と第二絵柄層3との間に設けた本願発明の化粧シート10および化粧シート10と被着材とを接合してなる床材によれば、化粧シート(床材)表面からの第一絵柄層2及び第二絵柄層3の視認性を低下させることがなく化粧シート(床材)表面に第一絵柄層2と第二絵柄層3とが組み合わされた絵柄を立体的に表現させることができ、化粧シート10及び化粧シート10と被着材とを接合してなる床材に立体感を付与し、意匠性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本願発明の化粧シートの概略断面図である。
【符号の説明】
【0079】
1…基材層
2…第一絵柄層
3…第二絵柄層
4…透明樹脂層
5…透明プライマー層
6…表面保護層
7…合成樹脂層
8…透明接着剤層
10…化粧シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層の一方の面に、第一絵柄層、第二絵柄層、最表面に形成される表面保護層とをこの順で積層してなる化粧シートであって、
前記第一絵柄層と前記第二絵柄層との間には少なくとも透明樹脂層、透明プライマー層とがこの順で積層されていることを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記第一絵柄層が光輝性着色層であることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記透明プライマー層が、紫外線吸収剤を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記表面保護層が、電離放射線硬化型樹脂層であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項5】
前記基材層の他方の面に合成樹脂層が積層されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項6】
化粧シートと被着材とを貼着してなる床材であって、
前記化粧シートが請求項1乃至5のいずれか1項に記載の化粧シートであることを特徴とする床材。

【図1】
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【公開番号】特開2009−241462(P2009−241462A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−91772(P2008−91772)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】