説明

化粧品用小型ボトルの製造方法

【課題】パール顔料を用いることも、多層構造にすることも、プリフォームを形成することもなく、良好な真珠光沢を有する化粧品用小型ボトルを安価に提供する。
【解決手段】大きさのほぼ等しくPEN:PET=40:60、50:50、60:40の各割合の混合ペレットを準備し、十分に乾燥させておく。この原料を、設定温度295℃のスクリュー式押出成形機に投入し、約60分間運転を行って加熱・溶融・混練を行った後、成形機の設定温度を280℃に下げてパリソンの吐出を開始し、約30分ほどパリソンをそのまま流し、成形機内温度280℃前後・吐出口温度250℃前後になり、パリソンが十分な腰を備える状態になったら、ダイレクトブロー成形を開始し、ブロー比2〜3の条件で容量10mlの細長い小型ボトルを成形した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品用小型ボトルに係り、特に、真珠光沢を呈する容量20ml以下の化粧品用小型ボトルの製造に適する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、真珠光沢を備えたボトルは、塗装や蒸着などによる後加工が主流であったが、近年では、二層構造のボトルの最外層にパール顔料を含有させたり(特許文献1)、三層構造のボトルの中間層にパールエッセンスを含有させた多層構造のブロー成形ボトルが提案されている(特許文献2)。
【0003】
また、最外層をポリエステル系樹脂70〜96.5重量%にメタクリル系樹脂3.5〜30重量%を添加した組成物とし、中間層を不透明な白色又は着色された熱可塑性樹脂層とした多層構造のブロー成形ボトルも提案されている(特許文献3)。
【0004】
さらに、熱可塑性ポリエステルと、オレフィン・酢酸ビニル共重合体鹸化物とを所定範囲で配合した組成物を射出成形して形成したプリフォームを二軸延伸ブローによってボトル化することで、パール状の光沢を有するボトルを成形することができるとする提案もある(特許文献4)。
【特許文献1】特開平9−77039号公報
【特許文献2】特許第3014061号公報
【特許文献3】特開平6−210708号公報
【特許文献4】特公平7−340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2の方法は、高価なパール顔料を用いなければならないという欠点がある。また、特許文献1〜3の方法は、多層ブロー成形であり、特許文献4は、二軸延伸ブロー成形であるから、マスカラやリップグロスなどといった化粧品用の小型ボトルの製造に適していない。
【0006】
そこで、本発明は、パール顔料を用いなくても真珠光沢を有する化粧品用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた本発明の化粧品用小型ボトルの製造方法は、ポリエチレンナフタレート系樹脂(以下、「PEN」という。)のペレットと、ポリエチレンテレフタレート系樹脂(以下、「PET」という。)のペレットとを、ペレットの状態のままで所定の割合で混合し、所定の乾燥状態とした混合ペレットを準備し、該混合ペレットをダイレクトブロー成形用のスクリュー式押出成形機に投入し、該押出成形機内で所定の条件にて加熱・溶融・混練した上で吐出口より一層構造のチューブ状パリソンとして吐出し、
該パリソンの下端をピンチオフする様にブロー成形用金型を型閉じしてダイレクトブローによって成形するボトル製造方法であって、以下の条件を採用したことを特徴とする化粧品用小型ボトルの製造方法。
(1)前記混合ペレットは、それぞれほぼ同じ大きさのペレットをPEN:PET=40:60〜60:40の重量比で混合したものであること。
(2)前記加熱・溶融・混練は、前記スクリュー式押出成形機の運転温度を280℃〜295℃とした条件下で実行すること。
(3)前記ダイレクトブローによる成形を行うに当たってパリソンを吐出する際に、前記スクリュー式押出成形機の運転温度を徐々に下げていき、吐出口温度240〜255℃の範囲で安定してパリソンを吐出させ初めた後に開始すること。
(4)前記ダイレクトブロー成形は、ブロー比2〜3倍とされていること。
【0008】
本発明によれば、白色顔料を添加しなくても、ホワイト系のパール調に仕上がる。なお、赤,青等の顔料を添加することにより、ピンク系,ブルー系等のパール調ボトルとすることができる。
【0009】
(1)の混合比の範囲に対して、PENの割合を少なくすると、光沢が出現し難くなり、安定して小型ボトルを製造することができない。また、上記範囲外においては、小型ボトルの透明性が高くなってしまい、ダイレクトブローによる一層構造のボトルでは、内容物の色が透けて見えてしまうため、化粧品用小型ボトルに適さない。
【0010】
(2)の運転温度がさらに高い場合にも透明性が高くなってしまい、ダイレクトブローによる一層構造の化粧品用小型ボトルの製造に適さない。なお、運転温度が低過ぎる場合には、溶融・混練が不十分となり、パリソンを吐出しても腰がない状態となってしまって成形困難となる。
【0011】
(3)において、吐出口温度を240〜255℃とするには、スクリュー式押出成形機の運転温度を280℃前後まで徐々に下げてやる。この温度範囲よりも高い温度では透明性が高まり、低い温度ではパリソンの腰がなくなる。
【0012】
(4)のブロー比は、透明性が高くなることを防止し、内容物の色が透けて見えにくい小型ボトルをダイレクトブローによる一層構造のボトルとして製造するのに適する。また、この様なボトルとしては、容量20ml以下の小型ボトルが適している。
【0013】
本発明の方法は、ダイレクトブローによる一層構造容器の製造方法であるから、容量5〜20ml程度の化粧品用小型ボトル(ネイルカラー,リップグロス,マスカラなどのボトル)も容易に製造することができるのである。そして、上記配合の素材を用いることにより、ムラのない良好な真珠光沢を有する化粧品用小型ボトルを製造することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、パール顔料を用いることも、多層構造にすることも、プリフォームを形成することもなく、良好な真珠光沢を有する化粧品用容器(特に、小型ボトル)を、安価に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。実施形態においては、一層構造の容量10mlの化粧品用小型ボトル(ネイルカラー用ボトル)をダイレクトブロー成形により製造する方法を説明する。
【0016】
まず、原料として、それぞれほぼ同じ大きさのPENのペレット(A)と、PETのペレット(B)を準備する。そして、これらを重量比において、ペレット(A):ペレット(B)=40:60〜60:40の範囲内でよく混合して混合ペレットを準備しておく。
【0017】
次に、この混合ペレットを、ダイレクトブロー成形用のスクリュー式押出成形機に投入し、押出成形機を駆動させ、加熱・溶融・混練を実行する。この加熱・溶融・混練は、スクリュー式押出成形機の運転温度を280℃〜295℃とした条件下で60分程度実行する。
【0018】
そして、押出成形機内の原料が十分に溶融・混練されたら、吐出口から一層構造のチューブ状パリソンの吐出を開始する。このとき、パリソンを吐出する際にスクリュー式押出成形機の運転温度を徐々に下げていく。ここでは、成形開始までに30分程度の時間をかけてパリソンが安定するのを待つ。
【0019】
そして、このパリソンの下端をピンチオフする様にブロー成形用金型を型閉じし、ブローピンを挿入し、ブローエアーを吐出する。このとき、パリソン径・パリソン肉厚は、キャビティの容積との関係でブロー比が2〜3倍となる様に設定しておく。なお、成形は、吐出口温度240〜255℃の範囲で安定してパリソンを吐出させ初めた後に開始する。
【0020】
こうして、ホワイト系パール調の外観を呈する化粧品用小型ボトルを製造することができる。なお、押出成形機に混合ペレットを投入する際に、顔料を添加することにより、赤色顔料添加によるピンク系、青色顔料添加によるブルー系など、白以外の真珠光沢を呈する様に製造することができる。
【実施例】
【0021】
まず、原料として、図1に示す様に、大きさのほぼ等しいPENのペレット(A)と、PETのペレット(B)を準備する。そして、これらを重量比において、ペレット(A):ペレット(B)=40:60、50:50、60:40の各割合となる混合ペレットを準備した。この混合ペレットは真空乾燥幾等を用いて十分に乾燥させておく。
【0022】
この原料を、設定温度295℃のスクリュー式押出成形機に投入し、約60分間運転を行って加熱・溶融・混練を行った。
【0023】
次に、スクリュー式押出成形機の設定温度を280℃に下げて温度を低下させつつパリソンの吐出を開始した。そして、約30分ほどパリソンをそのまま流し、成形機内温度280℃前後・吐出口温度250℃前後になり、パリソンが十分な腰を備える状態になったら、ダイレクトブロー成形を開始し、容量10mlの細長い小型ボトルを成形した。
【0024】
また、比較例として、PEN:PETの混合比を30:70にした他は同じ条件で小型ボトルを成形した。
【0025】
この実施例及び比較例は、図2に示す結果となり、実施例はいずれもパール調で十分な光沢が得られたのに対し、比較例は白いぼとるになるだけで十分な光沢が得られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例及び比較例に用いたペレットの形態及び大きさを示す平面図である。
【図2】実施例及び比較例の光沢の出方を示す平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンナフタレート系樹脂(以下、「PEN」という。)のペレットと、ポリエチレンテレフタレート系樹脂(以下、「PET」という。)のペレットとを、ペレットの状態のままで所定の割合で混合し、所定の乾燥状態とした混合ペレットを準備し、
該混合ペレットをダイレクトブロー成形用のスクリュー式押出成形機に投入し、該押出成形機内で所定の条件にて加熱・溶融・混練した上で吐出口より一層構造のチューブ状パリソンとして吐出し、
該パリソンの下端をピンチオフする様にブロー成形用金型を型閉じしてダイレクトブローによって成形するボトルの製造方法であって、以下の条件を採用したことを特徴とする化粧品用小型ボトルの製造方法。
(1)前記混合ペレットは、それぞれほぼ同じ大きさのペレットをPEN:PET=40:60〜60:40の重量比で混合したものであること。
(2)前記加熱・溶融・混練は、前記スクリュー式押出成形機の運転温度を280℃〜295℃とした条件下で実行すること。
(3)前記ダイレクトブローによる成形を行うに当たってパリソンを吐出する際に、前記スクリュー式押出成形機の運転温度を徐々に下げていき、吐出口温度240〜255℃の範囲で安定してパリソンを吐出させ初めた後に開始すること。
(4)前記ダイレクトブロー成形は、ブロー比2〜3倍とされていること。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−89319(P2010−89319A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−259917(P2008−259917)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【出願人】(591029149)本多プラス株式会社 (18)
【Fターム(参考)】