説明

化粧品組成物におけるエンハンサーのアライメント

本発明は角質表面に局所的に用いられる化粧品もしくは医薬品組成物に関し、アイラッシュを伸長させたり、及び/または皮膚表面上のリンクルを被覆したりして改善するため、容貌改善成分の秩序正しい配列を促進するアライメント剤を含む。容貌改善成分は、繊維状成分であることができ、また、はじく繊維、蒸発繊維、もしくはその両方の組み合わせを含むさまざまなタイプの繊維を包含することができる。容貌改善成分はまた小片物質などの不活性なフィラーとすることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品もしくは医薬品組成物に関する。より具体的には、本発明は、角質表面の所望の改善(改善または増強enhancement)を模倣するため、角質表面上で容貌改善成分(feature enhancing agent))を配列することができるアライメント剤を有しているような上記組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
人の好みはさまざまであるが、大まかに言って、美しさは一定の顔立ちによって際立たせられると考えられる。これらの容貌、したがって各人の美しさを際立たせる化粧品及びスキンケア製品の能力は、これらの製品を提供する産業において不可欠なものである。際立って美しい外見のために改善することができる容貌の例として、目や、皮膚の色合い、及び唇がある。しかし、これらの例の各々に影響を及ぼして美しさを損なう共通した要因の一つに、リンクル(しわ)がある。したがって、多くの製品が、その見苦しいリンクルを抑制したり、隠蔽もしくは被覆するように設計されている。別のコスメチック製品は、欠点と考えられ得るものに対処するよりもむしろ、他の本来の容貌を取り上げてそれを一層より良く見せる。これには、本来のアイラッシュ(まつげ)を変形させて目を濃くボリュームのある状態に改善するマスカラ組成物が当てはまる。
【0003】
長く濃いアイラッシュは、目の周りを魅力的に改善すると考えられ、多くの人にアピールする際立った外見を作る。それゆえマスカラのユーザーは、長く、官能的で、ふっくらした、柔らかい、そして別々に分離したアイラッシュを望む。しかしながら、多くの「ボリューム感のある」マスカラは、ボサボサで塊状であり、細いアイラッシュが硬く、ザラザラして見えるようにし、相当に目立つものだが魅力のないものとなる。これらのタイプのマスカラは、アイラッシュ上に付けたときに重く感じることもある。ボリューム感のあるマスカラを使うことに伴うもう一つの難問は、そのマスカラにより汚れ、染みが付く傾向があり、マスカラが薄片となって剥げる傾向があり得ることである。どれだけ美しさを改善するべく設計されているとしても、コスメチック製品は水分と油性残渣の蓄積に対しても耐えなければならない。皮膚に局所的に用いられる製品を実現するために、その製品が明るく、さわやかな、そして自然な感じである一方で、皮膚上の水分とアブラをうまく処理することにより最初に塗布したときと同様に美しさを改善し続けなければならないことが望まれる。したがって、その製品は、毛や皮膚上で格好良く見え、その望まれる機能を果たすよう配合されなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、現状の製品で見られる望ましくない特性を示さずに、毛や皮膚上で容貌を改善する必要が残されている。本発明はこれらの目標を達成し、通常の日常使用される状況において、美しさと関係する容貌を改善するというニーズを満たすものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、容貌改善成分とその容貌改善成分を角質表面上で秩序正しく配列することを促進するための非高分子系のアライメント剤とを含み、角質表面へ局所的に用いられる化粧品もしくは医薬品組成物に関するものである。容貌改善成分は、アイラッシュを長く(伸長)したり、あるいは唇や皮膚のリンクルを覆うため、角質表面上に整列(アライメント)させられる。容貌改善成分は、毛髪、唇、あるいは皮膚上に整列する繊維を含む繊維状成分であることができる。加えて、その繊維状成分は、皮膚上のリンクルを覆うことができる小片(platelet)のような不活性フィラーを含んでいても良い。したがって容貌改善成分は、繊維もしくは小片のいずれか、または繊維及び小片の両方である。もし繊維及び小片の両方が用いられるならば、容貌改善成分は二つの基本的な機能を果たす。すなわち、皮膚の表面上のリンクルを覆い、また繊維が皮膚の自然な外見を模倣するので、肌の色合いが自然に見え、かつリンクルが少なくなる。本発明の組成物は特にマスカラとして有用である。
【0006】
本発明は、角質表面を改善する方法も含む。容貌改善成分はアライメント剤と組み合わされて皮膚へ適用(塗布)される。本発明の組成物は、容貌改善成分を角質表面上に配列させることによって角質表面を改善する。結果として、皮膚上に見えるリンクルを低減することができ、皮膚はより自然な外観を有することになる。繊維はまた、特にマスカラ組成物中において有用である。すなわち、アイラッシュに適用した際に、非高分子系のアライメント剤がイソ酪酸酢酸スクロースである場合、アイラッシュ上で繊維が秩序立って整列する(methodic ordering)ことにより角質表面上で伸長改善効果(lengthening enhancement)が達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、容貌改善成分とその容貌改善成分を角質表面上で秩序正しく配列することを促進するための非高分子系のアライメント剤とを含み、角質表面へ局所的に用いられる化粧品もしくは医薬組成物に関するものである。容貌改善成分は、例えばアイラッシュを伸長したり、唇や皮膚のリンクルを覆うために角質表面上に整列させられる。容貌改善成分は、毛や皮膚上で整列する繊維からなる繊維状成分とすることができる。加えて、その繊維状成分は、皮膚や唇上のリンクルを覆う小片のようなフィラーを含んでいても良い。容貌改善成分はしたがって、繊維もしくは小片のいずれか、または繊維及び小片の両方であることができる。もし繊維及び小片の両方が用いられるならば、容貌改善成分は、皮膚が自然かつリンクルが少ない状態に見えるように二つの基本的な機能を果たす。一つ目は皮膚の表面のリンクルを覆う機能、そして二つ目は繊維が皮膚の自然な外見を模倣する機能である。本発明の容貌改善成分は角質表面上にランダムに付くものではない。むしろ、アライメント剤により、角質表面上で容貌改善成分が整然と配列させられる。
【0008】
アライメント剤は、非高分子系、非水溶性の高粘性液体物質である。アライメント剤の粘度は、以下全て約37℃において少なくとも約5,000 センチポイズであり、好ましくは少なくとも約20,000 センチポイズ、より好ましくは少なくとも約50,000センチポイズである。好ましくは、アライメント剤は、スクロース分子が2つの酢酸と6つのイソ酪酸部分によってエステル化されたイソ酪酸酢酸スクロース (SAIB)である。SAIBの最も一般的な用途は、例えば米国特許第5,662,891号で説明されているネイルエナメル組成物の可塑剤や、米国特許第5,747,058号で示されているようなドラッグデリバリーシステムの一部としての用途であり、また米国特許第3,964,500号で述べられているようなシャンプー組成物でも用いられている。加えて、SAIBは、Eastman Chemical Co., Kingsport TN の製品資料(1999年10月)で述べられているように食品産業における乳化安定剤として知られている。SAIBは約30℃で約100,000 センチポイズという非常に粘り気のある液体であるが、温度が変化したり溶媒を加えたりするのに伴って粘度が変化するという異常な性質を持っている。例えば、Eastman Chemical Co., Kingsport TNのSAIBに関する製品資料(1999年10月)によれば、わずか約20℃の温度上昇によってその粘度は小さくなる。SAIBはグリセロール、トウモロコシ油、ピーナッツ油、1,2-プロパンジオール、ポリエチレングリコール、高度に精製されたごま油、及び高度に精製されたピーナッツ油とは混和しない。したがって、これらのタイプの溶媒は本発明の組成物中では好ましくない。SAIBのもう一つの魅力ある性質は、皮膚や毛のような下地に対する優れた粘着力によって裏付けられるように、その粘着性にある。SAIBの粘着性は、他の製剤成分の存在によって加減することもできる。アライメント剤の量は本組成物中で約0.2〜20.0重量%である。本発明のうちマスカラ組成物の場合には、SAIBの量はその組成物中で約0.5〜約10重量%である。
【0009】
本発明の一実施形態においては、概して、容貌改善成分は、アイラッシュを長くすることを容易にするため、あるいは皮膚表面上で自然な細い毛を模倣するために繊維を含む繊維状成分である。繊維は、アイラッシュ上に並んでその伸長効果を増大するように、線状に整列されている。その繊維は、一般的に言って、繊維が連続した1本の線を形成してアイラッシュの伸長効果をもたらすように端と端がつながって配置される。繊維は例えば、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、シルク、綿、羊毛、亜麻、セルロース、ポリアミド、ビスコース、アセテート、アクリルポリマー、アラミド、レーヨン、ポリオレフィン、ガラス、シリカ、カーボン、ポリテトラフルオロエチレン、不溶性コラーゲン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、キトサン、ポリウレタン、もしくはポリエチレンであることができる。繊維は約0.01〜約0.25インチの長さを有するフロックの形態をとることができるが、約30mmくらいの長さとすることもできる。
【0010】
容貌改善成分の繊維は、本質的に疎水性及び/または親水性である。本発明では繊維の組み合わせを用いることができる。化粧品組成物に繊維を含ませることは米国特許第4,820,510号、特開平第7-179323号、及び特願平1-291133号で知られている。しかしながら、アイラッシュを長くするため角質表面上に繊維を秩序立てて配列する非高分子系のアライメント剤を含む化粧品は以前には提案されていない。ある種の繊維は本来疎水性であるが、繊維は実質的に疎水性になるよう処理することもできる。「実質的に疎水性」の用語は、その繊維が脂肪親和性、親油性であり、皮膚上に見られる皮脂、脂肪酸、エステルその他の油などの非極性の物質に対して水などの極性の物質に対するよりも大きな親和性を有することを意味する。疎水性になるよう処理される繊維は、通常化学的に処理される。同様に、繊維は親水性になるよう処理することができ、「実質的に親水性」の用語は、繊維が水に引き付けられ、油よりも水に対して大きな親和性を有することを意味する。
【0011】
疎水性の繊維は、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン材料、及びそれらの混合物から構成される群から選択することができる。ポリエステルなどのその他の疎水性の繊維としては、例えばDelaware、WilmingtonのDuPontによって製造されている商品名COOLMAXTM及びTHERMAXTMの繊維を用いることができる。本発明のより好ましい実施形態では、繊維状成分はナイロン繊維のうちの疎水性の繊維より構成される。ナイロンは本質的に疎水性であるが、毛細管形式の作用によって水も吸収し、双方への親和性を示す。ナイロンは約0.8〜約20デニール(dpf)であり、好ましくは約1.0〜約5.0デニールとすることができる。ナイロン繊維はまたマイクロデニールとすることもできる。ナイロン繊維の水分率は、約70°F及び相対湿度約65%において約4.0〜約4.5%である。より高い温度及び低いレベルの湿度は、本組成物の性能を高めることができる。好ましくは、ナイロン繊維はナイロン-6の繊維である。繊維の形は、円形、豆形、骨形、長円形、三つに分かれた形、不規則形、もしくはその他の繊維のような形など、いずれの種類の形でもとることができる。好ましくは繊維は円形である。
親水性もしくは実質的に親水性になるよう処理された繊維の例には、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル、アラミド、レーヨン、綿、羊毛、シルク、及びそれらの混合物を含むがこれに限定されない。処理された親水性ナイロン繊維の例には、Tennessee、ClevelandのIntera Corporationによって加工されたIntera処理したナイロン繊維、及びVirginia、PetersburgのAllied Signal Fibersによって製造されている商品名HYDROFILTMのナイロン6コポリマーがある。例えば、Delaware、WilmingtonのDuPontによって製造されている商品名THERMASTATTMの改質したポリエステルや、ドイツのLeverkusenのBayerによって製造されている商品名DUNOVATMの改質したアクリルなどの、その他の同様に処理された繊維が利用可能である。その他の繊維のメーカーも同様に利用することができる。
【0012】
本発明のさらに別の実施形態では、化粧品もしくは医薬組成物は、繊維と小片との組み合わせ(すなわち本組成物中に二つの容貌改善成分が一緒に存在する場合)を含む。秩序正しく配列されたこれらの二つの容貌改善成分の組み合わせは、相乗的に機能して複合した利益をもたらす。小片は、マスカラとして利用したときにアイラッシュを長くかつ濃くすることを達成するにあたって繊維を助ける。あるいは、一般的な化粧品もしくはスキンケア製品と組み合わせたときには、繊維が存在するために皮膚は自然な外見を有するが、それに加えて、小片がリンクルの被覆を促進する。繊維はまた、空気が通れるような自然な形で繊維が配向するため、水分が蒸発し得るというさらなる利益をもたらす。皮膚の表面に水分がもはや定着していないときに皮膚はより心地よさを感じる。さらに、もし繊維が疎水性であれば、その繊維は皮膚表面のアブラをはじき飛ばす可能性がある。しかし一方、親水性の繊維は皮膚表面から水分を蒸発させることができる。これらのような繊維は米国特許第6,306,407号で述べられている。
【0013】
繊維状成分は、適用されたときに皮膚の表面上でけば立った状態に見えることなくアライメント剤によって整然と配置されるのに十分な量が存在する。十分な量の繊維はまた、皮膚の表面に存在する本来の極微細な毛と同じような皮膚上の自然な外見を本組成物に与える。繊維状成分は、本組成物の約0.01〜約5.0重量%の量で存在し、好ましくは本組成物の約0.05〜1.0重量%の量で存在する。アイラッシュに適用される場合の繊維の量は、好ましくは本組成物の約0.2〜約2.0重量%である。
【0014】
上述のように繊維は小片と組み合わせることができる。加えて本発明の組成物は、容貌改善成分として小片をそれ単独で含むことができる。アライメント剤と組み合わせた小片は、アイラッシュを伸長及び/または濃くする効果をもたらし、あるいは皮膚表面のリンクルのより一層の被覆を実現する。小片は繊維と同様に縦につながって整列するが、2次元的にも整列して皮膚表面でのリンクルのより一層の被覆を実現する。小片は例えば、マイカ、オキシ塩化ビスマス、絹雲母、アルミナ、アルミニウム、銅、青銅、銀、もしくはシリカとすることができる。ソフトフォーカス材料と連携させる利用可能な小片の例には、Ikedaから入手できる製品である、球状のシリカビーズでコートされたマイカ(Velvetveil)、シリカビーズでコートされさらにTiO2でコートされたマイカ(Soft Vision)、それぞれ絹雲母及び架橋ポリスチレン、マイカ及び架橋ポリスチレンからなるもの(Ganzpearls GSC-30SR、及びGSC-30MC)が含まれる。アルミナの小片は酸化鉄によって処理することができ、商業的にはCardre Inc., South Plainfield, NJ からPearl Copper 1000として入手できる。それは茶色で光沢のある粉体(擦ったペニー銅貨に似ている)であり、約10〜約20ミクロン、好ましくは約14〜18ミクロンの粒子径を有している。小片は約0.1〜約10.0%、好ましくは約0.2〜5.0%の合計量で存在している。小片がSoft Vision である場合、ヘイズは約70〜90%(光の総透過に対する散光の比率)であり、光の総透過は約60〜80%であり、ヘイズは光の総透過よりも大きい。
【0015】
本組成物はまた、相性の良い担体を含む。本明細書及び特許請求の範囲中の「相性の良い担体」とは、アライメント剤と相性の良い、美容上許容できる任意の担体を意味する。担体は一つまたはそれ以上の油成分を含んでいても良い。その油成分は、水に実質的に不溶な薬学上もしくは美容上許容できる任意の物質であって良い。これらの物質は例えばthe CTFA International Dictionary of Cosmetic Ingredients、及びthe U.S. Pharmacopoeia、あるいはその他の同等な情報源に見出すことができる。適切な油成分としては、限定されるものではないが、ココナッツ油などの天然油、鉱物油及び水素化ポリイソブテンなどの炭化水素、オクチルドデカノールなどの脂肪アルコール、C12-15 安息香酸アルキルなどのエステル、プロピレングリコールジペラルゴネートなどのジエステル、トリオクタン酸グリセリルなどのトリエステル、ラノリンなどのステロール誘導体、蜜ろうなどの動物ろう、カルナウバなどの植物ろう、オゾケライトなどのミネラルワックス、パラフィンろうなどの石油ろう、ポリエチレンなどの合成ろう、及びそれらの混合物が含まれる。
【0016】
適切な油成分はシリコーンであっても良い。シリコーンオイルは、揮発性もしくは半揮発性、またはそれらの任意の組み合わせとすることができる。適切な揮発性油には、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、及びデカメチルシクロペンタシロキサン、もしくは揮発性で線状のジメチルポリシロキサン、またはそれらの混合物などの、環状及び線状のシリコーンが含まれる。その他の揮発性のシリコーンには、限定されるものではないが、シクロメチコン、ジメチコンなどのシリコーンポリマー、セチルジメチコン及びラウリルトリメチコンなどのシリコーンポリマーのアルキル化誘導体、ジメチコノールなどのシリコーンポリマーのヒドロキシル化誘導体、及びそれらの混合物が含まれる。 担体は、本組成物中に大体、好ましくは少なくとも約0.5〜約60重量%の量で存在するシリコーンオイルからなる。好ましくは、相性の良い担体は本組成物の柔らかくパウダリーな感触を高めるものである。特に好ましい担体は低揮発性のシリコーンオイルである。
【0017】
本発明の組成物は一つまたはそれ以上の膜形成剤を含む。膜形成剤の使用によってまた本組成物の磨耗性を改善することができ、また変質に対する抵抗性(transfer-resistance)をメーキャップ製品に付与することができる。有用な膜形成剤の例には、天然ワックス、ポリマー、例えばポリエチレンポリマー及びPVPのコポリマー、ジメチコンガム、並びに樹脂、例えばセラック、ポリテルペン、及び各種のシリコーン樹脂が含まれる。好ましくは、膜形成剤は全組成物の約0.1〜約20重量%の量で用いられる。
【0018】
本発明の組成物は、ポリウレタン及び、例えばトリメチロール架橋ポリウレタンのようなその誘導体を含むこともできる。本組成物は繊維が入っているために柔らかくパウダリーな感触を有するが、ポリウレタンの存在もまた乾燥したパウダリーな感触に貢献する。ポリウレタン は本組成物を皮膚に適用し易くするスリップ剤である。したがって、本組成物は油を加える必要なしに皮膚に対して滑らかに適用され、なおかつ皮膚上でだれたり固まったりしない。
【0019】
本発明はまた、アライメント剤を含む本発明の組成物を皮膚に適用することによって角質表面上に容貌改善成分を整列させる方法も含む。本組成物は、皮膚上に見えるリンクルを低減し、皮膚を自然な外観のままにすることによって角質表面を改善する。容貌改善成分はまた、それがもっぱら繊維のみを含む場合マスカラ組成物で特に有用なものであり、それによって、アイラッシュに適用した際、アイラッシュ上に繊維が整然と秩序化されることによってアイラッシュの長さが長くなることになる。アライメント剤としてSAIBが存在するために、アイラッシュ上での繊維の秩序正しい配列は特に促進される。
【0020】
本化粧品もしくは医薬品組成物の利点は、例えばマスカラ、ファンデーション、リップスティック、及びリップグロスなど任意のタイプのメーキャップ組成物において得ることができる。好ましい実施形態では、本発明の組成物はマスカラに使用される。本発明の別の実施形態では、本組成物は繊維状成分を含むファンデーションもしくはリップスティックであり、その場合には組成物中に一つまたはそれ以上のワックス(ろう)も配合することが望ましいであろう。「ワックス」の用語は、伝統的な意味でのワックス、すなわち主として高級脂肪酸とアルコールとのエステル、遊離高級脂肪酸とアルコールとのエステル、及び飽和炭化水素を含む植物、動物、もしくはミネラルワックスだけでなく、ワックスのような、すなわち室温において硬くてもろい、比較的ベタベタしない質感を有する例えばシリコーンワックスなどの合成樹脂製品をも包含する。適切なワックスの例には、これに限定されないが、カルナウバろう、カンデリラろう、蜜ろう、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレン、木ろう、合成ろう、セラックワックス、鯨ろう、ラノリンワックス、オゾケライト、ぬかワックス、セレシンろう、シロヤマモモろう、パラフィン、ライスワックス、ミンクワックス、モンタンワックス、オーリコーリ(ouricoury)ワックス、ホホバワックスなどが含まれる。
【0021】
本発明の化粧品組成物における、さらなる好ましい成分には一つまたはそれ以上の顔料が含まれる。有機、無機、またはそれを組み合わせた、美容上許容されるいずれの顔料も本発明のメーキャップ組成物に用いることができる。有用な無機顔料の例には、酸化鉄(黄、赤、茶、もしくは黒)、ウルトラマリン、水酸化クロム緑、酸化クロム、二酸化チタン(白)、フェロシアン化鉄、フェロシアン化鉄アンモニウム、及びそれらの混合物が包含される。
【0022】
有機顔料には、天然着色剤や、合成した単量体及び重合体の着色剤が包含される。D&CもしくはFD&C顔料として言及されているアゾ、トリフェニルメタン、インディゴ、アントラキノン、及びキサンチン色素のような芳香族化合物が典型である。また、アルミナ、バリウム、もしくはカルシウム水和物などの不溶性の基剤に有機色素を沈着及び吸収させることによって形成した顔料であるレーキも有用である。特に好ましいレーキは、主要なFD&CもしくはD&Cレーキ、及びそれらの混合物である。好ましい実施形態では、採用される顔料は疎水性になるよう処理される。そのような処理は油の漏出(breakthrough)を防ぐのを助け、さらには色を正確に保つのに役立つ。疎水性の表面処理の有用な例には、これに限定されないが、アミノ酸、シリコーン、メチコン、ジメチコン、シラン、ポリエチレン、金属石鹸、レシチン、ワックス、ナイロン、もしくはフッ素系の化学薬品が含まれる。顔料の濃度は最終製品の色によって変化するが、一般的には全組成物中約5.0〜約20重量%の範囲である。さらに、繊維それ自体を着色することもできる。
【0023】
顔料はまた、ソフトフォーカスの外観が得られる球状パウダーのような球状の散乱剤(scattering agent)とすることもできる。例えば、限定されるものではないが、ホウケイ酸アルミニウムカルシウム、PMMA、ポリエチレン、ポリスチレン、メチルメタクリレート架橋ポリマー(crosspolymer)、ナイロン-12、エチレン/アクリル酸コポリマー、窒化ホウ素、テフロン、もしくはシリカが包含される。本組成物はまた、少量のフィラーもしくは粉体を含むこともできる。そのような例には、シリカ、タルク、マイカ、でんぷん、ナイロン、カオリン、オキシ塩化ビスマス、もしくはこれらの各々が例えばレシチン、シリコーン、アミノ酸、脂肪酸、脂肪アルコールや、金属石鹸によってコーティングされたものが包含される。添加したフィラーもしくは粉体は、乾燥したパウダリーな感触を強める。
【0024】
本組成物における別の任意的な成分はステアリン酸金属塩である。その金属は、亜鉛、カルシウム、銅、アルミニウム、リチウム、及びマグネシウムから構成する群から選択される。ステアリン酸金属塩が存在することによって、本組成物が変質に対する抵抗性(transfer resistance)を有するようになり、また組成物の感触も改善される。
【0025】
本組成物はまた、他の任意の成分として、限定されるものではないが、メトキシケイ皮酸オクチルなどの油溶性の日焼け止め剤、酸化亜鉛などの粒子状の日焼け止め剤、BHTなどの油溶性の酸化防止剤及び/または保存料、EDTA二ナトリウムなどのキレート剤、ピネンなどの芳香剤、香料添加剤、PVP/エイコセンコポリマーなどの防水剤、シリコーンコポリオールもしくは脂肪酸グリセロールエステルなどの界面活性剤、トコフェノール及びその誘導体もしくはレチノール及びその誘導体などの油溶性の活性剤などを包含することができる。
【実施例】
【0026】
本発明を、以下の限定されない実施例によってさらに説明する。
【0027】
I.マスカラ処方
(フェーズ1)
精製水 20.0
ナイロン-6 0.3
二酸化チタン 0.2
酸化鉄(黒) 8.0
(フェーズ2)
ベントナイト 5.0
精製水 25.0
ブチレングリコール 1.5
パラベン 1.0
(フェーズ3)
ステアリン酸グリセリル 10.0
カルナウバろう 2.5
合成ろう 2.5
アライメント剤 3.0
(フェーズ4)
蒸留水 4.0
ポリビニルアルコール 1.0
アクリレート共重合体 5.0
アクリル酸アンモニウム共重合体 10.0
ブチレングリコール 1.0
【0028】
上記処方で示したフェーズ1の構成成分を高速度プロペラミキサーを用いて混合する。混合した後、フェーズ1の構成成分をフェーズ2の成分と組み合わせ、ベントナイトが完全に分散するまで混合し、約85℃まで加熱する。フェーズ1とフェーズ2の成分を組み合わせたものにフェーズ3の成分を加え、約60℃まで冷却する。フェーズ4の成分と、フェーズ1、2、及び3を組み合わせたものとを一体とし、混合して、約32℃まで冷却する。
【0029】
II.伸長化についての測定
本発明の上記例Iによる繊維及びアライメント剤を含むマスカラと、繊維及びアライメント剤を水で置換することによりそれらを除いたマスカラとを調製する。両方のマスカラを10人の女性パネリストにテストしてもらう。パネリストとして18才以上を選ぶように条件を付けた。彼女らは、例えば約0.6〜約0.9cmの中ぐらいの長さのアイラッシュを有している。選んだパネリストには2日間の二重盲式の調査に参加してもらい、評価はマスカラを付ける前(ベースライン)とマスカラを付けた後すぐとで行う。テストの当日は、パネリストはメーキャップをしないし保湿剤も使用しない。各パネリストは、ブラシに1回マスカラを付けて上側のラッシュにそのマスカラを40回撫で付け、ブラシに2回目のマスカラを付けるとともに下側のラッシュに40回撫で付ける。マスカラは、マスカラ容器の中でブラシを上下に往復させることなくブラシに付けるものとする。アイラッシュの画像をNikon Digitalカメラを用い2.5倍の倍率(ration)で取得する。右目と左目それぞれの画像を記録する。ベースライン画像は、再現性を保証するための後の調査に対して配置の指針として用いる。画像はデジタル化し、それを解析して「認識されるアイラッシュ長」を決定する。各測定時においては同一のアイラッシュのうちの5本から平均の長さを算出し、それによって「認識されるアイラッシュ長」を決定する。解析の結果から、アイラッシュの長さがベースラインより41%増加し、これによって角質表面が改善されることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非高分子系のアライメント剤及び美容的な改善をするため角質表面上に整列させられる容貌改善成分とを含んでなる、局所的に用いられる化粧品もしくは医薬品組成物。
【請求項2】
請求項1記載の組成物において、アライメント剤が37℃において少なくとも約5,000センチポイズの粘度を有していることを特徴とする組成物。
【請求項3】
請求項2記載の組成物において、アライメント剤がイソ酪酸酢酸スクロースであることを特徴とする組成物。
【請求項4】
請求項1記載の組成物において、容貌改善成分が繊維及び小片から構成される群から選択されることを特徴とする組成物。
【請求項5】
請求項4記載の組成物において、繊維がナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、シルク、綿、羊毛、亜麻、セルロース、ポリアミド、ビスコース、アセテート、アクリルポリマー、アラミド、レーヨン、ポリオレフィン、ガラス、シリカ、カーボン、ポリテトラフルオロエチレン、不溶性コラーゲン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、キトサン、ポリウレタン、ポリエチレン、及びそれらの混合物から構成される群から選択されることを特徴とする組成物。
【請求項6】
請求項5記載の組成物において、繊維がナイロンであることを特徴とする組成物。
【請求項7】
請求項5記載の組成物において、繊維が蒸発繊維(evaporating fiber)からなることを特徴とする組成物。
【請求項8】
請求項1記載の組成物において、さらに一つまたはそれ以上の顔料を含むことを特徴とする組成物。
【請求項9】
マスカラまたはファンデーションであることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項10】
少なくともイソ酪酸酢酸スクロースを含む非高分子系のアライメント剤と、伸長改善のため角質表面上に整列させられる繊維を含む容貌改善成分とを含んでなるマスカラ組成物。
【請求項11】
請求項10記載の組成物において、アライメント剤が組成物の約0.2〜20.0重量%の量で存在することを特徴とする組成物。
【請求項12】
請求項10記載の組成物において、繊維が組成物の約0.01〜約5.0重量%の量で存在することを特徴とする組成物。
【請求項13】
請求項10記載の組成物において、さらに膜形成剤を組成物の約0.1〜約20重量%の量で含むことを特徴とする組成物。
【請求項14】
請求項12記載の組成物において、一つまたはそれ以上の顔料を約0.1〜約30重量%の量で含むことを特徴とする組成物。
【請求項15】
容貌改善成分及び非高分子系のアライメント剤を組み合わせるステップと、容貌改善成分を角質表面上に配列させるステップとを包含する角質表面を改善する方法。
【請求項16】
請求項15記載の方法において、角質表面がアイラッシュ、唇、または皮膚であることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項15記載の方法において、容貌改善成分が繊維または小片であることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項16記載の方法において、整列させることがアイラッシュの伸長または唇もしくは皮膚のリンクルの被覆であることを特徴とする方法。

【公表番号】特表2006−516269(P2006−516269A)
【公表日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−518559(P2005−518559)
【出願日】平成16年1月5日(2004.1.5)
【国際出願番号】PCT/US2004/000124
【国際公開番号】WO2004/062579
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
テフロン
【出願人】(598173764)カラー アクセス,インコーポレイティド (14)
【Fターム(参考)】