説明

化粧料の製造方法

【課題】気泡の安定性が高く、その合一が効果的に防止され、かつ均一であり、また着色成分の凝集に起因する色調の変化が起こりにくい化粧料を製造し得る方法を提供すること。また、化粧の仕上がりが良好で、また使用感の良好な化粧料を製造し得る方法を提供すること。
【解決手段】25℃において固体の油性成分を1種以上含む配合原料を加熱下に混合させて流動体となし、得られた該流動体を連続式混合装置内を通過させることで冷却する化粧料の製造方法である。気体又は該気体を含む気液分散体を連続式混合装置内へ連続的に供給し、流動体と、流動体の温度が油性成分の固化開始温度以上で混合させながら、該流動体を該連続式混合装置内で冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワックス等の油性成分を含む化粧料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料の製造に関し、本出願人は先に、加熱溶融した油性成分に、水性成分を添加して乳化した後、プロペラで撹拌しながら冷却後、ホモミキサーを用いて撹拌する技術を提案した(特許文献1参照)。この方法によれば、化粧料中に含まれるワックス等の油性成分の配合量を高めることができるので、化粧持続性が向上するという利点がある。
しかし、乳化を一層均一に行うことで、化粧料の外観色、使用感及び保存安定性等を更に高めたいとの要求がある。
それらの要求に対して振動式攪拌装置を用いた化粧品の技術を開発し特許出願をおこなった(特許文献2参照)。
【0003】
この技術とは別に、振動式攪拌機を用いて、シール材組成物に多数の独立気泡を均一に分散させたシール材の製造方法に関する技術が知られている(特許文献3参照)。しかし同文献には、固体の油性成分に関する記載がなく、化粧料の製造方法については何ら記載されていない。また同文献に記載の振動式攪拌機は、シール材組成物に多数の独立気泡を均一に分散させる混合機であり、混合すると同時に冷却する攪拌機ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−176825号公報
【特許文献2】特開2001−214212号公報
【特許文献3】特開2001−132846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前述した従来技術よりも各種の性能が一層向上した化粧料を製造し得る方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、25℃において固体の油性成分を1種以上含む配合原料を加熱下に混合させて流動体となし、得られた該流動体を連続式混合装置内を通過させることで冷却する化粧料の製造方法であって、
気体又は該気体を含む気液分散体を前記連続式混合装置内へ連続的に供給し、前記流動体と、該流動体の温度が前記油性成分の固化開始温度以上で混合させながら、該流動体を該連続式混合装置内で冷却する化粧料の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、気泡の安定性が高く、その合一が効果的に防止され、かつ均一な化粧料を得ることができる。また、化粧の仕上がりが良好で、使用感の優れた化粧料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の製造方法を実施する好適な装置を示す概略図である。
【図2】図1に示す振動式攪拌混合装置の縦断面の模式図である。
【図3】図1に示す振動式攪拌混合装置における攪拌体の要部拡大図である。
【図4】本発明の製造方法を実施する別の好適な装置を示す概略図である。
【図5】実施例1−1で得られた化粧料の顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を、その好ましい第1実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の方法に好適に用いられる装置の概略図が示されている。図1に示す装置10Aは、気体又は気体を含む気液分散体の加熱混合部15、油性成分を含む流動体の加熱混合部20及び冷却部30に大別される。加熱混合部15は、目的とする化粧料の配合原料のうち、後述する気体成分を初めとする第2の配合原料が充填され、該配合原料を加熱混合して気体又は気体を含む気液分散体となすために用いられるものである。加熱混合部20は、目的とする化粧料の配合原料のうち、油性成分を初めとする第1の配合原料が充填され、該配合原料を加熱下に混合して油性成分を含む流動体となすために用いられるものである。第1実施形態の冷却部30は、加熱混合部20で得られた流動体を、冷却部30内に連続的に供給される気体又は気体を含む気液分散体と混合させながら、該流動体を冷却部30内で冷却し、目的とする化粧料を得るために用いられるものである。
【0010】
気体又は気体を含む気液分散体の加熱混合部15は、混合装置16及び定量ポンプ17を備えている。混合装置16は、これに充填される第2の配合原料を混合攪拌させるための攪拌翼等の攪拌手段(図示せず)を備えている。また混合装置16は、これに充填される気体又は気体を含む気液分散体を所定の温度にまで加熱するための加熱手段(図示せず)を備えている。混合装置16の底部には、該装置16によって混合攪拌されて得られた、気体又は気体を含む気液分散体を取り出すための管18が接続されている。管18は、モーノポンプ等からなる定量ポンプ17に接続されている。定量ポンプ17は、管19を通じて気体又は気体を含む気液分散体を冷却部30に定量供給するために用いられる。
【0011】
油性成分を含む流動体の加熱混合部20は混合タンク21を備えている。混合タンク21は、混合タンク21を覆うジャケット22によって加熱又は冷却され、所定温度に調整される。混合タンク21内には攪拌翼23が設置されている。攪拌翼23は、シャフト24を介して混合タンク21外に設置されたモータ25に接続されており、回転可能になっている。混合タンク21の底部には、該タンク21内で加熱混合されて得られた流動体を取り出すための管26が接続されている。管26は弁27を介して定量ポンプ28に接続されている。定量ポンプ28は、管29を通じて流動体を冷却部30に定量供給するために用いられる。定量ポンプ28としては、気体又は気体を含む気液分散体の加熱混合部15に備えられたポンプ17と同様のものが用いられる。
【0012】
第1実施形態の冷却部30は、連続式混合装置として振動式攪拌混合装置40を備えている。振動式攪拌混合装置40は、略筒状の構造を有し、その一端側に、管29に接続された第1流入口31A及び管19に接続された第2流入口31Bを有し、他端側に吐出口32を有している。吐出口32は吐出用管33に接続されている。第2流入口31Bは、第1流入口31Aよりも下流側(図1中、上側)に位置している。加熱混合部20で得られた油性成分を含む流動体は、第1流入口31Aを通じて振動式攪拌混合装置40内に連続供給される。ここで言う流動体の「連続供給」とは、工程全体として連続的あればよく、完全に連続的であることを要しない。したがって、一定期間又は不定期に断続的に供給を行う場合や、間欠的に供給を行う場合も、本明細書で言う「連続供給」に包含される。一方、加熱混合部15で得られた気体又は気体を含む気液分散体は、第2流入口31Bを通じて振動式攪拌混合装置40内に連続供給される。ここで言う気体又は気体を含む気液分散体の「連続供給」とは、流動体の「連続供給」と同様に、一定期間又は不定期に断続的に供給を行う場合や、間欠的に供給を行う場合も、本明細書で言う「連続供給」に包含される。油性成分を含む流動体は、気体又は気体を含む気液分散体と、振動式攪拌混合装置40内で混合されながら、振動式攪拌混合装置40内で冷却され、吐出口32を通じて吐出用管33の端部から吐出される。
【0013】
油性成分を含む流動体は、振動式攪拌混合装置40内で、気体又は気体を含む気液分散体と混合されながら、該装置40内を移動する間に好適には連続的に冷却される。流動体の連続的な冷却を行うために、第1実施形態の振動式攪拌混合装置40には、流入口31A側から吐出口32側に向けて4つのジャケット34,35,36,37がこの順で取り付けられている。各ジャケットにはそれぞれ冷却水が循環するようになっている。冷却水の温度は、適宣設定することが可能であり、これらのジャケットによって、油性成分を含む流動体を流入口31A側から吐出口32側に向けて連続的に冷却させることができる。なお、流動体の冷却は連続的であることを要せず、流動体が振動式攪拌混合装置40を通過する間に最終的に冷却されれば、冷却の過程は問われない。したがって、振動式攪拌混合装置40内を流動体が通過する間に、途中、一定温度の状態や加熱状態があっても差し支えない。また、冷却が段階的であっても差し支えない。尤も、振動式攪拌混合装置40による流動体の冷却は、該流動体の安定性の観点から連続的に行われることが好ましい。そのための一手法として、独立に制御できる冷却装置を振動式攪拌混合装置40に取り付け、該冷却装置を複数組み合わせることも好ましい。
【0014】
図2には、第1実施形態の振動式攪拌混合装置40の縦断面の模式図が示されている。装置40は、管状のケーシング41内に、駆動軸42と、該駆動軸42に取り付けられた攪拌羽根43とからなる攪拌体44を備えている。駆動軸42は、バイブレータ45aによって軸方向に沿って上下振動するようになされている。
【0015】
ケーシング41は、その横断面が円形である管状のものであり、その下部付近に第1流入口31Aが設けられている。第1流入口31Aよりも下流側(図2中、上側)には第2流入口31Bが設けられている。ケーシング41の上部付近には吐出口32が設けられている。第1流入口31Aから流入した油性成分を含む流動体は、第2流入口31Bから流入した気体又は気体を含む気液分散体とケーシング41内で混合されながら、該ケーシング41内を通って冷却され、吐出口32から吐出される。
【0016】
ケーシング41内には、上述の攪拌体44が配されている。攪拌体44の駆動軸42は、ケーシング41の長手方向(縦方向)に延びている。駆動軸42の上端は、ジョイント45bを介してバイブレータ45aに接続されている。バイブレータ45aは、モータ(図示せず)とその出力軸に接続された公知のカム機構(図示せず)を備えている。カム機構は、回転部(図示せず)と揺動部(図示せず)からなる。回転部は、モータの出力軸に対して偏心して取り付けられている。揺動部は、回転部の偏心回転によって揺動するようになっている。そして、揺動部の揺動が駆動軸42に上下振動として伝達される。
【0017】
ケーシング41の内壁には、円環状の仕切部46が複数設けられている。仕切部46はいずれも同形であり、ケーシング41の内壁から水平方向へ突出している。仕切部46の中央に形成された円孔には、駆動軸42が挿入される。この円孔の直径は、駆動軸42の直径よりも大きくなっている。隣り合う2つの仕切部によってケーシング41の内部は複数の混合室47が画成される。混合室47は、ケーシング41の長手方向(縦方向)に沿って直列配置される。
【0018】
図3(a)及び(b)には、攪拌体44の要部拡大図が示されている。攪拌体44は、駆動軸42とその周面に螺旋状に取り付けられた攪拌羽根43とを備えている。同図においては、攪拌羽根43は3周の螺旋状に取り付けられている。この状態の攪拌体44を一組として、ケーシング41内には、各混合室47内に攪拌体44が配されている。したがって攪拌体44の組数は、混合室47の数と同じになっている。それぞれの組の攪拌体44において、攪拌羽根43の螺旋の方向は同じになっている。
【0019】
それぞれの組の攪拌体44における攪拌羽根43には1個以上の開孔48及び/又は1個以上の切り欠き49が設けられている。開孔48及び切り欠き49は、攪拌体44を駆動軸42の軸心方向からみたときに(図3(a)参照)、上下で隣り合う攪拌羽根43どうしで形成位置が一致しないように設けられている。この理由は、軸方向での短絡流の発生を防止して、攪拌混合効果を高めるためである。
【0020】
以上のとおりの構成を有する振動式攪拌混合装置40としては、例えば特開平4−235729号公報に記載のもの等を用いることができる。また振動式攪拌混合装置40として、例えば冷化工業(株)製のバイブロミキサー(登録商標)が挙げられる。
【0021】
以上の構成を有する装置10Aを用いた化粧料の製造方法について説明すると、25℃において固体の油性成分(以下、この油性成分を「固体脂」ともいう。)を1種以上含む第1の配合原料が、混合タンク21内に充填される。第1の配合原料は、目的とする化粧料の具体的な用途に応じ適切なものが用いられる。例えば第1の配合原料としては、25℃において固体の油性成分のほかに、25℃において液体の油性成分や、顔料及び光輝性粉体などの粉体成分などが用いられる。しかし、第1の配合原料中には気体は含まれていない。第1の配合原料の充填が完了したら、混合タンク21を加熱して第1の配合原料中に含まれている固体脂を溶融状態にする。加熱温度は、固体脂の融点に応じて適宜設定することができる。一般的には最も融点の高い固体脂の融点よりも10℃程度高めに設定することが好ましい。加熱によって固体脂が融解し、第1の配合原料全体が溶融して油性成分を含む流動体となる。この状態下に攪拌翼23を回転させることで混合タンク21内を攪拌し、第1の配合原料を十分に均一混合分散させる。油性成分を含む流動体は、第1の配合原料の種類に応じ、油性の溶液、油性成分を含む分散液、水中油型乳化物、又は油中水型乳化物であり得る。
【0022】
別法として、第1の配合原料のうち、主として油性成分を予めホモミキサーやディスパーなどの予備分散手段(図示せず)を用いて予備分散させた後、これによって得られた予備分散物を混合タンク21内に充填するとともに、第1の配合原料のうちの残部(例えば粉体成分)を該タンク21に充填し、両者を該タンク21内で加熱混合して油性成分を含む流動体を得てもよい。
【0023】
一方、気体又は気体を含む気液分散体の加熱混合部15における混合装置16内に、第2の配合原料が充填され、均一混合される。第2の配合原料は、目的とする化粧料の具体的な用途に応じ適切なものが用いられる。例えば第2の配合原料には、気体のほかに、気体以外の成分として、例えば、後述する水(精製水)、水溶性有機溶剤、水溶性無機金属塩、水溶性高分子、界面活性剤、液体の油性成分及びそれらの2種以上の組み合わせが用いられる。第2の配合原料の充填が完了したら、混合装置16を加熱して気体又は気体を含む気液分散体を所定の温度にまで加熱する。
【0024】
気体を含む気液分散体は、混合装置16内において、気体と、気体以外の他の第2の配合原料の成分を必要に応じ加熱しながら混合することで得られる。気体を含む気液分散体とは、微細な気泡が、気体以外の他の第2の配合原料の成分中に見かけ上均一に分散している状態であって、例えば、液状、ペースト状、或いはホィップクリーム状のような状態をいう。これら各成分の配合量は、目的とする化粧料の具体的な用途に応じ適切に選択される。気液分散体中の気体量は、化粧料中での気体含有効果を高める観点から1%以上が好ましく、気液分散体の安定性を高める観点から70%以下が好ましい。
【0025】
第1実施形態の装置10Aを用いた製造方法においては、目的とする化粧料の成分を、第1の配合原料と第2の配合原料とに振り分け、各配合原料を上述のとおり、加熱混合部20及び加熱混合部15にそれぞれ供給することができる。あるいは目的とする化粧料の成分を、第1の配合原料及び第2の配合原料並びに第3の配合原料に振り分け、第1及び第2の配合原料を、加熱混合部20及び加熱混合部15にそれぞれ供給するとともに、第3の配合原料を、後述するように、振動式攪拌混合装置40の途中から該装置40内に直接供給することもできる。第3の配合原料としては、後述するように、熱に弱い成分などが好ましい。
【0026】
加熱混合部20において油性成分を含む第1の配合原料が十分に混合し、かつ所定の温度に達したら、混合タンク21の底部に取り付けられた弁27を開き、タンク21内の流動体を取り出す。流動体は定量ポンプ28に導入され、その一定量が振動式攪拌混合装置40に供給される。また、定量ポンプ28には、該流動体が振動式攪拌混合装置40内を通過するための押し出し圧力源としての働きもある。振動型攪拌装置40へ導入される流動体の空塔速度は5〜120hr-1であることが好ましい。振動型攪拌装置40へ導入される流動体の粘度は、導入される温度において、5〜10000mPa・s、特に10〜1000mPa・sであることが好ましい。
【0027】
加熱混合部15においても同様に、第2の配合原料が十分に混合したら、混合装置16の底部に取り付けられた弁(図示せず)を開き、混合装置16内の気体又は気体を含む気液分散体を取り出す。気体又は気体を含む気液分散体は定量ポンプ17に導入され、その一定量が振動式攪拌混合装置40に供給される。第2の配合原料が気体のみの場合には、振動型攪拌装置40へ導入される気体の空塔速度は0.1〜100hr-1であることが好ましく、気体を含む気液分散体の場合には、振動型攪拌装置40へ導入される気液分散体の空塔速度は0.5〜300hr-1であることが好ましい。
【0028】
なお、図1には示していないが、第1の配合原料を用いて油性成分を含む流動体を得る場合、混合タンク21で得られた流動体を直接に振動式攪拌混合装置40へ供給することに代えて、インラインホモミキサーやマイルダー等の連続式分散装置を通過させた後に振動式攪拌混合装置40へ供給してもよい。これらの装置を用いることによって油性成分が一層微細に分散した流動体を得ることができる。
【0029】
第1実施形態の振動式攪拌混合装置40には、上述のとおり4つのジャケット34,35,36,37が取り付けられており、それぞれのジャケットには、所定温度の冷却水が循環して、油性成分を含む流動体の冷却のための熱交換が行われる。例えば、ジャケット34には熱水が循環し約90℃に保たれており、ジャケット35は約45〜50℃に保たれている。残りの二つのジャケット36,37はいずれも0〜10℃に保たれている。つまり振動式攪拌混合装置40には、第1の流入口31A側から吐出口32側に向けて低下する温度勾配が設けられている。
【0030】
先に述べたとおり、油性成分を含む流動体は第1の流入口31Aを通じて振動式攪拌混合装置40内に導入される。一方、気体又は気体を含む気液分散体は第1の流入口31Aよりも下流側に位置する第2の流入口31Bを通じて該装置40内に導入される。したがって、流動体を、振動式攪拌混合装置内40を通過させつつ、気体又は気体を含む気液分散体を該装置40内に供給することになる。換言すれば、流動体が振動式攪拌混合装置内40を移動しながら、該装置40内において流動体と、気体又は気体を含む気液分散体とが合流する。上述のとおり、振動式攪拌混合装置40は冷却水によって冷却されているので、流動体と、気体又は気体を含む気液分散体とが合流する時点では、該流動体の温度は、該装置40内に供給されたときの温度よりも低下している。つまり、流動体は、振動式攪拌混合装置40に供給されたときの温度よりも低い温度になった状態で、気体又は気体を含む気液分散体と合流する。尤も、流動体の温度が低下し過ぎた時点で気体又は気体を含む気液分散体と合流すると、両者の混合に支障を来すので、気体又は気体を含む気液分散体は、25℃において固体である油性成分の固化開始温度以上の温度で振動式攪拌混合装置40内に供給され、かつ固化開始温度以上の温度の流動体と合流することが好ましい。この場合、合流時の流動体の温度は、固化開始温度以上の温度とする。流動体と、気体又は気体を含む気液分散体とが合流するときの各温度は、同じでもよく、あるいは異なっていてもよい。気体又は気体を含む気液分散体の供給温度及び流動体との合流温度の上限は150℃とすることが好ましい。気体又は気体を含む気液分散体と合流するときの流動体の温度の上限も150℃とすることが好ましい。
【0031】
前記の固化開始温度は、油性成分を含む流動体を、示差走査熱量計(DSC)を用い、10℃/minの加熱速度で150℃まで昇温した後、2℃/minの冷却速度で降温したときの、発熱ピークの立ち上がる温度として測定される。
【0032】
振動式攪拌混合装置40においては攪拌体44がその軸方向に沿って上下に振動することで、ケーシング41内を通過する流動体及び気体又は気体を含む気液分散体が攪拌体44に沿った流れと、攪拌羽根43に設けられた開孔48及び切り欠き49を通る流れの乱れによって混合される。特に油性成分を含む流動体は、例えば約90℃という高温に保たれているジャケット34に対応する位置から供給されるので、供給された時点は流動性が高い状態になっている。したがって攪拌体44の振動によって混合が促進されて、上述の混合タンク21内での混合に引き続き再分散が行われ、その後に気体又は気体を含む気液分散体と合流することになる。
【0033】
ジャケット34に対応する位置から供給された油性成分を含む流動体は、ジャケット35に対応する位置まで押し出され、この位置で気体又は気体を含む気液分散体と合流する。この位置の温度は、ジャケット34に対応する位置の温度よりも低いので、流動体は冷却されて、その流動性が若干低下した状態で気体又は気体を含む気液分散体と合流する。この場合、流動体及び気体又は気体を含む気液分散体は、攪拌体44に沿った流れと、攪拌羽根43に設けられた開孔48及び切り欠き49を通る流れの乱れによって混合されながら冷却、更に振動式攪拌混合装置40内にはデッドスペースが殆ど存在しないので、冷却むらや攪拌むらが生じにくい。しかも振動式攪拌混合装置40は、流動体及び気体又は気体を含む気液分散体の流動性が高い場合でも低い場合でも良好な攪拌混合を行うことができる。振動式攪拌混合装置40が有するこれらの利点に起因して攪拌混合時の発熱量が小さくなるので、第1実施形態の装置10Aを用いた本製造方法においては、固化した固体脂の粒子が融着しやすいという二軸ブレンダーを用いた従来法が有する欠点がない。よって、油性成分の粒子を良好に分散させることが可能となる。発熱量が小さいことは、温度制御が容易であるという点からも有利である。
【0034】
流動体は、ジャケット35に対応する位置で、気体又は気体を含む気液分散体と混合されながら、冷却され、次いでジャケット36,37に対応する位置へ順次押し出され、当該位置で更に冷却される。このようにして、流動体は連続的に冷却され、目的とする化粧料が、振動式攪拌混合装置40の吐出口32を経て吐出用管33から吐出される。この状態での化粧料の温度は約30℃となる。ここで、油性成分を含む流動体を、気体と混合する場合には、流動体の冷却の間、該流動体には大きな剪断力が加わらないので、気体の微細な気泡が、流動体のバルク中に多数形成され、これらの気泡の周りに固体脂が晶析して安定化した気泡(バブルカプセル化した気泡)となる。この安定化した気泡(バブルカプセル化した気泡)が破壊されずに流動体中に均一分散する。また、油性成分を含む流動体を、気体を含む気液分散体と混合する場合には、流動体の冷却の間、該流動体には大きな剪断力が加わらないので、気体を含む気液分散体の微細な気泡が、流動体のバルク中に多数分散される。これらの気泡の周りに固体脂が晶析してバブルカプセル化した気泡となり、バブルカプセル化した気泡が破壊されずに流動体中に均一分散する。バブルカプセル化した気泡が流動体中に均一分散すると、気泡の合一が生じづらくなり、得られる化粧料の保存安定性が向上する。
また、固体脂の配合量を多くしても軽い使用感の化粧料となる。バブルカプセル化した気泡は、その直径が好ましくは1〜100μm程度の球状ないし略球状のものである。
【0035】
固体脂の固化開始温度以上の温度で、流動体と、気体又は気体を含む気液分散体とが合流・混合することで、気泡は首尾よくバブルカプセル化する。また、また剪断力が低い装置を用いることでバブルカプセル化した気泡が破壊されにくくなる。剪断力を低くして気泡の破壊を防止ししようとすると、混合不足に起因して顔料の凝集や気泡の合一、生産性の低下等の不都合が生じる。要するに、バブルカプセル化した気泡を流動体中に均一分散させ、化粧料の保存安定性を高めるためには、固体脂の固化開始温度以上の温度で、流動体と気体又は気体を含む気液分散体とを、剪断力が低くても均一に混合することができる振動式攪拌混合装置40内で合流・混合させ、該流動体を該装置40内で冷却することが好ましい。
【0036】
なお、目的とする化粧料中に熱に弱い成分が含まれている場合や、熱により化粧料に悪影響を与える成分が含まれている場合には、当該成分を混合装置16又は混合タンク21へ充填せず、振動式攪拌混合装置40の途中の位置から該装置40内に直接供給することで、熱に起因する不都合を回避することが可能である。例えば、ジャケット35に対応する位置においては、流動体はある程度冷却されているので、定量ポンプを用いて当該位置に前記熱に弱い成分を供給することで、熱に起因する不都合を回避できる。振動式攪拌混合装置40による流動体の攪拌混合は、ほぼピストンフローなので、該装置40の途中から前記熱に弱い成分を供給しても、該成分と流動体との混合を首尾良く行うことができる。前記熱に弱い成分としては、例えばある種の活性剤、揮発成分、ラテックス、香料、植物性エキス、ワックス微分散物などの、温度変化しやすい成分が挙げられる。かかる成分の供給のために、振動式攪拌混合装置40には、その途中に補助注入口(図示せず)を1ヶ所又は複数設けることができる。
【0037】
振動式攪拌混合装置40を用いた冷却においては、平均冷却速度を0.1〜5℃/secに設定することが好ましい。平均冷却速度は、振動式攪拌混合装置40に流動体が入ったときの温度と、該装置40から目的とする化粧料(冷却された流動体)が出たときの温度の差を滞留時間で除した値である。また、振動式攪拌混合装置40の振動数は5〜30ストローク/secの範囲が好ましい。更に、振動式攪拌混合装置40で冷却される間に与えられる総振動量は、50〜100000ストローク、特に200〜20000ストロークであることが好ましい。
【0038】
次に、本発明で製造される化粧料の主たる原料について説明する。混合タンク21に充填される第1の配合原料には、上述のとおり、25℃において固体の油性成分が少なくとも含まれる。25℃において固体の油性成分はその固化開始温度が40〜150℃、特に50〜80℃であることが好ましい。
【0039】
目的とする化粧料においては、25℃において固体の油性成分の量は、1〜70質量%、特に5〜60質量%であることが好ましい。従来法でこのような処方(つまり、25℃において固体の油性成分の配合量を高くする処方)を採用すると、冷却過程において激しく増粘するため、攪拌混合が困難になる。これに対して、第1実施形態の装置10Aを用いれば、25℃において固体の油性成分の配合量を高くしても、十分な攪拌混合が可能である。25℃において固体の油性成分の配合量を高くできることは、化粧持ちを高める観点から有利である。
【0040】
前記の25℃において固体の油性成分の代表的な例はワックスである。ワックスは、固体/液体の可逆変化をし、30〜150℃の融点固化開始温度を有するものを広く包含する。ワックスの融点固化開始温度は、好ましくは45〜150℃、特に好ましくは50〜80℃である。本発明においては、このワックスを1種、又は弾性率調整の点から2種以上用いることができる。具体的には、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、シリコーンワックス、セレシン、カルナウバロウ、ライスワックス、ホホバワックス、キャンデリラロウ、鯨ロウ、ミツロウ、雪ロウ等が挙げられる。25℃において固体の油性成分以外の油性成分としては、脂肪酸やそのエステル炭化水素油等の25℃で液体の油剤や揮発油剤などが挙げられる。
【0041】
混合装置16に充填される第2の配合原料には、上述のとおり、気体のみ、又は気体と気体以外の成分とが含まれる。気体としては、空気、窒素ガス、炭酸ガス、その他の不活性ガス、および香気ガス等が挙げられ、これらを単独で或いは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。香気ガスを配合した場合は、バブルカプセル化することにより製造物に徐放性を付与することができる。
【0042】
化粧料には、水性成分を用いることもできる。水性成分としては、水(精製水)、水溶性有機溶剤、水溶性無機金属塩、水溶性高分子等が挙げられる。水溶性有機溶剤としては、例えばエタノール、グリセリン、ジプロピレングリコール等の一価及び多価アルコール等が用いられる。水溶性無機金属塩としては、例えば硫酸マグネシウム等が用いられる。水溶性高分子としては、例えばポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル等が用いられる。これらを単独で或いは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。水性成分は、必要に応じ、第1の配合原料及び/又は第2の配合原料に含有させる。
【0043】
化粧料には、界面活性剤を用いることもできる。界面活性剤としては、化粧品一般に用いられる非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。化粧料中におけるこれら界面活性剤の含有量は0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%が更に好ましい。界面活性剤は、必要に応じ、第1の配合原料及び/又は第2の配合原料に含有させる。
【0044】
前述の各成分以外に、化粧料に通常使用される成分、例えば粉体成分を、第1の配合原料及び/又は第2の配合原料に含有させることができる。粉体成分としては、コンジョウ、群青、ベンガラ、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、二酸化珪素、カーボンブラック、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マイカ、合成マイカ、合成セリサイト、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイトなどの無機粉体;雲母チタン、酸化鉄雲母チタン、アルミニウムパウダー等の光輝性粉体;有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体;微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン等の複合粉体などが挙げられる。これらの粉体は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。冷却に振動式攪拌混合装置を用いた本発明の製造方法によれば、強い剪断力がかからないので、特に剪断力により破砕しやすい光輝性粉体を破砕することなく高分散できるという利点がある。
【0045】
次に、本発明を、その好ましい第2実施形態に基づき、図4を参照しながら説明する。
第2実施形態の化粧料の製造方法については、第1実施形態の化粧料の製造方法と異なる点について説明する。特に説明しない点は、第1実施形態の化粧料の製造方法と同様であり、第1実施形態の化粧料の製造方法の説明が適宜適用される。
【0046】
図4には、本発明の方法に好適に用いられる装置の概略図が示されている。図4に示す第2実施形態の装置10Bは、加熱混合部20で得られた流動体を振動式攪拌混合装置40内に供給する前に、加熱混合部20で得られた流動体と加熱混合部15で得られた気体又は気体を含む気液分散体とを予め混合する連続式分散装置50を備えている。連続式分散装置50は、加熱混合部20及び加熱混合部15それぞれと管29,19を介して繋がっており、振動式攪拌混合装置40とジャケット34の位置で繋がっている。連続式分散装置50としては、スタティックミキサーなどの静置型混合機、インラインホモミキサー、マイルダー等が挙げられる。
【0047】
以上の構成を有する装置10Bを用いた化粧料の製造方法について説明すると、加熱混合部20で得られた油性成分を含む流動体を定量ポンプ28により管29を通じて連続式分散装置50内に供給すると共に、加熱混合部15で得られた気体又は気体を含む気液分散体を定量ポンプ17により管19を通じて連続式分散装置50内に供給する。このように、連続式分散装置50により、加熱混合部20で得られた流動体を振動式攪拌混合装置40内に供給する前に、加熱混合部20で得られた油性成分を含む流動体と加熱混合部15で得られた気体又は気体を含む気液分散体とを予め混合する。次いで、連続式分散装置50内で気体又は気体を含む気液分散体と混合された流動体を、ジャケット34に位置する流入口31を通じて振動式攪拌混合装置40内に連続供給し、振動式攪拌混合装置40内で流動体を連続的に冷却する。具体的には、予め気体又は気体を含む気液分散体と混合された流動体を、振動式攪拌混合装置40のケーシング41内に流入口31から供給し、ケーシング41のジャケット34に位置する混合室47内に供給された流動体を、上下に振動する攪拌体44によりジャケット35,36,37に対応する位置へ順次押し上げ、ケーシング41内を通過させることで連続的に冷却する。このようにして、流動体は連続的に冷却されるので、気泡の合一が抑制され、気泡粒径が細かくクリーミーな使用感の化粧料を製造することができる。本実施形態では、固体脂を含む流動体について固化開始温度以上が求められるのは、連続式分散装置50への供給段階である。
【0048】
以上の第1実施形態及び第2実施形態の方法によって製造された化粧料は、その配合原料の組成及び配合量に応じ、例えばまつ毛又は眉毛のメイクアップ用のマスカラやマユカラ、液状口紅、アイシャドウ、クリームファンデーションなどとして使用することができる。
【0049】
以上、本発明をその好ましい第1実施形態及び第2実施形態に基づき説明したが、本発明は第1実施形態及び第2実施形態に制限されない。
例えば第1実施形態及び第2実施形態においては、冷却部30の連続式混合装置として振動式攪拌混合装置40を用いたが、これに代えて、例えば掻き取り式熱交換機(例えば(株)櫻製作所製のオンレーター(登録商標))や連続式2軸混練機(例えば(株)スエヒロEPM製の2軸エクストルーダー(商品名))を用いることができる。
【0050】
また、第1実施形態及び第2実施形態においては、振動式攪拌混合装置40を一台用いているが、これに代えて、振動型攪拌混合装置40を2台以上直列に連結して使用することもできる。また、第1実施形態及び第2実施形態においては、目的とする化粧料の成分を、第1の配合原料と第2の配合原料とに振り分け、第1の配合原料を加熱混合部20に供給し、第2の配合原料を加熱混合部15に供給しているが、第1の配合原料及び第2の配合原料を、加熱混合部20に供給して混合し、それを振動型攪拌混合装置40に供給してもよい。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」及び「部」はそれぞれ「質量%」及び「質量部」を意味する。
【0052】
〔実施例1−1〕
表1の組成を有する油性のアイシャドウを、図1に示す装置を用いて調製した。1〜12の成分(固化開始温度は65℃)を85℃加熱下で、ホモミキサーで分散した後、これに13〜14の成分を投入し、混合タンク内で混合分散し油性の流動体とした。この油性の流動体を振動型攪拌混合装置(冷化工業(株)製のバイブロミキサー)の上流側のジャケット34から振動式攪拌混合装置へ定量ポンプで30g/min(空塔速度17hr-1)の流量で供給した。これとは別に、ヒーターで80℃に加熱した窒素ガスを、振動型攪拌混合装置の上流側から2ユニット目(ジャケット35の位置)へ定量ポンプで100cc/min(空塔速度56hr-1)の流量で供給した。油性の流動体を、振動型攪拌混合装置内を移動させつつ、これを窒素ガスと合流させ、装置内で攪拌して混合し、更に振動型攪拌混合装置内を移動させて連続的に30℃以下まで冷却し油性のアイシャドウを得た。振動式攪拌混合装置においてはジャケット34の温度は85℃、ジャケット35の温度は45℃、ジャケット36及びジャケット37の温度は0℃に設定した。平均冷却速度は0.7℃/secであった。振動型攪拌混合装置内に窒素ガスを注入した際の流動体の液温度は75℃であった。このようにして気泡を含有するアイシャドウを得た。得られた油性のアイシャドウに含まれる気泡量(ガスホールドアップ量)は60%、平均粒径は48μmであった。ガスホールドアップ量および平均粒径は、以下に示す方法により測定した。得られた油性のアイシャドウについて、以下の方法で使用感及び保存安定性を評価した。その結果を表2に示す。また、この油性のアイシャドウの顕微鏡写真を図5に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
〔ガスホールドアップ量の測定〕
本発明により得られた気泡を含有する化粧料、および、これと同一組成で気泡を含有しない化粧料の密度を、それぞれ比重瓶を用いて測定し、以下の式を用いて、気泡含有化粧料のガスホールドアップを計算した。
(ガスホールドアップ)[%]=(b−a)/a×100
a:気泡を含有する化粧料の密度、b:気泡を含有しない化粧料の密度
【0055】
〔平均粒径の測定〕
本発明により得られた気泡を含有する化粧料を光学顕微鏡で撮影し、画像解析ソフトを用いて、100個のバブルカプセル径を測定し、その体積平均値を求めた。
【0056】
〔保存安定性〕
透明容器で保存し、室温で1ヶ月静置保存後のアイシャドウに含まれる気泡量(ガスホールドアップ量)、および平均粒径を上記の方法により測定した。
【0057】
〔使用感〕
専門パネラーに実際に使用させて、使用感について評価させた。評価基準は以下のとおりである。
◎:非常に良い。
○:良い。
△:普通。
×:悪い。
【0058】
〔実施例1−2〕
実施例1−1において、図1に示す装置の備える冷却機を、振動型攪拌混合装置(バイブロミキサー)からオンレーターに変更する以外は、実施例1−1と同様にして油性のアイシャドウを得た。詳述すると、実施例1−1と同様に調製した油性の流動体をオンレーターへ定量ポンプで供給した。これとは別に、実施例1−1と同様に調製した窒素ガスを、オンレーターの途中から定量ポンプで供給した。油性の流動体を、オンレーター内を移動させつつ、これを窒素ガスと合流させ、装置内で攪拌して混合し、更にオンレーター内を移動させて連続的に30℃以下まで冷却し油性のアイシャドウを得た。オンレーターにおいては、ジャケットは0℃に設定し、平均冷却速度は0.3℃/secであった。オンレーターに窒素ガスを注入した際の流動体の液温度は75℃であった。このようにして気泡を含有するアイシャドウを得た。得られた油性のアイシャドウについて、実施例1−1と同様の評価をした。その結果を表2に示す。
【0059】
〔実施例1−3〕
実施例1−1において、図1に示す装置の備える冷却機を、振動型攪拌混合装置(バイブロミキサー)からエクストルーダーに変更する以外は、実施例1−1と同様にして油性のアイシャドウを得た。詳述すると、実施例1−1と同様に調製した油性の流動体をエクストルーダーへ定量ポンプで供給した。これとは別に、実施例1−1と同様に調製した窒素ガスを、エクストルーダーの途中から定量ポンプで供給した。油性の流動体を、エクストルーダー内を移動させつつ、これを窒素ガスと合流させ、装置内で攪拌して混合し、更にエクストルーダー内を移動させて連続的に30℃以下まで冷却し油性のアイシャドウを得た。エクストルーダーにおいては、ジャケットは0℃に設定し、平均冷却速度は0.5℃/secであった。エクストルーダーに窒素ガスを注入した際の流動体の液温度は75℃であった。このようにして気泡を含有するアイシャドウを得た。得られた油性のアイシャドウについて、実施例1−1と同様の評価をした。その結果を表2に示す。
【0060】
〔比較例1−1〕
実施例1−1において、配合成分からワックス(表1中の成分1〜3)を除いた以外は、実施例1−1と同様にして油性のアイシャドウを得た。詳述すると、表1の4〜12の成分を85℃加熱下で、ホモミキサーで分散した後、これに13〜14の成分を投入し、混合タンク内で混合分散し油性の流動体とし、これを振動型攪拌混合装置(バイブロミキサー)へ定量ポンプで供給した。これとは別に、実施例1−1と同様に調製した窒素ガスを、振動型攪拌混合装置の途中から定量ポンプで供給した。油性の流動体を、振動型攪拌混合装置内を移動させつつ、これを窒素ガスと合流させ、装置内で攪拌して混合し、更に振動型攪拌混合装置内を移動させて連続的に30℃以下まで冷却し油性のアイシャドウを得た。振動型攪拌混合装置においては、ジャケット温度は実施例1−1と同様に設定し、平均冷却速度は0.8℃/secであった。振動型攪拌混合装置に窒素ガスを注入した際の流動体の液温度は75℃であった。得られた油性のアイシャドウについて、実施例1−1と同様の評価をした。その結果を表2に示す。
【0061】
〔比較例1−2〕
実施例1−1において、図1に示す装置の備える冷却機を、振動型攪拌混合装置(バイブロミキサー)からアヂホモミキサーに変更する以外は、実施例1−1と同様にして油性のアイシャドウを得た。詳述すると、実施例1−1と同様に調製した油性の流動体(固化開始温度は65℃)及び窒素ガスを、アヂホモミキサーへ定量ポンプで供給した。油性の流動体及び窒素ガスを、アヂホモミキサー内で攪拌して混合させながら油性の流動体を30℃以下まで冷却し油性のアイシャドウを得た。アヂホモミキサーにおいては、ジャケットは0℃に設定した。アヂホモミキサーへの窒素ガスの注入は、流動体の温度が40〜75℃の範囲で連続的に行った。得られた油性のアイシャドウについて、実施例1−1と同様の評価をした。その結果を表2に示す。
【0062】
【表2】

【0063】
表2に示す結果から明らかなように、本発明の製造方法に従って製造された実施例1−1〜1−3の油性のアイシャドウは、比較例の方法で製造された比較例1−1〜1−2の油性のアイシャドウに比べて、使用感及び保存安定性に優れるものであることが判る。また、比較例の方法で製造された比較例1−1〜1−2の油性のアイシャドウは、気泡を含有しないものであった。それに対し、実施例1−1の油性のアイシャドウは、図5に示す顕微鏡写真から、気泡の周りに固体脂が晶析して安定化した気泡(バブルカプセル化した気泡)が形成されていることが判る。
【0064】
〔実施例2−1〕
表3の組成を有する水中油型(O/W型)マスカラを、図1に示す装置を用いて調製した。85℃にて溶解した水性成分(7〜14の成分)に、予め85℃にて溶解した油性成分(1〜6の成分)を添加し、これを85℃加熱下で、ホモミキサーで乳化処理した後、これを混合タンク内に投入しO/W型流動体とした(固化開始温度は59℃)。このO/W型流動体を振動型攪拌混合装置(冷化工業(株)製のバイブロミキサー)の上流側のジャケット34から振動式攪拌混合装置へ定量ポンプで45g/min(空塔速度25hr-1)の流量で供給した。これとは別に、孔径1μmのフィルター(SPGテクノ(株)製のSPG膜)を用いて調整した気液分散体(15〜16の成分)(窒素ガス分散体ともいう)をヒーターで80℃に加熱し、加熱された窒素ガス分散体を、振動型攪拌混合装置の上流側から2ユニット目(ジャケット35の位置)へ定量ポンプで36g/min(空塔速度20hr-1)の流量で供給した。O/W型流動体を、振動型攪拌混合装置内を移動させつつ、これを窒素ガス分散体と合流させ、装置内で攪拌して混合し、更に振動型攪拌混合装置内を移動させて連続的に30℃以下まで冷却しO/W型マスカラを得た。振動式攪拌混合装置においてはジャケット34の温度は85℃、ジャケット35、ジャケット36及びジャケット37の温度は5℃に設定した。平均冷却速度は0.7℃/secであった。振動型攪拌混合装置内に窒素ガス分散体を注入した際の流動体の液温度は80℃であった。このようにして気泡を含有するマスカラを得た。得られたO/W型マスカラに含まれる気泡量(ガスホールドアップ量)は20%であった。得られたO/W型マスカラについて、実施例1−1と同様の評価をした。その結果を表4に示す。
【0065】
【表3】

【0066】
〔実施例2−2〕
実施例2−1において、図1に示す装置の備える冷却機を、振動型攪拌混合装置(バイブロミキサー)からオンレーターに変更する以外は、実施例2−1と同様にしてO/W型マスカラを得た。詳述すると、実施例2−1と同様に調製したO/W型流動体をオンレーターへ定量ポンプで供給した。これとは別に、実施例2−1と同様に調製した窒素ガス分散体を、オンレーターの途中から定量ポンプで供給した。O/W型流動体を、オンレーター内を移動させつつ、これを窒素ガス分散体と合流させ、装置内で攪拌して混合し、更にオンレーター内を移動させて連続的に30℃以下まで冷却しO/W型マスカラを得た。オンレーターにおいては、ジャケットは5℃に設定し、平均冷却速度は0.3℃/secであった。オンレーターに窒素ガス分散体を注入した際の流動体の液温度は80℃であった。このようにして気泡を含有するマスカラを得た。得られたO/W型マスカラについて、実施例2−1と同様の評価をした。その結果を表4に示す。
【0067】
〔実施例2−3〕
実施2−1において、図1に示す装置の備える冷却機を、振動型攪拌混合装置(バイブロミキサー)からエクストルーダーに変更する以外は、実施例2−1と同様にしてO/W型マスカラを得た。詳述すると、実施例2−1と同様に調製したO/W型流動体をエクストルーダーへ定量ポンプで供給した。これとは別に、実施例2−1と同様に調製した窒素ガス分散体を、エクストルーダーの途中から定量ポンプで供給した。O/W型流動体を、エクストルーダー内を移動させつつ、これを窒素ガス分散体と合流させ、装置内で攪拌して混合し、更にエクストルーダー内を移動させて連続的に30℃以下まで冷却しO/W型マスカラを得た。エクストルーダーにおいては、ジャケットは5℃に設定し、平均冷却速度0.5℃/secであった。エクストルーダーに窒素ガス分散体を注入した際の流動体の液温度は80℃であった。このようにして気泡を含有するマスカラを得た。得られたO/W型マスカラについて、実施例2−1と同様の評価をした。その結果を表4に示す。
【0068】
〔比較例2−1〕
実施例2−1において、図1に示す装置の備える冷却機を、振動型攪拌混合装置(バイブロミキサー)からアヂホモミキサーに変更する以外は、実施例2−1と同様にしてO/W型マスカラを得た。詳述すると、実施例2−1と同様に調製したO/W型流動体及び窒素ガス分散体を、アヂホモミキサーへ定量ポンプで供給した。O/W型流動体及び窒素ガス分散体を、アヂホモミキサー内で攪拌して混合させながらO/W型流動体を30℃以下まで冷却しマスカラを得た。アヂホモミキサーにおいては、ジャケットは5℃に設定した。アヂホモミキサーへの窒素ガスの注入は、流動体の温度が40〜80℃の範囲で連続的に行った。得られたO/W型マスカラについて、実施例2−1と同様の評価をした。その結果を表4に示す。
【0069】
【表4】

【0070】
表4に示す結果から明らかなように、本発明の製造方法に従って製造された実施例2−1〜2−3のO/W型マスカラは、比較例の方法で製造された比較例2−1のO/W型マスカラに比べて、使用感及び保存安定性に優れるものであることが判る。また、比較例の方法で製造された比較例2−1のO/W型マスカラは、気泡を含有しないものであった。
【符号の説明】
【0071】
10A,10B 装置
15 気体又は気体を含む気液分散体の混合部
20 油性成分を含む流動体の加熱混合部
30 冷却部
40 振動式攪拌混合装置
41 ケーシング
42 駆動軸
43 攪拌羽根
44 攪拌体
50 連続式分散装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃において固体の油性成分を1種以上含む配合原料を加熱下に混合させて流動体となし、得られた該流動体を連続式混合装置内を通過させることで冷却する化粧料の製造方法であって、
気体又は該気体を含む気液分散体を前記連続式混合装置内へ連続的に供給し、前記流動体と、該流動体の温度が前記油性成分の固化開始温度以上で混合させながら、該流動体を該連続式混合装置内で冷却する化粧料の製造方法。
【請求項2】
25℃において固体の油性成分を1種以上含む配合原料を加熱下に混合させて流動体となし、得られた該流動体を連続式混合装置内を通過させることで冷却する化粧料の製造方法であって、
前記流動体の温度が前記油性成分の固化開始温度以上で、気体又は該気体を含む気液分散体と前記流動体とを予め混合させて前記連続式混合装置内へ連続的に供給し、該流動体を該連続式混合装置内で冷却する化粧料の製造方法。
【請求項3】
前記気体又は該気体を含む前記気液分散体を、前記油性成分の固化開始温度以上の温度で、前記連続式混合装置内へ供給する請求項1又は2記載の化粧料の製造方法。
【請求項4】
前記油性成分として、固化開始温度が40〜150℃のものを用いる請求項1ないし3のいずれかに記載の化粧料の製造方法。
【請求項5】
前記連続式混合装置として、管状のケーシング内に、駆動軸と、該駆動軸に取り付けられた攪拌羽根とからなる攪拌体を備え、該駆動軸が軸方向に振動するようになされている振動式攪拌混合装置を用いる請求項1ないし4のいずれかに記載の化粧料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−17262(P2012−17262A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153659(P2010−153659)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】