説明

化粧料用組成物およびそれを含有する化粧料

【課題】 滑らかで、光沢が良く、時間経過後の持続性が良好で水分、油脂、汗などによる化粧くずれが生じ難い化粧料を配合できる化粧料用組成物を提供し、併せてその化粧料用組成物を含有する化粧料を提供する。
【解決手段】 アクリレートまたはメタアクリレートの1種もしくは2種以上と、アクリレートシリコンまたはメタアクリレートシリコンとを重合させて共重合体の水中油型エマルジョンからなる化粧料用組成物を得る。こうして得られた化粧料用組成物を配合して化粧料を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば毛髪用、皮膚用、メイクアップ用の化粧料に配合される化粧料用組成物およびその化粧料用組成物を含有する化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、毛髪用、皮膚用、メイクアップ用の化粧料には、高分子化合物が配合されている。この理由は、高分子化合物を配合することにより、化粧料の光沢性を向上させることができ、また、毛髪用の化粧料の場合には、併せてセット保持力を向上させることができるからである。ここで、前記高分子化合物としては、例えば、ポリビニルピロリドン系高分子化合物、ポリ酢酸ビニル系高分子化合物、アクリル高分子化合物、ポリビニルエーテル系高分子化合物等が挙げられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述の高分子化合物を含有してなる化粧料では、光沢や滑らかさを十分に得ることができず、水分、皮脂、汗などによる化粧くずれを十分に防止できないという問題点がある。このような化粧くずれの防止が不十分であるという問題点は、高温多湿の夏期において特に顕著に表れることから、高温多湿下においても十分に化粧くずれが防止でき、かつ光沢に優れ滑らかな化粧料およびその化粧料に配合される化粧料用組成物の開発が望まれている。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、化粧料として配合されたときに、光沢が良く、滑らかさに優れた感触を付与することができ、かつ、水分、油脂、汗などによる化粧くずれの防止に優れた効果を発揮することができる化粧料用組成物を提供することを目的とし、併せて、その化粧料用組成物を含有する化粧料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意努力した結果、次式(1)
【化3】

(Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは炭素数1〜26のアルキル基またはアルコキシ置換アルキル基を示す。)
で示されるアクリレートまたはメタアクリレートの1種もしくは2種以上と、次式(2)
【化4】

(nは整数を示し、Rは水素原子またはメチル基を示す。また、Rは炭素数1〜12までのアルキル基またはアルキルエーテル基を示し、Rは炭素数1〜18のアルキル基またはアルコキシ置換アルキル基を示す。)
で示されるアクリレートシリコンまたはメタアクリレートシリコンとの共重合体の水中油型エマルジョンを、化粧料用組成物として化粧用に配合することにより、その化粧料に、優れた光沢、滑らかな感触および良好な化粧くずれの防止効果を付与できることを見出した。ここで、水中油型エマルジョンを化粧料に配合する方法としては、その化粧用に直接配合する方法や、顔料等に表面処理等した後に配合する方法が挙げられる。また、共重合体の重合方法としては、ラジカル乳化重合が適しているが、特に限定されるものではない。
【0006】
すなわち、前記目的を達成するために、本発明による化粧料用組成物は、
前記式(1)で示されるアクリレートまたはメタアクリレートの1種もしくは2種以上と、前記式(2)で示されるアクリレートシリコンまたはメタアクリレートシリコンとの共重合体の水中油型エマルジョンからなることを特徴とするものである(第1発明)。
【0007】
次に、第2発明による化粧料は、第1発明に記載の化粧料用組成物を含有してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
前記第1発明によれば、伸びが良く、皮膜形成性に優れるとともに、化粧料として配合されたときに、その化粧料に、優れた光沢、滑らかさを付与することができ、かつ、化粧くずれに対する良好な防止効果を付与することができる化粧料用組成物を得ることができる。
【0009】
また、前記第2発明によれば、光沢が良く、滑らかで、かつ水分、油脂、汗などによる化粧くずれが生じ難い化粧料を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明による化粧料用組成物およびそれを含有する化粧料の具体的な実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、アクリルとメタアクリルを同時に纏めて表示する際には、(メタ)アクリルという表記を用いることとし、アクリレートとメタアクリレートを同時に纏めて表示する際には、(メタ)アクリレートと表記することにする。
【0011】
本実施形態において、次式(1)
【化5】

(Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは炭素数1〜26のアルキル基またはアルコキシ置換アルキル基を示す。)
で示される(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートおよび、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0012】
また、前記(メタ)アクリレート以外に、必要に応じて種々の重合性モノマーを併用することもできる。この重合性モノマーとしては、例えば、スチレン、置換スチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、ブタジエン、アクリロニトリル、フッ化オレフィン等が挙げられる。
【0013】
一方、次式(2)
【化6】

(nは整数を示し、Rは水素原子またはメチル基を示す。また、Rは炭素数1〜12までのアルキル基またはアルキルエーテル基を示し、Rは炭素数1〜18のアルキル基またはアルコキシ置換アルキル基を示す。)
で示されるアクリレートシリコンまたはメタアクリレートシリコンは、ジメチルシロキサンの単位(整数n)を適度に選択することにより、付与されるシリコン特性を変化させることができる。ここで、アクリレートシリコンまたはメタアクリレートシリコンとしては、例えば、信越化学株式会社より製品名X−24−8201、X−22−174DX、X22−2426、X−22−2404で市販されているものを用いることができる。
【0014】
前記式(1)で示されるアクリレートまたはメタアクリレートの1種もしくは2種以上と、前記式(2)で示されるアクリレートシリコンまたはメタアクリレートシリコンとを重合させる方法としては、特に限定されるものではないが、ラジカル乳化重合が適している。
【0015】
このラジカル乳化重合に用いられる重合触媒としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化水素水、t−ブチルハイドロパーオキシド等の水溶性タイプのもの、ベンゾイルパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、アゾビスブチロニトリル等の油性タイプのものが挙げられる。
【0016】
使用し得る乳化剤としては、アルキル硫酸塩、アルキルアリル硫酸塩、スルホン酸塩、アニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンカルボン酸エステル等のノニオン性乳化剤が挙げられる。また、必要に応じて酸性亜硫酸ナトリウム、L−アスコルビン酸、糖類、アミン等の還元剤を併用してレドックス系の開始剤も用いることができる。
【0017】
重合時において、前記式(2)で示されるアクリレートシリコンまたはメタアクリレートシリコン単量体の全モノマー単量体中の仕込み配合比は、2〜50重量%とするのが好ましい。その理由は、その配合比が2重量%未満となった場合には、共重合体にシリコンの特性が発現し難くなり、50重量%を越えた場合には共重合体の塊が発生し易くなるためである。また、良好なエマルジョンを得るために、前記配合比を5〜40重量%とするのがより好ましい。
【0018】
なお、前記水中油型エマルジョンの、化粧料での配合比は、特に限定されることがなく、適当な範囲内で用いることができる。また、水中油型エマルジョンを配合する方法としては、直接化粧料に配合する方法の他、顔料に表面処理した後に配合する方法が挙げられる。
【実施例】
【0019】
次に、本発明による化粧料用組成物およびそれを含有する化粧料の具体的実施例について説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0020】
(製造実施例1)
メタアクリレートシリコンとして、前記式(2)
(n:25、R:−CH、R:−CHCHCH−、R:−CH
で示される信越化学株式会社製X−24−8201を採用し、このX−24−8201と、メチルメタクリレートと、n−ブチルアクリレートと、2−エチルへキシルアクリレートと、ポリオキシエチレンオレイルエーテルと、ラウリル硫酸ナトリウムと過硫酸ナトリウムとを表1の製造実施例1の欄に示される配合比率で配合し、精製水50重量%を添加して乳化させた。
【0021】
【表1】

【0022】
次いで、重合温度70℃で3時間重合させ、さらに温度85℃にまで上昇させて1時間熟成させた後冷却させ、アンモニア水を添加して中和させた。こうして、固形分50%の共重合体の水中油型エマルジョンを得た。
【0023】
(製造実施例2)
表1の製造実施例2の欄に示される配合比率を採用した他は、製造実施例1と同様にして、水中油型エマルジョンを得た。
【0024】
(製造実施例3)
表1の製造実施例3の欄に示される配合比率を採用した他は、製造実施例1、2と同様にして、水中油型エマルジョンをそれぞれ得た。
【0025】
(製造比較例)
X24−8201を用いず、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ラウリル硫酸ナトリウムおよび過硫酸ナトリウムを表1の製造比較例の欄に示される配合比率にて配合した他は、製造比較例1〜3と同様にして、水中油型エマルジョンを得た。
【0026】
次に、製造実施例1〜3、製造比較例で得られたそれぞれの水中油型エマルジョンを3日間40℃で乾燥させて合計4個の乾燥皮膜を形成し、これら各乾燥皮膜を試料とした張力試験を、次の試験条件にて行い、張力と伸度を測定した。この試験結果を図1にて示す。
【0027】
<乾燥皮膜の張力試験の試験条件>
引張り速度 :200mm/min
試験被覆幅 :10mm
チャック間距離:20mm
【0028】
この張力試験の結果、X−24−8201の配合比が低い製造実施例1、2の水中油型エマルジョンから形成された試料および、X−24−8201が配合されていない製造比較例の水中油型エマルジョンから形成された試料においては、各々の試料を500%伸ばすのに、1.0MPa前後の張力を必要としたが、X−24−8201の配合比が最も高い製造実施例3の水中油型エマルジョンにおいては、試料を500%伸ばすのに0.4MPa程度の張力しか必要としなかった。このことから、X−24−8201の配合比率が高い程(ただし、配合比は2〜50重量%の範囲内)、水中油型エマルジョンの伸びが良くなることが判明した。
【0029】
次に、回転式粘度計を用意し、製造実施例1〜3、製造比較例の水中油型エマルジョンそれぞれについての粘度試験を以下の試験条件にて行った。この結果を図2にて示す。
【0030】
<共重合体の水中油型エマルジョンの粘度試験条件>
製造実施例1〜3:回転式粘度計のロータの回転数60rpm
製造比較例 :回転式粘度計のロータの回転数30rpm
なお、製造比較例で得られた水中油型エマルジョンについても、ロータの回転数を60rpmに設定して測定を行おうとしたが、回転数60rpmの際の粘度レンジを越えていたため、測定を行うことができなかった。そのため、製造比較例で得られた水中油型エマルジョンのみロータの回転数を30rpmに落として測定を行った。
【0031】
この粘度試験の結果、X−24−8201の配合比率が高いほど、水中油型エマルジョンの粘度が低くなることが明らかにされた。このことは、X−24−8201の配合比率が高いほど皮膜形成性が向上することを意味している。
【0032】
(実施例1)
次に、前記製造実施例1で得られた水中油型エマルジョンを用いて、以下の配合比率にてマスカラを作成した。
配合比率(重量%)
(1)ステアリン酸 4.0
(2)ミツロウ 5.0
(3)カルナバロウワックス 3.0
(4)パラフィンワックス 3.0
(5)精製水 39.0
(6)プロピレングリコール 10.0
(7)トリエタノールアミン 3.5
(8)黒酸化鉄 10.0
(9)製造実施例1で得られた水中油型エマルジョン 20.0
(10)セスキオレイン酸ソルビタン 2.0
(11)防腐剤 適量
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
100.0
【0033】
以下に、マスカラの具体的な作成方法を説明する。
【0034】
前記(6)プロピレングリコール、(8)黒酸化鉄、(10)セスキオレイン酸ソルビタンを均一に加熱溶解し、この溶解物の中に(1)ステアリン酸、(2)ミツロウ、(3)カルナバロウワックス、(4)パラフィンワックスを均一に加熱溶解したものを添加して乳化させる。次いで、この乳化物に(5)精製水、(7)トリエタノールアミンおよび(11)防腐剤を混合してなる混合物を加えて均一に混合し、容器に充填してマスカラを得る。
【0035】
(実施例2)
製造実施例2で得られた水中油型エマルジョンを用いた他は、実施例1と同様にしてマスカラを得た。
【0036】
(実施例3)
製造実施例3で得られた水中油型エマルジョンを用いた他は、実施例1、2と同様にしてマスカラを得た。
【0037】
(比較例)
製造比較例で得られた水中油型エマルジョンを用いた他は、実施例1〜3と同様にしてマスカラを得た。
【0038】
次に、10人の被験者による官能試験を、実施例1〜3および比較例で得られたそれぞれのマスカラについて行った。その結果を表2に示す。
【0039】
【表2】

【0040】
この結果、メタアクリレートシリコン単量体を含む共重合体の水中油型エマルジョンよりなるマスカラ(実施例1〜3で得られたマスカラ)は、メタアクリレートシリコン単量体を含まないマスカラ(比較例で得られたマスカラ)に比べ、伸び(滑らかさ)等の使用感に優れ、光沢が良く、持続性が良好で、水分、油脂、汗などによる化粧くずれが生じ難いことが明らかになった。また、X−24−8201の配合比が高い程、伸び、光沢、時間経過後の持続性が良好になることが明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施例および比較例における乾燥皮膜の張力試験の結果を示すグラフ
【図2】本発明の実施例および比較例における粘度試験の結果を示すグラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(1)
【化1】

(Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは炭素数1〜26のアルキル基またはアルコキシ置換アルキル基を示す。)
で示されるアクリレートまたはメタアクリレートの1種もしくは2種以上と、次式(2)
【化2】

(nは整数を示し、Rは水素原子またはメチル基を示す。また、Rは炭素数1〜12までのアルキル基またはアルキルエーテル基を示し、Rは炭素数1〜18のアルキル基またはアルコキシ置換アルキル基を示す。)
で示されるアクリレートシリコンまたはメタアクリレートシリコンとの共重合体の水中油型エマルジョンからなることを特徴とする化粧料用組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の化粧料用組成物を含有してなることを特徴とする化粧料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−16306(P2006−16306A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−192596(P2004−192596)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(391015373)大東化成工業株式会社 (97)
【Fターム(参考)】