説明

化粧料

【課題】
4−メトキシサリチル酸塩を配合し、適度に増粘し、みずみずしくべたつきの少ない美白化粧料を提供すること。
【解決手段】
ジェランガムと、陽イオンからなる中和剤と、4−メトキシサリチル酸塩を、溶解してゲルを生成させ、該ゲルを粉砕した微小ゲル状組成物を化粧料に配合することによって、適度に増粘し、みずみずしくべたつきの少ない美白化粧料が得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲルを粉砕した微小ゲル状組成物を配合する化粧料に関する。より詳細には、ジェランガムと、陽イオンからなる中和剤と、4−メトキシサリチル酸塩とを、溶解してゲルを生成させ、該ゲルを粉砕した微小ゲル状組成物を配合する化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料に用いられる美白薬剤には、ビタミンC誘導体やアルブチン、4−メトキシサリチル酸塩などがある。中でも、4−メトキシサリチル酸塩では、高い美白効果が期待される薬剤である。しかしながら、4−メトキシサリチル酸塩を配合すると、ゲルの粘度が低下してしまい、適度な粘度のある化粧料を調製することが困難であった。増粘剤を増量することで適度な粘度のものを調製できる可能性があるが、増粘剤を増量すると、従来のみずみずしく、べたつかない感触を損なうという欠点がある。
【0003】
化粧料を評価する上での重要な要素として、使用感触と安定性とが挙げられる。ジェランガムは、その独特の使用感触と電解質添加条件下にも増粘作用を示すという利点から、外用組成物に適用する試みがなされている。近年ではナトリウムやカルシウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の陽イオンを添加してジェランガムをゲル化させたゲルを粉砕して微小ゲルを調製し、増粘外用組成物に適用する検討が成されている(特許文献1参照)。
また、ジェランガムとアンモニウムイオンを放出する電解質を配合する、ゲル状組成物が検討されている。(特許文献2参照)
しかしながら、ジェランガムを用いて増粘した処方系に4−メトキシサリチル酸塩を単純に配合すると、ゲルの粘度が低下し、適度に増粘した化粧料を調整することができなかった。
【特許文献1】特開平9−20649号公報
【特許文献2】特開2004−196709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、4−メトキシサリチル酸塩を配合し、適度に増粘し、みずみずしくべたつきの少ない美白化粧料を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは前記従来の問題点を解決すべく鋭意研究をした結果、ジェランガムと、陽イオンからなる中和剤と、4−メトキシサリチル酸塩を、溶解してゲルを生成させ、該ゲルを粉砕した微小ゲル状組成物を化粧料に配合することによって、適度に増粘し、みずみずしくべたつきの少ない美白化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、(a)ジェランガムと、(b)陽イオンからなる中和剤と、(c)4−メトキシサリチル酸塩とを含有することを特徴とする化粧料に関する。
また本発明は、前記(b)陽イオンからなる中和剤が、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、もしくは、水に溶解して前記塩を解離する、グリチルリチン酸ジカリウム塩、トリメチルグリシン、ピロ亜硫酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸カリウムから選ばれる化粧料に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ジェランガムと、陽イオンからなる中和剤と、4−メトキシサリチル酸塩を、溶解してゲルを生成させ、該ゲルを粉砕した微小ゲル状組成物を化粧料に配合することによって、適度に増粘し、みずみずしくべたつきの少ない美白化粧料を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態について詳述する。
本発明におけるジェランガムは、U.S.A.のケルコ社が開発したものであり、グルコースを主成分とする培地中でシュードモナス エロデア(Pseudomonas Elodea)が産出する、グルコース、グルクロン酸及びラムノースからなる(グルコース:グルクロン酸:ラムノース=2:1:1の割合)、ヘテロ多糖類を主成分とするものである。また、その分子量は670,000〜920,000程度のものであり、工業的には完全な製造管理下で生産される純度の高い工業製品である。構造式は次式に示すように、1−3結合したグルコース、1−4結合したグルクロン酸、1−4結合したグルコース、1−4結合したラムノースの繰り返し構造からなる直鎖の高分子多糖である。
【化1】

【0009】
本発明におけるジェランガムの配合量は、外用組成物全体に対して0.001〜1.5質量%が好ましく、特に、同0.005〜1.0質量%が好ましい。外用組成物全体に対して0.005質量%未満の配合量であると、十分にゲル化させることが実質上困難になり、外用組成物全体に対して1.5質量%を超えて配合すると、系に高分子特有の皮膜が形成され、皮膚に適用した際に
【0010】
本発明において用いられる(b)陽イオンからなる中和剤は、ジェランガムをゲル化させる機能があるものであれば、特に限定されない。例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、もしくは、水に溶解して前記塩を解離する、グリチルリチン酸ジカリウム塩、トリメチルグリシン、ピロ亜硫酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸カリウム等を用いることができる。中でも、塩化カルシウム塩、塩化マグネシウム塩、塩化ナトリウム塩、塩化カリウム塩が好ましく用いられる。
【0011】
本発明における陽イオンからなる中和剤の配合量は、化粧料全体に対して0.001〜10質量%が好ましく、ジェランガムに対して質量比で0.15〜50倍量を配合することが好しい。化粧料全体に対して0.001質量%未満の配合量であると、化粧料全体を十分にゲル化させることが実質上困難になり、化粧料全体に対して10質量%を超えて配合すると、皮膚に適用した際にかえって使用感触が損なわれることになる。
【0012】
本発明において用いられる4−メトキシサリチル酸塩の塩の種類としては、製薬学上許容され得る塩であれば、特に限定されるものではなく、例えばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩のようなアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の他、アンモニウム塩やアミノ酸塩等の塩が挙げられる。なかでも、4−メトキシサリチル酸カリウム塩が、透明度が高く安定性を有するゲルを与える事ができる点で好ましい。本発明においては、4−メトキシサリチル酸塩を配合しても、4−メトキシサリチル酸と塩を形成するアルカリ化合物を別々に配合してもよい。
【0013】
本発明における4−メトキシサリチル酸塩の配合量は、皮膚外用剤の具体的な剤形や他の配合成分との兼ね合い等に応じて、適宜選択されるべきものであり、特に、限定されるものではないが、化粧料全体に対して0.001〜10.0質量%であることが好ましく、さらに好ましくは、同0.01〜5.0質量%である。4−メトキシサリチル酸塩の配合量が、化粧料全体に対して0.001質量%未満では、美白効果を十分発揮させることが困難であり好ましくなく、同10.0質量%を超えて配合しても、配合量の増加に見合った美白効果の向上は認められ難くなり、かえってべたついた使用感を助長する傾向が強く、好ましくない。
【0014】
本発明においては、ジェランガムと、陽イオンからなる中和剤と、4−メトキシサリチル酸塩を溶解して、ゲルを作製する。ホモミキサーなどを用いて該ゲルを粉砕して得られた微小ゲル状組成物を化粧料に配合することにより、美白化粧料を提供することが可能となる。
なお、陽イオンからなる中和剤と、4−メトキシサリチル酸塩を溶解する際、80〜95℃の高温で溶解した後、ゲルを形成する温度以下に冷却しゲルを作製すると、より強固なゲルが得られ、好ましい。
【0015】
粉砕したゲルを配合する化粧料は、透明液状、半透明液状、O/W乳化系の水相、W/O乳化系の水相のいずれでもよい。また、さらに粉末などが分散した3相系に配合することも可能である。
【0016】
本発明において得られるゲルは、ジェランガムとアスコルビン酸誘導体を用いて作成したゲルよりも、強固なゲルであり、また、高温での粘度低下がなく、よりみずみずしくべたつかない特徴を有する。
【0017】
本発明において、前記の必須成分に加えて、通常、外用組成物に配合され得る他の成分を、本発明の所期の効果を損なわない限りにおいて配合することができる。
例えば、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン等の炭化水素類; マカデミアナッツ油、オリーブ柚、ラノリン等の油脂類;ホホバ油、カルナバロウ、キャンデリラロウ等のロウ類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルシロキサン等のシリコーン類;カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、コレステロール、フィトステロール等の高級アルコール類;カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、ラノリン脂肪酸、リノール酸、リノレン酸等の高級脂肪酸;ポリエチレングリコール、グリセリン、1,
3-ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、ムコ多糖、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、キチン、キトサン等の保湿剤;エタノール等の低級アルコール;ブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール、フィチン等の酸化防止剤;安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸アルキルエステル、ヘキサクロロフェン等の抗菌剤等を適宜配合することができる。
【0018】
また、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン、タウリン、ヒスチジン等のアミノ酸及びこれらのアルカリ金属塩と塩酸塩;アシルサルコシン酸(例えばラウロイルサルコシンナトリウム)、グルタチオン;クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸等の有機酸;ビタミンA及びその誘導体;ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2及びその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15及びその誘導体等のビタミンB類;α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類;ビタミンD類;ビタミンH、パントテン酸、パンテチン等のビタミン類;ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル、γ−オリザノール、アラントイン、グリチルリチン酸(塩)、グリチルレチン酸及びその誘導体、ヒノキチオール、ビサボロール、ユーカリプトール、チモール、イノシトール、サイコサポニン、ニンジンサポニン、ヘチマサポニン、ムクロジサポニン等のサポニン類、パントテニルエチルエーテル、エチニルエストラジオール、トラネキサム酸、アルブチン、セファランチン、プラセンタエキス等の各種薬剤;ギシギシ、クララ、コウホネ、オレンジ、セージ、ノコギリソウ、ゼニアオイ、センブリ、タイム、トウキ、トウヒ、バーチ、スギナ、ヘチマ、マロニエ、ユキノシタ、アルニカ、ユリ、ヨモギ、シャクヤク、アロエ、クチナシ、サワラ等の各種の溶媒で抽出した天然エキス;中和剤、酸化防止剤、色素、香料、精製水等を適宜配合することができる。
【実施例】
【0019】
表に記載した実施例、比較例の処方の化粧料を調整し、下記の評価基準に従って評価した。但し、配合量の単位は質量%である。
[製造方法] 実施例、比較例に示した化粧料は、それぞれの原料を室温で水に混合後、80〜95℃まで熱を加えて溶解した後、再度室温まで冷却しゲルを作製した後に、ホモミキサーなどを用いてゲルを粉砕し作製した。
【0020】
(1)とろみ感の評価
各化粧料について、5名の専門パネルによる化粧料の使用テストを行い、塗布時のとろみ感について、以下の評価点の基準に基づいて評価した。
◎:とろみ感を感じる(5名中、4名以上が評価項目について優れると回答)
○:ややとろみ感を感じる(5名中、2〜3名が評価項目について優れると回答)
△:ほとんどとろみ感を感じない(5名中、1名が評価項目について優れると回答)
×:とろみ感を全く感じない(5名中、0名が評価項目について優れると回答)
【0021】
(2)使用性の評価
各化粧料について、5名の専門パネルによる化粧料の使用テストを行い、塗布時のべたつきのなさ・みずみずしさ、使用後のべたつきのなさ・さっぱり感について、以下の評価点の基準に基づいて評価した。
◎:非常に優れる(5名中、4名以上が評価項目について優れると回答)
○:やや優れる(5名中、2〜3名が評価項目について優れると回答)
△:やや劣る(5名中、1名が評価項目について優れると回答)
×:劣る(5名中、0名が評価項目について優れると回答)
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】

【0024】
【表3】

【0025】
以下に本発明の処方例を示す。
処方例:可溶化系美白化粧液
Aパーツ
エタノール 10.0
PPG−13
デシルテトラデセス−24 0.3
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
フェノキシエタノール 0.1
香料 微量
乳酸メンチル 0.004
Bパーツ
グリセリン 2.0
PEG/PPG−14/7ジメチルエーテル 3.0
ジプロピレングリコール 1.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
L−セリン 0.5
L−アラニン 0.5
イチヤクソウエキス 0.01
サイコエキス 0.05
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
精製水 残余
Cパーツ
精製水 50.0
ジェランガム 0.2
4−メトキシサリチル酸カリウム塩 1.0
塩化ナトリウム塩 1.0
「製造方法」
Aのアルコール相をBの水相に添加し、可溶化して化粧水を調製した。C相のジェランガムを85℃で溶解し、4−メトキシサリチル酸カリウム塩を加えた後、25℃(室温)に冷却し、固化させたものを粉砕して、前記化粧水に添加した。
【0026】
処方例:可溶化系美白化粧液
Aパーツ
エタノール 10.0
PPG−13
デシルテトラデセス−24 0.3
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
フェノキシエタノール 0.1
香料 微量
Bパーツ
グリセリン 2.0
PEG/PPG−14/7ジメチルエーテル 3.0
ジプロピレングリコール 1.0
1,3ブチレングリコール 5.0
ブナの芽エキス 0.5
アセンヤクエキス 0.1
ユキノシタエキス 0.1
甘草エキス 0.3
シャクヤクエキス 0.5
オノニスエキス 0.3
ミシマサイコ根エキス 0.1
ばらエキス 0.3
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
精製水 残余
Cパーツ
精製水 52.0
ジェランガム 0.2
4−メトキシサリチル酸カリウム塩 1.0
塩化マグネシウム塩 0.5
塩化カリウム塩 0.5
「製造方法」
Aのアルコール相をBの水相に添加し、可溶化して化粧水を調整した。C相のジェランガムと塩化マグネシウム塩、塩化カリウム塩を85℃で溶解し、4−メトキシサリチル酸カリウム塩を加えた後、25℃(室温)に冷却し、固化させたものを粉砕して、化粧水に添加した。
【0027】
処方例:美白乳液
Aパーツ
ジメチコン 1.0
スクワラン 1.0
エチルヘキサン酸セチル 2.0
カルボキシビニルポリマー 0.2
香料 微量
Bパーツ
グリセリン 2.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.3
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
フェノキシエタノール 0.1
PEG/PPG−14/7ジメチルエーテル 3.0
ジプロピレングリコール 1.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
オウバクエキス 0.3
ヒオウギエキス 0.3
ビワエキス 0.5
アロエエキス 0.3
ショウキョウエキス 0.1
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
精製水 残余
苛性カリ 適量
Cパーツ
精製水 56.0
ジェランガム 0.2
4−メトキシサリチル酸カリウム塩 1.0
塩化カリウム塩 1.0
「製造方法」
Aの油相をBの水相に添加し、乳化した後、C相のジェランガムと塩化カリウム塩を85℃で溶解し、4−メトキシサリチル酸カリウム塩を加えた後、25℃(室温)に冷却し、固化させたものを粉砕して、乳液を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ジェランガムと、(b)陽イオンからなる中和剤と、(c)4−メトキシサリチル酸塩とを含有することを特徴とする化粧料。
【請求項2】
(b)陽イオンからなる中和剤が、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、もしくは、水に溶解して前記塩を解離する、グリチルリチン酸ジカリウム塩、トリメチルグリシン、ピロ亜硫酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸カリウムから選ばれる請求項1記載の化粧料。

【公開番号】特開2008−230995(P2008−230995A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−70026(P2007−70026)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】