説明

化粧料

【課題】効果的かつ持続的な保湿効果を備えた化粧料を提供する。
【解決手段】化粧料に、保湿成分を内包し、かつ疎水化剤で表面処理された生体適合性ポリマーナノ粒子を配合する。保湿成分としてはセラミド又はセラミド前駆体を用いることが好ましく、疎水化剤としてはシリコーンを用いることが好ましく、生体適合性ポリマーとして乳酸・グリコール酸共重合体を用いることが好ましい。また、ナノ粒子を結合剤等と複合化してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保湿効果を有する化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、年齢とともに乾燥しやすくなるため、皮膚の保水力維持は、アンチエージングの観点から近年、特に重要視されており、保湿のための様々な技術が研究されている。
【0003】
化粧料には、ヒアルロン酸やコラーゲンなど様々な保湿成分が用いられている。なかでも、セラミドは、角質細胞間脂質の主成分であり、皮膚からの水分蒸散を防ぐうえで重要な役割を果たしているため、保湿成分として多くの化粧料に用いられており、例えば多孔質無機粉体とセラミドを配合した固形粉末化粧料が知られている(特許文献1)。また、外用剤組成物としてセラミドを封入した生体適合性を有する高分子からなるナノ粒子を用いることが知られている(特許文献2)。これに加えて、ステビア、セラミド前駆体、セラミド、及び血流促進成分が封入された生体適合性ポリマーナノ粒子を配合した頭皮用育毛剤も知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−158717号公報
【0005】
【特許文献2】特表2007−520576号公報
【0006】
【特許文献3】特開2009−107941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
保湿成分の効果を十分に発揮させるためには、セラミドであれば、これを角質層の角質細胞間へ送達させる必要があり、セラミド以外の保湿成分(例えば、ヒアルロン酸やコラーゲン)であれば角質層よりさらに深部の真皮まで到達させる必要がある。また、保湿効果を持続的に発揮させるためには、保湿成分の徐放化が必要である。さらに、多くの保湿成分は比較的高価な材料であるため、できる限り少量塗布で高い保湿効果を発揮させる投与手法が望ましい。
しかし、特許文献1のようにセラミドを単に油分として配合するだけでは、表面張力等のため、角質層への十分な浸透が期待できないうえ、効果の持続性も期待できない。特許文献2や特許文献3の生体適合性ナノ粒子であれば、これらの問題はある程度解決できるものの、育毛剤への配合を目的とした特許文献3の生体適合性ナノ粒子はもとより、特許文献2の生体適合性ナノ粒子も、粒子表面が親水性であるため皮膚への親和性が必ずしも高いとはいえず、化粧品組成物としては未だ改善の余地がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、効果的かつ持続的な保湿効果を備えた化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る化粧料の第一の特徴構成は、保湿成分を内包し、かつ疎水化剤で表面処理された生体適合性ポリマーナノ粒子を配合した点にある。
【0010】
生体適合性ポリマーナノ粒子に保湿成分を内包させることで、保湿成分を皮膚深部に到達させることができるため、効果的な保湿効果が発揮される。また、生体適合性ポリマーが徐々に分解することにより保湿成分が持続的に放出されるため、持続的な保湿効果が発揮される。かつ、生体適合性ポリマーナノ粒子を疎水化剤で表面処理することによって、皮膚との親和性が向上し、塗布時に皮膚から脱落する粒子を低減させることができる。これらにより、塗布した保湿成分を無駄なく確実に皮膚深部に送達することができ、少量であっても高い保湿効果を有する化粧料を供することができる。なお、本発明において「ナノ粒子」とは、平均粒子径が1000nm未満の粒子をいう。
【0011】
また、保湿成分を皮膚深部に送達することで保湿効果を高めることにより、結果的に皮脂の分泌が適正化されることも期待される。皮脂の過剰な分泌は、経時的な化粧崩れの原因となるため、保湿効果を高めた化粧料は、化粧崩れの防止にも効果的であるといえる。
【0012】
同第二の特徴構成は、上記第一の特徴構成において、前記保湿成分がセラミド又はセラミド前駆体である点にある。
【0013】
セラミド又はセラミド前駆体は、角質層の細胞間脂質を構成する主成分であり、皮膚内部からの水分蒸散を防ぐ役割を担っている。このため、保湿成分としてセラミド又はセラミド前駆体を用いることで、皮膚のバリア機能を高め、優れた保湿効果を有する化粧料を供することができる。
【0014】
同第三の特徴構成は、上記第一又は第二の特徴構成において、前記疎水化剤がシリコーンである点にある。
【0015】
シリコーンは疎水性、皮膚親和性に加え、安定性にも優れているため、疎水化剤としてシリコーンを用いることで、優れた保湿効果を有し、品質も安定した化粧料を供することができる。
【0016】
同第四特徴構成は、上記第一から第三のいずれかの特徴構成において、前記生体適合性ポリマーが乳酸・グリコール酸共重合体である点にある。
【0017】
生体適合性ポリマーとして、乳酸・グリコール酸共重合体を用いれば、乳酸とグリコール酸の割合や分子量を制御することで、内包された保湿成分の放出速度を調節することができる。また、乳酸・グリコール酸共重合体は、長期安定性にも優れているうえ、比較的多くの保湿成分を内包することができる。従って、保湿効果が最適化され、品質も安定した化粧料を供することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の化粧料は、保湿成分を内包し、かつ疎水化剤で表面処理された生体適合性ポリマーナノ粒子を配合することにより、ナノ粒子が皮膚の深部にまで浸透し保湿成分を徐々に放出することから、効果的かつ持続的に保湿効果を発揮し、かつ皮膚との親和性が向上し、塗布時の脱落粒子を低減させられることから、塗布した保湿成分を確実に皮膚深部へ送達し、保湿成分が少量であっても高い保湿効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るセラミド内包ナノ粒子の模式図。
【図2】さらにセラミドを担持したナノ粒子の模式図。
【図3】セラミド内包複合粒子の模式図。
【図4】水分増加率を示すグラフ。
【図5】TEWL抑制率を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のナノ粒子は、生体適合性ポリマーで形成されたナノ粒子に保湿成分を内包し、かつ疎水化剤で表面処理された(以下「疎水化処理された」と記述する場合がある)ものである。
図1は、本発明に係るナノ粒子の構造を示す模式図である。疎水化処理された保湿成分内包ナノ粒子1は、生体適合性ポリマー2が多数凝集して形成されており、この凝集体であるナノ粒子は疎水化剤3で表面処理されている。また、生体適合性ポリマー2のマトリクス中には保湿成分4aが内包されている。
【0021】
本発明に用いられる保湿成分としては、多価アルコール(例えば、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等)、アミノ酸(グリコサミン又はその塩等)、糖鎖(例えば、キシリトール等)、ムコ多糖(例えば、ヒアルロン酸又はその塩等)、ガム類及びカルボキシビニルポリマー(アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10−30)共重合体等の水溶性高分子、有機酸又はその塩、大豆レシチン、コレステロール、コラーゲン等が好適である。
【0022】
なかでも、セラミドは、皮膚内部からの水分蒸散を防ぐことから、特に好適である。セラミドは角質細胞間脂質の約50%を占めるスフィンゴ脂質である。ヒト角質層に存在するセラミドの種類と化学構造はセラミド1〜セラミド7の7種類があることが知られている。セラミドはセリンとパルミトイル−CoAから種々の酵素の働きにより生成され、一旦グルコシルセラミド又はスフィンゴミエリン(セラミド前駆体)として蓄積された後、角質最下層において細胞外に排出される。そして、角質細胞間でグルコセレブロシダーゼ又はスフィンゴミエリナーゼにより再度セラミドに変換され、他の細胞間脂質と共にセラミド分子が一定の方向に隙間無く並び積み重なった層状構造(ラメラ構造)を構築する。そして、セラミダーゼによってスフィンゴシンと脂肪酸に分解される。
【0023】
また、セラミド前駆体は、生体内での代謝によりセラミドを産生する物質であり、セラミドに変換されるグルコシルセラミドやスフィンゴミエリンの他、ヒト以外の動植物から抽出されるスフィンゴ糖脂質が挙げられる。スフィンゴ糖脂質は、セラミドに糖が結合したものであり、グルコースが結合したグルコシルセラミドやガラクトースが結合したガラクトシルセラミド等がある。セラミドジカリウム、セラミドステアリル等も好適に用いることができる。
【0024】
生体適合性ポリマーナノ粒子は皮膚の深部にまで浸透することにより、保湿成分を皮膚深部にまで到達させるとともに、ナノ粒子が徐々に分解することにより、皮膚深部において持続的に保湿成分を放出させることができる。
【0025】
生体適合性ポリマーナノ粒子を疎水化剤で表面処理することによって、皮膚との親和性が向上する。このため、化粧料を塗布した際に皮膚から脱落するナノ粒子を低減させることができ、塗布した保湿成分を無駄なく確実に皮膚深部へ浸透させることができる。
また、疎水化剤で表面処理することにより、初期バースト(生理活性成分が皮膚浸透時に一気に放出されてしまう現象)を抑制することができるため、保湿成分を持続的に放出することができる。
さらに、皮膚との親和性を高めることで、化粧料の伸びや肌との馴染みが改善され、使用感が向上するという効果をももたらす。
【0026】
本発明に用いられる疎水化剤は、皮膚との親和性を高めるようナノ粒子の表面を疎水化できるものであれば特に制限はなく、シリコーン、植物油(ヒマシ油、オリーブ油など)、脂肪酸エステル油(ミリスチン酸ブチル、パルミチン酸セチル、トリエチルヘキサノイン、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル−2等)、高級アルコール(セタノール、ステアリルアルコール等)、炭化水素油(スクワラン等)、フッ素油(パーフルオロメチルイソプロピル等)を好適に用いることができる。
なかでも、疎水性、皮膚親和性に加え、安定性にも優れたシリコーンが特に好適である。
【0027】
シリコーンは、珪素と酸素からなるシロキサン結合を骨格とし、珪素にメチルを主体とする有機基が結合した高分子で、シランモノマーを加水分解した重合体である。シリコーンとしては、オクタメチルポリシロキサン、テトラデカメチルポリシロキサン、メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサンのほか、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等のメチルポリシクロシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸、アルキル変性シリコーン、ポリエーテル・アルキル変性シリコーン、アルキルグリセリルエーテル変性シリコーンなどが挙げられる。
なかでも、メチルポリシロキサン(ジメチコン)、デカメチルシクロペンタシロキサン(シクロペンタシロキサン)、メチルハイドロジェンポリシロキサン(ジメチコン/メチコンコポリマー)等が好ましい。
【0028】
本発明に用いられる生体適合性ポリマーは、生体への刺激・毒性が低く、投与後分解して代謝される生体内分解性のものが望ましい。また、内包する保湿成分を持続的に放出する粒子であることが好ましい。
このような素材としては、生体適合性ポリマーとしてはポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリアスパラギン酸等が挙げられる。また、これらのコポリマーである乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)、アスパラギン酸・乳酸共重合体(PAL)やアスパラギン酸・乳酸・グリコール酸共重合体(PALG)を用いても良く、アミノ酸のような荷電基あるいは官能基化し得る基を有していてもよい。
なかでも、乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)を好適に用いることができる。PLGAは種々の生理活性成分を内包可能であり、生理活性成分を保持したまま長期間保存できることが知られている。さらに、内包される生理活性成分の種類やPLGAの分子量等にもよるが、PLGAの加水分解・長期半減期の特徴から、数時間から数ヶ月単位の徐放ができると考えられる。本発明の化粧料においては、1時間から20時間の範囲で生理活性成分を放出させることが望ましい。
【0029】
PLGAの平均分子量は、5,000〜200,000の範囲内であることが好ましく、ナノ粒子の調製の容易さや調製されたナノ粒子の皮膚浸透性、及び皮膚内部での分解性を考慮すれば15,000〜25,000の範囲内であることがより好ましい。乳酸とグリコール酸との組成比は1:99〜99:1であればよいが、乳酸1に対しグリコール酸1/3であることがより好ましい。
【0030】
次に、保湿成分内包ナノ粒子の製造方法について説明する。保湿成分内包ナノ粒子の製造方法としては、保湿成分及び生体適合性ポリマーを1,000nm未満の平均粒子径を有する粒子に加工できる方法であれば特に限定されるものではないが、本実施態様においては球形晶析法を好適に用いることができる。球形晶析法は、化合物合成の最終プロセスにおける結晶の生成・成長プロセスを制御することで、球状の結晶粒子を設計し、その物性を直接制御して加工することができる方法である。この球形晶析法の一つに、エマルション溶媒拡散法(ESD法)がある。
【0031】
ESD法は、次に示すような原理によって、ナノ粒子(ナノスフェア)を製造する技術である。本法には、基材となる生体適合性ポリマーを溶解できる良溶媒と、これとは逆に生体適合性ポリマーを溶解しない貧溶媒の二種類の溶媒が用いられる。この良溶媒には、生体適合性ポリマーを溶解し、かつ貧溶媒へ混和するアセトン等の有機溶媒を用いる。そして、貧溶媒には、通常、水やポリビニルアルコール水溶液等を用いる。以下、保湿成分としてセラミドを用い、生体適合性ポリマーとしてPLGAを用い、疎水化剤としてシリコーンを用いた場合の操作手順を詳述する。なお、保湿成分を内包したナノ粒子を単に「ナノ粒子」と記述する場合がある。
【0032】
<ナノ粒子形成工程>
まず、PLGAを良溶媒中に溶解後、PLGAが析出しないように、セラミド溶解液を良溶媒中へ添加混合する。このPLGAとセラミドを含む混合液を、貧溶媒中に攪拌下、滴下すると、混合液中の良溶媒(有機溶媒)が貧溶媒中へ急速に拡散移行する。その結果、貧溶媒中で良溶媒の自己乳化が起き(マランゴニ効果)、サブミクロンサイズの良溶媒のエマルション滴が形成される。さらに、良溶媒と貧溶媒の相互拡散により、エマルション内から有機溶媒が貧溶媒へと継続的に拡散していくので、エマルション滴内のPLGA並びにセラミドの溶解度が低下し、最終的に、セラミドを内包した結晶粒子のPLGAナノ粒子が生成する。
【0033】
上記球形晶析法では、物理化学的な手法でナノ粒子を形成でき、しかも得られるナノ粒子が略球形であるため、均質なナノ粒子を、触媒や原料化合物の残留といった問題を考慮することなく、容易に形成することができる。その後、良溶媒である有機溶媒を減圧留去し(溶媒留去工程)、乾燥することで、ナノ粒子粉末を得る。
【0034】
上記ナノ粒子形成工程において使用する良溶媒および貧溶媒の種類は特に限定されるものではないが、人体に対して安全性が高く、かつ環境負荷の少ないものを用いる必要がある。このような貧溶媒としては、例えば、水が好適に用いられる。また、ナノ粒子の分散性を高めるため、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、シクロデキストリン、レシチン、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の界面活性剤の水溶液を用いても良い。
【0035】
良溶媒としては、低沸点の有機溶媒であるハロゲン化アルカン類、アセトン、メタノール、エタノール、エチルアセテート、ジエチルエーテル、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等が挙げられるが、例えば、厚生労働省通知「医薬品の残留溶媒ガイドラインについて(平成10年3月30日 医薬審第307号)」でクラス3に分類されるアセトンのみ、若しくはアセトンとエタノールの混合液が好適に用いられる。
【0036】
本発明で製造されるセラミド内包ナノ粒子は、1,000nm未満の平均粒子径を有するものであれば特に制限はないが、一般に、皮膚の直径は200μm程度であるため、角質層への送達効果を高めるためには平均粒子径を300nm以下とすることが好ましい。また、皮膚細胞の大きさは15,000nm、皮膚細胞間隔は皮膚の浅い所と深い所でバラツキがあるが、70nm程度であると考えられ、細胞の脈動により皮膚細胞間隔が広がるため、平均粒子径が200nm程度であれば、細胞間隙ルート(皮膚角質細胞間隙)を通してナノ粒子を角質層や、さらに深部の表皮や真皮への浸透させることができる。一方、ナノ粒子の粒子径が小さくなりすぎるとセラミドの内包量が少なくなるため、平均粒子径は30nm以上とすることが好ましい。
【0037】
ナノ粒子へのセラミドの内包量は、ナノ粒子形成時に添加するセラミド量の調整、ナノ粒子を形成する生体適合性ポリマーの種類及び分子量等により調整可能である。ナノ粒子形成時に良溶媒に混合するセラミド量としては、生体適合性高分子に対する重量比を0.001以上1.0以下とすることが好ましい。生体適合性ポリマーに対する重量比が0.001未満の場合、良溶媒中でのセラミドの濃度が低すぎてナノ粒子への内包率が低くなる。一方、1.0を超えると、ナノ粒子の形成が阻害される。
【0038】
なお、セラミド内包ナノ粒子に、さらにセラミドを担持(外付け)させることもできる。ここでは、正のゼータ電位を有するナノ粒子にセラミドを静電気的に担持させる方法を例に挙げて説明する。
【0039】
球形晶析法で製造されたナノ粒子の表面は、一般的に負のゼータ電位を有している。ゼータ電位とは、粒子から十分に離れた電気的に中性な領域の電位を基準とした場合の、上記移動が生じる面(滑り面)の電位である。ゼータ電位の絶対値が増加すれば、粒子間の反発力が強くなって粒子の安定性は高くなり、逆にゼータ電位が0に近づくにつれて粒子は凝集を起こしやすくなる。そのため、ゼータ電位は粒子の分散状態の指標として用いられている。
【0040】
負のゼータ電位を有するセラミドをナノ粒子に静電気的に担持させるためには、ナノ粒子表面が正のゼータ電位を有するように帯電させておく必要がある。上記ナノ粒子形成工程においてカチオン性高分子を貧溶媒中に添加すると、形成されたナノ粒子の表面がカチオン性高分子により修飾(被覆)され、ナノ粒子表面のゼータ電位が正となる。そこで、後述する疎水化処理前のナノ粒子懸濁液にセラミドを添加することにより、負の電荷を持つアニオン分子となったセラミドが静電気的相互作用によりナノ粒子に所定量担持される。
【0041】
カチオン性高分子としては、キトサン及びキトサン誘導体、セルロースに複数のカチオン基を結合させたカチオン化セルロース、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等のポリアミノ化合物、ポリオルニチン、ポリリジン等のポリアミノ酸、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピリジニウムクロリド、アルキルアミノメタクリレート4級塩重合物(DAM)、アルキルアミノメタクリレート4級塩・アクリルアミド共重合物(DAA)、細胞膜(生体膜)の構成成分であるリン脂質極性基(ホスホリルコリン基)と重合性に優れたメタクリロイル基とを併せ持つ2−メタクリロイルオキシエチルホスホルコリン(MPC)を構成単位とする高分子に第4級アンモニウム塩等のカチオン基を結合させたカチオン性高分子(例えばMPCと2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドとのコポリマー)等が挙げられるが、なかでも、キトサン或いはその誘導体が好適に用いられる。
【0042】
キトサンは、エビやカニ、昆虫の外殻に含まれる、アミノ基を有する糖の1種であるグルコサミンが多数結合したカチオン性の天然高分子であり、乳化安定性、保形性、生分解性、生体適合性、抗菌性等の特徴を有するため、化粧品や食品、衣料品、医薬品等の原料として広く用いられている。このキトサンを貧溶媒中に添加することにより、生体への悪影響がなく、安全性の高いセラミド担持ナノ粒子を製造することができる。
【0043】
図2は、セラミドが静電気的に担持されたナノ粒子の構造を示す模式図である。ナノ粒子1の表面はカチオン性高分子5で被覆され、さらにその外側を疎水化剤3で表面処理されており、カチオン性高分子5により正のゼータ電位を有している。セラミド4は、ナノ粒子1に内包される(4a)とともに、静電気的に担持されている。なお、図2ではナノ粒子表面に担持されるセラミドを4bとしている。
【0044】
なお、カチオン性高分子の中でもカチオン性のより強いものを用いることにより、ゼータ電位がより大きな正の値となるため、ナノ粒子により多くのセラミドを担持できるとともに、ナノ粒子間の反発力が強くなってナノ粒子の安定性も高くなる。例えば、元来カチオン性であるキトサンの一部を第四級化することで、さらにカチオン性を高めた塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]キトサン等のキトサン誘導体(カチオニックキトサン)を用いることが好ましい。
【0045】
ナノ粒子へのセラミドの担持量は、カチオン性高分子の種類及び添加量や、疎水化処理前のナノ粒子懸濁液中に添加するセラミド量の調整により変更可能である。ナノ粒子懸濁液中に添加するセラミド量としては、生体適合性ポリマーに対する重量比を0.001以上1.0以下とすることが好ましい。生体適合性ポリマーに対する重量比が0.001未満の場合、セラミドの濃度が低すぎてナノ粒子への担持率が低くなる。一方、1.0を超えると、静電気的に担持可能な量を超えてしまい、ナノ粒子に担持されない余剰のセラミドが生じる。
【0046】
このように、セラミドのナノ粒子への内包と静電気的担持とを組み合わせることにより、先ずナノ粒子に担持されたセラミド、次いでナノ粒子に内包されたセラミドの順に放出される。従って、セラミドの放出速度を2段階に制御可能となる。
【0047】
なお、疎水化処理前のナノ粒子懸濁液に余剰のキトサンが残存していると、キトサンとセラミドとが吸着してしまい、セラミドを効率良くナノ粒子に担持できなくなる。そのため、溶媒留去工程の後でセラミド溶液を添加する前に、遠心分離操作によりキトサンを除去する工程(除去工程)を設けることが好ましい。
【0048】
<疎水化処理工程>
このようにして得られたセラミド内包ナノ粒子懸濁液の中に、予めアルコール等の水混和性有機溶媒に溶かしておいたシリコーンを攪拌下、添加することにより、ナノ粒子の表面層に選択的にシリコーンが析出し吸着する。この時、ナノ粒子懸濁液に添加するシリコーン量として、生体適合性ポリマーに対する重量比を0.001以上20以下とすることが望ましい。0.001未満の場合、ナノ粒子の疎水化が不十分となり、一方、20を超えるとナノ粒子同士の凝集が激しくなるうえ、反応容器内壁面や攪拌棒、プロペラ等への付着も増加し、ナノ粒子の歩留りも低下する。
なお、シリコーンを溶解する水混和性有機溶媒としては、アセトン、ジメチルスルホキシドの他、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコールなどを用いることが可能であるが、とりわけ安全性が高く、かつ低沸点で溶媒留去しやすいエタノールが好適である。
【0049】
<複合化工程>
このようにして得られたナノ粒子をそのまま用いるか、或いは必要に応じて複合化する。この複合化により、使用前まではナノ粒子が集まった取り扱いの容易な複合粒子となっており、使用時にはナノ粒子に戻って、その特性を復元させることができる。
【0050】
ナノ粒子の複合化方法としては、凍結乾燥法(例えば、乾燥棚式の凍結乾燥機(宝製作所社製)やナウタミキサNXV(ホソカワミクロン社製)を用いて真空凍結乾燥を行うこと)が好適に用いられる。また、流動層乾燥造粒法(例えば、アグロマスタAGM(ホソカワミクロン社製)を使用して流動造粒を行うこと)または乾式機械的粒子複合化法(例えば、メカノフュージョンシステムAMS(ホソカワミクロン社製)を使用して圧縮力および剪断力を加えること)により複合化しても良い。特に、粒子化する材料を含む混合物を流動ガス中に噴霧する流動層乾燥造粒法を用いた場合、時間と手間のかかる乾燥工程を短縮することで、複合粒子を容易に、かつ短時間で製造できるため、工業化にも有利となる。
【0051】
次に、セラミド内包ナノ粒子を結合剤と共に複合化させた複合粒子について説明する。ナノ粒子を結合剤と共に複合化することで、取り扱い性、再分散性、耐熱性にも優れた複合粒子とすることができる。また、結合剤中に生理活性成分を添加することにより、ナノ粒子を含む複合粒子に他の生理活性成分を担持させることもできる。図3は、セラミド内包ナノ粒子を結合剤と共に複合化したセラミド含有複合粒子の構造を示す模式図である。複合粒子6は、ナノ粒子1を結合剤7により複合化したものであり、結合剤7には生理活性成分8が封入されている。
【0052】
結合剤は、複合化の際にナノ粒子同士を隔てる層を形成して複合粒子の耐熱性を向上させることができる。また、ナノ粒子に内包されずに外水相へ分散したセラミドが存在すると、外水相に分散していたセラミドが、乾燥時にナノ粒子表面に吸着しナノ粒子同士の強固な架橋を形成してしまい、ナノ粒子の再分散性を低下させる懸念がある。そこで、結合剤と複合化させることで、ナノ粒子同士の強固な架橋形成が抑制された、再分散性に優れたナノ粒子を含む複合粒子の提供が可能となる。
【0053】
このような結合剤としては、例えばマンニトール、トレハロース、ソルビトール、エリスリトール、マルトース、キシリトール等の糖アルコールやショ糖、アクリル系ポリマーやエチルセルロース等の高分子化合物粉末等が挙げられる。なお、結合剤として結晶性の弱い糖アルコールを用いると、複合化の際にアモルファス化してしまい良好に粒子化できなくなる場合がある。そのため、結晶性の強いマンニトールを用いることが好ましい。
【0054】
また、結合剤中に他の生理活性成分を封入することにより、ナノ粒子から放出されるセラミドとは別に、皮膚浸透直後に複合粒子表面から溶け出す生理活性成分を即効的に作用させることができる。このような構成とすることで、複合粒子にさらに即効性を与えられる。
【0055】
結合剤に封入される生理活性成分としては、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンF、ビタミンK、ビタミンP、ビタミンU、カルニチン、フェルラ酸、γ−オリザノール、α−リポ酸、オロット酸及びこれらの成分又は誘導体である酢酸レチノール、酢酸リボフラビン、ピリドキシンジオクタノエート、L−アスコルビン酸ジパルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸−2−硫酸ナトリウム、L−アスコルビン酸リン酸エステル、DL−トコフェロール−L−アスコルビン酸リン酸ジエステルジカリウム、パントテニルエチルエーテル、D−パントテニルアルコール、アセチルパントテニルエチルエーテル、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール、酢酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール等のビタミンまたはビタミン誘導体、或いはVC−PMG(水溶性リン酸アスコルビルMg)、AA2G(アスコルビン酸グルコシド)、パンテノール(水溶性ビタミンB5)、L−システイン等の水溶性のプロビタミン類が挙げられる。また、ナノ粒子に内包させた保湿成分又はこれと異なる保湿成分であっても良い。
【0056】
このようにして製造した、セラミド内包ナノ粒子若しくはセラミド含有複合粒子をファンデーション等の化粧料の原料として使用することで、効果的かつ持続的な保湿効果を有し、保湿成分が少量であっても十分な保湿効果を発揮する化粧料を提供することができる。化粧料中へのナノ粒子若しくは複合粒子の配合割合は、要求される保湿効果等に応じて任意に設定することができる。
【0057】
化粧料の剤型としては、パウダーファンデーション等の粉末として用いるのが好適であるが、乳液、化粧水、スキンクリーム等に配合して用いても良い。また、粉末剤の他、ワセリン、ラノリン、パラフィン、ろう、硬膏剤、樹脂、プラスチック、高級アルコール類、グリコール類、グリセリン等の基剤と共に、必要に応じて水や乳化剤、懸濁化剤等を配合して混合した、軟膏、クリーム剤、ローション、ゲル剤等に用いても良い。化粧料へのナノ粒子若しくは複合粒子の配合割合は、要求される効果や剤型等に応じて任意に設定することができる。
【0058】
なお、PLGAは水分と長時間触れると加水分解されてしまい、ナノ粒子の運搬性能が失われてしまう。そこで、乳液や化粧水等の化粧料、或いはローションタイプの外用剤として使用する場合は、ナノ粒子粉末とそれを分散させる液体とを別々の容器に充填して保存しておき、使用直前にナノ粒子粉末と分散液とを所定量混合して使用することが好ましい。
【0059】
その他、本発明の化粧料には、タルク、マイカ、セリサイト、酸化チタン、無水珪酸、カオリン、酸化亜鉛、雲母チタン、酸化鉄等の無機粉末、ポリエステル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリル酸樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ジビニルベンゼン、スチレン共重合体等の各種樹脂粉末或いはそれらの2種以上から成る共重合樹脂粉末、アセチルセルロース、多糖類、タンパク質等の有機粉末、赤色202号、赤色226号、黄色205号、黄色401号、青色1号、青色204号、青色404号等の顔料粉末、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、パルミチン酸亜鉛等の金属石鹸、ジメチコン、ジメチコン/メチコンコポリマー、ポリエーテル変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等のシリコーン、トリオクタノイン、ジカプリル酸ネオペンチルグリコール、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、イソステアリン酸水添ヒマシ油等のエステル油、ミネラルオイル、ワセリン、ポリブテン等の鉱物油、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ等のロウ、ホホバ油、オリーブ油、アロエ、ベニバナ等の天然系原料等の、任意の無機又は有機原料、或いは通常化粧料に配合される任意の成分、例えばエタノールや多価アルコール等のアルコール類、界面活性剤、油脂、紫外線吸収剤、着色料、香料、防腐剤等を、本発明の効果を妨げない範囲で配合することができる。
【0060】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。以下、本発明について、製造例、実施例、比較例、及び試験例により更に具体的に説明する。なお、以下では、ナノ粒子と結合剤との複合粒子を「ナノ複合粒子」と記述する。
〔製造例1〕
【0061】
<セラミドを内包し、かつ疎水化処理されたPLGAナノ複合粒子の調製>
PLGA(和光純薬工業社製PLGA−7520)100gとセラミド(山川貿易社製ビオセラミドCH)5gを、良溶媒であるアセトン2000mLに溶解した後、エタノール1000mLを加え混合し、ポリマー溶液とした。このポリマー溶液を、貧溶媒となる水4000mL中に40℃、400rpmで攪拌下、一定速度(20mL/分)で滴下し、良溶媒の貧溶媒中への拡散によってセラミド内包PLGAナノ粒子の懸濁液を得た。続いて、減圧下アセトン及びエタノールを留去した後、シリコーンの一種であるジメチコン/メチコンコポリマー(信越化学工業社製KF−9901)10gを溶かしたエタノール溶液500mLを攪拌下、一定速度(40mL/分)で滴下することで、セラミドを内包し、かつ疎水化処理されたPLGAナノ粒子の懸濁液を得た。さらに、得られた懸濁液に糖アルコールの一種であるマンニトール(東和化成工業社製)50gを添加した後に、凍結乾燥し複合化した。得られた複合粒子を篩により整粒することで、セラミドを内包し、かつ疎水化処理されたPLGAナノ複合粒子の粉末を得た。得られたナノ複合粒子に占める各組成の重量比を表1に示す。なお、ナノ複合粒子を水に再分散させ、動的光散乱法による粒度分布測定装置(日機装社製マイクロトラックUPA)でナノ粒子の平均粒子径を測定したところ、182nmであった。
〔製造例2〕
【0062】
<セラミドを内包した(疎水化処理されていない)PLGAナノ複合粒子の調整>
ジメチコン/メチコンコポリマーを溶かしたエタノール溶液の滴下を除いた以外は、製造例1と同様にしてセラミドを内包した(疎水化処理されていない)PLGAナノ複合粒子を得た。ナノ複合粒子に占める各組成の重量比を表1に示す。また、ナノ粒子の平均粒子径は176nmであった。
【0063】
【表1】

【実施例1】
【0064】
<パウダーファンデーションの調製>
製造例1で得られたナノ複合粒子及び表2のAに示す成分を混合した。この混合物に表1のBに示す成分を加えてさらに混合した。得られた混合物を篩により整粒した後、成型してパウダーファンデーションを調製した。
【0065】
【表2】

〔比較例1〕
【0066】
製造例1で得られたナノ複合粒子にかえて、製造例2で得られたナノ複合粒子を用いた以外は、実施例1と同様にしてパウダーファンデーションを調製した。但し、ナノ複合粒子の配合量は、ファンデーションに占めるセラミド量が製造例1と等しくなるよう調整した。
【実施例2】
【0067】
<リキッドファンデーションの調製>
表3に示す成分A、Bをそれぞれ混合した後、A相に製造例1で得られたナノ複合粒子を分散させ攪拌しながらB相を徐々に滴下した。最後にホモジナイザーで均質化することによりリキッドファンデーションを得た。
【0068】
【表3】

〔比較例2〕
【0069】
製造例1で得られたナノ複合粒子にかえて、製造例2で得られたナノ複合粒子を用い、ファンデーション中のセラミド量が等しくなるよう配合量を調整した以外は、実施例2と同様にしてリキッドファンデーションを調製した。
〔試験例1〕
【0070】
モニター20名により実施例1及び比較例1で得られたパウダーファンデーションの使用テストを行い「保湿感」「のび」「つき」「化粧崩れ」について官能評価を行い、以下の基準で判定した。結果を表4に示す。
(判定基準)
◎:15名以上が良好と判断
○:10名以上、15名未満が良好と判断
△:5名以上、10名未満が良好と判断
【0071】
【表4】

〔試験例2〕
【0072】
試験例1と同様に実施例2及び比較例2で得られたリキッドファンデーションの使用テストを行い「保湿感」「感触」「のび」「化粧崩れ」について官能評価を行った。結果を表5に示す。
【0073】
【表5】

【0074】
表4に示すように、実施例1のパウダーファンデーションを使用した場合、大半のモニターが、比較例1のパウダーファンデーションを使用した場合に比べ「保湿感」「つき」「化粧崩れ」に関して良好と判断した。また、表5に示すように、実施例2のリキッドファンデーションを使用した場合、大半のモニターが、比較例2のリキッドファンデーションを使用した場合に比べ、「保湿感」「感触」「化粧崩れ」に関して良好と判断した。
〔試験例3〕
【0075】
試験例1及び2の実施前後に各モニターの頬部の水分値及び経表皮水分喪失(TEWL:Transepidermal Water Loss)値をマルチ皮膚測定器(Courage+Khazaka社製MPA5)を用いて測定し、以下の式から(1)水分値の増加率及び(2)TEWL値の抑制率を算出した。なお、持続的な保湿効果を評価するため、試験実施後の測定についてはファンデーションを使用してから12時間後に行った。

(1)水分増加率(%)=(試験開始前の水分値−試験終了後の水分値)/試験開始前の水分値
(2)TEWL抑制率(%)=(試験開始前のTEWL値−試験終了後のTEWL値)/試験開始前のTEWL値

(1)水分増加率の測定結果を図4に、(2)TEWL抑制率の測定結果を図5に示す。実施例1は比較例1に比べ、実施例2は比較例2に比べ、(1)水分増加率及び(2)TEWL抑制率とも有意に増加したことが分かる。
【0076】
これらの結果から、保湿成分であるセラミドを内包し、かつ疎水化処理されたPLGAナノ粒子を配合した化粧料は、皮膚へ塗布した際にPLGAナノ粒子が皮膚表面に均一に定着して保湿成分であるセラミドを確実に角質層へ送達し、持続的に放出することにより、効果的かつ持続的で、高い保湿効果を発揮することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明に係る化粧料は、効果的かつ持続的で、高い保湿効果を発揮することができる。また、これにより皮脂の分泌を適正化し、経時的な化粧崩れを防ぐことができる。このため、ファンデーションに好適に用いられるほか、乳液、化粧水、スキンクリーム、軟膏、クリーム剤、ローション、ゲル剤など幅広い剤型に用いることができる。
【符号の説明】
【0078】
1 保湿成分内包ナノ粒子
2 生体適合性ポリマー(PLGA)
3 疎水化剤(シリコーン)
4a 内包された保湿成分(セラミド)
4b 担持された保湿成分(セラミド)
5 カチオン性高分子(キトサン)
6 複合粒子
7 結合剤
8 生理活性成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保湿成分を内包し、かつ疎水化剤で表面処理された生体適合性ポリマーナノ粒子を配合した化粧料。
【請求項2】
前記保湿成分がセラミド又はセラミド前駆体であることを特徴とする請求項1記載の化粧料。
【請求項3】
前記疎水化剤がシリコーンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の化粧料。
【請求項4】
前記生体適合性ポリマーが乳酸・グリコール酸共重合体であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の化粧料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−275250(P2010−275250A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130961(P2009−130961)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000113355)ホソカワミクロン株式会社 (43)
【Fターム(参考)】