説明

化粧材及びその製造方法

【課題】着色粉体にて構成される意匠性の高着色粉体層を有する化粧材を提供する。
【解決手段】基材1表面に複数の着色粉体がそれぞれ異なるパターン状に配置された着色粉体層2を備える。これにより、基材1の表面には複数種類の着色粉体がそれぞれ別個のパターン状に配置されて構成される複雑な意匠模様を有する着色粉体層2が形成され、高い意匠性を有する化粧材Aが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材表面に装飾用の着色粉体が定着された化粧材及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築板等の基材の上面に粉体を散布して装飾することが行われている(特許文献1等参照)。かかる粉体の散布にあたっては、従来、篩い等で粉体を拡散させて基材に散布することで、基材に対して粉体を均一に分散することが行われていた。
【特許文献1】特開平11−291227号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のように従来は基材に一種類の粉体が均一に散布された単純な装飾がなされていたものであるが、近年の建築板等に対する高意匠化の要請に伴い、粉体を散布した化粧材に対しても更に複雑な意匠模様の付与が求められるようになってきている。
【0004】
本願は上記の点に鑑みて為されたものであり、着色粉体にて構成される意匠性の高い着色粉体層を有する化粧材及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る化粧材Aは、基材1表面に複数の着色粉体4がそれぞれ異なるパターン状に配置された着色粉体層2を備えることを特徴とする。
【0006】
上記化粧材Aとしては、基材1表面にベース塗膜層3、上記着色粉体層2、クリア塗膜層5を順次設けて構成されているものであっても良い。
【0007】
また、本発明に係る化粧材の製造方法は、上記化粧材Aの製造方法であって、基材1を搬送しながら複数種類の着色粉体4を基材1の上面にそれぞれ異なるパターン状に散布する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基材の表面には複数種類の着色粉体がそれぞれ別個のパターン状に配置されて構成される複雑な意匠模様を有する着色粉体層が形成され、高い意匠性を有する化粧材を得ることができる。
【0009】
また、基材にベース塗膜層、着色粉体層、クリア塗膜層を順次設けると、ベース塗膜層又はクリア塗膜層により着色粉体層を固着することができ、またクリア塗膜層にて耐候性等の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0011】
本発明で用いられる基材1としては適宜のものが挙げられるが、例えばセメント、シリカ、補強繊維等を主成分とするセメント系の水性スラリーを抄造法、注型法等で成形した後に、養生硬化させた無機質板を用いることができる。
【0012】
この基材1には、着色粉体4の散布に先立って必要に応じ、ベース塗料を塗布してベース塗膜層3を形成する。ベース塗料としてはアクリルエマルション塗料等の適宜のものを使用することができる。基材1に塗布されたベース塗料は着色粉体4の散布前に硬化成膜しても良いが、硬化成膜されていない湿潤状態で着色粉体4の散布を行い、後述するように着色粉体4の散布後にベース塗料を硬化成膜してベース塗膜層3を形成しても良い。ベース塗料の硬化成膜にあたっては例えば100〜150℃で加熱処理を施すことにより行うことができる。また、ベース塗膜層3の厚みは適宜調整されるが、20〜50μmの範囲であることが好ましい。
【0013】
着色粉体層2の形成に用いられる着色粉体4としては、適宜のものを挙げることができ、例えば無機焼成顔料で着色した天然珪石等の骨材(カラーサンド)や、これを複数種混合したもの(ミックスサンド)、アクリル樹脂を高分子化したもの(アクリルビーズ)等を挙げることができ、またその粒径は特に制限されないが50〜300μmの範囲のものを用いることができる。
【0014】
基材1への着色粉体4の散布は適宜の手法で行うことができる。このとき基材1表面の複数の領域13にそれぞれ特定の着色粉体4を散布して、複数種類の着色粉体4を散布する。着色粉体4が散布される領域13は適宜設定されるが、例えば図1(b)に示すように基材1の搬送方向及びこれと直交する方向に縦横に並んだ升目状に設定することができる。また、各領域13は例えば一辺が10〜100mmの範囲とすることができ、具体例として縦20mm、横20mmの寸法に設定することができる。
【0015】
図2乃至6は、基材1へ着色粉体4を散布する粉体散布装置の一例を示す。この粉体散布装置は、基材1を搬送する搬送手段26と、搬送手段26にて搬送される基材1に向けて着色粉体4を散布する散布手段28とを具備する。
【0016】
搬送手段26としては適宜のものを用いることができ、例えば図2に示すようにプーリー11間に無端ベルト12を掛架して構成されるタイミングベルト等のベルトコンベア10を設けることができる。
【0017】
上記搬送手段26による基材1の搬送経路27の上方には、散布手段28が設けられる。この散布手段28は、搬送経路27を搬送される基材1の表面に仮想的に設定された複数の領域13にそれぞれ個別に着色粉体4を散布するものである。
【0018】
図示の例では、散布手段28は、着色粉体4が貯留される貯留容器14の下部に下方に開口するノズル6を設けて構成されている。ノズル6は基材1の搬送方向と直交する方向に亘って複数個設けられ、その個数は基材1に設定された搬送方向の領域13の数と少なくとも同一の数とし、搬送経路27を搬送される基材1に設定される各領域13が、いずれかのノズル6の下方を通過するようにする。
【0019】
各ノズル6にはノズル6の開閉を行う開閉手段7が設けられており、例えばノズル6の開口の直下に密接して配置されることによりノズル6を閉じる位置と、前記位置から横方向に変位してノズル6を開放する位置との間で移動可能な開閉片15と、この開閉片15を駆動する適宜のアクチュエータ16とを設けることができる。図示の例では開閉片15は水平な板状体であり、その端縁から下方に向けて固定片17が延出され、この固定片17が油圧シリンダ等のシリンダ18における水平方向に進退駆動するプランジャ19の端部に固定されている。前記シリンダ18はノズル6に対して基材1の搬送方向側に配設され、各ノズル6ごとに設けられた複数のシリンダ18が基材1の搬送方向と直交する方向に並んで設けられている。図3乃至5中の符号25は貯留容器14に対してシリンダ18を固定するために設けられた固定板である。このとき図3に示すようにプランジャ19が突出状態にあるときに開閉片15がノズル6を閉塞し、図4に示すようにプランジャ19が引き込み状態にあるときに開閉片15がノズル6を開放する。
【0020】
また、この散布手段28の各ノズル6の下方には粉体拡散手段8が設けられる。粉体拡散手段8は、ノズル6から噴出された着色粉体4を基材1の搬送方向と直交する方向に拡散させた後に基材1に散布するものであり、図示の例ではノズル6の下方に傾斜板9を配設して構成されている。傾斜板9は基材1の搬送方向に対して傾斜(図示の例では基材1の搬送方向側が下り傾斜)しており、上側の傾斜面の上方にノズル6が配置されている。傾斜板9の両側端縁からは、上面の傾斜面側に突出する堰片20がそれぞれ延出されている。各ノズル6の下方に設けられた複数の傾斜板9は、基材1の搬送方向と直交する方向に互いに密接して並ぶように配設されている。
【0021】
この傾斜板9の幅寸法は、傾斜板9から散布される着色粉体4の拡散幅に一致させるものであり、すなわち基材1に設定される領域13の搬送方向と直交する方向の幅寸法と合致させる。この幅寸法は前記領域13の幅寸法に応じて適宜設定されるが、10〜100mmの範囲とすることができる。また、搬送経路27を搬送される基材1上に設定されている各領域13が、いずれかの傾斜板9の下方を通過するように傾斜板9の配置位置が設定される。
【0022】
このような散布手段28が、図2,6に示すように基材1の搬送方向に沿って複数設けられている。散布手段28の個数は、基材1に散布される着色粉体4の種類に応じた数である。
【0023】
各散布手段28のノズル6の開閉は、それぞれ独立に制御され、かかる制御を行うための制御手段9として、散布制御システム21が設けられている(図2参照)。
【0024】
散布制御システム21は、各種のCPU、ROM、RAM等から構成されるものであり、散布データ作成部22、散布制御部23、ノズル制御部24等を備えて形成してある。散布データ作成部22は、予め作成された色柄パターンのデータを入力して保存する。この色柄パターンは、上記のように基材1の表面に複数の領域13を設定する場合に、各領域13の基材1上の位置と、この各領域13に散布される着色粉体4の種類とを対応させた情報である。散布制御部23は、散布を行なう基材1に応じた色柄パターンのデータを散布データ作成部22から取り出し、この色柄パターンのデータに基づいて、ノズル制御部24に制御信号を出力するものである。またノズル制御部24はノズル6の開閉を行う各開閉手段7に接続してあり、散布制御部23から入力される制御信号に基づいて各開閉手段7を制御するものである。このノズル制御部24としては、例えば開閉手段7として上記のような油圧シリンダ18にて駆動するものを設ける場合に、この油圧シリンダ18の油圧制御を行う油圧ポンプ等を設けることができる。
【0025】
また、搬送経路27上に基材1を位置決めして配置する適宜の位置決め手段を設けてこの位置決め手段にて位置決めされる基材1の位置を散布制御部23に記憶させたり、或いは搬送経路27上の基材1の配置位置と基材1の搬送速度とを測定する適宜のセンサ等を設けてその測定情報に基づき散布制御部23にて基材1の搬送方向を演算して導出するようにしたりして、搬送経路27上を搬送される基材1の位置を散布制御部23が認識できるようにすることが好ましい。
【0026】
このようにして形成される粉体散布装置を用いて基材1の表面に着色粉体4を散布するにあたり、各散布手段28の貯留容器14には、基材1への散布に供する着色粉体4を貯留しておく。複数の散布手段28における各貯留容器14には、それぞれ異なる種類の所定の着色粉体4を貯留し、各貯留容器14に貯留されている着色粉体4の種類を散布制御部23に記憶させておく。また各散布手段28における各ノズル6は初期状態では図3に示すような閉状態としておく。
【0027】
そして、上記のような基材1をまず搬送手段26に供給し、搬送経路27上で搬送する。搬送経路27上の基材1は複数の散布手段28の下方を順次通過する。
【0028】
この基材1の搬送過程で、散布制御システム21は色柄パターンのデータと搬送経路27上の基材1の配置位置とに基づき、搬送経路27上の所定の領域13が、この領域13に散布されるべき着色粉体4を散布する散布手段28の下方を通過する際に、ノズル制御部24を駆動して図4に示すように前記領域13に対応するノズル6を開放する。ノズル6が開放されると、ノズル6からは貯留容器14内に貯留された着色粉体4が噴出され、この着色粉体4が傾斜板9(粉体拡散手段8)に受け止められる。着色粉体4は図5に示すようにこの傾斜板9上を滑落しながら傾斜板9の幅方向に広げられると共にその広がり幅が堰片20によって規制されて、傾斜板9の幅方向寸法と一致する幅、すなわち基板上の領域13の幅寸法と一致する幅で、基板上の所定の領域13に散布される。このとき散布制御システム21は傾斜板9の下端の直下に領域13の搬送方向の前端が到達した時点でこの着色粉体4の散布が開始され、この領域13の後端が傾斜板9の下端の直下に到達した時点で着色粉体4の散布を停止するようにノズル制御部24を制御するが、ノズル6からの着色粉体4の噴出開始から、このノズル6が傾斜板9を介して所定の領域13に到達するまでの間の搬送経路27上における基材1の移動距離を考慮してノズル6の開閉を制御することが好ましい。
【0029】
このようにして、複数の各散布手段28にてそれぞれ着色粉体4を散布することにより、基材1上の所定の領域13に所定の種類の着色粉体4が散布され、図6に示すように基材1表面に複数の着色粉体4がそれぞれ異なるパターン状に配置されて構成される所望の意匠模様が付与されることとなり、例えば文字や絵柄等を表すことも可能となる。また、このとき意匠模様は散布された粉体により形成されるため自然な風合いの模様を形成することが可能となる。
【0030】
上記工程による着色粉体4の散布後、基材1は搬送手段26から導出される。この基材1に対しては必要に応じて適宜の後処理が施される。
【0031】
例えば着色粉体4の散布に先立って基材1にベース塗料を塗布し、且つこのベース塗料を硬化成膜していない状態で着色粉体4を散布した場合には、着色粉体4の散布後にベース塗料を加熱処理等により硬化成膜することで基材1上にベース塗膜層3を介して着色粉体4を定着し、着色粉体層2を形成することができる。
【0032】
また、着色粉体4の散布後に、必要に応じて、表面保護用のクリア塗膜層5を形成する。クリア塗膜層5は適宜のクリアー塗料を塗布成膜することにより形成することができ、例えばアクリルシリコン系塗料や、アクリルエマルション系塗料等を用い、これを基材1の着色粉体4が散布された面にスプレー等して塗布した後、80〜150℃で焼き付け乾燥等して成膜することにより、クリア塗膜層5を形成することができる。このクリア塗膜層5の厚みは特に制限されないが、1〜10μmの範囲であることが好ましい。
【0033】
このようなクリア塗膜層5はその下層の着色粉体層2を保護することができ、また化粧材Aの耐候性等の性能向上を図ることができる。また着色粉体4がベース塗膜層3に固定されていない場合もクリア塗膜層5により着色粉体4を固定して着色粉体層2を形成することができる。
【0034】
また、クリア塗膜層5に代えて、前記クリア塗膜層5を形成する場合と同様のアクリルシリコン系塗料や、アクリルエマルション系塗料等に着色顔料を加えた塗料(エナメル塗料)を塗布成膜したエナメル塗膜層を形成しても良い。この場合、エナメル塗料を基材1の着色粉体4が散布された面にスプレー等して塗布した後、100〜150℃で焼き付け乾燥等して成膜することにより、エナメル塗膜層を形成することができる。このエナメル塗膜層の厚みは特に制限されないが、20〜50μmの範囲であることが好ましい。
【0035】
このようなエナメル塗膜層を形成する場合も、クリア塗膜層5を設ける場合と同様に、その下層の着色粉体層2を保護することができ、また化粧材Aの耐候性等の性能向上を図ることができる。また着色粉体4がベース塗膜層3に固定されていない場合もエナメル塗膜層により着色粉体4を固定して着色粉体層2を形成することができる。更に、着色粉体層2がエナメル塗膜層を透過して外部から視認できると共にこの着色粉体層2にて表される意匠模様にエナメル塗膜層の色彩を重ねることができ、化粧材Aの意匠性を更に向上することができる。
【0036】
また、この基材1には更に無機質塗料層を形成することもできる。無機質塗料層はクリア塗膜層5やエナメル塗装膜等の表面に無機質塗料を塗布成膜することで形成することができ、これにより化粧材Aの耐候性を向上することができる。無機質塗料としては適宜のものを用いることができるが、例えばオルガノシランのシリカ分散オリゴマー溶液に、ポリオルガノシロキサンや、アルキルチタン酸塩等の縮合反応触媒を加え、或いは更にシリカを加えたケイ素アルコキシド系塗料等を用い、これを静電塗装等して塗布した後、60〜120℃で焼き付け乾燥等して成膜することにより、無機質塗料層を形成することができる。この無機質塗料層の厚みは特に制限されないが、1〜10μmの範囲であることが好ましい
また、更に光触媒層を形成することも好ましい。光触媒層は、無機質塗料層の表面に光触媒を含有する無機質塗料を塗布成膜することで形成することができ、これにより化粧材Aの防汚性を向上することができる。光触媒を含有する無機質塗料としては適宜のものを用いることができるが、例えば上記のようなケイ素アルコキシド系塗料に酸化チタン等の光触媒を加えたもの等を用い、これをスプレー塗装等して塗布した後、60〜120℃で焼き付け乾燥等して成膜することにより、光触媒層を形成することができる。この光触媒層の厚みは特に制限されないが、0.2〜1.0μmの範囲であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示すものであり、(a)は断面図、(b)は平面図である。
【図2】粉体散布装置の一例を示す概略図である。
【図3】同上の散布手段の構成の一例を示す側面図である。
【図4】図3に示す散布手段の動作を示す側面図である。
【図5】同上の散布手段の構成を示す正面図である。
【図6】同上の粉体散布装置の一例を示す概略平面図である。
【符号の説明】
【0038】
A 化粧材
1 基材
2 着色粉体層
3 ベース塗膜層
4 着色粉体
5 クリアー塗膜層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面に複数の着色粉体がそれぞれ異なるパターン状に配置された着色粉体層を備えることを特徴とする化粧材。
【請求項2】
基材表面にベース塗膜層、上記着色粉体層、クリア塗膜層を順次設けて成ることを特徴とする請求項1に記載の化粧材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の化粧材の製造方法であって、基材を搬送しながら複数種類の着色粉体を基材の上面にそれぞれ異なるパターン状に散布する工程を含むことを特徴とする化粧材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−210135(P2007−210135A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−30226(P2006−30226)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(503367376)クボタ松下電工外装株式会社 (467)
【Fターム(参考)】