説明

化粧用粉末中の重金属の低減方法及び化粧品

【課題】 本発明は、化粧用粉末中の重金属の低減方法を提供する。
【解決手段】 本発明の化粧用粉末中の重金属の低減方法は、複数枚の合成樹脂フィルムを互いに積層一体化してなる積層フィルムを延伸し且つ互いに隣接する延伸後の合成樹脂フィルムの屈折率が異なる合成樹脂多層フィルムを裁断し粉末状にして得られる、重金属を含む化合物を含有してなる化粧用粉末を塩酸、硫酸及び硝酸からなる群から選ばれた一種又は二種以上の酸で処理して化粧用粉末中の重金属を含む化合物を低減した後、上記化粧用粉末をアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び炭酸ナトリウムからなる群から選ばれた一種又は二種以上の塩基で処理することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧用粉末中に含有される重金属を低減する重金属の低減方法及びこの重金属の低減方法によって得られた化粧用粉末を含有する化粧品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、女性が用いる化粧品には種々の光沢顔料が配合され、このような光沢顔料として天然の高級魚鱗箔が用いられており、上品な光沢と艶やかな輝きを与えてきた。ところが、上記天然の高級魚鱗箔は、天然であるが故に品質、光沢にばらつきを生じるために均質な化粧品を製造する上で問題を生じていた。
【0003】
そこで、上記天然の高級魚鱗箔に代わるものとして、特許文献1には、片面又は両面が無色又は着色した透明な樹脂層で被覆された金属蒸着箔の破砕小片で所定寸法及び所定比重を有する金属顔料を含んだメタリック調メーキャップ化粧料が提案されている。
【0004】
しかしながら、合成樹脂は、一般的に重金属を含有する触媒の存在下にて製造され、製造方法によっては得られた樹脂中に重金属が残存していることがあり、この重金属は、皮膚にあまり良い影響を与えるものではなく、できるだけ少ないことが好ましい。
【0005】
【特許文献1】特公昭53−35135号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、複数枚の合成樹脂フィルムを互いに積層一体化してなる積層フィルムを延伸し且つ互いに隣接する延伸後の合成樹脂フィルムの屈折率が異なる合成樹脂多層フィルムを裁断し粉末状にして得られる化粧用粉末中の重金属の低減方法及びこの重金属の低減方法で得られた化粧用粉末を含む化粧品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の化粧用粉末中の重金属の低減方法は、複数枚の合成樹脂フィルムを互いに積層一体化してなる積層フィルムを延伸し且つ互いに隣接する延伸後の合成樹脂フィルムの屈折率が異なる合成樹脂多層フィルムを裁断し粉末状にして得られる、重金属を含む化合物を含有してなる化粧用粉末を塩酸、硫酸及び硝酸からなる群から選ばれた一種又は二種以上の酸で処理して化粧用粉末中の重金属を含む化合物を低減した後、上記化粧用粉末をアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び炭酸ナトリウムからなる群から選ばれた一種又は二種以上の塩基で処理することを特徴とする。
【0008】
本発明で用いられる化粧用粉末は、複数枚の合成樹脂フィルムを互いに積層一体化してなる積層フィルムを延伸してなり且つ互いに隣接する延伸後の合成樹脂フィルムの屈折率が異なる合成樹脂多層フィルムを裁断し粉末状にして得られる。
【0009】
上記合成樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンイソフタレートフィルムなどのポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、エチレン−プロピレン共重合体フィルム、ポリブチレンフィルム、1,4−ポリブタジエンフィルム、1,4−ポリイソプレンフィルム、ブタジエン−イソプレン共重合体フィルム、ポリアクリル酸エステルフィルムなどが挙げられ、ポリエステル系樹脂フィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルムとポリエチレンイソフタレートフィルムとを併用することが好ましい。
【0010】
そして、上記合成樹脂多層フィルムは、複数枚の合成樹脂フィルムを互いに積層一体化してなる積層フィルムを延伸してなり且つ互いに隣接する延伸後の合成樹脂フィルムの屈折率が異なるものである。
【0011】
このような合成樹脂多層フィルムの製造方法としては、複数枚の合成樹脂フィルムを積層一体化して積層フィルムとし、この積層フィルムを縦方向及び横方向に所定延伸倍率で延伸することによって製造することができる。この際、合成樹脂多層フィルムにおける互いに隣接する合成樹脂フィルムにおける厚み方向の屈折率が互いに異なったものとなるように、複数枚の合成樹脂フィルムを積層一体化させて積層フィルムを製造する際、互いに隣接する合成樹脂フィルムの種類や厚みなどが相違するように調整する必要がある。なお、合成樹脂フィルムの厚み方向とは、合成樹脂フィルムの表面に対して垂直方向をいう。又、合成樹脂フィルムにおける厚み方向の屈折率は、例えば、アタゴ社から市販されているアッベ屈折計を用いて測定することができる。
【0012】
具体的には、合成樹脂多層フィルムの製造要領の一例として、先ず、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンイソフタレートとを別々の押出機に供給して250〜300℃にて溶融混練し、それぞれの溶融樹脂を複数層に分岐させた上で共押出し、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンイソフタレートとを交互に重ね合わせることによって積層フィルムを製造する。
【0013】
そして、得られた積層フィルムを延伸温度80〜130℃、延伸倍率2.0〜4.0倍にて押出方向及び押出方向に直交する方向に二軸延伸することによって合成樹脂多層フィルムを得ることができる。
【0014】
このようにして得られた合成樹脂多層フィルムは、互いに隣接する合成樹脂フィルムの屈折率の差に起因して光路差干渉を生じ、見る角度によって色調が著しく変化し、裁断して粉末状とすることにより、化粧用粉末として口紅、アイシャドー、マスカラ、ネールエナメルなどの化粧品に含有させて用いられる。
【0015】
上記化粧用粉末の形状は、特に限定されず、平面円形状;平面三角形状、平面四角形状、平面五角形状などの平面多角形状、短冊状などの種々の形状をとることができる。そして、化粧用粉末の大きさも化粧品内に含有させ皮膚上に塗布した際に支障を来さない程度の大きさであれば、特に限定されず、直径が150mmの真円内にはみ出ることなく収まる程度の大きさが好ましい。具体的には、化粧用粉末が平面円形状である場合には直径0.05〜1mmが好ましく、化粧用粉末が短冊状である場合には、長さが0.1〜100mmで且つ幅が0.05〜1.5mmが好ましい。更に、化粧用粉末の厚みは、薄いと、化粧用粉末を形成する合成樹脂フィルムの積層枚数が少なくなり、化粧用粉末の色調の変化が乏しくなることがある一方、厚いと、化粧品中に含有させて用いた際に皮膚に違和感を感じたり或いは化粧用粉末の色調の変化が乏しくなることがあるので、13〜200μmが好ましく、13〜50μmがより好ましい。
【0016】
一方、上記した合成樹脂フィルムを構成している合成樹脂は、その重合工程において重金属を含有する触媒が用いられている。なお、重金属とは、比重が4以上の金属をいい、例えば、Mn,Cu,Ni,Cr,Fe,As,Pb,Sb,Se,Cd,Hgなどが挙げられる。
【0017】
例えば、ポリエチレンの製造には、非晶質シリカを担体とし、酸化クロムなどの各種クロム化合物を担持し、更に空気中にて焼成して活性化させたPhillips触媒などが用いられ、ポリブタジエンの製造には、HgR2/TiI4、Niナフテネート/BF3/AlR3などのZiegler触媒などが用いられる。又、ポリエチレンテレフタレートは、例えば、第一段目において、ジメチルテレフタレートとエチレングリコールのエステル交換反応にて1〜4量体のビス−β−ヒドロキシエチルテレフタレート(BHET)を製造し、第二段目において、BHETを重縮合させて製造されるが、第一段目のエステル交換反応ではMnを含有する触媒が用いられ、第二段目の重縮合反応では、三酸化アンチモンや酢酸アンチモンなどのアンチモン系化合物が用いられる。
【0018】
このように、合成樹脂は、その重合工程において種々の重金属を含有した触媒を用いて製造されていることから、得られる合成樹脂には、微量ながら触媒に起因した、重金属を含む化合物が含有されている。
【0019】
そこで、本発明では、化粧用粉末を塩酸、硫酸及び硝酸からなる群から選ばれた一種又は二種以上の酸で処理した後に、化粧用粉末をアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び炭酸ナトリウムからなる群から選ばれた一種又は二種以上の塩基で処理することによって、化粧用粉末中の重金属を含有する化合物を除去或いは低減させている。
【0020】
具体的には、反応槽内に水を供給した後に該反応槽中に所定量の塩酸、硫酸及び硝酸からなる群から選ばれた一種又は二種以上の酸を供給し、しかる後、酸が供給された反応槽内に化粧用粉末を供給し5〜28時間に亘って放置して、化粧用粉末中の重金属を含有する化合物を水溶液中に溶解させることによって、化粧用粉末中における重金属を含有する化合物を除去或いは低減させる。
【0021】
ここで、塩酸の濃度は、低いと、化粧用粉末中の重金属を除去或いは低減することができないことがある一方、高いと、化粧用粉末の有する優れた色調の変化が損なわれる虞れがあるので、3〜15重量%が好ましい。又、塩酸と同様の理由で、硫酸の濃度は4〜40重量%が好ましく、硝酸の濃度は4〜40重量%が好ましい。
【0022】
なお、これら酸の濃度とは、化粧用粉末に接触させる際の濃度であり、例えば、予め化粧用粉末を入れた水中に、酸を供給する場合、酸の濃度とは、化粧用粉末が入った水で希釈された後の酸の濃度をいう。なお、酸の濃度の算出にあたっては、酸を希釈する水溶液は全て純水であると仮定して行う。
【0023】
続いて、上記反応槽内に、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び炭酸ナトリウムからなる群から選ばれた一種又は二種以上の塩基を供給して反応槽内の水溶液をpH6〜7とする。この際、塩基は、予め水に溶解させて水溶液として反応槽内に供給することが好ましい。そして、反応槽内の化粧用粉末を水或いは温水を用いて数回に亘って洗浄した後、乾燥機にて100〜120℃で4〜6時間に亘って乾燥することによって、重金属を含む化合物が除去或いは低減された化粧用粉末を得ることができる。
【0024】
なお、上記では、反応槽内に酸性の水溶液が存在した状態のまま、反応槽内の水溶液中に塩基を供給した場合を説明したが、反応槽内の酸性の水溶液を除去した上で、反応槽内に水或いは温水を供給して化粧用粉末を数回或いは数十回に亘って洗浄した後、反応槽内に該反応槽内の水溶液がpH6〜7となるまで塩基を供給してもよい。
【0025】
又、合成樹脂フィルム中に含有されている、重金属を含有する化合物は、製造直後或いは製造後それ程時間が経過していない場合には、重合工程において用いられたと同様の分子構造を有している。
【0026】
しかしながら、合成樹脂フィルムが製造されてから長時間が経過していたり或いは合成樹脂フィルムに紫外線が照射されるなどすると、合成樹脂フィルム中に含まれている、重金属を含有する化合物が、空気中の酸素によって酸化されてしまって重金属の酸化物となっている場合がある。
【0027】
このように、化粧用粉末中の重金属を含有する化合物が重金属の酸化物となっている場合、上述のように、化粧用粉末を酸で処理しても、化粧用粉末中の重金属の酸化物が酸に溶解しないことがある。このような場合は、化粧用粉末を上述の塩基で予め前処理をして、重金属の酸化物を還元した上で、上述の要領で化粧用粉末を処理することが好ましい。
【0028】
塩基による化粧用粉末の前処理を具体的に説明すると、先ず、反応槽内に水を供給した後に該反応槽中に所定量のアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び炭酸ナトリウムからなる群から選ばれた一種又は二種以上の塩基を供給する。次に、塩基が供給された反応槽内に化粧用粉末を供給して1〜28時間に亘って放置して、化粧用粉末中の重金属の酸化物を還元した後、反応槽内の水溶液を除去した上で、反応槽内に水或いは温水を供給して化粧用粉末を数回或いは数十回に亘って洗浄すればよい。
【0029】
ここで、アンモニア水の濃度は、低いと、重金属の酸化物が還元されないことがある一方、高いと、化粧用粉末の光沢が減少することがあるので、1〜20重量%が好ましい。又、アンモニア水と同様の理由で、水酸化ナトリウム水溶液の濃度は0.5〜10重量%が好ましく、水酸化カリウム水溶液の濃度は1〜20重量%が好ましく、炭酸ナトリウム水溶液の濃度は1〜20重量%が好ましい。
【0030】
ここで、塩基の濃度とは、化粧用粉末に接触させる際の濃度であり、例えば、予め化粧用粉末を入れた水中に、塩基を供給する場合、塩基の濃度とは、化粧用粉末が入った水或いは水溶液で希釈した時の塩基の濃度をいう。なお、塩基の濃度の算出にあたっては、塩基を希釈する水溶液は全て純水であると仮定して行う。
【0031】
このようにして得られた化粧用粉末は、重金属が除去され或いは低減されているので、肌への密着性やのびがよく肌への馴染み性に優れており、口紅、アイシャドー、マスカラネールエナメルなどの化粧品に含有させて好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の化粧用粉末中の重金属の低減方法は、上述のように、複数枚の合成樹脂フィルムを互いに積層一体化してなる積層フィルムを延伸し且つ互いに隣接する延伸後の合成樹脂フィルムの屈折率が異なる合成樹脂多層フィルムを裁断し粉末状にして得られる、重金属を含む化合物を含有してなる化粧用粉末を塩酸、硫酸及び硝酸からなる群から選ばれた一種又は二種以上の酸で処理して化粧用粉末中の重金属を含む化合物を低減した後、上記化粧用粉末をアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び炭酸ナトリウムからなる群から選ばれた一種又は二種以上の塩基で処理することを特徴とするので、化粧用粉末中に含まれる重金属を効果的に除去或いは低減することができ、肌への密着性やのびに優れ、肌への馴染み性に優れた化粧用粉末を得ることができ、この化粧用粉末は口紅、アイシャドー、ネールエナメルなどの化粧品全般に含有させて用いることができる。
【0033】
そして、上記化粧用粉末中の重金属の低減方法において、合成樹脂フィルムがポリエステル系樹脂である場合には、化粧用粉末は透明性に優れており、化粧品に含有させて肌に塗布した際に、皮膚の自然色を損なうことがなく、自然な印象を与える化粧を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンイソフタレートとを別々の押出機に供給して280℃にて溶融混練してポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンイソフタレートをそれぞれ100層に分岐させた後、ポリエチレンテレフタレート層とポリエチレンイソフタレート層とが交互に積層するような多層フィードブロック装置を用いて、その積層状態を保持したままダイへ供給し、キャスティングドラム上にキャストして各層の厚みが等しい積層フィルムを得た。
【0035】
次に、上記積層フィルムを90℃にて押出方向に3.6倍に延伸した後に、押出方向に直交する方向に3.9倍に延伸し、230℃にて3秒間に亘って熱固定処理を行って厚みが13〜19μmの合成樹脂多層フィルムを得た。続いて、この合成樹脂多層フィルムを一辺が50μmの平面正方形状に細かく切断して粉末状とすることによって化粧用粉末を得た。
【0036】
得られた化粧用粉末中に含有される重金属を蛍光X線分析により測定したところ、表1に示した量の様々な重金属が含有されていた。
【0037】
反応槽中に水1kgを供給する一方、60重量%の硝酸を用意し、この硝酸100gを反応槽中の水中に供給した。次に、反応槽中に化粧用粉末を100g供給して反応槽内を30分間に亘って攪拌した後、9時間だけ放置した。
【0038】
しかる後、反応槽中に水1kgを供給して反応槽内を30分間に亘って攪拌した後、反応槽中の水溶液を遠心分離機を用いて除去した。次に、反応槽中に1kgの水を加えて攪拌、脱水する工程を8回、繰り返して、反応槽内のpHを4〜5とした。続いて、反応槽内に1重量%の水酸化ナトリウム水溶液を反応槽内の水溶液がpH7となるまで徐々に供給した。
【0039】
次に、反応槽内を脱水した後、反応槽内に水を加えて化粧用粉末を洗浄した上で脱水した。この化粧用粉末の洗浄、脱水を6回繰り返して行った後に110℃にて4〜5時間に亘って乾燥して、重金属が低減化された化粧用粉末を得た。
【0040】
(実施例2)
硝酸の代わりに、35重量%の塩酸100gを用いたこと以外は実施例1と同様にして化粧用粉末を得た。
【0041】
(実施例3)
硝酸の代わりに、95重量%の硫酸80gを用いたこと以外は実施例1と同様にして化粧用粉末を得た。
【0042】
(実施例4)
水酸化ナトリウム水溶液の代わりに、2重量%のアンモニア水100gを用いたこと以外は実施例1と同様にして化粧用粉末を得た。
【0043】
(実施例5)
水酸化ナトリウム水溶液の代わりに、1重量%の水酸化カリウム水溶液100gを用いたこと以外は実施例1と同様にして化粧用粉末を得た。
【0044】
(実施例6)
水酸化ナトリウム水溶液の代わりに、2重量%の炭酸ナトリウム水溶液100gを用いたこと以外は実施例1と同様にして化粧用粉末を得た。
【0045】
(実施例7)
実施例1で得られた化粧用粉末を日光のあたる屋外に10日間に亘って放置して化粧用粉末に紫外線を照射した。そして、この化粧用粉末を実施例1と同様の要領で処理した後、この化粧用粉末中に含有されている重金属を蛍光X線分析により測定した。その結果を表3に示した。
【0046】
化粧用粉末中に含まれている、重金属を含む化合物が酸化されていたために、実施例1と同様の要領では、化粧用粉末中の重金属を含む化合物を低減させることはできなかったものと思われる。
【0047】
そこで、化粧用粉末に塩基を用いて前処理を施した。具体的には、反応槽中に1kgの水を供給した後、この反応槽中に水酸化ナトリウム48gを供給した。更に、上記反応槽中に化粧用粉末100gを供給して反応槽内を1時間に亘って攪拌した。
【0048】
次に、反応槽内の攪拌が終了してから3時間だけ放置し、反応槽内に水1kgを供給して反応槽内を30分間に亘って攪拌した後、反応槽内の水溶液を遠心分離機を用いて除去した。続いて、反応槽中に1kgの水を加えて攪拌、脱水する工程を8回、繰り返して、反応槽内のpHを8〜9として、前処理を施した化粧用粉末を得た。
【0049】
しかる後、上記とは別の反応槽内に水1kgを供給した後、この反応槽内に60重量%の硝酸80gを供給し、更に、反応槽内に上記前処理した化粧用粉末100gを供給して反応槽内を30分間に亘って攪拌した後、9時間だけ放置した。
【0050】
次に、反応槽中に水1kgを供給して反応槽内を30分間に亘って攪拌した後、反応槽中の水溶液を遠心分離機を用いて除去した。次に、反応槽中に1kgの水を加えて攪拌、脱水する工程を8回、繰り返して、反応槽内のpHを4〜5とした。続いて、反応槽内に1重量%の水酸化ナトリウム水溶液を反応槽内の水溶液がpH7となるまで徐々に供給した。
【0051】
続いて、反応槽内を脱水した後、反応槽内に水を加えて化粧用粉末を洗浄した上で脱水した。この化粧用粉末の洗浄、脱水を6回繰り返して行った後に110℃にて4〜5時間に亘って乾燥して、重金属が低減化された化粧用粉末を得た。
【0052】
(実施例8)
前処理に用いられた水酸化ナトリウムの代わりに、20重量%のアンモニア水100gを用いたこと以外は実施例7と同様の要領で、重金属が低減化された化粧用粉末を得た。
【0053】
(実施例9)
前処理に用いられた水酸化ナトリウムの代わりに、20重量%の水酸化カリウム水溶液100gを用いたこと以外は実施例7と同様の要領で、重金属が低減化された化粧用粉末を得た。
【0054】
(実施例10)
前処理に用いられた水酸化ナトリウムの代わりに、20重量%の炭酸ナトリウム水溶液100gを用いたこと以外は実施例7と同様の要領で、重金属が低減化された化粧用粉末を得た。
【0055】
上述の如くして得られた化粧用粉末中に含有される重金属を蛍光X線分析により測定したところ、表2に示した量の重金属が含有されていた。
【0056】
続いて、実施例1で得られた化粧用粉末を用いて化粧品を下記の通り作成した。
(口紅1)
化粧用粉末1重量部、マイクロクリスタリンワックス2重量部、セレシン11重量部、液状ラノリン2重量部、スクワラン1重量部、マカデミアナッツ油脂肪酸コレステリル8重量部、リンゴ酸ジイソステアリル10重量部、ジイソステアリン酸グリセリル5重量部、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル30重量部、オキシステアリン酸イソステアリル10重量部、シリコーン被覆顔料4重量部、硫酸バリウム4重量部、ベンガラ被覆雲母チタン0.1重量部、フィトステロール0.1重量部、重質流動イソパラフィン10重量部、並びに、適当量の染料及び香料を混合して加熱溶融させた後に型内に流し込んで急冷し円柱状に成形して口紅を得た。
【0057】
(口紅2)
化粧用粉末0.5重量部、流動パラフィン34重量部、トリ2−エチルへキサン酸グリセリル10重量部、シリコン被膜顔料0.1重量部、硫酸バリウム0.1重量部、δ−トコフェロール0.1重量部、パルミチン酸デキストリン15重量部、重質流動イソパラフィン40重量部、並びに、適当量のベンガラ被膜雲母及び色素を混合して加熱溶融させた後に型内に流し込んで急冷し円柱状に成形して口紅を得た。
【0058】
(アイシャドー)
化粧用粉末2重量部、ワセリン2重量部、ジメチルポリシロキサン2重量部、メチルフェニルポリシロキサン2重量部、グリセリン0.1重量部、トリオクタノイン1重量部、植物性スクワラン0.5重量部、セスキイソステアリン酸ソルビタン1重量部、アルキル変性シリコン樹脂被覆ベンガラ0.1重量部、窒化ホウ素2重量部、雲母チタン4重量部、金雲母4重量部、合成金雲母0.1重量部、セリサイト25重量部、雲母7重量部、ミリスチン酸亜鉛1重量部、ステアリン酸アルミニウム0.01重量部、無水珪酸4重量部、フィトステロール0.01重量部、酢酸DL−α−トコフェロール0.02重量部、D−δ−トコフェロール0.02重量部、アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム0.02重量部、パラオキシ安息香酸エステル0.2重量部、ベンガラ7重量部、黒酸化鉄2重量部、合成珪酸ナトリウム/マグネシウム0.1重量部、リンゴ酸ジイソステアリル5重量部、トリイソステアリン2重量部、並びに、適当量のタルク及び香料を混合して加熱溶融させた後に型内に流し込んで急冷し成形してアイシャドーを得た。
【0059】
(マスカラ)
化粧用粉末0.5重量部、エタノール5重量部、1,3−ブチレングリコール4重量部、水酸化カリウム0.1重量部、アシッドレッド0.1重量部、タートラジン0.1重量部、ブリリアントブルーFCF0.1重量部、デキストリン30重量部、海藻エキス0.1重量部、カルボキシビニルポリマー1重量部、並びに、適当量のヘキサメタリン酸ナトリウムパラオキシ安息香酸エステル及び精製水を混合して乳化分散させてマスカラを得た。
【0060】
(ネールエナメル1)
化粧用粉末3重量部、エタノール10重量部、ブタノール0.5重量部、マカデミアナッツ油0.1重量部、酢酸エチル30重量部、D−カンフル1重量部、酢酸DL−α−トコフェロール0.1重量部、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン0.1重量部、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル0.1重量部、ニトロセルロール15重量部、トルエンスルホンアミド樹脂10重量部、クエン酸アセチルトリブチル4重量部、並びに、適当量の酢酸ブチル、赤色255号及び紫色201号を混合してネールエナメルを得た。
【0061】
(ネールエナメル2)
化粧用粉末3重量部、ブタノール0.5重量部、酢酸エチル20重量部、ポリオキシエチレンアルキル(12−15)エーテルリン酸(2E.O.)0.1重量部、塩化ポリオキシプロピレンメチルジエチルアンモニウム0.5重量部、酸化チタン0.5重量部、雲母チタン(フラメンコレッド)0.5重量部、ベンガラ被覆雲母(コロロナシエナ)0.2重量部、ステアリン酸カルシウム0.1重量部、クエン酸0.1重量部、D−カンフル2.5重量部及び適当量の酢酸ビチルを混合してネールエナメルを得た。
【0062】
上記化粧品を用いたところ、化粧用粉末は、肌への密着性やのびに優れており肌への馴染み性に優れていた。そして、上記化粧品粉末は、ポリエチレンエテフレタレートフィルムとポリエチレンイソフタレートフィルムとを交互に積層一体化させてなり透明性に優れていることから、皮膚の自然な色を損なうことなく化粧用粉末の艶やかな色調の変化を伴った化粧を楽しむことができた。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の合成樹脂フィルムを互いに積層一体化してなる積層フィルムを延伸し且つ互いに隣接する延伸後の合成樹脂フィルムの屈折率が異なる合成樹脂多層フィルムを裁断し粉末状にして得られる、重金属を含む化合物を含有してなる化粧用粉末を塩酸、硫酸及び硝酸からなる群から選ばれた一種又は二種以上の酸で処理して化粧用粉末中の重金属を含む化合物を低減した後、上記化粧用粉末をアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び炭酸ナトリウムからなる群から選ばれた一種又は二種以上の塩基で処理することを特徴とする化粧用粉末中の重金属の低減方法。
【請求項2】
合成樹脂フィルムがポリエステル系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の化粧用粉末中の重金属の低減方法。
【請求項3】
重金属を含む化合物が重金属の酸化物であり、この重金属の酸化物を含有する化粧用粉末をアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び炭酸ナトリウムからなる群から選ばれた一種又は二種以上の塩基で処理して上記重金属の酸化物を還元した後、上記化粧用粉末を塩酸、硫酸及び硝酸からなる群から選ばれた一種又は二種以上の酸で処理して化粧用粉末中の重金属を含む化合物を低減した後、上記化粧用粉末をアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び炭酸ナトリウムからなる群から選ばれた一種又は二種以上の塩基で処理することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化粧用粉末中の重金属の低減方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載された化粧用粉末中の重金属の低減方法によって得られた化粧用粉末を含有することを特徴とする化粧品。

【公開番号】特開2006−188433(P2006−188433A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−381586(P2004−381586)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(304053821)株式会社角八魚鱗箔 (1)
【出願人】(505006220)カタニ産業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】