説明

化粧紙及び調湿化粧板

【課題】クリヤー層の膜厚が、耐磨耗性及び耐テープ剥離性などの表面物性を有する程度に厚い場合であっても、透湿性及び通気性を有する化粧紙の提供。
【解決手段】基紙表面に印刷絵柄層とクリヤー層とがこの記載の順序に積層されてなる化粧紙において、上記クリヤー層が特定の多孔質皮膜形成水分散型組成物により形成されていることを特徴とする化粧紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧紙及び該化粧紙を貼着してなる調湿化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
基紙の表面に、木目柄などの印刷絵柄層を形成し、更に印刷絵柄層の上にクリヤー層を形成してなる化粧紙は、意匠性及び表面物性に優れていることから、石膏ボードや合板などの基材に貼着され、化粧板の構成材料として用いられている。このようにして形成された化粧板は、建築内装又は家具などの表面装飾材として広く使用されている。このため、化粧板の最表層になる化粧紙のクリヤー層には、十分な堅牢性や耐汚染性などの機能が要求される。
【0003】
ところで、近年、住宅などの建築物は、高気密化が進んだことから、壁、窓又は収納内などに結露を生じさせることとなり、問題となっている。更に、建築物の高気密化は、建材、家具などに使われている化学物質から発生する揮発性有機化合物(ガス)を室内に滞留させることとなり、これらのガスが、居住者のアレルギー症状を引き起こす一因となっている。
【0004】
これらを防止する方法として、調湿性、更にはガス吸着性などの機能を有する材料を、化粧板を構成する基材に配合する方法が有効である。しかし、該基材に貼着される化粧紙は、そのクリヤー層が、通常、樹脂皮膜であるため、透湿性や通気性が低い。このため、調湿性やガス吸着性に優れた材料を配合してなる基材(本発明において、調湿基材と呼ぶ)は化粧板の基材として使用したとしても、上記クリヤー層の存在によって、上記材料が有する機能が損なわれる。即ち、化粧紙の表面層であるクリヤー層によって、調湿基材と雰囲気中との間における湿気や揮発性有機化合物の移動が阻害され、化粧板を構成する調湿基材が有する機能が十分に発揮されないという問題があった。
【0005】
上記した課題に対し、化粧紙を作製する場合に、基紙上に形成するクリヤー層の樹脂皮膜の厚みを大幅に薄くして、化粧紙が透湿性や通気性を有するものとなるように形成することが考えられる。しかしながら、化粧紙のクリヤー層の膜厚を薄く形成した場合は、これを貼着してなる化粧板の表面物性(例えば、耐磨耗性や耐テープ剥離性など)が不十分なものとなり、建築内装及び家具の表面装飾材として利用できる十分な堅牢性を有する化粧板が得られない。従って、化粧板とした場合に、その最表面層になる化粧紙のクリヤー層が表面装飾材として十分な堅牢性を有するものであり、しかも、化粧板に使用する基材が有する調湿性やガス吸着性を損なうことがない、それ自体が透湿性や通気性を有する化粧紙の開発が望まれる。
【0006】
調湿基材上に化粧紙を貼着してなる化粧板(以下、調湿化粧板と呼ぶ)においては、上記した化粧紙のクリヤー層の改良に加えて、更に、調湿基材と化粧紙との間の接着層についても、調湿基材が有する機能が損なわれないように形成することが望まれる。そのためには、接着層を薄くしたり、接着層を散点状に設けることや、接着層を形成する接着剤に透湿性や通気性を有するものを使用することが考えられる。しかし、十分な接着強度が得られなかったり、化粧板の製造作業が煩雑になったり、化粧板の表面が均一にならないといったことが懸念される。又、ある程度の透湿性や通気性を有する接着剤はあるものの、より優れた透湿性や通気性を有する接着剤が開発されれば、化粧紙のベースである調湿基材がもつ機能が、接着層によって損なわれることがなく、より優れた調湿性やガス吸着性を有する化粧板の提供が可能となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、化粧紙を基材上に貼着してなる化粧板とした場合に、その最表面層となる化粧紙のクリヤー層が、建築内装などの表面装飾材として利用できる十分な堅牢性を有し、しかも、化粧紙を貼着しても、貼着された基材のもつ調湿性やガス吸着性の機能を損なうことがない、それ自体が十分な透湿性や通気性を有する化粧紙を提供することにある。又、本発明の別の目的は、調湿基材の表面に化粧紙を貼着してなる化粧板において、建築内装及び家具の表面装飾材として有効に用いることができる十分な堅牢性を有するクリヤー層を有し、しかも、ベースとした調湿基材が有する調湿性やガス吸着性などの機能が損なわずに、これらの機能が有効に発揮される調湿化粧板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題は以下の本発明により解決される。即ち、本発明は、基紙表面に印刷絵柄層とクリヤー層とがこの記載の順序に積層されてなる化粧紙において、上記クリヤー層が多孔質皮膜形成水分散型組成物により形成されており、該多孔質皮膜形成水分散型組成物が、粒径0.03〜10μmの合成樹脂粒子及び水で構成された皮膜形成水性エマルジョンとコロイダルシリカとを主成分とし、上記皮膜形成水性エマルジョンが、α,β−エチレン性不飽和単量体とアクリルシラン又はビニルシランとを乳化重合して得たエマルジョンであり、上記コロイダルシリカが、上記合成樹脂粒子の1/3以下の粒径を有し、更に、該コロイダルシリカの配合量が、上記合成樹脂粒子を完全に被覆する質量の0.5〜30倍である構成を有することを特徴とする化粧紙である。
【0009】
又、本発明の化粧紙は、印刷絵柄層が、多孔質皮膜形成水分散型組成物をバインダーとする印刷インキにより形成されており、該多孔質皮膜形成水分散型組成物が、粒径0.03〜10μmの合成樹脂粒子及び水で構成された皮膜形成水性エマルジョンとコロイダルシリカとを主成分とし、上記皮膜形成水性エマルジョンが、α,β−エチレン性不飽和単量体とアクリルシラン又はビニルシランとを乳化重合して得たエマルジョンであり、上記コロイダルシリカが、上記合成樹脂粒子の1/3以下の粒径を有し、更に、該コロイダルシリカの配合量が、上記合成樹脂粒子を完全に被覆する質量の0.5〜30倍である構成を有することが好ましい。
【0010】
又、本発明は、基紙表面に印刷絵柄層とクリヤー層とがこの記載の順序に積層されてなる化粧紙において、上記クリヤー層が多孔質皮膜形成水分散型組成物により形成されており、該多孔質皮膜形成水分散型組成物が、固形分量が60〜95質量%の樹脂エマルジョンと、固形分量が5〜40質量%の透湿性付与剤とを含有する構成を有することを特徴とする化粧紙である。
【0011】
又、本発明の化粧紙は、前記印刷絵柄層が、多孔質皮膜形成水分散型組成物をバインダーとする印刷インキにより形成されており、該多孔質皮膜形成水分散型組成物が、固形分量が60〜95質量%の樹脂エマルジョンと、固形分量が5〜40質量%の透湿性付与剤とを含有する構成を有することが好ましい。又、本発明の化粧紙は前記透湿性付与剤が、水ガラスであることが好ましい。
【0012】
又、本発明は、基材と、その表面に貼着された化粧紙とからなる化粧板であって、上記基材が上記調湿基材であり、且つ、上記化粧紙が本発明の化粧紙であることを特徴とする調湿化粧板である。本発明の好ましい形態としては、調湿基材が、調湿性及び/又はガス吸着性材料を含有する石膏芯材を石膏ボード用原紙間に挟持してなる調湿石膏ボードであるものが挙げられる。
【0013】
又、本発明の調湿化粧板は、基材と化粧紙との間に形成されている接着層が、多孔質皮膜形成水分散型組成物により形成されており、該多孔質皮膜形成水分散型組成物が、粒径0.03〜10μmの合成樹脂粒子及び水で構成された皮膜形成水性エマルジョンとコロイダルシリカとを主成分とし、上記皮膜形成水性エマルジョンが、α,β−エチレン性不飽和単量体とアクリルシラン又はビニルシランとを乳化重合して得たエマルジョンであり、上記コロイダルシリカが、上記合成樹脂粒子の1/3以下の粒径を有し、更に、該コロイダルシリカの配合量が、上記合成樹脂粒子を完全に被覆する質量の0.5〜30倍である構成を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、化粧紙のクリヤー層の膜厚が、建築内装や家具などの表面装飾材の最表面層とされた場合に十分な堅牢性を発揮できる程度に厚い場合であっても、それ自体が透湿性及び通気性を有する化粧紙が提供される。又、本発明によれば、調湿基材表面に化粧紙を貼着して化粧板を形成した場合に、調湿基材が有する調湿性やガス吸着性などの機能が、貼着した化粧紙によって損なわれることなく、調湿基材の機能が有効に発揮される、建築内装や家具などの表面装飾材として有用な調湿化粧板が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、発明を実施するための好ましい形態を挙げて本発明を更に詳細に説明する。本発明者らは、前記した、建築内装や家具などの表面装飾材として用いる化粧板を構成する化粧紙が有する課題を解決すべく鋭意検討した結果、後述する多孔質皮膜形成水分散型組成物を、化粧紙のクリヤー層の形成材料に用いることが最適であることを見出して本発明に至った。即ち、後述する多孔質皮膜形成水分散型組成物により形成される皮膜は、その膜厚を厚くして堅牢性を高めた場合においても、孔径が0.01〜0.5μm程度の微細な孔が均一に形成された多孔質となり、透湿性及び通気性を有するものとなる。このため、上記組成物を用いて基紙上にクリヤー層を形成してなる本発明の化粧紙は、表面が十分な堅牢性を有し、しかも、高い透湿性及び通気性を有するものとなる。この結果、該化粧紙を調湿基材に貼着して化粧板を形成した場合に、従来の化粧紙を用いた場合のように、調湿基材が有する調湿性やガス吸着性などの機能を損なうことがない。又、本発明の化粧紙を貼着してなる化粧板は、耐磨耗性及び耐テープ剥離性などの表面物性に優れた十分な堅牢性も有するものとなるので、建築内装や家具などの表面装飾材として有効に用いることができる。
【0016】
本発明の化粧紙は、基紙に印刷絵柄層とクリヤー層とがこの記載の順序に積層されてなり、少なくとも上記クリヤー層が、後述する多孔質皮膜形成水分散型組成物から形成されていることを特徴とする。又、好ましい形態としては、上記印刷絵柄層の形成に使用するインキのバインダーに、後述する多孔質皮膜形成水分散型組成物を用いたものが挙げられる。
【0017】
本発明の化粧紙において、クリヤー層の形成、或いは必要に応じて印刷絵柄層形成用インキのバインダーとして用いる、特定の多孔質皮膜形成水分散型組成物について詳細に説明する。該組成物の実施形態の1つは、粒径0.03〜10μmの合成樹脂粒子と水で構成された皮膜形成水性エマルジョンとコロイダルシリカとを主成分とし、上記皮膜形成水性エマルジョンが、α,β−エチレン性不飽和単量体と、アクリルシラン又はビニルシランとを、乳化重合して得たエマルジョンであり、更に、コロイダルシリカが、上記合成樹脂粒子の1/3以下の粒径を有し、該コロイダルシリカの配合量が、上記合成樹脂粒子を完全に被覆する質量の0.5〜30倍である構成を有する組成物である。かかる構成の多孔質皮膜形成水分散型組成物は、例えば、特公平7−110906号公報に開示されており、自ら合成することもできるし、市販のもの(例えば、商品名:モビニール8000シリーズ、ニチゴー・モビニール社製)を使用することもできる。
【0018】
上記構成を有する多孔質皮膜形成水分散型組成物は、該組成物中の合成樹脂粒子がシラン基を有し、コロイダルシリカと結合している。そして、該組成物が乾燥して、クリヤー層などの皮膜を形成する際に、コロイダルシリカによって合成樹脂粒子が部分的に融着を阻害され、コロイダルシリカで包囲された空孔を生じ、この結果、多孔質皮膜が形成される。形成される多孔質皮膜の空孔は、使用する合成樹脂粒子の粒径によって適宜にコントロールされる。合成樹脂粒子の粒径は、0.03μm〜10μmの範囲内であり、大きければ大きな空孔を有する皮膜が得られ、小さければ小さな空孔を有する皮膜が得られる。本発明の化粧紙のクリヤー層の形成に用いた場合、形成される多孔質皮膜(クリヤー層)の空孔の大きさは特に限定されず、上記組成物を使用すれば、表面に多孔質皮膜を有する透湿性と耐水性を共に実現した化粧紙が得られる。尚、本発明で使用する上記構成の多孔質皮膜形成水分散型組成物における合成樹脂粒子は、該組成物によって、より均一な空孔の多孔質皮膜を得るために、ほぼ均一な粒径のものを使用することが好ましい。
【0019】
上記コロイダルシリカの粒径は、上記合成樹脂粒子の1/3以下の粒径であることを要する。合成樹脂粒子の1/3を超える粒径のコロイダルシリカを用いた場合には、多孔質皮膜を得ることができない。特に好ましいコロイダルシリカの粒径は、0.01μm以下である。又、上記コロイダルシリカの配合量は、上記合成樹脂粒子を完全に被覆する質量の0.5〜30倍であることを要する。即ち、該配合量が、0.5倍未満の場合や30倍を超える場合においては、形成される皮膜は、空孔が得られないか、均一な空孔を得ることができなくなる。
【0020】
上記皮膜形成水性エマルジョンは、α,β−エチレン性不飽和単量体とアクリルシラン又はビニルシランとを乳化重合して得られたエマルジョンであるが、該エマルジョンを得る具体的な方法としては、下記の方法が挙げられる。例えば、α,β−エチレン性不飽和単量体とアクリルシラン又はビニルシランとを乳化剤の存在下で、重合触媒を用いて乳化重合することによって得られる。又、アクリルシラン又はビニルシランの代わりに官能基を有するα,β−エチレン性不飽和単量体を用いて乳化重合して得たエマルジョンに、該官能基と反応性を有するシラン化合物を反応させる方法によっても得ることができる。合成樹脂中にシラン基が均一に存在するよりも、共重合体粒子の表面近く(外部)により多くシラン基が存在する方が、コロイダルシリカに対する反応性がより大きくなるため、この点を考慮すると、後者の方法で得たエマルジョンを使用することが好ましい。
【0021】
上記α,β−エチレン性不飽和単量体としては、特に制限はなく、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルへキシルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどのメタクリル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、メチルスチレン、クロルスチレンなどの1種又は2種以上を用いることができる。特に、ガラス転移温度の高い単量体と低い単量体を組み合わせた単量体が好適である。
【0022】
上記単量体は、他の単量体と共重合させることができ、例えば、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジエチルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル以外の不飽和カルボン酸エステル或いは不飽和多価カルボン酸エステル、酢酸ビニル、2−プロピオン酸ビニルなどのα−位で分岐した飽和カルボン酸のビニルエステルなどのビニルエステル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、エチレンなどの1種又は2種以上を用いることができる。
【0023】
上記した官能基を有するα,β−エチレン性不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸又は不飽和多価カルボン酸誘導体、アクリルアミドなどの不飽和カルボン酸アミド、N−メチロールアクリルアミドなどのN−メチロール不飽和カルボン酸アミド、グリシジルアクリレートなどの不飽和グリシジル化合物、アルキロール化不飽和化合物、フタル酸ジアリル、ジビニルベンゼン又はジアリル化合物などの1種又は2種以上である。官能基を有するα,β−エチレン性不飽和単量体は、α,β−エチレン性不飽和単量体の30質量%以下において併用できる。
【0024】
上記アクリルシラン、又は、ビニルシランとしては、加水分解型のものが好適であり、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどを用いることができ、特に共重合性の点からγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが好ましい。上記アクリルシラン又はビニルシランの使用割合は、α,β−エチレン性不飽和単量体とアクリルシラン又はビニルシランとの合計質量を100質量部とした場合に、0.5〜15質量部が適当である。好ましくは、2.0〜10質量部である。
【0025】
上記乳化剤としては、例えば、アルキルアリルスルホサクシネートのアルカリ塩、アルキルフェニルエーテルスルホン酸のナトリウム塩などの重合性乳化剤又は非重合性乳化剤を用いることができるが、最終的に形成される多孔質皮膜の耐水性の点から、重合性乳化剤を使用することが好ましい。重合性乳化剤の使用量は、全単量体100質量部に対して0.5〜10質量部が適当であり、好ましくは1〜5質量部である。
【0026】
乳化重合の方法としては、特に限定はなく、単量体の仕込み方式が回分方式でも、連続送入方式でもよい。又、一部を先に重合した後、残部を連続的に送入する方式でもよい。連続的に送入する単量体は、そのままでもよいが、水と乳化剤を用いて単量体乳化液として送入する方式はきわめて好適である。又、皮膜形成水性エマルジョンの製造は、高温重合又はレドックス重合を用いることができる。
【0027】
上記した反応性を有するシラン化合物としては、アミノシラン及び/又はエポキシシランが用いられる。アミノシランは、グリシジル基又はカルボキシル基を導入した共重合体の水性エマルジョンに対して特に有効であり、例えば、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシランなどを用いることができる。又、エポキシシランは、アミノ基又はカルボキシル基を導入した共重合体水性エマルジョンに対して特に有効であり、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキサン)エチルトリメトキシシランなどを用いることができる。
【0028】
上記コロイダルシリカとしては、コロイド状に水に分散させた超微粒子シリカゾル、又は超微粒子粉末シリカなどを挙げることができる。
【0029】
本発明の化粧紙で使用する多孔質皮膜形成水分散型組成物の別の実施態様は、該組成物が、固形分量が60〜95質量%の樹脂エマルジョンと、固形分量が5〜40質量%の透湿性付与剤とを含有する構成を有するものである。この構成の多孔質皮膜形成水分散型組成物は、上記樹脂エマルジョンと上記透湿性付与剤が、上記範囲内で配合されることにより、該組成物により形成される皮膜は、多孔質の連続皮膜となり、透湿性、通気性及び表面物性を実現した化粧紙が得られる。
【0030】
一方、上記構成の多孔質皮膜形成水分散型組成物における上記樹脂エマルジョンの配合量(固形分)が、60質量%未満の場合は、該組成物により形成される皮膜の表面物性(耐磨耗性など)が不十分となり、95質量%を超える場合は、上記皮膜の透湿性及び通気性が不十分となる。又、上記透湿性付与剤の配合量(固形分)が、5質量%未満の場合は、上記皮膜の透湿性及び通気性が不十分となり、40質量%を超える場合は、上記皮膜のタックが強くなるので好ましくない。
【0031】
上記樹脂エマルジョンを構成する樹脂としては、特に制限はなく、例えば、酢酸ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂(EVA系樹脂)、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂又はアクリルシリコン系樹脂などを挙げることができ、これらの群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0032】
上記透湿性付与剤とは、該透湿性付与剤を含有する上記構成の上記組成物により形成される皮膜を多孔質の連続皮膜とし、透湿性及び通気性を付与するための材料のことである。
【0033】
上記透湿性付与剤としては、例えば、珪酸リチウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム又は珪酸セシウムなどのアルカリ金属珪酸塩を主成分とした水ガラス、シリコーン樹脂エマルジョン、ステアリン酸カルシウム又はステアリン酸アルミニウムなどを挙げることができる。好ましくは、水ガラスである。更には、形成される皮膜の耐水性が良好である珪酸リチウムを主成分とした水ガラスが特に好ましい。又、上記透湿性付与剤は、固体状、水溶液又は水分散の形態で使用できる。
【0034】
これらの多孔質皮膜形成水分散型組成物には、該組成物によって形成される皮膜が多孔質皮膜となるのを阻害しない範囲において、着色剤、増粘剤、防腐剤、防触剤、蛍光剤、芳香剤、消臭剤、抗菌剤などの添加剤を適宜配合することができる。これらの添加剤は、多孔質皮膜形成水分散型組成物が使用される用途及び目的に応じて、適宜に選択することができる。例えば、その用途が、化粧紙のクリヤー層であるか、インキのバインダーであるか、接着層であるかによって、その種類及び添加量などを適宜に調整すればよい。
【0035】
本発明の化粧紙は、基紙表面に、印刷絵柄層とクリヤー層とがこの記載の順序に積層されてなり、該クリヤー層が、上述した多孔質皮膜形成水分散型組成物によって形成されていることを特徴とする。先に述べたように、上記組成物により形成される皮膜は、多孔質皮膜であることから、上記組成物によって形成されたクリヤー層を有する化粧紙は、高い透湿性及び通気性を有するものとなる。即ち、本発明者らの検討によれば、化粧紙の透湿性を損なう原因は、表面に設けるクリヤー層にあり、該クリヤー層を上記方法にて多孔質皮膜とすることで、この問題を解決できる。更に、上記クリヤー層を適宜な厚さに形成したとしても、高い透湿性及び通気性を有する化粧紙が得られる。このため、該化粧紙を調湿基材に貼着してなる化粧板を建築内装や家具などの表面装飾材として用いた場合には、化粧板の最表面層であるクリヤー層は高い堅牢性を示し、しかも、化粧板のベースである調湿基材のもつ透湿性やガス吸着性の機能が損なわれることのない有用なものとなる。
【0036】
上記クリヤー層は、基紙表面に設けられた印刷絵柄層上に形成される。又、上記多孔質皮膜形成水分散型組成物の塗工方法は、特に制限はなく、従来公知の方法を使用でき、例えば、グラビアコート、ロールコート、スプレーコートなどを用いることができる。上記組成物を塗布した後の乾燥は、自然乾燥でも、人工的に加熱乾燥してもよいが、上記した組成物中の共重合体(樹脂)の最低造膜温度以上で乾燥することが好ましい。又、上記クリヤー層の平均膜厚は、2μm以上40μm以下であることが好ましい。上記平均膜厚が2μm未満の場合は、化粧紙を貼着してなる化粧板を、建築内装などの表面装飾材として用いた場合に、十分な堅牢性が得られない場合がある。一方、上記平均膜厚が40μmを超える場合においても上記した調湿性及び/又はガス吸着効果は得られるが、上記範囲内と比べて劣り、又、上記化粧紙は経済性に劣るものになる。
【0037】
本発明の化粧紙を構成する印刷絵柄層は、基紙の表面に設けられ、化粧紙に意匠性を付与する。印刷絵柄層は、バインダーに顔料などを添加してなるインキを用いて、公知の印刷方式、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷などにより形成される。又、印刷絵柄層を形成する印刷インキのバインダーは、印刷絵柄層が、化粧紙の透湿性及び通気性に影響が少ない程度の小面積で形成される場合は、特に制限はなく、従来公知のインキ用バインダーを用いることができる。化粧紙の透湿性及び通気性を、更に向上させる点から、インキのバインダーとして、前記した化粧紙のクリヤー層の形成に用いたと同様の基本構成を有する多孔質皮膜形成水分散型組成物を用いることがより好ましい。特に、全面ベタ印刷などにより、印刷絵柄層を大面積にわたって形成する場合は、印刷絵柄層によって化粧紙の透湿性及び通気性が低下しないように、インキのバインダーを上記の構成とすることがより好ましい。又、インキ中の顔料は、特に限定されず、公知の顔料を用いることができ、更に、インキは、必要とされる特性に応じて、粘度調整剤、分散剤、充填剤などの添加剤を含むことができる。
【0038】
本発明の化粧紙を構成する基紙は、特に限定されず、従来の化粧紙に用いられているものを何れも使用できる。例えば、薄葉紙、チタン紙又はクラフト紙などを用いることができる。又、上記基紙の坪量は、特に制限はないが、坪量が30g/m2〜300g/m2であるものを使用することが好ましい。本来、紙は透湿性及び通気性を有するが、本発明の化粧紙が、より高い透湿性及び通気性を有するために、坪量が200g/m2以下の基紙を使用することがより好ましい。
【0039】
基材と、その表面に貼着された化粧紙とからなる本発明の調湿化粧板は、基材が調湿基材であり、その表面に貼着される化粧紙に、上記で説明した本発明の化粧紙が用いられてなることを特徴とする。先に述べたように、本発明の化粧紙は、表面のクリヤー層が堅牢性に優れた表面物性を有し、しかも、高い透湿性及び通気性を有するので、これを調湿性やガス吸着性を有する調湿基材に貼着してなる本発明の調湿化粧板は、調湿基材のもつ機能が損なわれることなく、その調湿性やガス吸着性が有効に発揮される有用な材料となる。
【0040】
本発明の調湿化粧板の好ましい形態としては、調湿基材と化粧紙とを貼着した場合に形成される接着層が、上記したクリヤー層の形成に用いたと同様の基本構成を有する多孔質皮膜形成水分散型組成物によって形成されているものが挙げられる。先に述べたように、該組成物により形成される皮膜は、多孔質皮膜となるので、該組成物により形成される接着層は、高い透湿性及び通気性を有するものとなる。接着層を形成する上記組成物の塗布方法は、特に制限はなく、従来公知の何れの方法を用いることができ、例えば、グラビアコート、ロールコート、スプレーコートなどを用いることができる。又、接着層を形成する上記組成物の塗布量は、特に制限はないが、例えば、10g/m2〜150g/m2程度であることが好ましい。
【0041】
本発明の調湿化粧板のベースとして用いる調湿基材としては、建築内装などの表面装飾材として有効に使用できる特性を有し、且つ、調湿性及び/又はガス吸着性を有するものであればよく、従来公知の何れのものも用いることができる。例えば、合板、中質繊維板又はインシュレーションボードなどの木質基材、調湿性材料などを添加して形成してなる石膏ボード又はケイ酸カルシウムボードなどの無機基材を用いることができる。
【0042】
本発明の調湿化粧板の好ましい実施態様として、例えば、調湿性材料及び/又はガス吸着性材料を含有する石膏芯材を石膏ボード用原紙間に挟持してなる調湿石膏ボードを用いたものを挙げることができる。調湿石膏ボードに使用する調湿性材料及び/又はガス吸着性材料は、特に制限はなく、従来公知のものを何れも用いることができ、具体的には、珪藻泥岩、珪質頁岩、酸性白土又は活性炭などを使用することができ、これらは単独でも混合物としても用いることができる。
【実施例】
【0043】
以下に実施例、比較例及び参考例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記実施例により限定されるものではない。
【0044】
[多孔質皮膜形成水分散型組成物の作製]
アクリル酸ブチル(α,β−エチレン性不飽和単量体)70質量部、メタクリル酸メチル(α,β−エチレン性不飽和単量体)30質量部からなる混合単量体を、アルキルフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム(非重合性乳化剤)2質量部を水107質量部に溶解した水溶液中に滴下して、乳化重合し、混合単量体の残りが5分の1となった時点より、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5質量部も滴下して乳化重合して、シラン基を含有する合成樹脂粒子と水で構成された皮膜形成水性エマルジョン(固形分濃度50質量%、樹脂粒径0.6μm)を得た。
【0045】
次に、得られた皮膜形成水性エマルジョン76質量部(固形分)に、固形分濃度40質量%、粒径0.05μmのコロイダルシリカ水性液24質量部(固形分)を加えて均一に攪拌し、コロイダルシリカを配合してなる多孔質皮膜形成水分散型組成物1(固形分47.2質量%)を得た。尚、コロイダルシリカの配合量は合成樹脂粒子を被覆する質量の1倍であった。
【0046】
次に、得られた皮膜形成水性エマルジョン70質量部(固形分)に、珪酸リチウムからなる水ガラス30質量部(固形分)を加えて均一に攪拌し、水ガラスを配合してなる多孔質皮膜形成水分散型組成物2を得た。
【0047】
次に、得られた皮膜形成水性エマルジョン80質量部(固形分)に、珪酸リチウムからなる水ガラス20質量部(固形分)を加えて均一に攪拌し、水ガラスを配合してなる多孔質皮膜形成水分散型組成物3を得た。
【0048】
[化粧紙の作製]
基紙として坪量が50g/m2の紙を用い、これにグラビア印刷機を用いて、透湿性及び通気性を有する程度の小面積の印刷絵柄層を形成した。次いで、上記印刷絵柄層の面上にロールコーターを用いて上記多孔質皮膜形成水分散型組成物1を乾燥後の平均膜厚が4μmとなるように塗布し、乾燥温度50℃にて30分間乾燥して、クリヤー層を形成し、実施例1の化粧紙を得た。又、上記印刷絵柄層を形成した後、クリヤー層を形成させずに化粧紙を作製し、参考例1の化粧紙とした。
【0049】
次に、実施例1における多孔質皮膜形成水分散型組成物1の塗布量を、上記平均膜厚が4μmとなる塗布量から上記平均膜厚が10μm、20μm、30μm又は50μmとなる塗布量に、それぞれ変更し、他は実施例1と同様の条件にて化粧紙を作製し、それぞれ実施例2乃至5の化粧紙とした。
【0050】
次に、坪量が50g/m2の紙に、前記多孔質皮膜形成水分散型組成物1をバインダーとするインキにより、フレキソ印刷機を用いて全面ベタ印刷の印刷絵柄層を形成した。印刷絵柄層を乾燥した後、上記印刷絵柄層の面上にロールコーターを用いて上記多孔質皮膜形成水分散型組成物1を乾燥後の平均膜厚が10μmとなるように塗布し、乾燥温度50℃にて30分間乾燥して、クリヤー層を形成し、実施例6の化粧紙を得た。
【0051】
次に、実施例1における多孔質皮膜形成水分散型組成物1を、前記多孔質皮膜形成水分散型組成物2に変更し、又、該組成物2の塗布量を、該組成物2を塗布・乾燥した後の平均膜厚が4μm、10μm、20μm、30μm又は50μmとなる塗布量とし、他は実施例1と同様の条件にて化粧紙を作製し、それぞれ実施例7乃至11の化粧紙とした。更に、実施例6における多孔質皮膜形成水分散型組成物1を多孔質皮膜形成水分散型組成物2に変更する以外は、実施例6と全く同様に化粧紙を作製し、実施例12の化粧紙とした。
【0052】
次に、実施例1における多孔質皮膜形成水分散型組成物1を、前記多孔質皮膜形成水分散型組成物3に変更し、又、該組成物3の塗布量を、該組成物3を塗布・乾燥した後の平均膜厚が4μm、10μm、20μm、30μm又は50μmとなる塗布量とし、他は実施例1と同様の条件にて化粧紙を作製し、それぞれ実施例13乃至17の化粧紙とした。更に、実施例6における多孔質皮膜形成水分散型組成物1を多孔質皮膜形成水分散型組成物3に変更する以外は、実施例6と全く同様に化粧紙を作製し、実施例18の化粧紙とした。
【0053】
次に、実施例1における多孔質皮膜形成水分散型組成物1を、前記皮膜形成水性エマルジョン(アクリル系樹脂エマルジョン)に変更し、又、該エマルジョンの塗布量を、該エマルジョンを塗布・乾燥した後の平均膜厚が4μm、10μm、20μm、30μm又は50μmとなる塗布量とし、他は実施例1と同様の条件にて化粧紙を作製し、それぞれ比較例1乃至5の化粧紙とした。
【0054】
[石膏ボードの作製]
前記多孔質皮膜形成水分散型組成物1(固形分47.2質量%)100質量部に対して、固形分25質量%のアクリル樹脂系増粘剤(商品名:モビニールLDM7010、ニチゴー・モビニール社製)を1質量部添加し、接着用の多孔質皮膜形成水分散型組成物(固形分47.0質量%)を得た。
【0055】
12.5mm厚の調湿石膏ボード(商品名:さわやか石膏ボード、チヨダウーテ社製)の片側表面上に、前記で作製した実施例1の化粧紙を、上記接着用の多孔質皮膜形成水分散型組成物40g/m2(固形分)を用いてラミネート加工し、実施例1の石膏ボードを作製した。
【0056】
実施例2乃至18、比較例1乃至5及び参考例1の化粧紙についても、実施例1の石膏ボードと同様の方法にて、それぞれ石膏ボードを作製し、それぞれ実施例2乃至18、比較例1乃至5及び参考例1の石膏ボードとした。
【0057】
[評価]
実施例及び比較例の化粧紙と石膏ボードについて、下記の試験方法にて評価した。評価結果を表1〜4に示す。尚、表中、「○」は優れる、「△」は良好、「×」は不良をそれぞれ示す。
【0058】
(1)耐磨耗性評価:化粧紙のクリヤー層を、テーバー磨耗試験機(磨耗輪CS−17、荷重500g)を用いて1,000回転後の状態を目視により確認した。
○:摩耗跡又は傷がない。
△:やや摩耗跡又は傷がある。
×:顕著な摩耗跡又は傷がある。
【0059】
(2)耐テープ剥離性評価:セロハンテープを化粧紙のクリヤー層に圧着した後、90度の角度で強く剥離し、クリヤー層の基紙に対する密着性を評価した。
○:クリヤー層がほとんど剥離しない。
△:クリヤー層が少し剥離する。
×:クリヤー層が大部分剥離する。
【0060】
(3)吸湿性評価:石膏ボードの試験体(200mm×200mmの大きさとし、裏面及び側面をアルミ箔でシールしたもの)を25℃、相対湿度50%の恒温恒湿槽に入れ48時間保持した後に上記試験体の質量を測定し、その後、25℃、相対湿度90%の恒温恒湿槽に入れ24時間保持した後に、再度上記試験体の質量を測定することにより、上記試験体の質量増加量を算出し、単位面積(m2)当たりに換算した値を吸湿量(g/m2)とした。
【0061】
(4)放湿性評価:石膏ボードの試験体(200mm×200mmの大きさとし、裏面及び側面をアルミ箔でシールしたもの)を25℃、相対湿度50%の恒温恒湿槽で48時間養生し、25℃、相対湿度90%の恒温恒湿槽に24時間保持した後に上記試験体の質量を測定し、その後、25℃、相対湿度50%の恒温恒湿槽に入れ24時間保持した後に、再度上記試験体の質量を測定することにより、上記試験体の質量減少量を算出し、単位面積(m2)当たりに換算した値を放湿量(g/m2)とした。
【0062】
(5)調湿性評価:上記吸湿性評価及び上記放湿性評価の評価結果により、下記の基準で調湿性評価をした。
○:吸湿量及び放湿量の両方が150g/m2以上である。
△:吸湿量又は放湿量の何れかが150g/m2未満であり、且つ吸湿量及び放湿量の両方が100g/m2以上である。
×:吸湿量及び放湿量の両方が100g/m2未満である。
【0063】
(6)ガス吸着性評価:上記で得た石膏ボードを100mm×100mmの大きさにカットし、ホルムアルデヒドの濃度を4〜4.5ppmに調整したデシケータ(容積:23L)の中に入れ、24時間後の濃度変化を測定した。
○:デシケータ中のホルムアルデヒドの濃度が2ppm未満。
△:デシケータ中のホルムアルデヒドの濃度が2ppm以上3ppm未満。
×:デシケータ中のホルムアルデヒドの濃度が3ppm以上。
【0064】

【0065】

【0066】

【0067】

【0068】
表1〜4の評価結果により、本発明の化粧紙は、耐磨耗性及び耐テープ剥離性を有する程度に該クリヤー層を厚膜に形成した場合であっても、これを貼着した石膏ボードは、その調湿性評価及びガス吸着性評価が損なわれることなく、高い透湿性及び通気性を有することが確認された。更に、本発明の化粧紙は、印刷絵柄層を全面ベタ印刷により形成したとしても、インキのバインダーとして多孔質皮膜形成水分散型組成物を使用することにより、高い透湿性及び通気性を有することが確認された。
【0069】
又、表1〜4の評価結果より、本発明の調湿化粧板は、調湿基材及び本発明の化粧紙を用いることにより、耐磨耗性、耐テープ剥離性、調湿性及びガス吸着性が優れていることが確認された。
【0070】
上記実施例は、調湿基材として調湿石膏ボードを使用することにより、本発明の調湿化粧板を説明したが、調湿基材は、該石膏ボードに限られないのは当然であり、他の調湿性及び/又はガス吸着性を有する木質基材又は無機基材などを調湿基材として本発明に使用できることは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によれば、化粧紙のクリヤー層の膜厚が、建築内装や家具などの表面装飾材の最表面層として十分な耐磨耗性及び耐テープ剥離性などの表面物性を有する程度に厚い場合であっても、透湿性及び通気性を有する化粧紙を提供することができる。又、本発明によれば、調湿基材表面に化粧紙を貼着してなる化粧板を形成した場合に、調湿基材が有する調湿性やガス吸着性などの機能が、貼着した化粧紙によって損なわれることなく、これらの機能が有効に発揮される調湿化粧板を提供することができる。従って、本発明の化粧紙及び調湿化粧板は、住宅などの内装仕上げ材(天井、壁材、収納壁材)、家具材などの表面装飾材としての用途に最適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙表面に印刷絵柄層とクリヤー層とがこの記載の順序に積層されてなる化粧紙において、上記クリヤー層が多孔質皮膜形成水分散型組成物により形成されており、該多孔質皮膜形成水分散型組成物が、粒径0.03〜10μmの合成樹脂粒子及び水で構成された皮膜形成水性エマルジョンとコロイダルシリカとを主成分とし、上記皮膜形成水性エマルジョンが、α,β−エチレン性不飽和単量体とアクリルシラン又はビニルシランとを乳化重合して得たエマルジョンであり、上記コロイダルシリカが、上記合成樹脂粒子の1/3以下の粒径を有し、更に、該コロイダルシリカの配合量が、上記合成樹脂粒子を完全に被覆する質量の0.5〜30倍である構成を有することを特徴とする化粧紙。
【請求項2】
前記印刷絵柄層が、多孔質皮膜形成水分散型組成物をバインダーとする印刷インキにより形成されており、該多孔質皮膜形成水分散型組成物が、粒径0.03〜10μmの合成樹脂粒子及び水で構成された皮膜形成水性エマルジョンとコロイダルシリカとを主成分とし、上記皮膜形成水性エマルジョンが、α,β−エチレン性不飽和単量体とアクリルシラン又はビニルシランとを乳化重合して得たエマルジョンであり、上記コロイダルシリカが、上記合成樹脂粒子の1/3以下の粒径を有し、更に、該コロイダルシリカの配合量が、上記合成樹脂粒子を完全に被覆する質量の0.5〜30倍である構成を有する請求項1に記載の化粧紙。
【請求項3】
基紙表面に印刷絵柄層とクリヤー層とがこの記載の順序に積層されてなる化粧紙において、上記クリヤー層が多孔質皮膜形成水分散型組成物により形成されており、該多孔質皮膜形成水分散型組成物が、固形分量が60〜95質量%の樹脂エマルジョンと、固形分量が5〜40質量%の透湿性付与剤とを含有する構成を有することを特徴とする化粧紙。
【請求項4】
前記印刷絵柄層が、多孔質皮膜形成水分散型組成物をバインダーとする印刷インキにより形成されており、該多孔質皮膜形成水分散型組成物が、固形分量が60〜95質量%の樹脂エマルジョンと、固形分量が5〜40質量%の透湿性付与剤とを含有する構成を有する請求項3に記載の化粧紙。
【請求項5】
前記透湿性付与剤が、水ガラスである請求項3又は4に記載の化粧紙。
【請求項6】
基材と、その表面に貼着された化粧紙とからなる化粧板であって、上記基材が調湿基材であり、且つ、上記化粧紙が請求項1〜5の何れか1項に記載の化粧紙であることを特徴とする調湿化粧板。
【請求項7】
前記調湿基材が、調湿性及び/又はガス吸着性材料を含有する石膏芯材を石膏ボード用原紙間に挟持してなる調湿石膏ボードである請求項6に記載の調湿化粧板。
【請求項8】
更に、前記基材と前記化粧紙との間に形成されている接着層が、多孔質皮膜形成水分散型組成物により形成されており、該多孔質皮膜形成水分散型組成物が、粒径0.03〜10μmの合成樹脂粒子及び水で構成された皮膜形成水性エマルジョンとコロイダルシリカとを主成分とし、上記皮膜形成水性エマルジョンが、α,β−エチレン性不飽和単量体とアクリルシラン又はビニルシランとを乳化重合して得たエマルジョンであり、上記コロイダルシリカが、上記合成樹脂粒子の1/3以下の粒径を有し、更に、該コロイダルシリカの配合量が、上記合成樹脂粒子を完全に被覆する質量の0.5〜30倍である構成を有する請求項6又は7に記載の調湿化粧板。

【公開番号】特開2008−132673(P2008−132673A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−320533(P2006−320533)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(506106866)株式会社自然素材研究所 (21)
【出願人】(000199245)チヨダウーテ株式会社 (23)
【出願人】(000113148)ニチゴー・モビニール株式会社 (24)
【Fターム(参考)】