説明

医用画像処理装置及びプログラム

【課題】医用画像に埋め込まれた画像マーカー情報を検出する処理速度、精度を向上させる。
【解決手段】検像装置1の制御部10は、通信部40を介してモダリティから取得した医用画像データに基づいて、輝度分布ヒストグラムを生成する。そして、制御部10は、この輝度分布ヒストグラムに基づいて、医用画像データの実画像データに埋め込まれた画像マーカー情報を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
病院や診療所等の医療施設において、読影医は、放射線撮影等により得られた画像(医用画像)をモニタに表示させ、この表示された画像を観察(読影)している。そして、読影医は、病変の有無や病変部の状態を判断する画像診断を行っている。この画像診断において、読影医は、患者のどの部位をどの方向から撮影した画像であるかを正しく認識した上で読影を行う必要がある。
【0003】
ところで、撮影により得られる画像の中には、例えば、撮影部位の左側面の画像と右側面の画像のように方向を混同しやすい画像もある。このため、撮影業務を行う撮影技師は、通常、撮影により得られた画像をモニタに表示させ、撮影部位と撮影方向を確認し、方向を判別しやすいように、表示様式を整えてから画像診断を行う読影医に画像を提供している。例えば、撮影技師は、左側面の画像はモニタ画面の左側に、右側面の画像はモニタ画面に右側に表示させるように表示様式を設定する。この設定により、読影医は、モニタに表示されている各画像が撮影部位を何れの方向から撮影したものであるかを、瞬時に把握することが可能となる。
【0004】
しかし、上記の方法は、画像診断を行う読影医にとっては都合がよいが、撮影方向の確認及び表示様式を整える設定作業等を行う撮影技師にとっては負担が大きかった。このような課題を解決するために、被写体の種別を示すマーク(被写体種別マーク)を画像中の撮影方向に応じた位置に配置し、検出された被写体種別マークの位置に基づいて被写体の撮影方向を自動的に判別するものが開示されている(特許文献1参照)。具体的に、医用画像(医用画像実データ)とその医用画像の付帯情報により構成される医用画像データの検像作業に用いられる情報処理装置が、付帯情報に含まれる撮影方向の情報と、医用画像実データから認識された情報(被写体種別マークの種別や位置)とを照合することにより、被写体の撮影方向の整合性を判別する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−260062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、医用画像実データに含まれる被写体種別マークの情報、即ち、医用画像に埋め込まれる画像マーカー情報を検出(認識)するには、文字認識の技術が必要となる。しかし、文字認識技術は、複雑なアルゴリズムを必要とするため、被写体種別マークの情報の検出処理に時間がかかってしまう。また、文字認識技術は、精度が必ずしも良いとは言えない。そのため、読影医は、情報処理装置による文字認識処理を必要とする検像作業に時間がかかってしまい、不便であった。
【0007】
本発明は、上述したような課題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、医用画像に埋め込まれた画像マーカー情報を検出する処理速度、精度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の医用画像処理装置は、
医用画像データの輝度情報に基づいて、当該医用画像データの実画像データに埋め込まれた画像マーカー情報を検出する制御手段、
を備える。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記制御手段は、前記医用画像データの輝度情報に基づいて輝度分布ヒストグラムを生成し、当該輝度分布ヒストグラムに基づいて前記画像マーカー情報を検出する。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、
前記制御手段は、前記輝度分布ヒストグラムにおける高輝度側のピーク値に基づいて前記画像マーカー情報を検出する。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の発明において、
前記医用画像データに関するオーダ情報を取得する第1取得手段を更に備え、
前記制御手段は、前記第1取得手段により取得されたオーダ情報からマーカー情報を検出し、当該マーカー情報と前記画像マーカー情報とを比較して整合性を判定し、不整合の場合、警告情報を表示手段に表示させる。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の発明において、
前記制御手段は、前記医用画像データに付帯する付帯情報からマーカー情報を検出し、当該マーカー情報と前記画像マーカー情報とを比較して整合性を判定し、不整合の場合、警告情報を表示手段に表示させる。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の発明において、
前記制御手段は、前記画像マーカー情報の検出の有無に基づいて前記整合性を判定する。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6の何れか一項に記載の発明において、
前記医用画像データを取得する第2取得手段を更に備える。
【0015】
請求項8に記載のプログラムは、
コンピュータを、
医用画像データの輝度情報に基づいて、当該医用画像データの実画像データに埋め込まれた画像マーカー情報を検出する制御手段、
として機能させる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1、8に記載の発明によれば、医用画像データの輝度情報に基づいて、この医用画像データの実画像データに埋め込まれた画像マーカー情報を検出する。そのため、医用画像に埋め込まれた画像マーカー情報を検出する処理速度、精度を向上させることができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、輝度分布ヒストグラムに基づいて画像マーカー情報を検出するため、更に、処理速度、精度を向上させることができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、輝度分布ヒストグラムにおける高輝度側のピーク値に基づいて画像マーカー情報を検出するため、更に、処理速度、精度を向上させることができる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、オーダ情報から検出したマーカー情報と画像マーカー情報とを比較し整合性を判定し、不整合の場合は警告情報を表示する。そのため、ユーザは、マーカー情報と画像マーカー情報との間の不整合を知ることができる。また、オーダ情報からマーカー情報を検出するため、正確な整合性の判定を行うことができる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、医用画像データに付帯する付帯情報から検出したマーカー情報と画像マーカー情報とを比較し整合性を判定し、不整合の場合は警告情報を表示する。そのため、ユーザは、マーカー情報と画像マーカー情報との間の不整合を知ることができる。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、より正確な整合性の判定を行うことができる。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、外部から取得する医用画像に埋め込まれた画像マーカー情報を検出する処理速度、精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】放射線科システムのシステム構成の一例を示すシステム構成図である。
【図2】検像装置のブロック図である。
【図3】変換テーブルのデータ構成図である。
【図4】マーカー判定処理を示すフローチャートである。
【図5】画像マーカー検出処理を示すフローチャートである。
【図6】ヒストグラム生成領域を示すイメージ図である。
【図7】輝度分布ヒストグラムの作成例である。
【図8】マーカー判定処理の変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の医用画像処理装置を図1の検像装置1に適用した場合の実施形態について図1〜図7を参照して説明する。
【0025】
[放射線科システムのシステム構成]
先ず、検像装置1を有する放射線科システムSの概要について図1を用いて説明する。
【0026】
図1は、放射線科システムSのシステム構成の一例を示すブロック図である。図1によれば、放射線科システムSは、検像装置1と、RIS2と、モダリティ3と、PACS4と、から構成されている。上記の各装置及びシステムはLAN(Local Area Network)等の通信ネットワークN2を介してデータ通信可能に接続されている。更に、RIS2は、院内ネットワークN1を介してHIS5とデータ通信可能に接続されている。
【0027】
HIS(病院情報システム)5は、制御部や記憶部、入力部、表示部、通信部等を有するコンピュータにより構成され、医療事務会計や診療予約、電子カルテの管理、検査及び薬剤等の各部門へのオーダリング等、病院内の情報を統括的に管理するシステムである。HIS5は、医師から放射線科システムSでの撮影依頼を受け付けて、その撮影依頼の内容を含むオーダ情報を生成する。そして、HIS5は、そのオーダ情報を院内ネットワークN1を介してRIS2に送信する。オーダ情報は、撮影を行う患者の氏名やID、性別等の患者情報と、医師がオーダした検査を識別する検査ID、検査部位、撮影方向及び体位といった検査条件を示す検査情報とを含むデータである。
【0028】
RIS(放射線情報システム)2は、制御部や記憶部、入力部、表示部、通信部等を有するコンピュータにより構成され、放射線科部門内における診療予約、診断結果のレポート、実績管理、材料在庫管理等の情報管理を行い、放射線科システムS内の情報を統括的に管理するシステムである。RIS2は、HIS5から送信されたオーダ情報を受信し、このオーダ情報にRISコードを含ませる。RIS2は、RISコードを含んだオーダ情報をモダリティ3と検像装置1とに送信する。
【0029】
RISコードとは、放射線科部門において、RIS2やモダリティ3、PACS4等を連携させるためのコード(整数列)である。一般的に、RISコードは、手技コード部(モダリティ・大分類・小分類・手技拡張等を示す)、部位コード部(小部位・左右等を示す)、撮影コード部(姿勢・体位・撮影方向等を示す)から構成される。例えば、RISコードは、「016110044000000」のような値となる。
【0030】
モダリティ3は、患者を撮影し、撮影画像(医用画像)の画像データ(実画像データ)を生成する医用撮影装置である。モダリティ3としては、CTやCR、MRI、乳房撮影装置、超音波診断装置等、様々な種類の医用画像を撮影するモダリティが適用可能である。
【0031】
モダリティ3は、RIS2から受信したオーダ情報に基づいて、生成した医用画像の実画像データに関する各種情報(患者情報、検査情報及びシリーズ情報等)を有する付帯情報を生成する。そして、モダリティ3は、実画像データに付帯情報を付帯させ、DICOM規格に則った医用画像データを生成する。モダリティ3は、生成した医用画像データを検像装置1に送信する。そして、検像装置1は、医用画像データをPACS4に転送する。
【0032】
モダリティ3は、医用画像データを生成する際、撮影技師の操作に従って、画像マーカー情報を生成して画像実データに埋め込む。即ち、モダリティ3は、画像マーカー情報を実画像データの一部とする。画像マーカー情報とは、「L」「R」等の実画像データであり、撮影時の検査条件等の注釈(アノテーション)を示す情報である。読影医は、この画像マーカー情報を参照して検査情報等を確認することができる。
【0033】
検像装置1は、RIS2から送信されるオーダ情報と、モダリティ3から送信される医用画像データとを受信して、撮影技師の検像を待機する。「検像」とは、オーダ情報通りの撮影を行ったか、医用画像データの実画像データが診断に適した画質であるか、オーダ情報と付帯情報との整合性が取れているか等を医用画像データのPACS4への転送前に確認及び修正する行為である。このとき、検像装置1は、マーカー判定処理を行う。マーカー判定処理については後述する。撮影技師が各医用画像データの検像を行うと、検像装置1は、当撮影技師の操作に従って医用画像データをPACS4に転送(送信)する。
【0034】
PACS4は、モダリティ3において生成された医用画像データを保存管理し、検索やデータ解析を行うデータベースシステムである。PACS4は、制御部や記憶部、通信部等を備えて構成され、検像装置1から受信した医用画像データに含まれる付帯情報に基づいて当該医用画像データを、例えば、リレーショナルデータベースに蓄積記憶していく。そして、PACS4は、読影医等の操作指示に応じて指定された患者IDや検査ID等を検索キーとして医用画像データを検索し、図示しないビューアやイメージャに出力する。
【0035】
[検像装置の機能的構成]
図2に、検像装置1の機能的構成を示す。
【0036】
図2に示すように、検像装置1は、制御部10、操作部20、表示部30、通信部40、記憶部50を備えて構成され、各部はバス60により接続されている。
【0037】
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等から構成され、検像装置1の各部の処理動作を統括的に制御する。具体的には、CPUは、操作部20から入力される操作信号又は通信部40により受信される指示信号に応じて、記憶部50に記憶されている各種処理プログラムを読み出し、RAM内に形成されたワークエリアに展開し、当該プログラムとの協働により各種処理を行う。
【0038】
操作部20は、カーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードに対するキー操作やマウス操作により入力された操作信号を制御部10に出力する。
【0039】
表示部30は、LCD(Liquid Crystal Display)により構成され、制御部10から入力される表示データに基づいて各種画面を表示する。
【0040】
通信部40は、LAN(Local Area Network)アダプタ、ルータ、TA(Terminal Adapter)等を備え、通信ネットワークN2を介して接続されたRIS2、モダリティ3、PACS4等の外部機器との間でデータの送受信を行う。
【0041】
記憶部50は、ハードディスク等から構成され、制御プログラム、当該プログラムの実行に必要なパラメータやファイル等を記憶している。また、記憶部50は、モダリティ3から送信された検像待ちの医用画像データを一時的に記憶する。記憶部50は、変換テーブル52を記憶する。
【0042】
図3に変換テーブル52のデータ構成を示す。図3に示すように、変換テーブル52は、「RISコード」「撮影部位/方向/手技」「マーカー」の項目から成る。制御部10は、この変換テーブル52に基づいて、オーダ情報に含まれるRISコードからマーカー情報を検出(識別)する。例えば、オーダ情報に含まれるRISコードが「016110044000000」である場合、マーカー情報は、「R」となる。項目「マーカー」が空欄(無効値)の場合は、マーカーが必要無いことを示す。以下、オーダ情報に含まれるRISコードから検出されたマーカー情報をオーダマーカー情報と称す。
【0043】
図2に戻り、制御部10は、通信部40を介して、モダリティ3から医用画像データを受信すると、この医用画像データを記憶部50に記憶させる。また、制御部10は、通信部40を介して、RIS2からオーダ情報を受信すると、このオーダ情報を記憶部50に記憶させる。そして、制御部10は、撮影技師等による操作部20からの操作信号に基づき、表示部30に医用画像と付帯情報、オーダ情報等を表示させる。撮影技師は、表示されたこれらの情報を参照し、検像を行う。
【0044】
制御部10は、マーカー判定処理を行う。マーカー判定処理とは、医用画像データの実画像データに埋め込まれた画像マーカー情報と、対応するオーダ情報から検出されるオーダマーカー情報とを比較し、整合性を判定する処理である。
【0045】
[マーカー判定処理]
次に、検像装置1の制御部10が行うマーカー判定処理の具体的な処理内容について、図4を用いて説明する。
【0046】
制御部10は、通信部40を介してモダリティ3から医用画像データを受信する(ステップS1)。
【0047】
次に、制御部10は、画像マーカー検出処理を行う(ステップS2)。具体的に、制御部10は、ステップS1において受信した医用画像データの実画像データに埋め込まれた画像マーカー情報を検出する。画像マーカー検出処理の詳細については後述する。
【0048】
次に、制御部10は、通信部40を介してRIS2からオーダ情報を受信する(ステップS3)。このオーダ情報は、ステップS1において受信した医用画像データに対応するオーダ情報である。即ち、ステップS1において受信した医用画像データは、モダリティ3において、このオーダ情報に基づいて生成されたデータである。
【0049】
次に、制御部10は、変換テーブル52を参照し、受信したオーダ情報からオーダマーカー情報を検出する(ステップS4)。具体的に、制御部10は、記憶部50から変換テーブル52を読み出す。制御部10は、受信したオーダ情報に含まれるRISコードの値と一致する値を持つレコードの「マーカー」の値を読み出す。制御部10は、この値をオーダマーカー情報とする。
【0050】
そして、制御部10は、ステップS2の画像マーカー検出処理において、医用画像データの実画像データから画像マーカー情報を検出した場合(ステップS5;YES)、画像マーカー情報とオーダマーカー情報とが一致するか否かを判定する(ステップS6)。例えば、画像マーカー情報が「R」、オーダマーカー情報が「R」の場合、制御部10は、一致すると判定する。一方、画像マーカー情報が「L」、オーダマーカー情報が「R」の場合、制御部10は、一致しないと判定する。
【0051】
制御部10は、画像マーカー情報とオーダマーカー情報とが一致する場合(ステップS6;YES)、マーカー判定処理を終了する。制御部10は、画像マーカー情報とオーダマーカー情報とが一致しない場合(ステップS6;NO)、その旨を示す警告情報を表示部30に表示させる(ステップS9)。そして、制御部10は、マーカー判定処理を終了する。
【0052】
一方、制御部10は、ステップS2の画像マーカー検出処理において、医用画像データの実画像データから画像マーカー情報を検出しなかった場合(ステップS5;NO)、医用画像データの付帯情報から検査部位情報(撮影部位/方向/手技)を取得する(ステップS7)。具体的には、制御部10は、付帯情報に含まれる検査情報の項目の一つである検査部位情報を取得する。例えば、検査部位情報は、「肩関節右正面A−P」のような値をとる。
【0053】
制御部10は、変換テーブル52と、ステップS7において取得した検査部位情報(撮影部位/方向/手技)とに基づいて、画像マーカーが必要であるか否かを判定する(ステップS8)。具体的に、制御部10は、ステップS7において取得した検査部位情報の値と一致する値を持つ項目「撮影部位/方向/手技」を持つレコードの項目「マーカー」の値が空欄(無効値)であるか否かを判定する。
【0054】
制御部10は、ステップS8において画像マーカーが必要で無いと判定すると(ステップS8;NO)、マーカー判定処理を終了する。一方、制御部10は、画像マーカーが必要で有ると判定すると(ステップS8;YES)、警告情報を表示部30に表示させる(ステップS9)。そして、制御部10は、マーカー判定処理を終了する。
【0055】
尚、本フローチャートにおいて、制御部10は、医用画像データの付帯情報から検査部位情報を取得し(ステップS7)、この検査部位情報と変換テーブル52とに基づいて、画像マーカーが必要か否かを判定した(ステップS8)が、以下のように処理を実行してもよい。即ち、制御部10は、ステップS4において、変換テーブル52を参照して、対応するレコードの「マーカー」の値が空欄(無効値)であるか否かを判定し、判定結果を保持しておく。そして、制御部10は、ステップS7の処理を実行せずに、この判定結果に基づいて、ステップS8における画像マーカーが必要か否かの判定を行う。
【0056】
[画像マーカー検出処理]
次に、画像マーカー検出処理(図4のステップS2)の具体的な処理内容について、図5を用いて説明する。
【0057】
検像装置1の制御部10は、医用画像データの実画像データから輝度分布ヒストグラムを生成する領域(ヒストグラム生成領域)を抽出する(ステップS101)。具体的には、図6に示すように、制御部10は、画像マーカー情報の輝度に近いノイズが多く存在する領域である実画像データの外周の所定ピクセル(例えば、20ピクセル)を実画像データから除外して、ヒストグラム生成領域を抽出する。
【0058】
図5に戻り、制御部10は、ステップS101において抽出したヒストグラム生成領域に基づいて、各輝度に対するピクセル数を示す輝度分布ヒストグラム(図7参照)を生成する(ステップS102)。
【0059】
図7に、輝度分布ヒストグラムの作成例を示す。この輝度分布ヒストグラムでは、横軸が輝度、縦軸がピクセル数となっている。ここで、実画像データに画像マーカー情報が埋め込まれている場合、高輝度側にピークが現れる。制御部10は、このピークにおけるピクセル数に基づいて、画像マーカー情報を検出して種類を判別する。具体的に、制御部10は、このピークにおけるピクセル数が「1670±40」である場合、画像マーカー情報「L」が実画像データに埋め込まれていると判定する。また、制御部10は、このピークにおけるピクセル数が「2920±40」である場合、画像マーカー情報「R」が実画像データに埋め込まれていると判定する。ピクセル数の値(ピーク値)は、経験によって求められ変更可能である。また、ピクセル数の幅「±40」は、階調処理等に基づく誤差を考慮したものである。
【0060】
図5に戻り、制御部10は、ステップS102において生成した輝度分布ヒストグラムに基づいて、画像マーカー情報を検出する(ステップS103)。また、制御部10は、輝度分布ヒストグラムの高輝度側にピークを検出しなかった場合、画像マーカー情報無しとする。以上で、画像マーカー検出処理が終了する。
【0061】
以上、本実施形態によれば、検像装置1の制御部10は、通信部40を介してモダリティ3から取得した医用画像データに基づいて、輝度分布ヒストグラムを生成する。そして、制御部10は、この輝度分布ヒストグラムに基づいて、医用画像データの実画像データに埋め込まれた画像マーカー情報を検出する。そのため、制御部10は、文字認識技術を用いることなく、画像マーカー情報を検出することができる。よって、医用画像に埋め込まれた画像マーカー情報を検出する処理速度、精度を向上させることができる。
【0062】
また、制御部10は、通信部40を介してRIS2から取得したオーダ情報からオーダマーカー情報を検出する。そして、制御部10は、オーダマーカー情報と画像マーカー情報とを比較し、整合性を判定する。判定結果が不整合の場合、制御部10は、表示部30に警告情報を表示させる。そのため、ユーザは、オーダマーカー情報と画像マーカー情報との間の不整合を知ることができる。また、オーダ情報からマーカー情報を検出するため、正確な整合性の判定を行うことができる。
[変形例]
【0063】
次に、本発明の医用画像表示装置を図1の検像装置1に適用した場合の実施形態の変形例について説明する。本説明では、上述した実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0064】
上述した実施形態では、検像装置1の制御部10は、オーダ情報から検出したオーダマーカー情報と画像マーカー情報とが一致するか否かを判定した。しかし、実施形態の変形例では、制御部10は、医用画像データの付帯情報から検出した付帯マーカー情報と画像マーカー情報とが一致するか否かを判定する。ここで、付帯マーカー情報とは、医用画像データの付帯情報から検出されるマーカー情報のことである。
【0065】
[マーカー判定処理]
検像装置1の制御部10が行うマーカー判定処理の具体的な処理内容の変形例について、図8を用いて説明する。
【0066】
まず、制御部10は、通信部40を介してモダリティ3から医用画像データを受信する(ステップS201)。
【0067】
次に、制御部10は、画像マーカー検出処理を行う(ステップS202)。具体的に、制御部10は、ステップS201において受信した医用画像データの実画像データに埋め込まれた画像マーカー情報を検出する。
【0068】
次に、制御部10は、変換テーブル52を参照し、ステップS201において受信した医用画像データの付帯情報から付帯マーカー情報を検出する(ステップS203)。具体的に、制御部10は、記憶部50から変換テーブル52を読み出す。制御部10は、受信した医用画像データの付帯情報に含まれる検査部位情報(撮影部位/方向/手技)と一致する項目「撮影部位/方向/手技」の値を持つレコードの「マーカー」の値を読み出す。制御部10は、この値を付帯マーカー情報とする。
【0069】
そして、制御部10は、ステップS202の画像マーカー検出処理において、医用画像データの実画像データから画像マーカー情報を検出した場合(ステップS204;YES)、画像マーカー情報と付帯マーカー情報とが一致するか否かを判定する(ステップS205)。制御部10は、画像マーカー情報と付帯マーカー情報とが一致する場合(ステップS205;YES)、マーカー判定処理を終了する。制御部10は、画像マーカー情報と付帯マーカー情報とが一致しない場合(ステップS205;NO)、その旨を示す警告情報を表示部30に表示させる(ステップS208)。そして、制御部10は、マーカー判定処理を終了する。
【0070】
一方、制御部10は、ステップS202の画像マーカー検出処理において、医用画像データの実画像データから画像マーカー情報を検出しなかった場合(ステップS204;NO)、画像マーカーが必要で有るか否かを判定する(ステップS206)。具体的に、制御部10は、ステップS203において検出した付帯マーカー情報が無効値である場合、画像マーカーは必要で無いと判定する。制御部10は、それ以外の場合、画像マーカーが必要で有ると判定する。
【0071】
制御部10は、ステップS206において画像マーカーが必要で無いと判定すると(ステップS206;NO)、マーカー判定処理を終了する。一方、制御部10は、画像マーカーが必要で有ると判定すると(ステップS206;YES)、警告情報を表示部30に表示させる(ステップS207)。そして、制御部10は、マーカー判定処理を終了する。
【0072】
以上、本変形例によれば、検像装置1の制御部10は、医用画像データの付帯情報から付帯マーカー情報を検出する。そして、制御部10は、付帯マーカー情報と画像マーカー情報とを比較し、整合性を判定する。判定結果が不整合の場合、制御部10は、表示部30に警告情報を表示させる。そのため、ユーザは、付帯マーカー情報と画像マーカー情報との間の不整合を知ることができる。
【0073】
尚、本実施形態における記述は、本発明に係る医用画像処理装置の一例であり、これに限定されるものではない。システム及び各装置の細部構成及び細部動作に関しても適宜変更可能である。
【0074】
また、本実施形態では、プログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な媒体としてハードディスクを使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、CD−ROM等の可搬型記憶媒体、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ等を適用することが可能である。また、プログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウェーブ(搬送波)も適用可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 検像装置
2 RIS
3 モダリティ
4 PACS
5 HIS
10 制御部
20 操作部
30 表示部
40 通信部
50 記憶部
52 変換テーブル
60 バス
N1 院内ネットワーク
N2 通信ネットワーク
S 放射線科システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像データの輝度情報に基づいて、当該医用画像データの実画像データに埋め込まれた画像マーカー情報を検出する制御手段、
を備える医用画像処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記医用画像データの輝度情報に基づいて輝度分布ヒストグラムを生成し、当該輝度分布ヒストグラムに基づいて前記画像マーカー情報を検出する、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記輝度分布ヒストグラムにおける高輝度側のピーク値に基づいて前記画像マーカー情報を検出する、
請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記医用画像データに関するオーダ情報を取得する第1取得手段を更に備え、
前記制御手段は、前記第1取得手段により取得されたオーダ情報からマーカー情報を検出し、当該マーカー情報と前記画像マーカー情報とを比較して整合性を判定し、不整合の場合、警告情報を表示手段に表示させる、
請求項1〜3の何れか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記医用画像データに付帯する付帯情報からマーカー情報を検出し、当該マーカー情報と前記画像マーカー情報とを比較して整合性を判定し、不整合の場合、警告情報を表示手段に表示させる、
請求項1〜3の何れか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記画像マーカー情報の検出の有無に基づいて前記整合性を判定する、
請求項4又は5に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記医用画像データを取得する第2取得手段を更に備える、
請求項1〜6の何れか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
コンピュータを、
医用画像データの輝度情報に基づいて、当該医用画像データの実画像データに埋め込まれた画像マーカー情報を検出する制御手段、
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−188042(P2010−188042A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37736(P2009−37736)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】