医用画像処理装置及び治療支援システム
【課題】被検体の複数領域を3Dボリューム撮像して得られた3D画像を、基準となる3D画像の生体情報に合わせて画像を補償する。
【解決手段】医用画像撮像装置により得られた異なる生体時相の3Dボリューム画像303を、その3Dボリューム画像303と同じ撮影位置、かつ、所望する生体時相において2次元マルチスライス撮像をして得た2次元マルチスライス画像607を用いて画像補償する。これにより、再度の3D撮像を行うことなく、所望する生体時相の3Dボリューム画像303Bを生成する。
【解決手段】医用画像撮像装置により得られた異なる生体時相の3Dボリューム画像303を、その3Dボリューム画像303と同じ撮影位置、かつ、所望する生体時相において2次元マルチスライス撮像をして得た2次元マルチスライス画像607を用いて画像補償する。これにより、再度の3D撮像を行うことなく、所望する生体時相の3Dボリューム画像303Bを生成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像処理装置及び治療支援システムに係り、特に、被検体の体動(呼吸動など)による3次元ボリューム画像の時相のずれを補償する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被検体を撮影するMRI装置において、画像再構成に必要なN個(Nは1以上の整数)のエコー(本スキャンデータ)を取得するにあたり、呼吸動をモニタするための着目部位を含む関心領域をカバーする本スキャンのスライス面とは独立したスライス面に位相エンコードを付加しないm個(mは1以上N以下の整数)のナビゲーションエコーを本スキャンデータ毎に取得し、取得した各ナビゲーションエコーを周波数方向に1次元フーリエ変換し、画素信号の強度として表わされる実空間データを求め、実空間データから着目部位を含む関心領域を演算で抽出し、関心領域内の実空間データから着目部位の位置を検出する磁気共鳴イメージング装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−57226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
腹部領域における一般的な3次元ボリューム撮像は、体動(例えば呼吸動)の影響を少なくするために息止め撮像が行われる。しかし、息止め可能な時間は有限なことから、広いボリューム領域を撮像しようとした場合、複数回の息止め撮像が必要となる。この副作用として、得られる複数の3次元ボリューム画像は生体情報(呼吸情報)の時相が異なるため、各回で撮像された3次元ボリューム画像を繋げた場合には、生体情報(呼吸情報)の差による画像の段差(位置ズレ)が生じることがある。この場合、再度の3次元ボリューム撮像を行う必要がある場合があったが、3次元ボリューム撮像の撮像時間は時間がかかるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、再度の3次元ボリューム撮像を行うことなく、生体情報の差による画像の段差をなくした3次元ボリューム画像を提供する医用画像処理装置及び治療支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明に係る医用画像処理装置は、医用画像撮像手段により被検体の部位を撮像して得られた3次元ボリューム画像を読み込む第一読込手段と、前記3次元ボリューム画像を撮像したときの前記被検体の生体情報の時相とは異なる時相において、前記被検体の部位を2次元撮像して得られた2次元画像を読み込む第二読込手段と、前記2次元画像を用いて前記3次元ボリューム画像の補償を行う画像補償手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る治療支援システムは、上記医用画像処理装置と、前記被検体の3次元ボリューム画像及び2次元画像を撮像する医用画像撮像装置と、前記3次元ボリューム画像の撮像及び前記2次元画像の撮像と同期して、前記被検体の生体情報を取得する生体情報取得手段と、前記被検体に対する手技に用いられる術具の3次元の位置を検出する位置検出手段と、前記術具の位置を前記3次元ボリューム画像上に表示したナビゲーション画像を生成するナビゲーション画像生成手段と、を備え、前記医用画像撮像装置は、前記3次元ボリューム画像を撮像したときの前記被検体の生体情報の時相とは異なる時相において、前記被検体の部位を2次元撮像して前記2次元画像を生成し、前記医用画像処理装置は、前記2次元画像を用いて、前記3次元ボリューム画像の補償を行い、前記ナビゲーション画像生成手段は、前記補償された3次元ボリューム画像上に前記術具の位置を表示したナビゲーション画像を生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、生体情報が、所望する時相と異なる時相において3次元ボリューム撮像をした場合、所望する時相で撮像した2次元スライス画像を用いて3次元ボリュームデータの画像補償を行うため、再度の3次元ボリューム撮像が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係る治療支援システムの概略構成図
【図2】治療支援システム10に用いられる治療支援プログラムの構成を示すブロック図
【図3】マルチスラブ撮像の処理内容を示す説明図
【図4】横隔膜追従機能処理を示す説明図
【図5】本実施形態に係る治療支援システムの処理の流れを示すフローチャート
【図6】マルチスライス画像取得処理を示す説明図
【図7】3D画像の画像補償処理を示す説明図であって、(a)は基準となる生体情報に基づいて2Dマルチスライス画像を撮像する処理を示し、(b)は、事前に取得した3D画像に対し、2Dマルチスライス画像を基準に3D画像の同一断面を補償する処理を示し、(c)は2Dマルチスライス画像と異なる断面画像を補間して、全ての3Dボリューム画像を補償して3D画像を生成する処理を示す。
【図8】ナビゲーション画像生成時における3D画像変更処理を示す説明図
【図9】手術前に表示される画面表示例を示す模式図
【図10】手術中に表示される画面表示例を示す模式図
【図11】4Dボリューム画像による画像ナビゲーション処理を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。同一機能を有する構成及び同一の処理内容の手順には同一符号を付し、その説明の繰り返しを省略する。
【0011】
本実施形態の説明に先立ち、本実施形態の基礎技術について説明する。3次元ボリューム撮像を行う医用画像撮像装置として、核磁気共鳴撮像装置(以下、MRI装置と称する)がある。このMRI装置は、連続的に被検体中の水素や燐等からの核磁気共鳴信号(以下、MR信号と称する)を測定し、核の密度分布や緩和時間分布等を映像化するものである。現在、臨床で普及しているMRI装置の撮像対象は、被検体の主たる構成物質、プロトンである。MRIは、プロトン密度の空間分布や、励起状態の緩和現象の空間分布を画像化することで、人体頭部、腹部、四肢等の形態または、機能を2次元もしくは3次元的に撮像する。
【0012】
一般的なMRI装置は、患者の周囲に静磁場を発生する磁石と、この空間に傾斜磁場を発生する傾斜磁場コイルと、この領域に高周波磁場を発生するRFコイルと、患者が発生するMR信号を検出するRF受信コイルを含み構成されている。傾斜磁場コイルは、X、Y、Zの3方向の傾斜磁場コイルで構成され、傾斜磁場電源からの信号に応じてそれぞれ傾斜磁場を発生する。RFコイルは、RF送信部の信号に応じて高周波磁場を発生する。RFコイルの信号は、信号検出部で検出され、信号処理部で信号処理され、また計算により画像信号に変換される。画像信号は、表示部で断層像として表示される。傾斜磁場電源、RF送信部、信号検出部などは、制御部で制御され、制御のタイムチャートは一般にパルスシーケンスと呼ばれている。患者は、ベッドに横たわってRF受信コイル、RFコイル傾斜磁場コイルなどで囲まれた装置内の空間に搬送され、断層面の撮像が行われる。
【0013】
このようなMRI装置を用いた心臓イメージングや、手術時の穿刺モニタリング、経皮的治療などに使用されるI−MRI装置(interventinal−MRI装置、または、Intraoperative−MRI装置の略称)では、リアルタイムで撮像する断層面を任意に設定したいという要望がある。撮像する断層面を任意に選択する手法として、グラフィカルユーザインタフェース(以下「GUI」と略記する。)にMRI画像を表示して、画面上のボタンをクリックして、次に撮像する断層面を決定する方法や、3次元マウスなどを使う方法などが提案されている。これらの方法では、撮像する断層面の位置や向きをマウスなどの入力手段で調整、設定しなければならず煩雑なので、MRI装置としては、より簡便に撮像する断層面の位置や向きを調整、設定できることが望ましい。その手法として、術具の先端部にポインタを設け、3次元位置検出装置にてポインタの位置を検出し、これに基づいて、断層面を自動的に調整する技術がある。
【0014】
一方、位置検出装置と過去に撮像したボリュームデータを用いた手術ナビゲーションシステムは、手術時に患者に対してポインタなどにより指定される位置を、当該位置を含む患者の直交3平面それぞれを断面とする断層画像上に表示することにより手術操作をナビゲーションするシステムであり、脳神経外科手術などの高精度の外科手術に適用されている。
【0015】
ここで、このような手術ナビゲーションシステムにおける患者の断層画像は、予め、MRI装置によって撮像した3次元のデータであるボリュームデータにより生成される。一方、ポインタによる指定位置を定めるために必要とされるポインタの位置検出の方式には、機械式、光学式、磁気式、超音波式などの方式がある。上記I-MRIと3次元手術ナビゲーションシステムとを組み合わせ手術ナビゲーションシステムを構成することも行われている。
【0016】
更に、MRIによる高速撮像シーケンスの応用のひとつとして、フルオロスコピー(透視撮像)と呼ばれるリアルタイム動態画像化法が臨床応用されつつある。フルオロスコピーでは、1秒以下程度の周期で撮像と画像再構成を繰り返すことにより、あたかもX線透視撮像のように体内組織の動態抽出や体内に外部から挿入した器具の位置把握に用いることができる動態画像を生成・表示する。この応用は3次元高速撮像にも応用されている。方法として、Rawデータを間引いて撮像し、以前のデータを用いて補完・再構成する技術がある。例えば、TR=1、Phase Encode=100とすれば、100ms毎に1画像を連続取得することができる。
【0017】
ここで、腫瘍を含むボリュームを高速撮像する方法として、マルチスライスにて確認する方法が一般的である。3次元計測(3次元撮像)によるボリューム撮像はスライス厚も薄く設定できるが、計測時間がかかる欠点がある。しかし、数枚の2次元マルチスライス撮像であれば、数秒で3次元情報が得られ、治療前後の画像の差分機能と組み合わせると、手術情報としての役割を果たすことができる。例えば、ターゲットを含む断面撮像する場合、それを含む断面を任意の間隔で複数枚撮像する。得られる画像においてターゲットとなる腫瘍が描出されるが、スライス間隔があるため3次元的な詳細情報を得ることができない。それを解決する方法として、最大値投影法(MIP;Maximum Intensity Projection)がある。これは、3次元画像上で所定の方向を設定し、この方向に直交するすべてのピクセルの検出線上で最大値を見つけ、これに基づいて2次元画像を作成する。この方法は実行が容易であるが、2次元情報しか得ることができない。
【0018】
また、画像処理機能を有するMRI装置と3次元位置検出装置による術具位置の検出機能を用いて、MRIにて撮像した3Dボリューム画像から特定領域を登録し、3次元位置検出装置にて検出した術具位置が特定領域内にあるかを判別し、術具位置が特定領域内にある場合には特別に設定したパラメータを用いてマルチスライス撮像する技術がある。つまり、特定領域だけを異なる条件で撮像することで、部位毎の鮮明な診断が可能になり、アーチファクトによる誤診を防ぎ治療効果を向上することもできる。また、インタラクティブ スキャン コントロール(Interactive Scan Control、以下「ISC」と略記する)や3次元ナビゲーション等の治療支援装置と併用することで、術具方向に追随したMIP画像等の画像処理機能を併用することで、術前と術中画像の差を明確化することができ、手術成績向上が期待できる。上記技術を前提として、以下、本発明の実施形態を説明する。
【0019】
本実施形態に係る治療支援システムは、核磁気共鳴装置により、被検体を連続する複数の撮影位置に分けて、各撮影位置において息止めをして3次元ボリューム撮像を行い、各撮像位置から3次元ボリューム画像(以下、各撮像位置から得た3次元ボリューム画像を「区間3次元ボリューム画像」という)を取得し、その区間3次元ボリューム画像の生体情報(本実施形態では特に呼吸情報)の時相にずれが生じた場合に、所望する時相で撮像した2次元スライス画像を用いて、区間3次元ボリューム画像の画像補償を行うものである。そして、時相が一致した区間3次元ボリューム画像を繋げて、上記複数の撮影位置の3次元ボリューム画像を用意し、それを用いて、穿刺針の位置を示すナビゲーション画像を生成・表示するものである。
【0020】
本実施形態では、補償した3次元ボリューム画像を手技中のナビゲーション画像に用いるが、補償した3次元ボリューム画像の使用用途は、これに限定されるものではない。また、本実施形態では、複数の撮像位置から区間3次元ボリューム画像を取得したが、単一の撮像位置について3次元ボリューム撮像を行ったときに、所望する生体情報の時相、例えば吸期からずれてしまった場合にも、その撮像位置について2次元マルチスライス撮像を行い、それを用いて画像補償をしてもよい。
【0021】
また、本実施形態では、生体情報として呼吸情報、特に横隔膜位置を用いるが、体動は呼吸動に限らず、心臓の拍動による心時相の一致(ECG)、食道の嚥下運動や各消化器官の消化運動でもよい。また、生体情報は、心電図や、食道、各消化器官の位置情報を用いてもよい。また、本実施形態では、医用画像撮像装置として核磁気共鳴装置(以下「MRI装置」という)を用いるが、本発明は、3次元ボリューム撮像と2次元マルチスライス撮像とに係る時間を比較した場合に、3次元ボリューム撮像の方が相対的に時間が長い、いかなる医用画像撮像装置に適用してもよい。よって、例えばX線CT装置を用いて3次元ボリューム撮像を行い、体動の時相が合わない断面について再度2次元スライス画像の撮像を行い、その2次元スライス画像を用いて3次元ボリューム画像を補償してもよい。X線CT装置の場合には、再度の3次元ボリューム撮像による被曝の低減も図ることができるという効果がある。
【0022】
以下、図1に基づいて、本実施形態に係る治療支援システムの構成について説明する。図1は、本実施形態に係る治療支援システムの概略構成図である。
【0023】
本実施形態に係る治療システム10は、主に、核磁気共鳴撮像装置(以下、MRI装置と称する)1がパーソナルコンピュータ19と連結される。そして、穿刺針36に取り付けられたポインタ27を位置検出デバイス9が連続的に追随し、ポインタ27の位置情報を転送することで、MRI(またはCT)装置1と穿刺針36の位置とが連結される。
【0024】
図1のMRI装置1は、垂直磁場方式0.3Tの永久磁石MRI装置であり、患者の周囲に垂直な静磁場を発生する上部磁石3と下部磁石5とが支柱7により垂直方向に並べて配置される。上部磁石3と下部磁石5との間に構成された開口部32内に、被検体24がベッド21に載置されて搬送される。また、MRI装置1は、図示を省略するものの、この静磁場空間に傾斜磁場を発生する傾斜磁場発生部を備える。この斜磁場発生部は、領斜磁場をパルス的に発生させ、最大傾磁場強度15mT/mで、スルーレート20mT/m/msである。更に、MRI装置1は、静磁場中の被検体24に核磁気共鳴を生じさせるための図示しないRF送信器、被検体24からの核磁気共鳴信号を受信する図示しないRF受信器を備え、これらは12.8MHzの共振型の傾斜磁場コイルにより構成される。傾斜磁場コイルは、X、Y、Zの3方向の傾斜磁場コイルで構成され、傾斜磁場電源からの信号に応じてそれぞれ傾斜磁場を発生する。RFコイルは、RF送信部の信号に応じて高周波磁場を発生する。RFコイルの信号は、信号検出部で検出され、信号処理部で信号処理され、また計算により画像信号に変換される。画像信号は、表示部で断層像として表示される。傾斜磁場電源、RF送信部、信号検出部などは、制御部で制御される。制御のタイムチャートは一般にパルスシーケンスと呼ばれている。被検体24は、ベッド21に横たわってRF受信コイル、RFコイル、傾斜磁場コイルなどで囲まれたMRI装置1内の空間に搬送され、断層面の撮像が行われる。
【0025】
位置検出デバイス9は、間隔をおいて(視差を持たせて)設けられた複数の赤外線カメラ25、25と、赤外線を発光する図示しない発光ダイオードを含んで構成され、断層面指示デバイスであるポインタ27の位置及び姿勢を検出するものである。この位置検出デバイス9は、アーム11により移動可能に上部磁石3に連結され、MRI装置1に対する配置を適宜変更することができる。また、ポインタ27の位置検出の方式には、上記に限らず、機械式、光学式、磁気式、超音波式などの方式を用いてもよい。
【0026】
基準ツール17は、ポインタ27とMRI装置1との相対的な位置関係を検出するために、赤外線カメラ25の座標系とMRI装置1の座標系をリンクさせるもので、3つの反射球からなるマーカ35を備え、上部磁石3の側面に設けられている。マーカは、反射球に代えて、発光ダイオードなどの光源でもよい。
【0027】
パーソナルコンピュータ19には、赤外線カメラ25が検出し算出したポインタ27の情報が、術具位置データとして、例えば、RS232Cケーブル33を介して送信される。
【0028】
モニタ13、14は、術者29が把持する穿刺針36に備えられたポインタ27により指示された被検体24の断層面の画像を表示するもので、モニタ支持部15により、赤外線カメラ25同様、上部磁石3に連結されている。
【0029】
制御部23は、ワークステーションで構成され、MRI装置1と電気的に接続される。そして、図示しないRF送信器、RF受信器などを制御する。更に制御部23は、パーソナルコンピュータ19と接続されている。パーソナルコンピュータ19では赤外線カメラ25が検出し算出したポインタ27の位置から穿刺針36の位置データを取得し、その位置データをMRI装置1で利用可能な位置データに変換し、制御部23へ送信する。位置データは、撮像シーケンスの撮像断面へ反映される。新たな撮像断面で取得された画像は液晶モニタからなるモニタ13、14及びモニタ20に表示される。例えば断層面指示デバイスであるポインタ27を穿刺針36にとりつけ、穿刺針36のある位置を常に撮像断面とする様に構成した場合、モニタ13、20には穿刺針36の先端を含む断面が表示されることになる。また、穿刺針36に代わり、収束超音波を照射する治療プローブを用いた手技において、収束超音波の焦点がある位置を常に撮像断面とするように構成してもよい。その他、生体情報に同期した計測をすることも可能であり、被検体24に取り付けられた同期(時相)計測装置41にて各種情報(脈波、心電、呼吸)を取得することができるが、本実施形態では、同期計測装置41に代えて、後述(図5参照)の如く、MRI装置1により被検体24内の横隔膜位置を追従する機能を用いる。
【0030】
MRI装置1は、手術室100内に設置され、パーソナルコンピュータ19及びこれに接続されたモニタ20、制御部23、映像記録装置34は、手術室に隣接する操作室101内に備えられる。そして、モニタ13、14は、術者29が視認し、モニタ20は、操作室101内の操作者(図示を省略)が視認する。パーソナルコンピュータ19に接続された映像記録装置34は、術中の動画像(映像信号)を同時記録する。
【0031】
次に、図2に基づいて、治療支援システム10に用いられる治療支援プログラムについて説明する。図2は、治療支援システム10に用いられる治療支援プログラムの構成を示すブロック図である。治療支援プログラムは、パーソナルコンピュータ19の図示しない記憶装置に格納され、パーソナルコンピュータ19に備えられた図示しないメモリにロードされてCPUにより実行されることにより、各プログラムとパーソナルコンピュータ19を構成するハードウェアとが協働してプログラムが備える機能を実現する。
【0032】
治療支援プログラムは、被検体24の3次元ボリュームデータを取得する画像データ取得部19aと、3次元ボリュームデータに基づいて3次元ボリューム画像(以下「3D画像」という)を3次元再構成する画像再構成部19bと、被検体の生体情報の時相を監視する生体情報モニタリング部19cと、2次元スライス画像を用いて3D画像の画像補償を行う画像補償部19dと、画像補償後の3D画像から病変部位が撮影された領域(以下病変部位を「特定部位」、病変部位が撮影された領域を「特定領域」という)を抽出する特定領域抽出部19eと、被検体の再構成画像に特定領域の位置や穿刺針36の位置を重畳表示したナビゲーション画像を生成するナビゲーション画像生成部19fと、位置検出デバイス9からの位置情報に基づいて、穿刺針36及び被検体24の実空間上の位置をもとめ、これをMRI装置1が使用可能な検出空間の座標系に変換し、更に検出空間の座標系を被検体の再構成画像上の座標系に変換して、被検体の再構成画像と穿刺針36及び被検体24の実空間上の座標とを一致させる位置検出処理部19gと、術具の経路、特に本実施形態では、穿刺針36の芯線の延長方向や先端位置を、位置検出デバイス9が求めたポインタ27の傾き等のパラメータに基づいて算出したり、仮想的な穿刺針先端からの治療領域を算出する経路算出部19hと、ナビゲーション画像や再構成画像をモニタ13,14、20へ表示制御する表示制御部19lと、を備える。
【0033】
本実施形態では、画像データ取得部19aは、MRI装置1から3次元ボリュームデータと2次元マルチスライスデータを取得し、画像再構成部19bが3D画像及び2次元マルチスライス画像を再構成するが、予め撮像された3次元ボリュームデータ及び2次元マルチスライスデータを、図示しない記憶装置に格納しておき、画像再構成部19bがこれらの再構成処理を行ってもよい。この場合、画像データ取得部19aは必須ではない。更に、すでに再構成された3D画像や2次元マルチスライス画像を用いて画像補償処理を行う場合には、画像再構成部19bも必須ではない。
【0034】
次に、本実施形態に係る治療支援システム10で行うマルチスラブ撮像の概要について、図3に基づき説明する。図3は、マルチスラブ撮像の処理内容を示す説明図である。被検体24の腹部等の動きのある部位を、例えば3分割して息止め撮像するとした場合、スラブ1から3D画像301、スラブ2から3D画像302、スラブ3からの3D画像303を取得する。息止め撮像と同時に、生体情報(呼吸情報)もモニタリングする。呼吸情報のモニタリング手法として、例えば、横隔膜位置情報を用いて吸期−呼期を判断する手法がある。すなわち、吸期において、横隔膜は、被検体内の腹部深部(足部側)により近い部位に位置し、呼気においては、横隔膜は、被検体内の腹部上部(頭部側)により近い部位に位置ため、横隔膜位置を参照することで、呼期と吸期とを判別できる。
【0035】
図4に基づいて、横隔膜位置情報を用いた生体情報(呼吸情報)の取得方法について説明する。図4は、横隔膜追従機能処理を示す説明図である。被検体24の肺241と横隔膜242とを縦断する領域243について、MRI装置1は、3D撮像と同時に横隔膜撮像を実施する。被検体24に対して、肺241と横隔膜242とは上下に規則運動をしている。そこで、横軸が経過時間、縦軸が体軸方向に沿った横隔膜位置を示す時系列グラフ401(呼吸情報に相当)は、周期的なグラフとなる。ここで、横隔膜位置情報をトラッキングしながら撮像することで、各スラブにおいて呼吸差(呼吸時相の差)405がない同条件(同時相)において3D画像が取得可能となる。
【0036】
例えば、時系列グラフ401において、スラブ1撮像時の横隔膜位置402と、スラブ2撮像時の横隔膜位置403、スラブ3撮像時の横隔膜位置404がすれているとすると、3次元ボリューム画像間の連結時のつなぎ目に、呼吸時相の差405が3D画像の段差として表示され、3D画像間の連続性が保たれない。よって、時相の差がある場合に、基準時相においてそのスラブに対し2次元マルチスライス撮像を行い、そこで得られた2次元画像を用いて3次元ボリューム画像の画像補償を行う。以下、図5のフローチャートのステップ順に沿って説明する。図5は、本実施形態に係る治療支援システムの処理の流れを示すフローチャートである。
【0037】
(ステップS1)
MRI装置1は、息止めをした被検体24のスラブ1を3次元ボリューム撮像(以下「3D撮像」という。)し、画像データ取得部19aが3次元ボリューム画像データ(以下「3Dデータ」という。)を読み込む。画像再構成部19bは、3Dデータの3次元再構成を行い、3D画像を生成する(S1)。
【0038】
(ステップS2)
同時に、MRI装置1において、ステップS1における3D撮像時の生体情報(本実施形態では呼吸情報に相当する)をモニタリングする(S2)。
【0039】
(ステップS3)
被検体24を載置したベッド21の天板を移動して、撮像位置を変更する(S3)。
【0040】
(ステップS4)
再度の息止め3D撮像(例えば、スラブ2、スラブ3)及び3次元再構成を行う(S4)。
【0041】
(ステップS5)
ステップS2と同様、S4の3D撮像と同時に呼吸情報をモニタリングする(S5)。
【0042】
(ステップS6)
生体情報モニタリング部19cは、ステップS2、S5の呼吸情報を読込み、3D撮像を行ったときの生体情報(呼吸情報)の時相が、基準となる生体情報の時相(以下「基準時相」という。)、例えば、前回、又は1回目の3D撮像における時相と一致するかどうかの判断を行う(S6)。否定であればステップS7、肯定であればステップS9へ進む。
【0043】
本実施形態では、スラブ1を撮像したときの時相402を基準時相とし、この基準時相からの時相差405が所定範囲内にある場合を一致、所定範囲外にある場合を不一致と判断する。よって、スラブ2を撮像した時の時相403は一致、スラブ3を撮像した時の時相404は不一致となる。よって、ステップS7以下において、スラブ3の2Dマルチスライス撮像及び画像補償を行う。
【0044】
(ステップS7)
生体情報の時相が基準時相と異なる位置で3D撮像を行った撮影位置において、基準時相に合わせて2次元マルチスライス撮像を行う(S7)。本実施形態では、スラブ3相当の撮影位置、かつ基準時相402と同一時相において、MRI装置1により2次元マルチスライス撮像を行う。次に図6に基づいて、2次元マルチスライス画像の取得について説明する。図6は、マルチスライス画像取得処理を示す説明図である。
【0045】
生体情報モニタリング部19cは、時系列グラフ603に対して周期601、602毎に連続的な呼吸情報を随時モニタリングしておく。そして、基準時相(スラブ1の3Dデータ204を撮像時の時相)604と同じ時相605において、スラブ3の2次元マルチスライス撮像を行い、2次元画像607を取得する。この2次元画像607を用いて、スラブ3の3D画像303の画像補償を行う。なお、スラブ1は、基準となる時相であり、スラブ2は、その撮像時の時相が基準時相と一致するので画像補償が不要となることから、2次元マルチスライス撮像を行わない。
【0046】
(ステップS8)
画像補償部19dは、ステップS7で撮像された2Dマルチスライス画像を用いて、3D画像を補償する(S8)。
【0047】
次に図7に基づいて、3D画像の画像補償処理について説明する。図7は、3D画像の画像補償処理を示す説明図である。画像補償部19dは、まず、過去に取得した3D画像303における断面位置と、ステップS7で撮像した2次元マルチスライス画像607の断面位置と、の位置合わせを行う。位置合わせは、MRI装置1が3D撮像又は2次元マルチスライス撮像を行ったときの断面位置情報を用いて、画像補償部19dが行ってもよいし、2次元マルチスライス画像607及び3D画像303を操作室101内にあるモニタ20に表示し、操作者が図示しない入力装置により、3D画像303における2次元マルチスライス画像607の断面位置に相当する位置を入力してもよい。
【0048】
続いて、位置合わせをされた2次元マルチスライス画像607内に撮像された部位の領域と、3D画像303内に撮像された部位の領域との関係づけを行う。関係づけは、画像補償部19dが、2次元マルチスライス画像607及び3D画像303のそれぞれから関係づけに用いる部位領域、を例えば領域拡張法により抽出し、円形度や輪郭線の形状、また抽出された領域全体についてパターンマッチング処理を行い、各画像から抽出された部位領域が一致するものを関係付けることにより行ってもよい。また、関係づけは、2次元マルチスライス画像607及び3D画像303を操作室101内にあるモニタ20に表示し、3D画像303に撮像された部位領域の位置と、その臓器が2次元マルチスライス画像607に撮像されている部位領域の位置とを、操作者が図示しない入力装置を用いて指示入力することにより、関係づけ情報を入力してもよい(図7(a)(b)参照)。
【0049】
なお、関係付けに用いる部位領域は、被検体24の呼吸動による位置の変化が相対的に小さい部位、例えば、背骨や背骨周囲に位置する軟部組織と、呼吸動による変化が相対的に大きい部位、例えば、体表面の腹部(正面)側の輪郭線、臍位置、及び体内において、体表面の正面側に位置する軟部組織と、の双方を含むことが望ましい。
【0050】
画像補償部19dは、関係づけされた部位領域を用いて、2次元マルチスライス画像207を基準とし、それに2次元マルチスライス画像607と同じ断面位置の3D画像303が一致するように、3D画像303の各部位に対して拡大・縮小、回転、アフィン変換を行うことで、画像補償する。より詳しくは、画像補償部19dは、2次元マルチスライス画像607、及び2次元マルチスライス画像607と同じ断面位置の3D画像303を、両画像の呼吸動の影響がより少ない部位領域の位置を基準とし、2次元マルチスライス画像607と同じ断面位置の3D画像303の呼吸動の影響がより大きい部位領域の位置が、2次元マルチスライス画像607の当該部位領域と関係づけられた部位領域の位置になるように、3D画像303の画像補償を行う。図7(b)では、画像補償された断面位置を3D画像303Aとする。
【0051】
更に、画像補償部19dは、3D画像303のうち、2次元マルチスライス画像607のスライス間の断面位置にある画像については、その前後の2次元マルチスライス画像607、又は当該断面位置に相当する補償後の3D画像303Aの画像を用いて補完し、最終的には全てのボリューム画像を補償する(図7(c)参照)。図7(c)では、補償及び補間された全ての3D画像を303Bとする。画像補償部19dによる補間処理は、例えば、補間対象となる3D画像303の断面位置の画像に撮像されている部位領域と、その前後の2次元マルチスライス画像607に撮像されている部位領域との関連付けを行い、補間対象となる3D画像303の断面位置とその前後に位置する2次元マルチスライス画像607との距離比に応じて、補間対象となる3D画像303に対して施した拡大・縮小、回転、又はアフィン変換を行う。なお、補間処理は、上記の処理に限らない。
【0052】
(ステップS9)
撮像部位の変更があれば、ステップS3に戻って3D撮像と画像補償を繰り返す。また、撮像部位の変更がない、すなわち、必要な3D画像がすべて揃っていれば、ステップS10へ進む(S9)。
【0053】
(ステップS10)
操作者は、補償が不要な3D画像及び補償後の3D画像303B上で、治療対象となる領域である特定領域の抽出を行う(S10)。特定領域抽出部19eは、補償が不要な3D画像及び補償後の3D画像303Bから、濃度値(CT値)や形状を基に、特定領域を抽出する。又は、操作者が、補償が不要な3D画像及び補償後の3D画像303Bをモニタ20に表示し、画面上で、図示しない入力装置により特定領域の位置を入力をすることにより、特定領域の設定を行ってもよい。
【0054】
(ステップS11、S12)
手術に必要な機器のスイッチをONにし、手術を開始する(S11)。それと同時に、MRI装置1により呼吸情報の継続的なモニタリングを開始する(S12)。
【0055】
(ステップS13)
術具位置を検出し、補償後の3D画像を用いたナビゲーション画像上に重畳表示する(S13)。術具位置の検出とそれに伴うナビゲーション画像の更新は、術具位置の検出を随時行うことにより、その位置に追従して実行される。
【0056】
図8に基づいて、本ステップの処理について説明する。図8は、ナビゲーション画像生成時における3D画像変更処理を示す説明図である。被検体24の特定部位801を含む3つの領域、スラブ1、スラブ2、スラブ3を3D撮像し、3D画像301、302、303(画像補償後の3D画像は303B)とすると、特定領域802を含む3D画像は、3D画像302に含まれる断面画像802となる。この断面画像802をナビゲーション画像の一つとして表示してもよい。
【0057】
更にナビゲーション画像生成部19fは、位置検出処理部19gから穿刺針36の先端位置を取得する。そして、ナビゲーション画像生成部19fは、先端位置に応じて、ナビゲーションに適用する3D画像301、302、303Bをリアルタイムに変更し、先端位置含む撮像断面(図8における810、811、812)の断面画像に、術具の位置を重畳表示したナビゲーション画像を生成して表示する。経路算出部19hは、位置検出処理部19gからの位置情報及びマーカ27の角度から、穿刺針36の進行方向を算出する。ナビゲーション画像生成部19fは、経路算出部19hが算出した術具の経路を、ナビゲーション画像上に重畳表示する。ナビゲーション画像は、モニタ20及びモニタ13、14に表示される。
【0058】
(ステップS14)
術者は、モニタ13、14に表示されたナビゲーション画像を視認し、術具の位置を確認後、治療を開始する。本実施形態では、穿刺針36の穿刺を開始する(S14)。
【0059】
(ステップS15)
MRI装置1によるリアルタイム画像を用いて、術者は治療効果を確認し(S15)、残治療領域がなくなれば手術を終了する。
【0060】
図9及び図10に基づいて、本実施形態に係る治療支援システムにおいて表示されるGUI例について説明する。図9は、手術前に表示される画面表示例を示す模式図であり、図10は、手術中に表示される画面表示例を示す模式図である。
【0061】
図9の画面90は、被検体24の画像が表示される画像表示領域91と、装置情報、被検体情報(図9内の「患者情報」)、各種機能情報、術具情報等、手術に必要な詳細情報が表示される詳細情報表示領域92と、3D画像に関する情報が表示される3D情報表示領域93と、操作ボタンが表示されるボタン領域94と、を含む。
【0062】
ボタン領域94には、被検体の3Dボリューム撮像を行う「3DScan」ボタン941と、生体情報の取得を行う「生体モニタ」ボタン942と、マルチスラブ撮像におけるスラブを設定する「複数領域指定(ベッド移動)」ボタン943と、2次元スライス撮像の指示及びそれを用いた3D画像の補償の指示を入力する「3D画像補償(マルチスライス)」ボタン944と、補償された3D画像において病変部位が撮影された領域(特定領域)を設定する「特定領域(セグメンテーション)」ボタン945、術具(本実施形態における穿刺針)の初期位置の登録を行う「レジストレーション」ボタン946を備える。
【0063】
「3DScan」ボタン941及び「生体モニタ」ボタン942を押下することで、3D撮像と生体情報の取得とが開始される。基本的には、息止め撮像ができる範囲なので、複数領域(複数のスラブ)の撮像を繰り返す。そこで、「複数領域指定(ベッド移動)」ボタン943を押下して異なる領域に患者を移動し、再度「3DScanボタン」941および「生体モニタ」ボタン942を押し下げる。ここで撮像された3Dボリュームデータに基づくMRI画像は、画像表示領域91内の各ウィンドウ内に表示される。図9では、スラブ1、2、3、4、5、6から撮像された3D画像910、911、912、913、914、915が表示される。次に、必要に応じて「3D画像補償(マルチスライス)」ボタン944を押下して3D画像を補償する。この作業を繰り返した後、「特定領域抽出(セグメンテーション)」ボタン945を押下し、3D情報表示領域93内の参照画面を見て、マウスやペンを用いて特定領域936を設定したり、自動抽出により特定領域936を設定する。特定領域936に関する情報は、別画面937に詳細表示されており、本例では3つの特定領域1、2、3に関する情報が表示されている。また、3D画像は、スラブ領域(領域1〜6)が分かるように色分け等により区別されている(932〜935に相当)。
【0064】
次に図10に基づき、臨床時のGUIについて説明する。臨床画面の一例である画面100は、被検体24の画像が表示される画像表示領域1010と、手術支援情報を表示する手術支援情報表示領域1020と、操作ボタンが表示されるボタン領域1030と、を含む。ボタン領域1030は、治療開始前に使用する術前プラニング部、手術時に使用する手術支援機能部(穿刺時)、及びオプションとして使用する手術支援付加機能部によって構成される。術前プラニング部には、「3DScan」ボタン1031(図9の「3DScan」ボタン941と同等)と、術具の経路を算出して表示する「Planning」ボタン1032とを備える。手術支援機能部は、2次元リアルタイム画像を表示させる「ISC:ON/OFF」ボタン1033と、ナビゲーション画像を表示させる「ナビゲーション:ON/OFF」ボタン1034とを備える。手術支援付加機能部は、「Volume Rendering」ボタン1035、「Axial」ボタン1036、「Sag.」ボタン1037、「Cor.」ボタン1038、及び「術具位置確認」ボタン1039、「治療効果確認」ボタン1040を備える。
【0065】
まず治療開始前において、「3DScan」ボタン1031を押し下げ、3D撮像を行う。撮像された3D画像に基づく画像として、画像表示領域1010内に、アキシャル画像1013、サジタル画像1014、コロナル画像1015、ボリュームレンダリング画像1016が表示される。次に、「Plannning」ボタン1032を押下すると、経路算出部19hにより、3D画像上にて手術経路(術具の経路)のシミュレーションを行う。
【0066】
手術時に「ナビゲーション:ON/OFF」ボタン1034押下すると、アキシャル画像1013、サジタル画像1014、コロナル画像1015、及びボリュームレンダリング画像1016上に、手術シミュレーション情報1021(図10中の一点鎖線)と実際の術具位置1020が表示され、術者は視覚的に手術経路を補償することができる。
【0067】
また、「ISC:ON/OFF」ボタン1033を押下すると、手術支援情報表示領域1020内に2次元のリアルタイム画像1017が撮像・表示される。それら2次元リアルタイム画像上にも、シミュレーションによる手術経路1023と実際の術具位置1022とが表示される。メッセージ部1019には、装置情報、患者情報、各種機能情報、術具情報がリアルタイムに表示される。
【0068】
手術支援付加機能部の「Volume Rendering」ボタン1035、「Axial」ボタン1036、「Sag.」ボタン1037、「Cor.」ボタン1038、「術具位置確認」ボタン1039を押し下げると、ナビゲーション画像生成部19fが、手術支援情報表示領域1020に、アキシャル画像、サジタル画像、コロナル画像の断面位置1028と、シミュレーションによる手術経路1025と実際の術具位置1024、との3次元位置を模式的に表した立体構成画面1018を生成し、表示する。この立体構成画面1018により、特定領域と術具との、立体的かつ術具との相対距離が一目で把握できるようになっている。
【0069】
更に、「治療効果確認」ボタン1040を押下すると、ナビゲーション画像生成部19fは、立体構成画面1018に仮想治療領域1027と、特定領域1026とが更に重畳表示する。更に、仮想的な穿刺針先端からの治療領域を含む画像1050、1051、102、1053、1054が表示される。これらの各画像には、仮想的な穿刺針先端からの治療領域1027が表示される。この機能は、Radio Frequency Ablation(RFA)やCryotherapy等の温熱治療を想定したものであり、仮想的な穿刺針先端からの治療領域1027が特定領域1026を包み込めれば治療が可能ということを示している。術者はこれらの機能を有効に利用して手術を進めることになる。
【0070】
本実施形態によれば、被検体の連続する部位を複数の領域に分けて3D撮像した場合に、各領域において3D撮像をしたときの生体情報(呼吸情報)の時相が異なっても、再度の3D撮像をすることなく、3D撮像よりもより撮像時間が短い2次元スライス撮像により得られた2次元スライス画像を用いて画像補償をすることで、同時相の3D画像を揃えることができる。そのため、画像誘導手術支援時には、ボリューム間で連続性のある画像情報を提供できるだけでなく、画像と実空間の精度を向上できることから、結果的に手術の精度を向上させることができる。それに伴い手術時間の短縮ができ、術者・患者への負担を低減できる。
【0071】
次に本発明に係る画像補償機能の別の利用態様について説明する。図11は、呼吸同期を用いた4Dボリューム画像による手術中の画像ナビゲーション機能について説明する。図11は、4Dボリューム画像による画像ナビゲーション処理を示す説明図である。
【0072】
位置検出デバイス9にて術具(穿刺針36)位置を検出し、術具の先端位置の撮像断面304の位置を計算する。本実施形態では、手術中に、図6において説明したMRI装置1による横隔膜位置の測定を継続的に行い、呼吸情報を生体情報として取得する。ここで、呼吸情報には、吸期、呼期、及び吸期―呼期の中間期の3パターンある。そして、上記ステップS6〜ステップS8において、吸期、中間期、呼期のそれぞれの時相における2次元マルチスライス画像を撮像し、これを用いて、ステップS1、S4で取得した3D画像301、302、303を各時相に合った画像に画像補償する。画像補償した3D画像の画像補償を行い、吸期の3D画像1110、(吸期―呼期)間の3D画像1111、呼期の3D画像1112を生成する。そして、パーソナルコンピュータ19の図示しないメモリに3D画像1110、1111、1112を記録し、手術中にモニタリングした呼吸情報に同期させて、画像補償した3D画像1110、1111、1112を表示することにより、呼吸情報に同期した3D画像をリアルタイムに提供する。
【0073】
また、本発明における画像補償機能は異なるパラメータによるMRI画像でも対応可能である。また、本発明は術者自身(手技)による治療、ロボット/マニピュレータを用いた間接的な手術の何れにも適用可能とすることができる。
【符号の説明】
【0074】
1:MRI装置、3:上部磁石、5:下部磁石、7:支柱、9:位置検出デバイス、10:治療支援システム、11:アーム、13:モニタ、15:モニタ支持部、17:基準ツール、19:パーソナルコンピュータ、20:モニタ、21:ベッド、23:制御部、24:被検体、25:赤外線カメラ、27:ポインタ、29:操作者、32:開口部、33:ケーブル、34:映像記録装置、35:反射球、36:穿刺針、41:同期(時相)計測装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像処理装置及び治療支援システムに係り、特に、被検体の体動(呼吸動など)による3次元ボリューム画像の時相のずれを補償する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被検体を撮影するMRI装置において、画像再構成に必要なN個(Nは1以上の整数)のエコー(本スキャンデータ)を取得するにあたり、呼吸動をモニタするための着目部位を含む関心領域をカバーする本スキャンのスライス面とは独立したスライス面に位相エンコードを付加しないm個(mは1以上N以下の整数)のナビゲーションエコーを本スキャンデータ毎に取得し、取得した各ナビゲーションエコーを周波数方向に1次元フーリエ変換し、画素信号の強度として表わされる実空間データを求め、実空間データから着目部位を含む関心領域を演算で抽出し、関心領域内の実空間データから着目部位の位置を検出する磁気共鳴イメージング装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−57226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
腹部領域における一般的な3次元ボリューム撮像は、体動(例えば呼吸動)の影響を少なくするために息止め撮像が行われる。しかし、息止め可能な時間は有限なことから、広いボリューム領域を撮像しようとした場合、複数回の息止め撮像が必要となる。この副作用として、得られる複数の3次元ボリューム画像は生体情報(呼吸情報)の時相が異なるため、各回で撮像された3次元ボリューム画像を繋げた場合には、生体情報(呼吸情報)の差による画像の段差(位置ズレ)が生じることがある。この場合、再度の3次元ボリューム撮像を行う必要がある場合があったが、3次元ボリューム撮像の撮像時間は時間がかかるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、再度の3次元ボリューム撮像を行うことなく、生体情報の差による画像の段差をなくした3次元ボリューム画像を提供する医用画像処理装置及び治療支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明に係る医用画像処理装置は、医用画像撮像手段により被検体の部位を撮像して得られた3次元ボリューム画像を読み込む第一読込手段と、前記3次元ボリューム画像を撮像したときの前記被検体の生体情報の時相とは異なる時相において、前記被検体の部位を2次元撮像して得られた2次元画像を読み込む第二読込手段と、前記2次元画像を用いて前記3次元ボリューム画像の補償を行う画像補償手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る治療支援システムは、上記医用画像処理装置と、前記被検体の3次元ボリューム画像及び2次元画像を撮像する医用画像撮像装置と、前記3次元ボリューム画像の撮像及び前記2次元画像の撮像と同期して、前記被検体の生体情報を取得する生体情報取得手段と、前記被検体に対する手技に用いられる術具の3次元の位置を検出する位置検出手段と、前記術具の位置を前記3次元ボリューム画像上に表示したナビゲーション画像を生成するナビゲーション画像生成手段と、を備え、前記医用画像撮像装置は、前記3次元ボリューム画像を撮像したときの前記被検体の生体情報の時相とは異なる時相において、前記被検体の部位を2次元撮像して前記2次元画像を生成し、前記医用画像処理装置は、前記2次元画像を用いて、前記3次元ボリューム画像の補償を行い、前記ナビゲーション画像生成手段は、前記補償された3次元ボリューム画像上に前記術具の位置を表示したナビゲーション画像を生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、生体情報が、所望する時相と異なる時相において3次元ボリューム撮像をした場合、所望する時相で撮像した2次元スライス画像を用いて3次元ボリュームデータの画像補償を行うため、再度の3次元ボリューム撮像が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係る治療支援システムの概略構成図
【図2】治療支援システム10に用いられる治療支援プログラムの構成を示すブロック図
【図3】マルチスラブ撮像の処理内容を示す説明図
【図4】横隔膜追従機能処理を示す説明図
【図5】本実施形態に係る治療支援システムの処理の流れを示すフローチャート
【図6】マルチスライス画像取得処理を示す説明図
【図7】3D画像の画像補償処理を示す説明図であって、(a)は基準となる生体情報に基づいて2Dマルチスライス画像を撮像する処理を示し、(b)は、事前に取得した3D画像に対し、2Dマルチスライス画像を基準に3D画像の同一断面を補償する処理を示し、(c)は2Dマルチスライス画像と異なる断面画像を補間して、全ての3Dボリューム画像を補償して3D画像を生成する処理を示す。
【図8】ナビゲーション画像生成時における3D画像変更処理を示す説明図
【図9】手術前に表示される画面表示例を示す模式図
【図10】手術中に表示される画面表示例を示す模式図
【図11】4Dボリューム画像による画像ナビゲーション処理を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。同一機能を有する構成及び同一の処理内容の手順には同一符号を付し、その説明の繰り返しを省略する。
【0011】
本実施形態の説明に先立ち、本実施形態の基礎技術について説明する。3次元ボリューム撮像を行う医用画像撮像装置として、核磁気共鳴撮像装置(以下、MRI装置と称する)がある。このMRI装置は、連続的に被検体中の水素や燐等からの核磁気共鳴信号(以下、MR信号と称する)を測定し、核の密度分布や緩和時間分布等を映像化するものである。現在、臨床で普及しているMRI装置の撮像対象は、被検体の主たる構成物質、プロトンである。MRIは、プロトン密度の空間分布や、励起状態の緩和現象の空間分布を画像化することで、人体頭部、腹部、四肢等の形態または、機能を2次元もしくは3次元的に撮像する。
【0012】
一般的なMRI装置は、患者の周囲に静磁場を発生する磁石と、この空間に傾斜磁場を発生する傾斜磁場コイルと、この領域に高周波磁場を発生するRFコイルと、患者が発生するMR信号を検出するRF受信コイルを含み構成されている。傾斜磁場コイルは、X、Y、Zの3方向の傾斜磁場コイルで構成され、傾斜磁場電源からの信号に応じてそれぞれ傾斜磁場を発生する。RFコイルは、RF送信部の信号に応じて高周波磁場を発生する。RFコイルの信号は、信号検出部で検出され、信号処理部で信号処理され、また計算により画像信号に変換される。画像信号は、表示部で断層像として表示される。傾斜磁場電源、RF送信部、信号検出部などは、制御部で制御され、制御のタイムチャートは一般にパルスシーケンスと呼ばれている。患者は、ベッドに横たわってRF受信コイル、RFコイル傾斜磁場コイルなどで囲まれた装置内の空間に搬送され、断層面の撮像が行われる。
【0013】
このようなMRI装置を用いた心臓イメージングや、手術時の穿刺モニタリング、経皮的治療などに使用されるI−MRI装置(interventinal−MRI装置、または、Intraoperative−MRI装置の略称)では、リアルタイムで撮像する断層面を任意に設定したいという要望がある。撮像する断層面を任意に選択する手法として、グラフィカルユーザインタフェース(以下「GUI」と略記する。)にMRI画像を表示して、画面上のボタンをクリックして、次に撮像する断層面を決定する方法や、3次元マウスなどを使う方法などが提案されている。これらの方法では、撮像する断層面の位置や向きをマウスなどの入力手段で調整、設定しなければならず煩雑なので、MRI装置としては、より簡便に撮像する断層面の位置や向きを調整、設定できることが望ましい。その手法として、術具の先端部にポインタを設け、3次元位置検出装置にてポインタの位置を検出し、これに基づいて、断層面を自動的に調整する技術がある。
【0014】
一方、位置検出装置と過去に撮像したボリュームデータを用いた手術ナビゲーションシステムは、手術時に患者に対してポインタなどにより指定される位置を、当該位置を含む患者の直交3平面それぞれを断面とする断層画像上に表示することにより手術操作をナビゲーションするシステムであり、脳神経外科手術などの高精度の外科手術に適用されている。
【0015】
ここで、このような手術ナビゲーションシステムにおける患者の断層画像は、予め、MRI装置によって撮像した3次元のデータであるボリュームデータにより生成される。一方、ポインタによる指定位置を定めるために必要とされるポインタの位置検出の方式には、機械式、光学式、磁気式、超音波式などの方式がある。上記I-MRIと3次元手術ナビゲーションシステムとを組み合わせ手術ナビゲーションシステムを構成することも行われている。
【0016】
更に、MRIによる高速撮像シーケンスの応用のひとつとして、フルオロスコピー(透視撮像)と呼ばれるリアルタイム動態画像化法が臨床応用されつつある。フルオロスコピーでは、1秒以下程度の周期で撮像と画像再構成を繰り返すことにより、あたかもX線透視撮像のように体内組織の動態抽出や体内に外部から挿入した器具の位置把握に用いることができる動態画像を生成・表示する。この応用は3次元高速撮像にも応用されている。方法として、Rawデータを間引いて撮像し、以前のデータを用いて補完・再構成する技術がある。例えば、TR=1、Phase Encode=100とすれば、100ms毎に1画像を連続取得することができる。
【0017】
ここで、腫瘍を含むボリュームを高速撮像する方法として、マルチスライスにて確認する方法が一般的である。3次元計測(3次元撮像)によるボリューム撮像はスライス厚も薄く設定できるが、計測時間がかかる欠点がある。しかし、数枚の2次元マルチスライス撮像であれば、数秒で3次元情報が得られ、治療前後の画像の差分機能と組み合わせると、手術情報としての役割を果たすことができる。例えば、ターゲットを含む断面撮像する場合、それを含む断面を任意の間隔で複数枚撮像する。得られる画像においてターゲットとなる腫瘍が描出されるが、スライス間隔があるため3次元的な詳細情報を得ることができない。それを解決する方法として、最大値投影法(MIP;Maximum Intensity Projection)がある。これは、3次元画像上で所定の方向を設定し、この方向に直交するすべてのピクセルの検出線上で最大値を見つけ、これに基づいて2次元画像を作成する。この方法は実行が容易であるが、2次元情報しか得ることができない。
【0018】
また、画像処理機能を有するMRI装置と3次元位置検出装置による術具位置の検出機能を用いて、MRIにて撮像した3Dボリューム画像から特定領域を登録し、3次元位置検出装置にて検出した術具位置が特定領域内にあるかを判別し、術具位置が特定領域内にある場合には特別に設定したパラメータを用いてマルチスライス撮像する技術がある。つまり、特定領域だけを異なる条件で撮像することで、部位毎の鮮明な診断が可能になり、アーチファクトによる誤診を防ぎ治療効果を向上することもできる。また、インタラクティブ スキャン コントロール(Interactive Scan Control、以下「ISC」と略記する)や3次元ナビゲーション等の治療支援装置と併用することで、術具方向に追随したMIP画像等の画像処理機能を併用することで、術前と術中画像の差を明確化することができ、手術成績向上が期待できる。上記技術を前提として、以下、本発明の実施形態を説明する。
【0019】
本実施形態に係る治療支援システムは、核磁気共鳴装置により、被検体を連続する複数の撮影位置に分けて、各撮影位置において息止めをして3次元ボリューム撮像を行い、各撮像位置から3次元ボリューム画像(以下、各撮像位置から得た3次元ボリューム画像を「区間3次元ボリューム画像」という)を取得し、その区間3次元ボリューム画像の生体情報(本実施形態では特に呼吸情報)の時相にずれが生じた場合に、所望する時相で撮像した2次元スライス画像を用いて、区間3次元ボリューム画像の画像補償を行うものである。そして、時相が一致した区間3次元ボリューム画像を繋げて、上記複数の撮影位置の3次元ボリューム画像を用意し、それを用いて、穿刺針の位置を示すナビゲーション画像を生成・表示するものである。
【0020】
本実施形態では、補償した3次元ボリューム画像を手技中のナビゲーション画像に用いるが、補償した3次元ボリューム画像の使用用途は、これに限定されるものではない。また、本実施形態では、複数の撮像位置から区間3次元ボリューム画像を取得したが、単一の撮像位置について3次元ボリューム撮像を行ったときに、所望する生体情報の時相、例えば吸期からずれてしまった場合にも、その撮像位置について2次元マルチスライス撮像を行い、それを用いて画像補償をしてもよい。
【0021】
また、本実施形態では、生体情報として呼吸情報、特に横隔膜位置を用いるが、体動は呼吸動に限らず、心臓の拍動による心時相の一致(ECG)、食道の嚥下運動や各消化器官の消化運動でもよい。また、生体情報は、心電図や、食道、各消化器官の位置情報を用いてもよい。また、本実施形態では、医用画像撮像装置として核磁気共鳴装置(以下「MRI装置」という)を用いるが、本発明は、3次元ボリューム撮像と2次元マルチスライス撮像とに係る時間を比較した場合に、3次元ボリューム撮像の方が相対的に時間が長い、いかなる医用画像撮像装置に適用してもよい。よって、例えばX線CT装置を用いて3次元ボリューム撮像を行い、体動の時相が合わない断面について再度2次元スライス画像の撮像を行い、その2次元スライス画像を用いて3次元ボリューム画像を補償してもよい。X線CT装置の場合には、再度の3次元ボリューム撮像による被曝の低減も図ることができるという効果がある。
【0022】
以下、図1に基づいて、本実施形態に係る治療支援システムの構成について説明する。図1は、本実施形態に係る治療支援システムの概略構成図である。
【0023】
本実施形態に係る治療システム10は、主に、核磁気共鳴撮像装置(以下、MRI装置と称する)1がパーソナルコンピュータ19と連結される。そして、穿刺針36に取り付けられたポインタ27を位置検出デバイス9が連続的に追随し、ポインタ27の位置情報を転送することで、MRI(またはCT)装置1と穿刺針36の位置とが連結される。
【0024】
図1のMRI装置1は、垂直磁場方式0.3Tの永久磁石MRI装置であり、患者の周囲に垂直な静磁場を発生する上部磁石3と下部磁石5とが支柱7により垂直方向に並べて配置される。上部磁石3と下部磁石5との間に構成された開口部32内に、被検体24がベッド21に載置されて搬送される。また、MRI装置1は、図示を省略するものの、この静磁場空間に傾斜磁場を発生する傾斜磁場発生部を備える。この斜磁場発生部は、領斜磁場をパルス的に発生させ、最大傾磁場強度15mT/mで、スルーレート20mT/m/msである。更に、MRI装置1は、静磁場中の被検体24に核磁気共鳴を生じさせるための図示しないRF送信器、被検体24からの核磁気共鳴信号を受信する図示しないRF受信器を備え、これらは12.8MHzの共振型の傾斜磁場コイルにより構成される。傾斜磁場コイルは、X、Y、Zの3方向の傾斜磁場コイルで構成され、傾斜磁場電源からの信号に応じてそれぞれ傾斜磁場を発生する。RFコイルは、RF送信部の信号に応じて高周波磁場を発生する。RFコイルの信号は、信号検出部で検出され、信号処理部で信号処理され、また計算により画像信号に変換される。画像信号は、表示部で断層像として表示される。傾斜磁場電源、RF送信部、信号検出部などは、制御部で制御される。制御のタイムチャートは一般にパルスシーケンスと呼ばれている。被検体24は、ベッド21に横たわってRF受信コイル、RFコイル、傾斜磁場コイルなどで囲まれたMRI装置1内の空間に搬送され、断層面の撮像が行われる。
【0025】
位置検出デバイス9は、間隔をおいて(視差を持たせて)設けられた複数の赤外線カメラ25、25と、赤外線を発光する図示しない発光ダイオードを含んで構成され、断層面指示デバイスであるポインタ27の位置及び姿勢を検出するものである。この位置検出デバイス9は、アーム11により移動可能に上部磁石3に連結され、MRI装置1に対する配置を適宜変更することができる。また、ポインタ27の位置検出の方式には、上記に限らず、機械式、光学式、磁気式、超音波式などの方式を用いてもよい。
【0026】
基準ツール17は、ポインタ27とMRI装置1との相対的な位置関係を検出するために、赤外線カメラ25の座標系とMRI装置1の座標系をリンクさせるもので、3つの反射球からなるマーカ35を備え、上部磁石3の側面に設けられている。マーカは、反射球に代えて、発光ダイオードなどの光源でもよい。
【0027】
パーソナルコンピュータ19には、赤外線カメラ25が検出し算出したポインタ27の情報が、術具位置データとして、例えば、RS232Cケーブル33を介して送信される。
【0028】
モニタ13、14は、術者29が把持する穿刺針36に備えられたポインタ27により指示された被検体24の断層面の画像を表示するもので、モニタ支持部15により、赤外線カメラ25同様、上部磁石3に連結されている。
【0029】
制御部23は、ワークステーションで構成され、MRI装置1と電気的に接続される。そして、図示しないRF送信器、RF受信器などを制御する。更に制御部23は、パーソナルコンピュータ19と接続されている。パーソナルコンピュータ19では赤外線カメラ25が検出し算出したポインタ27の位置から穿刺針36の位置データを取得し、その位置データをMRI装置1で利用可能な位置データに変換し、制御部23へ送信する。位置データは、撮像シーケンスの撮像断面へ反映される。新たな撮像断面で取得された画像は液晶モニタからなるモニタ13、14及びモニタ20に表示される。例えば断層面指示デバイスであるポインタ27を穿刺針36にとりつけ、穿刺針36のある位置を常に撮像断面とする様に構成した場合、モニタ13、20には穿刺針36の先端を含む断面が表示されることになる。また、穿刺針36に代わり、収束超音波を照射する治療プローブを用いた手技において、収束超音波の焦点がある位置を常に撮像断面とするように構成してもよい。その他、生体情報に同期した計測をすることも可能であり、被検体24に取り付けられた同期(時相)計測装置41にて各種情報(脈波、心電、呼吸)を取得することができるが、本実施形態では、同期計測装置41に代えて、後述(図5参照)の如く、MRI装置1により被検体24内の横隔膜位置を追従する機能を用いる。
【0030】
MRI装置1は、手術室100内に設置され、パーソナルコンピュータ19及びこれに接続されたモニタ20、制御部23、映像記録装置34は、手術室に隣接する操作室101内に備えられる。そして、モニタ13、14は、術者29が視認し、モニタ20は、操作室101内の操作者(図示を省略)が視認する。パーソナルコンピュータ19に接続された映像記録装置34は、術中の動画像(映像信号)を同時記録する。
【0031】
次に、図2に基づいて、治療支援システム10に用いられる治療支援プログラムについて説明する。図2は、治療支援システム10に用いられる治療支援プログラムの構成を示すブロック図である。治療支援プログラムは、パーソナルコンピュータ19の図示しない記憶装置に格納され、パーソナルコンピュータ19に備えられた図示しないメモリにロードされてCPUにより実行されることにより、各プログラムとパーソナルコンピュータ19を構成するハードウェアとが協働してプログラムが備える機能を実現する。
【0032】
治療支援プログラムは、被検体24の3次元ボリュームデータを取得する画像データ取得部19aと、3次元ボリュームデータに基づいて3次元ボリューム画像(以下「3D画像」という)を3次元再構成する画像再構成部19bと、被検体の生体情報の時相を監視する生体情報モニタリング部19cと、2次元スライス画像を用いて3D画像の画像補償を行う画像補償部19dと、画像補償後の3D画像から病変部位が撮影された領域(以下病変部位を「特定部位」、病変部位が撮影された領域を「特定領域」という)を抽出する特定領域抽出部19eと、被検体の再構成画像に特定領域の位置や穿刺針36の位置を重畳表示したナビゲーション画像を生成するナビゲーション画像生成部19fと、位置検出デバイス9からの位置情報に基づいて、穿刺針36及び被検体24の実空間上の位置をもとめ、これをMRI装置1が使用可能な検出空間の座標系に変換し、更に検出空間の座標系を被検体の再構成画像上の座標系に変換して、被検体の再構成画像と穿刺針36及び被検体24の実空間上の座標とを一致させる位置検出処理部19gと、術具の経路、特に本実施形態では、穿刺針36の芯線の延長方向や先端位置を、位置検出デバイス9が求めたポインタ27の傾き等のパラメータに基づいて算出したり、仮想的な穿刺針先端からの治療領域を算出する経路算出部19hと、ナビゲーション画像や再構成画像をモニタ13,14、20へ表示制御する表示制御部19lと、を備える。
【0033】
本実施形態では、画像データ取得部19aは、MRI装置1から3次元ボリュームデータと2次元マルチスライスデータを取得し、画像再構成部19bが3D画像及び2次元マルチスライス画像を再構成するが、予め撮像された3次元ボリュームデータ及び2次元マルチスライスデータを、図示しない記憶装置に格納しておき、画像再構成部19bがこれらの再構成処理を行ってもよい。この場合、画像データ取得部19aは必須ではない。更に、すでに再構成された3D画像や2次元マルチスライス画像を用いて画像補償処理を行う場合には、画像再構成部19bも必須ではない。
【0034】
次に、本実施形態に係る治療支援システム10で行うマルチスラブ撮像の概要について、図3に基づき説明する。図3は、マルチスラブ撮像の処理内容を示す説明図である。被検体24の腹部等の動きのある部位を、例えば3分割して息止め撮像するとした場合、スラブ1から3D画像301、スラブ2から3D画像302、スラブ3からの3D画像303を取得する。息止め撮像と同時に、生体情報(呼吸情報)もモニタリングする。呼吸情報のモニタリング手法として、例えば、横隔膜位置情報を用いて吸期−呼期を判断する手法がある。すなわち、吸期において、横隔膜は、被検体内の腹部深部(足部側)により近い部位に位置し、呼気においては、横隔膜は、被検体内の腹部上部(頭部側)により近い部位に位置ため、横隔膜位置を参照することで、呼期と吸期とを判別できる。
【0035】
図4に基づいて、横隔膜位置情報を用いた生体情報(呼吸情報)の取得方法について説明する。図4は、横隔膜追従機能処理を示す説明図である。被検体24の肺241と横隔膜242とを縦断する領域243について、MRI装置1は、3D撮像と同時に横隔膜撮像を実施する。被検体24に対して、肺241と横隔膜242とは上下に規則運動をしている。そこで、横軸が経過時間、縦軸が体軸方向に沿った横隔膜位置を示す時系列グラフ401(呼吸情報に相当)は、周期的なグラフとなる。ここで、横隔膜位置情報をトラッキングしながら撮像することで、各スラブにおいて呼吸差(呼吸時相の差)405がない同条件(同時相)において3D画像が取得可能となる。
【0036】
例えば、時系列グラフ401において、スラブ1撮像時の横隔膜位置402と、スラブ2撮像時の横隔膜位置403、スラブ3撮像時の横隔膜位置404がすれているとすると、3次元ボリューム画像間の連結時のつなぎ目に、呼吸時相の差405が3D画像の段差として表示され、3D画像間の連続性が保たれない。よって、時相の差がある場合に、基準時相においてそのスラブに対し2次元マルチスライス撮像を行い、そこで得られた2次元画像を用いて3次元ボリューム画像の画像補償を行う。以下、図5のフローチャートのステップ順に沿って説明する。図5は、本実施形態に係る治療支援システムの処理の流れを示すフローチャートである。
【0037】
(ステップS1)
MRI装置1は、息止めをした被検体24のスラブ1を3次元ボリューム撮像(以下「3D撮像」という。)し、画像データ取得部19aが3次元ボリューム画像データ(以下「3Dデータ」という。)を読み込む。画像再構成部19bは、3Dデータの3次元再構成を行い、3D画像を生成する(S1)。
【0038】
(ステップS2)
同時に、MRI装置1において、ステップS1における3D撮像時の生体情報(本実施形態では呼吸情報に相当する)をモニタリングする(S2)。
【0039】
(ステップS3)
被検体24を載置したベッド21の天板を移動して、撮像位置を変更する(S3)。
【0040】
(ステップS4)
再度の息止め3D撮像(例えば、スラブ2、スラブ3)及び3次元再構成を行う(S4)。
【0041】
(ステップS5)
ステップS2と同様、S4の3D撮像と同時に呼吸情報をモニタリングする(S5)。
【0042】
(ステップS6)
生体情報モニタリング部19cは、ステップS2、S5の呼吸情報を読込み、3D撮像を行ったときの生体情報(呼吸情報)の時相が、基準となる生体情報の時相(以下「基準時相」という。)、例えば、前回、又は1回目の3D撮像における時相と一致するかどうかの判断を行う(S6)。否定であればステップS7、肯定であればステップS9へ進む。
【0043】
本実施形態では、スラブ1を撮像したときの時相402を基準時相とし、この基準時相からの時相差405が所定範囲内にある場合を一致、所定範囲外にある場合を不一致と判断する。よって、スラブ2を撮像した時の時相403は一致、スラブ3を撮像した時の時相404は不一致となる。よって、ステップS7以下において、スラブ3の2Dマルチスライス撮像及び画像補償を行う。
【0044】
(ステップS7)
生体情報の時相が基準時相と異なる位置で3D撮像を行った撮影位置において、基準時相に合わせて2次元マルチスライス撮像を行う(S7)。本実施形態では、スラブ3相当の撮影位置、かつ基準時相402と同一時相において、MRI装置1により2次元マルチスライス撮像を行う。次に図6に基づいて、2次元マルチスライス画像の取得について説明する。図6は、マルチスライス画像取得処理を示す説明図である。
【0045】
生体情報モニタリング部19cは、時系列グラフ603に対して周期601、602毎に連続的な呼吸情報を随時モニタリングしておく。そして、基準時相(スラブ1の3Dデータ204を撮像時の時相)604と同じ時相605において、スラブ3の2次元マルチスライス撮像を行い、2次元画像607を取得する。この2次元画像607を用いて、スラブ3の3D画像303の画像補償を行う。なお、スラブ1は、基準となる時相であり、スラブ2は、その撮像時の時相が基準時相と一致するので画像補償が不要となることから、2次元マルチスライス撮像を行わない。
【0046】
(ステップS8)
画像補償部19dは、ステップS7で撮像された2Dマルチスライス画像を用いて、3D画像を補償する(S8)。
【0047】
次に図7に基づいて、3D画像の画像補償処理について説明する。図7は、3D画像の画像補償処理を示す説明図である。画像補償部19dは、まず、過去に取得した3D画像303における断面位置と、ステップS7で撮像した2次元マルチスライス画像607の断面位置と、の位置合わせを行う。位置合わせは、MRI装置1が3D撮像又は2次元マルチスライス撮像を行ったときの断面位置情報を用いて、画像補償部19dが行ってもよいし、2次元マルチスライス画像607及び3D画像303を操作室101内にあるモニタ20に表示し、操作者が図示しない入力装置により、3D画像303における2次元マルチスライス画像607の断面位置に相当する位置を入力してもよい。
【0048】
続いて、位置合わせをされた2次元マルチスライス画像607内に撮像された部位の領域と、3D画像303内に撮像された部位の領域との関係づけを行う。関係づけは、画像補償部19dが、2次元マルチスライス画像607及び3D画像303のそれぞれから関係づけに用いる部位領域、を例えば領域拡張法により抽出し、円形度や輪郭線の形状、また抽出された領域全体についてパターンマッチング処理を行い、各画像から抽出された部位領域が一致するものを関係付けることにより行ってもよい。また、関係づけは、2次元マルチスライス画像607及び3D画像303を操作室101内にあるモニタ20に表示し、3D画像303に撮像された部位領域の位置と、その臓器が2次元マルチスライス画像607に撮像されている部位領域の位置とを、操作者が図示しない入力装置を用いて指示入力することにより、関係づけ情報を入力してもよい(図7(a)(b)参照)。
【0049】
なお、関係付けに用いる部位領域は、被検体24の呼吸動による位置の変化が相対的に小さい部位、例えば、背骨や背骨周囲に位置する軟部組織と、呼吸動による変化が相対的に大きい部位、例えば、体表面の腹部(正面)側の輪郭線、臍位置、及び体内において、体表面の正面側に位置する軟部組織と、の双方を含むことが望ましい。
【0050】
画像補償部19dは、関係づけされた部位領域を用いて、2次元マルチスライス画像207を基準とし、それに2次元マルチスライス画像607と同じ断面位置の3D画像303が一致するように、3D画像303の各部位に対して拡大・縮小、回転、アフィン変換を行うことで、画像補償する。より詳しくは、画像補償部19dは、2次元マルチスライス画像607、及び2次元マルチスライス画像607と同じ断面位置の3D画像303を、両画像の呼吸動の影響がより少ない部位領域の位置を基準とし、2次元マルチスライス画像607と同じ断面位置の3D画像303の呼吸動の影響がより大きい部位領域の位置が、2次元マルチスライス画像607の当該部位領域と関係づけられた部位領域の位置になるように、3D画像303の画像補償を行う。図7(b)では、画像補償された断面位置を3D画像303Aとする。
【0051】
更に、画像補償部19dは、3D画像303のうち、2次元マルチスライス画像607のスライス間の断面位置にある画像については、その前後の2次元マルチスライス画像607、又は当該断面位置に相当する補償後の3D画像303Aの画像を用いて補完し、最終的には全てのボリューム画像を補償する(図7(c)参照)。図7(c)では、補償及び補間された全ての3D画像を303Bとする。画像補償部19dによる補間処理は、例えば、補間対象となる3D画像303の断面位置の画像に撮像されている部位領域と、その前後の2次元マルチスライス画像607に撮像されている部位領域との関連付けを行い、補間対象となる3D画像303の断面位置とその前後に位置する2次元マルチスライス画像607との距離比に応じて、補間対象となる3D画像303に対して施した拡大・縮小、回転、又はアフィン変換を行う。なお、補間処理は、上記の処理に限らない。
【0052】
(ステップS9)
撮像部位の変更があれば、ステップS3に戻って3D撮像と画像補償を繰り返す。また、撮像部位の変更がない、すなわち、必要な3D画像がすべて揃っていれば、ステップS10へ進む(S9)。
【0053】
(ステップS10)
操作者は、補償が不要な3D画像及び補償後の3D画像303B上で、治療対象となる領域である特定領域の抽出を行う(S10)。特定領域抽出部19eは、補償が不要な3D画像及び補償後の3D画像303Bから、濃度値(CT値)や形状を基に、特定領域を抽出する。又は、操作者が、補償が不要な3D画像及び補償後の3D画像303Bをモニタ20に表示し、画面上で、図示しない入力装置により特定領域の位置を入力をすることにより、特定領域の設定を行ってもよい。
【0054】
(ステップS11、S12)
手術に必要な機器のスイッチをONにし、手術を開始する(S11)。それと同時に、MRI装置1により呼吸情報の継続的なモニタリングを開始する(S12)。
【0055】
(ステップS13)
術具位置を検出し、補償後の3D画像を用いたナビゲーション画像上に重畳表示する(S13)。術具位置の検出とそれに伴うナビゲーション画像の更新は、術具位置の検出を随時行うことにより、その位置に追従して実行される。
【0056】
図8に基づいて、本ステップの処理について説明する。図8は、ナビゲーション画像生成時における3D画像変更処理を示す説明図である。被検体24の特定部位801を含む3つの領域、スラブ1、スラブ2、スラブ3を3D撮像し、3D画像301、302、303(画像補償後の3D画像は303B)とすると、特定領域802を含む3D画像は、3D画像302に含まれる断面画像802となる。この断面画像802をナビゲーション画像の一つとして表示してもよい。
【0057】
更にナビゲーション画像生成部19fは、位置検出処理部19gから穿刺針36の先端位置を取得する。そして、ナビゲーション画像生成部19fは、先端位置に応じて、ナビゲーションに適用する3D画像301、302、303Bをリアルタイムに変更し、先端位置含む撮像断面(図8における810、811、812)の断面画像に、術具の位置を重畳表示したナビゲーション画像を生成して表示する。経路算出部19hは、位置検出処理部19gからの位置情報及びマーカ27の角度から、穿刺針36の進行方向を算出する。ナビゲーション画像生成部19fは、経路算出部19hが算出した術具の経路を、ナビゲーション画像上に重畳表示する。ナビゲーション画像は、モニタ20及びモニタ13、14に表示される。
【0058】
(ステップS14)
術者は、モニタ13、14に表示されたナビゲーション画像を視認し、術具の位置を確認後、治療を開始する。本実施形態では、穿刺針36の穿刺を開始する(S14)。
【0059】
(ステップS15)
MRI装置1によるリアルタイム画像を用いて、術者は治療効果を確認し(S15)、残治療領域がなくなれば手術を終了する。
【0060】
図9及び図10に基づいて、本実施形態に係る治療支援システムにおいて表示されるGUI例について説明する。図9は、手術前に表示される画面表示例を示す模式図であり、図10は、手術中に表示される画面表示例を示す模式図である。
【0061】
図9の画面90は、被検体24の画像が表示される画像表示領域91と、装置情報、被検体情報(図9内の「患者情報」)、各種機能情報、術具情報等、手術に必要な詳細情報が表示される詳細情報表示領域92と、3D画像に関する情報が表示される3D情報表示領域93と、操作ボタンが表示されるボタン領域94と、を含む。
【0062】
ボタン領域94には、被検体の3Dボリューム撮像を行う「3DScan」ボタン941と、生体情報の取得を行う「生体モニタ」ボタン942と、マルチスラブ撮像におけるスラブを設定する「複数領域指定(ベッド移動)」ボタン943と、2次元スライス撮像の指示及びそれを用いた3D画像の補償の指示を入力する「3D画像補償(マルチスライス)」ボタン944と、補償された3D画像において病変部位が撮影された領域(特定領域)を設定する「特定領域(セグメンテーション)」ボタン945、術具(本実施形態における穿刺針)の初期位置の登録を行う「レジストレーション」ボタン946を備える。
【0063】
「3DScan」ボタン941及び「生体モニタ」ボタン942を押下することで、3D撮像と生体情報の取得とが開始される。基本的には、息止め撮像ができる範囲なので、複数領域(複数のスラブ)の撮像を繰り返す。そこで、「複数領域指定(ベッド移動)」ボタン943を押下して異なる領域に患者を移動し、再度「3DScanボタン」941および「生体モニタ」ボタン942を押し下げる。ここで撮像された3Dボリュームデータに基づくMRI画像は、画像表示領域91内の各ウィンドウ内に表示される。図9では、スラブ1、2、3、4、5、6から撮像された3D画像910、911、912、913、914、915が表示される。次に、必要に応じて「3D画像補償(マルチスライス)」ボタン944を押下して3D画像を補償する。この作業を繰り返した後、「特定領域抽出(セグメンテーション)」ボタン945を押下し、3D情報表示領域93内の参照画面を見て、マウスやペンを用いて特定領域936を設定したり、自動抽出により特定領域936を設定する。特定領域936に関する情報は、別画面937に詳細表示されており、本例では3つの特定領域1、2、3に関する情報が表示されている。また、3D画像は、スラブ領域(領域1〜6)が分かるように色分け等により区別されている(932〜935に相当)。
【0064】
次に図10に基づき、臨床時のGUIについて説明する。臨床画面の一例である画面100は、被検体24の画像が表示される画像表示領域1010と、手術支援情報を表示する手術支援情報表示領域1020と、操作ボタンが表示されるボタン領域1030と、を含む。ボタン領域1030は、治療開始前に使用する術前プラニング部、手術時に使用する手術支援機能部(穿刺時)、及びオプションとして使用する手術支援付加機能部によって構成される。術前プラニング部には、「3DScan」ボタン1031(図9の「3DScan」ボタン941と同等)と、術具の経路を算出して表示する「Planning」ボタン1032とを備える。手術支援機能部は、2次元リアルタイム画像を表示させる「ISC:ON/OFF」ボタン1033と、ナビゲーション画像を表示させる「ナビゲーション:ON/OFF」ボタン1034とを備える。手術支援付加機能部は、「Volume Rendering」ボタン1035、「Axial」ボタン1036、「Sag.」ボタン1037、「Cor.」ボタン1038、及び「術具位置確認」ボタン1039、「治療効果確認」ボタン1040を備える。
【0065】
まず治療開始前において、「3DScan」ボタン1031を押し下げ、3D撮像を行う。撮像された3D画像に基づく画像として、画像表示領域1010内に、アキシャル画像1013、サジタル画像1014、コロナル画像1015、ボリュームレンダリング画像1016が表示される。次に、「Plannning」ボタン1032を押下すると、経路算出部19hにより、3D画像上にて手術経路(術具の経路)のシミュレーションを行う。
【0066】
手術時に「ナビゲーション:ON/OFF」ボタン1034押下すると、アキシャル画像1013、サジタル画像1014、コロナル画像1015、及びボリュームレンダリング画像1016上に、手術シミュレーション情報1021(図10中の一点鎖線)と実際の術具位置1020が表示され、術者は視覚的に手術経路を補償することができる。
【0067】
また、「ISC:ON/OFF」ボタン1033を押下すると、手術支援情報表示領域1020内に2次元のリアルタイム画像1017が撮像・表示される。それら2次元リアルタイム画像上にも、シミュレーションによる手術経路1023と実際の術具位置1022とが表示される。メッセージ部1019には、装置情報、患者情報、各種機能情報、術具情報がリアルタイムに表示される。
【0068】
手術支援付加機能部の「Volume Rendering」ボタン1035、「Axial」ボタン1036、「Sag.」ボタン1037、「Cor.」ボタン1038、「術具位置確認」ボタン1039を押し下げると、ナビゲーション画像生成部19fが、手術支援情報表示領域1020に、アキシャル画像、サジタル画像、コロナル画像の断面位置1028と、シミュレーションによる手術経路1025と実際の術具位置1024、との3次元位置を模式的に表した立体構成画面1018を生成し、表示する。この立体構成画面1018により、特定領域と術具との、立体的かつ術具との相対距離が一目で把握できるようになっている。
【0069】
更に、「治療効果確認」ボタン1040を押下すると、ナビゲーション画像生成部19fは、立体構成画面1018に仮想治療領域1027と、特定領域1026とが更に重畳表示する。更に、仮想的な穿刺針先端からの治療領域を含む画像1050、1051、102、1053、1054が表示される。これらの各画像には、仮想的な穿刺針先端からの治療領域1027が表示される。この機能は、Radio Frequency Ablation(RFA)やCryotherapy等の温熱治療を想定したものであり、仮想的な穿刺針先端からの治療領域1027が特定領域1026を包み込めれば治療が可能ということを示している。術者はこれらの機能を有効に利用して手術を進めることになる。
【0070】
本実施形態によれば、被検体の連続する部位を複数の領域に分けて3D撮像した場合に、各領域において3D撮像をしたときの生体情報(呼吸情報)の時相が異なっても、再度の3D撮像をすることなく、3D撮像よりもより撮像時間が短い2次元スライス撮像により得られた2次元スライス画像を用いて画像補償をすることで、同時相の3D画像を揃えることができる。そのため、画像誘導手術支援時には、ボリューム間で連続性のある画像情報を提供できるだけでなく、画像と実空間の精度を向上できることから、結果的に手術の精度を向上させることができる。それに伴い手術時間の短縮ができ、術者・患者への負担を低減できる。
【0071】
次に本発明に係る画像補償機能の別の利用態様について説明する。図11は、呼吸同期を用いた4Dボリューム画像による手術中の画像ナビゲーション機能について説明する。図11は、4Dボリューム画像による画像ナビゲーション処理を示す説明図である。
【0072】
位置検出デバイス9にて術具(穿刺針36)位置を検出し、術具の先端位置の撮像断面304の位置を計算する。本実施形態では、手術中に、図6において説明したMRI装置1による横隔膜位置の測定を継続的に行い、呼吸情報を生体情報として取得する。ここで、呼吸情報には、吸期、呼期、及び吸期―呼期の中間期の3パターンある。そして、上記ステップS6〜ステップS8において、吸期、中間期、呼期のそれぞれの時相における2次元マルチスライス画像を撮像し、これを用いて、ステップS1、S4で取得した3D画像301、302、303を各時相に合った画像に画像補償する。画像補償した3D画像の画像補償を行い、吸期の3D画像1110、(吸期―呼期)間の3D画像1111、呼期の3D画像1112を生成する。そして、パーソナルコンピュータ19の図示しないメモリに3D画像1110、1111、1112を記録し、手術中にモニタリングした呼吸情報に同期させて、画像補償した3D画像1110、1111、1112を表示することにより、呼吸情報に同期した3D画像をリアルタイムに提供する。
【0073】
また、本発明における画像補償機能は異なるパラメータによるMRI画像でも対応可能である。また、本発明は術者自身(手技)による治療、ロボット/マニピュレータを用いた間接的な手術の何れにも適用可能とすることができる。
【符号の説明】
【0074】
1:MRI装置、3:上部磁石、5:下部磁石、7:支柱、9:位置検出デバイス、10:治療支援システム、11:アーム、13:モニタ、15:モニタ支持部、17:基準ツール、19:パーソナルコンピュータ、20:モニタ、21:ベッド、23:制御部、24:被検体、25:赤外線カメラ、27:ポインタ、29:操作者、32:開口部、33:ケーブル、34:映像記録装置、35:反射球、36:穿刺針、41:同期(時相)計測装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像撮像手段により被検体の部位を撮像して得られた3次元ボリューム画像を読み込む第一読込手段と、
前記3次元ボリューム画像を撮像したときの前記被検体の生体情報の時相とは異なる時相において、前記被検体の部位を2次元撮像して得られた2次元画像を読み込む第二読込手段と、
前記2次元画像を用いて前記3次元ボリューム画像の補償を行う画像補償手段と、
を備えることを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項2】
前記画像補償手段は、前記3次元ボリューム画像のうち、前記2次元画像と同一断面位置にある画像を、前記2次元画像と一致するように補正をし、前記3次元ボリューム画像のうち、前記2次元画像とは異なる断面位置にある画像を、その前後に位置する2次元画像を用いて補間することにより、前記補償を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記3次元ボリューム画像及び前記2次元画像を表示する表示手段と、
前記表示手段の表示画面上において、前記3次元ボリューム画像に撮像された領域と、前記2次元画像に撮像された領域と、の関連付け情報を入力する入力手段と、を更に備え、
前記画像補償手段は、前記関連付け情報に基づいて、前記3次元ボリューム画像に撮像された領域の位置が、前記2次元画像に撮像された領域の位置に一致するように、前記3次元ボリューム画像を補償する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記画像補償手段は、前記3次元ボリューム画像及び前記2次元画像から、前記被検体が撮像された領域の輪郭を抽出し、前記3次元ボリューム画像の輪郭が、前記2次元画像の輪郭に一致するように、前記3次元ボリューム画像を補償する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記3次元ボリューム画像は、前記被検体を連続する複数の領域に分け、各領域において撮像された区間3次元ボリューム画像をつなぎ合わせたものであり、
前記画像補償手段は、全ての区間3次元ボリューム画像の生体情報の時相が一致するように、前記区間3次元ボリューム画像を補償する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記2次元画像は、前記生体情報の所望する時相において、等間隔のマルチスライス撮像を行うことにより撮像された画像である、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一つに記載の医用画像処理装置と、
前記被検体の3次元ボリューム画像及び2次元画像を撮像する医用画像撮像装置と、
前記3次元ボリューム画像の撮像及び前記2次元画像の撮像と同期して、前記被検体の生体情報を取得する生体情報取得手段と、
前記被検体に対する手技に用いられる術具の3次元の位置を検出する位置検出手段と、
前記術具の位置を前記3次元ボリューム画像上に表示したナビゲーション画像を生成するナビゲーション画像生成手段と、
を備え、
前記医用画像撮像装置は、前記3次元ボリューム画像を撮像したときの前記被検体の生体情報の時相とは異なる時相において、前記被検体の部位を2次元撮像して前記2次元画像を生成し、
前記医用画像処理装置は、前記2次元画像を用いて、前記3次元ボリューム画像の補償を行い、
前記ナビゲーション画像生成手段は、前記補償された3次元ボリューム画像上に前記術具の位置を表示したナビゲーション画像を生成する、
ことを特徴とする治療支援システム。
【請求項1】
医用画像撮像手段により被検体の部位を撮像して得られた3次元ボリューム画像を読み込む第一読込手段と、
前記3次元ボリューム画像を撮像したときの前記被検体の生体情報の時相とは異なる時相において、前記被検体の部位を2次元撮像して得られた2次元画像を読み込む第二読込手段と、
前記2次元画像を用いて前記3次元ボリューム画像の補償を行う画像補償手段と、
を備えることを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項2】
前記画像補償手段は、前記3次元ボリューム画像のうち、前記2次元画像と同一断面位置にある画像を、前記2次元画像と一致するように補正をし、前記3次元ボリューム画像のうち、前記2次元画像とは異なる断面位置にある画像を、その前後に位置する2次元画像を用いて補間することにより、前記補償を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記3次元ボリューム画像及び前記2次元画像を表示する表示手段と、
前記表示手段の表示画面上において、前記3次元ボリューム画像に撮像された領域と、前記2次元画像に撮像された領域と、の関連付け情報を入力する入力手段と、を更に備え、
前記画像補償手段は、前記関連付け情報に基づいて、前記3次元ボリューム画像に撮像された領域の位置が、前記2次元画像に撮像された領域の位置に一致するように、前記3次元ボリューム画像を補償する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記画像補償手段は、前記3次元ボリューム画像及び前記2次元画像から、前記被検体が撮像された領域の輪郭を抽出し、前記3次元ボリューム画像の輪郭が、前記2次元画像の輪郭に一致するように、前記3次元ボリューム画像を補償する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記3次元ボリューム画像は、前記被検体を連続する複数の領域に分け、各領域において撮像された区間3次元ボリューム画像をつなぎ合わせたものであり、
前記画像補償手段は、全ての区間3次元ボリューム画像の生体情報の時相が一致するように、前記区間3次元ボリューム画像を補償する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記2次元画像は、前記生体情報の所望する時相において、等間隔のマルチスライス撮像を行うことにより撮像された画像である、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一つに記載の医用画像処理装置と、
前記被検体の3次元ボリューム画像及び2次元画像を撮像する医用画像撮像装置と、
前記3次元ボリューム画像の撮像及び前記2次元画像の撮像と同期して、前記被検体の生体情報を取得する生体情報取得手段と、
前記被検体に対する手技に用いられる術具の3次元の位置を検出する位置検出手段と、
前記術具の位置を前記3次元ボリューム画像上に表示したナビゲーション画像を生成するナビゲーション画像生成手段と、
を備え、
前記医用画像撮像装置は、前記3次元ボリューム画像を撮像したときの前記被検体の生体情報の時相とは異なる時相において、前記被検体の部位を2次元撮像して前記2次元画像を生成し、
前記医用画像処理装置は、前記2次元画像を用いて、前記3次元ボリューム画像の補償を行い、
前記ナビゲーション画像生成手段は、前記補償された3次元ボリューム画像上に前記術具の位置を表示したナビゲーション画像を生成する、
ことを特徴とする治療支援システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図11】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図11】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−29767(P2012−29767A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170359(P2010−170359)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成19年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「基礎研究から臨床研究への橋渡し促進技術開発/橋渡し促進技術開発/疾患動物を用いた新規治療機器の安全性・有効性評価手法の開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成19年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「基礎研究から臨床研究への橋渡し促進技術開発/橋渡し促進技術開発/疾患動物を用いた新規治療機器の安全性・有効性評価手法の開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】
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