説明

医用診断装置

【課題】 患者の負担を軽減するとともに、安全性の向上を図る。
【解決手段】 寝台12が支持する天板121に載置された被検体Pによって発生する振動の程度を振動センサ14が信号として検出し、この被検体Pによって発生する振動の程度を示す信号情報に基づいて、被検体Pに異常が発生しているかどうかを異常判定部15が判定し、異常判定部15が被検体Pに異常が発生していると判定した場合、被検体Pにおける異常の発生を報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用診断装置に係り、特に患者にかかる負担を軽減し、安全性の向上を図る医用診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、磁気共鳴イメージング装置(MRI)、コンピュータ断層撮影装置(X線CT装置)等の大型の医用診断装置が普及し、疾病の早期発見、治療計画の立案、治療の実施など、人類の福祉の向上に貢献している。ところで、これらの医用診断装置は、検査の際、磁気や放射線を発生させるため、装置本体は磁気遮蔽体や放射線遮蔽体で囲まれた検査室に設置され、この検査室に隣接する操作室に、装置本体を遠隔操作する操作部が設置されるのが一般的である。従って、患者などの被検体のみが検査室の医用診断装置本体の所定位置に、例えば寝かされた状態に置かれ、医師や技師などの操作者は、操作室から装置本体を遠隔的に操作して、被検体へ種々の指示を与えながら、所望の撮影を実施する。
【0003】
また、操作者は操作室から機器本体を遠隔的に操作するため、患者の様子を確認することが困難となる。そこで、検査室内には、例えば医用診断装置本体の天板に寝かされた被検体を観察するためのテレビカメラ(例えば、CCDカメラ)が設置されている。このテレビカメラによって撮影され、操作室のモニタに表示された患者の映像を通して、操作者は患者の様子を観察することができる。(例えば、特許文献1参照。)
【0004】
また他にも、医用診断装置本体に設置されたマイクで患者の声や異音を検知したり、前もって患者に呼び出しスイッチを渡しておき、検査中に異常が発生した場合には、患者本人にそのスイッチを押してもらうなどして、操作者は異常の発生を認識していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−103225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術の場合、患者を監視するためのカメラについては、患者の頭部など、限られた箇所を撮影するようにカメラがアングルを固定されているため、撮影箇所しか確認することができない。特にMRI装置の場合は、患者の頭部にコイルが設置されていることもあり、映像からは患者の様子を認識することは非常に難しい。また、医用診断装置本体に設置された集音マイクについては、MRI装置などの場合、傾斜磁場コイルの振動などにより発生する雑音によって患者の声や異常を示す音を確認することが困難となる。また、呼び出しスイッチについては、操作者が検査前、患者にスイッチを渡し忘れたり、検査中、体に痛みを感じるなどの異常が発生しているにも関わらず、患者が操作者に対して遠慮し、その痛みを我慢してスイッチを押さないなど、人為的な問題のために異常の発生を確実に検知できるとは限らない。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、患者の負担を軽減するとともに、安全性の向上を図ることを可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る医用診断装置は、寝台に載置された被検体によって発生する振動の程度を信号として検出する検出手段と、前記検出手段により検出される前記信号に基づいて、前記被検体の異常を判定する異常判定手段と、前記異常判定手段による判定結果に応じて異常発生を報知する報知手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、患者の負担を軽減するとともに、安全性の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例に係るMRI装置の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の実施例に係るMRI装置の異常判定に用いる情報テーブルを示した図。
【図3】本発明の実施例に係るMRI装置の振動センサによって取得される信号情報に関するグラフを示した図。
【図4】本発明の実施例に係るMRI装置の動作を示すフローチャート。
【図5】本発明の実施例に係るMRI装置の振動センサによって取得される信号情報に関するグラフを示した図。
【図6】本発明の実施例に係るMRI装置の振動センサによって取得される信号情報に関するグラフを示した図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0012】
本実施例では、MRI装置に本発明を適用した例に関して説明する。
【0013】
(構成)
まず、本実施例におけるMRI装置の構成につき、図1を用いて説明する。
【0014】
図1は、本実施例におけるMRI装置100の構成を示したブロック図である。
【0015】
まず、静磁場を発生させる磁石装置1、傾斜磁場を発生させる傾斜磁場コイル2、およびRFコイル3がガントリ4内に略同心状に配置されている。
【0016】
磁石装置1は、高磁場強度、高均一性、高安定性が要求され、例えば超電導磁石、永久磁石などが用いられるが、この実施の形態では超電導磁石を用いるものとして説明する。
【0017】
また、傾斜磁場コイル2は詳細には示されていないが、X軸、Y軸、Z軸の各方向に傾斜磁場を発生させるために、X軸傾斜磁場コイル、Y軸傾斜磁場コイル、Z軸傾斜磁場コイルから成る3チャンネルの傾斜磁場コイルを具備しており、それぞれのX軸傾斜磁場コイル、Y軸傾斜磁場コイル、Z軸傾斜磁場コイルは、各別に駆動されるように、3つの傾斜磁場電源、すなわち、X軸傾斜磁場電源5X、Y軸傾斜磁場電源5Y、Z軸傾斜磁場電源5Zに接続されている。これら各傾斜磁場電源5X、5Y、5Zはガントリ4の外に設けられている。
【0018】
また、RFコイル3は、高周波パルスを送信する送信コイルと、MR信号を受信する受信コイルとを有している。このRFコイル3は、高周波パルスの送信時には送信機6に接続されて駆動され、MR信号の受信時には受信機7に接続される。これらX軸傾斜磁場電源5X、Y軸傾斜磁場電源5Y、Z軸傾斜磁場電源5Zおよび送信機6は、シーケンサ8によって、予めプログラムされている所定のパルスシーケンスに従って制御され、X軸方向の傾斜磁場GX、Y軸方向の傾斜磁場GY、Z軸方向の傾斜磁場GZや高周波パルスを発生する。
【0019】
また、受信機7より供給されるMR信号を再構成処理して被検体の画像データを生成する画像データ生成部9と、画像種及び撮像方法の選択や撮像パラメータの設定等を行う操作部10と、所定の撮像方法や撮像パラメータによって画像データ生成部9が生成した多くの画像種における画像データ群の中から1つあるいは複数の画像データを選択して表示する表示部11を備える。
【0020】
被検体Pは、寝台12が支持する天板121に載置された状態で、ガントリ4内に形成されている診断用空間としての中空部13に挿入され、撮影領域に位置付けされる。
【0021】
そして、振動センサ14は、例えば図1に示すように寝台12が支持する天板121の端部に設けられ、振動センサ14は、被検体Pによって発生する振動を検出し、検出された振動の程度を示す出力信号を異常判定部15に出力する。
【0022】
異常判定部15は、振動センサ14より供給された出力信号に基づいて、被検体Pに異常が発生しているかどうかを判定する。
【0023】
更に、本実施例におけるMRI装置100は、以上の各ユニットを統括的に制御する制御部16を備えている。
【0024】
ここで、振動センサ14、異常判定部15に関して更に詳細に説明を行う。
【0025】
まず、振動センサ14について説明を行う。
【0026】
振動センサ14には、例えば小型でなおかつ分解能が高い重力加速度センサを用いる。
【0027】
重力加速度センサは、X軸、Y軸、Z軸の3軸それぞれに関して振動に関する信号情報を検出する。また、振動センサ14に対する磁場の影響についての対策として、例えば振動センサ14を包囲する位置にアルミニウム等の非磁性体から構成されるシールド(図示しない)を配置することで、振動センサに対する磁場を遮断する。
【0028】
尚、振動センサ14は前述の重力加速度センサに限らず、例えばロードセルなどを使用してもよい。
【0029】
振動センサ14は、図1に示した配置に限定されず、寝台12におけるどの位置に設けてもよいものとする。また、寝台12の他に被検体P自身に取り付けてもよく、またMRI装置100の傾斜磁場コイルに設置して振動を検知することも可能である。
【0030】
次に、異常判定部15について図2、図3を用いて説明を行う。
【0031】
図2は、本実施例に係るMRI装置の異常判定に用いる情報テーブルを示した図である。
【0032】
また、図3は、本実施例に係るMRI装置の振動センサによって取得される信号情報に関するグラフを示した図である。
【0033】
異常判定部15には記憶回路(図示しない)が備わっており、図2に示すような患者登録情報テーブル(a)およびコイル情報テーブル(b)を記憶している。この患者登録情報テーブル(a)およびコイル情報テーブル(b)に基づいて、異常判定部15は、本スキャンより以前に、被検体Pの異常を振動センサから供給される信号情報より判定するための指標となる閾値を決定しておく。
【0034】
例えば、患者登録情報テーブル(a)にある患者IDが123456の被検体Pの検査の際に用いる閾値を決定する場合、被検体Pの体重のデータ(60kg)と、検査に用いるコイルの種類に関するデータ(頭部コイル)、およびコイル情報テーブル(b)にある前述のコイルの種類(頭部コイル)に対応したコイルの重量のデータ(MA1kg)を用いて、この検査において寝台12に加わる荷重が求められる。この荷重で検査した場合、信号強度の許容範囲となる閾値を閾値と寝台12に加わる荷重との対応関係を示した図2に示したテーブル(c)より求められる。前述の患者IDが123456の被検体Pに対する検査の場合、寝台12に加わる荷重が被検体Pの体重60kgと頭部コイルの重量MA1kgを合計したMA2kgであり、MA2kgがMB3kg〜MB4kgの範囲に該当する場合、信号強度の閾値は図2のテーブル(c)よりTH2となる。
【0035】
以上のように決定された閾値を用いて、異常判定部15は、振動センサより送られる信号情報を監視し、図3の信号強度のグラフに示すように、検出された信号強度が閾値TH(前述の患者IDが123456の被検体Pの場合は閾値はTH2)を一定時間ΔTの間超えた時点(図3の時間T1)で、異常判定部15は、被検体Pに異常が発生していると判定する。
【0036】
尚、異常判定部15には振動センサ14から送られる信号情報を増幅させる増幅器(図示しない)が設けられている。
【0037】
また、前述の閾値の決定以外にも、本スキャンの前に行うプリスキャン時の寝台12の振動に関する信号情報を前もって計測しておき、その情報に基づいて閾値を決定してもよい。
【0038】
(動作)
以上のように構成されたMRI装置に関して、被検体Pの異常を検知して操作者に伝える際の動作説明を、図1乃至図4を用いて行う。
【0039】
図4は、本実施例によるMRI装置100の動作を示すフローチャートを示している。
【0040】
(図4のステップS11)
まず、図2に示す患者登録情報テーブル(a)の中から、被検体Pに対応する患者情報を選択し、情報の更新等を必要に応じて操作者が操作部10を用いて行い、制御部16は操作部10からの指示に応じて患者登録情報の処理を行う。
【0041】
(図4のステップS12)
次に、異常判定部15は、患者登録情報テーブルおよびコイル情報テーブルに基づいて、本スキャンより以前に、被検体Pの異常を振動センサから供給される信号情報より判定するための指標となる閾値を決定しておく。
【0042】
例えば、患者登録情報テーブルにある患者IDが123456の被検体Pの検査の際に用いる閾値を決定する場合、被検体Pの体重のデータ(60kg)と、検査に用いるコイルの種類に関するデータ(頭部コイル)、およびコイル情報テーブルにある前述のコイルの種類(頭部コイル)に対応したコイルの重量のデータ(MA1kg)を用いて、この検査において寝台12に加わる荷重が求められる。この荷重で検査した場合、信号強度の許容範囲となる閾値を閾値と寝台12に加わる荷重との対応関係を示した図2に示したテーブルより求められる。前述の患者IDが123456の被検体Pに対する検査の場合、寝台12に加わる荷重が被検体Pの体重60kgと頭部コイルの重量MA1kgを合計したMA2kgであり、MA2kgがMB3kg〜MB4kgの範囲に該当する場合、信号強度の閾値は図2のテーブル(c)よりTH2となる。
【0043】
以上のように決定された閾値を用いて、異常判定部15は、振動センサより送られる信号情報を監視し、図3の信号強度のグラフに示すように、検出された信号強度が閾値TH(前述の患者IDが123456の被検体Pの場合は閾値はTH2)を一定時間ΔTの間超えると、異常判定部15は、被検体Pに異常が発生していると判定する。
【0044】
(図4のステップS13)
被検体を寝台12に載置させた後、操作者は、操作部10よりオフセット処理を行うよう、異常判定部15に指示を送り、その指示に基づいて異常判定部15は図3に示すように、振動センサ14より送られる信号情報に対してオフセット処理を行い、本スキャン直前に振動センサ14より送られる信号情報の強度をほぼゼロに設定する。
【0045】
(図4のステップS14)
被検体を載せた寝台12上の天板121を被検体の体軸方向にスライドさせ、被検体における撮像対象部位を撮像領域の所定位置に配置する。
【0046】
操作者が操作部10より本スキャンを開始するよう制御部16に指示を送る。その指示に基づいて、制御部16は各ユニットに対して本スキャンの開始を指示し、判スキャンが開始され、撮像領域内の複数断面に関して撮像する。取得されたMR信号は画像データ生成部9によって再構成され、画像データとなる。このような動作を繰り返すことにより複数の撮像位置において複数断面の画像データが生成される。
【0047】
また、この本スキャンの開始をトリガーとし、異常判定部15は、振動センサ14による寝台12の振動に関する信号情報のサンプリングと、前述のステップS12において決定した閾値を用いた異常判定動作を開始する。
【0048】
尚、サンプリング値に後処理として加算平均等のLOWPASSフィルタ処理を施す。
【0049】
(図4のステップS15)
図3の信号情報のグラフに示すように、一定時間ΔTの間、信号情報が閾値を超えた場合、異常判定部15は、寝台12側で異常が発生していると認識し、異常の発生を制御部16に伝える。
【0050】
(図4のステップS16)
異常判定部15より寝台12側の異常の発生を受けた制御部16は、異常発生を操作者に伝えるための警告を表示するよう、表示部11に指示し、表示部11はその指示に基づいて、表示画面(図示しない)上に異常発生の警告を表示する。
【0051】
尚、操作者への異常発生の通知は、前述の表示画面上への警告表示に限定されず、例えば警報などを用いて操作者の聴覚に訴える方法であっても構わない。
【0052】
また、異常が検知された時点でスキャンを停止させてもよい。例えば、シーケンサ8へ制御信号を送ってシーケンサ8の動作を停止させることによって、各傾斜磁場コイル2への電源供給を遮断してその駆動を停止させ、さらに送信機6の駆動も停止させ、本スキャンを停止させる。
【0053】
また、前述の被検体Pに関する異常発生の通知を実行中に、操作者は操作部10を用いることで、異常発生の通知の実行を途中で解除することが可能となる。
【0054】
また、本スキャンが終了すると、制御部16から異常判定部15へ、異常判定動作を終了するよう、指示が送られ、その指示に基づいて、異常判定部15は異常判定動作を終了する。再度被検体Pに対する本スキャンの実行時には、図4のステップS11の動作へ移行し、前述の動作を繰り返す。
【0055】
また、再スキャンの時間短縮やX線被曝線量の低減を図ることが可能となる。
【0056】
尚、本発明の適用は、本実施例のように、MRI装置に限定されるものではなく、操作者と被検体Pが撮影の関係上、離れた場所にいなければいけないような装置であればよく、X線CT装置や放射線治療装置、PETCT装置などへの適用が可能である。
【0057】
例えば、X線CT装置の場合は、天板121を移動させながら被検体Pに対するスキャンを行うヘリカルスキャンなどの撮影方法があり、寝台12の振動の程度もスキャンプランによって大きく異なる。そのため、シングルスライススキャンやヘリカルスキャンなどのスキャンプラン毎に閾値を決定し、尚且つ寝台12の移動や停止の動作に基づいて異常の判定を行うよう、異常判定部15を制御する。
【0058】
(効果)
本発明により、患者の負担を軽減するとともに、安全性の向上を図ることが可能となる。
【0059】
また、本実施例により、振動センサ14の感度として閾値を被検体Pの体重や身長、更にはスキャンプランに基づいて決定することによって、誤り認識を避けることが可能となる。
【0060】
また、被検体Pの寝台12からの墜落を未然に防止することが可能となる。
【0061】
被検体Pから操作者への意思伝達手段が増え、患者に優しい装置の実現が可能となる。
【0062】
また、振動センサ14として、重力加速度センサを用いることにより、他のユニットに対して機械的に接触したような場合に、構造体に生ずる固体伝播の異常振動をも検出することができる。この場合は、傾斜磁場コイル2の取付け位置にずれが生じたことが予想され、良好なMR画像を得るためにすみやかに点検・調整をうながすトリガーともなり、さらに、傾斜磁場コイル2自体の損傷も未然に防止することが可能となる。
【0063】
また、検査プランニングを閾値の判定に用いることにより、撮像断面(コロナル、サジタル、アキシャル)によって励起する断面を変えるために起こる振動の程度の違いも考慮することが可能となる。
【0064】
更に、被検体Pによって発生する振動を検知することで、寝台12上の被検体Pの移動を予測し、すみやかに被検体Pに対してスキャンのやりなおしを行うことが可能となるため、それに伴って検査効率の向上を図ることが可能となる。
【0065】
また、X線CT装置に本発明を適用した場合、寝台12の移動動作を含んだスキャンプランに基づいて閾値を決定することで、より正確に異常判定を行うことが可能となる。
【0066】
また、本発明は前述の実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、前述の実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成でき、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0067】
(実施例の変形例)
被検体Pの異常発生の判定方法について、前述の実施例における方法と異なる方法について図5、図6を用いて説明を行う。
【0068】
図5は、一定時間ΔTの間の信号情報に対して積算を行う例を示した図である。
【0069】
また、図6は、一定時間ΔTの間の信号情報が閾値THを上回った回数に基づいて異常の判定を行う例を示した図である。
【0070】
まず、信号情報に対して積算を行い、その結果を異常判定に用いる方法について説明する。
【0071】
図5のΔT間の信号情報に関して、閾値THより上方の積算対象箇所(黒色部分)について信号強度の積算値INを算出する。積算値の算出法は例えば、次のような数式(1)を用いる。
【0072】
IN=(SI−TH)×ΔT・・・(1)
【0073】
この積算値INが所定の値を上回った時点(図5の時間T2)で、異常判定部15は、寝台12側で異常が発生していると認識し、異常の発生を制御部16に伝える。
【0074】
次に、一定時間ΔTの間の信号情報が閾値THを上回る回数に基づいて異常の判定を行う場合の説明を行う。
【0075】
例えば、あらかじめ一定時間ΔTの間の信号情報が閾値THを上回る回数が5回になった時点で異常判定部15が、寝台12側で異常が発生していると認識し、異常の発生を制御部16に伝えるよう操作者が操作部10を用いて設定しておく。その条件下で、被検体Pに対する本スキャンを開始するとともに、振動に関する信号情報のサンプリングを開始する。図6において、時間T3の時点で一定時間ΔTの間に信号情報が閾値THを5回上回り、異常判定部15は、寝台12側で異常が発生していると認識し、異常の発生を制御部16に伝える。
【0076】
以上のような被検体Pの異常発生の判定方法を用いることにより、より正確に被検体Pに対する異常発生を判定することが可能となる。
【0077】
尚、本発明において、閾値の決定方法は前述の被検体Pの体重とコイルの重量に基づいて決定する方法に限らない。例えば、被検体Pを寝台12に載置させた状態で、中空部13に頭部、脚部のどちらから先に挿入するかによって、同じ頭部の撮影においても、寝台12に加わる荷重の分布は異なる。その加わる荷重の分布の違いを、異常判定において考慮に入れても良い。
【符号の説明】
【0078】
100 MRI装置
P 被検体
1 磁石装置
2 傾斜磁場コイル
3 RFコイル
4 ガントリ
5X X軸傾斜磁場電源
5Y Y軸傾斜磁場電源
5Z Z軸傾斜磁場電源
6 送信機
7 受信機
8 シーケンサ
9 画像データ生成部
10 操作部
11 表示部
12 寝台
121 天板
13 中空部
14 振動センサ
15 異常判定部
16 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
寝台に載置された被検体によって発生する振動の程度を信号として検出する検出手段と、
前記検出手段により検出される前記信号に基づいて、前記被検体の異常を判定する異常判定手段と、
前記異常判定手段による判定結果に応じて異常発生を報知する報知手段と、
を備えることを特徴とする医用診断装置。
【請求項2】
前記異常判定手段は、前記被検体の異常を判定するための指標として閾値を備え、前記信号と、前記閾値との比較によって前記被検体の異常を判定することを特徴とする請求項1に記載の医用診断装置。
【請求項3】
前記閾値は、前記被検体に関する情報又は前記被検体に対するスキャンプランに関する情報のうち、少なくとも一方に基づいて設定することを特徴とする請求項2に記載の医用診断装置。
【請求項4】
前記被検体の情報は少なくとも前記被検体の体重を含むことを特徴とする請求項3に記載の医用診断装置。
【請求項5】
前記スキャンプランに関する情報は少なくとも前記被検体の前記寝台上での配置に関する情報を含むことを特徴とする請求項3に記載の医用診断装置。
【請求項6】
前記閾値は、前記被検体に対するスキャン以前に行うプリスキャン時に前記検出手段が検出した前記信号に基づいて設定することを特徴とする請求項2に記載の医用診断装置。
【請求項7】
前記異常判定手段は、前記検出手段が検出する前記信号の強度が所定の時間前記閾値を上回る場合、前記被検体に異常が発生していると判定することを特徴とする請求項2に記載の医用診断装置。
【請求項8】
前記異常判定手段は、所定の時間内に前記検出手段が検出する前記信号に対して、積算を行い、その結果と前記閾値とを用いて前記被検体の異常を判定することを特徴とする請求項2に記載の医用診断装置。
【請求項9】
前記異常判定手段は、前記検出手段が検出する前記信号の強度が所定の時間前記閾値を所定の回数上回る場合、前記被検体に異常が発生していると判定することを特徴とする請求項2に記載の医用診断装置。
【請求項10】
前記検出手段は、前記寝台又は前記被検体の体表面のうち、少なくとも一つに設けることを特徴とする請求項1に記載の医用診断装置。
【請求項11】
前記報知手段は、前記被検体の異常の発生を視覚的に報知する表示手段を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の医用診断装置。
【請求項12】
前記報知手段は、前記被検体の異常の発生を聴覚的に報知する音声発生手段を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の医用診断装置。
【請求項13】
均一な磁場空間に対して傾斜磁場を発生し、前記被検体に対して磁気共鳴を誘起することで発生する前記被検体の磁気共鳴信号を用いて前記被検体に関する画像を生成する手段を更に備え、
前記閾値は、前記磁気共鳴信号を受信するための受信コイルの重量に基づいて設定することを特徴とする請求項2に記載の医用診断装置。
【請求項14】
前記寝台に載置された前記被検体へX線を照射し、このX線管から照射され、前記被検体を透過したX線のデータに基づいて前記被検体に関する断層画像を再構成する手段を更に備え、
前記閾値は、前記被検体に対するX線の照射の際の前記寝台の動作に基づいて設定することを特徴とする請求項2に記載の医用診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−233965(P2010−233965A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87930(P2009−87930)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】