説明

医療器具

【課題】癌の発生部位に拘らず治療が可能な医療器具を提供する。
【解決手段】本発明の医療器具10,20,30は、正負のいずれか一方の電極に接続される電導性筒状部材により形成され、先端側面に薬液注入孔を有する針管11,31と、基端側から針管11,31の内部に挿入可能に設けられ、針管11,31と反対の電極に接続される電導性針状部材により形成され、針管11,31の内面に接触する外周面に絶縁部15,33が形成された針体12,32と、針管11,31の先端側開口を閉塞可能且つ針体12,32の先端に接触可能に設けられた所定の発熱抵抗を有する発熱体14,34とを備え、針体12,32を基端側から針管11,31の内部に挿入し、針体12,32の先端を発熱体14,34に接触させると、発熱体14,34を介して針体12,32と針管11,31とが通電するように構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌等腫瘍の生検検査等による器具接触によって引き起こされる腫瘍接触の拡散を器具自体の塩素殺菌効果により低減させると共に、癌等腫瘍を直接加熱殺菌することにより癌等腫瘍治療を行う医療用具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、癌等腫瘍の治療方法として、外科(手術)療法、化学療法、ホルモン療法、放射線療法等が広く行われている他、免疫療法、カテーテル治療、穿刺治療、熱凝固療法、温熱療法なども知られている。
【0003】
外科(手術)療法は、患者の体力及び年齢や、病院の設備によっては充分に行うことのできない場合がある。また、患者が外科(手術)療法に耐えられる状況であったにしても、腫瘍を傷つけることなく摘出しなければならないため、広範囲の摘出が必要となる。そのため、乳癌で乳房の全摘出などを行った場合、術後の生活に多大な影響を残すことが多い。さらに、腫瘍細胞の全摘出を行ったにしても、摘出時の腫瘍接触等の播種によって、腫瘍細胞の転移が起こる可能性もある。
【0004】
化学療法は、癌細胞の活動を抑えるための治療法であるが、抗癌剤投与はそもそも抗癌剤自体が毒であり、癌細胞のみならず体全体に効き渡るため、正常細胞を損傷させることとなり、さまざまな有害事象の発症が懸念される。
【0005】
ホルモン療法はホルモン依存性の癌に効果があると言われているが、ホルモンレセプターが陽性の場合には有効な療法であるが、ホルモンレセプターが陰性の場合は、効果が期待できない。
【0006】
放射線療法はほぼ確実に癌等腫瘍細胞を破壊することができるが、固定された臓器にのみ照射可能であるため、正常細胞間の腫瘍に放射線を照射することによる正常細胞の被爆損傷も懸念される。
【0007】
粒子線療法は放射線療法の一種である。一般に放射線といわれるエックス線やガンマ線などは、体表面から浅い部分に対する細胞破壊効果が高く、体表面か深い部分の治療には不向きであるが、陽子をサイクロトンや加速器で加速させ得られた陽子線・重粒子線を使用した場合、体表面より深い部分での被爆線量の度合いが大きくなるため、体表面から深い部分の癌に対して有効であると言われている。ただ、放射線には変わりがないため正常細胞の被爆損傷も懸念される。
【0008】
免疫療法は増殖させた血中のキラー細胞により癌細胞を死滅させる療法であるが、繁殖に長期間必要であり、またその費用は高額である。
【0009】
また、同様の免疫療法として、患者の摘出癌等腫瘍細胞を第三者のリンパ球により死滅させ、癌等腫瘍細胞を異物として認識した第三者リンパ球を投与することで、異物である第三者リンパ球を死滅させる療法もある。この療法では、第三者リンパ球に含まれる患者の癌等腫瘍細胞が異物であるという情報が、患者のリンパ球に刷り込まれるため、その情報を基に患者の癌等腫瘍細胞を患者のリンパ球が攻撃し始めるが、癌等腫瘍細胞に正常細胞が含まれていた場合、患者本人のリンパ球が癌等腫瘍細胞のみならず正常細胞までも攻撃することとなり(GVHD(移植片対宿主病)と言う)、ややもすれば自殺行為となりかねない。
【0010】
カテーテル治療とは癌細胞の癌血管を閉塞させ、癌を弱らせる療法で、癌細胞近傍に直接抗癌剤を投与する療法である。カテーテルを使用して癌血管を閉塞させることは癌血管がひとつではないこと、また、癌近傍にカテーテルを挿入し閉塞抗癌剤等の治療作業を行うことで、癌細胞の転移を促す可能性もある。
【0011】
穿刺治療として、エタノール注入療法や熱凝固療法があり、熱凝固療法のなかにマイクロ波治療とラジオ波治療とがある。エタノール注入療法では、高濃度のエタノールで癌細胞や癌血管を壊す療法であり、熱凝固法以降の癌血管の除去に十分効果があるが、注入したアルコールが拡散してしまうため、併用療法と考えられる。
【0012】
熱凝固療法のうちマイクロ波治療は、高周波を針先から発生させることにより、細胞を振動させ、その振動熱により癌細胞を死滅させる療法であるが、電子レンジと同様の機構でありマイクロ波自体の人体に対する影響に疑問が残る。
【0013】
また、熱凝固療法のうちラジオ波治療は、電極の放熱により近傍細胞に熱を加え、癌細胞を死滅させる療法であるが、熱量が器具先端に集中する療法であるため、治療中の発熱により癌細胞が焼灼破裂したり、熱で他の臓器に穴を開け患者を死に至らしめたりする事故が起こっており、相当の熟練者でなければ行えない療法である。さらに、熱による焼灼破裂によって癌を撒き散らしているのではないかと言われている。
【0014】
温熱療法は癌等腫瘍細胞が42〜43度程度の温度で消滅することが臨床例より確認されていることから考案された療法であり、従来、加熱採血循環法、熱体接着法、ハイパーサーミア等の療法が行われてきた。
【0015】
加熱採血循環法は、42度程度に加熱した血液を、体内を循環させることで癌等腫瘍細胞を死滅さる療法であるが、現在は行われていない。これは、体表面でなく、体内より体表面までが42度程度の熱を持ち、また、温熱療法は長時間加熱治療することで効果が現れる療法で、相当長時間に渡ってこの治療を受けた場合、強健な体を持つ者であっても相当な苦痛が伴う。
【0016】
熱体接着法は、発熱体を患部表皮に押しつけて部分的に加熱することで、深部に有る癌等腫瘍細胞まで加温してゆく療法であるが、やはり現在は殆ど行われていない。前記加熱採決循環法と同様、相当な苦痛が伴う。
【0017】
ハイパーサーミアは、電磁波により腫瘍を振動発熱させ腫瘍を消滅させる方法である。これは簡単に言えば電子レンジを癌等腫瘍治療に応用したものであり、電磁波による熱以外の影響が少ないとみられていることから、近年、有効な療法として実用化が進んでいる療法であるが、電磁波による正常細胞に対する熱以外の影響がないのであれば、最も有効な癌等腫瘍等腫瘍治療法と考えられる。
【0018】
温熱療法の類似法として、鍼灸針の摘み部分を熱し、その熱を体表面より患部に伝える方法もあるが、本来、鍼灸の用途に要するものであり、癌等腫瘍細胞の治療用具としては、熱量及び加熱時間が不足するため用をなさない。
【0019】
従来、上記したような治療方法を行うため、各種医療器具が開発されている(例えば、特許文献1〜6参照)。
【0020】
特許文献1に記載の発明は、治療具内部の絶縁芯材を治療具の前後に固定した発熱治療具であり、注射針として利用することができず、絶縁芯材の先端及び治療具全体より腫瘍及び治療具の自体の殺菌を行うことができない。
【0021】
特許文献2に記載の発明は、マイクロ波発熱作用を利用した発熱治療具であり、その先端を広くとることにより、マイクロ波の影響範囲を広げる発明であり、本発明による電熱発電方式とは根本的に異種の発明である。
【0022】
特許文献3に記載の発明は、治療具の先端より、マイクロ波アンテナを横出しにすることによってマイクロ波の影響範囲を広げる発明であり、針先若しくは針芯材に発熱体を有していないため、特許文献2同様、本発明による電熱発電方式とは根本的に異種の発明である。
【0023】
特許文献4に記載の発明は、交流磁場で患部を加熱する生体加熱針で針管の空芯部の全部又は一部に充填してなることを特徴とする発明であり、生体加熱針を発熱させるため交流磁場誘導コイルが必要であり、注射針としての機能はない。さらに、移動可能とした芯材先端及び治療具全体より電気分解による消毒液を発生させ腫瘍及び治療具自体の殺菌を行うことはできない。そのため、本発明は根本的に異種の発明である。
【0024】
特許文献5に記載の発明は、モノポーラ及びバイポーラ電極を持つ治療用または診断用薬剤送出装置である。モノポーラ電極は、高周波電流発生装置に接続して生体組織の凝固、切開に用いる電極であり、バイポーラ電極は、先端に陽極と陰極を交互に螺旋上に配したものであり、隣り合う2極間に電流が流れるため侵襲が深部に至らない等の特徴を有するものである。また、その形状は内筒と外筒の間に空間を持つ二重針構造であり、外筒側面に吸引ポートを有するものであり、二重筒構造になっている。以上からも、本発明は根本的に異種の発明である。
【0025】
特許文献6に記載の発明は、高周波温熱治療電極であり、絶縁部材に針状導体を差し込んだ構造であるため、単独での発熱は不可能であり、本発明とは根本的に異種の発明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】特表2003−511211号公報
【特許文献2】特表2004−518471号公報
【特許文献3】特表2006−503630号公報
【特許文献4】特開2007−244748号公報
【特許文献5】特表2006−520663号公報
【特許文献6】特開平6−190059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
しかしながら、上記した従来の医療器具では、癌の発生部位によっては治療を行うことができないといった問題があった。
【0028】
また、患者の体力の消耗が大きく、薬害等後遺症や放射線や電磁波による正常細胞の損傷後遺症のおそれがあるといった問題があった。
【0029】
さらに、腫瘍に接触することによって腫瘍転移が起きたり、転移を抑えるために細胞の焼灼破裂が起きたりするおそれがあるといった問題があった。
【0030】
さらにまた、高度で高額の施設や設備を必要とし、簡便に誰でも治療することができず、治療費が嵩むといった問題もあった。
【0031】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、癌の発生部位に拘らず治療を行うことができ、後遺症や腫瘍転位のおそれがなく、治療費の低減化を図ることのできる医療器具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0032】
上記した目的を達成するため、本発明に係る医療器具は、正電極と負電極のいずれか一方の電極に接続される電導性筒状部材により形成され、先端側面に薬液注入孔を有する針管と、基端側から該針管の内部に挿入可能に設けられ、該針管と反対の電極に接続される電導性針状部材により形成され、前記針管の内面に接触する外周面に絶縁部が形成された針体と、前記針管の先端側開口を閉塞可能且つ前記針体の先端に接触可能に設けられた所定の発熱抵抗を有する発熱体とを備え、前記針体を基端側から前記針管の内部に挿入し、前記針体の先端を前記発熱体に接触させると、該発熱体を介して前記針体と前記針管とが通電するように構成されていることを特徴とする。
【0033】
また、本発明に係る医療器具において、前記薬液注入孔は前記針体の先端部が前記針管から出入り可能なように形成されていてもよい。
【0034】
また、本発明に係る医療器具は、正電極と負電極のいずれか一方の電極に接続される電導性筒状部材により形成された針管と、基端側から該針管の内部に挿入可能に設けられ、該針管と反対の電極に接続される電導性針状部材により形成され、前記針管の内面に接触する外周面に絶縁部が形成された針体と、前記針管の先端と前記針体の先端の少なくともいずれか一方に設けられた所定の発熱抵抗を有する発熱体とを備え、前記針体を基端側から前記針管の内部に挿入すると、前記針体と前記針管とが前記発熱体を介して接触し、通電するように構成されていることを特徴とする。
【0035】
さらに、本発明に係る医療器具において、前記針管及び前記針体が可撓性材料により形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、癌の発生部位に拘らず治療を行うことができ、後遺症や腫瘍転位のおそれがなく、治療費の低減化を図ることができる等、種々の優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】(a)〜(c)はいずれも本発明の第1の実施の形態に係る医療器具を示す断面図である。
【図2】(a)〜(e)はいずれも本発明の第1の実施の形態に係る医療器具の使用方法を示す断面図である。
【図3】(a)〜(c)はいずれも本発明の第2の実施の形態に係る医療器具を示す断面図である。
【図4】(a)〜(e)はいずれも本発明の第2の実施の形態に係る医療器具の使用方法を示す断面図である。
【図5】(a)〜(c)はいずれも本発明の第2の実施の形態に係る医療器具の別の使用方法を示す断面図である。
【図6】(a)〜(c)はいずれも本発明の第3の実施の形態に係る医療器具を示す断面図である。
【図7】(a)〜(e)はいずれも本発明の第3の実施の形態に係る医療器具の使用方法を示す断面図である。
【図8】(a)〜(c)はいずれも本発明の第3の実施の形態に係る医療器具の変形例を示す断面図である。
【図9】(a)〜(c)はいずれも本発明の第3の実施の形態に係る医療器具の別の変形例を示す断面図である。
【図10】(a)〜(c)はいずれも本発明の第3の実施の形態に係る医療器具のさらに別の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
【0039】
先ず、図1(a)〜(c)を参照しつつ、本発明の第1の実施の形態に係る医療器具の構成について説明する。
【0040】
図1(a)〜(c)はいずれも本発明の第1の実施の形態に係る医療器具を示す断面図であり、本実施の形態に係る医療器具10は、電導性の細い円筒状部材により形成された針管11と、電導性の細い針状部材により形成された針体12とを備えており、針体12は基端側から針管11の内部に挿入可能となっている。
【0041】
針管11は、先端が斜めに切断された尖形形状を成し、先端側面には薬液注入孔13が穿設されており、基端部には正電極と負電極のいずれか一方の電極が接続されるようになっている。また、針管11の先端には、針管11の先端側開口を閉塞するように所定の発熱抵抗を有する金属製の発熱体14が溶着されており、発熱体14は針管11の先端形状に合致する尖形形状を成している。
【0042】
針体12は、発熱体14に合致するように先端が斜めに切断された尖形形状を成し、針管11の内面に接触する外周面には絶縁部15が形成されており、基端部には針管11と反対の電極が接続されるようになっている。
【0043】
次に、図2(a)〜(e)を参照しつつ、上記した医療器具10の使用方法について癌治療を行う場合を例にとって説明する。ここで、図2(a)〜(e)はいずれも本実施の形態に係る医療器具の使用方法を示す断面図である。
【0044】
先ず、図2(a)に示すように、患者の体表面16若しくは針管11の基端部に負電極を取り付け、患者の体表面16から癌腫瘍部分17まで針管11を体内に挿入し、針管11の内部に麻酔液9を注入する。
【0045】
次いで、図2(b)に示すように基端側から針管11の内部に針体12を挿入する。その後、図2(c)に示すように、針体12の基端部に正電極を取り付けると共に針管11の基端部に負電極を取り付け、針体12の先端を発熱体14に接触させて通電すると、発熱体14は電気抵抗により定温(例えば42度程度)発熱する。この発熱により、癌腫瘍部分17の体内汚染物質は殺菌消毒され、壊死する。
【0046】
また、図2(d)に示すように、体表面16に負電極を接続すると共に針体12に正電極を接続すれば、生体体液の電気分解が始まり、生体体液に含まれる塩水から塩素18が発生する。この塩素18により、体内汚染微粒物質は殺菌消毒され、壊死する。なお、この時、患者の複数の箇所に針管11が挿入されている場合には、体表面16に負電極を接続する代わりに他の針管11に負電極を接続してもよい。
【0047】
その後、図2(e)に示すように、針管11から針体12を抜き取り、針管11の内部に無水エタノールの薬液19を注入し、体内汚染微粒物質用血管を殺菌消毒する。
【0048】
また、図2(e)において針管11及び針体12より発生させた塩素18をチオ硫酸ナトリウム等によって中和も可能となる。
【0049】
次に、図3〜図5を参照しつつ、本発明の第2の実施の形態に係る医療器具の構成について説明する。なお、以下の説明では、説明の簡略化のため、第1の実施の形態に係る医療器具10と同様の構成については、図3〜図5中、図1及び図2と同一の符号を付し、それらの構成についての詳細な説明は省略する。
【0050】
図3(a)〜(c)はいずれも本発明の第2の実施の形態に係る医療器具を示す断面図であり、この断面図を見れば分かるように、本実施の形態に係る医療器具20は、針体12の先端部が針管11から出入り可能なように薬液注入孔21が針体12の挿入方向に沿って長く形成されている点を除いては、上記した第1の実施の形態に係る医療器具10と同様の構成を備えている。この場合、薬液注入孔21の周壁部分22と針体12の先端面12aはそれぞれ針管11及び発熱体14の各先端面11a,14aに平行に傾斜して形成されている。これにより、針体12の先端部の針管11からの出入り動作を円滑に行うことができる。
【0051】
図4(a)〜(e)はいずれも本発明の第2の実施の形態に係る医療器具20を使用して癌治療を行う方法を示す断面図であり、先ず、図4(a)に示すように、針管11の基端部に負電極を取り付け、患者の体表面16から癌腫瘍部分17まで針管11を体内に挿入した後、針体12を針管11の内部に挿入する。
【0052】
次いで、図4(b)に示すように、薬液注入孔21から針体12の先端部を針管11の外部の癌腫瘍部分17に突出させ、体表面16に負電極を接続すると共に針体12に正電極を接続して通電すると、針体12の先端部の近傍において生体体液の電気分解が始まり、生体体液に含まれる塩水から塩素18が発生する。この塩素18により、体内汚染微粒物質は殺菌消毒され、壊死する。なお、この時、患者の複数の箇所に針管12が挿入されている場合には、体表面16に負電極を接続する代わりに他の針管12に負電極を接続してもよい。
【0053】
その後、図4(c)に示すように、針体12を針管11の内部に戻し、針体12の先端面12aを発熱体14に接触させて通電すると、発熱体14は電気抵抗により定温発熱する。この発熱により、癌腫瘍部分17の体内汚染物質は殺菌消毒され、壊死する。
【0054】
また、図4(d)に示すように、体表面16に負電極を接続すると共に針体12に正電極を接続すれば、生体体液の電気分解が始まり、生体体液に含まれる塩水から塩素18が発生する。この塩素18により、体内汚染微粒物質は殺菌消毒され、壊死する。
【0055】
その後、図4(e)に示すように、針管11から針体12を抜き取り、針管11の内部に薬液19を注入し、体内汚染微粒物質用血管を殺菌消毒する。
【0056】
このように上記した第2の実施の形態に係る医療器具20によれば、患者の体内において針体12の先端部を針管11の外部に突出させることができるため、広範囲に亘って塩素18を発生させ、体内汚染微粒物質の殺菌消毒効果をさらに高めることができる。
【0057】
図5は本発明の第2の実施の形態に係る医療器具20を使用して体内の検査、切開等の必要処置を行う方法を示す断面図であり、この場合には、先ず、患者の体表面16若しくは針管11の基端部に負電極23を取り付け、患者の体表面16から針管11を体内に挿入し、検査、切開等の必要処置を行う。
【0058】
次いで、図5に示すように、針管11に正電極を接続し、体表面に負電極23を接続し、通電させると、針管11の外表面において生体体液の電気分解が始まり、生体体液に含まれる塩水から塩素18が発生し、この塩素18により、体内汚染微粒物質は殺菌消毒され、壊死する。その後、針管11を体内から抜き取る。
【0059】
次に、図6(a)〜(c)を参照しつつ、本発明の第3の実施の形態に係る医療器具の構成について説明する。
【0060】
図6(a)〜(c)はいずれも本発明の第3の実施の形態に係る医療器具を示す断面図であり、本実施の形態に係る医療器具30は、電導性の細い円筒状部材により形成された針管31と、電導性の細い針状部材により形成された針体32とを備えており、針体32は基端側から針管31の内部に挿入可能となっている。
【0061】
針管31は、先端が斜めに切断された尖形形状を成し、先端面は開口されており、基端部には正電極と負電極のいずれか一方の電極が接続されるようになっている。
【0062】
針体32には、針管31の内面に接触する外周面に絶縁部33が形成されており、基端部に針管31と反対の電極が接続されるようになっている。針体32の先端には、所定の発熱抵抗を有する金属製の発熱体34が溶着されており、発熱体34の先端面は針管31の先端形状に合致する尖形形状を成している。
【0063】
次に、図7(a)〜(g)を参照しつつ、上記した医療器具10の使用方法について癌治療を行う場合を例にとって説明する。ここで、図7(a)〜(g)はいずれも本実施の形態に係る医療器具の使用方法を示す断面図である。
【0064】
先ず、図7(a)に示すように、患者の体表面16若しくは針管31の基端部に負電極を取り付け、患者の体表面16から癌腫瘍部分17まで針管31を体内に挿入し、針管31の内部に麻酔液9を注入する。
【0065】
次いで、図7(b)に示すように、基端側から針管31の内部に針体32を挿入し、針体32の基端部に正電極を取り付けた後、図7(c)に示すように、針管31の先端から針体32の先端部を針管31の外部の癌腫瘍部分17に突出させ、通電すると、針体32の先端部の近傍において生体体液の電気分解が始まり、生体体液に含まれる塩水から塩素18が発生する。この塩素18により、体内汚染微粒物質は殺菌消毒され、壊死する。
【0066】
また、この時、図7(d)に示すように、針管31の基端部に正電極を接続し、体表面16に負電極を接続し、通電すると、針管31の外表面において体液の電気分解が始まり、体液から塩素18が発生する。この塩素18により、体内汚染微粒物質は殺菌消毒され、壊死する。なお、この時、患者の複数の箇所に針管12が挿入されている場合には、体表面16に負電極を接続する代わりに他の針管12に負電極を接続してもよい。
【0067】
次いで、図7(e)に示すように、針体32を針管31の内部に戻し、針体32の先端の発熱体34と針管31の先端部とを接触させて通電すると、発熱体34は電気抵抗により定温発熱する。この発熱により、癌腫瘍部分17の体内汚染物質は殺菌消毒され、壊死する。
【0068】
また、図7(f)に示すように、通電状態のまま、針管31の内部において針体32を引き抜く方向に移動させると、この移動に伴って発熱箇所8も移動し、この発熱により、癌腫瘍部分17の体内汚染物質は順次、殺菌消毒され、壊死する。
【0069】
その後、図7(g)に示すように、針管31から針体32を抜き取り、針管31の内部に無水エタノールの薬液19を注入し、体内汚染微粒物質用血管を殺菌消毒する。
【0070】
また、図7(g)において針管32及び針体32より発生させた塩素18を硫酸ナトリウム等によって中和も可能となる。
【0071】
なお、上記した第3の実施の形態では、針体32の先端にのみ発熱体34を取り付けているが、これは単なる例示に過ぎず、例えば、図8に示すように針体32の先端に加えて針管31の先端にも発熱体34を取り付けたり、或いは、図9に示すように針体32の先端の代わりに針管31の先端にのみ発熱体34を取り付けたりする等、発熱体34は針管32の先端と針体32の先端の少なくともいずれか一方に取り付けられていればよい。
【0072】
また、図10に示すように、針管31及び針体32は電導柔軟性を有するカーボン繊維等の可撓性材料により形成されていてもよく、さらに、針管31内の偏心した位置に針管31の長手方向に沿って芯線(図示省略)を埋め込み、該芯線の基端部を針管31の基端から突出させてもよい。この場合、芯材の基端部を基端方向に引っ張ることにより、針管31の先端部を任意の角度に屈曲させることができる。
【0073】
またさらに、針管31の先端部を屈曲させてフック(図示省略)を設け、該フックより硬質の直材の針体32を針管31の先端部分まで挿入させることにより、針管31のフックを真っ直ぐに延ばすこともできる。
【0074】
そしてこのような構成を採用することにより、本発明の医療器具を使用して固定臓器以外の治療を行うことも可能となり、癌の発生部位に拘らず治療を行うことができるようになる。
【0075】
さらに、通電状態において針体32を移動させることにより、針管31内の発熱体34の位置において発熱が可能となる。
【0076】
またさらに、上記した第1〜第3の各実施の形態において、針管11,31や針体12,32に温度センサを取り付け、発熱体14,34の発熱温度を制御できるようにしてもよい。
【0077】
上記した本発明に係る医療器具によれば、腫瘍を直接加熱することにより、正常細胞を消滅・損傷させることなく腫瘍のみを消滅させることができるため、患者の体に対する影響を最小限に抑えることができ、薬害等後遺症や放射線や電磁波による正常細胞の損傷後遺症の発生を防止することができる。
【0078】
さらに、針管又は体表面に負電極(又は正電極)を接続し、針体に正電極(又は負電極)を接続して通電することにより生体体液に含まれる塩水から塩素を発生させ、治療箇所の殺菌消毒を行うことができるため、殺菌腫瘍に接触することによる腫瘍転移、転移を抑えるための細胞の焼灼破裂、及び体内からの針管引抜時の腫瘍攪拌の発生を確実に防止することができる。
【0079】
さらにまた、本発明に係る医療器具は外形が細い針状に形成されているため、1人の患者に対して同時に複数箇所の処置を行うことができ、治療の効果を高めることができる。
【0080】
さらにまた、高度で高額の施設や設備を必要とせず、簡便に誰でも治療することができるため、治療費の低減化を図ることもできる。
【符号の説明】
【0081】
10 医療器具
11 針管
12 針体
13 薬液注入孔
14 発熱体
15 絶縁部
20 医療器具
21 薬液注入孔
30 医療器具
31 針管
32 針体
33 絶縁部
34 発熱体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正電極と負電極のいずれか一方の電極に接続される電導性筒状部材により形成され、先端側面に薬液注入孔を有する針管と、
基端側から該針管の内部に挿入可能に設けられ、該針管と反対の電極に接続される電導性針状部材により形成され、前記針管の内面に接触する外周面に絶縁部が形成された針体と、
前記針管の先端側開口を閉塞可能且つ前記針体の先端に接触可能に設けられた所定の発熱抵抗を有する発熱体と、
を備え、前記針体を基端側から前記針管の内部に挿入し、前記針体の先端を前記発熱体に接触させると、該発熱体を介して前記針体と前記針管とが通電するように構成されていることを特徴とする医療器具。
【請求項2】
前記薬液注入孔は前記針体の先端部が前記針管から出入り可能なように形成されている請求項1に記載の医療器具。
【請求項3】
正電極と負電極のいずれか一方の電極に接続される電導性筒状部材により形成された針管と、
基端側から該針管の内部に挿入可能に設けられ、該針管と反対の電極に接続される電導性針状部材により形成され、前記針管の内面に接触する外周面に絶縁部が形成された針体と、
前記針管の先端と前記針体の先端の少なくともいずれか一方に設けられた所定の発熱抵抗を有する発熱体と、
を備え、前記針体を基端側から前記針管の内部に挿入すると、前記針体と前記針管とが前記発熱体を介して接触し、通電するように構成されていることを特徴とする医療器具。
【請求項4】
前記針管及び前記針体が可撓性材料により形成されている請求項1〜3のいずれか1の請求項に記載の医療器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−269053(P2010−269053A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124981(P2009−124981)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(506268979)
【Fターム(参考)】