説明

医療用レーザ装置のハンドピース

【課題】レーザ光を患部に正確に照射することが可能であると共に、患部におけるレーザ光のスポット径を最適な大きさにすることができるハンドピースを提供する。
【解決手段】レーザ光を集光して出射するレーザ出射手段と、患部の近傍を撮影するための撮影手段を備えるとともに、レーザ出射手段のレーザ光の焦点位置と撮影手段の最適撮影位置との、レーザ出射方向における相対的距離を調節するための調節手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を照射することにより生体組織の切開、止血、凝固等の治療及び手術を行う医療用レーザ装置に関し、特に、導光されたレーザ光を集光して出射するハンドピースに関する。
【背景技術】
【0002】
医療用レーザ装置は、レーザ光を発生するレーザ発生装置と、マニピュレータ等の導光路と、導光したレーザ光を収束して患部に照射するハンドピース等により構成されている。ハンドピースは内部に集光レンズを備え、集光レンズの焦点近傍に患部を位置することによって治療や手術を行うものである。
【0003】
医療用レーザ装置を用いる治療の一つとして、中耳炎の治療が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
すなわち、中耳の炎症により膿がたまった場合には、鼓膜を切開して膿を外部に排出する治療が行われるが、鼓膜の切開において医療用レーザ装置を用いると、丸い孔を穿孔することができる。
【0004】
このような治療では、術者はレーザ光を患部に正確に照射し、また患部において、レーザ光のスポット径が適当な大きさとなるように、ハンドピースを操作しなければならない。しかし、耳の奥にある鼓膜を観察しながらハンドピースを操作することは非常に難しく、熟練を要するものである。このため、医療用レーザ装置を用いる治療は、熟練した術者でなければ正確な処置ができないという問題がある。
【0005】
また、処置面に対してレーザ光を2次元的に走査することができ、したがって必要な大きさに切開することができる走査ミラーを備えたハンドピースも提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、このようなハンドピースは構造が複雑となり、ミラーを動作させる制御機構なども必要となるので、非常に高価なものである。
【特許文献1】特表2002−507135号公報
【特許文献2】特表平11−514246号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、中耳炎の治療を行うような場合でも、レーザ光を患部に正確に照射することが可能であり、また、患部におけるレーザ光のスポット径を最適な大きさとすることができるハンドピースを提供することにある。そして、術者が熟練を要することなく使用できるハンドピースを提供することにある。さらに、構造が簡単で安価なハンドピースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1に係るハンドピースは、患部にレーザ光を照射する医療用レーザ装置のハンドピースであって、レーザ発生装置から導光されたレーザ光を集光して出射するレーザ出射手段と患部近傍を撮影する撮影手段とを具備し、かつ、前記レーザ出射手段のレーザ光の焦点位置と前記撮影手段の最適撮影位置との、レーザ出射方向における相対的距離を調節するための調節手段を備えているという手段を採用している。
【0008】
また、本発明の請求項2に係るハンドピースは、請求項1に記載のハンドピースにおいて、前記調節手段が、これを調節することにより、前記最適撮影位置に照射されるレーザ光のスポット径を設定することができるという手段を採用している。
【0009】
さらに、本発明の請求項3に係るハンドピースは、請求項1又は2に記載のハンドピースにおいて、前記調節手段が、レーザ出射手段のレーザ光の焦点位置を可変として調節するという手段を採用している。
【0010】
そして、本発明の請求項4に係るハンドピースは、請求項1乃至3の何れかに記載のハンドピースにおいて、前記調節手段が、前記レーザ出射手段のレーザ光の焦点位置と前記撮影手段の最適撮影位置とを一致させることができるという手段を採用している。
【0011】
また、本発明の請求項5に係るハンドピースは、請求項1乃至4の何れかに記載のハンドピースにおいて、前記調節手段が、段階的な調節を行うことができるという手段を採用している。
【発明の効果】
【0012】
本発明のハンドピースは、患部の近傍を撮影するための撮影手段を備えると共に、レーザ出射手段のレーザ光の焦点位置と撮影手段の最適撮影位置との、レーザ出射方向における相対的距離を調節するための調節手段を備えている。撮影手段により患部をモニターで見ることが可能であり、レーザ光を患部に正確に照射することができる。
【0013】
また、モニターにおける患部の画像が鮮明であるときは、患部の位置がハンドピースに対して最適撮影位置にあることを意味し、レーザ光の焦点位置と患部との、レーザ出射方向における相対的距離を調節することによって、患部に照射されるレーザ光のスポット径を設定することができる。したがって、術者は最適なスポット径で、レーザ光を患部に正確に照射することが容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態について、その一例を図に基づいて説明する。
図1に示すように、本発明のハンドピース1は、主として撮影手段を構成する筒状の本体部材2と、これに直交し、主としてレーザ出射手段を構成する筒状の副本体部材3により構成されている。
【0015】
本体部材2は、照射管21、LED照明22、ダイクロックミラー23、レンズ24、絞り25、レンズ26及びCCDカメラ27等により構成されている。そして、照射管21の内部を通して、これよりも前方にある患部を撮影することができる撮影手段を構成している。ここにおいて、LED照明22やCCDカメラ27等は本発明を限定するものではなく、撮影手段を構成することができればどのような手段でも良いものである。
【0016】
CCDカメラ27で撮影された画像は、適宜モニターMで見ることができることを前提としている。そして、照射管21の軸線上において、被写体が最も鮮明に撮影される位置(すなわち、撮影手段のピントが合った位置)を撮影手段の最適撮影位置と称することにする。最適撮影位置は、照射管21の先端より少し前方に位置することが好ましい。また、本図において最適撮影位置は固定されているが、調節可能に移動できるものであっても良い。
【0017】
副本体部材3は、その一端が導光路を形成するマニピュレータや光ファイバ(図示せず)に接続され、その他端が本体部材2の側部に接続されるようになっている。CO2レーザやHo:YAGレーザ等の発振器からなるレーザ発生装置Lから導光されて一端側から入射したレーザ光は、内部のレンズ31によって集光されて本体部材2へと導光され、本体部材2のダイクロックミラー23で反射された後、照射管21の先端から出射される。このように構成されたレーザ出射手段により、照射管21の前方にある患部にレーザ光を照射して治療や手術を行うことができる。なお、治療や手術を行うレーザ光と同軸にHe−Neレーザ等のガイド光を出射して、事前に照射状態を確認できるよう構成している。
【0018】
本発明のハンドピース1は、上記のような撮影手段とレーザ出射手段とを具備すると共に、レーザ出射手段のレーザ光の焦点位置と前述の最適撮影位置との、レーザ出射方向における相対的距離を調節できる特徴を備えている。例えば、図において副本体部材3は、レンズ31を軸線方向に移動するヘリコイド機構を備えており、これによってその焦点位置を出射方向の前後に調節することができる。
【0019】
すなわち、副本体部材3の外周部に設けられたダイヤル32を回転すると、連結ピン33を介して連結された筒状のヘリコイド34が回転し、ヘリコイド34の内面とレンズ保持筒35の外面との螺合により、レンズ31が軸線上を移動することができる。レンズ31が軸線上を移動することにより出射されるレーザ光の焦点距離が変化され、レーザ光の焦点位置をレーザ出射方向の前後に調整することが可能となる。
なお、レンズ保持筒35は、回り止め36によって回転しないようになっている。
【0020】
レーザ出射手段の焦点位置と撮影手段の最適撮影位置との、レーザ出射方向における相対的距離を調節する調節手段は、上記のようにレーザ出射手段のレーザ光の焦点位置を可変とすることにより達成することができるが、その他、最適撮影位置を可変とすることにより達成することもできる。
【0021】
このような調節手段により、患部に照射するレーザ光のスポット径を設定することができるので、これについて詳述する。
従来は、レーザ光の焦点を患部に位置させた後、ハンドピースを患部に接近・離隔させることで焦点をデフォーカスさせ、スポット径を拡大させていた。
これに対して本発明のハンドピースは撮影手段を備えているので、治療する患部を撮影してモニターに表示することができる。そして、患部に対してハンドピースの位置を前後することにより、画像が最も鮮明になる最適撮影位置となるように調節することができる。すなわち、この時の患部とハンドピースとの間隔を基準としてレーザ光のスポット径を設定しておくことで、常に、患部がこの最適撮影位置にある状態では、患部に所定スポット径のレーザ光を照射することができる。
【0022】
そして、最適撮影位置に患部を位置させた状態から、調節手段を用いてレーザ光の焦点位置と最適撮影位置との相対的距離を調節することで、照射対象となる患部に対する焦点位置を調節することが可能になる。
一方、レーザ光のスポット径が、焦点位置から照射対象までの距離に比例した大きさとなることは明らかである。この結果、患部に照射するスポット径を調節することができる。
【0023】
ここで、調節手段は患部が最適撮影位置にある状態で、必要なスポット径が得られるように調節範囲を設定して目盛を設けており、本実施例では焦点位置と最適撮影位置とが一致する状態を含んで調節範囲を設定している。
焦点位置と最適撮影位置とが一致する点では、スポット径が極めて小さい点となる。そして調節手段が、調節範囲にこの点を含む場合には、目盛の上でも比例関係が成り立つので都合がよい。
例えば、ダイヤル32の回転において、焦点位置が最適撮影位置と完全に一致するスポット径が最小となる状態を「目盛0」とし、スポット径が2mmとなる位置を「目盛2」とすれば、二つの目盛間には0〜2の連続的な比例関係が成り立つので、細かい目盛を省略することができる。
【0024】
また、ダイヤル32の回転において、段階的な調節を行うことが便利な場合もある。例えば、焦点位置が最適撮影位置と完全に一致する位置を「目盛0」、そこから少し離れた位置を「目盛1」、さらに離れた位置を「目盛2」などとしておけば、「目盛0」においてスポット径は極めて小さな点となり、「目盛1」では少し大きな点、「目盛2」ではさらに大きな点とすることができる。
【0025】
そして、切開などを行う治療には「目盛0」に設定されたスポット径を用い、鼓膜に穿孔するような場合には「目盛1」又は「目盛2」に設定されたスポット径を用いるなどとすることができる。このように、用途を限定してスポット径を限定することも、確実な治療を行う上で好ましいことである。
【0026】
調節手段が最適撮影位置を可変とするよう構成した場合は、一旦患部を最適撮影位置に位置させてから、CCDカメラ27の焦点位置を所定量移動させて最適撮影位置を変化させ(ピントを外す)、再度ハンドピースを患部に接近・離隔させて患部を最適撮影位置に位置させるようにする。これにより、CCDカメラ27の焦点位置の移動量に応じてレーザ光のスポット径が変化される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のハンドピースの一例を示す全体断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 ハンドピース
2 本体部材
21 照射管
22 LED照明
23 ダイクロックミラー
24、26 レンズ
25 絞り
27 CCDカメラ
3 副本体部材
31 レンズ
32 ダイヤル
33 連結ピン
34 ヘリコイド
35 レンズ保持筒
36 回り止め
L レーザ発生装置
M モニター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患部にレーザ光を照射する医療用レーザ装置のハンドピースであって、レーザ発生装置から導光されたレーザ光を集光して出射するレーザ出射手段と患部近傍を撮影する撮影手段とを具備し、かつ、前記レーザ出射手段のレーザ光の焦点位置と前記撮影手段の最適撮影位置との、レーザ出射方向における相対的距離を調節するための調節手段を備えていることを特徴とするハンドピース。
【請求項2】
前記調節手段が、これを調節することにより、前記最適撮影位置に照射されるレーザ光のスポット径を設定することができることを特徴とする請求項1に記載のハンドピース。
【請求項3】
前記調節手段が、レーザ出射手段のレーザ光の焦点位置を可変として調節することを特徴とする請求項1又は2に記載のハンドピース。
【請求項4】
前記調節手段が、前記レーザ出射手段のレーザ光の焦点位置と前記撮影手段の最適撮影位置とを一致させることができることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のハンドピース。
【請求項5】
前記調節手段が、段階的な調節を行うことができることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のハンドピース。

【図1】
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【公開番号】特開2006−198161(P2006−198161A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−12926(P2005−12926)
【出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(592057330)株式会社ニーク (3)
【Fターム(参考)】