説明

医薬として有用な可溶性gp130分子変異体

2つのモノマー断片のポリペプチド二量体であって、モノマー断片は、グリコプロテイン(gp)130の細胞外部位と、5から30のアミノ酸長を有するC末端でのポリペプチドスペーサとから構成され、2つのモノマー断片は、互いに共有結合し、スペーサ長は、得られる二量体プロテインのIL−6/可溶IL−6レセプター複合体への最適結合を決定し、ポリペプチド二量体は、相同凝集体及び分子断片への著しく低減した結合能を示し、宿主細胞における著しく高い生成率が得られる2つのモノマー断片のポリペプチド二量体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
グリコプロテイン(gp)130の細胞外(可溶性)部分のドメイン1〜3と、特定のポリペプチドスペーサを含む2つの同一のモノマー断片から構成されるポリペプチド二量体が記載され、それは、互いに共有結合されており、宿主細胞中のそれらの生成率、それらの改善された精製及びそれらのIL−6/可溶性IL−6レセプター複合体に結合する能力に関して、顕著な利点を有する。また、その二量体分子を含む医薬組成物及び種々の医療用途が記載されている。
【背景技術】
【0002】
多形質発現サイトカインインターロイキン−6(IL−6)は、主として、B及びT細胞の刺激、後天性及び先天性の免疫プロセスの制御及び肝臓の急性期タンパク質合成の誘導が顕著である、広範な生物学的機能を示す。IL−6は、結合によって細胞反応を誘発するgp130の二量体化を誘導する膜結合又は可溶性IL−6レセプター(「IL−6R」または「gp80」)によってその活性を示す。
【0003】
IL−6Rの細胞質ドメインはキナーゼ活性を欠いているため、gp130ホモ二量体によるシグナリングは、膜結合又は可溶性IL−6Rとの複合体におけるIL−6によって誘導することができる。gp130は、ほとんどすべての細胞タイプで見出すことができるが、IL−6R発現は、肝細胞及び白血球に制限される。しかし、これらの細胞は、タンパク質分解的切断又は選択的スプライシングのいずれかによるIL−6R発現細胞から放出されるsIL−6R経由IL−6によって活性化することができる。このメカニズムは、トランスシグナリングと呼ばれている。実際、いくつかの細胞の活性が、IL−6単独で誘導されず、sIL−6RとIL−6との複合体に依存することが示されている。
トランスシグナリングは、先天性免疫反応から後天性免疫反応へのスイッチで重要な役割を果たし、好中球浸潤のクリアランスならびに継続した免疫学的応答に対するT細胞とB細胞との漸増及び活性化のために重要である。このメカニズムの調節不全は、クローン病、慢性関節リウマチ、喘息等の慢性及び/又はアレルギー性炎症性疾患の発現及び持続をもたらす。
【0004】
これらの疾患の治療に関して、IL−6によって媒介されるプロセスの特定の遮断が治療的に有効であることが示された。残念なことに、この目的のために現在利用できるすべての化合物は、これまでのところ、いくぶん重篤な副作用(例えば、二次感染、結核、敗血症)、毒性又は免疫原性の問題を有する。また、未解決の問題は、有用で経済的な精製方法の開発中に認められている。
【発明の開示】
【0005】
技術的問題の解決は、クレームにおいて特徴付けられた実施形態の提供によって達成される。本発明を導く実験の間に、gp130の全細胞外部分の2つの分子からなる親化合物sgp130Fcの精製が十分でないことが見出された。この融合タンパク質は、真核性CHO細胞で発現された場合、望まない副生成物(例えば、より小さな断片、オリゴマー及び多様な組合せにおける凝集)を構築する傾向がある。その不純物及び核となる生成物は非常に類似した化学的及び物理的特性を有するため、適当な量で、これらの不純物から目的化合物を分離する適当な精製方法を見出すことは不可能であった。特に、試験方法は、異なる親和性、サイズ除外及びイオン交換クロマトグラフィ(イオン添加又はpHシフト等によるタンパク質の可溶性を変えるためにアプローチした)であった。これらの方法のいずれも、満足な結果を与えなかったか、GMPに対応した精製プロセスを開発するためのグレードアップに適していなかった。それに対して、親分子sgp130Fcのより短い変異体(sgp130(D1−3)Fcと呼ぶ、細胞外ドメイン4〜6を欠損)が精製副生成物から良好に分離されたことが見出された。これは、親sgp130Fc分子のフィブロネクチンIII領域(ドメイン4〜6)内のエレメントを形成する凝集が良好に消失したことを示した。さらに、この分子は、著しく高率で、真核細胞によって発現された。
【0006】
次の工程で、新しい分子sgp130(D1−3)FcのIL−6/sIL−6Rへの結合効率を、sgp130(D1−3)及びIgG−Fc部位間での種々の長さのポリペプチドスペーサを融合させることによって最適化した。結果として生じた分子の結合技術を、特異的酵素結合抗体免疫測定法(ELISA)で測定し、親分子sgp130Fcと比較した(図5)。
【0007】
IL−6/sIL−6R複合体の結合は、クローン病患者の単球におけるIL−6の反アポトーシス作用を阻害することが示されており、そのような化合物がクローン病及び大腸炎、慢性関節リウマチ、乾癬、腹膜炎等のような関連疾患の治療に有用であることを示す。
【0008】
クローン病は、急性炎症の頻繁に起こる再発によって特徴づけられる全ての消化管の慢性炎症性障害である。感染、けが及び他の要因と関連した炎症は、急性期タンパク質(APPs)の発現を伴う急性期反応(APR)を迅速に誘発する。APRは、主に脈管透過性の増加及び発熱をもたらす。IL−6族類は、STAT3によって媒介されるタイプIIAPP遺伝子の発現を亢進する。STAT3(つまり、チロシンリン酸化)の強力な活性は、炎症性腸疾患(IBD)患者からの結腸組織で示されている。さらに、STAT3活性化の減少が、実験的なネズミ大腸炎の減少した発現を関連するIL−6-1-マウスで観察された(Suzukiら、J. Exp. Med., 2001, 193:471)。
これらの実験は、IL−6/sIL−6Rによって媒介されるSTAT3の活性が、大腸炎の発現及び永続化で重要な役割を果たすことを示した。もう一つの炎症性モデルでは、リウマチ様関節炎(RA)において、STAT3がRA滑液線維芽細胞の残存にとって重要であることが示された(Krauseら、J. Immunol, 2002, 169:6610)。従って、STAT3は、遺伝子治療の良好なターゲットとなるかもしれないことが示唆された。本質的なSTAT3活性は、「発癌性」要因であり、反アポトーシスタンパク質(例えば、Bcl−2及びBcI−XL)のアップグレード化を伴うことが知られている(Turksonら、Oncogene, 2000, 19:6613)。
【0009】
IL−6/sIL−6Rによって媒介されるSTAT3活性化が親sgp130Fc化合物に匹敵する有効性レベルでsgp130(D1−3)Fcによって著しく減少させられることが見出された。さらに、sgp130(D1−3)Fc(sgp130Var)は、真核細胞中でsgp130Fcより高い量で発現され、望まれていない副生成物を生成せず、標準的なカラムクロマトグラフィーによって残留する不純物から分離することができた。これらの利点は、適当なGMP生成方法の開発を顕著に強化し、製品コストを低減させる。
【0010】
従って、本発明は、2つのモノマー断片のポリペプチド二量体に関し、モノマー断片は、グリコプロテイン(gp)130の細胞外部分のドメイン1〜3(D1からD3)及びそれらのC末端で、5〜30の長さのアミノ酸を有するポリペプチドスペーサを含み、両モノマー断片は、互いに共有結合しており、スペーサ長は、IL−6/可溶性IL−6レセプター複合体への、結果として生じる二量体タンパク質の最適結合を決定し、ポリペプチド二量体は、相同凝集体及び分子断片を構成する能力の顕著な減少を示し、宿主細胞において顕著に高い生産性が得られる。
【0011】
本発明のポリペプチド二量体は、既知の方法を使用して設計することができる。ここで用いられる用語「可溶性」(省略形「s」)は、少なくとも細胞内ドメイン及び膜内外ドメインが欠損したgp130分子を指す。利用されるドメインは、gp130の細胞外ドメインD1からD3からなるか、あるいは、それらは、作動性複合体IL−6/sIL−6Rの活性の阻害能を維持するそれらの変異体又は断片からなっていてもよい。好ましくは、gp130の可溶性部分に対応するポリペプチドは、本発明のポリペプチド二量体の唯一の生物学的に活性なポリペプチドである。
【0012】
好ましい実施形態において、本発明のポリペプチド二量体の2つのモノマー断片は、同一である。
本発明のポリペプチド二量体のさらに好ましい実施形態において、二量体はsgp130のさらなるドメイン(D4からD6)を含まない。
【0013】
二量体を構成する2つのモノマーの結合は、公知の方法を用いて、当業者によって実行することができる。二量体を形成するために、2つの可溶性gp130分子は、1以上のジスルフィド架橋によって互いに結合させることができる。これは、例えば、組換発現によって行うことができ、sgp130をコードする核酸配列が、そのC末端で、sgp130のC末端と停止コドンとの間のシステイン残基をコードする1以上のコドンを含むポリペプチドリンカーに融合する。あるいは、二量体を生成するために、2つのsgp130分子の間の分子間結合(例えば、共有結合、イオン結合)のいずれかを与える各sgp130分子の末端へのリンカーを用いることができる。
【0014】
このリンカーは、完全に人工的であってっもよい(例えば、特定の間隔でセリン、アラニン及び/又はトレオニンによって中断されるかもしれないポリグリシンの反復)。あるいは、二量体を生成するために、2つの可溶性gp130分子が、ヒンジ領域(直接又はリンカーを介して)を含むIgG−Fc断片に、C末端で融合されていてもよい。さらに、Fc分子のヒンジ領域内の遊離システイン残基は、望まない分子間ジスルフィド架橋を構成する危険を減らすために、変異体によって欠損されていてもよい。また、二量体の分子は、例えば、His-His-His-His-His-His(His6)、Myc、連鎖球菌(Strep)、ポリアルギニン、フラグ(Flag)、緑蛍光タンパク質(GFP)、TAP、グルタチオンS−転移酵素(GST)、HA、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、マルトース結合タンパク質(MBP)、V5、HSV、S、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、プロテインC、ルシフェラーゼ、GIu-GIu、E、β−GAL、T7あるいは、抗体又は他の結合分子が、適当なクロマトグラフィーシステム及び/又は検出、例えば、ウェスタンブロット、ELISA、生物検定等によって精製を可能にして利用することができるような他のエピトープによって標識されていてもよい。
【0015】
IL−6/sIL−6R複合体への最適な結合を得るために必要である二量体分子内で、2つのsgp130サブユニット間の最適距離を与えるために、sgp130サブユニットは、5〜30のアミノ酸長、好ましくは(i)10〜25、(ii)15〜25、特に好ましくは10〜15のアミノ酸長を有する(ポリ)ペプチドスペーサに、それらのC末端で融合されている。スペーサを構成するアミノ酸の種類は特に重要でないが、(a)モノマーの最適なアライメントが可能な理想的な立体柔軟性を確実にし、(b)プロテアーゼ及び抗体によって容易に影響を受けず、(c)他の分子と二量体とのいかなる望まれない凝集又は三量体等の形成を減少させるために帯電されていない、アミノ酸(G又はSのように)が好ましい。スペーサ分子を構成するための好ましいアミノ酸は、アミノ酸配列「GGGGS」の1以上の反復であるが、スペーサは、sgp130分子の結合するリガンドを強化する他のいかなる配列をも有することができる。
【0016】
本発明のポリペプチド二量体の特に好ましい実施形態では、スペーサは、タンパク質分解的切断から分子を保護するために、選択的にグリコシル化される。
【0017】
特に好ましい実施形態では、本発明のポリペプチド二量体は、50%未満の相同凝集体及び分子断片を、好ましくは25%未満の相同凝集体及び分子断片を、より好ましくは10%未満の相同凝集体及び分子断片を、最も好ましくは5%未満の相同凝集体及び分子断片を形成する。
【0018】
また、本発明は、本発明のポリペプチド二量体(又はそれぞれのモノマー)をコードするポリヌクレオチドを提供し、それは真核宿主細胞、バクテリア、酵母又は昆虫細胞においてコードされたタンパク質の効率的な生成のために最適化されたコドンであってもよい。好ましくは、そのポリヌクレオチドは、図7に示される核酸配列を含む。
【0019】
さらに、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクター及び対応宿主細胞に関する。
【0020】
種々の手段を、望む特性を有するsgp130の変異体又は修飾を発現させる及び確認するために用いることができる。sgp130をコードするDNAの標準技術による部位特異的突然変異誘発法又は制限消化及びリゲーション等の最高水準の方法を用いることができ、続いて、望む特性を有する変異分子を同定するために生成物のコレクションを分析する。
【0021】
本発明のポリペプチド二量体は、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド及びベクター、好ましくはポリヌクレオチドを含む発現ベクターの使用によって、好ましくはリコンビナント的に生成される。本発明のポリペプチドの生成のために、ポリヌクレオチドは、既存のクローン、つまり、好ましくは天然に存在するポリペプチド又はその一部をコードする既存のクローンから得られる。ポリペプチドは、ポリペプチドが本来の配列の生物学的活性を維持し、本発明のポリペプチドを生成するために有用である限り、非常にストリンジェント又は中等度にストリンジェントな状況下で、天然のDNA又はRNAの相補体にハイブリダイズするいかなるポリヌクレオチドによってもコードされる(定義に関して、Sambrook、Molecular Cloning A Laboratory Manual、Cold Spring Habor Laboratory(1989)N. Y参照)。
【0022】
組換えベクターは、当業者によく知られた方法(例えば、Sambrook、Molecular Cloning A Laboratory Manual、Cold Spring Habor Laboratory(1989)N. Y)に従って構築することができる。種々の発現ベクター/宿主システムが、本発明のsgp130ポリペプチドをコードする配列を含み及び発現させるために利用することができる。限定されないが、これらは、微生物(例えば、組換バクテリオファージで形質変換したバクテリア、プラスミド又はコスミドDNA発現ベクター);イースト発現ベクターで形質変換したイースト;ウイルス発現ベクターで感染した昆虫細胞システム(例えば、バキュロウイルス);ウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV、タバコモザイクウイルス、TMV)又はバクテリア発現ベクター(例えば、Ii又はpBR322)で形質変換された植物細胞システム;又は動物細胞システムを含む。
【0023】
「制御要素」又は「調節塩基配列」は、ベクター−エンハンサーの未翻訳領域、プロモーター、転写及び翻訳を行うために宿主細胞タンパク質と相互作用する5’及び3’−未翻訳領域である。そのような要素は、それらの強度及び特異性において異なるかもしれない。利用されるベクターシステム及びホストによって、多くの適当な転写及び翻訳要素(構造性及び誘導可能なプロモーターを含む)を、用いることができる。例えば、バクテリアシステムにおいてクローニングする場合、Bluescript. RTM. Phagemid (Stratagene, LaJoIIa, CA)又はpSPORT1.TMプラスミド(ギブコ、BRL)等のハイブリッドlacZプロモーターのような誘導可能プロモーターが挙げられる。バキュロウイルスポリヘドリン(polyhedrin)プロモーターを、昆虫細胞において用いることができる。植物細胞のゲノムに由来する(例えば、熱ショック、RUBISCO及び貯蔵タンパク質遺伝子)又は植物ウィルスに由来する(例えば、ウィルスプロモーター又はリーダー配列)プロモーター又はエンハンサーは、ベクターにクローン化することができる。哺乳類の細胞システムで、哺乳類の遺伝子又は哺乳類のウィルスからのプロモーターが好ましい。sgp130ポリペプチドをコードする配列の複数のコピーを含む細胞系を生成するために必要であれば、SV40又はEBVに基づくベクターを適当な選択可能マーカーとともに用いることができる。
【0024】
バクテリアのシステムでは、いくつかの発現ベクターを、本発明のポリペプチド二量体を目的とする使用によって、選択することができる。本発明における使用のために適するベクターとしては、特に限定されないが、バクテリアの発現のためのpSKK発現ベクターが挙げられる。
【0025】
イースト、サッカロマイセス・セレヴィシエでは、アルファ因子のような構造性又は誘導可能なプロモーターを含むいくつかのベクター、アルコールオキシダーゼ及びPGHを用いることができる。検討のために、Grantら、(1987) Methods Enzymol. 153 :516-544参照。
【0026】
植物発現ベクターが用いられる場合、本発明の抗体をコードする配列の発現が、いくつかのプロモーターのいずれにおいても促進されるかもしれない。例えば、CaMVの35S及び19Sプロモーターのようなウィルスプロモーターを、単独又はTMVからのオメガリーダー配列との組み合わせにおいて用いることができる(Takamatsu, N (1987) EMBO J. [pound]: 307-311)。あるいは、RUBISCOの小さなサブユニットのような植物プロモーター又は熱ショックプロモーターを用いることができる((Coruzzi, G.ら、(1984) EMBO J. 3:1671-1680、Broglie, R.ら、(1984) Science 224 :838-843及びWinter, J.ら、(1991) Results Probl. Cell Differ. 17:85-105)。構造体は、直接のDNA形質変換又は病原によって媒介されるトランスフェクションによって植物細胞に導入することができる。そのような技術は、多くの一般に利用できる文献に記載されている(例えば、Hobbs, S.及びMurry, L. E. in McGraw Hill Yearbook of Science and Technology (1992) McGraw Hill, New York, NY; pp. 191-196参照)。
【0027】
昆虫システムを本発明のspg130分子を発現させるために用いてもよい。例えば、そのようなシステムの1つとして、オートグラフカリフォルニア核多角体病(AcNPV)が、Spodoptera Frugiperda細胞において又はTrichoplusia larvaeにおいて、外来遺伝子を発現させるためにベクターとして用いられる。配列はポリヘドリン遺伝子のようなウィルスの非必須領域にクローニングすることができ、ポリヘドリンプロモーターの制御下で配置することができる。spg130をコードする遺伝子の良好な導入は、ポリヘドリン遺伝子を不活性化させ、コートタンパク質を欠いた組換ウィルスを生成するであろう。よって、組換ウィルス、例えば、APOPを発現させることができるS. frugiperda細胞又はTrichoplusia larvaeを、感染させるために用いることができる (Engelhard, E. K.ら、(1994) Proc . Nat. Acad. Sci . SKL:3224-3227)。
【0028】
哺乳類の宿主細胞において、多くのウィルス系発現システムを利用することができる。アデノウイルスが発現ベクターとして用いられる場合、本発明のポリペプチドをコードする配列を、後期プロモーター及び三深裂したリーダー配列からなるアデノウイルス転写/翻訳複合体にリゲートすることができる。ウィルスゲノムの必須でないE1又はE3領域における挿入を、感染細胞におけるタンパク質を発現することができる生存可能なウイルスを得るために用いることができる(Logan, J.及びShenk, T. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. 81: 3655-3659)。また、転写エンハンサー(例えば、ラウス肉腫ウイルス(RSV)エンハンサー)を、哺乳類の宿主細胞の発現を増加させるために用いることができる。
【0029】
また、ヒト人工染色体(HACs)を、プラスミドにおいて含まれ、発現することができるよりも、より大きなDNA断片を与えるために使用することができる。6から10MのHACsが、治療目的のための従来の送出方法(リポソーム、ポリカチオンアミノポリマー又は小嚢)によって構築され、与えられる。
【0030】
特定の開始シグナルを、より効果的な翻訳を成し遂げるのに用いることができる。そのようなシグナルは、ATG開始コドン及び隣接配列を含む。sgp130をコードする配列、その開始コドン及び上流配列が適当な発現ベクターに挿入される場合、さらなる転写又は翻訳制御シグナルは必要でないかもしれない。しかし、コード配列のみが挿入される場合、ATG開始コドンを含む外因性の翻訳制御シグナルが提供されなければならない。さらに、開始コドンが、全ての挿入物の翻訳を確実にするために、正しい読み枠中になければならない。外因性の翻訳要素及び開始コドンは、種々の起源(天然及び合成の双方)のものかもしれない。発現効率は、例えば、文献記載のそれらのような、用いられる特定の細胞システムのために適切なエンハンサーの包含物によって強化されるかもしれない(Scharf, D.ら、(1994) Results Probl . Cell Differ. 20:125-162)。
【0031】
さらに、宿主細胞株を、挿入された配列の発現を調整するか、望ましい方法で発現されたポリペプチド鎖を処理するその能力のために選択することができる。また、ポリペプチドの「プリプロ(prepro)」の形態を開裂するポスト翻訳処理を、正しい挿入、折りたたみ及び/又は機能を促進するために用いることができる。ポスト翻訳活性のための特定の細胞機構及び特徴的なメカニズムを有する異なる宿主細胞(例えば、CHO、HeLa、MDCK、HEK293又はW138)が、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC:ベセズダ、MD)から入手可能であり、外来のポリペプチド鎖の正しい修飾及び処理を確実にするために選択することができる。
【0032】
組換ポリペプチドの持続性、高収率のために、安定した発現が好ましい。例えば、安定にsgp130鎖を発現する細胞系は、複製及び/又は内因性発現要素のウィルス起源及び同じ又は別々のベクターにおける選択可能なマーカー遺伝子を含むかもしれない発現ベクターを用いて形質変換することができる。ベクターの導入後、それらが選択的なメディアにスイッチされる前に、細胞は、富化媒体で1〜2日間成長することができるかもしれない。選択可能なマーカーの目的は、選択に対する抵抗を与えることであり、その存在は導入された配列を首尾よく発現する細胞の成長及び回収を可能にする。安定な形質変換細胞の耐性クローンは、細胞タイプに適する技術を用いて増殖させることができる。
【0033】
組換ベクターの導入後、宿主細胞は選択的媒体(それはベクター含有細胞の成長のために選択する)中で成長する。多くの選択システムを、形質変換細胞系を回収するために用いることができる。これらは、限定されないが、単純疱疹ウイルスチミジンキナーゼ(Wigler、M.ら、(1977) Cell 11:223-232)及びそれぞれtk.sup.又はaprt. sup. -cellsで使用することができるアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy, I.ら、(1980) Cell 22:817-823)遺伝子を含む。また、代謝拮抗物質、抗生物質又は除草剤抵抗性が、選択のベースとして用いることができる。例えば、メトトレキサートに対する耐性を与えるdhfr(Wigler, M.ら、(1980) Proc. Natl. Acd. Sci. 77: 3567-3570);アミノグリコシドネオマイシン及びG−418に対する耐性を与えるnpt(Colbere-Garapin, F.ら、(1981) J. MoI. Biol. 150:1-14)及び、それぞれ、クロロスルフロン(chlorsulfuron)及びホスフィノトリシン(phosphinotricin)アセチルトランスフェラーゼに耐性を与えるals又はpat(Murry, supra)である。さらなる選択可能な遺伝子、例えば、trpB(それは細胞にトリプトファンの代わりにインドールの利用を可能にする)又はhisD(それは細胞にヒスチジンの代わりにヒスチノールの利用を可能にする)が記載されている(Hartman, S. C.及びMulligan, R. C. (1988) Proc . Natl. Acad. Sci. 85:8047-8051)。最近、可視マーカーの使用が、形質変換体の同定のみならず、特定のベクターシステムに起因することができる過渡的又は安定的なタンパク質発現を定量化するために広く用いられている、アントシアニン、β−グルクロニダーゼ及びその基質GUS、ルシフェラーゼ及びその基質ルシフェリン等のマーカーで、支持率を獲得している(Rhodes, CA.ら、(1995) Methods MoI. Biol. 55: 121- 131)。
【0034】
組換ポリペプチドの精製は、この目的のために知られているいずれかの方法、つまり、抽出、析出、クロマトグラフィ、電気泳動等を含む従来のいずれかの方法によって行われる。使用することができるさらなる精製方法は、モノクローナル抗体又はターゲットポリペプチドに結合し、カラム内に含まれるゲルマトリクスに導入され、固定化される他の分子を用いた親和性クロマトグラフィである。組換ポリペプチドを含有する不純な試料がカラムを通されるか、マトリックスが、目標ポリペプチドを結合するためにバッチ技術で使用される。ポリペプチドはマトリックスに結合し、不純物は結合しないであろう。洗浄後、ポリペプチドは、pH又はイオン強度の変化によって、マトリックスから抽出される。
【0035】
従って、本発明は、本発明のポリペプチド二量体を生産する方法に関し、それは、ポリペプチドをコードするDNA配列で形質変換された宿主細胞を培養し、宿主細胞又は培養媒体からポリペプチドを回収することを含む。
【0036】
本発明のポリペプチド二量体は、すべての病変の治療及び/又は予防に有用であり、作動性IL−6/sIL−6R複合体の活性が疾患の病変に関与し、阻害するに違いない。例えば、本発明のポリペプチド二量体の治療用途は、以下を含む。
a)IL−6は、腫瘍形成を促進するためにオートクライン又はパラクリン方式のいずれかで作用することによって、多発性骨髄腫に直接関係しているようである。また、高いIL−6レベルが、好ましくない二次作用(例えば、骨吸収、高カルシウム血症及び悪液質)を招く。これらの場合、sIL−6RがIL−6に対して標的細胞を敏感にすることが知られている。従って、ここで記載されている本発明のポリペプチド二量体は、二次作用及び腫瘍成長の阻害の双方に対して有益であろう。
b)自己免疫疾患:自己免疫不全におけるIL−6の病態重要性が、文献において多くの著者によって検討されており(例えば、Yoshizakiら、(1992) Semin. Immunol. 4(3) : 155-166参照)、よって、IL−6シグナル形質導入に対する干渉が、自己免疫疾患の治療に役立つかもしれない(Nishimotoら、(1999) Intern. Med. 38 (2):178-182)。そのような病態の例は、全身エリテマトーデス、橋本病、硬皮症、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、自己免疫上皮炎、真性糖尿病、シェーグレン症候群、多発性筋炎、糸球体腎炎及び他の炎症性疾患(例えば、乾癬、クローン病、潰瘍性大腸炎及びブドウ膜炎)である。さらに、大腸がんのような特定の炎症関連のガン疾患が挙げられる。
c)骨粗鬆症において、それは閉経後の女性のエストロゲン濃度の低下によって又は卵巣切除術によって悪化するかもしれず、IL−6は、破骨細胞形成の重要なメディエータであるようであり、骨吸収をもたらす。重要なことに、IL−6は、エストロゲン減少状態で主な役割を果たすようであり、明らかに通常の骨メンテナンスに最小限に関与しているだけである。これと一致して、実験的な証拠は、IL−6に対する機能阻害抗体が破骨細胞の数を減少させることができることを示す。エストロゲン補充療法が行われる一方、子宮内膜及び胸ガンのリスクを増加させるかもしれない副作用をもたらすようである。このように、本発明のポリペプチド二量体は、より特異的に、破骨細胞形成を正常レベルに低減させるであろう。
d)おそらく、脂肪組織でリポ蛋白リパーゼ活性を減少させることによって、IL−6は、エイズ及びガンに伴う悪液質に至る腫瘍壊死因子(TNF)のメディエータとなるかもしれない。従って、ここに記載される本発明のポリペプチド二量体は、そのような患者で悪液質を軽減又は減少させることに役立つ。
e)細菌性及びウィルス性感染症:ヒトヘルペスウィルス(HHV8)の存在は、91%以上のカポジ肉腫(KS)障害で証明されている。さらに、そのウイルスは、一次性流出リンパ腫(PEL)及び多中心性カースルマン疾患(MCD)患者で同定された。おもしろいことに、多発性骨髄腫(MM)患者からの骨髄樹枝細胞は、HHV8によって侵されることが示された。それ以来、HHV8のMMとの関連が、激しい議論の対象となっており、それは最近復活した。HHV8のゲノムは、ヒト抗アポトーシスタンパク質、ケモキネシス及び人IL−6に25%相同性を有するウィルスIL−6(vIL−6)の生存形態を含むサイトカインに顕著に相同するいくつかのタンパク質をコードする。vIL−6は、ヒトIL−6を暗示する生物学活性、つまり、ネズミハイブリドーマ及びヒト骨髄腫細胞の激増の刺激を有することが証明されている。最近、vIL−β誘発血管形成及び血液生成であるvIL−6−トランスフェクトNIH3T3細胞を注射されたマウスで示された。これらの機能によって、vIL−6がHHV8関連障害の病態で重要な役割を果たすと結論された。vIL−6シグナリングへのIL−6Rの寄与は、論争的に議論されている。vIL−6トランスフェクトCOS−7細胞の生成されていない上澄を用いた1つのグループが、STAT活性がIL−6Rでなく、gp130を発現する細胞で誘導されたことが示された。対照的に、もう一つのグループは、vIL−6活性が、IL−6Rアンタゴニストによって減少されたことを見出し、vIL−6シグナリングにおけるIL−6Rの関係が議論されている。
【0037】
このように、本発明は、本発明のポリペプチド二量体またはポリヌクレオチドの有効な量を含む医薬組成物に関し、好ましくは、薬学的に許容できるキャリヤと組み合わせられる。「薬学的に許容できる」とは、活性成分の生物学的活性の効果に干渉せず、それが投与されるホストに毒性を示さないいずれかのキャリヤを含むことを意味する。適当な薬学的キャリヤの例は、当該分野でよく知られており、リン酸緩衝サリン溶液、水、例えば、油/水エマルジョン等のエマルジョン類、種々の湿潤剤、滅菌溶液等を含む。そのようなキャリヤは、従来の方法によって製剤化され、有効量で患者に投与することができる。
【0038】
「有効量」とは、病気の過程及び重篤性に影響を及ぼすのに十分である活性成分の量を指し、そのような病態の低減又は緩和をもたらす。
【0039】
これらの病気又は障害の治療及び/又は予防に有用な「有効量」は、当業者に公知の方法を用いて決定することができる(例えば、Finlら、(1975) The Pharmacological Basis of Therapeutics, Goodman and Gilman, eds. Macmillan Publishing Co., New York, pp. 1-46参照)。
【0040】
適当な組成物の投与は、例えば、静脈、腹腔内、皮下、筋肉内、局所(例えば、浣腸、吸入、膏薬、液滴)又は経皮投与等の種々の方法によって作用させることができる。投与ルートは、もちろん、治療の種類、医薬組成物に含まれる化合物の種類に依存する。投与計画は、主治医及び他の臨床要因で決定される。医術において知られていているように、いずれかの患者の用量は、患者の大きさ、体表面積、体重、年齢、性別、投与される特定の化合物、時間及び投与経路、治療の種類、健康状態、同時に投与される他の薬物に依存する。
【0041】
上述した本発明のポリペプチド二量体及びポリヌクレオチドの好ましい医療用途は、骨吸収、高カルシウム血症、悪液質、腫瘍、ガン、自己免疫病気、炎症性病気(例えば、クローン病)、潰瘍性大腸炎、慢性関節リウマチ、若年性慢性関節リウマチ、喘息、乾癬、紅斑性狼瘡、多発性硬化症、ブドウ膜炎等、細菌性又はウィルス性感染症の治療である。
【0042】
最後に、本発明はまた、本発明のポリペプチド二量体に結合する抗体に関する。好ましくは、そのような抗体はスペーサ領域、リンカー領域及び/又はD3/スペーサ接合領域に結合する。そのような抗体は、本発明のポリペプチドに結合する抗体の検出に基づく診断方法において有用である。
【0043】
以下の実施例は、本発明をより詳細に説明する。
実施例1:sgp130変異体spg130(D1−D3)Sn−Fcの製造
(A)材料
sgp130Fc(全長)の配列が最適化されたコドンを合成し、GeneART(Regensburg, Germany)によって構築されたpCR−Script−AMPとして提供した。ゲータウェイクローニングシステムコンポーネント(AccuPrime Pfx DNA ポリメラーゼ、ドナーベクターpD0NR221、CMVプロマータ制御発現ベクターpcDNA-DEST40、挿入転写用BP及びLRリコンビナーゼ及びコンピテントE. coli細胞)をInvitrogen(Karlsruhe, Germany)から購入した。QuikChange II部位特異的突然変異誘発キットをStratagene (Amsterdam, The Netherlands)から得た。HYPUR精製突然変異誘発プライマーをMWGBiotech (Ebersberg, Germany)から得た。CHO−Kl細胞をGerman Collection of Microorganisms and Cell Cultures(Braunschweig, Germany)から得た。培養媒体成分を以下から購入した。ハムのF12媒体及びPBS(PAA Laboratories; Colbe, Germany)、FBS(Biochrom; Berlin, Germany)、トリプシン/EDTA溶液(Invitrogen)及びG418溶液(Sigma-Aldrich; Taufkirchen, Germany)。トランスフェクション試薬リポフェクタミン2000をInvitrogenから得た。Santa Cruz(Heidelberg, Germany)供給タンパク質A/Gプラスアガロース(免疫沈降用)。免疫沈降及びウェスタンブロットの一次検出の双方のために、マウス抗ヒトIgG(Fc)モノクローナル抗体を用いた(CBL102; Chemicon; Hofheim, Germany)。ウェスタンブロット二次検出を抗マウスIgG HRP結合抗体で行い、ECL−プラスウェスタンブロット基質及びハイパーフィルムECLを、全てGE Healthcare(Freiburg, Germany) から入手した。ローラーボトル(2.1 L、2, 5X 表面)をGreiner Bio-One (Frickenhausen, Germany)から購入した。
【0044】
(B)sgp130(D1−D3)Sn−Fcの構築
全長sgp130Fcを、標準ゲータウェイ法で、ゲータウェイプライマー、AccuPrime Pfx DNAポリメラーゼ及びBPリコンビナーゼを用いて、pDONR221にサブクローン化した。サブクローン化されたインサートを、250〜300bpおきに積層正逆シーケンシングプライマーを用いて完全に配列検証した。QuikChange IIキットによる部位特異的突然変異誘発において、sgp130FcのドメインD4−D6を、ドメインD3(YED)の末端及びsgp130FcのFc部位(SCD)の最初に架橋したプライマー対を用いて、理想的なスペーサ要素(S1、S2、S3及びS5)によって置換し、アミノ酸スペーサ配列「グリシン−グリシン−グリシン−グリシン−セリン」(GGGGS)の種々の反復をコードした。変異体sgp130(D1−D3)Fcを、スペーサなしとした(説明目的のために:変異体「sgp130(D1−D3)S0−Fc」と示される場合、これは、スペーサペプチドを含まない分子を意味し、従ってsgp130(D1−D3)Fcと同一である)。陽性クローンを、AlwNIで制限消化によって同定し、上述した完全なシーケンシングによって検証した。その後、インサートを、ゲートウェイLR組換によって発現ベクターpcDNA−DEST40へ転写した。インサートが、Fc部位の後、2つの停止コドンをコードしたため、pcDNA−DEST40(V5及び6xHisエピトープ)のタグは、タンパク質sgp130(D1−D3)Sn−Fcに存在しない。また、陽性クローンを、AIwNI制限消化によって同定した。ゲートウェイ組換法は非常に特異的で、DNA増幅を必要としないため、配列確認は必要でなかった。ゲートウェイ組換を用いたインサートの正しい転写が、我々の研究所の別個の実験で確認されている。
【0045】
(C)培養及びトランスフェクション
CHO−K1細胞を、10%FBS捕捉ハムF12培地にて、37℃、水飽和雰囲気下、5%二酸化炭素で成長させた。維持培養を、3〜4日ごとに分割し、最高20継代のみを用いた。細胞を、リポフェクタミン2000及びインビトロゲンによって供給されたCHO−K1用の標準条件を用いて発現構成pcDNA−DEST40_sgp130(D1−D3)Sn−Fcでトランスフェクションした。最初の一時的な発現テストのために、CHO−K1を、6ウェルプレートでトランスフェクトし、細胞及び上澄を、トランスフェクションの24時間後に収穫した。sgp130(D1−D3)Sn−Fcを、メーカーの指示に従って、プロテインA/Gプラスアガロース及び抗ヒトIgG(Fc)抗体を用いて上澄から免疫沈降した。全細胞タンパク質を抽出し、抗ヒトIgG(Fc)抗体を用いたウェスタンブロットを、Waetzigら、J. Immunol.168: 5342 (2002)で記載されたように、細胞溶解物及び免疫沈降を用いて行った。
【0046】
(D)CHO細胞中でのsgp130(D1−D3)Sn−Fcの発現
成功した一時的な発現後、CHO−K1細胞を、10cmのプレートで400μg/mlF418を用いてトランスフェクトし、選択した。製品品質及び特性についての一次影響のために、予め選ばれた多クローン性CHO−K1プールを、ローラーボトルへ移した。融合性細胞の上澄を、1週間につき3回収穫し、細胞デブリスを除去するために15分間4,000rpm、4℃にて2回遠心分離し、すぐに処理するか、−80℃で凍結した。平行に、安定した細胞クローンを、限られた希釈法を用いて、予め選ばれたプールから選択し、上述したように、ウエスタンブロット発現分析によって特徴づけした。最も高い及び最も安定した発現のクローンを、ローラーボトルに移し、さらなる生成のために使用した。
【0047】
(E)結果
図2に示したように、sgp130(D1−D3)Sn−Fc(具体例として、sgp130(D1−D3)S1−Fcを示した)は、親のsgp130Fcタンパク質のために得られるそれらよりさらに良好な生成率で発現した。これは、sgp130Fcのより小さな変異体の発現能が強化されたようであり、タンパク質の製造に利点を与えることを示す。
最後に、より高生成率は、工業生産のための経費をかなり低減する。
【0048】
実施例2;sgp130(D1−D3)Sn−Fcの精製
(A)材料
真空ろ過ユニット用酢酸セルロースフィルター(0.45μm)をSartorius(Gottingen, Germany)から購入した。PBSをPAAラボラトリー(Colbe, Germany)から得た。親和性及びサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を、全てGE Healthcare (Freiburg, Germany)から得た。XK16/20カラム中のMabSelect材料(プロダクトコード17-5199-01)、PD−10脱塩カラム及びSEC用HiLoad 26/60Superdex 200 pg。Amicon Ultra-15 50 kD Ultracel-PL膜濃縮ユニットをMillipore (Eschborn, Germany)から購入した。PAGE用の既製アクリルアミド−ビス溶液(19:1、30%)が、Bio-Rad (Munich, Germany)によって供給された。
【0049】
(B)親和性クロマトグラフィ
sgp130(D1−D3)Sn−Fc変異体の生成を、具体例として、sgp130(D1−D3)S1−Fcで示す。ローラーボトル培養からのsgp130(D1−D3)S1−Fc含有上澄を、4℃にて、P−I蠕動ポンプ及びAKTA Purifier 100システム(双方GE Healthcareから入手、Freiburg, Germany)を用いて精製した。プロトコールは、モノクローナル抗体の精製用にメーカー推奨方法に基づいた。遠心後、新鮮又は解凍(氷上で)した上澄のpHを6.7〜7.0に調整した。真空ろ過(0.45μm)を2回繰り返した後、上澄を、脱気し、必要により、再度6.7〜7.0にpH値を再調整した。その後、PBS平衡親和性クロマトグライーカラム(XK16/20カラム中、6〜25mlMabSelect)に2〜4リットルの上澄を、P−Iポンプを用いて3〜10ml/分の流速で充填した。PBSで洗浄した後、カラムを、AKTA精製器に移し、A280が、未結合タンパク質の量的除去後安定するまで、PBSで再洗浄した。溶出のために、AKTAシステムに、それぞれ、pH3.25及び5.5で2つの50mMのクエン酸ナトリウムバッファを装備し、それを、望ましいpH条件を与えるために混合した。pH5.1での1つの洗浄工程の後、pH3.7での溶出を続けた。10mlのフラクションを2mlの1Mのトリス−HCl(pH11)を含有する15mlの試験管に採取した。ピークフラクションをプールし、pHを測定し、必要に応じて、7.5に調整した。プールのタンパク質濃度をA280で測定し、プールを、Amicon Ultra-15 50kDユニットを使って、最高1.5mg/mlに慎重に濃縮した。PBS平衡PD−10脱塩カラムを、バッファをPBSに変えるために用い、次いで、280nmでもう一つのタンパク質濃度を測定した。
【0050】
(C)ゲルろ過によるサイズ除外クロマトグラフィ(SEC)
SECのために、PBS中1.2mg/mlの最高濃度が推奨された。SECを、PBS平衡HiLoad 26/60 Superdex 200 pgカラム中で、流速0.8ml/minにて、AKATシステムで行った。sgp130(D1−D3)S1−Fcを、高分子量の凝集の低プラトー後に、単一ピークで溶出した(図4A)。最初の動作で、全てのフラクションのサンプルを、PAGE分析のために得た(以下参照)。ピークフラクションをプールし、それらのタンパク質濃度を測定し、PBS中400〜500μg/mlにセットし、単一使用のアリコートを長期保存のために−80℃で凍結した。
【0051】
(D)ポリペプチドアクリルアミド電気泳動(PAGE)
フラクション及びプールサンプルを、本来のPAGE(7.5%ポリペプチドアクリルアミドゲル)によって分析し、銀又はクマシー染色した(図4A)。
【0052】
(E)結果
図4A及び4Bで示したように、望まれていない二次生成物の量は、もう一つの実験(結果を図3に示す)で平行に精製した親化合物sgp130Fcと比較して、かなり減少した。さらに、主要生成物(図4A中のレーン8〜14)の溶出は、不純物フラクション(図4A中のレーン1〜6)と、明確に分離できる。sgp130Fcは、非常に多量の不純物を生成する傾向がある(図3中の最初のクロマトグラムピークとPAGE参照)。さらに、主要生成物(図3中のレーン6〜11)を含む溶出フラクションのいずれも、不純物を含む。これらの結果は、親sgp130Fc分子と比較して、sgp130(D1−D3)Sn−Fcの明確な改善を示す。しかし、スペーサ長は、sgp130(D1−D3)Sn−Fc分子の精製能に対して決定的である。結合能、よって、治療効果は、スペーサ長さを増やすことにより改善される。n=3で、「最適精製能のウインドウ」が最適条件である(図4B)。従って、最適活性又は最適純度ならびに収率の必要によって、理想的なスペーサ長は、3及び5要素の間にある。
【0053】
実施例3:sgp130Fc及びsgp130(D1−D3)Sn−FcのIL−6/sIL−6R複合体結合タンパク質の比較
(A)材料
96ウェルのマイクロロン・マイクロタイター・プレートをGreiner Bio-One (Frickenhausen, Germany)から購入した、組換ヒトIL−6及び可溶性IL−6レセプター(sIL−6R)を、BioSource (Solingen, Germany)及びR&D Systems (Wiesbaden, Germany)から、それぞれ得た。一次抗sIL−6R抗体(クローンM91、マウスIgGl)をBeckman Coulter (Krefeld, Germany)から得た。二次抗マウスIgG HRP結合抗体をから得、ウエスタン部ロット実験(実施例1のA〜C参照)と同じものであった。すぐに使用ができるテトラメチルベンジジン(TMB)HRP基質をSigma-Aldrich (Taufkirchen, Germany)から購入した。
【0054】
(B)酵素結合免疫吸着分析(ELISA)
sgp130Fc変異体の異なるロット間の品質管理及び比較のために、標準ELISAを設計した。被覆以外の全工程を、室温で行い、全洗浄工程を250μlの量で3回行い、全ての条件を3重に測定した。96ウェルマイクロタイター・プレートを、100μmPBS中、内部標準として、本来のsgp130Fcの100ng/ウェル及びsgp130(D1−D3)Sn−Fcの等モル量で、4℃にて一晩被覆した。よって、sgp130Fc及びその変異体は、捕捉試薬として機能し、一方、結合sIL−βRを検出した(以下参照)。0.05%のTween−20/PBSで洗浄した後、ウェルを2時間、200μl/ウェルの3%BSA/PBSでブロックした。次いで、ブロッキング溶液を除去し、ウェルを1時間、3%BSA/PBS中、組換ヒトIL−6(3.2μg/ml〜50ng/ml)及びsIL−6R(1.6μg/ml〜25ng/ml)の1:2希釈系(100μl/ウェル)でインキュベートした。0.05%Tween−20/PBSで洗浄した後、ウェルを、1時間、3%BSA/PBS(100μl/ウェル)中、一次抗sIL−6R抗体とともにインキュベートした。0.05%Tween−20/PBSで3回洗浄した他の系を、二次抗マウスIgGHRP結合抗体(1:5000(100μl/ウェル)とともに1時間インキュベートした。0.05%Tween−20/PBS、続いてdH20で洗浄した後、プレートを、約5分間(発現した青色の強度によって)、100μl/ウェルTMB基質とともにインキュベートした。基質反応を、0.5M硫酸を100μl/ウェルでウェルに添加することによって停止させた。最後にA450を、マイクロプレートリーダーで測定した。
【0055】
(C)結果
結合分析の結果を図5に示す。sgp130(D1−D3)Sn−Fcの結合能は、主に、各変異体で用いられるスペーサの反復数に依存していた。この場合、2回及び3回の反復(S2及びS3)を含む変異体は、sgp130Fcと同等か、より良好であった。
これは、親sgp130Fc分子の修飾がその精製を改善し、その生物学的活性及びIL−6がトリガーとなる疾患の治療用の医薬としての推定される使用に影響しなかったことを示す。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】sgp130(D1−D3)Sn分子を示す概略図である。 sgp130(D1−D3)Sn変異体は、親分子sgp130FcのドメインD4からD6の欠損及び種々の長さ(Sn)のポリペプチドスペーサによるそれらの置換によって発生する。「n」はスペーサド領域内での反復数を示す。その後、分子は、IgGFc断片(上部パネル)によって共有結合的に二量体化するか、あるいは、例えば、ジスルフィド架橋、化学的相互作用又はその他の形成によって共有結合をもたらす天然に存在する又は人工的なリンカー要素へのさらなる融合(下部パネル)によって共有結合的に二量体化する(sgp130(D1−D3))Sn−L)。さらに、これらの分子は、精製及び/又は検出目的のためにシーケンスタグを含むことができる。
【図2】CHO細胞でのsgp130(D1−D3)S11の発現。 sgp130(D1−D3)Snの発現を、sgp130(D1−D3)S1−Fcに対して例示的に示す。各構成体(pDEST40_sgp130(D1−D3)S1−Fc)を、CHO細胞に、一時的にトランスフェクションした。平行して、もう一セットのCHO細胞を、親のsgp130Fcからなる構成体でトランスフェクションした。細胞を24時間インキュベートし、上澄を回収し、sgp130融合タンパク質を免疫沈降した。沈殿物は、最終的にSDS−PAGEによって分析し、標準的なウェスタンブロット法に従って、抗ヒトIgG抗体を用いて検出した。
【図3】sgp130Fc融合分子の精製 sgp130Fcのサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)。上部パネルはUVスキャンによるゲル濾過の間に誘発される溶出プロフィール(クロマトグラム)を示す。中央及び下部パネルは、天然ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)及び標準的な方法によるクマシー(COOM)又は銀のいずれかでの染色によって回収したフラクションの分析を表す。
【図4】sgp130(D1−D3)Sn-Fc融合分子の精製 (A)サイズ排除クロマトフラフィー(SEC)によるsgp130(D1−D3)の精製を、sgp130(D1−D3)S1−Fcに対して例示的に示す。上部のパネルは、UVスキャンによるゲル濾過の間に誘発される溶出プロフィール(クロマトグラム)を示す。中央及び下部パネルは、天然ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)及び標準的な方法によるクマシー(COOM)又は銀のいずれかでの染色によって回収したフラクションの分析を表す。 (B)(GGGGS)nスペーサによる変異体のSEC溶出クロマトグラムの比較は、生物学的活性の連続増加と相関しないn=3のスペーサ長の最適精製特性を示す(下図及び図5参照)。
【図5】sgp130(D1−D3)Sn-Fc分子によるIL−6/sIL−6Rの特異結合精製されたsgp130(D1−D3)Sn−Fc分子(n=0から3)を、96穴プレート上に被覆され、インキュベートして、組換体IL−6+可溶IL−6レセプター(sIL−6R)の量を増加した。結合したIL−6/sIL−6複合体を、マウス抗IL−6R抗体及び抗マウスIgG抗体に結合したホースラディッシュペルオキシダーゼを利用して検出した(白四角、黒丸、黒四角、黒三角)。平行して、親sgp130Fc分子をテストした(黒ひし形)。
【図6】sgp130(D1−D3)Sn−Fc結合抗体を検出するための分析の概略図。 (A)固体マトリックスに固定されたsgp130(D1−D3)Sn−Fcを、予め標識された(例えば、蛍光染料で)抗体混合物(例えば、血清サンプルに含まれる)とともにインキュベートした。未結合抗体を洗い流し、特異結合分子を、最高水準の技術で検出した。 (B)固体マトリックスに固定されたsgp130(D1−D3)Sn−Fcを、抗体混合物(例えば、血清サンプルに含まれる)とともにインキュベートした。未結合抗体を洗い流し、残存sgp130(D1−D3)Sn−Fc/抗体複合体を、所定量で標識された(例えば、蛍光染料で)sgp130(D1−D3)Sn−Fcとともにインキュベートし、最高水準の技術で最終的に検出した。
【図7】最適化sgp130(D1−D3)のcDNA配列 配列は、sgp130のドメインD1からD3とともにシグナリングペプチドを含む。その配列は、哺乳類の細胞でコードされたポリペプチドの発現に対して最適化したコドンであった。
【図8】可溶gp130(D1−D3)のアミノ酸配列 所定の分子フラグメントに、以下のように下線を付した。シグナリングポリペプチド(二重線)、Ig様C2タイプドメイン(D1)(点線)、フィブロネクチンタイプIIIドメイン(D2)(一重線)、フィブロネクチンタイプIIIドメイン(D3)(細点線)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのモノマー断片のポリペプチド二量体であって、
モノマー断片は、グリコプロテイン(gp)130の細胞外部位のドメイン1から3(D1からD3)と、それらのC末端での5から30のアミノ酸長を有するポリペプチドスペーサとを含み、
2つのモノマー断片は、互いに共有結合し、
スペーサ長は、得られる二量体プロテインのIL−6/可溶IL−6レセプター複合体への最適結合を決定し、
ポリペプチド二量体は、相同凝集体及び分子断片への著しく低減した結合能を示し、
宿主細胞において著しく高い生成率が得られる2つのモノマー断片のポリペプチド二量体。
【請求項2】
2つのモノマー断片が同一である請求項1のポリペプチド二量体。
【請求項3】
さらにsgp130のドメイン(D4からD6)を含まない請求項1のポリペプチド二量体。
【請求項4】
2つのモノマーの共有結合二量体が、1以上のジスルフィド架橋によって得られる請求項1から3のいずれか1つによるポリペプチド二量体。
【請求項5】
ジスルフィド架橋が、IgG−Fc分子へのモノマー断片の融合によって生成される請求項4のポリペプチド二量体。
【請求項6】
ジスルフィド架橋が、1以上の遊離の付随可能なシステイン残基を含む天然又は人工のポリペプチドへのモノマー断片の融合によって生成される請求項4のポリペプチド二量体。
【請求項7】
2つのモノマーの共有結合二量体が、化学又は物理的結合のいずれかによって得られる請求項1から3のいずれか1つによるポリペプチド二量体。
【請求項8】
ポリペプチドスペーサが、たんぱく質分解的切断から分子を保護するために選択的にグリコシル化されてなる請求項1から7のいずれか1つによるポリペプチド二量体。
【請求項9】
ポリペプチドスペーサが、10から25のアミノ酸長を有する請求項1から8のいずれか1つによるポリペプチド二量体。
【請求項10】
ポリペプチドスペーサが、15から25のアミノ酸長を有する請求項9によるポリペプチド二量体。
【請求項11】
スペーサは、1、2、3、4、5又は6のnで、アミノ酸配列(GGGGS)nを有する請求項1から10のいずれか1つによるポリペプチド二量体。
【請求項12】
50%未満の相同凝集体及び分子断片を形成する請求項1から12のいずれか1つによるポリペプチド二量体。
【請求項13】
25%未満の相同凝集体及び分子断片を形成する請求項12によるポリペプチド二量体。
【請求項14】
10%未満の相同凝集体及び分子断片を形成する請求項13によるポリペプチド二量体。
【請求項15】
5%未満の相同凝集体及び分子断片を形成する請求項14によるポリペプチド二量体。
【請求項16】
モノマーは、図8に表されたアミノ酸配列を有する請求項1から15のいずれか1つによるポリペプチド二量体。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1つのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項18】
ポリヌクレオチド配列が、真核生物宿主細胞、バクテリア、イースト又は昆虫細胞でコードされたタンパク質の生成のために最適化されたコドンである請求項17のポリヌクレオチド。
【請求項19】
図7に表された核酸配列を含む請求項17又は18のポリヌクレオチド。
【請求項20】
請求項17から19のいずれか1つのポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項21】
請求項20の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項22】
請求項21の宿主細胞を培養し、ポリペプチドモノマー又は二量体を前記宿主細胞又は培養媒体から回収し、それを生成することを含む請求項1から16のいずれか1つのポリペプチド二量体を生成する方法。
【請求項23】
請求項1から16のいずれか1つのポリペプチド二量体又は請求項17から19のいずれか1つのポリヌクレオチドを含む医薬組成物。
【請求項24】
骨吸収、高カルシウム血症、悪液質、腫瘍、ガン、自己免疫病気、炎症性疾患、細菌性又はウィルス性感染症の治療又は予防のための医薬組成物の製造のための、請求項1から17のいずれか1つのポリペプチド二量体又は請求項17から19のいずれか1つのポリヌクレオチドの使用。
【請求項25】
スペーサ領域、リンカー領域及び/又はポリペプチド二量体のD3/スペーサ結合領域に対して特異的である請求項1から16のいずれか1つのポリペプチド二量体と結合した抗体。
【請求項26】
請求項1から16のいずれか1つのポリペプチド二量体と結合した請求項25の抗体の検出に基づく診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−520480(P2009−520480A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546287(P2008−546287)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2006/012515
【国際公開番号】WO2007/071449
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(505470960)コナリス リサーチ インスティチュート アーゲー (6)
【Fターム(参考)】