説明

医薬化合物

本発明は、式(I)で示される化合物、またはその塩、溶媒和物もしくはN−オキシドを提供する:
【化1】


[式中、RおよびR2は同じであるか、または異なり、それぞれ水素、飽和C1−3ヒドロカルビル、ハロゲンおよびシアノから選択され;Xは、C=O、C=S、C(=O)NH、C(=S)NH、C(=O)O、C(=O)S、C(=S)OおよびC(=S)Sから選択され;Rは、それぞれ5〜12個の環員を有し、非置換であるか、または特許請求の範囲で定義される1以上の置換基R10により置換されているアリール基およびヘテロアリール基から選択され;RおよびRは同じであるか、または異なり、水素およびメチルから選択されるか;またはRおよびRの一方がヒドロキシメチルおよびエチルから選択され、他方が水素であり;かつ、RおよびRは同じであるか、または異なり、水素およびメチルから選択される]。式(I)の化合物はp38 MAPキナーゼおよびTafキナーゼ阻害剤としての活性を有する。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、チオフェンアミド化合物、それらの化合物を含有する医薬組成物、それらの化合物の治療上の使用、および新規な化学中間体に関する。本発明はまた、それら化合物のp38 MAPキナーゼ活性の阻害剤または調節剤としての使用、それらのrafキナーゼ阻害剤としての使用、およびそれらの脈管形成防止用薬剤としての使用に関する。
【0002】
本発明の化合物はまた、p38 MAPキナーゼまたはrafキナーゼにより媒介される病態または症状の処置または予防における使用、およびの処置または予防における使用も提案する。
【0003】
背景技術
タンパク質キナーゼは、細胞内の多様なシグナル伝達プロセスの制御を担う、構造上関連のある大きな酵素ファミリーを形成する(Hardie, G. and Hanks, S. (1995) The Protein Kinase Facts Book. I and II, Academic Press, San Diego, CA)。キナーゼは、それらがリン酸化する基質(例えば、タンパク質チロシン、タンパク質セリン/トレオニン、脂質など)によりファミリーに分類される。これらの各キナーゼファミリーに一般的に対応する配列モチーフが同定されている(例えば、Hanks, S. K., Hunter, T., FASEBJ., 9:576-596 (1995); Knighton, et al., Science, 253:407-414 (1991); Hiles, et al., Cell, 70:419-429 (1992); Kunz, et al., Cell, 73:585-596 (1993); Garcia-Bustos, et al., EMBO J., 13:2352-2361 (1994))。
【0004】
タンパク質キナーゼは、それらの調節機構により特徴付けることができる。これらの機構には、例えば、自己リン酸化、他のキナーゼによるトランスリン酸化、タンパク質−タンパク質相互作用、タンパク質−脂質相互作用、およびタンパク質−ポリヌクレオチド相互作用がある。個々のタンパク質キナーゼは、1を超える機構により調節され得る。
【0005】
キナーゼは、限定されるものではないが、標的タンパク質にリン酸基を付加することにより、増殖、分裂、アポトーシス、運動性、転写、翻訳および他のシグナル伝達プロセスをはじめとする多くの異なる細胞プロセスを調節する。これらのリン酸化事象は、標的タンパク質の生物機能を調整または調節することができる分子のオン/オフスイッチとしての働きをする。
【0006】
標的タンパク質のリン酸化は、種々の細胞外シグナル(ホルモン、神経伝達物質、増殖因子および分化因子など)、細胞周期、環境ストレスまたは栄養ストレスなどに応答して生じる。適切なタンパク質キナーゼは、シグナル伝達経路において、例えば、代謝系酵素、調節タンパク質、受容体、細胞骨格タンパク質、イオンチャネルもしくはイオンポンプ、または転写因子を(直接または間接的に)活性化または不活性化する働きをする。タンパク質リン酸化の制御の欠陥よる細胞内シグナル伝達の不全が、例えば、炎症、癌、アレルギー/喘息、免疫系の疾病および症状、中枢神経系の疾病および症状、ならびに脈管形成をはじめとする多くの疾病に関連づけられている。
【0007】
P38 MAPキナーゼ
マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼファミリーは、増殖因子(EGFなど)およびホルボールエステル(ERK)によるか、またはIL−1、TNFもしくはストレス(p38、JNK)により活性化される構造上関連のある一連のプロリン向性セリン/トレオニンキナーゼからなる。これらのキナーゼは細胞増殖、細胞分化および細胞死などの幅広い一連の生体プロセスに対する多くの細胞外刺激の作用を媒介する。細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)、c−Jun NH−ターミナルキナーゼ(JNK)およびp38 MAPキナーゼの3群の哺乳類MAPキナーゼが詳細に研究されている。
【0008】
p38 MAPキナーゼには、p38α、p38β、p38β2、p38γおよびp38δという5つの既知のヒトイソ型がある。p38キナーゼは、サイトカイン抑制抗炎症薬結合タンパク質(CSBP)、ストレス活性化タンパク質キナーゼ(SAPK)およびRKとしても知られ、転写因子(ATF−2、MAX、CHOPおよびC/ERPbなど)ならびに他のキナーゼ(MAPKAP−K2/3またはMK2/3)のリン酸化(Stein et al., Ann. Rep. Med Chem., 31, 289-298 (1996))および活性化を担い、それら自体は物理的・化学的ストレス(例えば、UV、浸透圧ストレス)、炎症性サイトカインおよび細菌のリポ多糖類(LPS)により活性化される(Herlaar, E & Brown, Z., MolecularMedicine Today, 5: 439-447 (1999))。p38のリン酸化産物は、TNFおよびIL−1をはじめとする炎症性サイトカイン、ならびにシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)の産生を媒介することが示されている。これらの各サイトカインは多くの病態および症状に関連づけてられている。IL−1およびTNFはまた、IL−6およびIL−8などの他の炎症性サイトカインの産生を刺激することも知られている。
【0009】
インターロイキン−1(IL−1)および腫瘍壊死因子(TNF)は、単球またはマクロファージなどの種々の細胞が産生する生体物質である。IL−1は免疫調節および炎症などの他の生理状態に重要であると考えられる種々の生体を媒介することが示されている(例えば、Dinarello, et al., Rev. Infect. Disease, 6: 51 (1984))。IL−1の種々の既知の生体活性としてはT ヘルパー細胞の活性化、発熱、プロスタグランジンまたはコラゲナーゼ産生の刺激、好中球の走化性、急性期タンパク質の誘導および血漿中の鉄レベルの抑制がある。
【0010】
過剰なIL−1産生またはIL−1産生の調節不全が疾病の悪化および/または発症に関連づけられている病態としては多くのものがある。これらには、関節リウマチ(Arend et al., Arthritis & Rheumatism 38(2): 151-160)、変形性関節症、内毒素血症および/または毒素性ショック症候群、その他の急性または慢性炎症性病態(内毒素に誘発される炎症応答または炎症性腸疾患など);結核、アテローム性動脈硬化症、ホジキン病(Benharroch et al., Euro. Cytokine Network 7(1): 51-57)、筋肉変性、悪液質、乾癬性関節炎、ライター症候群、痛風、外傷性関節炎、風疹性関節炎、急性滑膜炎およびアルツハイマー病が含まれる。IL−1活性を糖尿病および膵B細胞と関連づける証拠もある(Dinarello, J. Clinical Immunology, 5: 287-297 (1985))。p38の阻害がIL−1産生の阻害をもたらすことから、p38阻害剤は上記に挙げた疾病の処置に有用であると考えられる。
【0011】
過剰なTNF産生またはTNF産生の調節不全は、関節リウマチ(Maini et al., APMIS, 105(4): 257-263)、リウマチ性脊椎炎、変形性関節症、痛風性関節炎および他の関節症状;敗血症、敗血症ショック、内毒素ショック、グラム陰性敗血症、毒素性ショック症候群、成人呼吸窮迫症候群、脳性マラリア、慢性肺炎症性疾患、珪肺症、肺サルコイドーシス(sarcoisosis)、骨再吸収疾患、再潅流傷害、移植片対宿主反応、同種移植拒絶反応、インフルエンザ、1型単純ヘルペスウイルス(HSV−1)、HSV−2、サイトメガロウイルス(CMV)、水痘−帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン−バーウイルス(EBV)、ヒトヘルペスウイルス−6(HHV−6)、HHV−7、HHV−8などの感染による発熱および筋肉痛、仮性狂犬病、鼻気管炎ならびに感染もしくは悪性疾患に続発する悪液質、後天性免疫不全症候群(AIDS)に続発する悪液質、AIDS、ARC(AIDS関連症候群)、ケロイド形成、瘢痕組織形成、クローン病、潰瘍性大腸炎、または不全麻痺(pyresis)をはじめとする多くの疾病の媒介または悪化に関連づけられている。p38の阻害がTNF産生の阻害をもたらすことから、p38阻害剤は上記に挙げた疾病の処置に有用であると考えられる。
【0012】
インターロイキン−8(IL−8)は、単核細胞、繊維芽細胞、内皮細胞、およびケラチノサイトをはじめとするいくつかの細胞種により産生される走化因子である。内皮細胞からのその産生はIL−1、TNF、またはリポ多糖類(LPS)により誘導される。IL−8はin vitroにおいていくつかの機能を刺激する。IL−8は好中球、T−リンパ球、および好塩基球に対して走化性を有することが示されている。さらに、IL−8は正常個体およびアトピー個体の双方の好塩基球からのヒスタミン放出、ならびに好中球からのリソソーム酵素の放出および呼吸バーストを誘導する。IL−8はまた、de novoタンパク質合成なく、好中球上でのMac−1(CD 11 blCD 18)の表面発現を増強することも示されているが、これは血管内皮細胞への好中球の接着が増えることによるものと思われる。多くの疾病が、大量の好中球浸潤を特徴とする。IL−8産生の増強(炎症部位への好中球の走化性に関与している)を伴う症状は、IL−8産生を抑制する化合物による処置から利益を受けるであろう。最近、慢性閉塞性肺疾患(COPD)が肺のIL−8および好中球の浸潤レベルの上昇と関連づけられた(Barnes et al., Curr. Opin. Pharmacol., 1: 242-7 (2001))。IL−8と関連のある他の症状としては、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、喘息、肺繊維症および細菌性肺炎がある。
【0013】
IL−1およびTNFは多様な細胞および組織に影響を及ぼし、これらのサイトカインならびに他の白血球由来のサイトカインは多様な病態および症状の重要かつ決定的な炎症性メディエーターである。これらのサイトカインの阻害は、これらの病態の多くを制御、低減および緩和するのに有用である。
【0014】
p38を介したシグナル伝達の阻害は、いくつかのさらなる炎症性タンパク質(すなわち、IL−6、GM−CSF、COX−2、コラゲナーゼおよびストロメリシン)の合成および/または作用にIL−1に他、上記のTNFおよびIL−8も必要とし、免疫系の過剰で破壊的な活性化を調節するのに極めて有効な機構であるものと期待される。このような期待は、p38キナーゼ阻害剤に関して記載されている有効かつ多様な抗炎症活性によって裏付けられる(Badger, et al., J. Pharm. Exp. Thera., 279:1453-1461(1996); Griswold, et al., Pharmacol. Comm., 7:323-229 (1996))。
【0015】
rafキナーゼ
本発明の多くの化合物はrafキナーゼ阻害剤として活性があることが分かっている。
RafキナーゼはrasGTPアーゼの重要な下流標的であり、raf−MEK−ERKからなるMAPキナーゼカスケードの活性化を媒介する。活性化されたERKは、次に、とりわけこの経路の増殖、生存および転写機能の媒介を担ういくつかのタンパク質を標的とするキナーゼである。これらには転写因子ELK1、C−JUN、Ets1、Ets2およびEts7をはじめとするEtsファミリー、ならびにFOSファミリーが含まれる。このras−raf−MEK−ERKシグナル伝達経路は、EGF、PDGF、KGFなどの増殖因子をはじめとする多くの細胞刺激に応答して活性化される。この経路は増殖因子作用の主な標的となるので、raf−MEK−ERKの活性は、多くの因子に依存する腫瘍においてアップレギュレーションされることが分かっている。全腫瘍のうち約20%がこれらrasタンパク質の1つに活性化突然変異を受けていると認められたことで、この経路がより広く言えば、腫瘍形成において重要であることを示す。ヒト腫瘍において、この経路の他の構成要素における活性化突然変異も生じるという証拠がますます増えている。これはrafキナーゼについても同じことが言える。
【0016】
rafには近縁の3つのイソ型(A−raf、B−raf、およびc−raf−1)が存在し、これらはrasにより活性化され、この相互作用の結果として膜に移行する。最近の証拠は、B−rafの突然変異による活性化が、65%を超える悪性黒色腫、10%を超える結腸直腸癌 (Rajagopalan, H. et al., Nature, 418, 934(2002))、卵巣癌(Singer, G., et al., J. Natl. Cancer Inst., 95, 484-486 (2003))および乳頭状甲状腺癌(Brose, M., et al., Cancer Res., 62, 6997-7000 (2002); Cohen, Y., et al., Invest. Ophthalmol. Vis. Sci., 44, 2876-2878 (2003))をはじめとするいくつかの異なる腫瘍で見られることを示している。種々の腫瘍において種々のB−raf突然変異の範囲を確認したところ、キナーゼドメインのいわゆる活性化ループにおけるV599E突然変異が最も多かった(Davies, H., et al., Nature, 417, 949-954 (2002))。
【0017】
ヒト癌に関して発見されたB−rafの他の突然変異は必ずしもB−rafキナーゼを直接活性化するものばかりではなく、A−rafなどの他のrafイソ型との関連を含む可能性があるものの完全には理解されていない機構によってras−raf−MEK−ERK経路の活性をアップレギュレーションする(Wan, P., et al., Cell, 116, 855-867 (2004))。このような場合、raf活性の阻害はやはり癌処置の有益な目標となる。
【0018】
B−rafと特定の腫瘍種の関連の他、rafキナーゼ活性のより広範囲の阻害が抗腫瘍療法として有益であり得るということを示すに有意な量の証拠がある。B−rafのレベルでこの経路を遮断することは、発癌性のras突然変異によって引き起こされるこの経路のアップレギュレーションを打ち消す上で、また、この経路を介して増殖因子作用に応答する腫瘍においても有効である。ショウジョウバエ(Drosophila)およびC.エレガンス(C. elegans)における遺伝学的証拠は、分化に対するras依存性の作用にはrafホモログが不可欠であることを示している(Dickson, B., et al., Nature, 360, 600-603 (1993))。NIH3T3細胞に構成的に活性なMEKを導入すると形質転換作用が得られるが、ドミナントネガティブMEKタンパク質が発現すると、rasで形質転換した細胞系統の発癌性が抑制できる(Mansour, S.J., et al., Science, 265, 966-970 (1994); Arboleda et al., Methods Enzymol. (2001); 332: 353-67, Cowely, S., et al., Cell, 77, 841-852 (1994))。また、アンチセンスオリゴヌクレオチド構築物を用いればraf発現が抑制されるので、ドミナントネガティブrafタンパク質の発現は、ras依存性のシグナル伝達を阻害することも分かっている(Koch, W., et al., Nature, 349, 426-428 (1991); Bruder, T. T., et al., Genes and Development, 6, 545-556 (1992))。
【0019】
よって、この証拠は、rafキナーゼ活性の阻害が癌の処置に有益であり得ること、およびB−rafのターゲッティング阻害が構成的に活性なB−raf突然変異を含む癌に特に有益であり得ることを示唆している。
【0020】
raf−MEK−ERK経路は多くの受容体および刺激の下流で機能するが、このことは細胞機能の調節における幅広い役割を示唆している。このため、raf阻害剤は、この経路を介したシグナル伝達のアップレギュレーションに関連する他の病態においても有用性を見出すことができる。このraf−MEK−ERK経路はまた、増殖因子の作用に対する非形質転換細胞の正常な応答の重要な構成要素でもある。よって、raf阻害剤は、正常組織の不適切または過剰な増殖が見られる疾病にも使用可能である。限定されるものではないが、これには糸球体腎炎および乾癬が含まれる。
【0021】
raf−MEK−ERK経路は、腫瘍に供給を行う宿主由来の血管を維持する増殖因子の作用において、また腫瘍が増殖し、転移腫瘍作用から新たな腫瘍が形成する際に新しい血管形成を阻害する上で重要である。このようにして血管において作用する増殖因子としては、血管内皮増殖因子ファミリー(VEGF)、特に、2型VEGF受容体を介して作用する因子、Tie−2ファミリー、Ephrin増殖因子が挙げられる。rafシグナル伝達の阻害はこれらの増殖因子の作用を妨げ、結果として新たな腫瘍に関連する血管の増殖を制限し、その腫瘍に関連する既存の血管を破壊する働きをする。
【0022】

癌は異常な、制御を欠いた細胞増殖を特徴とする疾病群を表す総称である。通常、細胞は、身体が必要とする場合にだけ増殖し、分裂して新しい細胞を形成する。細胞が老化して死ぬと、新しい細胞がそれらに取って代わる。細胞内の遺伝子の突然変異がこのプロセスを乱す場合があり、その結果、身体が必要としないのに新しい細胞が形成し、古い細胞が死ななければならないのに死なない。この余分な細胞が、増殖物、新生物または腫瘍と呼ばれる組織塊を形成する。腫瘍は良性(非癌)の場合も悪性(癌)の場合もある。良性腫瘍は他の身体部位には拡散せず、命を脅かすことはまれであるが、悪性腫瘍は拡散(転移)し、命を脅かすおそれがある、癌は1個の細胞内に起源するので、それらが起源する細胞の種類によって、また、その細胞の場所によって分類することができる。例えば、腺腫は腺組織に起源し、癌腫は上皮細胞に起源し、白血病は骨髄幹細胞に起源し、リンパ腫はリンパ組織に起源し、黒色腫はメラノサイトに起源し、肉腫は骨または筋肉の結合組織に起源し、奇形腫は生殖細胞に起源する。 癌を処置するには様々な方法があり、最も一般的なものとしては外科術、化学療法および放射線療法がある。一般に、治療の選択肢は腫瘍の位置と等級および病期によって異なる。腫瘍が局在する場合には、多くの場合、外科術が好ましい処置となる。一般的な外科術の例としては、前立腺癌に対しては前立腺切除、乳癌に対しては乳房切除がある。外科術の目的は腫瘍だけを除去するか、器官全体を除去するかのいずれかであり得る。1個の癌細胞がかなりの大きさの腫瘍に成長するので、腫瘍だけを除去しても再発の大きな危険性がある。化学療法は、癌細胞を破壊することができる、または癌細胞の増殖を妨げることができる薬物で癌を処置することを含む。癌の化学療法が利用するもう1つの機構としては、腫瘍に供給を行う血管を破壊する働きをする抗脈管形成薬および腫瘍組織に対する宿主の免疫応答を増強する働きをする免疫療法薬がある。正常な細胞は制御された様式で増殖し、死滅する。癌が生じた場合、正常でない体内の細胞が分裂し続け、制御を欠いてさらなる細胞を形成し続ける。ある種の抗癌薬は分裂細胞を死滅させることにより、またはそれらが増殖または増加するのを停止させることにより働く。健康な細胞、特に分裂の速いものも害を受け得るので、これは副作用をもたらすことがある。放射線療法は、癌細胞を死滅させ、腫瘍を退縮させることを目的とした電離放射線の使用を含む。放射線療法は、処置する領域(「標的組織」)の細胞を、それらの遺伝物質を損傷し、これらの細胞が増殖および分裂し続けることができないようにすることにより損傷を与えたり破壊したりする。放射線は癌細胞と正常細胞の双方に損傷を与えるが、ほとんどの正常細胞は放射線の影響から回復し、適切に機能することができる。放射線療法の目的は、近傍の健康な組織への害を制限しつつ、できるかぎり多くの癌細胞に損傷を与えることである。放射線療法は、脳癌、乳癌、子宮頚癌、喉頭癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌、脊椎癌、胃癌、子宮癌、または軟組織肉腫をはじめとする、ほとんど総ての種類の固形腫瘍を処置するのに使用可能である。また、放射線は白血病およびリンパ腫(それぞれ造血細胞およびリンパ系の癌)を処置するのにも使用可能である。
【0023】
構造と生物学的特性が大きく異なる多数の化合物が癌の処置に用いるために使用または提案されており、それらのうちいくつかの例を「先行技術」の見出しの下節で示す。
【0024】
脈管形成の阻害
癌などの慢性増殖性疾患には多くの場合で著しい脈管形成が伴い、この脈管形成が炎症状態および/または増殖状態の一因となり、または炎症状態および/または増殖状態を維持し、あるいは血管の侵害的増殖を介して組織破壊をもたらす(Folkman, EXS, 79, 1-81 (1997); Folkman, Nature Medicine, 1, 27-31 (1995); Folkman and Shing, J. Biol. Chem., 267, 10931 (1992))。
【0025】
脈管形成は一般に、新しい、もしくは代わりの血管の発達、または新血管新生を表すのに用いられる。これは胚において血管が確立される必要かつ生理学的な、正常なプロセスである。一般に脈管形成は、排卵、月経および創傷治癒の部位を除き、大部分の正常な成体組織では見られない。しかしながら、多くの疾病が持続的で調節を受けない脈管形成を特徴としている。例えば、関節炎では、新しい毛細血管が関節に侵入し、軟骨を破壊する(Colville-Nash and Scott, Ann. Rhum. Dis., 51, 919 (1992))。糖尿病(および多くの異なる眼疾患)では、新しい血管が黄斑や網膜、または他の眼の構造に侵入し、失明を引き起こすこともある(Brooks, et al., Cell, 79, 1157 (1994))。アテローム性動脈硬化症のプロセスが脈管形成と関連づけられている(Kahlon, et al., Can. J. Cardiol., 8, 60 (1992))。腫瘍の増殖および転移は脈管形成に依存することが分かっている(Folkman, Cancer Biol, 3, 65 (1992); Denekamp, Br. J. Rad., 66, 181 (1993); Fidler and Ellis, Cell, 79, 185 (1994))。
【0026】
重大疾病に脈管形成が関与するという認識は脈管形成の阻害剤を同定および開発する研究を伴ってきた。これらの阻害剤は一般に脈管形成シグナルによる内皮細胞の活性化、分解酵素の合成および放出、内皮細胞の移動、内皮細胞の増殖、および毛細管の形成といった脈管形成カスケードの個々の標的に応じて分類されている。よって、脈管形成は多くの段階で見られ、これら種々の段階で脈管形成を遮断する働きをする化合物を発見および開発する試みが進行中である。
【0027】
様々な機構で働く脈管形成の阻害剤が癌および転移 (O’ Reilly, et al., Cell, 79, 315 (1994); Ingber, et al., Nature, 348, 555 (1990))、眼疾患(Friedlander, et al., Science, 270, 1500 (1995))、関節炎(Peacock, et al., J. Exp. Med., 175, 1135 (1992); Peacock et al., Cell. Inimun., 160, 178 (1995))および血管腫(Taraboletti, et al., J. Natl. Cancer Inst., 87, 293 (1995))などの疾病に有益であることを教示する刊行物がある。
【0028】
RTK
受容体チロシンキナーゼ(RTK)は、細胞の原形質膜をわたる生化学シグナルの伝達に重要である。これらのトランスメンブラン分子は特徴的には、原形質膜内のセグメントを介して細胞内チロシンキナーゼドメインと接続されている細胞外リガンド結合ドメインからなる。リガンドが受容体に結合すると、受容体に関連するチロシンキナーゼ活性が刺激され、その受容体と他の細胞内タンパク質の双方のチロシン残渣のリン酸化が起こり、様々な細胞応答をもたらす。これまでに、アミノ酸配列の相同性によって判定したところでは、少なくとも19種の異なるRTKサブファミリーが確認された。
【0029】
FGFR
シグナル伝達ポリペプチドの繊維芽細胞増殖因子(FGF)ファミリーは、有糸分裂、創傷治癒、細胞分化および脈管形成、ならびに発達をはじめとする多様な一連の生理学的機能を調節する。正常細胞および悪性細胞双方の成長および増殖は、これらの細胞外シグナル伝達分子の局部濃度の変化によって影響を受け、これらの細胞外シグナル伝達分子は自己分泌因子としてもパラ分泌因子としても働く。自己分泌型FGFシグナル伝達は特に、ステロイドホルモン依存性の癌の進行において、また、ホルモン非依存状態にとって重要である可能性がある(Powers, et al., Endocr. Relat. Cancer, 7, 165-197 (2000))。 FGFおよびそれらの受容体は数種の組織および細胞系統において高レベルで発現し、過剰発現は悪性表現型の一因であると考えられている。さらに、いくつかの癌遺伝子は増殖因子受容体をコードする遺伝子のホモログであり、ヒト膵臓癌ではねFGF依存性のシグナル伝達が異常に活性化されている可能性がある(Ozawa, et al., Teratog. Carcinog. Mutagen., 21, 27-44 (2001))。
【0030】
2つの基本型のメンバーとしては酸性繊維芽細胞増殖因子(aFGFまたはFGF1)と塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGFまたはFGF2)であり、これまでに、少なくとも20種の異なるFGFファミリーメンバーが確認されている。FGFに対する細胞応答は、高親和性トランスメンブランチロシン−キナーゼ繊維芽細胞増殖因子受容体1〜4番(FGFR−1〜FGFR−4)の4つの種類を介して伝達される。リガンドが結合すると、受容体は二量体化し、特定の細胞質チロシン残基を自己リン酸化またはトランスリン酸化して細胞内シグナルを伝達し、それが最終的には核転写因子エフェクターに達する。
【0031】
FGFR−1経路の破壊は、このキナーゼが内皮細胞を増殖させることに加えて多くの腫瘍種で活性化されていることから、腫瘍細胞の増殖に影響を及ぼすはずである。腫瘍関連血管でのFGFR−1の過剰発現および活性化は、腫瘍の脈管形成におけるこれらの分子の役割を示唆している。
【0032】
繊維芽細胞増殖因子受容体2は酸性および/または塩基性繊維芽細胞増殖因子、ならびにケラチノサイト増殖因子リガンドに対して高い親和性を有する。繊維芽細胞増殖因子受容体2はまた、骨芽細胞の増殖と分化の間にFGFの強力な造骨作用を増幅する。複雑な機能変化をもたらす繊維芽細胞増殖因子受容体2における突然変異は、頭蓋構造の異常な骨化(頭蓋骨癒合)を誘導することが示されており、膜内骨形成におけるFGFRシグナル伝達の主要な役割を示唆している。例えば、未熟な頭蓋構造の骨化を特徴とするアペール(AP)症候群では、大部分が繊維芽細胞増殖因子受容体2における機能獲得を生じる点突然変異と関連している(Lemonnier, et al., J. Bone Miner. Res., 16, 832-845 (2001))。
【0033】
アペール症候群、クルーゾン症候群、ジャクソン−ワイス症候群、ベーレ−スチーブンソン脳回状頭皮症候群、およびプファイファー症候群をはじめとするいくつかの重大なヒト骨格発達異常が繊維芽細胞増殖因子受容体2における突然変異の発生と関連している。プファイファー症候群(PS)の、総てはないにしても大部分の症例がまた、繊維芽細胞増殖因子受容体2遺伝子のde novo突然変異によっても引き起こされ(Meyers, et al., Am. J. Hum. Genet., 58, 491-498 (1996); Plomp, et al., Am. J. Med. Genet., 75, 245-251 (1998))、最近では、繊維芽細胞増殖因子受容体2における突然変異がリガンドの特異性を支配する主要な規則の1つを解くことが示されている。すなわち、繊維芽細胞増殖因子受容体の2つの突然変異スプライス型FGFR2cとFGFR2bが、非定型FGFリガンドと結合し、それにより活性化される能力を獲得したのである。このリガンド特異性の消失はシグナル伝達異常をもたらすが、このことはこれらの病的症候群の重篤な表現型が異所性リガンドに依存する繊維芽細胞増殖因子受容体2の活性化によるものであることを示唆している(Yu, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 97, 14536-14541 (2000))。
【0034】
染色体転座または点突然変異などのFGF−R3受容体チロシンキナーゼの活性化合突然変異は、調節を受けない、構成的に活性なFGF−R3受容体を生じ、これらは多発性骨髄腫、膀胱癌および子宮頚癌に関連づけられている(Powers, C.J., et al., Endocr. Rel. Cancer, 7, 165 (2000))。よって、FGFR−3阻害は多発性骨髄腫、膀胱癌および子宮頚癌の処置に有用であると考えられる。
【0035】
VEGFR
ポリペプチドである血管内皮増殖因子(VEGF)はin vitroでは内皮細胞に対して有糸分裂誘発性があり、in vivoでは脈管形成誘発応答を刺激する。VEGFはまた、不適切な脈管形成と関連づけられている(Pinedo, H.M., et al., The Oncologist, 5(90001), 1-2 (2000))。VEGFRは、タンパク質チロシンキナーゼ(PTK)である。PTKは、細胞の増殖と分化の調節に関与するタンパク質において特定のチロシル残基のリン酸化を触媒する(Wilks, A.F., Progress in Growth Factor Research, 2, 97-111 (1990); Courtneidge, S.A., Dev. Supp. 1, 57-64 (1993); Cooper, J.A., Semin. Cell Biol., 5(6), 377-387 (1994); Paulson, R.F., Semin. Immunol., 7(4), 267-277 (1995); Chan, A. C., Curr. Opin. Immunol., 8(3), 394-401 (1996))。
【0036】
VEGFに対しては、VEGFR−1(Flt−1);VEGFR−2(Flk−1またはKDR)およびVEGFR−3(Flt−4)の3つのPTK受容体が確認されている。これらの受容体は脈管形成に関与し、シグナル伝達に加わっている(Mustonen, T., et al., J. Cell Biol., 129, 895-898 (1995))。
【0037】
特に注目されるのは、主として内皮細胞で発現されるトランスメンブラン受容体PTKであるVEGFR−2である。VEGFによるVEGFR−2の活性化は、腫瘍の脈管形成を始動するシグナル伝達経路の重要な段階である。VEGFの発現は腫瘍細胞では構成的なものである可能性があり、また、特定の刺激に応答してアップレギュレーションされる場合がある。このような刺激の1つに低酸素症があり、この場合、VEGFの発現は腫瘍および関連の宿主細胞の双方でアップレギュレーションされる。VEGFリガンドは、その細胞外VEGF結合部位と結合することによりVEGFR−2を活性化する。これによりVEGFRの受容体二量体化が起こり、VEGFR−2の細胞内キナーゼドメインのチロシン残基が自己リン酸化される。このキナーゼドメインはATPからチロシン残基へリン酸基を転移する働きをし、これによりVEGFR−2の下流のシグナル伝達タンパク質に結合部位を提供し、最終的には脈管形成の開始へ導く(McMahon, G., The Oncologist, 5(90001), 3-10 (2000))。
【0038】
VEGFR−2のキナーゼドメイン結合部位を阻害すると、チロシン残基のリン酸化が遮断され、脈管形成の開始を妨げるのに役立つ。
【0039】
TIE
内皮特異的受容体チロシンキナーゼTIE−2に対するリガンドアンギオポエテン1(Angl)は新規な脈管形成因子である(Davis, et al., Cell, 87, 1161-1169 (1996); Partanen, et al., Mol. Cell Biol., 12, 1698-1707 (1992);米国特許第5,521,073号;同第5,879,672号;同第5,877,020号;および同第6,030,831号)。頭文字のTIEは「IgおよびEGF相同性ドメインを含むチロシンキナーゼ」を表す。TIEは血管内皮細胞および初期造血細胞でもっぱら発現される受容体チロシンキナーゼのクラスを同定するのに用いられる。一般に、TIE受容体キナーゼは、EGF様ドメインと、鎖内ジスルフィド結合によって安定化される、細胞外フォールディングユニットからなる免疫グロブリン(IG)様ドメインの存在を特徴とする(Partanen, et al., Curr. Topics Microbiol. Immuszol., 237, 159-172 (1999))。血管発達の初期段階で働くVEGFとは異なり、Ang1とその受容体TIE−2は、その後の血管発達段階、すなわち、血管の再構築(再構築とは、血管内腔の形成をさす)および成熟の際に働く(Yancopoulos, et al., Cell, 93, 661-664 (1998); Peters, K. G., Circ. Res., 83(3), 342-3 (1998); Suri, et al., Cell, 87, 1171-1180 (1996))。
【0040】
結果として、TIE−2の阻害は、脈管形成により開始される新しい血管の再構築および成熟を妨げ、それにより、脈管形成プロセスを妨げるのに役立つ。
【0041】
Eph
受容体チロシンキナーゼ(RTK)の最大のサブファミリーであるEphファミリー、およびそれらのリガンド(エフリン)は生理学的血管プロセスおよび病的な血管プロセスに重要な役割を果たす。Eph(受容体)とエフリン(リガンド)は双方ともAサブファミリーとBサブファミリーの2群に分類される(Eph Nomenclature Committee, 1997)。エフリンリガンドのEph受容体への結合は細胞−細胞相互作用に依存している。エフリンとEphの相互作用は、最近、二方向シグナル伝達を介して機能することが示されている。Eph受容体に対するエフリンの結合は、Eph受容体の細胞質ドメイン内の特定のチロシン残基においてリン酸化を開始する。Eph受容体結合に応答して、エフリンリガンドもまた、チロシンリン酸化、いわゆる「逆」シグナル伝達を受ける(Holland, S.J., et al., Nature, 383, 722-725 (1996); Bruckner et al, Science 275: 1640-1643 (1997))。
【0042】
Eph RTKおよびそれらのエフリンリガンドは胎児の血管発達に重要な役割を果たす。特定のEph受容体とリガンド(エフリン−B2を含む)を破壊すると、血管再構築、組織化および出芽に欠陥が生じ、その結果、胎児が死に至る(Wang, H.U., et al., Cell, 93: 741-753 (1998); Adams, R.H., et al., Genes Dev, 13, 295-306 (1999); Gale and Yancopoulos, Genes Dev, 13, 1055-1066 (1999); Helbling, P.M., et al., Development, 127, 269-278 (2000))。Eph/エフリン系の協調発現は胎児の血管構造の表現型を決定し、エフリン−B2は動脈の内皮細胞(EC)に存在し、EphB4は静脈のECに存在する(Gale and Yancopoulos, Genes Dev, 13, 1055-1066 (1999); Shin, D., et al., Dev Biol, 230, 139-150 (2001))。最近になって、特定のEphとエフリンが腫瘍増殖および脈管形成に関連づけられている。
【0043】
Ephおよびエフリンは、多くのヒト腫瘍で過剰発現することが分かっている。特に、小細胞肺癌(Tang, X.X., et al., Clin Cancer Res, 5, 455-460 (1999))、ヒト神経芽腫(Tang, X.X., et al., Clin Cancer Res, 5, 1491-1496 (1999))および結腸直腸癌(Liu, W., et al., Brit. J. Cane., 90, 1620-1626 (2004)) でEphB2の役割が確認されており、EphB2をはじめEphおよびエフリンのより高い発現は、より侵襲性が高く、より転移性が高い腫瘍と相関することが分かっている(Nakamoto, M. and Bergemann, A.D., Microsc. Res. Tech, 59, 58-67 (2002))。
【0044】
結果として、EphB2の阻害は脈管形成、特に、過剰発現が見られる特定の腫瘍での脈管形成を妨げるのに役立つものと思われる。
【0045】
先行技術
米国特許第6,414,013号(Pharmacia & Upjohn)は、キナーゼ阻害剤としての活性を有し、癌、関節炎および自己免疫疾患をはじめとする種々の疾病の処置に有用であると考えられる3−アミノカルボニル−2−カルボキサミドチオフェンを開示している。
【0046】
米国特許第4,767,758号(CNDR)は、腫瘍の処置に有用なチオフェン類似体を開示している。これらのチオフェンはアミド置換基を含み得る。
【0047】
WO00/71535(Scios Inc.)は、p38キナーゼの阻害剤としてのインドール型化合物を開示している。
WO93/1408(Smith-Kline Beecham)は、p38 MAPキナーゼの阻害剤としての1,3,4−トリアリールイミダゾールを開示している。
【0048】
WO99/15164(Zeneca)は、p38活性の阻害を示す種々のビス−ベンズアミドフェニル誘導体化合物を開示している。
WO99/00357(Vertex)は、p38 MAPキナーゼ阻害剤としてのさらなるクラスのジアリール尿素化合物を開示している。
【0049】
WO03/004020(Boehringer Ingelheim)は、1つのアミド基が、そのオルト位に直接、または介在リンカー原子またはリンカー基を介して結合した炭素環式基または複素環式基を有するフェニル基、ピリジル基またはピリミジニル基を含む、ヘテロアリールジアミド種を開示している。これらの化合物はミクロソームトリグリセリドトランスファータンパク質の阻害剤であることから、血漿のリポタンパク質レベルを低下させるのに有用であると記載されている。
【0050】
WO96/41795(Fujisawa)は、バソプレシンアンタゴニストとして有用なチオフェンジアミドを開示している。
WO94/04525(Otsuka)は、ベンズアゼピン基の窒素原子が、チオフェンなどの複素環式環を含み得るアミド基と結合している、ベンズアゼピンおよびアザ類似体を開示している。これらの化合物は、バソプレシンアンタゴニストおよびオキシトシンアンタゴニストである。 EP0592167
(Zeneca)は、アミド結合を介してチオフェン基と結合可能な、場合によりN−置換していてもよいピロリジン環を含む抗生物質チオペネム誘導体を開示している。
【0051】
A. Khalaf et al. Tetrahedron, (2000), 56(29), 5225-5239は、5−ニトロ−2−チオフェニル基を含むチオフェンジアミドを記載している。この化合物はDNA副溝結合剤であると述べられている。
【0052】
日本国特許第10212271号(Zeria)(Chem. Abstract 129:202763)は、消化管障害の処置に有用な化合物種を記載している。これらの化合物はチオフェンカルボン酸アミド基を含み得るアミドである。また、対応するカルボン酸エステルも中間体として開示されている。
【0053】
日本国特許第05230009号(Taisho)は、血小板活性化因子(PAF)化合物の阻害剤として5−(4−カルバムイミドイル−ベンゾイルアミノ)−チオフェン−2−カルボン酸のN−置換アミドを開示している。このアミドN−置換基は、カルボン酸またはアルコキシカルボニル基を末端に有するアルキレン鎖を含む。
【0054】
WO01/40223は、殺虫性の置換アミノヘテロシクリルアミド種を開示している。
Gewald et al., J. fur Prakt. Chem., (Leipzig), (1991), 333(2), 229-36は、2−アミノチオフェン−3−カルボニトリルとヘテロクムレンとの反応を記載している。この文献は、各窒素原子が2−エトキシカルボニル−3−メチル−4−シアノチエン−2イル基を有する尿素を開示している。
【0055】
米国特許第5,571,810号(Fujisawa)は、抗炎症性と鎮痛性を有し、関節リウマチをはじめとする一連の疾病の処置に有用であると考えられる2,3−ジアリールチオフェンを記載している。
【0056】
WO99/32455(Bayer)は、rafキナーゼ阻害剤として働く一連のフェニルイミダゾリル尿素を記載している。
WO01/98301(Japan Tobacco)は、繊維症を予防または抑制するピラゾロピリジン化合物種を開示している。
【0057】
WO98/52558(Bayer Corporation)は、p38 MAPキナーゼ阻害剤としてのアリール尿素種を記載している。アリール尿素はチオフェン単位を含み得る。
EP1253142は、トロンボポエチン受容体アゴニストとしての種々のヘテロアリール化合物を開示している。
【0058】
WO01/40223は、殺虫性の置換アミノヘテロシクリルアミド種を開示している。
A. R. Redman et alによるBioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 11, 9-12, (2001)における文献は、p38キナーゼ阻害活性を有するチエニル化合物、特に、チエニル尿素を記載している。Redman et alに開示されている化合物は、そのチオフェン環の3位にアリールウレイド基が存在することを特徴とする。
【0059】
WO99/32111およびWO99/32463(双方ともBayer Corporationに対するもの)はそれぞれ、MAPキナーゼ阻害剤としてのジアリール/ヘテロアリール尿素化合物種を開示している。これらの化合物は5−置換チオフェン−2−イル基を含み得るが、モルホリノ−メチル基を含む化合物は開示されていない。
【0060】
WO99/32106(Bayer Corporation)は、rafキナーゼ阻害剤として用いるための、WO99/32111と同様の構造の化合物種を開示している。
WO99/32477(Schering)は、抗凝固薬としての複素環式アミド誘導体を開示している。
【0061】
EP0716855およびWO95/10513(双方ともPfizerに対するもの)はそれぞれ、エストロゲンアゴニスト活性を有するベンズチオフェン化合物を記載している。
【発明の概要】
【0062】
本発明は、p38 MAPキナーゼ阻害活性または調整活性を有し、p38 MAPキナーゼにより媒介される病態または症状の予防または処置に有用であると考えられる、さらなる化合物種を提供する。
【0063】
本発明はまた、rafキナーゼを阻害する化合物、および癌の処置または予防に、また望ましくない脈管形成の阻害または予防に有用であると考えられる化合物を提供する。
【0064】
よって、第1の態様において、本発明は、
式(I):
【化1】

[式中、
およびRは同じであるか、または異なり、それぞれ水素、飽和C1−3ヒドロカルビル、ハロゲンおよびシアノから選択され;
Xは、C=O、C=S、C(=O)NH、C(=S)NH、C(=O)O、C(=O)S、C(=S)OおよびC(=S)Sから選択され;
は、それぞれ5〜12個の環員を有し、非置換であるか、または1以上の置換基R10により置換されているアリール基およびヘテロアリール基から選択され;
10は、ハロゲン、ヒドロキシ、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、カルボキシ、アミノ、モノ−またはジ−C1−4ヒドロカルビルアミノ、3〜12個の環員を有する炭素環式基および複素環式基;基R−R[ここで、Rは、結合、O、CO、XC(X)、C(X)X、XC(X)X、S、SO、SO、NR、SONRまたはNRSOであり;かつ、Rは水素、3〜12個の環員を有する炭素環式基および複素環式、ならびにヒドロキシ、オキソ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、カルボキシ、アミノ、モノ−またはジ−C1−4ヒドロカルビルアミノ、3〜12個の環員を有する炭素環式基および複素環式から選択される1以上の置換基によって場合により置換されていてもよいC1−8ヒドロカルビル基(なお、このC1−8ヒドロカルビル基の1以上の炭素原子はO、S、SO、SO、NR、XC(X)、C(X)XまたはXC(X)X基によって場合によって置換されていてもよい)から選択される]から選択されるか;または隣接する2つの基R10は、それらが結合している炭素原子またはヘテロ原子と一緒になって、5員ヘテロアリール環または5員もしくは6員の非芳香族複素環式環を形成してもよく、ここで、これらのヘテロアリール基および複素環式基はN、OおよびSから選択される3個までのヘテロ原子環員を含み;
は水素およびC1−4ヒドロカルビルから選択され;かつ
はO、SまたはNRであり、Xは=O、=Sまたは=NRであり;
およびRは同じであるか、または異なり、水素およびメチルから選択されるか;またはRおよびRの一方がヒドロキシメチルおよびエチルから選択され、他方が水素であり;かつ
およびRは同じであるか、または異なり、水素およびメチルから選択される]で示される化合物、またはその塩、溶媒和物もしくはN−オキシドを提供する。
【0065】
本発明はさらに次のものを提供する。
・上記で定義された種の病態または症状を予防または処置する方法であって、それを必要とする被験体(例えば、ヒト被験体)に、本明細書で定義される式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)もしくは(VI)またはそのいずれかのサブグループの化合物を投与することを含む、方法。
【0066】
・p38 MAPキナーゼにより媒介される病態または症状の予防または処置に用いるための、本明細書で定義される式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)もしくは(VI)またはそのいずれかのサブグループの化合物。
【0067】
・p38 MAPキナーゼにより媒介される病態または症状の予防または処置を目的とする薬剤の製造のための、本明細書で定義される式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)もしくは(VI)またはそのいずれかのサブグループの化合物の使用。
【0068】
・p38 MAPキナーゼにより媒介される病態または症状を予防または処置する方法であって、それを必要とする被験体(例えば、ヒト被験体)に、本明細書で定義される式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)もしくは(VI)またはそのいずれかのサブグループの化合物を投与することを含む、方法。・p38 MAPキナーゼを阻害する方法であって、p38 MAPキナーゼを本明細書で定義される式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)もしくは(VI)またはそのいずれかのサブグループのキナーゼ阻害化合物と接触させることを含む、方法。
【0069】
・本明細書で定義される式(I)の化合物を用い、p38 MAPキナーゼの活性を阻害することにより細胞プロセスを調整する方法であって、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)もしくは(VI)またはそのいずれかのサブグループの化合物を、p38 MAPキナーゼを含む細胞環境と接触させることを含む、方法。
【0070】
さらなる態様において、本発明は、医学に用いるため、特に、治療法に用いるための式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)もしくは(VI)またはそのいずれかのサブグループの化合物を提供する。
【0071】
もう1つの態様において、本発明は、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)もしくは(VI)またはそのいずれかのサブグループの化合物を、医薬上許容される担体とともに含んでなる医薬組成物を提供する。
【0072】
さらなる態様において、本発明はまた、以下を提供する。
・癌の予防または処置を目的とする薬剤の製造のための、本明細書で定義される式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)もしくは(VI)またはそのいずれかのサブグループの化合物の使用。
・癌の処置または予防に用いるための、本明細書で定義される式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)もしくは(VI)またはそのいずれかのサブグループの化合物。
【0073】
・哺乳類において異常な細胞増殖を含む、または異常な細胞増殖から起こる疾病または症状を処置する方法であって、その哺乳類に、治療上有効な量の、本明細書で定義される式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)もしくは(VI)またはそのいずれかのサブグループの化合物を投与することを含む、方法。・異常な細胞増殖から起こる病態または症状の予防または処置を目的とする薬剤の製造のための、本明細書で定義される式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)もしくは(VI)またはそのいずれかのサブグループの化合物の使用。・哺乳類において異常な細胞増殖を含む、または異常な細胞増殖から起こる疾病または症状を処置する方法であって、その哺乳類に本明細書で定義される式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)もしくは(VI)またはそのいずれかのサブグループの化合物を、異常な細胞増殖を阻害するのに有効な量で投与することを含む、方法。
【0074】
・哺乳類において異常な細胞増殖を含む、または異常な細胞増殖から起こる疾病または症状の罹患率を緩和または低減する方法であって、その哺乳類に本明細書で定義される式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)もしくは(VI)またはそのいずれかのサブグループの化合物を、異常な細胞増殖を阻害するのに有効な量で投与することを含む、方法。・本明細書に開示される病態または症状の罹患率を緩和または低減する方法であって、患者(例えば、それを必要とする患者)に本明細書で定義される式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)もしくは(VI)またはそのいずれかのサブグループの化合物(例えば、治療上有効な量)を投与することを含む、方法。
【0075】
・rafキナーゼ(B−rafまたはC−rafなど)により媒介される病態または症状の予防または処置に用いるための、本明細書で定義される式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)もしくは(VI)またはそのいずれかのサブグループの化合物。・rafキナーゼ(B−rafまたはC−rafなど)により媒介される病態または症状の予防または処置を目的とする薬剤の製造のための、本明細書で定義される式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)もしくは(VI)またはそのいずれかのサブグループの化合物の使用。・rafキナーゼ(B−rafまたはC−rafなど)により媒介される病態または症状を予防または処置する方法であって、それを必要とする被験体に本明細書で定義される式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)もしくは(VI)またはそのいずれかのサブグループの化合物を投与することを含む、方法。・哺乳類において異常な細胞増殖を含む、または異常な細胞増殖から起こる疾病または症状を処置する方法であって、その哺乳類に本明細書で定義される式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)もしくは(VI)またはそのいずれかのサブグループの化合物を、rafキナーゼ(B−rafまたはC−rafなど)活性を阻害するのに有効な量で投与することを含む、方法。・rafキナーゼ(B−rafまたはC−rafなど)を阻害する方法であって、そのキナーゼを、本明細書で定義される式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)もしくは(VI)またはそのいずれかのサブグループのキナーゼ阻害化合物と接触させることを含む、方法。
【0076】
・本明細書で定義される式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)もしくは(VI)またはそのいずれかのサブグループの化合物を用い、rafキナーゼ(B−rafまたはC−rafなど)の活性を阻害することにより細胞プロセス(例えば、増殖または細胞分裂)を調整する方法。・rafキナーゼ(B−rafまたはC−rafなど)により媒介される病態または症状の診断および処置方法であって、(i)患者を、患者が罹患しているか、または罹患している可能性のある疾病または症状が、rafキナーゼ(B−rafまたはC−rafなど)に対して活性を有する化合物による処置に感受性があるものであるかどうかを判定するスクリーニングにかけること;および(ii)患者の疾病または症状にそのような感受性があることが示された場合は、その後、その患者に本明細書で定義される式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)もしくは(VI)またはそのいずれかのサブグループの化合物を投与することを含む、方法。
【0077】
・スクリーニングを受け、rafキナーゼ(B−rafまたはC−rafなど)に対して活性を有する化合物による処置に感受性があると考えられる病態または症状に罹患している、または罹患するリスクがあると判定された患者における病態または症状の処置または予防を目的とする薬剤の製造のための、本明細書で定義される式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)もしくは(VI)またはそのいずれかのサブグループの化合物の使用。
【0078】
・不適切な、または過剰な、または望ましくない脈管形成の予防または処置において用いるための、本明細書で定義される式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)もしくは(VI)またはそのいずれかのサブグループの化合物。
【0079】
・不適切な、または過剰な、または望ましくない脈管形成の予防または処置を目的とする薬剤の製造のための、本明細書で定義される式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)もしくは(VI)またはそのいずれかのサブグループの化合物の使用。
【0080】
・受容体チロシンキナーゼ、特に、FGFR、Tie、VEGFRおよび/またはEph(より詳しくは、FGFR−1、FGFR−2、FGFR−3、Tie2、VEGFR−2およびEphB2から選択されるチロシンキナーゼ)のアップレギュレーションを特徴とする疾病または症状の予防または処置または緩和に用いるための、本明細書で定義される式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)もしくは(VI)またはそのいずれかのサブグループの化合物。
【0081】
・受容体チロシンキナーゼ、特に、FGFR、Tie、VEGFRおよび/またはEph(より詳しくは、FGFR−1、FGFR−2、FGFR−3、Tie2、VEGFR−2およびEphB2から選択されるチロシンキナーゼ)のアップレギュレーションを特徴とする疾病または症状の予防または処置または緩和を目的とする薬剤の製造のための、本明細書で定義される式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)もしくは(VI)またはそのいずれかのサブグループの化合物の使用。・in vitroまたはin vivoにおいて脈管形成を阻害する方法であって、細胞を、有効量の、本明細書で定義される式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)もしくは(VI)またはそのいずれかのサブグループの化合物と接触させることを含む、方法。
【0082】
・不適切な、または過剰な、または望ましくない脈管形成を処置または緩和する方法であって、脈管形成の阻害により緩和される該疾病または症状に罹患している被験体に、治療上有効な量の、本明細書で定義される式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)もしくは(VI)またはそのいずれかのサブグループの化合物を投与することを含む、方法。
【0083】
・受容体チロシンキナーゼのアップレギュレーションを特徴とする疾病または症状、好ましくは癌を処置する方法であって、
(i)受容体チロシンキナーゼ(例えば、FGFR、Tie、VEGFRおよびEphから、より詳しくは、FGFR−1、FGFR−2、FGFR−3、Tie2、VEGFR−2およびEphB2から選択される受容体チロシンキナーゼ)のアップレギュレーションまたはその活性化突然変異体を特徴とする疾病または症状、好ましくは癌に罹患している被験体を診断すること;および
(ii)前記被験体に治療上有効な量の、本明細書で定義される式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)もしくは(VI)またはそのいずれかのサブグループの化合物を投与すること
を含む、方法。
【0084】
・(a)rasまたはrafの活性化突然変異体;
(b)rasまたはrafのアップレギュレーション;
(c)アップレギュレーションされたraf−MEK−ERK経路シグナル;または
(d)ERB2およびEGFRなどの増殖因子受容体のアップレギュレーション
を伴う疾病、例えば癌を処置する方法であって、
(i)下記:
(a)rasまたはrafの活性化突然変異体;
(b)rasまたはrafのアップレギュレーション;
(c)アップレギュレーションされたraf−MEK−ERK経路シグナル;または
(d)ERB2およびEGFRなどの増殖因子受容体のアップレギュレーション
を伴う疾病に罹患している被験体を診断すること;
(ii)前記被験体に治療上有効な量の、本明細書で定義される式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)もしくは(VI)またはそのいずれかのサブグループのrafキナーゼ阻害化合物を投与すること
を含む、方法。
【0085】
一般的な好ましい選択肢および定義
本明細書において、式(I)の化合物とは、特に断りのない限り、式(I)の例または実施形態であるいずれかのサブグループ(例えば、式(II)、(III)、(IV)、(V)または(VI))も含む。従って、例えば、とりわけ治療的使用、医薬処方物および化合物を製造する方法という場合には、式(I)についていえば、式(I)の化合物の他のいずれかのサブグループまたは実施形態も指すものとする。同様に、式(I)の化合物に関して実施形態および例が示される場合、特に断りのない限り、式(I)のいずれのサブループまたは実施形態も適用可能である。
【0086】
本明細書において、「キナーゼのアップレギュレーション」とは、遺伝子増幅(すなわち、多重遺伝子コピー)および転写作用による発現の増強をはじめとする、キナーゼの発現の上昇または過剰発現、ならびにおよび突然変異による活性化をはじめとする、キナーゼの機能亢進および活性化を含む。
【0087】
以下の一般的な言及および定義は、特に断りのない限り、部分R〜R、R10、R、R、R、X、XおよびXのそれぞれ、ならびにそのいずれかのサブグループまたは実施形態に当てはまる。
【0088】
本明細書において「炭素環式」および「複素環式」基とは、Rに関しても、そのサブグループまたはその他のものに関しても、特に断りのない限り、芳香族および非芳香環系の双方を含む。一般に、このような基は単環式または二環式であってよく、例えば、3〜12個の環員、より一般には5〜10個の環員を含み得る。単環式基の例としては、3、4、5、6、7および8個の環員、より一般には3〜7個、好ましくは5または6個の環員を含む基がある。二環式の例としては、8、9、10、11および12個の環員、より一般には9または10個の環員を含むものがある。
【0089】
炭素環式基または複素環式基は5〜12個の環員、より一般には5〜10個の環員を有するアリールまたはヘテロアリール基であり得る。本明細書において「アリール」とは、芳香性を有する炭素環式基を意味し、本明細書で用いる「ヘテロアリール」とは、芳香性を有する複素環式基を表す。「アリール」および「ヘテロアリール」とは、1以上の環が非芳香族である(ただし、少なくとも1つの環は芳香族である)多環式(例えば、二環式)環系を包含する。このような多環式系では、この基は芳香環が結合していても、非芳香環が結合していてもよい。アリールまたはヘテロアリール基は単環式または二環式基であり得、非置換であっても、または1以上の置換基、例えば本明細書で定義される1以上の基R10で置換されていてもよい。
【0090】
非芳香基は、芳香性を持たない不飽和環系、部分的に飽和した、また完全に飽和した炭素環式環系および複素環式環系を包含する。「不飽和」および「部分的に飽和した」とは、その環構造が、1を超える結合価を有する原子を含む、すなわち、その環が少なくとも1つの多重結合、例えば、C=C、C≡CまたはN=C結合を含む。「完全に飽和した」とは、環原子間に多重結合が存在する環を意味する。飽和炭素環式基としては、下記に定義されるシクロアルキル基が挙げられる。部分飽和炭素環式基としては、下記に定義されるシクロアルケニル基、例えば、シクロペンテニル、シクロヘプテニルおよびシクロオクテニルが挙げられる。
【0091】
ヘテロアリール基の例としては、5〜12個の環員、より一般には5〜10個の環員を含む単環式基および二環式基がある。ヘテロアリール基は、例えば、5員または6員の環式環であるか、または縮合5員環および6員環または2つの縮合6員環から形成された二環構造であり得る。各環は、一般に窒素、硫黄および酸素から選択される約4個までのヘテロ原子を含み得る。一般に、ヘテロアリール環は、3個までのヘテロ原子、より一般には2個まで、例えば1個のヘテロ原子を含む。一実施形態では、ヘテロアリール環は、少なくとも1個の環窒素原子を含む。ヘテロアリール環の窒素原子は、イミダゾールもしくはピリジンの場合のように塩基性であってもよいし、またはインドールもしくはピロール窒素の場合のように実質的に非塩基性であってもよい。一般に、環のアミノ基置換基をはじめ、ヘテロアリール基に存在する塩基性窒素原子数は5個未満である。
【0092】
5員ヘテロアリール基の例としては、限定されるものではないが、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、フラザン、オキサゾール、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、イソキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、ピラゾール、トリアゾールおよびテトラゾール基が挙げられる。
【0093】
6員ヘテロアリール基の例としては、限定されるものではないが、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジンおよびトリアジンが挙げられる。
【0094】
二環式ヘテロアリール基は例えば、
a)1、2または3個の環ヘテロ原子を含む5員または6員環と縮合したベンゼン環;
b)1、2または3個の環ヘテロ原子を含む5員または6員環と縮合したピリジン環;
c)1または2個の環ヘテロ原子を含む5員または6員環と縮合したピリミジン環;
d)1、2または3個の環ヘテロ原子を含む5員または6員環と縮合したピロール環;
e)1または2個の環ヘテロ原子を含む5員または6員と縮合したピラゾール環;
f)1または2個の環ヘテロ原子を含む5員または6員環と縮合したイミダゾール環;
g)1または2個の環ヘテロ原子を含む5員または6員環と縮合したオキサゾール環;
h)1または2個の環ヘテロ原子を含む5員または6員環と縮合したイソキサゾール環;
i)1または2個の環ヘテロ原子を含む5員または6員環と縮合したチアゾール環;
j)1または2個の環ヘテロ原子を含む5員または6員環と縮合したイソチアゾール環;
k)1、2または3個の環ヘテロ原子を含む5員または6員環と縮合したチオフェン環;
l)1、2または3個の環ヘテロ原子を含む5員または6員環と縮合したフラン環;
m)1または2個の環ヘテロ原子を含む5員または6員環と縮合したオキサゾール環;
n)1または2個の環ヘテロ原子を含む5員または6員環と縮合したイソキサゾール環;
o)1、2または3個の環ヘテロ原子を含む5員または6員環と縮合したシクロヘキシル環;および
p)1、2または3個の環ヘテロ原子を含む5員または6員環と縮合したシクロペンチル環
から選択される基であり得る。
【0095】
5員環と縮合した6員環を含む二環式ヘテロアリール基の特定の例としては、限定されるものではないが、ベンズフラン、ベンズチオフェン、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズイソキサゾール、ベンズチアゾール、ベンズイソチアゾール、イソベンゾフラン、インドール、イソインドール、インドリジン、インドリン、イソインドリン、プリン(例えば、アデニン、グアニン)、インダゾール、ベンゾジオキソールおよびピラゾロピリジン、ピラゾロピリミジン、ピロロピリジン、ピロロピリミジンおよびピラゾロピリジン基が挙げられる。
【0096】
2つの縮合6員環を含む二環式ヘテロアリール基の特定の例としては、限定されるものではないが、キノリン、イソキノリン、クロマン、チオクロマン、クロメン、イソクロメン、クロマン、イソクロマン、ベンゾジオキサン、キノリジン、ベンゾキサジン、ベンゾジアジン、ピリドピリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、ナフチリジンおよびプテリジン基が挙げられる。
【0097】
芳香環と非芳香環を含む多環式アリールおよびヘテロアリール基の例としては、テトラヒドロナフタレン、テトラヒドロイソキノリン、テトラヒドロキノリン、ジヒドロベンズチエン、ジヒドロベンズフラン、2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]ジオキシン、ベンゾ[1,3]ジオキソール、4,5,6,7−テトラヒドロベンゾフラン、インドリンおよびインダン基が挙げられる。
【0098】
炭素環式アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、インデニル、およびテトラヒドロナフチル基が挙げられる。
非芳香族複素環式基の例としては、3〜12個の環員、一般には4〜12個の環員、より一般には5〜10個の環員を有する非置換型または置換型(1以上の基R10による)の複素環式基が挙げられる。このような基は例えば、単環式または二環式であり得、一般に窒素、酸素および硫黄から選択される、一般に1〜5個のヘテロ原子環員(より一般には、1、2、3または4個のヘテロ原子環員)を有する。
【0099】
硫黄が存在する場合、隣接する原子および基の性質が許せば、−S−、−S(O)−または−S(O)−として存在すればよい。
【0100】
複素環式基は、例えば、環状エーテル部分(例えば、テトラヒドロフランおよびジオキサン)、環状チオエーテル部分(例えば、テトラヒドロチオフェンおよびジチアンの場合)、環状アミン部分(例えば、ピロリジンの場合)、環状アミド部分(例えば、ピロリドンの場合)、環状尿素部分(例えば、イミダゾリジン−2−オンの場合)、環状チオ尿素部分、環状チオアミド、環状チオエステル、環状エステル部分(例えば、ブチロラクトンの場合)、環状スルホン(例えば、スルホランおよびスルホレンの場合)、環状スルホキシド、環状スルホンアミドおよびその組合せ(例えば、モルホリンおよびチオモルホリンならびにそのS−オキシドおよびS,S−ジオキシド)を含み得る。 化合物のあるサブグループでは、複素環式基は、例えば、環状エーテル部分(例えば、テトラヒドロフランおよびジオキサンの場合)、環状チオエーテル部分(例えば、テトラヒドロチオフェンおよびジチアンの場合)、環状アミン部分(例えば、ピロリジンの場合)、環状スルホン(例えば、スルホランおよびスルホレンの場合)、環状スルホキシド、環状スルホンアミドおよびその組合せ(例えば、チオモルホリン)を含み得る。
【0101】
単環式非芳香族複素環式基の例としては、5員、6員および7員の単環式複素環式基が挙げられる。特定の例としては、モルホリン、チオモルホリン、ならびにそのS−オキシド、およびS,S−ジオキシド(特に、チオモルホリン)、ピペリジン(例えば、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニルおよび4−ピペリジニル)、N−アルキル ピペリジン(N−メチルピペリジンなど)、ピペリドン、ピロリジン(例えば、1−ピロリジニル、2−ピロリジニルおよび3−ピロリジニル)、ピロリドン、アゼチジン、ピラン(2H−ピランまたは4H−ピラン)、ジヒドロチオフェン、ジヒドロピラン、ジヒドロフラン、ジヒドロチアゾール、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、ジオキサン、テトラヒドロピラン(例えば、4−テトラヒドロピラニル)、イミダゾリジン、イミダゾリジノン、オキサゾリン、チアゾリン、2−ピラゾリン、ピラゾリジン、ピペラゾン、ピペラジン、およびN−アルキルピペラジン(N−メチルピペラジン、N−エチルピペラジンおよびN−イソプロピルピペラジンなど)が挙げられる。一般に、好ましい非芳香族複素環式基としては、ピペリジン、ピロリジン、アゼチジン、モルホリン、ピペラジンおよびN−アルキルピペラジンが挙げられる。
【0102】
非芳香族複素環式基の1つのサブグループとしては、モルホリン、ピペリジン(例えば、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニルおよび4−ピペリジニル)、ピロリジン(例えば、1−ピロリジニル、2−ピロリジニルおよび3−ピロリジニル)、ピロリドン、ピラン(2H−ピランまたは4H−ピラン)、ジヒドロチオフェン、ジヒドロピラン、ジヒドロフラン、ジヒドロチアゾール、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、ジオキサン、テトラヒドロピラン(例えば、4−テトラヒドロピラニル)、イミダゾリン、イミダゾリジノン、オキサゾリン、チアゾリン、2−ピラゾリン、ピラゾリジン、ピペラジン、およびN−アルキルピペラジン(N−メチルピペラジンなど)からなる。このサブグループの中で、特定の非芳香族複素環式基としては、モルホリンおよびN−アルキルピペラジンが挙げられる。
【0103】
非芳香族炭素環式基の例としては、シクロアルカン基(シクロヘキシルおよびシクロペンチルなど)、シクロアルケニル基(シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニルおよびシクロオクテニルなど)、ならびにシクロヘキサジエニル、シクロオクタテトラエン、テトラヒドロナフテニルおよびデカリニルが挙げられる。
【0104】
好ましい非芳香族炭素環式基は単環式環であり、最も好ましくは、飽和単環式環である。
典型例は、3員、4員、5員および6員の飽和炭素環式環、例えば、場合によって置換されていてもよいシクロペンチルおよびシクロヘキシル環である。 非芳香族炭素環式基の1つのサブグループとしては、非置換型または置換型(1以上の基R10による)の単環式基、特に、飽和単環式基、例えば、シクロアルキル基が挙げられる。このようなシクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチル;より一般には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシル、特にシクロヘキシルが挙げられる。 非芳香族環式基のさらなる例としては、ビシクロアルカンおよびアザビシクロアルカンなどの架橋環構造が挙げられるが、このような架橋環構造は一般にあまり好ましくはない。「架橋環構造」とは、2つの環が2個を超える原子を共有している環構造を意味する(例えば、Advanced Organic Chemistry, Jerry March, 4th Edition, Wiley Interscience, pages 131-133, 1992参照)。架橋環構造の例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、アザ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、アザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン,ビシクロ[3.2.1]オクタンおよびアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタンが挙げられる。
【0105】
本明細書において炭素環式基および複素環式基という場合には、特に断りのない限り、非置換であっても、またはハロゲン、ヒドロキシ、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、カルボキシ、アミノ、モノ−もしくはジ−C1−4ヒドロカルビルアミノ、3〜12個の環員を有する炭素環式基および複素環式基;基R−R[ここで、Rは、結合、O、CO、XC(X)、C(X)X、XC(X)X、S、SO、SO、NR、SONRまたはNRSOであり;かつ、Rは水素、3〜12個の環員を有する炭素環式基および複素環式、ならびにヒドロキシ、オキソ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、カルボキシ、アミノ、モノ−またはジ−C1−4ヒドロカルビルアミノ、3〜12個の環員を有する炭素環式基および複素環式から選択される1以上の置換基によって場合により置換されていてもよいC1−8ヒドロカルビル基(なお、このC1−8ヒドロカルビル基の1以上の炭素原子はO、S、SO、SO、NR、XC(X)、C(X)XまたはXC(X)Xによって場合によって置換されていてもよい)から選択される]から選択される1以上の置換基R10により置換されていてもよく;あるいは、隣接する2つの基R10は、それらが結合している炭素原子またはヘテロ原子と一緒になって、5員ヘテロアリール環または5員もしくは6員の非芳香族複素環式環を形成していてもよく、ここで、これらのヘテロアリール基および複素環式基はN、OおよびSから選択される3個までのヘテロ原子環員を含み;
は水素およびC1−4ヒドロカルビルから選択され;かつ
はO、SまたはNRであり、Xは=O、=Sまたは=NRである。
【0106】
置換基R10が炭素環式基または複素環式基を含んでなる、または含む場合、該炭素環式基または複素環式基は非置換であっても、あるいはそれ自体、1以上のさらなる置換基R10で置換されていてもよい。式(I)の化合物の1つのサブグループでは、このようなさらなる置換基R10としては、一般にそれら自体はさらに置換されていない炭素環式基または複素環式基を含み得る。式(I)の化合物の別のサブグループでは、該さらなる置換基は炭素環式基または複素環式基を含まず、そうではなくて、上記のR10の定義において列挙した群から選択される。
【0107】
置換基R10は、それらが多くても20個の非水素原子、例えば、多くても15個の非水素原子、例えば、多くても12個、または10個、または9個、または8個、または7個、または6個、または5個の非水素原子を含むように選択することができる。
【0108】
炭素環式基および複素環式基が隣接する環原子上に一対の置換基を有する場合、その2つの置換基は連結され、環式基を形成していてもよい。例えば、環の隣接する炭素原子上の隣接する置換基対は、1以上のヘテロ原子および場合によって置換されていてもよいアルキレン基を介して連結され、縮合オキサ−、ジオキサ−、アザ−、ジアザ−またはオキサ−アザ−シクロアルキル基を形成していてもよい。
【0109】
このように連結した置換基の例としては、
【表1】

が挙げられる。
ハロゲン置換基の例としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられる。フッ素および塩素が特に好ましい。
【0110】
上記の式(I)の化合物の定義において、本明細書において「ドロカルビル」とは、特に断りのない限り、総て炭素の主鎖を有し、かつ、炭素原子と水素原子からなる脂肪族基、脂環式基および芳香基を含む一般用語である。ヒドロカルビル基は飽和型であっても不飽和型であってもよく、「飽和型」とは、そのヒドロカルビルが隣接する炭素原子間に多重結合を含まないことを意味し、「不飽和型」とは、その基の隣接する炭素原子の少なくとも1つが多重結合により連結されていることを意味し、かつ/またはこのヒドロカルビル基は芳香性を有する。
【0111】
ヒドロカルビル基の例としては、アルキルおよびシクロアルキルなどの飽和基、ならびにシクロアルケニル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニルアルキル、アラルキル、アラルケニルおよびアラルキニル基などの、種々の不飽和度を有する基が挙げられる。このような基は、非置換であっても、または記載されている場合は、本明細書に定義される1以上の置換基により置換されていてもよい。ある場合には、本明細書で定義されるように、炭素主鎖を構成する1以上の炭素原子は、特定の基または原子群によって置換されていてもよい。以下で示す例および好ましいものは、特に断りのない限り、本明細書に定義される式(I)の化合物またはそのサブグループに対する置換基の種々の定義において言及される、ヒドロカルビル置換基またはヒドロカルビル含有置換基のそれぞれに当てはまる。
【0112】
一般的に、例えば、ヒドロカルビル基は、特に断りのない限り、8個までの炭素原子を有し得る。1〜8個の炭素原子を有するヒドロカルビル基のサブセットの範囲内で、特定の例としては、C1−6ヒドロカルビル基、例えば、C1−4ヒドロカルビル基(例えば、C1−3ヒドロカルビル基またはC1−2ヒドロカルビル基)が挙げられ、具体例として、C、C、C、C、C、C、CおよびCヒドロカルビル基から選択されるいずれかの個々の値または値の組合せが挙げられる。
【0113】
「飽和ヒドロカルビル」とは、単独で用いる場合でも、「オキシ」などの接尾語とともに用いる場合(例えば、「ヒドロカルビルオキシ」の場合)でも、C=CおよびC≡Cなどの多重結合を含む非芳香族炭化水素基(例えば、アルキルおよびシクロアルキル)を意味する。
「アルキル」とは、直鎖および分岐鎖双方のアルキル基を含む。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2−メチルブチル、3−メチルブチルおよびn−ヘキシルおよびその異性体が挙げられる。1〜8個の炭素原子を有するアルキル基のサブセットの範囲内で、特定の例としては、C1−6アルキル基、例えば、C1−4アルキル基(例えば、C1−3アルキル基またはC1−2アルキル基)が挙げられる。
シクロアルキル基としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンおよびシクロヘプタンから得られるものがある。シクロアルキル基のサブセットの範囲内で、シクロアルキル基は3〜8個の炭素原子を有し、特定の例としてはC3−6シクロアルキル基がある。
【0114】
アルケニル基の例としては、限定されるものではないが、エテニル(ビニル)、1−プロペニル、2−プロペニル(アリル)、イソプロペニル、ブテニル、ブタ−1,4−ジエニル、ペンテニル、およびヘキセニルが挙げられる。アルケニル基のサブセットの範囲内で、アルケニル基は2〜8個の炭素原子を有し、特定の例としては、C2−6アルケニル基、例えば、C2−4アルケニル基が挙げられる。
【0115】
シクロアルケニル基の例としては、限定されるものではないが、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニルおよびシクロヘキセニルが挙げられる。シクロアルケニル基のサブセットの範囲内で、シクロアルケニル基は、3〜8個の炭素原子を有し、特定の例としてはC3−6シクロアルケニル基が挙げられる。
【0116】
アルキニル基の例としては、限定されるものではないが、エチニルおよび2−プロピニル(プロパルギル)基が挙げられる。2〜8個の炭素原子を有するアルキニル基のサブセットの範囲内で、特定の例としては、C2−6アルキニル基、例えば、C2−4アルキニル基が挙げられる。
【0117】
炭素環式アリール基(アリールヒドロカルビル基)としては、非置換フェニルおよび置換フェニル(例えば、トルエン、キシレンおよびメシチレン基など、アルキル基により置換されたフェニル)、ならびに非置換型および置換型のナフチル、インダンおよびインデン基が挙げられる。
【0118】
シクロアルキルアルキル、シクロアルケニルアルキル、炭素環式アラルキル、アラルケニルおよびアラルキニル基の例としては、フェネチル、ベンジル、スチリル、フェニルエチニル、シクロヘキシルメチル、シクロペンチルメチル、シクロブチルメチル、シクロプロピルメチルおよびシクロペンテニルメチル基が挙げられる。
【0119】
ヒドロカルビル基は、存在し、記載されている場合には、ヒドロキシ、オキソ、アルコキシ、カルボキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ−またはジ−C1−4ヒドロカルビルアミノならびに3〜12個(一般には3〜10個、より一般には5〜10個)の環員を有する単環式もしくは二環式の炭素環式基および複素環式基から選択される1以上の置換基により場合によって置換されていてもよい。好ましい置換基としては、フッ素などのハロゲンが挙げられる。従って、例えば、置換ヒドロカルビル基は、ジフルオロメチルまたはトリフルオロメチルなどの部分フッ素化基または過フッ素化基であり得る。一実施形態では、好ましい置換基として、3〜7個の環員を有する単環式の炭素環式基および複素環式基が挙げられる。
【0120】
記載されている場合、ヒドロカルビル基の1以上の炭素原子は、場合によって、O、S、SO、SO、NR、XC(X)、C(X)XまたはXC(X)X(式中、XおよびXは、上記で定義した通りである)(またはそのサブグループ)により置換されていてもよい(ただし、ヒドロカルビル基の少なくとも1つの炭素原子はそのままである)。例えば、ヒドロカルビル基の1個、2個、3個または4個の炭素原子は、列挙した原子または基のうちの1つにより置換されていてもよく、置換する原子または基は同じであっても異なっていてもよい。一般に、置換されている直鎖または主鎖炭素原子の数は、それらを置換している基の直鎖または主鎖炭素原子の数に相当している。ヒドロカルビル基の1以上の炭素原子が上記で定義された置換原子または基により置換されている基の例としては、エーテルおよびチオエーテル(CがOまたはSにより置換)、アミド、エステル、チオアミドおよびチオエステル(C−CがXC(X)またはC(X)Xにより置換)、スルホンおよびスルホキシド(CがSOまたはSOにより置換)、アミン(CがNRにより置換)が挙げられる。さらなる例としては、尿素、カーボネートおよびカルバメート(C−C−CがXC(X)X)により置換)が挙げられる。
【0121】
アミノ基が2個のヒドロカルビル置換基を有する場合、これらは、それらが結合している窒素原子と一緒になり、また、場合によっては窒素、硫黄または酸素などの別のヘテロ原子を伴って、連結して4〜7個の環員を有する環構造を形成していてもよい。
【0122】
本明細書において「アザ−シクロアルキル」とは、炭素環員のうちの1つが窒素原子により置換されているシクロアルキル基を意味する。このようなアザ−シクロアルキル基の例としては、ピペリジンおよびピロリジンが挙げられる。本明細書において「オキサ−シクロアルキル」とは、炭素環員のうちの1つが酸素原子により置換されているシクロアルキル基を意味する。このようなオキサ−シクロアルキル基の例としては、テトラヒドロフランおよびテトラヒドロピランが挙げられる。同様に、「ジアザ−シクロアルキル」、「ジオキサ−シクロアルキル」および「アザ−オキサ−シクロアルキル」とは、それぞれ、2個の炭素環員が2個の窒素原子により置換されているか、2個の酸素原子により置換されているか、1個の窒素原子と1個の酸素原子により置換されているシクロアルキル基を意味する。
【0123】
本明細書において定義「R−R」は、炭素環式部分または複素環式部分に存在する置換基に関しても、または式(I)の化合物上の他の位置に存在する他の置換基に関しても、とりわけ、Rが、結合、O、CO、OC(O)、SC(O)、NRC(O)、OC(S)、SC(S)、NRC(S)、OC(NR)、SC(NR)、NRC(NR)、C(O)O、C(O)S、C(O)NR、C(S)O、C(S)S、C(S)NR、C(NR)O、C(NR)S、C(NR)NR、OC(O)O、SC(O)O、NRC(O)O、OC(S)O、SC(S)O、NRC(S)O、OC(NR)O、SC(NR)O、NRC(NR)O、OC(O)S、SC(O)S、NRC(O)S、OC(S)S、SC(S) S、NRC(S)S、OC(NR)S、SC(NR)S、NRC(NR)S、OC(O)NR、SC(O)NR、NRC(O)NR、OC(S)NR、SC(S)NR、NRC(S)NR、OC(NR)NR、SC(NR)NR、NRC(NRNR、S、SO、SO、NR、SONRおよびNRSOから選択される(ここで、Rは上記に定義した通りである)化合物を含む。
【0124】
部分Rは、水素でもよいし、3〜12個(一般には3〜10個、より一般には5〜10個)の環員を有する炭素環式基および複素環式基、ならびに上記に定義されるように場合によって置換されていてもよいC1−8ヒドロカルビル基から選択される基であってもよい。ヒドロカルビル、炭素環式基および複素環式基の例は上記に示される通りである。
がOであり、RがC1−8ヒドロカルビル基であるとき、RおよびRは一緒になってヒドロカルビルオキシ基を形成する。好ましいヒドロカルビルオキシ基としては、飽和ヒドロカルビルオキシ、例えば、アルコキシ(例えば、C1−6アルコキシ、より一般にはC1−4アルコキシ、例えば、エトキシおよびメトキシ、特にメトキシ)、シクロアルコキシ(例えば、C3−6シクロアルコキシ、例えば、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシおよびシクロヘキシルオキシ)およびシクロアルキルアルコキシ(cycloalkyalkoxy)(例えば、C3−6シクロアルキル−C1−2アルコキシ、例えば、シクロプロピルメトキシ)が挙げられる。
【0125】
ヒドロカルビルオキシ基は、本明細書に定義される種々の置換基によって置換されていてもよい。例えば、アルコキシ基はハロゲン(例えば、ジフルオロメトキシおよびトリフルオロメトキシの場合)、ヒドロキシ(例えば、ヒドロキシエトキシの場合)、C1−2アルコキシ(例えば、メトキシエトキシの場合)、ヒドロキシ−C1−2アルキル(ヒドロキシエトキシエトキシの場合)、または環式基(例えば、上記に定義されるシクロアルキル基または非芳香族複素環式基)によって置換されていてもよい。置換基として非芳香族複素環式基を有するアルコキシ基の例としては、複素環式基が飽和環式アミン、例えば、モルホリン、ピペリジン、ピロリジン、ピペラジン、C1−4−アルキル−ピペラジン、C3−7−シクロアルキル−ピペラジン、テトラヒドロピランまたはテトラヒドロフランであり、アルコキシ基がC1−4アルコキシ基、より一般にはC1−3アルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシまたはn−プロポキシであるものが挙げられる。
【0126】
アルコキシ基は、単環式基(例えば、ピロリジン、ピペリジン、モルホリンおよびピペラジン)ならびにそのN−置換誘導体(例えば、N−ベンジル、N−C1−4アシルおよびN−C1−4アルコキシカルボニルにより置換されている。特定の例としては、ピロリジノエトキシ、ピペリジノエトキシおよびピペラジノエトキシが挙げられる。
【0127】
が結合であり、RがC1−8ヒドロカルビル基であるとき、ヒドロカルビル基R−Rの例は上記に定義される通りである。ヒドロカルビル基は、シクロアルキルおよびアルキルなどの飽和基であってもよく、このような基の特定の例としては、メチル、エチルおよびシクロプロピルが挙げられる。ヒドロカルビル(例えば、アルキル)基は、本明細書に定義される種々の基および原子によって置換されていてもよい。置換アルキル基の例としては、フッ素および塩素などの1以上のハロゲン原子により置換されているアルキル基が挙げられる(特定の例としては、ブロモエチル、クロロエチル、ジフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチルおよびペルフルオロアルキル基、(例えば、トリフルオロメチル)、またはヒドロキシ(例えば、ヒドロキシメチルおよびヒドロキシエチル)、C1−8アシルオキシ(例えば、アセトキシメチルおよびベンジルオキシメチル)、アミノならびにモノ−およびジアルキルアミノ(例えば、アミノエチル、メチルアミノエチル、ジメチルアミノメチル、ジメチルアミノエチルおよびtert−ブチルアミノメチル)、アルコキシ(例えば、C1−2アルコキシ、例えば、メトキシ−メトキシエチルの場合)、ならびに上記に定義されるシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基および非芳香族複素環式基などの環式基が挙げられる)。
【0128】
環式基により置換されたアルキル基の特定の例としては、環式基が飽和環式アミン、例えば、モルホリン、ピペリジン、ピロリジン、ピペラジン、C1−4−アルキル−ピペラジン、C3−7−シクロアルキル−ピペラジン、テトラヒドロピランまたはテトラヒドロフランであり、アルキル基がC1−4アルキル基、より一般にはC1−3アルキル基、例えば、メチル、エチルまたはn−プロピルであるものがある。環式基により置換されたアルキル基の具体例としては、本明細書に定義されるピロリジノメチル、ピロリジノプロピル、モルホリノメチル、モルホリノエチル、モルホリノプロピル、ピペリジニルメチル、ピペラジノメチルおよびそのN−置換型が挙げられる。
【0129】
アリール基およびヘテロアリール基により置換されたアルキル基の特定の例としては、ベンジルおよびピリジルメチル基が挙げられる。
【0130】
がSONRであるとき、Rは、例えば、水素または場合によって置換されていてもよいC1−8ヒドロカルビル基、または炭素環式基もしくは複素環式基であり得る。RがSONRである場合のR−Rの例としては、アミノスルホニル、C1−4アルキルアミノスルホニルおよびジ−C1−4アルキルアミノスルホニル基、ならびに環状アミノ基(例えば、ピペリジン、モルホリン、ピロリジン、または場合によってN−置換されていてもよいピペラジン、例えば、N−メチルピペラジン)から形成されたスルホンアミドが挙げられる。
【0131】
がSOである場合のR−R基の例としては、アルキルスルホニル、ヘテロアリールスルホニルおよびアリールスルホニル基、特に単環式アリールおよびヘテロアリールスルホニル基が挙げられる。特定の例としては、メチルスルホニル、フェニルスルホニルおよびトルエンスルホニルが挙げられる。
がNRであるとき、Rは、例えば、水素または場合によって置換されていてもよいC1−8ヒドロカルビル基、または炭素環式基もしくは複素環式基であり得る。RがNRである場合のR−Rの例としては、アミノ、C1−4アルキルアミノ(例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、tert−ブチルアミノ)、ジ−C1−4アルキルアミノ(例えば、ジメチルアミノおよびジエチルアミノ)ならびにシクロアルキルアミノ(例えば、シクロプロピルアミノ、シクロペンチルアミノおよびシクロヘキシルアミノ)が挙げられる。
【0132】
〜RおよびXの特定の実施形態および好ましい選択肢
本節においては、上記一般的な好ましい選択肢および定義の節に示した好ましい選択肢、定義、サブ定義、サブグループ、実施形態および例は、特に断りのない限り、部分R〜R10、R、R、R、X、XおよびXのそれぞれについて後述される特定の実施形態および好ましい選択肢のそれぞれ、ならびにそのサブ定義、サブグループまたは実施形態にも当てはまる。
【0133】
一般式(I)において、基RおよびRは同じであるか、または異なり、それぞれ水素、C1−3飽和ヒドロカルビル、ハロゲンおよびシアノから選択される。
本発明の1つの化合物群では、Rは水素、C1−3飽和ヒドロカルビルおよびハロゲンから選択される。 もう1つの実施形態では、、R
は水素、C1−3飽和ヒドロカルビルおよびハロゲンから選択される。
【0134】
さらなる実施形態では、RおよびRは同じであるか、または異なり、それぞれ水素、飽和C1−3ヒドロカルビルおよびハロゲンから選択される。 一般に、R
および/またはRがハロゲンである場合、このハロゲンは好ましくは塩素およびフッ素から選択され、塩素が特に好ましい。
【0135】
および/またはRが飽和C1−3ヒドロカルビルである場合、このヒドロカルビル基はメチル、エチル,n−プロピル、i−プロピルおよびシクロプロピルから選択することができ、好ましい基はメチルおよびエチルであり、メチルが特に好ましい。
【0136】
一般に、置換基RおよびRを構成する炭素、ハロゲンおよび窒素原子の総数は5を超えないのが好ましい。より詳しくは、RおよびRを構成する炭素、ハロゲンおよび窒素原子の総数は0〜4の範囲、例えば、0、1、2または3である。
【0137】
一般に、置換基RおよびRの多くて1つがハロゲンである。
ハロゲン(特に、塩素)またはシアノ基が基RおよびR1つとして存在する場合、他の基は一般に水素またはメチルである。 本発明の1つの化合物群では、Rはハロゲン、好ましくは塩素である。
【0138】
基RおよびRの特定の組合せとしては、(a)R=塩素とR=メチル;(b)R=塩素とR=水素;(c)R=水素とR=水素;(d)R=メチルとR=水素;(e)R=シアノとR=メチル;および(f)R=メチルとR=シアノが挙げられる。これまでのところ好ましい組合せ は組合せ(a)である。
【0139】
一般式(I)において、XはC=O、C=S、C(=O)NH、C(=S)NH、C(=O)O、C(=O)S、C(=S)OおよびC(=S)Sから選択される。
本発明の1つの化合物群では、XはC=OおよびC(=O)NHから選択される。
本発明のもう1つの化合物群では、XはC(=O)NHである。
本発明のさらなる化合物群では、XはC=S、C(=O)NH、C(=S)NH、C(=S)OおよびC(=S)Sから選択される。
【0140】
基Rは、5〜12個の環員を有するアリール基およびヘテロアリール基から選択される。 基Rは単環式アリール基、または少なくとも1個の窒素原子、例えば3個までの窒素原子、好ましくは0、1または2個の窒素原子を含む単環式ヘテロアリール基であるのがこれまでのところ好ましい。このような基の例としては、上記に示された特定のヘテロアリール基のリストの単環式メンバーから選択される基が挙げられる。基Rの特定の例としては、フェニル、ピラゾリル、およびチアジアゾリル(例えば、[1,3,4]−チアジアゾリル)がある。
【0141】
本発明の化合物の1つのサブグループでは、置換基Rは、アリール基またはヘテロアリール基が、4〜7員の炭素環式基および複素環式基としての置換基を有する、5環員または6環員の単環式アリールまたはヘテロアリール基である。この炭素環式置換基または複素環式置換基は炭素−窒素結合を介してアリール基またはヘテロアリール基と連結させることができる。
【0142】
炭素−窒素結合の炭素原子はアリール基またはヘテロアリール基の一部を形成することもできるし、あるいは炭素−窒素結合の炭素原子は置換基の一部を形成することもできる。
この炭素−窒素結合の炭素原子が置換基の一部を形成する場合、その置換基は、例えば、ヘテロアリール基の窒素原子を介してヘテロアリール基と結合している、場合によって置換されていてもよいフェニル環であってもよい。このフェニル環上の任意の置換基は、上記でR10に関して示したリストから選択することができる。好ましい置換基はフルオロ、例えば、パラ−フルオロである。
【0143】
炭素−窒素結合の窒素原子が置換基の一部を形成する場合、その置換基は、例えば、少なくとも1個の窒素原子を含む4〜7員(より一般には、5〜6員)の複素環式基Rであってもよい。この場合に好ましい複素環式基としては、モルホリノ、ピペリジノ、ピペラジノ、N−メチルピペラジノおよびピロリジノが挙げられ、モルホリノが特に好ましい。
【0144】
基Rがフェニル基である場合、それは上記に定義される1以上の置換基R10によって場合により置換されていてもよい。化合物の1つのサブグループとして、フェニル環が1または2個のメタ置換基を含む、例えば、フェニル環の一方のメタ位が非置換型であるか、またはフッ素、塩素、メトキシ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチル、エチル、メチルおよびイソプロピルから選択される基により置換されており、他方のメタ位が、フッ素、塩素、メトキシ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチル、エチル、メチル、イソプロピル、イソブチル、t−ブチル、フェニル、置換フェニル、ならびに5員および6員の単環式複素環式基から選択される基により置換されている化合物群がある。
【0145】
メタ置換基の1つの特定の組合せとして、ハロゲン、好ましくはフルオロと上記に定義される基Rの組合せがある。
【0146】
基Rがヘテロアリール基である場合、それは例えば、上記に定義される1以上の置換基R10によって場合により置換されていてもよいピラゾール基であり得る。このピラゾール基は、例えば、このような置換基R10を1個または2個有し得る。2つの置換基R10が存在する場合、それらは隣接しない環員上に位置するのが好ましい。これら置換基のうち少なくとも1個が、基Xと連結した環員に対してメタまたはβ位に位置していれば、さらに好ましい。
【0147】
特に好ましい1つの化合物群としては、ヘテロアリール基Rが、場合によって置換されていてもよいフェニル基(例えば、4−フルオロフェニル)およびC1−4ヒドロカルビル基、例えば、tert−ブチル基またはtert−ブチル同配体により置換されたピラゾリル環である一群がある。
【0148】
もう1つの特に好ましい化合物群としては、ヘテロアリール基Rがチアジアゾール基(例えば、[1,3,4]−チアジアゾール基)である一群がある。
部分RおよびRは同じであるか、または異なり、水素およびメチルから選択されるか、またはRおよびRの一方はヒドロキシメチルおよびエチルから選択され、他方は水素である。
【0149】
一実施形態では、Rは水素である。
もう1つの実施形態では、Rは水素である。
さらなる実施形態では、RおよびRは双方とも水素である。
部分RおよびRは同じであるか、または異なり、水素およびメチルから選択される。
一実施形態では、Rは水素である。
もう1つの実施形態では、、Rは水素である。
さらなる実施形態では、RおよびRは双方とも水素である。
【0150】
本発明に従って用いるための1つの化合物群は、一般式(II):
【化2】

(式中、R、R、R、R、R、RおよびRは上記に定義される通りである)
で定義される。 本発明に従って用いるためのもう1つの化合物群は、式(III):
【化3】

(R〜Rは上記に定義される通りである)
で表れる。 式(III)の化合物群の範囲内に式(IV):
【化4】

[式中、R、R、R、R、RおよびRは上記に定義される通りであり;
は、3〜7個の環員を有する炭素環式基および複素環式基;基R−R{ここで、Rは結合、CO、XC(X)、C(X)X、XC(X)X、SO、SO、SONRまたはNRSOであり;かつ、Rは(a)水素、(b)3〜7個の環員を有する炭素環式基および複素環式基、および(c)ヒドロキシ、オキソ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ−またはジ−C1−4ヒドロカルビルアミノ、ならびに3〜7個の環員を有する炭素環式基および複素環式基から選択される1以上の置換基によって場合により置換されていてもよいC1−8ヒドロカルビル基(なお、このC1−8ヒドロカルビル基の1以上の炭素原子は、O、S、SO、SO、NR、XC(X)、C(X)XまたはXC(X)X(ここで、X、XおよびRは上記に定義される通りである)によって場合により置換されていてもよい)}から選択され;かつ、
10aは、水素、ハロゲンおよび、ヒドロキシ、オキソ、ハロゲン、シアノ、ニトロから選択される1以上の置換基によって場合により置換されていてもよいC1−6ヒドロカルビルから選択され、このC1−6ヒドロカルビル基の1以上の炭素原子はO、S、SO、SO、NR、XC(X)、C(X)XまたはXC(X)Xによって場合により置換されていてもよく;X、XおよびRは上記に定義される通りである]
で示される化合物がある。
【0151】
式(IV)で定義される化合物群において、Rは好ましくはフェニル基、例えばフルオロフェニル基(例えば、4−フルオロフェニル基)であり、R10aは好ましくは水素原子またはC1−6アルキル基であり、この特定の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチルおよび第三級ブチルがあり、第三級ブチルが特に好ましい。
【0152】
一般式(III)の範囲内のさらなる化合物群として、式(V):
【化5】

(式中、R11はRまたはNHRであり、R、R、R、RおよびRは上記に定義される通りである)
の化合物群がある。
【0153】
式(II)のもう1つの化合物群は、式(VI):
【化6】

(式中、nは0〜3、好ましくは0〜2、より好ましくは1または2であり、R10bは基R10またはR10aであり、R、R、R〜R、R10およびR10aは上記に定義される通りである)
で定義される。
【0154】
式(VI)の一実施形態では、R10bは上記に定義される基R10であり、R10に関しては、本明細書に示されているその好ましい選択肢、サブグループおよび例を含めて参照のこと。
もう1つの実施形態では、R10bは上記に定義される基R10aである。
【0155】
1つの一般的な実施形態では、XがC=OまたはC=Sであり、R
が、Xが結合しているR内の原子と隣接している原子と結合している置換基R−Rを有し、かつ、Rが炭素環式基もしくは複素環式基、または炭素環式基もしくは複素環式基により置換されているC1−8ヒドロカルビルであるとき、Rは結合、O、CO、XC(X)X、SOおよびSOから選択されることが好ましい。 もう1つの一般的な実施形態では、XがCOであるとき、Rは、Xが結合している環原子と隣接している環原子上に置換基を有する縮合二環式芳香基または部分芳香基以外のものであるのが好ましい。
【0156】
不明確となるのを避けるために、R、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10ならびにそのサブグループから選択されるいずれかの基の一般的および特定の好ましい選択肢、実施形態および例はそれぞれ、R、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10ならびにそのサブグループから選択される1以上の他のいずれかの基の一般的および特定の好ましい選択肢、実施形態および例と組み合わせることができ、このような組合せは総て本願に含まれるものとする。
【0157】
式(I)の化合物を構成する種々の官能基および置換基は、一般に、その式(I)の化合物の分子量が1000を超えないように選択する。より一般には、この化合物の分子量は750未満、例えば700未満、または650未満、または600未満、または550未満である。より好ましくは、その分子量は525未満、例えば500以下である。
【0158】
本発明の範囲内にある新規な化合物の具体例としては、
N−(4−クロロ−3−メチル−5−(モルホリン−イルメチル−チオフェン−2−イル)−3−フルオロ−モルホリン−4−イル−ベンズアミド;
1−[5−tert−ブチル−2(4−フルオロ−フェニル)−2H−ピラゾール−3−イル]−3−(4−クロロ−3−メチル−5−モルホリン−4−イルメチル−チオフェン−2−イル)尿素;
1−[5−tert−ブチル−2−(2,4−ジフルオロ−フェニル)−2H−ピラゾール−3−イル]−3−(4−クロロ−3−メチル−5−モルホリン−4−イルメチル−チオフェン−2−イル)−尿素;および
1−(4−クロロ−3−メチル−5−モルホリン−4−イルメチル−チオフェン−2−イル)−3−[5−(テトラヒドロ−フラン−2−イル)−[1,3,4]チアジアゾール−2−イル]−尿素
が挙げられる。
【0159】
本発明の特定の化合物は、下記実施例で説明する。
塩、溶媒和物、互変異性体、異性体、N−オキシド、エステル、プロドラッグおよび同位体
特に断りのない限り、特定の化合物に対する言及は、下記に述べるように、例えば、そのイオン形態、塩形態、溶媒和物形成および保護形態も含む。
【0160】
式(I)の多くの化合物は塩、例えば、酸付加塩の形態、またはある場合には、カルボン酸塩、スルホン酸塩およびリン酸塩などの有機塩基および無機塩基の塩で存在し得る。このような塩は総て本発明の範囲内であり、式(I)の化合物という場合には、化合物の塩形態も含む。本願の前節の場合と同様、特に断りのない限り、式(I)という場合には常に式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)およびそのサブグループもさすものと考えるべきである。
【0161】
塩の形態は、Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use, P. Heinrich Stahl (Editor), Camille G. Wermuth (Editor), ISBN: 3-90639-026-8, ハードカバー, 388頁, 2002年8月に記載の方法に従って選択および作製することができる。
【0162】
酸付加塩は、無機および有機双方の広範な酸で形成することができる。酸付加塩の例としては、酢酸、2,2−ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸(例えば、L−アスコルビン酸)、L−アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4−アセトアミド安息香酸、酪酸、(+)カンファー酸、カンファー−スルホン酸、(+)−(1S)−カンファー−10−スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、桂皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、D−グルコン酸、グルクロン酸(例えば、D−グルクロン酸)、グルタミン酸(例えば、L−グルタミン酸)、α−オキソグルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、イセチオン酸、乳酸(例えば、(+)−L−乳酸および(±)−DL−乳酸)、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、(−)−L−リンゴ酸、マロン酸、(±)−DL−マンデル酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸(例えば、ナフタレン−2−スルホン酸)、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトン酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、プロピオン酸、L−ピログルタミン酸、サリチル酸、4−アミノ−サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、タンニン酸、(+)−L−酒石酸、チオシアン酸、トルエンスルホン酸(例えば、p−トルエンスルホン酸)、ウンデシレン酸および吉草酸からなる群から選択される酸、ならびにアシル化アミノ酸および陽イオン交換樹脂で形成された塩が挙げられる。
【0163】
酸付加塩の1つの特定の群としては、塩酸、ヨウ化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、マレイン酸、リンゴ酸、イセチオン酸、フマル酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、吉草酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、マロン酸、グルクロン酸およびラクトビオン酸で形成された塩からなる。
【0164】
化合物がアニオンであるか、またはアニオンとなり得る官能基を有する場合(例えば、−COOHは、−COOとなり得る)には、塩は、好適なカチオンを伴って形成し得る。好適な無機カチオンの例としては、限定されるものではないが、NaおよびK、などのアルカリ金属イオン、Ca2+およびMg2+などのアルカリ土類カチオン、ならびにAl3+などの他のカチオンが挙げられる。好適な有機カチオンの例としては、限定されるものではないが、アンモニウムイオン(すなわち、NH)および置換アンモニウムイオン(例えば、NH、NH、NHR、NR)が挙げられる。いくつかの好適な置換アンモニウムイオンの例としては、エチルアミン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、コリン、メグルミンおよびトロメタミン、ならびにリジンおよびアルギニンなどのアミノ酸に由来するものが挙げられる。一般的な第四級アンモニウムイオンの一例として、N(CHがある。
【0165】
式(I)の化合物がアミン官能を含む場合には、これらは、例えば、当業者に周知の方法に従ったアルキル化剤との反応により第四級アンモニウム塩を形成することができる。このような第四級アンモニウム化合物は、式(I)の範囲内にある。
【0166】
本発明の化合物の塩形態は、一般に、医薬上許容される塩であり、医薬上許容される塩の例は、Berge et al., 1977, “Pharmaceutically Acceptable Salts,” J. Pharm. Sci., Vol. 66, pp. 1-19に述べられている。しかしながら、医薬上許容されるものではない塩でも中間体として製造してよく、次にこれを医薬上許容される塩へ変換すればよい。例えば本発明の化合物の精製または分離において有用であり得るこのような医薬上許容されない塩も、本発明の一部をなす。
【0167】
アミン官能を含む式(I)の化合物もN−オキシドを形成することができる。本明細書でアミン官能基を含む式(I)の化合物という場合には、N−オキシドも含む。
【0168】
化合物がいくつかのアミン官能を含む場合には、1以上の窒素原子が酸化されて、N−オキシドを形成することができる。N−オキシドの特定の例としては、第三級アミンまたは窒素含有複素環の窒素原子のN−オキシドがある。
N−オキシドは、対応するアミンを例えば、過酸化水素または過酸(例えば、ペルオキシカルボン酸)などの酸化剤で処理することにより形成できる(例えば、Advanced Organic Chemistry, Jerry March, 4th Edition, Wiley Interscience, pages参照)。より詳しくは、N−オキシドは、L. W. Deady (Syn. Comm. 1977, 7, 509-514)の手順により製造でき、この方法では、アミン化合物を、例えば、ジクロロメタンなどの不活性溶媒中、m−クロロペルオキシ安息香酸(MCPBA)と反応させる。
【0169】
式(I)の化合物はいくつかの異なる幾何異性型および互変異性型で存在する場合があり、式(I)の化合物という場合には、このような総ての形態を含む。不明確となるのを避けるために、化合物がいくつかの幾何異性型または互変異性型のうち1つの形態で存在でき、かつ、1つしか具体的に記載、または示されていない場合でも、式(I)にはやはり他の総てのものが含まれる。 互変異性型の例としては、例えば、以下の互変異性体対:ケト/エノール(下記に示す)、イミン/エナミン、アミド/イミノアルコール、アミジン/アミジン、ニトロソ/オキシム、チオケトン/エネチオール、およびニトロ/アシ−ニトロのように、ケト型、エノール型、およびエノラート型が挙げられる。
【化7】

【0170】
式(I)の化合物が1以上のキラル中心を含み、かつ、2種類以上の光学異性体の形態で存在し得る場合には、式(I)の化合物という場合、特に断りのない限り、その総ての光学異性型(例えば、鏡像異性体、エピマーおよびジアステレオ異性体)を、個々の光学異性体、もしくは混合物(例えば、ラセミ混合物)として、または2種類以上の光学異性体として含む。
【0171】
光学異性体はそれらの光学活性によって特徴付けまたは同定することができる(すなわち、+および−異性体、またはdおよびl異性体として)か、あるいはCahn, Ingold and Prelog(Advanced Organic Chemistry by Jerry March, 4th Edition, John Wiley & Sons, New York, 1992, pages 109-114参照、また、Cahn, Ingold & Prelog, Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 1966, 5, 385-415も参照)によって開発された「RおよびS」命名法を用い、それらの絶対立体化学に関して特徴付けが可能である。
【0172】
光学異性体は、キラルクロマトグラフィー(キラル支持体上でのクロマトグラフィーをはじめとするいくつかの技術によって分離することができ、このような技術は当業者に周知である。
【0173】
式(I)の化合物が2種類以上の光学異性型として存在する場合、鏡像異性体対のうち一方の鏡像異性体は、例えば生物活性に関して他方の鏡像異性体に優る優位性を示す場合がある。よって、ある状況では、鏡像異性体対の一方のみ、または複数のジアステレオ異性体のうち1つのみを治療薬として用いるのが望ましい場合がある。従って、本発明は、1以上のキラル中心を有する式(I)の化合物を含有する組成物を提供し、ここでは少なくとも55%(例えば、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%)の式(I)の化合物が単一の光学異性体(例えば、鏡像異性体またはジアステレオ異性体)として存在する。1つの一般的な実施形態では、式(I)の化合物の総量の99%以上(例えば、実質的に総て)が単一の光学異性体(例えば、鏡像異性体またはジアステレオ異性体)として存在し得る。
【0174】
本発明の化合物は1以上の同位体置換基を有する化合物を含み、特定の元素に関して言及する場合、その範囲内にその元素の総ての同位体を含む。例えば、水素という場合には、その範囲内にH、H(D)、およびH(T)を含む。同様に、炭素および酸素という場合には、その範囲内にそれぞれ12Cと13Cと14C、および16Oと18Oを含む。 これらの同位体は放射性であっても非放射性であってもよい。本発明の一実施形態では、化合物は非放射性同位体を含む。このような化合物は治療用として好ましい。しかしながら、もう1つの実施形態では、化合物は1以上の放射性同位体を含む。このような放射性同位体を含む化合物は診断上有用であり得る。
【0175】
カルボン酸基またはヒドロキシル基を有する式(I)の化合物のエステル、例えば、カルボン酸エステルおよびアシロキシエステルも式(I)に包含される。エステルの例としては、基−C(=O)OR(式中、Rは、エステル置換基、例えば、C1−7アルキル基、C3−20ヘテロシクリル基またはC5−20アリール基、好ましくはC1−7アルキル基である)を含む化合物が挙げられる。エステル基の特定の例としては、限定されるものではないが、−C(=O)OCH、−C(=O)OCHCH、−C(=O)OC(CHおよび−C(=O)OPhが挙げられる。アシルオキシ(逆エステル)基の例は、−OC(=O)R(式中、Rは、アシルオキシ置換基、例えば、C1−7アルキル基、C3−20ヘテロシクリル基またはC5−20アリール基、好ましくはC1−7アルキル基である)で表される。アシルオキシ基の特定の例としては、限定されるものではないが、−OC(=O)CH(アセトキシ)、−OC(=O)CHCH、−OC(=O)C(CH、−OC(=O)Phおよび−OC(=O)CHPhが挙げられる。
【0176】
また、式(I)には、化合物の多型形態、化合物の溶媒和物(例えば、水和物)、錯体(例えば、シクロデキストリンなどの化合物との包接錯体または包接化合物、または金属との錯体)、および化合物のプロドラッグも包含される。「プロドラッグ」とは、例えば、in vivoで式(I)の生物活性化合物に変換される化合物を意味する。
【0177】
例えば、いくつかのプロドラッグは、有効化合物のエステル(例えば、生理学的に許容される代謝上不安定なエステル)である。代謝中、エステル基(−C(=O)OR)が開裂して有効薬剤が生じる。このようなエステルは、例えば、親化合物のカルボン酸基(−C(=O)OH)のいずれかをエステル化することにより形成することができ、適当であれば、親化合物に存在する他の反応基を予め保護し、その後、必要に応じて脱保護する。
【0178】
このような代謝上不安定なエステルの例としては、式−C(=O)OR{式中、Rは、
1−7アルキル(例えば、−Me、−Et、−nPr、−iPr、−nBu、−sBu、−iBu、−tBu);
1−7アミノアルキル(例えば、アミノエチル;2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル;2−(4−モルホリノ)エチル);および
アシルオキシ−C1−7アルキル(例えば、アシルオキシメチル;アシルオキシエチル;ピバロイルオキシメチル;アセトキシメチル;1−アセトキシエチル;1−(1−メトキシ−1−メチル)エチル−カルボニルオキシエチル;1−(ベンゾイルオキシ)エチル;イソプロポキシ−カルボニルオキシメチル;1−イソプロポキシ−カルボニルオキシエチル;シクロヘキシル−カルボニルオキシメチル;1−シクロヘキシル−カルボニルオキシエチル;シクロヘキシルオキシ−カルボニルオキシメチル;1−シクロヘキシルオキシ−カルボニルオキシエチル;(4−テトラヒドロピラニルオキシ)カルボニルオキシメチル;1−(4−テトラヒドロピラニルオキシ)カルボニルオキシエチル;(4−テトラヒドロピラニル)カルボニルオキシメチル;および1−(4−テトラヒドロピラニル)−カルボニルオキシエチル)である}
のものが挙げられる。
【0179】
また、いくつかのプロドラッグは、酵素的に活性化されて有効化合物を生じるか、またはさらなる化学反応により有効化合物を生じる(例えば、抗原指定酵素プロドラッグ療法(ADEPT)、遺伝子指定酵素プロドラッグ療法(GDEPT)、ポリマー指定酵素プロドラッグ療法(PDEPT)、およびリガンド指定酵素プロドラッグ療法(LIDEPT)などの場合)化合物である。例えば、プロドラッグは、糖誘導体または他の配糖体であってもよいし、またはアミノ酸エステル誘導体であってもよい。
【0180】
式(I)の化合物の製造方法
式(I)の化合物は下記および実施例で記載される方法により、また、当業者に周知の方法により製造することができる。本節では、本願の他節と同様、式(I)という場合には、特に断りのない限り、式(II)、(III)、(IV)、(V)および(VI)、ならびにそのサブグループ、実施形態および例も含む。部分R〜RおよびXは本願の前節で示した意味を有する。
【0181】
およびRが水素である式(I)の化合物は、式(X):
【化8】

の化合物を、ヨウ化メチルなどのアルキル化剤を用いてS−アルキル化(例えば、メチル化)してチオイミデート中間体(示されていない)(これは次に、ホウ化水素、好ましくは水素化ホウ素アルカリ金属、例えば、水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤により、式(I)の化合物へと還元することができる)を得ることにより、製造することができる。このチオイミデートの還元は一般に、メタノールなどのアルコール溶媒中、周囲温度で行う。
あるいは、Arnat et al., J. Org. Chem, (2003) 1919-1928, Vol. 68, No. 5に記載されているものと類似の条件を用い、このチオイミデート中間体を(i)臭化メチルリチウムまたは臭化メチルマグネシウム、次いで水素化ホウ素ナトリウムで、あるいは(ii)2当量の臭化メチルリチウムまたは臭化メチルマグネシウムで処理することにより、Rおよび/またはRがメチル基である式(I)の化合物を製造することができる。
【0182】
チオアミド化合物(X)は、式(XI):
【化9】

の化合物のモルホリン−アミド基を、標準的なチオン化条件下で五硫化リン(P)、またはローソン試薬などのその誘導体といったチオン化剤を用いて選択的にチオン化することにより製造することができる。アミド(XII)は、式(XII)のカルボン酸またはその誘導体を、場合によって置換されていてもよい式(XIII)のモルホリン化合物と反応させることにより製造することができる。
【化10】

【0183】
モルホリン化合物(XIII)とカルボン酸(XII)の間のカップリング反応は、酸塩化物など、酸の活性化誘導体を形成し(例えば、塩化チオニルとの反応による)、次に、例えば、Zh. Obs. Khim. 31, 201 (1961)に記載の方法および米国特許第3,705,175号に記載されている方法によって、その酸塩化物をアミンと反応させることにより行うことができる。あるいは、酸塩化物は、この酸を、ジメチルホルムアミドの存在下で塩化オキサリルと反応させるか、またはカルボン酸塩を形成し、その塩を塩化オキサリルと反応させることにより形成することができる。
【0184】
あるいは、より好ましくは、カルボン酸(XII)とモルホリン化合物(XIII)の間のカップリング反応は、ペプチド結合を形成するために一般的に用いられている種類のアミドカップリング試薬の存在下で行うこともできる。
【0185】
このような試薬の例としては、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(Sheehan et al, J. Amer. Chem Soc. 1955, 77, 1067)、1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDAC)(Sheehan et al, J. Org. Chem., 1961, 26, 2525)、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)などのウロニウム系カップリング剤、および1−ベンゾ−トリアゾリルオキシトリス−(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)(Castro et al, Tetrahedron Letters, 1990, 31, 205)などのホスホニウム系カップリング剤が挙げられる。カルボジイミド系カップリング剤は、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)(L. A. Carpino, J. Amer. Chem. Soc., 1993, 115, 4397)または1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)(Konig et al, Chem. Ber., 103, 708, 2024-2034)と併用するのが有利である。好ましいカップリング試薬としては、EDCおよびDCCとHOAtまたはHOBtとの組合せが挙げられる。
【0186】
このカップリング反応は一般に、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミドまたはN−メチルピロリジンなどの非水性、非プロトン性溶媒中で行う。この反応は室温で、または反応物の反応性が小さい場合(例えば、スルホンアミド基などの電子求引基を有する電子不足アニリンの場合)には、適当な高温で行うことができる。この反応は非妨害塩基、例えばトリエチルアミンまたはN,N−ジイソプロピルエチルアミンなどの第三級アミンの存在下で行うことができる。
【0187】
式(XII)の化合物は、式(XIV):
【化11】

(式中、R〜Rは上記に定義される通りである)
の化合物の加水分解によって製造することができる。この加水分解反応は、例えば水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物で処理することによるなど、標準的な方法を用いて達成することができる。この反応は一般に、水性溶媒中、場合によってはメタノールまたはエタノールなどの混和性補助溶媒の存在下、室温〜100℃の間の極端でない温度、好ましくは80℃以下の温度まで加熱しながら行う。
【0188】
XがCOである式(XIV)の化合物は、式(XV):
【化12】

の化合物から、標準的な方法に従って、式RCOOHの化合物または酸塩化物などのその活性化誘導体と反応させることにより製造することができる。よって、例えば、酸塩化物は、ジクロロメタンなどの非プロトン性溶媒中、塩化オキサリルおよびジメチルホルムアミドを用いて生成可能である。あるいは、アミンとカルボン酸のカップリングは、1以上の上記ペプチドカップリング試薬を用いて達成することができる。
【0189】
XがCONH、C(O)OおよびC(O)Sである式(XIV)の化合物は、式(VII)の化合物を式RNH、ROH、またはRSHおよびホスゲンと反応させることにより製造することができる。この反応は一般に、ジクロロメタンまたはトルエンなどの非プロトン性溶媒中、例えば、室温などの中温で行う。
【0190】
XがC(=S)NHである式(XIV)の化合物は、標準的な方法に従って、式(XV)の化合物をイソチオシアネートRNCSと反応させることにより製造することができる。XがC(=S)、C(=S)NH、C(=S)OおよびC(=S)Sである式(XIV)の化合物は、式(XVI):
【化13】

の化合物から、標準的な方法に従って、式RNH、ROまたはRSOの化合物と反応させることにより製造することができる。このような方法の例は、Synthesis, Vol. 1, pp108-118 (2001), Heterocyclic Chemistry, Vol. 17(8)、pp 1789-92 (1980)およびZh. Org. Khim. Vol. 12(7), pp 1532-1535 (1976)に見出すことができる。
【0191】
式(XVI)の化合物は、対応するアミン(XV)から、例えば、Kryczka et al., Organiki, pp65-72, 2001およびGrayson, Organic Process Research & Development, Vol. 1(3), pp240-246 (1997)に記載されているように、チオホスゲンと反応させることにより製造することができる。
【0192】
式(XV)の化合物は市販されているか、または式(XVII):
【化14】

の化合物のニトロ化と還元により製造することができる。
【0193】
式(XVII)の化合物のニトロ化は、熟練の化学者に周知の標準的な条件を用いて達成することができる。例えば、式(XVII)の化合物は、補助溶媒、例えば、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素の存在下、無水酢酸中、酢酸および硝酸と反応させることができる。必要であれば、この反応混合物を例えば約100℃まで、より好ましくは約80℃まで加熱してもよい。
【0194】
得られたニトロ中間体を、好適な還元剤を用いて還元してアミンを得る。よって、例えば、還元は、場合によってジオキサンなどの水混和性の補助溶媒を含有する水性溶媒中、鉄粉および硫酸鉄の混合物を用いて達成することができる。
【0195】
XがC(=O)NHである式(I)の化合物は、式(X):
【化15】

の化合物をホスゲン、および次いで式RNHの化合物と反応させることにより製造することができる。この反応は一般に、乾燥させた、ジクロロメタンなどの非プロトン性溶媒中、極端でない温度、例えば、室温で行う。
【0196】
式(XVIII)の化合物は、式(XIX):
【化16】

の化合物をニトロ化し、次に、ニトロ基をアミノ基に還元することにより製造することができる。
【0197】
ニトロ化は、チオフェンをニトロ化するのに好適であることが知られるニトロ化条件を用いて行うことができる。例えば、ニトロ化は、アセトニトリルなどの極性非プロトン性溶媒中、テトラフルオロホウ酸ニトロニウムなどのニトロニウム塩を用いて達成することができる。この反応は一般に、周囲温度以下で行う。
【0198】
式(XIX)の化合物は、上記のアミド形成の方法を用い、式(XX):
【化17】

のカルボン酸を式(XIII)のモルホリン化合物と反応させることにより製造することができる。
【0199】
新規な化学中間体
式(I)の化合物の合成に用いる中間体化合物のうちいくつか(特に、上記式(X)のチオアミド化合物)は新規なものであり、それ自体、本発明のさらなる態様となる。
【0200】
医薬処方物
有効化合物は単独で投与することもできるが、少なくとも1種類の本発明の有効化合物を1以上の医薬上許容される担体、アジュバント、賦形剤、希釈剤、増量剤、緩衝剤、安定剤、保存剤、滑沢剤、または当業者に周知の他の物質、ならびに場合によっては他の治療薬または予防薬とともに含んでなる医薬組成物(例えば、処方物)として提供するのが好ましい。
【0201】
よって、本発明はさらに、上記に定義される医薬組成物、ならびに上記に定義される少なくとも1種類の有効化合物を、1以上の医薬上許容される担体、賦形剤、緩衝剤、アジュバント、安定剤、または本明細書に記載される他の物質と混合することを含む医薬組成物の製造方法を提供する。
【0202】
本明細書において「医薬上許容される」とは、合理的な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激作用、アレルギー反応、または他の問題もしくは懸念点なく、合理的な利益/リスク比に見合った、被験体(例えば、ヒト)の組織と接して使用するのに好適な化合物、材料、組成物および/または投与形に関するものである。各担体、賦形剤などもまた、処方物の他の成分と適合するという意味において「許容される」ものでなければならない。
【0203】
よって、さらなる態様において、本発明は、医薬組成物の形態にある本明細書に定義される式(I)およびそのサブグループの化合物を提供する。
【0204】
医薬組成物は、経口投与、非経口投与、局所投与、鼻腔内投与、点眼投与、点耳投与、直腸投与、膣内投与または経皮投与に好適ないずれの形態であってもよい。組成物が非経口投与を意図したものである場合には、静脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、皮下投与用に処方することもできるし、あるいは注射、注入または他の送達手段により標的器官または組織への直接送達用に処方することもできる。
【0205】
本発明の1つの好ましい実施形態では、この医薬組成物は、例えば注射または注入によるi.v.投与に好適な形態にある。
もう1つの好ましい実施形態では、この医薬組成物は、皮下(s.c.)投与に好適な形態にある。
【0206】
経口投与に好適な医薬投与形としては、錠剤、カプセル剤、カプレット、丸剤、トローチ剤、シロップ剤、水剤、散剤、顆粒剤、エリキシル剤および懸濁剤、舌下錠、カシェ剤またはパッチ剤および頬側パッチ剤が挙げられる。
【0207】
式(I)の化合物を含有する医薬組成物は、公知の技術に従って処方することができる(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, PA, USA参照)。
【0208】
よって、錠剤組成物は、単位用量の有効化合物を、不活性希釈剤または担体、例えば、糖または糖アルコール、例えば、ラクトース、スクロース、ソルビトールまたはマンニトール;および/または非糖由来希釈剤、例えば、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウムまたはセルロースもしくはその誘導体、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびデンプン、例えば、コーンスターチとともに含有し得る。また、錠剤は、結合剤および造粒剤(例えば、ポリビニルピロリドン)、崩壊剤(例えば、膨潤性架橋ポリマー、例えば、架橋カルボキシメチルセルロース)、滑沢剤(例えば、 ステアリン酸塩)、保存剤(例えば、パラベン)、酸化防止剤(例えば、BHT)、緩衝剤(例えば、リン酸緩衝液またはクエン酸緩衝液)、および発泡剤(例えば、クエン酸塩/重炭酸塩混合物)といった標準的な成分を含有してもよい。このような賦形剤は周知のものであり、ここでは詳しく述べる必要はない。
【0209】
カプセル処方物は、硬質ゼラチン種でも軟質ゼラチン種でもよく、固体、半固体または液体状の有効成分を含有することができる。ゼラチンカプセルは、動物ゼラチンまたはその合成等価物もしくは植物由来の等価物から形成することができる。
【0210】
固形投与形(例えば、錠剤、カプセル剤など)はコーティングを施したものでも、コーティングを施さないものでもよいが、一般には、例えば、保護フィルムコーティング(例えば、ワックスまたはワニス)または放出制御コーティングなどのコーティングを施すことができる。コーティング(例えば、Eudragit(商標)型ポリマー)は、胃腸管内の所望の位置で有効成分を放出するように設計することができる。従って、コーティングは、胃腸管内の特定のpH条件下で分解して、選択的に胃または回腸もしくは十二指腸において化合物を放出するように選択することができる。
【0211】
コーティングの代わりに、またはコーティングに加えて、薬物を、胃腸管における様々な酸度またはアルカリ度の条件下で化合物を選択的に放出するように適合させることができる放出制御剤、例えば、放出遅延剤を含んでなる固体マトリックスとして提供することもできる。あるいは、このマトリックス材料または放出遅延コーティングは、投与形が胃腸管を通過するにつれて実質的に連続的に浸食される浸食性ポリマー(例えば、無水マレイン酸ポリマー)の形態を採ることができる。さらにもう1つのものとして、有効化合物を、化合物の放出の浸透圧制御を与える送達系として処方することもできる。浸透圧放出および他の遅延放出または持続放出処方物は、当業者に周知の方法に従って製造することができる。
【0212】
局所使用のための組成物としては、軟膏、クリーム剤、スプレー剤、パッチ剤、ゲル剤、液滴および挿入物(例えば、眼内挿入物)が挙げられる。このような組成物は、公知の方法に従って処方することができる。
【0213】
非経口投与用の組成物は、一般に、無菌水性もしくは油性溶液または微細懸濁液として提供され、あるいは、無菌注射水で即時構成できる微細無菌粉末の形態で提供してもよい。
直腸または膣内投与用の処方物の例としてはペッサリーおよび坐剤があり、これらは、例えば、有効化合物を含有する付形成形性材料またはワックス材料から形成することができる。
【0214】
吸入投与用組成物は、吸入可能な粉末組成物または液体もしくは粉末スプレーの形態を採ってもよく、粉末吸入装置またはエアゾールディスペンシング装置を用いて標準的な形態で投与することができる。このような装置は周知のものである。吸入投与用の粉末処方物は、一般には、有効化合物を、ラクトースなどの不活性固体粉末希釈剤とともに含んでなる。
【0215】
本発明の化合物は一般的に単位投与形で提供され、それ自体、一般には所望のレベルの生物活性を得るのに十分な化合物を含有する。例えば、経口投与を意図した処方物は、有効成分0.1ミリグラム〜2グラム、より一般には10ミリグラム〜1グラム、例えば50ミリグラム〜500ミリグラムを含み得る。
【0216】
有効成分は、それを必要とする患者(例えば、ヒトまたは動物患者)に対して、所望の治療効果を得るのに十分な量で投与される。
【0217】
治療的使用
上記に定義される式(I)の化合物は、p38 MAPキナーゼ活性を調整または阻害する活性を有する。それ自体、このような活性を有する化合物は、疾病または症状がp38 MAPキナーゼの活性が疾病を誘発するまたは発症を助長するものである場合の疾病の予防または処置において有用な治療薬となると考えられる。
【0218】
p38 MAPキナーゼの阻害により緩和される症状の例は上記に述べられ、限定されるものではないが、そのような症状を含む。より詳しくは、症状は、
(i)ライター症候群、急性滑膜炎、関節リウマチ、変形性関節症、リウマチ性脊椎炎、痛風性関節炎、外傷性関節炎、風疹性関節炎、乾癬性関節炎、移植片対宿主反応および同種移植拒絶反応などの炎症性および関節性の疾病および症状;
(ii)気腫、慢性肺炎症性疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、成人呼吸窮迫症候群および急性呼吸窮迫症候群(ARDS)などの慢性炎症性肺疾患;
(iii)結核、珪肺症、肺サルコイドーシス、肺繊維症および細菌性肺炎などの肺の疾患および症状;
(iv)炎症性腸疾患、クローン病および潰瘍性大腸炎などの腸管の炎症性疾患および症状;
(v)敗血症、敗血症ショック、内毒素ショック、グラム陰性敗血症および内毒素に誘発される炎症反応などの毒素性ショック症候群ならびに関連の疾病および症状;
(vi)アルツハイマー病;
(vii)再潅流傷害;
(vii)アテローム性動脈硬化症;筋肉変性;痛風;脳性マラリア;骨再吸収疾患;インフルエンザなどの感染による発熱および筋肉痛;悪液質、特に、感染または悪性疾患に続発する悪液質、後天性免疫不全症候群(AIDS)に続発する悪液質;AIDS;ARC(AIDS関連症候群);ケロイド形成;瘢痕組織形成;不全麻痺(pyresis)および喘息から選択される疾病および症状
から選択することができる。
【0219】
特に注目されるのは、炎症性疾患および症状、関節リウマチならびに変形性関節症の処置または予防に用いるための化合物である。
また、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の処置または予防に用いるための化合物も注目される。
【0220】
増殖性疾患の予防または処置
式(I)およびそのサブグループの化合物はまた、新生物の増殖を防ぐ、または新生物のアポトーシスを誘導する手段を提供する上で有用であると考えられる。よって、本化合物は癌などの増殖性疾患を処置または予防するのに有用であるものと考えられる。従って、本発明の化合物は、
腺腫;
癌腫;
白血病;
リンパ腫;
黒色腫;
肉腫;および
奇形腫
から選択される1を超えるいずれかの癌の処置または予防に有用であると考えられる。
【0221】
抑制し得る癌の特定の例としては、限定されるものではないが、癌腫、例えば、膀胱癌、乳癌、結腸癌(例えば、直腸腺癌および直腸腺腫などの結腸直腸の癌腫)、腎臓癌、表皮癌、肝臓癌、肺癌(例えば、腺癌、小細胞性肺癌および非小細胞性肺癌)、食道癌、胆嚢癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、外分泌膵臓癌)、胃癌、子宮頚癌、甲状腺癌、前立腺癌または皮膚癌(例えば、扁平上皮癌);リンパ系の造血腫瘍、例えば、白血病、急性リンパ性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ヘアリー細胞リンパ腫またはバーケットリンパ腫;骨髄系の造血腫瘍、例えば、急性および慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群または前骨髄球性白血病;甲状腺瀘胞癌;間葉由来の腫瘍、例えば、線維肉腫または横紋筋肉種;中枢または末梢神経系の腫瘍、例えば、星状細胞腫、神経芽細胞種、神経膠腫または神経鞘腫;黒色腫;精上皮種;奇形癌;骨肉種;色素性乾皮症;角化棘細胞種;甲状腺濾胞癌;またはカポジ肉腫が挙げられる。
【0222】
癌の1つのサブセットは、
乳癌;
卵巣癌;
結腸癌;
前立腺癌;
食道癌;
扁平上皮癌;および
小細胞性肺癌
から選択される1以上の癌を含む。
【0223】
rafキナーゼ阻害活性を有する本発明の化合物に特に感受性があるものと考えられる癌ももう1つのサブセットとしては、乳癌、卵巣癌、結腸癌、黒色腫、前立腺癌、食道癌、扁平上皮癌および非小細胞性肺癌が挙げられる。
本発明のrafキナーゼ阻害化合物に感受性がある可能性のある癌のさらなるサブセットとしては、白血病、慢性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群が挙げられる。
【0224】
rafキナーゼの阻害剤である本発明の化合物については、rasの活性化突然変異体またはrasの過剰発現を伴う腫瘍はこのようなraf阻害剤に対して特に感受性があると考えられる。rafの3つのイソ型のいずれかに活性化突然変異を有する患者もまた、raf阻害剤による処置が特に有益である可能性がある。他の異常を有し、raf−MEK−ERK経路シグナルのアップレギュレーションに至っている腫瘍もまた、rafキナーゼの阻害剤に特に感受性がある可能性がある。このような異常の例としては、限定されるものではないが、増殖因子受容体の構成的活性化、1以上の増殖因子受容体の過剰発現、1以上の増殖因子の過剰発現、またはその経路のアップレギュレーションをもたらす他の突然変異もしくは異常が挙げられる。
【0225】
本発明の化合物はまた、不適切な、または過剰な、または望ましくない脈管形成の処置または予防を目的に提供される。不適切な、または過剰な、または望ましくない脈管形成に関連する疾病または症状は、上記「背景」の節に述べられている。特に注目されるのは、FGFR−1、FGFR−2、FGFR−3、Tie2、VEGFR−2および/またはEphB2などの受容体チロシンキナーゼのアップレギュレーションを特徴とする症状(例えば、癌)である。
【0226】
受容体チロシンキナーゼ活性の阻害剤である式(I)の化合物は、特に脈管形成を阻害することによって新生物の増殖を抑制する、または新生物のアポトーシスを誘導する手段を提供する上で有用であると考えられる。よって、本化合物は癌などの増殖性疾患を処置または予防する上で有用であるものと考えられる。特に、受容体チロシンキナーゼの活性化突然変異体または受容体チロシンキナーゼのアップレギュレーションを伴う腫瘍はこれらの阻害剤に特に感受性がある可能性がある。本明細書で述べた特定のRTK阻害剤のイソ型のいずれかの活性化突然変異体を有する患者もまた、RTK阻害剤による処置が特に有益である可能性がある。
【0227】
診断およびスクリーニング方法
式(I)の化合物の投与に先立ち、患者を、患者が罹患しているか、または罹患している可能性のある疾病または症状が、rafキナーゼに対して活性を有する化合物による処置に感受性があるものかどうかを判定するスクリーニングにかけることができる。例えば、患者から採取した生体サンプルを、患者が罹患しているか、または罹患している可能性のある癌などの症状または疾病が、rafキナーゼ(例えば、B−rafまたはC−raf)の発現上昇、活性化、または活性化突然変異体の結果を特徴とするものであるかどうかを判定するために分析することができる。よって、患者に対して、rafキナーゼの過剰発現もしくは活性化またはその突然変異に特徴的なマーカーを検出する診断試験を行うことができる。
【0228】
「マーカー」とは遺伝子マーカーを含み、例えば、raf、ras、MEK、ERK、または増殖因子(ERB2またはEGFRなど)の突然変異を同定するためのDNA組成物の測定を含む。「マーカー」とはまた、raf、ras、MEK、ERK、増殖因子(ERB2またはEGFRなど)のアップレギュレーションに特徴的なマーカーを含み、酵素活性、酵素レベル、酵素の状態(例えば、リン酸化されているかいないか)および上記タンパク質のmRNAレベルを含む。
【0229】
突然変異の同定および分析方法は当業者に周知のものであるが、一般には、引用することにより本明細書の一部とされる、Anticancer Research. 1999 19(4A) 2481-3, Clin Chem. 2002 48, 428およびCancer Res. 2003 63(14) 3955-7に記載されているものなどの方法を含む。
【0230】
raf−MEK−ERK経路シグナルがアップレギュレーションされた他の腫瘍もまた、rafキナーゼの阻害剤に特に感受性がある可能性がある。Chemicon Internationalから市販されているMEK1/2(MAPKキナーゼ)アッセイをはじめ、raf−MEK−ERK経路においてアップレギュレーションを示す腫瘍を同定することができるいくつかのアッセイが存在する。アップレギュレーションはERB2およびEGFRなどの増殖因子受容体の過剰発現または活性化、または突然変異体rasまたはrafタンパク質から起こり得る。
【0231】
過剰発現、アップレギュレーションまたは突然変異体のスクリーニングのための典型的な方法としては、限定されるものではないが、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)またはin situハイブリダイゼーションなどの標準的な方法が挙げられる。
【0232】
RT−PCRによるスクリーニングにおいて、腫瘍における上記タンパク質のmRNAレベルは、そのmRNAのcDNAコピーを作出した後、そのcDNAをPCRにより増幅することによって評価する。PCR増幅の方法、プライマーの選択、および増幅条件は、当業者に公知のものである。核酸操作およびPCRは、例えば、Ausubel, F.M. et al., eds. Current Protocols in Molecular Biology, 2004, John Wiley & Sons Inc.,またはInnis, M.A. et-al., eds. PCR Protocols: a guide to methods and applications, 1990, Academic Press, San Diegoに記載されているような標準的な方法によって行う。また、核酸技術を含む反応および操作は、Sambrook et al., 2001, 3rd Ed, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されている。あるいは、RT−PCR用として市販されているキット(例えば、Roche Molecular Biochemicals)を使用してもよく、または米国特許第4,666,828号;同第4,683,202号;同第4,801,531号;同第5,192,659号;同第5,272,057号、同第5,882,864号および同第6,218,529号に示されているような方法論があり、これは引用することにより本明細書の一部とされる。
【0233】
in situハイブリダイゼーション法の一例として、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)(Angerer, 1987 Meth. Enzymol., 152:649参照)がある。一般に、in situハイブリダイゼーションは、次の主要な工程:(1)分析する組織の固定;(2)標的核酸のアクセシビリティーを増し、かつ、非特異的結合を低減するためのサンプルのプレハイブリダイゼーション処理;核酸混合物と生体構造または生体組織中の核酸とのハイブリダイゼーション;(3)そのハイブリダイゼーションにおいて結合しなかった核酸断片を除去するためのハイブリダイゼーション後洗浄、および(5)ハイブリダイズした核酸断片の検出を含む。このような適用に用いるプローブは一般には、例えば、放射性同位体または蛍光リポーターで標識される。好ましいプローブは、ストリンジェント条件下で標的核酸との特異的ハイブリダイゼーションを可能とするに十分長いものであり、例えば、約50、100、または200ヌクレオチド〜約1000またはそれ以上のヌクレオチドである。FISHを行うための標準的な方法は、Ausubel, F.M. et al., eds. Current Protocols in Molecular Biology, 2004, John Wiley & Sons Inc and Fluorescence In Situ Hybridization: Technical Overview by John M.S. Bartlett in Molecular Diagnosis of Cancer, Methods and Protocols, 2nd ed.; ISBN: 1-59259-760-2; March 2004, pps. 077-088; Series: Methods in Molecular Medicineに記載されている。
【0234】
あるいは、このmRNAから発現されるタンパク質産物を、腫瘍切片の免疫組織化学、マイクロタイタープレートを用いた固相イムノアッセイ、ウエスタンブロット法、二次元SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動、ELISA、および特異的タンパク質の検出のための当技術分野で公知の他の方法によってアッセイしてもよい。検出方法としては、ホスホraf、ホスホERKまたはホスホMEKなどの部位特異的抗体の使用が含まれる。腫瘍生検の他、利用可能な他のサンプルとして、胸膜液、腹液、尿、検便、痰、血液(分離腫瘍細胞の単離および培養)が挙げられる。
【0235】
さらに、raf、EGFRまたはrasの突然変異型は、上記のようにPCRおよびPCR産物を直接配列決定する方法を用い、例えば腫瘍生検の直接配列決定によって同定することもできる。当業者ならば、上記タンパク質の過剰発現、活性化または突然変異の検出のためのこのような周知の技術が総て本ケースに適用可能であることが分かるであろう。
【0236】
最後に、raf、rasおよびEGFRなどのタンパク質の異常なレベルは、標準的な酵素アッセイ、例えば、rafに関して本明細書に記載されるアッセイを用いて測定することができる。
【0237】
式(I)の受容体チロシンキナーゼ阻害剤の投与に先立ち、患者を、患者が罹患しているか、または罹患している可能性のある疾病、または疾病もしくは症状が、受容体チロシンキナーゼに対して活性を有する化合物による処置に感受性があるものかどうかを判定するスクリーニングにかけることができる。例えば、患者から採取した生体サンプルを、患者が罹患しているか、または罹患している可能性のある癌などの症状または疾病が、受容体チロシンキナーゼの発現上昇、活性化、または活性化突然変異体の結果を特徴とするものであるかどうかを判定するために分析することができる。よって、患者に対して、rafキナーゼの過剰発現もしくは活性化またはその突然変異に特徴的なマーカーを検出する診断試験を行うことができる。
【0238】
「マーカー」とは遺伝子マーカーを含み、例えば、RTK、例えば、FGFR−1、FGFR−2、FGFR−3、VEGFR−2、Tie2およびEphB2の突然変異を同定するためのDNA組成物の測定を含む。「マーカー」とはまた、RTKのアップレギュレーションに特徴的なマーカーを含み、酵素活性、酵素レベル、酵素の状態(例えば、リン酸化されているかいないか)および上記タンパク質のmRNAレベルを含む。
【0239】
FGFR、Tie、VEGFRおよびEphキナーゼのアップレギュレーションまたは突然変異体によって引き起こされる疾病または症状をスクリーニングする典型的な方法としては、限定されるものではないが、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)またはin situハイブリダイゼーションなどの標準的な方法が挙げられる。
【0240】
RT−PCRによるスクリーニングにおいて、腫瘍組織などの組織における上記タンパク質のmRNAレベルは、そのmRNAのcDNAコピーを作出した後、そのcDNAをPCRにより増幅することによって評価する。PCR増幅の方法、プライマーの選択、および増幅条件は上記に示されている。
【0241】
あるいは、上記のように、このmRNAから発現されるタンパク質産物を、腫瘍切片の免疫組織化学、マイクロタイタープレートを用いた固相イムノアッセイ、ウエスタンブロット法、二次元SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動、ELISA、および特異的タンパク質の検出のための当技術分野で公知の他の方法によってアッセイしてもよい。検出方法としては、ホスホチロシンなどの部位特異的抗体の使用が含まれる。腫瘍生検の他、利用可能な他のサンプルとして、胸膜液、腹液、尿、検便、痰、血液(分離腫瘍細胞の単離および培養)が挙げられる。
【0242】
さらに、例えばFGFRの突然変異型は、上記のようにPCRおよびPCR産物を直接配列決定する方法を用い、例えば腫瘍生検の直接配列決定によって同定することもできる。FGFR、Tie、VEGFRおよびEphなどのタンパク質の異常なレベルは、標準的な酵素アッセイ、例えば、本明細書に記載されるアッセイを用いて測定することができる。
【0243】
活性化または過剰発現はまた、腫瘍サンプル、例えば腫瘍組織において、Chemicon Internationalからのものなどのアッセイでチロシンキナーゼ活性を測定することにより検出することができる。対象とするチロシンキナーゼをサンプル溶解物から免疫沈降させ、その活性を測定する。
【0244】
FGFR、Tie、VEGFRまたはEphキナーゼ、特に、VEGFR(それらのイソ型を含む)の過剰発現または活性化の測定のための別法としては、微細血管密度の測定を含む。これは例えば、Orre and Rogers (Int J Cancer 1999 84(2) 101-8)が記載している方法を用いて測定することができる。アッセイ方法はまた、例えば、VEGFRの場合にはマーカーの使用を含み、これらのマーカーとしてはCD31、CD34およびCD105(Mineo et al. J Clin Pathol. 2004 57(6) 591-7)が挙げられる。
【0245】
処置方法
式(I)の化合物は、一般に、そのような投与を必要とする被験体、例えば、ヒトまたは動物患者、好ましくはヒトに投与する。
【0246】
これらの化合物は、一般に、治療的または予防的に有用であり、かつ、一般に無毒な量で投与される。しかしながら、場合によっては(例えば、生命をおびやかす疾病の場合)、式(I)の化合物を投与する利点は、毒性作用または副作用の欠点よりも価値があると考えられ、このような場合では、化合物を、ある程度の毒性を伴う量で投与することが望ましいと考えられる。
これらの化合物は有益な治療効果を維持するために長期にわたって投与してもよいし、あるいは短期間だけ投与してもよい。あるいは、パルス方式で投与することもできる。
【0247】
化合物の典型的な一日量は、体重1キログラム当たり100ピコグラム〜100ミリグラム、より一般には、体重1キログラム当たり10ナノグラム〜10ミリグラムであるが、必要に応じてそれより高い用量または低い用量を投与してもよい。最終的には、投与される化合物の量は、処置する疾病の性質または生理状態と見合うものとし、医師の裁量による。
式(I)の化合物は、単独の治療薬として投与してもよいし、または特定の病態の処置のための他の1種類以上の化合物との併用療法として投与してもよい。
【0248】
例えば、関節リウマチ、変形性関節症、慢性肺炎症性疾患(例えば、COPD)および炎症性腸疾患など、p38 MAPキナーゼにより媒介される病態または症状の処置において、式(I)の化合物と一緒に(同時または時間差)投与可能な他の治療薬の例としては、メトトレキサート、プレドニシロン、スルファサラジン、レフルノミドおよびNSAID類、例えば、COX−2阻害剤(セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブおよびルミラコキシブなど)、気管支拡張薬(例えば、β拮抗薬)、ならびに抗コリン作動薬(サルブタモール、サルメテロールおよび臭化イパトロピウムなど);コルチコステロイド(プロピオン酸フルチカゾンなど);粘液溶解薬(グアイフェネシンなど);ならびに抗生物質が挙げられる。 上記に定義される癌などの新生物性疾患の処置において、式(I)の化合物と一緒に(同時または時間差)使用または投与可能な他の治療薬の例としては、限定されるものではないが、
・トポイソメラーゼI阻害剤{例えば、トポテカン(Hycamtin)、イリノテカンおよびCPT11(Camptosar)などのカンプトテシン化合物}
・代謝拮抗薬{例えば、5−フルオロウラシル、ゲムシタビン(Gemzar)、ラルチトレキセド(Tomudex)、カペシタビン(Xeloda)、ペメトレキセド(Alimta)、シタラビンまたはシトシンアラビノシドまたはアラビノシルシトシン[AraC](Cytosar(登録商標))、メトトレキサート(Matrex)、フルダラビン(Fludara)およびテガフールなどの抗腫瘍性ヌクレオシド}
・微小管標的化薬剤{例えば、ビンカアルカロイド、ビンブラスチンおよびタキサン化合物(ビンクリスチン(Oncovin)、ビノレルビン(Navelbine)、ビンブラスチン(Velbe)、パクリタキセル(Taxol)およびドセタキセル(Taxotere)}
・DNA結合剤およびtopo II阻害剤{例えば、ポドフィロトキシン誘導体およびアントラサイクリン誘導体(エトポシド(Eposin, Etophos, Vepesid, VP-16)、テニポシド (Vumon)、ダウノルビシン(Cerubidine, DaunoXome)、エピルビシン(Pharmorubicin)、ドキソルビシン(Adriamycin; Doxil; Rubex)、イダルビシン(Zavedos)、PEG化リポソーム塩酸ドキソルビシン(Caeylx)、リポソーム封入クエン酸ドキソルビシン(Myocet)、ミトキサントロン(Novatrone, Onkotrone))}
・アルキル化剤{例えば、ナイトロジェンマスタードまたはニトロソ尿素アルキル化剤およびアジリジン(シクロホスファミド(Endoxana)、メルファラン(Alkeran)、クロラムブシル(Leukeran)、ブスルファン(Myleran)、カルムスチン(BiCNU)、ロムスチン(CCNU)、イフォスファミド(Mitoxana)、マイトマイシン(Mytomycin C Kyoma)など)}
・アルキル化剤{例えば、シスプラチン、カルボプラチン
(Paraplatin)およびオキサリプラチン(Eloxatin)などの白金化合物}
・モノクローナル抗体{例えば、EGFファミリーおよびその受容体、ならびにVEGFファミリーおよびその受容体、より詳しくは、トラスツズマブ(Herceptin)、セツキシマブ(Erbitux)、リツキシマブ(Mabthera)、トシツモマブ(Bexxar)、ゲムツズマブオゾガマイシン(Mylotarg)およびベバシズマブ(Avastin)
・抗ホルモン{例えば、抗エストロゲン薬(例えば、アロマターゼ阻害剤)をはじめとする抗アンドロゲン、例えば、タモキシフェン(Nolvadex D, Soltamox, Tamofen)、フルベストラント(Faslodex)、ラロキシフェン(Evista)、トレミフェン(Fareston)、ドロロキシフェン、レトラゾール(Femara)、アナストラゾール(Arimidex)、エキセメスタン(Aromasin)、ボロゾール(Rivizor)、ビカルタミド(Casodex, Cosudex)、ルプロリド(Zoladex)、酢酸メゲストロール(Megace)、アミノグルテチミド(Cytadren)およびベキサロテン(Targretin)など}
・シグナル伝達阻害剤{ゲフィチニブ(Iressa)、イマチニブ(Gleevec)、エルロチニブ(Tarceva)およびセレコキシブ(Celebrex)など}・バルテジミブ(Velcade)などのプロテアソーム阻害剤
・テモゾロマイド(Temodar)などのDNAメチルトランスフェラーゼ
・サイトカインおよびレチノイド{例えば、インターフェロンα(Intron A, Roferon-A)、インターロイキン2(Aldesleukin, Proleukin)およびあらゆるトランスレチノイン酸[ATRA]またはトレチノイン(Vesanoid)
・放射線療法
が挙げられる。
【0249】
本発明の化合物を併用療法として他の治療薬または治療法とともに投与する場合、その2種類以上の処置は個々に異なる投与計画で、また、異なる経路で施すことができる。
【0250】
式(I)の化合物を1種類以上の他の治療薬との併用療法として投与する場合には、これらの化合物は同時投与しても逐次投与してもよい。逐次投与する場合、それらは短い時間間隔(例えば、5〜10分)で投与してよいし、または長い時間間隔(例えば、1、2、3、4時間またはそれ以上、必要に応じてさらに長時間)で投与してもよく、厳密な投与計画は治療薬の特性に見合ったものとする。
【0251】
癌などの新生物性疾患の処置においては、本発明の化合物はまた、放射線療法、光線力学療法、遺伝子療法、外科術および食事制限などの非化学療法的処置と組み合わせて投与することもできる。
【0252】
別の化学療法薬との併用療法で用いる場合、式(I)の化合物および1種、2種、3種、4種またはそれ以上の他の治療薬は、例えば、2種、3種、4種またはそれ以上の治療薬を含有する投与形に一緒に処方することができる。別法として、個々の治療薬を個別に処方し、場合によってはそれらの使用説明書を添え、キットの形態で一緒に提供してもよい。
当業者ならば、共通の全般知識によって、投与計画および併用療法の使用に関して承知しているであろう。
【実施例】
【0253】
以下、本発明を、以下の実施例に記載される具体的実施形態によって説明する。
実施例では、製造された化合物は2つのシステム(詳細は下記に示す)を用い、液体クロマトグラフィーおよび質量分析により特性決定した。この2つのシステムは同じクロマトグラフィーカラムを装備し、同じ実施条件下で稼働するように設定した。用いた実施条件も下記に記載する。
【0254】
1.Platformシステム:
システム:Waters 2790/Platform LC
質量分析検出器:Micromass Platform LC
PDA検出器:Waters 996PDA
分析条件:
溶離剤A:HO(1%ギ酸)
溶離剤B:CHCN(1%ギ酸)
勾配:5〜95%溶離剤B
流速:1.5ml/分
カラム:Synergi 4μm Max−RP C12、80A、50×4.6mm(Phenomenex)
MS条件:
キャピラリー電圧:3.5kV
コーン電圧:30V
イオン源温度:120
2.FractionLynxシステム
システム:Waters FractionLynx(分析/分取両用)
質量分析検出器:Waters−Micromass ZQ
PDA検出器:Waters 2996PDA
分析条件:
溶離剤A:HO(1%ギ酸)
溶離剤B:CHCN(1%ギ酸)
勾配:5〜95%溶離剤B
流速:1.5ml/分
カラム:Synergi 4μm Max−RP C12、80A、50×4.6mm(Phenomenex)
MS条件:
キャピラリー電圧:3.5kV
コーン電圧:30V
イオン源温度:120
脱溶媒和温度:230
【0255】
各実施例の出発材料は、特に断りのない限り市販されている。
実施例1
N−(4−クロロ−3−メチル−5−(モルホリン−イルメチル−チオフェン−2−イル)−3−フルオロ−モルホリン−4−イル−ベンズアミドの製造
1A. 3−フルオロ−5−モルホリン−4−イル−安息香酸の製造
【化18】

エタノール(100ml)中、3,5−ジ−フルオロ安息香酸(市販品)(10g、63.3mmol)の溶液に濃硫酸(5ml)を加え、この反応物を80℃で48時間加熱した。この反応混合物を蒸発させ、残渣を酢酸エチルと2N水酸化ナトリウムとで分液した。有機層を飽和ブライン溶液で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、濾過し、蒸発させ、3,5−ジ−フルオロ安息香酸エチルエステルを淡黄色の油状物として得(8.79g)、これを精製せずにそのまま次の工程で用いた。δH (400 MHz, CDCl3) 7.6 (m, 2H), 7.0 (m, 1H), 4.4 (q, 2H), 1.4 (t, 3H)
【0256】
ジメチルスルホキシド(250ml)中、3,5−ジ−フルオロ安息香酸エチルエステル(8.79g、47.5mmol)およびモルホリン(20ml)の混合物を攪拌しながら100℃で3日間加熱した。この反応物を冷却した後、ジエチルエーテルと水とで分液した。水層をジエチルエーテルで数回抽出し、有機層を合わせ、MgSOで乾燥させた後、その溶液を濾過し、減圧下で溶媒を蒸発させた。残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。1:4酢酸エチル:石油エーテルで溶出し、3−フルオロ−5−モルホリン−4−イル−安息香酸エチルエステルを黄色油状物として得た(4.8g)。δH (400MHz, CDCl3) 7.4 (s, 1H), 7.2 (d, 1H), 6.8 (d, 1H), 4.4 (q, 2H), 3.8 (t, 4H), 3.2 (t, 4H), 1.4(t, 3H) エタノール(20ml)中、3−フルオロ−5−モルホリン−4−イル−安息香酸エチルエステル(4.8g、18.9mmol)の溶液を2N水酸化ナトリウム(20ml)で処理し、この反応混合物を室温で一晩攪拌した。この反応混合物を減圧下で蒸発させ、残渣を酢酸エチルと水とで分液した。水層を2N HClで酸性化し、固体沈殿を濾過し、ジエチルエーテルで洗浄した後、乾燥させ、標題化合物を白色固体として得た(3.1g)。LC MS - M+H 226
【0257】
1B. 3−クロロ−4−メチル−5−アミノチオフェン−2−カルボン酸メチルエステルの製造
【化19】

無水酢酸(50ml)およびジクロロメタン(70ml)中、3−クロロ−4−メチル−チオフェン−2−カルボン酸メチルエステル(9g、47.37mmol)の溶液に、酢酸および濃硝酸の混合物(5:1、60ml)を室温で加えた。次に、得られた溶液を80℃で24時間加熱した。冷めたところで、減圧下で溶媒を除去し、残渣をジクロロメタン(250ml)に溶解した。有機溶液を飽和重炭酸ナトリウム溶液(50ml)およびブライン(50ml)で洗浄した後、MgSOで乾燥させた。得られた溶液を濾過し、減圧下で溶媒を除去し、粗生成物(12.9g)を得、これを精製せずにそのまま次の工程で用いた。
【0258】
ジオキサン(250ml)および水(50ml)中、この粗3−クロロ−4−メチル−5−ニトロチオフェン−2−カルボン酸メチルエステル(12.9g、54.9mmol)の溶液に、鉄粉(27.6g、0.494mol)、次いで硫酸鉄七水和物(33.6g、0.121mol)を加えた。次に、この反応混合物を4時間加熱還流した後、室温まで冷却した。次に、減圧下で溶媒を除去し、残渣を酢酸エチル(150ml)と1N HCl(100ml)とで分液した。有機層を分離した後、水層を飽和重炭酸ナトリウム溶液で塩基性とした。この溶液を酢酸エチル(2×250ml)で抽出し、有機層を合わせ、乾燥させ(MgSO)、濾過し、減圧下で溶媒を除去した。残渣を、15%酢酸エチル/石油エーテルで溶出するシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、標題化合物を白色結晶性固体として得た(1.77g、二工程で18%)。LC MS M+H 206
【0259】
1C.3−クロロ−5−(3−フルオロ−5−モルホリン−4−イル−ベンゾイルアミノ)−4−メチル−チオフェン−2−カルボン酸メチルエステル
【化20】

ジクロロメタン(100ml)中、3−モルホリノ−5−フルオロ安息香酸(2.42g、10.75mmol)の溶液に、塩化オキサリル(1.11ml、12.90mmol)、次いでジメチルホルムアミド(2滴)を加えた。次に、得られた溶液を室温、窒素雰囲気下で4時間攪拌した。その後、減圧下で溶媒を除去し、残渣をトルエン(2×50ml)とともに蒸発させることで共沸乾固させた。次に、得られた固体をジクロロメタン(100ml)に溶解し、この溶液にジイソプロピル−エチルアミン(5.62ml、32.19mmol)を加え、次いで実施例1Bのアミノチオフェン生成物(2.2g、10.73mmol)を注意しながら加えた。窒素下、室温で17時間攪拌した後、この反応混合物をジクロロメタン(150ml)で希釈し、1N HCl(50ml)で分液した。有機層を分離し、飽和重炭酸ナトリウム溶液(50ml)およびブライン(50ml)で連続的に洗浄し、乾燥させ(MgSO)、濾過し、濃縮した。酢酸エチル/石油エーテル(1:4)で溶出するフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、標題化合物を白色結晶性固体として得た(1.60g、36%)。LC MS M+H 413
【0260】
1D.3−クロロ−5−(3−フルオロ−5−モルホリン−4−イル−ベンゾイルアミノ)−4−メチル−チオフェン−2−カルボン酸
【化21】

メタノール:水[2:1](30ml)中、実施例1C(0.903g、1.9mmol)のエステル生成物の懸濁液に水酸化リチウム(0.33g、7.6mmol)を加え、この反応混合物を60℃で一晩加熱した。この溶液を減圧下で蒸発させ、残渣を酢酸エチルと水とで分液した。水層を酸性化し、酢酸エチルで抽出し、乾燥させ(MgSO)、濾過し、減圧下で蒸発させ、標題の粗化合物を橙色の泡沫として得た(0.6g)。LC MS M+H 399
【0261】
1E.N−[4−クロロ−3−メチル−5−(モルホリン−4−カルボニル)−チオフェン−2−イル]−3−フルオロ−5−モルホリン−4−イル−ベンズアミドの製造
【化22】

ジメチルスルホキシド(2ml)中、実施例1Dの生成物3−クロロ−5−(3−フルオロ−5−モルホリン−4−イル−ベンゾイルアミノ)−4−メチル−チオフェン−2−カルボン酸(100mg、0.25mmol)の溶液に、EDAC(72mg、0.37mmol)、HOAt(50mg、0.37mmol)、次いでモルホリン(22mg、0.25mmol)を加えた。この反応混合物を室温で一晩攪拌し、得られた固体を濾過し、メタノールで洗浄し、標題生成物を灰白色固体として得た(40mg)。LC MS M+H 469
【0262】
1F.N−[4−クロロ−3−メチル−5−(モルホリン−4−カルボチオイル)−チオフェン−2−イル]−3−フルオロ−5−モルホリン−4−イル−ベンズアミドの製造
【化23】

乾燥THF(40ml)中、実施例1Eの生成物N−[4−クロロ−3−メチル−5−(モルホリン−4−カルボニル)−チオフェン−2−イル]−3−フルオロ−5−モルホリン−4−イル−ベンズアミド(225mg、0.48mmol)の溶液にローソン試薬(235mg、0.58mmol)を加えた。この反応混合物を室温で一晩攪拌し、減圧下で蒸発乾固させた。酢酸エチル/石油エーテル(1:5)で溶出するフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、標題化合物を橙色固体として得た(185mg、80%)。LC MS M+H 484
【0263】
1G.N−(4−クロロ−3−メチル−5−(モルホリン−イルメチル−チオフェン−2−イル)−3−フルオロ−モルホリン−4−イル−ベンズアミドの製造
【化24】

乾燥THF(4ml)中、実施例1Fの生成物N−[4−クロロ−3−メチル−5−(モルホリン−4−カルボチオイル)−チオフェン−2−イル]−3−フルオロ−5−モルホリン−4−イル−ベンズアミド(50mg、0.11mmol)の溶液にヨウ化メチル(176mg、1.24mmol)を加えた。この反応混合物を室温で一晩攪拌し、減圧下で蒸発乾固させた。得られた暗橙色の結晶性残渣をメタノール(3ml)に再溶解し、水素化ホウ素ナトリウム(5mg、0.13mmol)で処理し、室温で3時間攪拌した。この反応混合物を1N水酸化ナトリウム(8ml)で希釈し、ジクロロメタンで抽出した。有機層を合わせ、ブライン溶液で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、減圧下で蒸発乾固させた。分取HPLCにより精製し、標題化合物を灰白色固体として得た(28mg、61%)。LC MS M+H 454
【0264】
実施例21−[5−tert−ブチル−2(4−フルオロ−フェニル)−2H−ピラゾール−3−イル]−3−(4−クロロ−3−メチル−5−モルホリン−4−イルメチル−チオフェン−2−イル)尿素の製造
2A.(3−クロロ−4−メチル−チオフェン−2−イル)−モルホリン−4−イル−メタノンの製造
【化25】

ジクロロメタン(450ml)中、3−クロロ−4−メチル−チオフェン−2−カルボン酸(20g、11.3mmol)の溶液に、EDAC(25.6g、13mmol)、HOBt(20g、13mmol)、次いでモルホリン(10ml、12mmol)を加えた。この反応混合物を室温で一晩攪拌した後、ジクロロメタン(500ml)で希釈した。この希釈した反応混合物を5%クエン酸溶液(300ml)およびブライン(300ml)で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、濾過し、減圧下で溶媒を除去し、標題化合物を粗生成物として得(〜23g)、これを精製せずにそのまま次の工程で用いた。LC MS M+H 246
【0265】
2B.(5−アミノ−3−クロロ−4−メチル−チオフェン−2−イル)−モルホリン−4−イル−メタノンの製造
【化26】

アセトニトリル(600ml)中、(3−クロロ−4−メチル−チオフェン−2−イル)−モルホリン−4−イル−メタノン(実施例2B)(9.4g、38mmol)の溶液に、0℃にてテトラフルオロホウ酸ニトロニウム(80mmol)を加えた。この反応混合物を18時間かけて室温にした後、水(700ml)で希釈し、ジクロロメタン(900ml)で抽出した。有機溶液を飽和重炭酸ナトリウム溶液(500ml)およびブライン(500ml)で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、濾過し、減圧下で溶媒を除去し、粗生成物(11g)を橙色の油状物として得、これを精製せずにそのまま次の工程で用いた。 ジオキサン(250ml)および水(50ml)中、粗生成物(11g、3.7mmol)の溶液に鉄粉(19g)、次いで硫酸鉄七水和物(23g)を加えた。次に、この反応混合物を4時間加熱還流した後、室温まで冷却した。その後、減圧下で溶媒を除去し、残渣を、酢酸エチル/石油エーテル混合物で溶出するシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、標題化合物を褐色油状物として得た(7.7g)。
LC MS M+H 261。これをそのまま実施例2Dの尿素形成反応で用いた。
【0266】
2C.5−tert−ブチル−2−(4−フルオロ−フェニル)−2H−ピラゾール−3−イルアミンの製造
【化27】

標題化合物はButt Park of Bath、UKから市販されており、あるいはまた次の方法に従って製造することができる。
EtOH(800ml)中、塩酸4−フルオロフェニルヒドラジン(30g、111.5mmol)の攪拌溶液に、ピボリルアセトニトリル(1当量)を加え、この反応混合物を10時間加熱還流した。室温まで冷却した後、減圧下で溶媒を除去し、残渣を、ジエチルエーテル/酢酸エチル混合物によるトリチュレーションにより精製し、標題化合物を淡褐色固体として得た(27.6g)。LC MS M+H 234
【0267】
2D.1−[5−tert−ブチル−2−(4−フルオロ−フェニル)−2H−ピラゾール−3−イル−3−[4−クロロ−3−メチル−5−(モルホリン−4−カルボニル)−チオフェン−2−イル]尿素の製造
【化28】

乾燥ジクロロメタン(350ml)中、(5−アミノ−3−クロロ−4−メチル−チオフェン−2−イル)−モルホリン−4−イル−メタノン(実施例2B)(8g)の攪拌溶液に、室温で、トルエン(65ml)中20%ホスゲンを加え、この反応混合物を18時間攪拌して、イソシアネートの形成を完了させた。減圧下で溶媒を除去し、残渣を乾燥ジクロロメタン(300ml)に再溶解し、乾燥ジクロロメタン(80ml)中、5−tert−ブチル−2−(4−フルオロ−フェニル)−2H−ピラゾール−3−イル−アミン(実施例2C)で滴下処理した後、この反応混合物を室温で24時間攪拌した。この反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウムで急冷し、ジクロロメタンで抽出した(3回)。有機層を合わせ、2N HCl、飽和ブライン溶液で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、濾過し、減圧下で溶媒を除去した。残渣を、5%メタノール/ジクロロメタンで溶出するシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、標題化合物を固体として得た(10.3g)。LC MS M+H 520
【0268】
2E.1−[5−tert−ブチル−2−(4−フルオロ−フェニル)−2H−ピラゾール−3−イル]−3−[4−クロロ−3−メチル−5−(モルホリン−4−カルボチオイル)−チオフェン−2−イル]尿素の製造
【化29】

乾燥THF中、1−[5−tert−ブチル−2−(4−フルオロ−フェニル)−2H−ピラゾール−3−イル]−3−[4−クロロ−3−メチル−5−(モルホリン−4−カルボニル)−チオフェン−2−イル]尿素(実施例2D)(2g、3.85mmol)の攪拌溶液にローソン試薬(1.87g、4.6mmol)を加え、この反応混合物を室温で一晩攪拌した。減圧下で溶媒を除去し、残渣を、1:1酢酸エチル/ヘキサンで溶出するシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、標題化合物を固体として得た(1.58g)。LC MS M+H 536
【0269】
2F.1−[5−tert−ブチル−2(4−フルオロ−フェニル)−2H−ピラゾール−3−イル]−3−(4−クロロ−3−メチル−5−モルホリン−4−イルメチル−チオフェン−2−イル)尿素の製造
【化30】

乾燥THF(150ml)中、(1.58g、2.95mmol)の攪拌溶液にヨウ化メチル(1.9ml、15当量)を加え、この反応混合物を50℃で一晩攪拌した。減圧下で溶媒を除去し、残渣を、乾燥メタノール(100ml)に再溶解し、水素化ホウ素ナトリウム(140mg,1.05当量)に再溶解した。次に、この反応混合物を室温で3時間攪拌した後、1N NaOH(100ml)で希釈し、酢酸エチルで抽出した(3回)。有機溶液を合わせ、ブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO)、濾過し、減圧下で溶媒を除去し、粗生成物を暗橙色固体として得た。3:1酢酸エチル/ヘキサンで溶出するシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、標題化合物を灰白色固体として得た(0.76g)。LC MS M+H 506
【0270】
実施例31−[5−tert−ブチル−2−(2,4−ジフルオロ−フェニル)−2H−ピラゾール−3−イル]−3−(4−クロロ−3−メチル−5−モルホリン−4−イルメチル−チオフェン−2−イル)−尿素
【化31】

標題化合物を、実施例2に記載の手順に従い、(5−アミノ−3−クロロ−4−メチル−チオフェン−2−イル)−モルホリン−4−イル−メタノン(実施例2B)および5−tert−ブチル−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−2H−ピラゾール−3−イルアミンから製造した。LC MS M+H 524
【0271】
実施例41−(4−クロロ−3−メチル−5−モルホリン−4−イルメチル−チオフェン−2−イル)−3−[5−(テトラヒドロ−フラン−2−イル)−[1,3,4]チアジアゾール−2−イル]−尿素
【化32】

標題化合物を、実施例2に記載の手順に従い、(5−アミノ−3−クロロ−4−メチル−チオフェン−2−イル)−モルホリン−4−イル−メタノン(実施例2B)および5−(テトラヒドロ−フラン−2−イル)−[1,3,4]チアジアゾール−2−イルアミン(市販品)から製造した。LC MS M+H 444
【0272】
生物活性
実施例5
p38 MAPキナーゼ阻害活性
p38 MAPキナーゼ阻害活性(IC50)の測定
以下に示すプロトコールを用い、本発明の化合物のp38 MAPキナーゼ阻害活性を試験した。
【0273】
このアッセイでは、p38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼの不活性なαイソ型を用いた。このキナーゼの構造は2.1−A分解能で、Wang Z, Harkins PC, Ulevitch RJ, Han J, Cobb MH and Goldsmith EJ. in Proc. Natl. Acad. Sci. U S A 1997 Mar 18;94(6):2327により論文に記載されている。p38 MAPキナーゼのαイソ型は、Upstate Biotechnologyから入手したMKK6キナーゼを用いて活性化した。このMAPキナーゼキナーゼMKK6によるp38マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼイソ型の選択的活性化は、Enslen, H; Raingeaud, J and Davis, R J in The Journal of Biological Chemistry, Volume 273, Issue 3, January 16, 1998, Pages 1741-1748により論文に記載されている。
【0274】
プロトコールは次の通りである。1mlの新しいアッセイバッファー(25mM HEPES pH7.4、25mM β−グリセロホスフェート、5mM EDTA、15mM MgCl、100μM ATP、1mMオルトバナジウム酸ナトリウム、1mM DTT)、35μgの不活性な精製α p38および0.12gの活性型MKK6(1688 U/mg−Upstate Biotechnology)を混合し、室温で一晩インキュベートしてp38を活性化する。活性化したp38を、次に、ATPを含まないアッセイバッファーで6倍希釈し、96ウェルプレート内で10μlを、DMSO中に試験化合物を種々の割合で希釈したもの(1.7%まで)5μlと混合し、室温で1.5時間インキュベートする。次に、10μlのMBPミックス(150μl 10倍強度のアッセイバッファー(250mM HEPES pH7.4、250mM β−グリセロホスフェート、50mM EDTA、150mM MgCl)、1.5μlの10mM DTTおよび10mMオルトバナジウム酸ナトリウム、17.5μlの10mM ATP、713μl HO、35μCiγ33P−ATP、100μlのミエリン塩基性タンパク質(MBP)(5mg/ml))を各ウェルに加える。MBPは分子量18.4kDaのウシ起源のタンパク質であり、Upstate Biotechnologyから得られる。50分間反応を行った後、過剰量のオルトリン酸(12.5%を5μl)で停止させる。
【0275】
ミリポアMAPHフィルタープレート上で、ミエリン塩基性タンパク質組み込まれずに残ったγ33P−ATPをリン酸化MBPから分離する。MAPHプレートのウェルを0.5%オルトリン酸で湿らせた後、反応産物をミリポア真空濾過装置でウェル中から濾過する。濾過後、残渣を200μlの0.5%オルトリン酸で2回洗浄する。フィルターが乾いたところで、25μlのMicroscint 20(商標)シンチラントを加え、その後、Packard Topcountで30秒間計数を行う。p38活性の阻害率%を算出し、プロットしてp38活性の50%阻害に必要な試験化合物の濃度(IC50)を求める。
【0276】
このアッセイを用いて実施例1〜4の化合物を試験したところ、総てp38活性を阻害することが分かった。これらの化合物のIC50は総て5μM未満であった。
【0277】
実施例6
THP−1細胞における、LPSにより誘導されるTNF−α生産の阻害 in vitroアッセイ
本発明の化合物の、TNF−α放出を阻害する能力は、Rawlins P., et al., “Inhibition of ebdotoxin-induced TNF-α production in macrophages by 5Z-7-oxo-zeaenol and other fungal resorcyclic acid lactones,”International J. of Immunopharmacology, 21, 799, (1999)に記載されている方法に若干の改変して測定することができる。
【0278】
THP−1細胞(ヒト単球白血病細胞系統、ECACC)は、培養培地[RPMI 1640(Invitrogen)および2mM L−グルタミンに10%ウシ胎児血清(Invitrogen)を添加したもの]中、約37℃、5%CO加湿下、静置培養にて維持する。
【0279】
THP−1細胞を50ng/ml PMA(SIGMA)を含有する培養培地に懸濁させ、96ウェル組織培養プレート(IWAKI)に、1×10細胞/ウェル(100μl/ウェル)で接種し、上記のように約48時間インキュベートする。次に、培地を吸引し、ウェルをリン酸緩衝生理食塩水で2回洗浄し、培養培地中、1g/ml LPS(SIGMA)を加える(200μl/ウェル)。
【0280】
試験化合物をDMSO(SIGMA)で再構成した後、DMSO終濃度が0.1%となるように培養培地で希釈する。試験溶液またはDMSOのみを含む培地(溶媒対照)の20μlアリコートをウェル3個ずつに加えた後、すぐにLPSを加え、上記のように6時間インキュベートする。培養上清を集め、ヒトTNF−αの存在量を、製造業者の使用説明書に従って行うELISA(R&D Systems)により測定する。
【0281】
IC50は、阻害曲線の非線形回帰分析により対照活性の最大阻害の半分の阻害に相当する試験化合物の濃度と定義される。
【0282】
実施例7
C−rafキナーゼ阻害活性(IC50)の測定
ヒトc−raf(Upstate)を50mM Tris pH7.5、0.1mM EGTA、0.1mMバナジウム酸ナトリウム、0.1%β−メルカプトエタノール、1mg/ml BSA中、10倍実施溶液として希釈する。1ユニットとは、1分当たり1nmolをミエリン塩基性タンパク質に組み込むことに相当する。
【0283】
最終反応量25μl中、c−raf(5〜10mU)を25mM Tris pH7.5、0.02mM EGTA、0.66mg/mlミエリン塩基性タンパク質、10mM酢酸マグネシウム、[γ−33p−ATP](比活性約500cpm/pmol、必要に応じた濃度)および適当な濃度の阻害剤または対照としての希釈剤とともにインキュベートする。Mg2+[γ−33P−ATP]を添加することにより反応を開始させる。室温で40分間インキュベーションした後、3%リン酸溶液5μlを添加することにより反応を停止させる。反応混合物10μlをP30フィルター上にスポットし、75mMリン酸中で5分間3回、メタノール中で1回洗浄した後、乾燥させ、計数してC−raf活性を求める。
【0284】
C−rafキナーゼ活性の阻害%を算出し、プロットしてC−rafキナーゼ活性の50%阻害に必要な試験化合物の濃度(IC50)を求める。
実施例1および4の化合物のIC50値は25μM未満であることが分かり、実施例2および3の化合物のIC50値は1μM未満であることが分かった。
【0285】
実施例8
異種移植試験
本発明の化合物の抗癌特性は、異種移植試験を用いて判定することができる。この試験を用いれば、正常マウスにおいてC26腫瘍により誘発される体重減少率に対する試験化合物の作用、すなわち抗腫瘍作用を求め、バイオマーカーの評価のための組織を作り出すことができる。
【0286】
プロトコール
雄Balb cマウス(4〜5週齢)の右腋下領域にマウスC26腫瘍断片を皮下移植する(第0日)。腫瘍が150mgに達した際に処置を開始し、腫瘍重と体重の平均群間分散が10%未満となるように動物を分類した。その後、動物に、ビヒクル中の試験化合物かビヒクル単独かのいずれかを、8時間および16時間間隔で1日2回、静脈投与する。ビヒクルは、10%DMSO:20%PEG200:70%ヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリン(水中25%w/v)をNaOHで必要に応じてpH4〜8の間に調整したものである。投与量は10ml/kgである。この試験は二部構成で行う。まず、マウス3個体の群(開始腫瘍量100mg)で最大許容量(MTD)を求める。次に、体重低下と腫瘍荷重に対する試験物質の作用をマウス12個体の群で、MTDの部分用量(1〜100mg/kgの範囲と思われる)で判定する。投与期間は、対照動物群と試験動物群の間の測定値が統計学的に有意な適当な水準となるのに必要なだけ延長すればよい。試験から得られる測定値としては、腫瘍荷重と体重を含む(1週間に3回測定)。食物摂取量も測定することができる。体重および腫瘍量の経時的変化を用い、試験の進行をモニタリングし、臨床エンドポイントを見極める。腫瘍および血漿サンプルを、例えばサイトカインなどのバイオマーカー特性および/または化合物濃度の決定に関してさらに検討することができる。この試験プロトコールは、Strassmann et al (Strassmann et al, 1992, J Clin Invest, 89, 1681-1684; Strassmann et al, 1993, J Clin Invest, 92, 2152-2159; Strassmann et al 1993, Cytokine, 5(5), 463-468に様々な記載がある方法論を基にすることができる。
【0287】
実施例9
Tie2、VEGFR2、EPHB2、FGFR−3のキナーゼアッセイ
上記キナーゼに対する活性のアッセイは、ドイツのFreiburg のプロキナーゼGmbHにより提供されている33PanQinase(登録商標)活性アッセイを用いて行うことができる。このアッセイは96ウェルFlashPlates(商標)(PerkinElmer)で行う。反応カクテル(最終量50μl)は、20μlアッセイバッファー(最終組成60mM HEPES−NaOH、pH7.5、3mM MgCl、3μM オルトバナジウム酸ナトリウム、1.2mM DTT、50μg/mlPEG2000、5μl ATP溶液(終濃度1μM[□−33P]−ATP(約5×10cpm/ウェル))、5μl試験化合物(10%DMSO中)、10μl基質/10μl酵素溶液(混合済みのもの)からなる。酵素および基質の最終使用量を以下に示す。
【0288】
【表2】

これらの反応カクテルを30℃で80分間インキュベートする。次に、反応を50μlの2%HPOで停止させ、プレートを吸引し、200μlの0.9%NaClで2回洗浄する。33Piの組み込みはマイクロプレートシンチレーションカウンターで測定する。そのデータからバックグラウンド値を差し引いた後、各ウェルの残留活性を算出する。IC50値をPrism 3.03を用いて算出する。
【0289】
医薬処方物
実施例10
(i)錠剤処方物
式(I)の化合物を含有する錠剤組成物は、化合物50mgと、希釈剤としてのラクトース(BP)197mg、および滑沢剤としてのステアリン酸マグネシウム3mgとを混合し、公知の方法で打錠することにより製造する。
【0290】
(ii)カプセル処方物
カプセル処方物は、式(I)の化合物100mgとラクトース100mgを混合し、得られた混合物を標準的な不透明ゼラチン硬カプセルに充填することにより製造する。
【0291】
(iii)注射処方物I
注射投与用の非経口組成物は、10%プロピレングリコールを含有する水に式(I)の化合物(例えば、塩形態)を、有効化合物濃度1.5重量%となるように溶解することにより製造することができる。次に、この溶液を濾過除菌し、アンプルに充填し、密閉する。
【0292】
(iv)注射処方物II
注射用非経口組成物は、式(I)の化合物(例えば、塩形態)(2mg/ml)とマンニトール(50mg/ml)を水に溶解し、この溶液を濾過除菌し、密閉可能な1mlバイアルまたはアンプルに充填することにより製造する。
【0293】
(v)皮下注射処方物
皮下投与用組成物は、式(I)の化合物を、濃度5mg/mlとなるように医薬級のコーン油と混合することにより製造する。この組成物を除菌し、好適な容器に充填する。
【0294】
(vi)エアゾール処方物
吸入投与用エアゾール処方物は、微粉化した式(I)の化合物(60mg)をアルミ缶に直接秤り取った後、真空フラスコから1,1,1,2−テトラフルオロエタン(13.2gまで)を加えることにより製造する。定量バルブを正しい位置に合わせ、密閉した缶を5分間音波処理する。得られた処方物は式(I)の化合物を、1回250mgの量でエアゾールとして送達する。
【0295】
均等
上記の実施例は、本発明を説明する目的で記載したものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の原理から逸脱することなく、上記に記載され、また、実施例で示された本発明の特定の実施形態に対して数多くの変形や変更をなし得ることが、容易に分かるであろう。このような変形や変更は総て本願に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で示される化合物、またはその塩、溶媒和物もしくはN−オキシド:
【化1】

[式中、
およびRが同じであるか、または異なり、それぞれ水素、飽和C1−3ヒドロカルビル、ハロゲンおよびシアノから選択され、
Xが、C=O、C=S、C(=O)NH、C(=S)NH、C(=O)O、C(=O)S、C(=S)OおよびC(=S)Sから選択され、
が、それぞれ5〜12個の環員を有し、非置換であるか、または1以上の置換基R10により置換されているアリール基およびヘテロアリール基から選択され、
10が、ハロゲン、ヒドロキシ、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、カルボキシ、アミノ、モノ−またはジ−C1−4ヒドロカルビルアミノ、3〜12個の環員を有する炭素環式基および複素環式基;基R−R[ここで、Rが、結合、O、CO、XC(X)、C(X)X、XC(X)X、S、SO、SO、NR、SONRまたはNRSOであり、かつ、Rが、水素、3〜12個の環員を有する炭素環式基および複素環式基、ならびにC1−8ヒドロカルビル基であって、ヒドロキシ、オキソ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、カルボキシ、アミノ、モノ−またはジ−C1−4ヒドロカルビルアミノ、3〜12個の環員を有する炭素環式基および複素環式基から選択される1以上の置換基によって場合により置換されていてもよいC1−8ヒドロカルビル基(ここで、このC1−8ヒドロカルビル基の1以上の炭素原子はO、S、SO、SO、NR、XC(X)、C(X)XまたはXC(X)X基によって場合によって置換されていてもよい)から選択される]から選択されるか、または隣接する2つの基R10が、それらが結合している炭素原子またはヘテロ原子と一緒になって、5員ヘテロアリール環または5員もしくは6員の非芳香族複素環式環を形成してもよく、ここで、これらのヘテロアリール基および複素環式基はN、OおよびSから選択される3個までのヘテロ原子環員を含み、
が、水素およびC1−4ヒドロカルビルから選択され、かつ
が、O、SまたはNRであり、Xが=O、=Sまたは=NRであり;
およびRが同じであるか、または異なり、水素およびメチルから選択されるか、またはRおよびRの一方がヒドロキシメチルおよびエチルから選択され、他方が水素であり、かつ
およびRが同じであるか、または異なり、水素およびメチルから選択される]。
【請求項2】
が単環式アリールまたはヘテロアリール基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、非置換または置換フェニル、インデニル、テトラヒドロナフチル、ナフチル、ピリジル、ピロリル、フラニル、チエニル、イミダゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、オキサトリアゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル(例えば、[1,3,4]−チアジアゾリル)、ピラゾリル、ピラジニル、ピリミジニル、トリアジニル、キノリニル、イソキノリニル、テトラゾリル、ベンズフラニル、クロマニル、チオクロマニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾキサゾリル、ベンズイソキサゾリル、ベンズチアゾリルおよびベンズイソチアゾリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、インドリジニル、インドリニル、イソインドリニル、プリニル(例えば、アデニン、グアニン)、インダゾリル、ベンゾジオキソリル、クロメニル、イソクロメニル、クロマン、イソクロマニル、ベンゾジオキサニル、キノリジニル、ベンゾキサジニル、ベンゾジアジニル、ピリドピリジニル、ピラゾロピリジン、ピラゾロピリミジン、ピロロピリジン、ピロロピリミジン、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、フタラジニル、ナフチリジニルおよびプテリジニルから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
が単環式アリール基である、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
が少なくとも1個の窒素原子を含む単環式ヘテロアリール基である、請求項2に記載の化合物。
【請求項6】
前記ヘテロアリール基がピラゾリルおよびチアジアゾリル(例えば、[1,3,4]−チアジアゾリル)から選択される、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
前記アリール基またはヘテロアリール基Rが、ハロゲン、4〜7個の環員を有する炭素環式基および複素環式基、ならびに場合によって置換されていてもよいC1−8ヒドロカルビル基から選択される1以上の置換基R10を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
基Rが、4〜7個の環員を有する炭素環式基または複素環式基である置換基R10を含む、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
前記炭素環式基または複素環式基が炭素窒素結合を介してアリールまたはヘテロアリール環と結合している、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
前記炭素環式基または複素環式基が、少なくとも1個の窒素原子環員または酸素原子環員を含む4〜7員(より一般には、5〜6員)の複素環式基Rである、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
が、モルホリノ、ピペリジノ、ピペラジノ、N−メチルピペラジン、テトラヒドロフラニルおよびピロリジノから選択される、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
がモルホリノである、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
がテトラヒドロフラニル(例えば、2−テトラヒドロフラニル)である、請求項11に記載の化合物。
【請求項14】
が1または2個のメタ置換基を有するフェニル基である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
前記フェニル環上の一方のメタ位が非置換であるか、またはフッ素、塩素、メトキシ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチル、エチル、メチルおよびイソプロピルから選択される基R10により置換され、かつ、他方のメタ位が、フッ素、塩素、メトキシ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチル、エチル、メチル、イソプロピル、イソブチル、t−ブチル、フェニル、置換フェニル、ならびに5員および6員の単環式複素環式基から選択される基により置換されている、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
前記フェニル環上の両メタ位が置換されており、一方の置換基がハロゲン、好ましくはフルオロであり、他方の置換基が請求項10〜13のいずれか一項で定義された基Rである、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
一方の置換基がフッ素であり、他方の置換基がモルホリン−4−イルである、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
が2個までの置換基、例えば、1または2個の置換基により置換されているピラゾール基である、請求項8に記載の化合物。
【請求項19】
前記ピラゾール基が、隣接していない環員上に存在する2個の置換基により置換されている、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
前記置換基の少なくとも1個が、基Xに結合している環員に対してメタまたはβの位置に存在する、請求項18または請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
前記ピラゾール基環が、場合によって置換されていてもよいフェニル基(例えば、4−フルオロフェニルまたは2,4−ジフルオロフェニル)およびC1−4ヒドロカルビル基(例えば、tert−ブチル)により置換されている、請求項18〜20のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項22】
XがC=OまたはC(=O)NHである、請求項1〜21のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項23】
XがC=Oである、請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
XがC(=O)NHである、請求項22に記載の化合物。
【請求項25】
が、水素、飽和C1−3ヒドロカルビルおよびハロゲン(例えば、塩素およびフッ素)から選択される、請求項1〜24のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項26】
が、水素、飽和C1−3ヒドロカルビルおよびハロゲン(例えば、塩素およびフッ素)から選択される、請求項1〜25のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項27】
がハロゲンである、請求項1〜26のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項28】
ハロゲンが塩素である、請求項27に記載の化合物。
【請求項29】
が飽和C1−3ヒドロカルビル基である、請求項1〜28のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項30】
前記飽和C1−3ヒドロカルビル基がメチルである、請求項29に記載の化合物。
【請求項31】
置換基RおよびRを構成している炭素、ハロゲンおよび窒素原子の総数が5を超えない、請求項1〜30のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項32】
置換基RおよびRを構成している炭素、ハロゲンおよび窒素原子の総数が0〜4の範囲、例えば、0、1、2または3である、請求項31に記載の化合物。
【請求項33】
(a)R=塩素とR=メチル;(b)R=塩素とR=水素;(c)R=水素とR=水素;(d)R=メチルとR=水素;(e)R=シアノとR=メチル;および(f)R=メチルとR=シアノから選択される基RおよびRの組合せを含む、請求項1〜32のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項34】
基RおよびRの組合せが前記組合せ(a)である、請求項3に記載の化合物。
【請求項35】
が水素である、請求項1〜34のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項36】
が水素である、請求項1〜35のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項37】
が水素である、請求項1〜36のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項38】
が水素である、請求項1〜37のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項39】
XがC=OまたはC=Sであり、Rが、Xが結合しているRの原子に隣接している原子と結合している置換基R−Rを有し、かつ、Rが炭素環式基もしくは複素環式基、または炭素環式基もしくは複素環式基により置換されているC1−8ヒドロカルビルであるとき、Rが、結合、O、CO、XC(X)X、S、SOおよびSOから選択されるものである、請求項1〜38のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項40】
XがCOであるとき、Rが、Xが結合している環原子に隣接している環原子上に置換基を有する縮合二環式芳香基または部分芳香基以外のものである、請求項1〜39のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項41】
N−(4−クロロ−3−メチル−5−(モルホリン−イル メチル−チオフェン−2−イル)−3−フルオロ−モルホリン−4−イル−ベンズアミド;
1−[5−tert−ブチル−2(4−フルオロ−フェニル)−2H−ピラゾール−3−イル]−3−(4−クロロ−3−メチル−5−モルホリン−4−イルメチル−チオフェン−2−イル)尿素;
1−[5−tert−ブチル−2−(2,4−ジフルオロ−フェニル)−2H−ピラゾール−3−イル]−3−(4−クロロ−3−メチル−5−モルホリン−4−イルメチル−チオフェン−2−イル)−尿素;および
1−(4−クロロ−3−メチル−5−モルホリン−4−イルメチル−チオフェン−2−イル)−3−[5−(テトラヒドロ−フラン−2−イル)−[1,3,4]チアジアゾール−2−イル]−尿素
から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項42】
塩、溶媒和物またはN−オキシドの形態にある、請求項1〜41のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項43】
薬剤に用いるための、例えば、治療に用いるための、請求項1〜42のいずれか一項に記載の式(I)の化合物。
【請求項44】
請求項1〜42のいずれか一項で記載の式(I)の化合物を医薬上許容される担体とともに含んでなる、医薬組成物。
【請求項45】
請求項1〜42のいずれか一項に記載の式(I)の化合物を医薬上許容される担体とともに含んでなる、吸入投与用の医薬組成物。
【請求項46】
吸入可能な乾燥粉末組成物およびエアゾール組成物から選択される、請求項45に記載の医薬組成物。
【請求項47】
p38 MAPキナーゼにより媒介される病態または症状の予防または処置に用いるための、請求項1〜42のいずれか一項で定義された式(I)の化合物。
【請求項48】
p38 MAPキナーゼにより媒介される病態または症状の予防または処置用の薬剤の製造のための、請求項1〜42のいずれか一項に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項49】
p38 MAPキナーゼにより媒介される病態または症状を予防または処置する方法であって、それを必要とする被験体(例えば、ヒト被験体)に請求項1〜42のいずれか一項に記載の式(I)の化合物を投与することを含む、方法。
【請求項50】
p38 MAPキナーゼを阻害する方法であって、p38 MAPキナーゼと請求項1〜42のいずれか一項に記載の式(I)のキナーゼ阻害化合物とを接触させることを含む、方法。
【請求項51】
請求項1〜42のいずれか一項に記載の式(I)の化合物を用いてp38 MAPキナーゼの活性を阻害することにより細胞プロセスを調整する方法であって、式(I)の化合物を、p38 MAPキナーゼを含む細胞環境と接触させることを含む、方法。
【請求項52】
p38 MAPキナーゼにより媒介される病態または症状が、
(i)ライター症候群、急性滑膜炎、関節リウマチ、変形性関節症、リウマチ性脊椎炎、痛風性関節炎、外傷性関節炎、風疹性関節炎、乾癬性関節炎、移植片対宿主反応および同種移植拒絶反応などの炎症性および関節性の疾病および症状;
(ii)気腫、慢性肺炎症性疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、成人呼吸窮迫症候群および急性呼吸窮迫症候群(ARDS)などの慢性炎症性肺疾患;
(iii)結核、珪肺症、肺サルコイドーシス、肺繊維症および細菌性肺炎などの肺の疾患および症状;
(iv)炎症性腸疾患、クローン病および潰瘍性大腸炎などの腸管の炎症性疾患および症状;
(v)敗血症、敗血症ショック、内毒素ショック、グラム陰性敗血症および内毒素に誘発される炎症反応などの毒素性ショック症候群ならびに関連の疾病および症状;
(vi)アルツハイマー病;
(vii)再潅流傷害;
(vii)アテローム性動脈硬化症;筋肉変性;痛風;脳性マラリア;骨再吸収疾患;インフルエンザなどの感染による発熱および筋肉痛;悪液質、特に、感染または悪性疾患に続発する悪液質、後天性免疫不全症候群(AIDS)に続発する悪液質;AIDS;ARC(AIDS関連症候群);ケロイド形成;瘢痕組織形成;不全麻痺(pyresis)および喘息から選択される疾病および症状
から選択される、請求項43〜49のいずれか一項に記載の使用のための化合物、使用または方法。
【請求項53】
前記病態または症状が炎症性の疾患および症状、関節リウマチならびに変形性関節症から選択される、請求項52に記載の使用のための化合物、使用または方法。
【請求項54】
前記病態または症状が慢性閉塞性肺疾患(COPD)である、使用のための化合物、使用または方法。
【請求項55】
請求項52〜54に記載の病態または症状から選択される病態または症状の予防または処置に用いるための、請求項1〜42のいずれか一項に記載の式(I)の化合物。
【請求項56】
請求項52〜54に記載の病態または症状から選択される病態または症状の予防または処置用の薬剤の製造のための、請求項1〜42のいずれか一項に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項57】
請求項50〜52にに記載の病態または症状から選択される病態または症状を予防または処置する方法であって、それを必要とする被験体(例えば、ヒト被験体)に請求項1〜42のいずれか一項に記載の式(I)の化合物を投与することを含む、方法。
【請求項58】
癌の処置または予防に用いるための、請求項1〜42のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項59】
癌の処置または予防用の薬剤の製造のための、請求項1〜42のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項60】
哺乳類における異常な細胞増殖を含む疾病または症状またはそれに起因する疾病または症状を処置する方法であって、治療上有効な量の、請求項1〜42のいずれか一項に記載の化合物を、前記哺乳類に投与することを含む、方法。
【請求項61】
異常な細胞増殖に起因する病態または症状の予防または処置用の薬剤の製造のための、請求項1〜42のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項62】
哺乳類における異常な細胞増殖を含む疾病または症状またはそれに起因する疾病または症状を処置する方法であって、請求項1〜42のいずれか一項で定義された化合物を、異常な細胞増殖を阻害するのに有効な量で前記哺乳類に投与することを含む、方法。
【請求項63】
哺乳類における異常な細胞増殖を含む疾病または症状またはそれに起因する疾病または症状の罹患率を緩和または低減する方法であって、請求項1〜42のいずれか一項に記載の化合物を、異常な細胞増殖を阻害するのに有効な量で前記哺乳類に投与することを含む、方法。
【請求項64】
本明細書に開示される病態または症状の罹患率を緩和または低減する方法であって、患者(例えば、それを必要とする患者)に、請求項1〜42のいずれか一項に記載の化合物(例えば、治療上有効な量)を投与することを含む、方法。
【請求項65】
rafキナーゼ(B−rafまたはC−raf)により媒介される病態または症状の予防または処置用の、請求項1〜42のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項66】
rafキナーゼ(B−rafまたはC−raf)により媒介される病態または症状の予防または処置用の薬剤の製造のための、請求項1〜42のいずれか一項で定義された化合物の使用。
【請求項67】
rafキナーゼ(B−rafまたはC−raf)により媒介される病態または症状を予防または処置する方法であって、それを必要とする被験体に請求項1〜42のいずれか一項に記載の化合物を投与することを含む、方法。
【請求項68】
哺乳類における異常な細胞増殖を含む疾病または症状またはそれに起因する疾病または症状を処置する方法であって、請求項1〜42のいずれか一項に記載の化合物を、rafキナーゼ(B−rafまたはC−rafなど)活性を阻害するのに有効な量で前記哺乳類に投与することを含む、方法。
【請求項69】
rafキナーゼ(B−rafまたはC−rafなど)を阻害する方法であって、該キナーゼと、請求項1〜42のいずれか一項に記載のキナーゼ阻害化合物とを接触させることを含む、方法。
【請求項70】
請求項1〜42のいずれか一項に記載の化合物を用いてrafキナーゼ(B−rafまたはC−rafなど)の活性を阻害することにより、細胞プロセス(例えば、増殖または細胞分裂)を調整する方法。
【請求項71】
rafキナーゼ(B−rafまたはC−rafなど)により媒介される病態または症状の診断および処置方法であって、(i)患者が罹患しているか、または罹患している可能性のある疾病または症状が、rafキナーゼ(B−rafまたはC−rafなど)に対して活性を有する化合物による処置に対する感受性があるものであるかどうかを判定するスクリーニングを患者に対して行い、(ii)該患者の疾病または症状に前記感受性があることが示された場合は、前記患者に請求項1〜42のいずれか一項に記載の化合物を投与することを含む、方法。
【請求項72】
スクリーニングを受け、rafキナーゼ(B−rafまたはC−rafなど)に対して活性を有する化合物による処置に感受性があると考えられる病態または症状に罹患している、または罹患するリスクがあると判定された患者における疾病または症状の処置または予防用の薬剤の製造のための、請求項1〜42のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項73】
不適切な、または過剰な、または望ましくない脈管形成の予防または処置に用いるための、請求項1〜42のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項74】
不適切な、または過剰な、または望ましくない脈管形成の予防または処置用の薬剤の製造のための、請求項1〜42のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項75】
受容体チロシンキナーゼ、特に、FGFR、Tie、VEGFRおよび/またはEph(より詳しくは、FGFR−1、FGFR−2、FGFR−3、Tie2、VEGFR−2およびEphB2から選択されるチロシンキナーゼ)のアップレギュレーションを特徴とする疾病または症状の予防または処置または緩和に用いるための、請求項1〜42のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項76】
受容体チロシンキナーゼ、特に、FGFR、Tie、VEGFRおよび/またはEph(より詳しくは、FGFR−1、FGFR−2、FGFR−3、Tie2、VEGFR−2およびEphB2から選択されるチロシンキナーゼ)のアップレギュレーションを特徴とする疾病または症状の予防または処置または緩和用の薬剤の製造のための、請求項1〜42のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項77】
in vitroまたはin vivoにおいて脈管形成を阻害する方法であって、細胞と、有効量の請求項1〜42のいずれか一項に記載の化合物とを接触させることを含む、方法。
【請求項78】
不適切な、または過剰な、または望ましくない脈管形成を処置または緩和する方法であって、脈管形成の阻害により緩和される前記疾病または症状に罹患している被験体に、治療上有効な量の請求項1〜42のいずれか一項に記載の化合物を投与することを含む、方法。
【請求項79】
受容体チロシンキナーゼのアップレギュレーションを特徴とする疾病または症状、好ましくは癌を処置する方法であって、
(i)受容体チロシンキナーゼ(例えば、FGFR、Tie、VEGFRおよび/またはEphから、より詳しくは、FGFR−1、FGFR−2、FGFR−3、Tie2、VEGFR−2およびEphB2から選択される受容体チロシンキナーゼ)のアップレギュレーションまたはその活性化突然変異体を特徴とする疾病または症状、好ましくは癌に罹患している被験体を診断し、
(ii)前記被験体に治療上有効な量の請求項1〜42のいずれか一項に記載の化合物を投与すること
を含む、方法。
【請求項80】
(a)rasまたはrafの活性化突然変異体、
(b)rasまたはrafのアップレギュレーション、
(c)アップレギュレーションされたraf−MEK−ERK経路シグナル、または
(d)ERB2およびEGFRなどの増殖因子受容体のアップレギュレーション
を伴う疾病、例えば癌を処置する方法であって、
(i)(a)rasまたはrafの活性化突然変異体;
(b)rasまたはrafのアップレギュレーション;
(c)アップレギュレーションされたraf−MEK−ERK経路シグナル;または
(d)ERB2およびEGFRなどの増殖因子受容体のアップレギュレーション
を伴う疾病に罹患している被験体を診断し、
(ii)前記被験体に、治療上有効な量の請求項1〜42のいずれか一項に記載のrafキナーゼ阻害化合物を投与すること
を含む、方法。
【請求項81】
請求項1〜42のいずれか一項に記載の化合物の製造方法であって、ヨウ化メチルなどのアルキル化剤を用い、式(X)の化合物のS−アルキル化(例えば、メチル化)を行い、チオイミデート中間体を得、
【化2】


(i)前記チオイミデート中間体をホウ化水素などの還元剤により還元し、RおよびRが水素である式(I)の化合物を得るか、または
(ii)前記チオイミデート中間体を、メチルリチウムまたはメチルグリニャール試薬で処理し、次いでホウ化水素などの還元剤で処理し、RおよびRがメチルである式(I)の化合物を得るか、または
(iii)前記チオイミデート中間体を、1当量を超えるメチルリチウムまたはメチルグリニャール試薬で処理し、RおよびRがメチルである式(I)の化合物を得ること
を含む、方法。
【請求項82】
式(X)の化合物:
【化3】

(式中、R〜RおよびXは請求項1〜42のいずれか一項に記載される通りである)。

【公表番号】特表2007−532615(P2007−532615A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507834(P2007−507834)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【国際出願番号】PCT/GB2005/001350
【国際公開番号】WO2005/100338
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(504162110)アステックス、セラピューティックス、リミテッド (45)
【氏名又は名称原語表記】ASTEX THERAPEUTICS LIMITED
【Fターム(参考)】