説明

半導体ウェハの平坦化方法および平坦化装置ならびに平坦度が改善された半導体ウェハ

【課題】65nmまたはそれよりも小さい線幅で素子を製造するのに適しており、(殊にエッジ領域における)平坦性およびナノトポグラフィを向上させた半導体ウェハを提供する。
【解決手段】半導体ウェハの特性を表すパラメータを位置に依存して測定し、位置に依存するこれらのパラメータの値を、半導体ウェハの面全体にわたり求めるステップa)と、半導体ウェハの面全体を、エッチング媒体を作用させると同時に半導体ウェハの面全体を照射しながらエッチング処理するステップb)が設けられている。その際、エッチング処理の除去率を半導体ウェハの面における光強度に依存させ、ステップa)において測定された位置に依存するパラメータの値における差異が位置に依存する除去率により低減されるよう、光強度を位置に依存して設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局所的に材料除去を異ならせたエッチング処理により半導体ウェハを平坦化する方法および装置に関する。本発明はさらに、平坦度およびナノトポグラフィの改善された半導体ウェハならびに上述の方法により実現可能な層厚の均一なSOIウェハに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハたとえば半導体産業で利用するための単結晶シリコンウェハは高度な平坦性を有していなければならず、殊にその目的は集積回路製造に関する要求を考慮するためである。一般に認められているFaustルールによれば、半導体ウェハのSFQRmax値は半導体ウェハ上に製造すべき素子の線幅よりも大きくてはならない。しかも、できるかぎり多くの個数の回路を集積できるようにするためには、要求される平坦度が表側の面においてエッジのできるかぎり近くまで保証されていなければならない。なお、ここでは素子を製造すべき側を表側ないしは表側の面として定義する。つまりこのことが意味するのは、エッジの除外領域をできるかぎり僅かにして平坦度の測定を実施しなければならないこと、指定された平坦度の値をいわゆるフルサイトに関してすなわち全体的にだけでなくパーシャルサイトに関してもすなわち局所的にも満たさなければならないことである(フルサイトとは完全な素子を製造可能なすべての面要素とのことであり、パーシャルサイト Partial Site とは完全な素子のためのスペースがないウェハエッジにおける面要素のことである)。
【0003】
半導体ウェハの平坦度の定義にあたり、SEMI規格MI−94によれば、全体的な平坦度と局所的な平坦度とを区別している。全体的な平坦度は、定義すべきエッジ除外領域を差し引いたウェハ表面全体に係わるものである。これはGBIR("global backsurface-referenced ideal plane/range" = 半導体ウェハの表側の面全体について裏側の面を基準とする理想平面からの正と負の偏差の範囲)により記述され、これは以前に慣用的であったTTV(total thickness variation)という記述に対応するものである。局所的な平坦度は、一般に素子を上に作成すべき面に対応する半導体ウェハの限定された面に係わるものである。これはSFQR("site front surface referenced least squares/rang" =規定された寸法の面について最小2乗誤差により定義された表側からの正および負の偏差の範囲)として表される。SFQRmaxという量は、特定の半導体ウェハ上のすべての素子平面について最大のSFQR値のことを表す。SFQRにおいて常に表さなければならないのは、呈示された値がどの面に関するものであるのかについてであり、たとえばITRSロードマップによれば26×8mmの面について表される。
【0004】
平坦度に関する別のパラメータはいわゆるナノトポグラフィである。これは所定の面要素たとえば2×2mmにおけるピーク・ツー・バレイ偏差(山対谷偏差)として定義される。ナノトポグラフィは、ADE CR 83 SQM, ADE PhaseShift NanomapperあるいはKLA Tencor SNTのような測定機器を利用して測定される。
【0005】
半導体ウェハのエッジ領域における平坦度は、いわゆる「エッジロールオフ」により決定的な影響が及ぼされる。"A New Method for the Precise Measurement of Wafer Roll off of Silicon Polished Wafer", Jpn.J.Appl.Phys., Vol. 38 (1999), 38-39" には、ウェハのロールオフ=エッジロールオフ("Wafer Roll off" = Edge Roll off)の測定について記載されている。エッジロールオフは、半導体ウェハの表側においても裏側においても発生する可能性がある。これにより、ウェハエッジに位置する面要素のSFQR値に重大な影響を及ぼされる可能性がある。エッジロールオフは、たとえばSOIウェハを製造するために別の半導体ウェハと接合される(貼り合わせられる)半導体ウェハにおいて殊に妨害を及ぼすものであり、その理由は、互いに接合すべきウェハ平面のエッジロールオフがウェハエッジ貼り合わせ品質に大きな影響を及ぼすからである。
【0006】
今日、マイクロエレクトロニクス素子製造のための基板として用いられる半導体ウェハは、一般に以下の慣用的なプロセスシーケンスに従い作成される:スライス、ラッピングおよび/または研削、化学的ウェットエッチング、除去ポリッシング(stock removal polishing)、および仕上げポリッシング(鏡面研磨 mirror polishing)。その際に判明したのは、このようなプロセスシーケンスによっても線幅が絶えず小さくなっていく状況で必要とされる平坦度を確保できない、ということである。
【0007】
EP 798766 A1によれば半導体ウェハの平坦度を向上させる目的で、除去ポリッシングと最終ポリッシングとの間にPACE法(プラズマ補助化学エッチング "plasma assisted chemical etching")に従い気相エッチングステップおよびそれに続く熱処理ステップが挿入される。直径200mmのシリコンウェハの処理によれば、上述のプロセスシーケンスによって0.2〜0.3μmのGBIRという結果の得られることが判明した。ここでは局所的な平坦度データは挙げられていない。さらに、平坦度測定のエッジ除外領域がどれほどの大きさであったのかも記載されていない。
【0008】
EP 961314 A1にも同様の方法について記載されており、これによればスライス、研磨、PACEおよび仕上げポリッシングを経て最良で0.14μmのGBIR値と最良で0.07μmのSFQRmax値が得られる。
【0009】
EP 961314A1において提案されているようなPACE法によれば、ポリッシングされたウェハにおける粗さが劣化することになり、これはPACE直前の付加的な疎水化ステップによって部分的には低減可能である。PACEは真空中で実施しなければならず、これによってプロセスが装置技術的に煩雑になってしまう。しかもエッチングに使用されるガスの分解生成物によって半導体ウェハが汚染され、このためにはEP 1100117A2に記載されているような余分な洗浄ステップが必要とされる。さらにこのプロセスは面全体にわたって行われるのではなく、半導体ウェハのスキャンによって行われる。これは著しく時間がかかる一方、スキャンのオーバラップ領域におけるナノトポグラフィに関する問題点も引き起こされるし、ウェハエッジから約5mm離れたところまでの半導体ウェハ外側領域における平坦性(SFQRmaxおよびエッジロールオフ)に関する問題点も引き起こされる。考えられる原因は、真空中で作業が行われるため、半導体ウェハエッジにおいて吸引作用が強められること、ひいてはエッチング媒体が減少することである。スキャンにおいて必要とされるオーバラップによって、オーバラップポジションにおいて殊にナノトポグラフィが劣化する。エッチング媒体を供給するノズルの直径が大きくなるにつれて、劣化がいっそうひどくなる。ただし経済的な理由から、ノズル直径を任意に小さく選定することはできない。
【0010】
したがって従来技術において知られている方法であると、65nm以下の線幅をもつ構成素子に対する幾何学的形状要求すなわち最大でも65nmであるSFQRmaxの値を満たすことはできない。その際に最も深刻な問題は半導体ウェハのエッジ領域において発生する。なぜならば、現在は(90nmの線幅で)3mmであるエッジ除外領域は、65nmあるいはそれ以下という将来の線幅においては2mmもしくは1mmまで低減されるからであり、平坦度の判定においてパーシャルサイトが算入されるからである。
【0011】
いわゆるSOIウェハの場合には付加的な問題点が発生する。このような半導体ウェハは、ベースウェハ(英語では"base wafer"または"handle wafer")の面上に存在する半導体層を有している。半導体層の厚さは、処理すべき構成素子に応じて変わる。一般に、いわゆる「薄い層(厚さ100nmよりも薄い層)といわゆる「厚い層」(厚さ100nmから約80μmまでの層)とに区別される。ベースウェハは、全体を電気的に絶縁性の材料(たとえばガラス、石英、サファイア)によって構成することもできるし、あるいはたとえば有利にはシリコンのような半導体材料によって構成し、単に電気的に絶縁性の層によって半導体層から分離しておくこともできる。電気的に絶縁性の層をたとえばシリコンオキサイドによって構成することができる。
【0012】
SOIウェハは、マイクロエレクトロニクス素子を製造するために非常に重要なものである。SOIウェハの半導体層は、最も外側のエッジ領域に至るまで著しく均一な厚さをもっていなければならない。厚さ100nmまたはそれ以下の半導体層の場合には殊に、不均一な層厚であるとたとえばスイッチオン電圧のようなトランジスタ特性が著しく大きく変動する。薄い半導体層と厚い半導体層をもつSOIウェハにおける絶対的な厚さの許容範囲は層厚に依存する。層厚測定方法として有利には分光エリプソメトリ、反射率測定法または干渉測定法が利用される。
【0013】
しかもできるかぎり多くの個数の回路を集積できるようにするためには、必要とされる層厚均一性が表側エッジのできるかぎり近くまで保証されていなければならない。このことはやはり、エッジ除外領域が著しく僅かであることを意味する。
【0014】
US 6306730にはSOIウェハの慣用の製造方法について記載されており、これによればシリコンのドナウェハ(英語では"donor wafer"または"top wafer")に水素イオンが所定の深さで注入され、注入されたドナウェハがベースウェハと結合され、ついで結合されたウェハが注入された水素の層に沿って分離される。この場合、注入深さをコントロールすることによって分離後、130nmの層厚において0.47nmの層厚均一性(平均層厚からの標準偏差)が達成される。しかしながら分離直後、シリコン層表面は非常に粗い。したがって分離後(場合によってはシリコン層を薄くするさらに別のステップの後)、化学機械的研磨ステップ(CMP)を実行する必要があり、このステップによって粗さは低減されるけれども、殊にウェハエッジにおいて層厚均一性が著しく劣化してしまう。US 6306730 B2には、研磨された最終製品に関する層厚均一性についても、分離後の中間製品に関するエッジ除外領域についても記載されていない。
【0015】
さらに層厚均一性の向上を目的としたSOIウェハの後処理方法も知られている。ここで全般的に対象としているのは、SOIウェハをスキャンしながら行う局所的なエッチング法であって、この場合、層厚が比較的厚い個所ではエッチングによりいっそう多くの除去が行われるようにしている。US 2004/0063329 A1によれば、ドライエッチングプロセスにおいてSOIウェハ表面がノズルによってスキャンされ、このノズルを介して気体状のエッチング媒体が局所的に供給される。EP 488642 A2およびEP 511777 A1に記載されている方法によれば、SOIウェハの半導体層が面全体にわたりエッチング媒体に晒される。ただしこのエッチング媒体は、レーザビームまたは光学系によりフォーカシングされた光源の光ビームによって表面をスキャンをしながら局所的に活性化させなければならない(光化学的エッチング)。
【0016】
エッチングにより局所的に異なる除去を実現するために半導体層表面をスキャンしなければならないすべての方法は著しく時間がかかり、ひいてはコストがかかってしまう。しかもスキャンのためには、時間のかかる光源もしくはノズルあるいはSOIウェハの運動が必要とされる。
【0017】
さらに殊にウェハエッジ領域において、つまりウェハエッジから5mmまで離れた領域において、ならびにスキャンにあたりオーバラップが生じる領域において、層厚の付加的な不均一性が発生する。EP 488642 A2によれば、層厚が520nmのとき10nmの層厚均一性が達成されるが、エッジ除外領域についての記述はない。さらにEP 511777 A1によれば、層厚が108nmのとき8nmの層厚均一性が達成されるが、エッジ除外領域についての記述はない。
【0018】
したがって手間のかかる方法であるにもかかわらず、必要とされる層厚均一性殊にSOIウェハのエッジ領域において必要とされる層厚均一性は実現されない。
【特許文献1】EP 798766 A1
【特許文献2】EP 961314 A1
【特許文献3】US 961314 A1
【特許文献4】US 2004/0063329 A1
【特許文献5】EP 488642 A2
【特許文献6】EP 511777 A1
【非特許文献1】A New Method for the Precise Measurement of Wafer Roll off of Silicon Polished Wafer", Jpn.J.Appl.Phys., Vol. 38 (1999), 38-39"
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって本発明の課題は、65nmまたはそれよりも小さい線幅で素子を製造するのに適しており、(殊にエッジ領域における)平坦性およびナノトポグラフィを向上させた半導体ウェハを提供することにある。なお、ここで「半導体ウェハ」という用語にはSOIウェハも含まれる。さらに本発明の課題は、層厚均一性殊にエッジ領域における層厚均一性を向上させたSOIウェハを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明によればこの課題は、半導体ウェハの平坦化方法において、半導体ウェハの特性を表すパラメータを位置に依存して測定し、位置に依存する該パラメータの値を、半導体ウェハの面全体にわたり求めるステップa)と、該半導体ウェハの面全体を、エッチング媒体を作用させると同時に該半導体ウェハの面全体を照射しながらエッチング処理するステップb)が設けられており、該エッチング処理の除去率を半導体ウェハの面における光強度に依存させ、前記ステップa)において測定された位置に依存するパラメータの値における差異が位置に依存する除去率により低減されるよう、前記光強度を位置に依存して設定することにより解決される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、半導体ウェハのエッチング方法に関する。このエッチング方法によれば、半導体ウェハの面(SOIウェハであれば半導体層)が従来技術とは異なり、ポイントごとにまたはスキャンにより処理されるのではなく、面全体にわたり1つのステップで処理される。補正に必要とされる局所的に異なるエッチング除去量は、局所的に異なるエッチングレートにより達成され、さらにこのことは局所的に異なる光強度により達成される。局所的な光強度配分は、事前に測定されたパラメータの局所的な値によって決定される。本発明による方法において最適化すべきパラメータは、ステップa)において測定される。その結果得られた測定値は、局所的な光強度を制御するために用いられる。
【0022】
たとえばSOIウェハの半導体層における厚さの均一性を最適化しようとするならば、ステップa)において位置に依存する層厚が測定され、さらにステップb)において、層厚の大きい位置では高い除去率が、層厚の小さい位置では低い除去率が実現されるよう、局所的な光強度が制御される。
【0023】
半導体ウェハにおける全体的な平坦度(GBIR)を最適化しようとするならば、ステップa)において、ウェハ裏側により規定される理想平面からのウェハ表側の偏差が求められ、ステップb)において、局所的な凸部では高い除去率が、局所的な凹部では低い除去率が達成されるよう、局所的な光強度が制御される。
【0024】
これに対し半導体ウェハにおける局所的な平坦度(SFQR)を最適化しようとするならば、ステップa)において、たとえばサイズ26×8mmといった決められた測定窓に関連づけられた理想平面からのウェハ表側の偏差が求められ、ステップb)において、局所的な凸部では高い除去率が、局所的な凹部では低い除去率が達成されるよう、局所的な光強度が制御される。
【0025】
ステップa)における測定に基づき、半導体ウェハの面における各ポイントごとにエッチングにより必要とされる除去量が求められる。該当する半導体材料において使用されるエッチング媒体により達成される光強度に依存する除去率から、エッチング処理に必要とされる時間も計算されるし、半導体ウェハの面における各ポイントについて必要とされる光強度も計算される。
【0026】
本発明は、所定のエッチング反応の除去率と半導体材料における電荷キャリア濃度との関係を利用しており、他方、これは照射する光の強度によって制御することができる。以下では、これについてシリコンを例として具体的に説明する。ただし本発明は他の半導体材料にも適用可能である。
【0027】
シリコンのエッチングは常に2段階の反応から成る。すなわち第1のステップでシリコンが酸化され、酸中ではシリコンオキサイド(SiO)に、アルカリ中ではSiO2−になる。第2のステップにおいて、酸中ではシリコンオキサイドの除去はフッ化水素(HF)により行われ、アルカリ中ではSiO2−アニオンが溶解する。適切な組成のエッチング媒体を選定すれば、酸化ステップが速度を決定するステップとなるようエッチング反応を制御することができる。酸中においてはこのことはたとえば、フッ化水素を酸化剤に対し過剰量で使用することにより達成することができる。
【0028】
本発明が利用しているのは、光の照射によりシリコンまたは他の半導体材料における化学ポテンシャルと電荷キャリア濃度に作用を及ぼすことができる点である。その結果、酸化反応速度が光強度に依存するようになる。ひいては光強度によってエッチングレートに作用が及ぼされる。1100nmよりも短い波長の光はシリコンにより吸収され、その際に電荷キャリアのペア(電子とホール)が発生する。吸収係数は光の波長に強く依存する。1100nm付近の波長をもつ光はシリコン中に深く侵入し、さらに高い波長の光に対してシリコンは透過性である。
【0029】
吸収のスペクトル依存性は、本発明を実施するための適切な光源の選択に関して重要である。たとえば光アークランプは幅の広いスペクトルと高い光強度の点で優れており、つまり半導体ウェハ全体の照射に関してきわめて有用である。適切なフィルタ(ハイパス、ローパス)を使用することによって、適合する波長範囲を設定することができる。
ただし基本的に、半導体表面における望ましい電荷キャリア濃度と電荷キャリア濃度の望ましい深さプロフィルを生じさせるあらゆる光源を利用することができる。たとえば水銀またはナトリウムの蒸気ランプ、レーザまたはLEDも適している。
【0030】
エッチング媒体を気体または液体とすることができるし、あるいは気体成分と液体成分から成る混合物を含有させることができる。ただし、使用される光の波長との組み合わせにおいて半導体材料に依存して、エッチング反応による除去率と光強度との間で強い依存性が生じるよう選定すべきである。
【0031】
この処理は面全体にわたりスキャンを伴わずに1つのステップで行われるので、これは時間が著しく節約され、ひいてはコストが著しく節約される。位置に依存する光強度の段階づけおよび位置分解能を著しく細かく選定できるので、従来技術によればスキャンに際して現れていたオーバラップ作用を回避することができる。
【0032】
本発明による方法の利点は、半導体ウェハのエッジに至るまで局所的に補正されながら動作するので、必要とされる品質がウェハエッジに至るまで達成されることである。
殊に、要求される平坦度または層厚を2mmまたはそれよりも小さいエッジ除外領域においてパーシャルサイトを含めながら実現できる。また、本発明による方法は真空排気を必要としないので、従来技術によれば吸引により引き起こされてしまうような半導体ウェハエッジにおけるエッジ媒体の濃度変動を回避できる。半導体ウェハの特定のポジションたとえばエッジ近傍において渦が発生した場合、これを位置に依存する光強度の計算により補償することができる。
【0033】
本発明による方法は、SOIウェハの半導体層の不均一性を取り除くためにも、エッジロールオフを含む半導体ウェハの不均一性を取り除くためにも適している。したがって本発明による方法を用いて処理される半導体ウェハは、別の半導体ウェハとの結合(貼り合わせ)のためにもきわめて適している。その理由は、貼り合わせ品質は殊にエッジにおいてSFQR値およびエッジロールオフによって影響を受けるからである。著しく経済的な利点は、素子製造に関してウェハ面の有用性が著しく高いことである。SOIウェハの場合にはその製造コストが著しく高いことから、これによってきわめて大きい影響が及ぼされる。
【0034】
本発明による方法は、SOIウェハの場合には一般に表側(=半導体層を担持する面)においてのみ実行され、層構造をもたない半導体ウェハの場合には有利には表側において実行される。エッジロールオフを裏側においても低減すべき場合、本発明による方法を裏側にも適用する必要がある。この場合、本発明による方法を裏側と表側に順番に、あるいは両方の側に同時に適用することができる。
【0035】
有利なことに、平坦度を再び劣化させない目的で本発明による方法のあとにポリッシングは実施されない。
【0036】
本発明による方法は、半導体層をドナウェハからベースウェハへ移すことにより製造されるSOIウェハの場合、これらのウェハを結合してドナウェハの残りの部分から層を分離した後に実行される。SOIウェハの場合には本発明による方法を、表面平滑化または貼り合わせ力強化のための1つまたは複数の熱処理プロセスと、および/または半導体層を薄くするための1つまたは複数の酸化処理プロセスと組み合わせることができる。
【0037】
本発明による方法を実施するのに殊に適している(図1に略示されているような)半導体ウェハ7を平坦化する装置には、半導体ウェハ7の特性を表すパラメータを位置に依存して測定する測定装置11と、半導体ウェハ7のための保持装置とエッチング媒体を供給および排出するためのシステム9を備えた半導体ウェハ収容のためのエッチングチャンバ6と、このエッチングチャンバ6内に存在する半導体ウェハ7の一方の面を位置に依存する光強度で照射できるように配置されている制御可能な照射装置1と、測定装置11により求められたパラメータの値を照射装置1の制御命令に換算してこの命令を照射装置1へ転送する制御ユニット10が設けられている。
【0038】
制御可能な照射装置1は、規定された出力と波長をもつ光源2と、半導体ウェハ7を面全体にわたり照射できるようにする光学系4と、局所的な光強度を設定する装置3を有している。エッチングチャンバ6は(図示されていない)保持装置を有しており、これによって半導体ウェハが収容され、半導体ウェハの位置が調節され、半導体ウェハのうちエッチングすべきではない部分たとえば裏側が覆われる。
【0039】
本発明による方法によれば、著しく平坦な表面をもつ半導体ウェハおよび層厚が著しく均一なSOIウェハを製造することができる。
【0040】
したがって本発明は以下のような半導体ウェハにも関する。すなわち、この半導体ウェハの表側は、最大0.09μmのGBIR、エッジ除外領域が2mmでパーシャルサイトを含むサイズ26×8mmの測定窓において最大0.05μmのSFQRmaxをもち、かつ半導体ウェハエッジから1mm〜3mm隔たった範囲内の測定において表側で最大0.2μmのエッジロールオフをもっている。
【0041】
さらに有利には本発明による半導体ウェハは、エッジ除外領域が2mmでパーシャルサイトを含むサイズ26×8mmの測定窓において最大0.03μmのSFQRmaxをもつことを特徴としている。
【0042】
本発明はさらに以下のような半導体ウェハにも関する。すなわちこの半導体ウェハの表側は、2mmのエッジ除外領域でサイズ2×2mmの測定窓において最大16nmのナノトポグラフィ(山対谷偏差 peak to valley)をもつ。
【0043】
本発明によるきわめて平坦な半導体ウェハ殊に単結晶シリコンから成るきわめて平坦な半導体ウェハは、たとえば65nmまたはそれよりも小さい線幅をもつ電子素子の製造など半導体産業における用途に適している。このような半導体ウェハは、結合されたSOIウェハを作成するためのドナウェハまたはベースウェハとしてきわめて良好に適しており、殊にその理由は、2mmにすぎない著しく僅かなエッジ除外領域であってもエッジロールオフを含めて平坦性が確保されるからである。
【0044】
本発明はさらに以下のようなSOIウェハにも関する。すなわちこのSOIウェハには半導体層と支持ウェハすなわちベースウェハとが設けられており、この半導体層は100nmよりも薄い厚さを有しており、この半導体層の平均厚さからの相対標準偏差はエッジ除外領域が2mmで最大3%である。半導体層の厚さの相対標準偏差を、以下では層厚均一性とも称する。
【0045】
さらに有利には本発明によるSOIウェハは、最大100nmの層厚においてエッジ除外領域が2mmで最大1%の層厚均一性を有している。
【0046】
殊に有利であるのは、最初にドナウェハとベースウェハに対し本発明による方法を適用してから、これらのウェハを互いに結合し、その後、半導体層を伴うベースウェハをドナウェハの残りの部分から分離し、ついでこのようにして作成されたSOIウェハに対し、半導体層の厚さを均一にする目的でもう一度本発明による方法を適用することである。このようにして製造されたSOIウェハは上述の特性に加えて、最大0.1μmのGBIR、エッジ除外領域が2mmでありサイズ26×8mmの測定窓においてパーシャルサイトを含み最大53nmのSFQRmaxをもち、かつウェハエッジから1mm〜3mm隔たった範囲内の測定において表側で最大0.25μmのエッジロールオフをもつことを特徴としている。
【0047】
本発明による方法は厚い半導体層をもつSOIウェハにも適用可能であるため、本発明は以下のようなSOIウェハにも関する。すなわちこのSOIウェハは半導体層と支持ウェハを有しており、この場合、半導体層は0.1μm〜80μmの範囲の厚さを有しており、この半導体層の平均厚さからの相対標準偏差はエッジ除外領域が2mmで最大4%である。
【0048】
さらに有利には厚い半導体層をもつ本発明によるSOIウェハは、エッジ除外領域が2mmで最大2%の層厚均一性を有することを特徴としている。
【0049】
薄い半導体層をもつSOIウェハに関してすでに述べたようにSOIウェハを、ドナウェハとベースウェハに対して本発明による方法を適用し、ついでSOIウェハに対して適用することによって製造するのが有利であるが、このようにして製造される場合、薄い半導体層をもつSOIウェハは付加的に、最大で0.11μmのGBIRをもち、エッジ除外領域が2mmでサイズ26×8mmの測定窓において最大で55nmのSFQRmaxをもち、かつSOIウェハエッジから1mm〜3mm隔たった範囲内の測定において表側のエッジロールオフが最大0.3μmである。
【0050】
しかも厚い半導体層または薄い半導体層をもつ本発明によるSOIウェハは有利には、エッジ除外領域が2mmでサイズ2×2mmの測定窓において最大16nmのナノトポグラフィ(山対谷偏差 peak to valley)をもち、有利には最大8nm、殊に有利には最大2nmのナノトポグラフィをもつ。
【0051】
次に、図面を参照しながら本発明の有利な実施形態について説明する。
【実施例】
【0052】
本発明による方法は層構造を伴わないすべての半導体ウェハに適用可能であって、この場合、半導体ウェハには有利には1つまたは複数の物質が含まれており、この物質はシリコン、ゲルマニウム、シリコンカーバイド、III/V化合物半導体およびII/VI化合物半導体から成るグループから選択される。この種の半導体ウェハの表側の平坦性を向上させるのであれば、本発明による方法のステップa)において測定されるパラメータとして、上述のように定義された理想平面からの高さの偏差が適している。この高さの偏差は、慣用の形状測定装置によって求めることができる。
【0053】
本発明による方法はすべての半導体ウェハにも適用可能であって、この場合、SOIウェハの半導体層には有利には1つまたは複数の物質が含まれており、この物質はシリコン、ゲルマニウム、シリコンカーバイド、III/V化合物半導体およびII/VI化合物半導体から成るグループから選択される。半導体層の層厚均一性を向上させようとするならば、この層厚が本発明による方法のステップa)において測定される。半導体層の厚さはたとえばエリプソメータ、干渉計あるいは反射率計により位置に依存して測定することができる。
【0054】
一般に測定ポイントの個数ならびにポジションは、望まれる解像度によってセットされる。最大可能な測定ポイント数は、測定センサのサイズに依存する。たとえば測定センサのサイズは、(直径200mmの半導体ウェハのための)測定装置ADE 9500および(直径300mmの半導体ウェハのための)測定装置ADE AFSの場合、2×2mmである。
【0055】
ついで測定値から、必要とされる局所的な光強度が計算される。以下では適切な方法について形状データに基づき、すなわちGBIRまたはSFQRの最適化に関して説明するけれども、SOIウェハの場合にこの方法を半導体層のナノトポグラフィデータまたは層厚に対しても同様に適用可能である。
【0056】
形状測定装置はA×A(典型的には4×4mmまたは2×2mm)のサイズをもつ測定センサを用いて、直径Dである半導体ウェハの厚さtにおける完全なマッピングを測定する。この場合、厚さtは精確にいえば、半導体ウェハの裏側により規定される理想平面からの高さの偏差である。これらのデータを、形状測定装置の生データとしてコンピュータへ伝送することができる。ここでデカルト座標系を半導体ウェハの中心においた場合、各ポイントx,yそれぞれについて厚さの値t(x,y)が存在する。この場合、xとyは測定窓サイズのラスタ内で変化し、つまりt(x,y)はx−A/2〜x+A/2およびy−A/2〜y+A/2により規定された正方形に関する厚さの平均値として取られることができる。照射装置はB×B個の画素から成る分解能を有しており、たとえば1024×1024個の画素から成る分解能を有している。B×Bのサイズをもつコンピュータ内部のマトリックスを用いて、各マトリックス要素M(a,b)にオリジナルの厚さマトリックスから対応する値が割り当てられる。
【0057】
M (a, b) = t (| -D/2+a*D/B|, | -D/2+b*D/B| ) ( l )
ここでシンボル | | は絶対値関数を表す。 絶対値関数を適用できるようにしている理由は、典型的には照射装置の分解能がオリジナルの厚さデータよりも高いことによる。
これとは逆の事例では、単純にオリジナルデータの幾何学的な平均値形成が実行される。
【0058】
この変換後、データが平滑化される。コントロールパラメータとして平均半径Rが存在する。座標i,jをもつ画素に対し、ポイントi,jを中心とする半径Rをもつ円内に入るすべての画素による平均値が割り当てられる。ポイントx,yがi,jを中心とする円内に正確に収まるのは、次式が満たされたときである:
(i-x) * (i-x) + (j-y) * (j-y) ≦ R * R (2)
この新たな値は、上述の条件を満たすすべてのM(x,y)の平均値から計算される:
Msmooth (i, j) = 平均値 (M (x, y) , M(x, y), M(x, y), ... M(X,Y)) (3)
Rはオリジナルの座標系に関して典型的には0.1cm〜2cmにあり、これはチューニングパラメータとして用いられる。
【0059】
ただしこのような幾何学的な平滑化のほか、データ処理において一般的な他のすべての平滑化のための標準的な方法を実行することもできる。
【0060】
マトリックスMsmoothの最大値Maxと最小値Minによって、半導体ウェハを照射するためのグレーレベルマトリックスを生成することができる。
画素i, jの黒色成分 = (Msmooth(i, j) - Min) * (Max-Min) * 100% (4)
画素i, jの透明成分 = 100% - (Msmooth(i ,j) - Min) * (Max - Min) * 100% (5) このアルゴリズムによって、半導体ウェハの殊に薄い個所が透明なものとして表され、その結果、それらの個所は高い光強度で照射される。これに対して最も厚い個所は黒色で表され、したがってそれらの個所は照射されないかまたはごく僅かな光強度でしか照射されない。この計算は、光強度が増すにつれて材料除去が減少する場合に適している。これとは逆の場合も同様に計算できる。
【0061】
計算されたグレーレベルマトリックスは、適切な光学系を用いることで照射装置により半導体ウェハ表面にシャープに投影され、したがってこれは局所的な光強度を制御するステップb)において用いられる。
【0062】
光源2としてたとえばハロゲンランプを使用することができ、このランプは200nm〜1100nmまでの波長範囲で光を送出し、これによって半導体ウェハの被照射面上に1〜100mW/cmの照射強度で投射が行われる。この波長範囲を1つまたは複数の固定的なフィルタを介して狭め、処理すべき半導体材料に合わせて整合させることができる。
【0063】
有利には光学系4は、半導体ウェハ7の被照射面ができるかぎり均一に面全体にわたり照射されるように構成され、つまり有利には、光源と半導体ウェハとの間にフィルタ3が介在しないときに±10%よりも小さい偏差で照射されるように構成される。これに対する代案として、光源または光学系に起因する照射の不均一性を、グレーレベル計算アルゴリズムにおいて考慮し、それによって補償することもできる。
【0064】
本発明の1つの実施形態によれば、この半導体ウェハに精確に整合されたフィルタ3(図2)を形成するために半導体ウェハの測定結果が利用され、ついでそのフィルタがこの半導体ウェハの照射に利用される。使用されるエッチング媒体とエッチングすべき半導体材料の組み合わせにおいて、光強度が増すにつれてエッチング反応の除去率が上昇するか減少するかに応じて、エッチングにより殊に多くの除去が必要とされる領域では、使用される波長範囲内で殊に高いまたは殊に低い光透過性をフィルタにもたせる必要がある。フィルタのグレーレベルは、上述のアルゴリズムを用いて計算することができる。
【0065】
フィルタ自体は様々なやり方で簡単に形成することができ、これはたとえば印刷法によるフィルタシートの製造あるいは個別に制御可能な多数のLCD素子をもつLCDフィルタの利用などにより行われる。ただし原則的に、0〜100%の透過率を可能としかつ適切な局所分解能を実現するあらゆる種類のフィルタが適している。半導体ウェハ7に合わせて製造されたフィルタ3はそのウェハ7を照射するために、フィルタ3が半導体ウェハ7上に精確に結像されるよう、照射装置1において適切なやり方で光源2と半導体ウェハ7との間に取り付けられる。
【0066】
位置によって異なる光透過率をもつフィルタの代わりに、位置によって異なる反射率をもつよう相応に製造されたミラーを使用することもできる。
【0067】
そのつど1つの半導体ウェハのためだけに使用可能なフィルタまたはミラーを製造するのは、著しくコストがかかる。この理由で、本発明による以下の実施形態が有利である。この場合、ステップa)において測定位置に依存するパラメータの値から、制御ユニット10有利にはコンピュータによってグレーレベルマップが計算される。この目的で上述のアルゴリズムを使用することができる。ステップb)における半導体ウェハ7の照射は投影装置により行われ、この装置はグレーレベルマップの画像を半導体ウェハ7の表面に投影する。したがってこの事例では照射装置1は、固定的なフィルタまたはミラーを用いずにグレーレベルマップの画像を半導体ウェハにダイレクトに投影可能な投影装置である。この投影装置は有利には、データプロジェクタまたはビデオプロジェクタ(いわゆる「ビーマ」)の原理に従って動作する。その際、投影ランプ2の光は、制御可能な透過性のLCDユニット3によって導かれるかまたは、制御可能なミラーチップ(数cmサイズのチップ上に設けられた微視的に小さい数10万個のミラーから成るマトリックス)を介して偏向される。現在市販されているようなこの種の投影装置によってたとえば、1024×768個のポイントから成る分解能を伴って0〜100%の範囲で光透過率を制御することができる。これによって300mmの直径をもつ被処理半導体ウェハの表面に、約6.5ポイント/mmの厚さが生じる。
【0068】
制御ユニット10は照射装置1のほか装置の別の機能も制御することができ、これはたとえばロボットによる半導体ウェハのロード/アンロード、あるいはたとえば温度、エッチング処理時間、エッチング媒体の流れのようなエッチング処理パラメータなどである。
【0069】
エッチング処理は、液体または気体のエッチング媒体を利用して行うことができる。また、液体物質と気体物質の混合物を用いることもできる。
【0070】
シリコンのための液体エッチング媒体として、たとえばエッチング混合物水溶液を利用することができる。酸性のエッチング媒体として、フッ化水素酸(HF)および酸化剤たとえば硝酸(HNO)、オゾン(O)または過酸化水素(H)を含む水溶液を使用することができる。酸性のエッチング媒体を利用して均等に湿らすために、エッチング媒体の表面張力を低減する物質たとえば界面活性剤または酢酸を添加するのが有利である。アルカリ性のエッチング媒体として、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化テトラメチルアンモニウム(N(CHOH,TMAH)、水酸化アンモニウム(NHOH)またはフッ化アンモニウム(NHF)のうち1つまたは複数の物質を含む水溶液を使用することができる。アルカリ性のエッチング溶液に付加的に、過酸化水素(H)のような別の添加物を含めることができる。有利なアルカリ性エッチング媒体は、水酸化アンモニウムおよび水酸化テトラメチルアンモニウムのうち少なくとも1つの物質と過酸化水素とを含む水溶液である。
【0071】
たとえば、1〜50Ωcmの範囲の比抵抗をもちホウ素でドーピングされた配向100のシリコンウェハを追加露光なく水溶液で60秒間、エッチング処理した場合、以下の材料除去量が達成される:
・TMAH 2.5%,室温:6〜12nmの除去量
・TMAH/H/H 1:1:5,85°C:2nmの除去量
・NHOH/H/HO 1:1:5,85°C:0.5nmの除去量
・HF 1%,O 20ppm,室温:1〜2nm
有利には気体のエッチング媒体には、フッ化水素(HF)および酸化剤たとえば窒素酸化物またはオゾン(O)が含まれている。気体のエッチング媒体を、不活性ガスまたは水蒸気によって希釈することができる。気体のエッチング媒体のもつ利点は、エッチング処理後に半導体ウェハを乾燥させる必要がなく、エッチング反応をきわめて迅速に終了させることができる点にある。
【0072】
たとえば、室温においてオゾンを含有するガス流を濃度60%のフッ化水素酸水溶液を通して案内し、フッ化水素の濃度が高いガス流をエッチング媒体として使用することができる。この事例では除去率を、たとえばオゾン濃度とフッ化水素酸溶液を貫流する速度とによって制御することができる。たとえばオゾンを照射により酸素から生成すれば、光の遮断によりエッチング反応をきわめて迅速に終了させることができる。
【0073】
エッチング媒体は有利には、仕上げられた半導体ウェハに対する要求に依存して選択される。エッチング媒体水溶液によって一般に表面の粗さが比較的大きくなり、このことは適切な添加物(たとえばリン酸、HPO)または著しく僅かな水分によって低減することができる。等方性に作用するエッチング媒体によって、異方性に作用するエッチング媒体よりも粗さが小さくなる。気体のエッチング媒体によって粗さが比較的小さくなる傾向にあり、あるいはそれどころか表面が滑らかにさえなり、殊にこれはフッ化水素(HF)のほかに塩化水素(HCl)がエッチング媒体に含まれている場合である。しかし粗さをもっと大きくしたエッチング媒体を選択することもでき、この場合、エッチング処理に続いて表面平滑化のために高温ステップを実行することができる。
【0074】
すべてのエッチング媒体において温度と濃度は有利には半導体材料と所要材料除去量とに依存して、適切な除去率が達成されるよう選定される。
【0075】
エッチング処理に用いられるエッチングチャンバ6は、半導体ウェハ7を水平に置いてまたは垂直に立てて収容することができる。また、照射5を半導体ウェハ7に向けてダイレクトに行うこともできるし、あるいは透過性の窓を介して行うこともできる。(局所的に異なる光強度は別にして)エッチングによる均一な除去を達成するために、エッチング媒体または半導体ウェハ7を動かすことができる。たとえば半導体ウェハ7を回転させることも可能であるが、この場合、回転に対し照射装置1を同時に追従させる必要があり、たとえばフィルタ3を同時に回転させることによってこれを行う必要がある。ただし有利であるのは、半導体ウェハ7は動かさないようにすることである。さらに、温度を均一にするために加熱装置または冷却装置を用いることができる。エッチングチャンバ6にエッチング媒体供給システム9が接続されており、これによってエッチング媒体が必要とされる量、調量状態および品質で(場合によっては濾過されて)供給される。この場合、エッチング処理を制御ユニット10によって制御することができる。材料除去量のin-situ測定を、最適化すべきパラメータを測定するために組み込まれた測定システムによって行うことができ、これによれば最新の測定データを制御ユニット10へただちに転送して処理することができる。
【0076】
本発明のさらに別の有利な実施形態によれば、半導体ウェハエッジにおいて材料除去量が他とは異なってしまう結果を引き起こす流れの不均一性が、局所的な光強度の適切な補正によって補償されるように構成されている。
【0077】
本発明のさらに別の有利な実施形態によれば、付加的なステップc)において半導体ウェハの面全体のエッチング処理が照射を伴わずに、あるいは面全体を同時にしながら行われ、その際、光強度は半導体ウェハの面全体にわたり一定であり、その結果、位置に依存しない一定の材料除去が達成される。このステップは必要に応じて、半導体ウェハまたはSOIウェハにおける半導体層を所期の目標厚まで薄くする作用をもつ。このような2段階のプロセスにおいては局所的に異なる光強度の計算により、測定されたパラメータの不均一性だけが考慮される。ステップb)における均一化の後、半導体ウェハまたは半導体層はステップc)において望ましい厚さまで低減される。
【0078】
しかし均一化と薄板化ないしは薄膜化の組み合わせを、単一段階のプロセスで実行することもできる。この事例では局所的に異なる光強度の計算において、望まれる最終厚に至るまでに必要とされる全除去量が考慮される。
【0079】
実施例1
直径200mmのSOIウェハを扱う場合、これはドナウェハのシリコン層をベースウェハへ移すことにより製造される。ウェハの厚さは730μmであり、シリコンオキサイド層の厚さは140nm、シリコンオキサイド層の上に設けられるシリコン層の目標厚は50nmである。
【0080】
ステップa)において、シリコン層の厚さが位置に依存して干渉計により精密に測定された。4000個の測定ポイントと1mmのエッジ除外領域を伴う測定の結果、58.3nmの平均層厚が得られ、その際に標準偏差は2.9nm、最大層厚と最小層厚との差は9.4nmとなった。図2には、直径方向に沿った厚さのプロフィルが描かれており、つまり単位nmで測定された半導体層の厚さtSOIが単位mmで測定された半径方向ポジションrに依存して描かれている。厚さ測定値はコンピュータに格納され、グレーレベルコントラストフィルタに換算された。この場合、層厚がいっそう大きい個所はフィルタの光透過性が小さくされ、その結果、それらの個所ではいっそう少ない照射が行われ、ひいてはいっそう大きい除去率が達成され、さらにこれとは逆のことが行われた。
【0081】
ついでSOIウェハはステップb)においてエッチングチャンバ内で、HF,HNO,HOから成る液体のエッチング媒体と接触させられた。この場合、SOIウェハは完全に照射され、エッチングレートは著しく僅かである。シリコン層がエッチング媒体によって完全に湿らされた後、SOIウェハが面全体にわたり照射されたが、事前に作成されたフィルタに基づき局所的に異なる光強度で照射された。用いられる波長範囲は250〜400nmであり、光強度はウェハ上でフィルタリングに従い局所的に約5〜100mW/cmで変えられた。エッチング処理は室温で4分間続けられ、エッチングレートはそれに応じて2.1nm/分となった。ついでSOIウェハはエッチングチャンバ内でただちに脱イオン水により洗浄された。これはエッチングプロセスを迅速に停止させるためである。その後、SOIウェハをエッチングチャンバから取り出し、従来技術に従い乾燥させた。
【0082】
ついでエッチング処理前と同じ厚さ測定法を用いて、位置に依存するシリコン層厚が再び測定された。平均層厚はここでは50.2nmとなり、標準偏差は0.8nm、最大層厚と最小層厚との差は2.9nmであった。直径方向に沿った図3の厚さプロフィルは、シリコン層が著しく平坦化されたことを表している。
【0083】
実施例2
チョクラルスキー法により引き上げられホウ素でドーピングされた(1〜10Ωcm)単結晶から製造され除去ポリッシングの施された直径300mmの6個のシリコンウェハにおいて、1mmのエッジ除外領域を伴ってステップa)において局所的な平坦性が測定された。その際、面要素のサイズが26×8mmである測定装置ADE9900E+が用いられた。表1には、パーシャルサイトを含む測定されたSFQRmax値が示されている。
【0084】
ADE測定における生データ(個別測定値)はコンピュータに格納され、グレーレベルコントラストフィルタに換算され、シリコンウェハごとに対応するフィルタが作成された。
【0085】
ついで実施例1で述べたようにシリコンウェハが個別にエッチングチャンバに収容され、個々のフィルタを用いて平坦化のための片面のエッチング処理が施された。この場合、エッチング媒体として1%のHFと20ppmのOから成る水溶液が用いられた。室温においてシリコンウェハが約10分間処理され、その際、局所的な光強度は約5〜50mW/cmの範囲で変えられた。
【0086】
エッチング処理終了後、各シリコンウェハは実施例1と同様に後処理され、新たに局所的な平坦性が測定された。
【0087】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明による半導体ウェハ平坦化装置の構造を概略的に示す図
【図2】従来技術に従って製造されたSOIウェハのシリコン層における半径方向の厚さプロフィルを示す図
【図3】本発明による方法を適用した後のSOIウェハのシリコン層における半径方向の厚さプロフィルを示す図
【符号の説明】
【0089】
1 照射装置
2 光源
3 フィルタ
4 光学系
5 照射光
6 エッチングルーム
7 半導体ウェハ
9 エッチング媒体供給システム
10 制御ユニット
11 測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェハの平坦化方法において、
半導体ウェハの特性を表すパラメータを位置に依存して測定し、位置に依存する該パラメータの値を、半導体ウェハの面全体にわたり求めるステップa)と、
該半導体ウェハの面全体を、エッチング媒体を作用させると同時に該半導体ウェハの面全体を照射しながらエッチング処理するステップb)が設けられており、
該エッチング処理の除去率を半導体ウェハの面における光強度に依存させ、
前記ステップa)において測定された位置に依存するパラメータの値における差異が位置に依存する除去率により低減されるよう、前記光強度を位置に依存して設定することを特徴とする、
半導体ウェハの平坦化方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、
前記ステップb)で半導体ウェハの厚さを低減することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の方法において、
半導体ウェハ(7)の照射を、光源(2)および該光源(2)と半導体ウェハ(7)との間に取り付けられたフィルタ(3)により行い、位置に依存する光強度を該フィルタ(3)にもたせ、該光強度は位置に依存する前記パラメータの値と一義的な関係にあることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1または2記載の方法において、
前記ステップa)で測定された位置に依存するパラメータの値から、コンピュータの計算によりグレーレベルマップを形成し、前記ステップb)における半導体ウェハの照射を投影装置により行い、該投影装置により前記グレーレベルマップの画像を半導体ウェハの面に投影させることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載の方法において、
半導体ウェハの面全体にわたるエッチング処理を照射と同時に行う付加的なステップc)を設け、該ステップc)では光強度を半導体ウェハの面全体わたり一定にするかまたはゼロにして、位置に依存しない一定の材料除去を達成させることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項記載の方法において、
前記エッチング処理を気体または液体のエッチング媒体によって行うかまたは、気体と液体のエッチング媒体から成る混合物によって行うことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項記載の方法において、
半導体ウェハに1つまたは複数の物質を含有させ、該物質をシリコン、ゲルマニウム、シリコンカーバイド、III/V化合物半導体およびII/VI化合物半導体から成るグループから選択することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7記載の方法において、
前記パラメータを、規定された理想平面からの高さの偏差とすることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から6のいずれか1項記載の方法において、
前記半導体ウェハを、電気的に絶縁性の支持体上に設けられた半導体層を含むSOIウェハとすることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法において、
前記半導体層に1つまたは複数の物質を含有させ、該物質をシリコン、ゲルマニウム、シリコンカーバイド、III/V化合物半導体およびII/VI化合物半導体から成るグループから選択することを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項9または10記載の方法において、
前記パラメータを半導体層の厚さとすることを特徴とする方法。
【請求項12】
半導体ウェハにおいて、
該半導体ウェハの表側は、最大0.09μmのGBIR、エッジ除外領域が2mmでサイズ26×8mmの測定窓においてパーシャルサイトを含み最大0.05μmのSFQRmaxをもち、かつ半導体ウェハエッジから1mm〜3mm隔たった範囲内の測定において表側で最大0.2μmのエッジロールオフをもつことを特徴とする半導体ウェハ。
【請求項13】
請求項12記載の半導体ウェハにおいて、
該半導体ウェハの表側は、エッジ除外領域が2mmでサイズ26×8mmの測定窓においてパーシャルサイトを含み最大0.03μmのSFQRmaxをもつことを特徴とする半導体ウェハ。
【請求項14】
半導体ウェハにおいて、
該半導体ウェハの表側は、エッジ除外領域が2mmでサイズ2×2mmの測定窓において最大16nmのナノトポグラフィ(山対谷偏差 peak to valley)をもつことを特徴とする半導体ウェハ。
【請求項15】
SOIウェハにおいて、
半導体層と支持ウェハが設けられており、
該半導体層は100nmよりも薄い厚さを有しており、該半導体層の平均厚さからの相対標準偏差は、エッジ除外領域が2mmで最大3%であることを特徴とするSOIウェハ。
【請求項16】
請求項15記載のSOIウェハにおいて、
前記半導体層の平均厚さからの相対標準偏差はエッジ除外領域が2mmで最大1%であることを特徴とするSOIウェハ。
【請求項17】
請求項15または16記載のSOIウェハにおいて、
最大0.1μmのGBIR、エッジ除外領域が2mmでサイズ26×8mmの測定窓においてパーシャルサイトを含み最大53nmのSFQRmaxをもち、かつSOIウェハエッジから1mm〜3mm隔たった範囲内の測定において表側で最大0.25μmのエッジロールオフをもつことを特徴とするSOIウェハ。
【請求項18】
請求項17記載のSOIウェハにおいて、
エッジ除外領域が2mmでサイズ26×8mmの測定窓においてパーシャルサイトを含み最大33nmのSFQRmaxをもつことを特徴とするSOIウェハ。
【請求項19】
SOIウェハにおいて、
半導体層と支持ウェハが設けられており、
該半導体層は0.1μm〜80μmの範囲の厚さを有しており、該半導体層の平均厚さからの相対標準偏差はエッジ除外領域が2mmで最大4%であることを特徴とするSOIウェハ。
【請求項20】
請求項19記載のSOIウェハにおいて、
前記半導体層の平均厚さからの相対標準偏差はエッジ除外領域が2mmで最大2%であることを特徴とするSOIウェハ。
【請求項21】
請求項19または20記載のSOIウェハにおいて、
最大0.11μmのGBIR、エッジ除外領域が2mmでサイズ26×8mmの測定窓においてパーシャルサイトを含み最大55nmのSFQRmaxをもち、かつSOIウェハエッジから1mm〜3mm隔たった範囲内の測定において表側で最大0.3μmのエッジロールオフをもつことを特徴とするSOIウェハ。
【請求項22】
請求項15から21のいずれか1項記載のSOIウェハにおいて、
該SOIウェハの表側は、エッジ除外領域が2mmでサイズ2×2mmの測定窓において最大16nmのナノトポグラフィ(山対谷偏差 peak to valley)をもつことを特徴とするSOIウェハ。
【請求項23】
半導体ウェハ(7)の平坦化装置において、
半導体ウェハ(7)の特性を表すパラメータを位置に依存して測定する測定装置(11)と、
半導体ウェハ(7)のための保持装置とエッチング媒体を供給および排出するためのシステム(9)を備えた半導体ウェハ収容のためのエッチングチャンバ(6)と、
該エッチングチャンバ(6)内に存在する半導体ウェハ(7)の一方の面を位置に依存する光強度で照射できるように配置されている制御可能な照射装置(1)と、
前記測定装置(11)により求められたパラメータの値を前記照射装置(1)の制御命令に換算して該命令を前記照射装置(1)へ転送する制御ユニット(10)が設けられていることを特徴とする、
半導体ウェハ(7)の平坦化装置。
【請求項24】
請求項23記載の装置において、
前記測定装置(4)は、層厚を測定するためのエリプソメータ、干渉計または反射率計であり、または規定された理想平面からの高さの偏差を測定するための形状測定装置であることを特徴とする装置。
【請求項25】
請求項23または24記載の装置において、
前記照射装置(1)は投影装置であり、該投影装置は前記制御ユニット(10)により計算されたグレーレベルマップの画像を投影するように構成されていることを特徴とする装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−140484(P2006−140484A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−325171(P2005−325171)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(599119503)ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト (223)
【氏名又は名称原語表記】Siltronic AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】