説明

半導体ウェハ

【課題】半導体基板直上のバッファ層と、該バッファ層と選択的なエッチング性を備える剥(はく)離層とを積層することによって、1枚の半導体基板から複数組の半導体層群を剥離することができ、高い結晶品質の半導体層群を得ることができ、半導体基板を再利用するために表面処理を行う必要がなく、基板再利用工程を省力化することができ、半導体基板の厚さが薄くなることがないようにする。
【解決手段】エピタキシャル成長によって半導体基板11上に形成された少なくとも2層以上の半導体層を有する半導体ウェハ10であって、前記半導体基板11直上に形成されたバッファ層12と、該バッファ層12と選択的なエッチング性を備え、剥離層として機能する半導体層とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板上に成長させた半導体エピタキシャル層を有する半導体ウェハに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェハ、例えば、発光ダイオードを作製するために、半導体エピタキシャル層を成長基板上に形成した半導体エピタキシャルウェハは、基板上に発光領域となる活性層、クラッド層、コンタクト層等の複数の半導体層を積層した構造を備えている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、半導体エピタキシャル層とGaAs基板との間に設けた半導体層を選択的にエッチングすることによって、上層である半導体エピタキシャル層を剥(はく)離することが公知となっている(例えば、非特許文献1参照。)。このように、半導体エピタキシャル層を基板から剥離する場合には、半導体エピタキシャル層を成長させるための基板を再利用することができる。
【特許文献1】特開2002−314127号公報
【非特許文献1】『Journal of Crystal Growth』
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の半導体エピタキシャルウェハにおいては、半導体エピタキシャル層を剥離した後に基板を再利用する際には、あらためて所望の半導体エピタキシャル層を成長させるために、基板表面処理を行って半導体エピタキシャル成長に適する表面を準備する必要がある。
【0005】
また、半導体エピタキシャル層をメサエッチングして剥離層を露出させた後に半導体エピタキシャル層を剥離する場合、メサエッチング領域が基板に達することがあった。その場合、基板を再利用するためには、該基板を研磨して平坦(たん)にすることが必要であった。そして、基板を研磨して半導体エピタキシャル成長に適した表面を準備するためには、基板を数十〔μm〕程度研磨することが必要であるため、再利用の度に基板厚が薄くなってしまう。そのため、1枚の基板から剥離することができる半導体エピタキシャル層の数に限界があった。
【0006】
本発明は、前記従来の問題点を解決して、半導体基板直上のバッファ層と、該バッファ層と選択的なエッチング性を備える剥離層とを積層することによって、1枚の半導体基板から複数組の半導体層群を剥離することができ、高い結晶品質の半導体層群を得ることができ、半導体基板を再利用するために表面処理を行う必要がなく、基板再利用工程を省力化することができ、半導体基板の厚さが薄くなることのない半導体ウェハを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのために、本発明の半導体ウェハにおいては、エピタキシャル成長によって半導体基板上に形成された少なくとも2層以上の半導体層を有する半導体ウェハであって、前記半導体基板直上に形成されたバッファ層と、該バッファ層と選択的なエッチング性を備え、剥離層として機能する半導体層とを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、半導体ウェハは、半導体基板直上のバッファ層と、該バッファ層と選択的なエッチング性を備える剥離層とを積層するようになっている。これにより、1枚の半導体基板から複数組の半導体層群を剥離することができ、高い結晶品質の半導体層群を得ることができる。また、半導体基板を再利用するために表面処理を行う必要がなく、基板再利用工程を省力化することができ、半導体基板の厚さが薄くなることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図1は本発明の第1の実施の形態における半導体ウェハの構成を示す断面図である。
【0011】
図において、10は本実施の形態における半導体ウェハであって、半導体基板11と、該半導体基板11上に積層された複数、例えば、N個の半導体層群、すなわち、第1番目の半導体層群201〜第N番目の半導体層群20Nとを有するものである。そして、前記半導体基板11は、例えば、シリコン(Si)や化合物半導体から成る基板である。
【0012】
また、第1番目の半導体層群201〜第N番目の半導体層群20Nは、エピタキシャル成長によって半導体基板11上に形成された半導体エピタキシャル層であって、下コンタクト層201a〜20Na、活性層201b〜20Nb及び上コンタクト層201c〜20Ncを、それぞれ、有する。第1番目の半導体層群201〜第N番目の半導体層群20Nの各々は分離され、さらに、半導体層郡の面方向に素子分解された状態で半導体素子(発光素子)として機能可能であるように構成されている。具体的には、第1組から第N組の発光素子を構成するための半導体層群である。なお、第1番目の半導体層群201〜第N番目の半導体層群20Nは、互いに同一の組成及び層構造を備える半導体エピタキシャル層である。
【0013】
さらに、12は半導体基板11直上に形成されたバッファ層であり、13は該バッファ層12の上に形成された第1の剥離層であり、14は第1番目の半導体層群201の上に形成された第2の剥離層であり、15は第2番目の半導体層群202の上に形成された第3の剥離層である。なお、前記バッファ層12は、バッファとして機能する半導体エピタキシャル層であり、各剥離層は、前記バッファ層12と選択的なエッチング性を備え、剥離層として機能する半導体エピタキシャル層である。
【0014】
また、第1番目の半導体層群201〜第N番目の半導体層群20Nは、各剥離層及び半導体基板11と選択的なエッチング性を備える。
【0015】
このように、本実施の形態における半導体ウェハ10は、半導体基板11上に、バッファ層12、第1の剥離層13、第1番目の半導体層群201、第2の剥離層14、第2番目の半導体層群202、第3の剥離層15、・・・第Nの剥離層、第N番目の半導体層群20Nの順で積層された積層構造を有する。
【0016】
次に、前記構成の半導体ウェハ10から第1番目の半導体層群201〜第N番目の半導体層群20Nを剥離する方法について説明する。
【0017】
まず、メサエッチングによって第N番目の半導体層群20Nをパターニングし、所定の発光素子のサイズに応じた適当なパターンサイズの島パターンを形成して、第Nの剥離層を露出させる。
【0018】
続いて、第Nの剥離層をエッチングによって除去し、第N番目の半導体層群20Nの島パターンを半導体ウェハ10から剥離する。このように、第N番目の半導体層群20Nを剥離すると、残余の半導体ウェハ10の表面に第N−1番目の半導体層群が露出する。
【0019】
次に、第N番目の半導体層群20Nの場合と同様に、メサエッチングによって第N−1番目の半導体層をパターニングし、所定の発光素子のサイズに応じた適当なパターンサイズの島パターンを形成して、第N−1の剥離層を露出させる。
【0020】
続いて、第N−1の剥離層をエッチングによって除去し、第N−1番目の半導体層群の島パターンを半導体ウェハ10から剥離する。
【0021】
以降、同様の工程を繰り返し、第1番目の半導体層群201を剥離すると、すべての半導体層群の半導体基板11上からの剥離が完了する。
【0022】
このように、本実施の形態において、半導体ウェハ10は、1枚の半導体基板11上にN組の発光素子となる半導体層群をN組積層し、かつ、各組の半導体層群の間に少なくとも剥離層を形成し、前記半導体基板11上からN組の半導体層群を順次剥離するようになっている。すなわち、各剥離層の直上に各組の発光素子となる半導体層群が積層されている。これにより、従来と比較してN倍の数の半導体層群を1枚の半導体基板11上から剥離することができる、という効果を得ることができる。
【0023】
また、半導体層群を剥離する際に半導体基板11の表面処理を行う必要がなく、基板再利用工程を省力化することができ、かつ、高い結晶品質の半導体層群を得ることができる。
【0024】
さらに、半導体基板11表面の研磨処理を行う必要がなく、すべての半導体層群を剥離した後でも、半導体基板11の厚さが薄くなることがない。
【0025】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0026】
図2は本発明の第2の実施の形態における半導体ウェハの構成を示す断面図である。
【0027】
本実施の形態において、半導体ウェハ10は、バッファ層12と第1の剥離層13との間に形成された第1のエッチング停止層31、第1番目の半導体層群201と第2の剥離層14との間に形成された第2のエッチング停止層32、第2番目の半導体層群202と第3の剥離層15との間に形成された第3のエッチング停止層33、・・・、及び、第N−1番目の半導体層群と第Nの剥離層との間に形成された第Nのエッチング停止層を有する。
【0028】
なお、第1〜第Nの各エッチング停止層は、第1〜第Nの各剥離層及び各剥離層直上の各組の半導体層群と選択的なエッチング性を備え、エッチング停止層として機能する半導体エピタキシャル層であって、第1〜第Nの各剥離層及び第1〜第N番目の各組の半導体層群をエッチングするためのエッチャントによってはエッチングされない組成の半導体層である。
【0029】
このように、本実施の形態における半導体ウェハ10は、半導体基板11上に、バッファ層12、第1のエッチング停止層31、第1の剥離層13、第1番目の半導体層群201、第2のエッチング停止層32、第2の剥離層14、第2番目の半導体層群202、第3のエッチング停止層33、第3の剥離層15、・・・第Nのエッチング停止層、第Nの剥離層、第N番目の半導体層群20Nの順で積層された積層構造を有する。
【0030】
なお、その他の点の構成については、前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0031】
次に、本実施の形態において、半導体ウェハ10から第1番目の半導体層群201〜第N番目の半導体層群20Nを剥離する方法について説明する。
【0032】
まず、メサエッチングによって第N番目の半導体層群20Nをパターニングし、所定の発光素子のサイズに応じた適当なパターンサイズの島パターンを形成して、第Nの剥離層を露出させる。この際、第Nの剥離層をオーバーエッチングしても、第Nのエッチング停止層でエッチングが止まるので、第N−1番目の半導体層群に影響を及ぼすことがない。
【0033】
続いて、第Nの剥離層をエッチングによって除去し、第N番目の半導体層群20Nの島パターンを半導体ウェハ10から剥離する。その後、別のエッチャントを使用して第Nのエッチング停止層をエッチングによって除去すると、残余の半導体ウェハ10の表面に第N−1番目の半導体層群が露出する。
【0034】
以降、同様の工程を繰り返し、第1番目の半導体層群201を剥離すると、すべての半導体層群の半導体基板11上からの剥離が完了する。
【0035】
このように、本実施の形態において、半導体ウェハ10は、各剥離層の直下にエッチング停止層が形成されている。これにより、各組の半導体層群を剥離させる際に、その直下の剥離層をオーバーエッチングしても、該剥離層の直下のエッチング停止層でエッチングが止まるので、その下の組の半導体層群に影響を及ぼすことがない。したがって、各組の半導体層群を剥離させると露出する下の組の半導体層群の表面は高い結晶品質を保持するので、下の組の半導体層群を剥離して半導体薄膜として利用する場合にも、高い結晶品質の半導体薄膜を得ることができる。
【0036】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1及び第2の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1及び第2の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0037】
図3は本発明の第3の実施の形態における半導体ウェハの構成を示す断面図である。
【0038】
本実施の形態において、半導体ウェハ10は、バッファ層12と第1の剥離層13との間に形成された第1のエッチング停止層31、第1番目の半導体層群401と第2の剥離層14との間に形成された第2のエッチング停止層32、第2番目の半導体層群402と第3の剥離層15との間に形成された第3のエッチング停止層33、・・・、及び、第N−1番目の半導体層群と第Nの剥離層との間に形成された第Nのエッチング停止層を有する。
【0039】
なお、第1番目の半導体層群401〜第N番目の半導体層群40Nは、互いに異なる組成及び層構造を備える半導体エピタキシャル層である。
【0040】
このように、本実施の形態における半導体ウェハ10は、半導体基板11上に、バッファ層12、第1のエッチング停止層31、第1の剥離層13、第1番目の半導体層群401、第2のエッチング停止層32、第2の剥離層14、第2番目の半導体層群402、第3のエッチング停止層33、第3の剥離層15、・・・第Nのエッチング停止層、第Nの剥離層、第N番目の半導体層群40Nの順で積層された積層構造を有する。
【0041】
なお、その他の点の構成については、前記第2の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0042】
次に、本実施の形態において、半導体ウェハ10から第1番目の半導体層群401〜第N番目の半導体層群40Nを剥離する方法について説明する。
【0043】
まず、メサエッチングによって第N番目の半導体層群40Nをパターニングし、所定の発光素子のサイズに応じた適当なパターンサイズの島パターンを形成して、第Nの剥離層を露出させる。この際、第Nの剥離層をオーバーエッチングしても、第Nのエッチング停止層でエッチングが止まるので、第N−1番目の半導体層群に影響を及ぼすことがない。
【0044】
続いて、第Nの剥離層をエッチングによって除去し、第N番目の半導体層群40Nの島パターンを半導体ウェハ10から剥離する。その後、別のエッチャントを使用して第Nのエッチング停止層をエッチングによって除去すると、残余の半導体ウェハ10の表面に第N−1番目の半導体層群が露出する。
【0045】
以降、同様の工程を繰り返し、第1番目の半導体層群401を剥離すると、すべての半導体層群の半導体基板11上からの剥離が完了する。
【0046】
このように、本実施の形態において、半導体ウェハ10は、互いに異なる組成及び層構造を備える複数組の半導体層群401〜40Nを有する。そのため、該半導体層群401〜40Nを剥離させることによって、互いに組成の異なる複数組の半導体薄膜を得ることが可能となる。これにより、例えば、前記半導体薄膜をそれぞれ基板上に貼(は)り付けて、半導体複合デバイスとして機能させる際に、各半導体薄膜の組成を調整することによって、1枚の半導体基板11上から剥離した半導体薄膜によって異なる機能を有した複数の半導体複合デバイスを作製することができる。
【0047】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の実施の形態における半導体ウェハの構成を示す断面図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態における半導体ウェハの構成を示す断面図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態における半導体ウェハの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0049】
10 半導体ウェハ
11 半導体基板
12 バッファ層
13、14、15 剥離層
20N、40N、201、202、401、402 半導体層群
31、32、33 エッチング停止層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)エピタキシャル成長によって半導体基板上に形成された少なくとも2層以上の半導体層を有する半導体ウェハであって、
(b)前記半導体基板直上に形成されたバッファ層と、
(c)該バッファ層と選択的なエッチング性を備え、剥離層として機能する半導体層とを有することを特徴とする半導体ウェハ。
【請求項2】
前記剥離層として機能する半導体層の直上に、該半導体層及び半導体基板と選択的なエッチング性を備える半導体層群が積層されている請求項1に記載の半導体ウェハ。
【請求項3】
前記半導体層群は、デバイスとして機能可能である請求項2に記載の半導体ウェハ。
【請求項4】
前記バッファ層の上に、前記剥離層として機能する半導体層と前記半導体層群との組が複数組積層されている請求項3に記載の半導体ウェハ。
【請求項5】
前記剥離層として機能する半導体層の直下に、該半導体層及び前記半導体層群と選択的なエッチング性を備え、エッチング停止層として機能する半導体層が形成されている請求項2に記載の半導体ウェハ。
【請求項6】
前記剥離層として機能する半導体層と前記半導体層群との組の各々における剥離層として機能する半導体層の直下に、該半導体層及び前記半導体層群と選択的なエッチング性を備え、エッチング停止層として機能する半導体層が形成されている請求項4に記載の半導体ウェハ。
【請求項7】
前記半導体層群は、互いに異なる組成及び層構造を備える請求項4に記載の半導体ウェハ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−81318(P2009−81318A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−250338(P2007−250338)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(500002571)株式会社沖デジタルイメージング (186)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】