説明

半導体ウエハ保護用基材レス粘着シート、その粘着シートを用いた半導体ウエハ裏面研削方法及びその粘着シートの製造方法

【課題】半導体ウエハを極薄にまで研削する場合や、大口径ウエハの研削を行う場合であっても、半導体ウエハに湾曲(反り)を生じさせず、また研削時の応力分散性に優れ、ウエハ割れ、ウエハエッジ欠けを抑制し、さらに高い厚み精度を有する半導体ウエハ保護用基材レス粘着シート、その粘着シートを用いた半導体ウエハの裏面研削方法及びその粘着シートの製造方法を提供すること。
【解決手段】半導体ウエハ裏面を研削する際に半導体ウエハ表面に貼り合わせる粘着剤層のみからなる半導体ウエハ保護用基材レス粘着シートであって、前記粘着剤層がアクリル系モノマー重合性化合物を主材としたポリマーからなる紫外線硬化型粘着剤であり、半導体ウエハ表面への貼り合わせ面の粘着力がその反対面の粘着力よりも大きく、初期弾性率が0.01MPa〜500MPaであることを特徴とする半導体ウエハ保護用基材レス粘着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハを極薄にまで研削した後もしくは、大口径ウエハの研削した後で半導体ウエハの反りの少ない半導体ウエハ保護用基材レス粘着シート、その粘着シートを用いた半導体ウエハ裏面研削方法及びその粘着シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器の小型化やICカードの普及によって、半導体ウエハ等の電子部品のさらなる薄型化が望まれている。このため、従来は厚さが350μm程度であった半導体ウエハを、厚さ50μm以下程度まで薄くする必要が生じている。また、生産性を向上するために、ウエハのさらなる大口径化が検討されている。
【0003】
通常、半導体ウエハの製造では、ウエハの表面に回路パターンを形成した後、所定の厚さになるまでウエハの裏面をグラインダー等で研削することが行われている。その際、ウエハの表面を保護する目的で、ウエハ表面に粘着シートを貼り合わせた上で裏面研削することが一般的に行われている。また、ウエハを薄型に加工した後は、ウエハ表面に粘着シートを貼り合わせた状態で、次工程に搬送することがある。
【0004】
しかし、ウエハの表面を粘着シートで保護した状態で極薄まで裏面研削した場合、研削後のウエハに反りが生じやすい。反りの生じたウエハは搬送中や粘着シートの剥離中に割れる問題がある。特に、最近繁用されている直径8インチ又は12インチという大型ウエハやICカード用などの薄型ウエハを研削する場合において、上記反りの問題は重大である。
【0005】
この研削後のウエハの反りは、粘着シートをウエハに貼り合わせる際に粘着シートに残る残留応力による影響が大きいと考えられる。粘着シートを貼り合わせたウエハを極薄に研削すると、ウエハの強度よりも粘着シートの残留応力が勝り、この残留応力を解消しようとする力によってウエハに反りが発生すると考えられる。それゆえ、この残留応力を低減させるために、粘着シートの構成にも種々改良が加えられ残留応力が発生しないような構成が提案されている。例えば特許文献1では、基材フィルムと粘着剤層とで構成された半導体ウエハ保護用粘着シートであって、基材フィルムの引張り弾性率が0.6GPaであるものが提案されている。
【0006】
また、特許文献2では、基材と、その上に形成された粘着剤層とからなる半導体ウエハ加工用粘着シートであって、粘着シートの引張り試験において伸度10%における1分後の応力緩和率が40%以上であるものが提案されている。
【0007】
しかし、これらの粘着シートの諸特性は、半導体ウエハを極薄にまで研削する際、もしくは、大口径ウエハの研削する際に、研削後のウエハの反りを抑制するものとして必ずしも最適なものではない。このため、研削後のウエハの反りをより一層抑制することのできる半導体ウエハ保護用粘着シートの提供が望まれていた。
【0008】
また、近年のウエハの研削厚の極薄化に伴い、研削時の応力によるウエハ割れやウエハエッジ部の欠けがないことも望まれていた。
【0009】
さらに、近年半導体パッケージの高密度化・小型化・高機能化として、チップをスタックする技術が進み、極薄化されたウエハのチップ間の厚みバラツキが問題視されている。このチップ間の厚みバラツキは、ウエハ研削時にパターンを保護する粘着シートの厚みバラツキが研削後にそのまま転写するためであり、粘着シートの厚み精度が大きな課題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−212524号公報
【特許文献2】特開2000−150432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、半導体ウエハを極薄にまで研削する場合や、大口径ウエハの研削を行う場合であっても、半導体ウエハに反りを生じさせず、また研削時の応力分散性に優れ、ウエハ割れ、ウエハエッジ欠けを抑制し、さらに研削後の高い厚み精度を有する半導体ウエハ保護用基材レス粘着シート、その粘着シートを用いた半導体ウエハ裏面研削方法及びその粘着シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明は半導体ウエハ裏面を研削する際に半導体ウエハ表面に貼り合わせる粘着剤層のみからなる半導体ウエハ保護用基材レス粘着シートであって、該粘着剤層がアクリル系モノマー重合性化合物を主材としたポリマーからなる紫外線硬化型粘着剤であり、半導体ウエハ表面への貼り合わせ面の粘着力がその反対面の粘着力よりも大きく、初期弾性率が0.01MPa〜500MPaであることを特徴とする。
【0013】
一般に、半導体ウエハ表面に貼り合わされる粘着シートは基材と粘着剤層の構成で形成されている。このような粘着シートをウエハの表面に貼り合わせる際には貼り合わせ機を用いて、貼り合わせテーブルの上にウエハの表面が上になるようにウエハを載置し、その上に粘着シートを粘着剤層が下になった状態で、貼り合わせ方向に沿ってたるまないように引っ張りながら供給する。こうして粘着シートの粘着剤層をウエハの表面と対向させ、圧着ロールなどの押圧手段により粘着シートの基材側から、貼り合わせ方向に沿って順次圧着し貼り合わせを行う。このとき、粘着シートには粘着シートを貼り合わせ方向に沿って引っ張る力と、粘着シートをウエハに圧着する力がかかるため、粘着シートをウエハに貼り合わせるとこれらの力が残留応力となって粘着シートに残る。粘着シートを貼り合わせたウエハの裏面を研削し、ウエハの強度よりも粘着シートの残留応力が勝ると、残留応力を解消しようとする力によってウエハに反りが発生すると考えられる。通常、基材と粘着剤を比較すると基材のほうが粘着剤よりも初期弾性率が高いため、残留応力は基材起因のものとなる。ここで、基材よりも初期弾性率の低い粘着剤のみで形成される基材レス粘着シートを用いると、シート貼り合わせ時に発生する残留応力も非常に小さくなる。このため、このような基材レス粘着シートを用いて半導体ウエハの裏面研削を行うと、研削後のウエハの反りを低減することができる。
【0014】
粘着剤層はアクリル系モノマー重合性化合物を主材としたポリマーからなる紫外線硬化型粘着剤であることが好ましい。粘着剤層がアクリル系モノマー重合性化合物を主材としたポリマーからなる紫外線硬化型粘着剤であると、半導体ウエハ裏面研削後に基材レス粘着シートを半導体ウエハから剥離する際、粘着剤層に紫外線を照射(UV照射)することで粘着剤の硬化反応による体積収縮により、半導体ウエハ表面に接触している面の接触面積が低下し、粘着力を速やかに低下することができる。また、粘着剤層が硬化反応により3次元架橋されるため、剥離後の糊残りが少なくなるなどの効果がある。
【0015】
粘着剤層の半導体ウエハ表面への貼り合わせ面の粘着力はその反対面の粘着力よりも大きいことを特徴とする。
【0016】
粘着剤層の半導体ウエハ表面への貼り合わせ面の粘着力がその反対面の粘着力よりも大きいと、被着体に貼り付けるために片面のセパレータを剥離する際に、セパレータと粘着剤層の剥離力に違いが生じる為、剥がそうとするセパレータと一緒に粘着剤が追従してくる不具合がなくなる。
【0017】
粘着剤層の初期弾性率は0.01MPa〜500MPaであることが好ましく、より好ましくは0.1MPa〜100MPa、さらに好ましくは1MPa〜50MPaである。
【0018】
粘着剤層の初期弾性率がこのような範囲にある場合、半導体ウエハ表面への十分な追従性と研削時の応力を緩和することができ、研削時の応力によるウエハの破損を防ぐことができ、また初期弾性率が50MPa以下の場合は貼付時にセパレータがない場合でも、変形により生じる残留応力が低いため半導体ウエハ裏面研削後の半導体ウエハの反りを低減することができる。
【0019】
また、本発明の粘着剤層の半導体ウエハ表面への貼り合わせ面の反対面は、傾斜式ボールタック試験において傾斜20°でボールNo.6以上が停止しないことを特徴とする。
【0020】
粘着剤層の半導体ウエハ表面への貼り合わせ面の反対面が、傾斜式ボールタック試験において傾斜20°でボールNo.6以上が停止しない場合、粘着剤層の半導体ウエハ表面への貼り合わせ面の反対面に積層したセパレータ剥離後も、半導体ウエハ裏面研削装置内のロボットアームに貼り付いてしまうほどのタックがないため、半導体ウエハ保護用基材レス粘着シートが貼り付くことなく、半導体ウエハ裏面研削工程に搬送することができる。
【0021】
また、本発明の粘着剤層の厚みは5μm〜1000μmであることが好ましい。
【0022】
粘着剤層の厚みは5μm〜1000μmであることが好ましく、より好ましくは10μm〜500μm、さらに好ましくは30μm〜250μmである。粘着剤層の厚みがこのような範囲にある場合、半導体ウエハ裏面研削時に表面を十分に保護することができる。粘着剤層の厚みが5μm未満の場合、ウエハ表面が小さい凹凸でも追従し、保護する事ができずに研削時に割れてしまう場合がある。また、粘着剤層の厚みが1000μmを超える場合は、貼付後のテープカット性及び装置での作業性の面で好ましくない。
【0023】
また、本発明は、本発明の半導体ウエハ保護用基材レス粘着シートを半導体ウエハ表面への貼り合わせ面の反対面にセパレータを積層した状態で半導体ウエハ表面に貼り合わせ、セパレータと共にカットし、セパレータのみを剥離した後で半導体ウエハ裏面を研削することを特徴とする半導体ウエハ裏面研削方法である。
【0024】
本発明の半導体ウエハ保護用基材レス粘着シートは粘着剤層のみで形成されているため、その柔軟性のためにテープ貼り合わせ装置でのカットが困難になる場合がある。ここで、半導体ウエハ保護用基材レス粘着シートの半導体ウエハへの貼り合わせ面の反対面にセパレータを積層した状態で半導体ウエハに貼り合わせ、セパレータ上からカット刃を当ててセパレータと共にカットすることで、カット時に粘着剤の伸びを抑制でき、安定してカットすることができる。また、最後にセパレータのみを剥離することで、柔軟性の高い半導体ウエハ保護用基材レス粘着シートのみを半導体ウエハ表面に貼り合わせた状態で半導体ウエハ裏面研削を行うことができ、研削後の半導体ウエハの反りを抑制することができる。
【0025】
また、本発明は、紫外線反応性モノマー(あるいはオリゴマー)あるいは側鎖にC=C二重結合を持つポリマー、あるいは光重合開始剤を含む粘着剤をセパレータ上に塗工して粘着剤層を形成し、粘着剤層の塗工面を暴露した状態で放射線を照射することにより、粘着剤層のセパレータ側の面の粘着力をその反対面の粘着力よりも低下させることを特徴とする半導体ウエハ保護用基材レス粘着シートの製造方法である。
【0026】
半導体ウエハを薄く研削すると、面取りされてあるウエハエッジ部が非常にシャープになるため、粘着シートに硬い剛性基材を用いた場合は、そのカットクズなどが研削時に巻き込まれ、ウエハエッジ部の欠損を引き起こしたり、研削時の応力を分散できないため、ウエハの割れを引き起こすと考えられる。そのため剛性基材を用いる場合は基材と粘着剤の間に軟質の中間層を挟む方法や、基材として軟質基材を用いる方法も考えられるが、中間層を積層することにより粘着シートの厚み精度が悪くなり、また軟質基材を厚み精度良く製造することも非常に難しく、結果として粘着シート全体の厚み精度が低下する。このため、そのような粘着シートを貼り合わせた状態で研削したウエハの厚み精度も低下すると考えられる。本発明では、厚み精度の良いセパレータ(特にPETセパレータ等)に紫外線硬化型粘着剤を通常塗工し、紫外線を照射することで基材レス粘着シートを製造するため、厚み精度の高い半導体ウエハ保護用基材レス粘着シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の半導体ウエハ保護用基材レス粘着シートは、粘着剤層のみで構成される。また、粘着剤層は1層または多層で構成されていてもよい。
【0028】
本発明の半導体ウエハ保護用基材レス粘着シートは、厚み精度の良いセパレータ(特にPETセパレータ等)に紫外線硬化型粘着剤を通常塗工し、塗工面を暴露した状態で紫外線を照射することにより、紫外線硬化型粘着剤のセパレータと接する面のみを非粘着化することで得られる。紫外線硬化型粘着剤は大気中に暴露されている面は紫外線を照射しても酸素阻害が起こるため、紫外線硬化が起こらず、粘着力が低下しにくくなる。一方、紫外線硬化型粘着剤のセパレータと接する面はセパレータによって酸素が遮断されるため、紫外線硬化が起こり、粘着力が低下する。なお、本発明の半導体ウエハ保護用基材レス粘着シートは、粘着力の低下した面と接するセパレータを剥離せずに、ウエハ裏面研削用装置へ導入し、半導体ウエハの裏面を研削する直前にセパレータを剥離することが、取り扱いの点から好ましい。
【0029】
粘着剤層は、ベースポリマーの組成、架橋剤の種類、配合比などを適宜に組み合わせて調整する。たとえば、ベースポリマーのTg、架橋密度をコントロールすることで粘着剤層の初期弾性率を制御することが可能である。
【0030】
粘着剤としては、たとえば、一般的に使用されている紫外線硬化型粘着剤を使用できる。なかでも、半導体ウエハヘの接着性、剥離後の半導体ウエハの超純水やアルコール等の有機溶剤による清浄洗浄性などの点から、アクリル系モノマー重合性化合物を主材としたポリマー(以下、アクリル系ポリマーとする。)からなる紫外線硬化型粘着剤が好ましい。
【0031】
アクリル系ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、エイコシルエステルなどのアルキル基の炭素数1〜30、特に炭素数4〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルエステルなど)及び(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル(例えば、シクロペンチルエステル、シクロヘキシルエステルなど)の1種又は2種以上を単量体成分として用いたアクリル系ポリマーなどがあげられる。なお、(メタ)アクリル酸エステルとはアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルをいい、本発明の(メタ)とは全て同様の意味である。
【0032】
アクリル系ポリマーは凝集力、耐熱性などの改質を目的として、必要に応じ、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル又はシクロアルキルエステルと共重合可能な他のモノマー成分に対応する単位を含んでいてもよい。このようなモノマー成分として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどのリン酸基含有モノマー;アクリルアミド、アクリロニトリルなどがあげられる。これら共重合可能なのモノマー成分は、1種又は2種以上使用できる。これら共重合可能なモノマーの使用量は、全モノマー成分の40重量%以下が好ましい。
【0033】
さらに、上記アクリル系ポリマーは、架橋させるため、多官能性モノマーなども、必要に応じて共重合用モノマー成分として含むことができる。このような多官能性モノマーとして、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどがあげられる。これらの多官能性モノマーも1種又は2種以上用いることができる。多官能性モノマーの使用量は、粘着特性等の点から、全モノマー成分の30重量%以下が好ましい。
【0034】
アクリル系ポリマーは、単一モノマー又は2種以上のモノマー混合物を重合に付すことにより得られる。重合は、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等の何れの方式で行うこともできる。粘着剤層は半導体ウエハ等の汚染防止等の点から、低分子量物質の含有量が小さいのが好ましい。この点から、アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは30万以上、さらに好ましくは40万〜300万程度である。
【0035】
粘着剤には、ベースポリマーであるアクリル系ポリマー等の重量平均分子量を高めるため、外部架橋剤を適宜に採用することもできる。外部架橋方法の具体的手段としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、メラミン系架橋剤などのいわゆる架橋剤を添加し反応させる方法があげられる。外部架橋剤を使用する場合、その使用量は、架橋すべきベースポリマーとのバランスにより、さらには、粘着剤としての使用用途によって適宜決定される。一般的には、上記ベースポリマー100重量部に対して、1重量部〜5重量部程度配合するのが好ましい。さらに、粘着剤には、必要により、上記成分のほかに、従来公知の各種の粘着付与剤、老化防止剤などの添加剤を用いてもよい。
【0036】
また、粘着剤としては、放射線硬化型粘着剤を使用できる。放射線硬化型粘着剤は炭素−炭素二重結合等の放射線硬化性の官能基を有し、かつ粘着性を示すものを特に制限なく使用することができる。放射線硬化型粘着剤としては、放射線(特に紫外線)照射によって粘着力が低下するものが望ましい。かかる粘着剤層によれば、半導体ウエハ裏面研削工程後に紫外線照射によって、保護シートの剥離を容易に行うことができる。
【0037】
放射線硬化型粘着剤としては、たとえば、一般的な粘着剤に、放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合した添加型の放射線硬化性粘着剤を例示できる。一般的な粘着剤としては、上記アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等の感圧性粘着剤と同様のものがあげられる。
【0038】
配合する放射線硬化性のモノマー成分としては、たとえば、ウレタンオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレートなどがあげられる。また放射線硬化性のオリゴマー成分はウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系など種々のオリゴマーがあげられ、その分子量が100〜30000程度の範囲のものが適当である。放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分の配合量は、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、例えば5重量部〜500重量部、好ましくは40重量部〜150重量部程度である。
【0039】
また、放射線硬化性の粘着剤としては、上記説明した添加型の放射線硬化性粘着剤のほかに、ベースポリマーとして、炭素−炭素二重結合をポリマー側鎖または主鎖中もしくは主鎖末端に有するものを用いた内在型の放射線硬化性粘着剤があげられる。内在型の放射線硬化性粘着剤は、低分子成分であるオリゴマー成分等を含有する必要がなく、または多くは含まないため、経時的にオリゴマー成分等が粘着剤中を移動することなく、安定した層構造の粘着剤層を形成することができるため好ましい。
【0040】
上記炭素−炭素二重結合を有するベースポリマーは、炭素−炭素二重結合を有し、かつ粘着性を有するものを特に制限なく使用できる。このようなベースポリマーとしては、アクリル系ポリマーを基本骨格とするものが好ましい。アクリル系ポリマーの基本骨格としては、上記例示したアクリル系ポリマーがあげられる。
【0041】
上記アクリル系ポリマーへの炭素−炭素二重結合の導入方法は特に制限されず、様々な方法を採用できるが、炭素−炭素二重結合はポリマー側鎖に導入する方が分子設計は容易である。たとえば、予め、アクリル系ポリマーに官能基を有するモノマーを共重合した後、この官能基と反応しうる官能基および炭素−炭素二重結合を有する化合物を、炭素−炭素二重結合の放射線硬化性を維持したまま縮合または付加反応させる方法があげられる。
【0042】
これらの官能基の組み合わせ例としては、カルボン酸基とエポキシ基、カルボン酸基とアジリジル基、ヒドロキシル基とイソシアネート基などがあげられる。これら官能基の組み合わせのなかでも反応追跡の容易さから、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組み合わせが好適である。また、これら官能基の組み合わせにより、上記炭素−炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーを生成するような組み合わせであれば、官能基はアクリル系ポリマーと上記化合物のいずれの側にあってもよいが、上記の好ましい組み合わせでは、アクリル系ポリマーがヒドロキシル基を有し、上記化合物がイソシアネート基を有する場合が好適である。この場合、炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物としては、たとえば、メタクリロイルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートなどがあげられる。また、アクリル系ポリマーとしては、上記例示のヒドロキシ基含有モノマーや2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングルコールモノビニルエーテルのエーテル系化合物などを共重合したものが用いられる。
【0043】
上記内在型の放射線硬化性粘着剤は、上記炭素−炭素二重結合を有するベースポリマー(特にアクリル系ポリマー)を単独で使用することができるが、特性を悪化させない程度に上記放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合することもできる。放射線硬化性のオリゴマー成分等は、通常ベースポリマー100重量部に対して30重量部以下が好ましく、より好ましくは10重量部以下である。
【0044】
上記放射線硬化型粘着剤には、紫外線等により硬化させる場合には光重合開始剤を含有させる。光重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α´−ジメチルアセトフェノン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのα−ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフエノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1などのアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテルなどのベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタールなどのケタール系化合物;2−ナフタレンスルホニルクロリドなどの芳香族スルホニルクロリド系化合物;1−フェノン−1,1―プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシムなどの光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソンなどのチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナートなどがあげられる。光重合開始剤の配合量は、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、例えば1重量部〜10重量部、好ましくは3重量部〜5重量部程度である。
【0045】
また粘着剤として熱発泡型粘着剤を用いることもできる。熱発泡型粘着剤は、上記一般的な感圧性粘着剤に熱膨張性微粒子が配合されたものである。熱発泡型粘着剤は、熱による熱膨張性微粒子の発泡により、接着面積が減少して剥離が容易になるものであり、熱膨張性微粒子の平均粒子径は1μm〜25μm程度のものが好ましい。より好ましくは5μm〜15μmであり、特に10μm程度のものが好ましい。熱膨張性微粒子としては、加熱下に膨張する素材を特に制限なく使用できるが、たとえば、ブタン、プロパン、ペンタンなどの如き低沸点の適宜のガス発泡性成分をインサイト重合法等により、塩化ビニリデン、アクリロニトリル等の共重合物の殻壁でカプセル化した熱膨張性マイクロカプセルを用いることができる。熱膨張性マイクロカプセルは、上記粘着剤との分散混合性に優れているなどの利点も有する。熱膨張性マイクロカプセルの市販品としては、たとえば、マイクロスフェアー(商品名:松本油脂社製)などがあげられる。
【0046】
上記粘着剤に対する熱膨張性微粒子(熱膨張性マイクロカプセル)の配合量は、上記粘着剤層の種類に応じて、粘着剤層の粘着力を低下できる量を、適宜に決定することができるが、一般的には、ベースポリマー100重量部に対して、1重量部〜100重量部程度、好ましくは5重量部〜50重量部、更に好ましくは10重量部〜40重量部である。
【0047】
粘着剤層の厚みは適宜決定することができるが他の特性との関係上、5μm〜300μm程度、好ましくは80μm〜240μm程度である。
【0048】
本発明に係る基材レス粘着テープに使用されるセパレータには、基材レス粘着テープを作製する際に粘着剤を塗布する土台となる基材セパレータ及び基材レス粘着テープの粘着面を保護する為に用いる粘着面保護用セパレータの2種類がある。これらのセパレータの構成材料としては、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルム等があげられる。セパレータの表面には、粘着剤層からの剥離性を高めるため、必要に応じてシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理等の離型処理が施されていても良い。セパレータの厚みは、10μm〜200μmが好ましく、より好ましくは25μm〜100μmである。また、セパレータの厚み精度は±2μm以下であることが好ましい。
【0049】
本発明の粘着シートとウエハとの貼り合わせは、加圧可能な容器(例えばオートクレーブなど)中で、ウエハの表面と粘着シートの粘着剤層を重ね、容器内を加圧することによりウエハに貼り合わせることも出来る。この際、押圧手段により押圧しながら貼り合わせてもよい。また、真空チャンバー内で、上記と同様に貼り合わせることもできる。貼り合わせ時の条件はこれらに限定されるものではなく、貼り合わせる際に、加熱をすることもできる。
【0050】
薄型加工は、半導体ウエハが所望の厚さになるまで行われる。本発明においては、ウエハの直径をa(インチ)、研削後のウエハの厚みをb(μm)としたとき、b/a(μm/インチ)の値が27(μm/インチ)以下になるまで、ウエハの裏面研削を行うことができる。したがって、本発明によれば、ウエハを薄型化しても反りを小さく抑えることができる。ウエハの反りは薄型研削において問題になってくるが、本発明の粘着シートを用いて裏面研削を行えば、b/aの数値を27(μm/インチ)以下にすることができるので、薄型化してもウエハの反りを抑えることができる。
【実施例】
【0051】
以下に実施例を用いて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0052】
実施例1
ブチルアクリレート50モル、エチルアクリレート50モル、2−ヒドロキシエチルアクリレート22モルからなる配合組成物をトルエン溶液中で共重合させて、重量平均分子量50万のアクリル系共重合ポリマーを得た。続いて、この共重合ポリマーに対し、18モルの2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを付加反応させ、ポリマー分子内側鎖に炭素−炭素二重結合を導入した。次いで、このポリマー100重量部に対して、さらにポリイソシアネート系架橋剤0.8重量部、アセトフェノン系光重合開始剤3重量部を混合して粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物をシリコーン処理した基材セパレータ(PETセパレータ、厚み50μm、厚み精度±1μm)上に、乾燥後の粘着剤層の厚みが80μmとなるように塗工し、塗工面を暴露した状態でUV照射(UV照射条件:300mmJ/cm2)した。この粘着剤層の塗工面にシリコーン処理した粘着面保護用セパレータ(PETセパレータ、厚み50μm、厚み精度±1μm)を貼り合わせ、粘着シートを作製した。これをテープ貼付装置DR−3000II(日東精機製)を用いて粘着面保護用セパレータを剥離し、Siウエハ表面に貼り合わせ、基材セパレータ上からカット刃を当てて粘着シートをカットした後、基材セパレータを剥離した。粘着シートで固定されたSiウエハの裏面をSiウエハの厚みが50μmになるよう研削した後、ウエハの装置搬送性、研削後ウエハ割れ、研削後ウエハ反り、研削後ウエハTTV、粘着シートの剥離性を評価した。
【0053】
実施例2
粘着剤の乾燥後の厚みが160μmとなるように80μmの塗工を2回行ったこと以外は実施例1と同様に粘着シートを作製した。この粘着シートを用いて実施例1と同様の方法でウエハに貼り合わせ、評価を行った。
【0054】
実施例3
粘着剤の乾燥後の厚みが240μmとなるように80μmの塗工を3回行ったこと以外は実施例1と同様に粘着シートを作製した。この粘着シートを用いて実施例1と同様の方法でウエハに貼り合わせ、評価を行った。
【0055】
比較例1
実施例1に記載の粘着剤組成物をシリコーン処理した基材セパレータ(PETセパレータ、厚み50μm、厚み精度±1μm)上に、乾燥後の粘着剤層の厚みが240μmとなるように80μmの塗工を3回行った。この粘着剤層の塗工面にシリコーン処理した粘着面保護用セパレータ(PETセパレータ、厚み50μm、厚み精度±1μm)を貼り合わせ、粘着シートを作製した。この粘着シートを用いて実施例1と同様の方法でウエハに貼り合わせ、評価を行った。
【0056】
比較例2
実施例1に記載の粘着剤組成物を基材(EVAフィルム、厚み115μm、厚み精度±3μm、初期弾性率70MPa)上に、乾燥後の粘着剤層の厚みが30μmとなるように塗工し、塗工面を暴露した状態でUV照射(UV照射条件:300mmJ/cm2)した。この粘着剤層の塗工面にシリコーン処理した粘着面保護用セパレータ(PETセパレータ、厚み50μm、厚み精度±1μm)を貼り合わせ、粘着シートを作製した。これをテープ貼付装置DR−3000II(日東精機製)を用いて粘着面保護用セパレータを剥離し、Siウエハ表面に貼り合わせ、基材上からカット刃を当てて粘着シートをカットした。粘着シートで固定されたSiウエハの裏面をSiウエハの厚みが50μmになるよう研削した後、ウエハの装置搬送性、研削後ウエハ割れ、研削後ウエハ反り、研削後ウエハTTV、粘着シートの剥離性を評価した。
【0057】
比較例3
基材としてポリエチレンフィルム(厚み150μm、厚み精度±2μm、初期弾性率130MPa)を用いたこと以外は比較例2と同様に粘着シートを作製した。この粘着シートを用いて比較例2と同様の方法でウエハに貼り合わせ、評価を行った。
【0058】
比較例4
基材としてPETフィルム(厚み50μm、厚み精度±1μm、初期弾性率3GPa)を用い、乾燥後の粘着剤層の厚みが22μmとなるように塗工したこと以外は比較例2と同様に粘着シートを作製した。この粘着シートを用いて比較例2と同様の方法でウエハに貼り合わせ、評価を行った。
【0059】
実施例及び比較例で得られた粘着シートを8インチSiウエハに貼り合わせた後のウエハの装置搬送性、研削後ウエハ割れ、研削後ウエハ反り、研削後ウエハTTV、粘着シートの剥離性は、次の様にして行った。
【0060】
〔ウエハの装置搬送性〕Disco製バックグラインダーDFG−8560にてSiウエハに貼り合わせた粘着シートの背面がロボットアームに貼り付くことなく搬送できるかを観察した。
【0061】
〔研削後ウエハ割れ〕Disco製バックグラインダーDFG−8560にてSiウエハの厚みが50μmとなるまで研削し、ウエハが割れることがなく研削できたかを確認した。
【0062】
〔研削後ウエハ反り〕研削後のSiウエハの反り量は、研削1分後のSiウエハを粘着シートを貼り合わせた状態で平坦な場所に置き、端部の浮いている距離(mm)を測定することにより求めた。
【0063】
〔研削後ウエハTTV〕研削後のSiウエハを粘着シートを貼り合わせた状態で、Siウエハの面内厚みの上下限値の差TTV(μm)をHAMAMATSU MAPPING STAGE C8126(浜松ホトニクス製)を用いて測定した。
【0064】
〔粘着シートの剥離性〕HR−8500II(日東精機製)を用いて粘着シートが裏面研削後のSiウエハから剥離可能であるかを確認した。
【0065】
粘着シートの諸性質についての測定方法は以下の通りとした。
〔粘着力の測定方法〕20mm幅の粘着シートを23℃においてSiウエハに貼り合わせた後、角度180°速度300mm/minで剥離した時に得られる粘着力を意味する。
〔背面粘着力〕粘着シートのSiウエハ表面への貼り合わせ面の反対面の粘着力のことである。
〔UV前粘着力〕粘着シートのSiウエハ表面への貼り合わせ面の粘着力のことである。
〔UV後粘着力〕粘着シートをSiウエハ表面への貼り合わせ、UV照射(UV照射条件:300mJ/cm2)した後の粘着力のことである。
【0066】
〔背面ボールタック試験〕JIS Z0237に準じて傾斜角度20°でボールNo.6を用いて測定した。
【0067】
〔初期弾性率〕本明細書において、初期弾性率とは、幅10mmの短冊状の粘着シートを23℃においてチャック間50mm、速度300mm/minで引っ張った時に得られるS−S曲線から求められる初期弾性率を意味する。
【0068】
〔厚み精度〕セパレータ及び基材の厚み精度は1/1000ダイヤルゲージを用いて幅方向に10mm間隔で測定した。
【0069】
実施例1〜3及び比較例1〜4の結果を表1及び表2に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
表1及び表2に示すとおり、基材レス粘着シートを用いた実施例1〜3では背面ボールタック試験においてもボールが停止せず、背面粘着力も低いため、装置搬送性が可であった。また粘着シートの初期弾性率が低いため、研削後ウエハ反り量も非常に小さく、研削後ウエハ割れも発生せず、研削後ウエハTTVも非常に小さい値を示した。一方、比較例1では背面を非粘着処理しておらず、粘着シートの背面が搬送アームに貼り付いてしまったため、ウエハ裏面研削が出来なかった。比較例2、3では初期弾性率が高いEVAフィルムやPOフィルムを基材として用いたため、研削後ウエハ反りと研削後ウエハTTVが非常に大きくなった。比較例4では、基材のPETが剛性フィルムであるため、ウエハ裏面研削時の圧力が分散されず、研削後ウエハ割れが発生した。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエハ裏面を研削する際に半導体ウエハ表面に貼り合わせる粘着剤層のみからなる半導体ウエハ保護用基材レス粘着シートであって、前記粘着剤層がアクリル系モノマー重合性化合物を主材としたポリマーからなる紫外線硬化型粘着剤であり、半導体ウエハ表面への貼り合わせ面の粘着力がその反対面の粘着力よりも大きく、初期弾性率が0.01MPa〜500MPaであることを特徴とする半導体ウエハ保護用基材レス粘着シート。
【請求項2】
前記粘着剤層の半導体ウエハ表面への貼り合わせ面の反対面が、傾斜式ボールタック試験において傾斜20°でボールNo.6以上が停止しないことを特徴とする請求項1に記載の半導体ウエハ保護用基材レス粘着シート。
【請求項3】
前記粘着剤層の厚みが5μm〜1000μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体ウエハ保護用基材レス粘着シート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体ウエハ保護用基材レス粘着シートを半導体ウエハ表面への貼り合わせ面の反対面にセパレータを積層した状態で半導体ウエハ表面に貼り合わせ、セパレータと共にカットし、セパレータのみを剥離した後で半導体ウエハ裏面を研削することを特徴とする半導体ウエハ裏面研削方法。
【請求項5】
紫外線反応性モノマー(あるいはオリゴマー)あるいは側鎖にC=C二重結合を持つポリマー、あるいは光重合開始剤を含む粘着剤をセパレータ上に塗工して粘着剤層を形成し、粘着剤層の塗工面を暴露した状態で放射線を照射することにより、粘着剤層のセパレータ側の面の粘着力をその反対面の粘着力よりも低下させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体ウエハ保護用基材レス粘着シートの製造方法。


【公開番号】特開2010−212474(P2010−212474A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57644(P2009−57644)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】