説明

半導体チップ実装体の製造方法

【課題】高精度な電極接合を行うことができ、電極の接合不良を低減することのできる半導体チップ実装体の製造方法を提供する。
【解決手段】封止樹脂5を介して半導体チップと電子部品とを別々の温度に加熱しながら押圧して、前記半導体チップの突起状電極2と前記電子部品の電極部とを接触及び接合させる工程と、前記封止樹脂5を硬化させる工程とを有する半導体チップ実装体の製造方法であって、前記半導体チップの突起状電極2と前記電子部品の電極部とを接触及び接合させる工程において、前記半導体チップの突起状電極2の先端部の融点をM1、前記電子部品の電極部の融点をM2、前記半導体チップを加熱する温度をT1、前記電子部品を加熱する温度をT2としたとき、T1<M1<T2<M2、又は、T2<M2<T1<M1を満たす半導体チップ実装体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高精度な電極接合を行うことができ、多数の突起状電極を有する、薄い半導体チップ又は脆い低誘電層を有する半導体チップであっても、電極の接合不良を低減することのできる半導体チップ実装体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ますます進展する半導体装置の小型化、高集積化に対応するために、ハンダ等からなる突起状電極(バンプ)を有する半導体チップを用いたフリップチップ実装が多用されている。更に、半導体チップ間の距離も突起状電極間の距離も狭くなっていることから、封止樹脂材料を電極接合後に注入するのではなく、基板又は半導体チップに封止樹脂層を予め設けておく方法が検討されている。
このような方法においては、一般的に、半導体チップを加熱しながら封止樹脂層を介して基板に押圧し、その後、半導体チップの突起状電極が溶融する温度よりやや高い温度にまで半導体チップを加熱して、突起状電極を基板の電極部に接合する。
【0003】
例えば、特許文献1には、フリップチップ実装方法において、半導体チップ及び配線回路基板の少なくとも一方の対向面に封止充填剤用樹脂組成物を介在させ、半導体チップのバンプと配線回路基板の電極とを加熱圧着することが記載されている。特許文献1の実施例には、具体的な実装条件として、熱超音波併用フリップチップボンダーで、ヘッド温度200℃、ステージ温度80℃、圧力180N/チップの条件で加熱圧着したことが記載されている。
【0004】
しかしながら、近年、半導体チップの高密度化が進行するとともに半導体チップ1つ当たりの突起状電極の数が増加したり突起状電極のサイズが小さくなったりしていることから、高精度な電極接合を行うことが難しくなっており、特に突起状電極の高さのばらつきを原因とする接合不良の問題が顕著となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−147510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高精度な電極接合を行うことができ、多数の突起状電極を有する、薄い半導体チップ又は脆い低誘電層を有する半導体チップであっても、電極の接合不良を低減することのできる半導体チップ実装体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、封止樹脂を介して半導体チップと電子部品とを別々の温度に加熱しながら押圧して、前記半導体チップの突起状電極と前記電子部品の電極部とを接触及び接合させる工程と、前記封止樹脂を硬化させる工程とを有する半導体チップ実装体の製造方法であって、前記半導体チップの突起状電極と前記電子部品の電極部とを接触及び接合させる工程において、前記半導体チップの突起状電極の先端部の融点をM1、前記電子部品の電極部の融点をM2、前記半導体チップを加熱する温度をT1、前記電子部品を加熱する温度をT2としたとき、T1<M1<T2<M2、又は、T2<M2<T1<M1を満たす半導体チップ実装体の製造方法である。
以下、本発明を詳述する。
【0008】
本発明者は、突起状電極の高さにばらつきがある場合には、半導体チップを基板に押圧しても低い突起状電極は電極部に到達できず、その結果、電極の接合不良が生じることを見出した。突起状電極の高さにばらつきがある場合にも、例えば、半導体チップを押圧する荷重を大きくすれば全ての突起状電極を電極部に到達させることができると考えられる。しかしながら、薄い半導体チップに高荷重をかけると、半導体チップに割れ又は欠けが生じたり、半導体チップ上に形成されている脆い低誘電層が破壊されたりしてしまう。
このような問題に対し、本発明者は、半導体チップの突起状電極と電子部品の電極部とを接触及び接合させる工程において、突起状電極が電極部に接触した時点で、電極部の熱により突起状電極が溶融するか又は突起状電極の熱により電極部が溶融するように加熱温度を調整することにより、突起状電極の高さにばらつきがあっても高荷重をかける必要がなく、多数の突起状電極を有する、薄い半導体チップ又は脆い低誘電層を有する半導体チップであっても、電極の接合不良を低減できることを見出した。更に、本発明者は、このような方法によれば、個々の電極接合についても高精度に行うことができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の半導体チップ実装体の製造方法では、まず、封止樹脂を介して半導体チップと電子部品とを別々の温度に加熱しながら押圧して、上記半導体チップの突起状電極と上記電子部品の電極部とを接触及び接合させる工程を行う。
【0010】
上記半導体チップは、突起状電極を有する。上記突起状電極として、例えば、低融点の電極材料のみからなる突起状電極、銅等の金属材料からなる柱状電極と、低融点の電極材料からなる先端部とを有する突起状電極等が挙げられる。上記低融点の電極材料として、例えば、ハンダ等が挙げられる。
上記電子部品は、電極部を有する。上記電極部を構成する電極材料として、例えば、銅、鉛フリーハンダ等の合金等が挙げられる。上記電子部品は特に限定されず幅広く選択され、例えば、半導体チップ、ウエハ、基板等が挙げられる。
【0011】
上記半導体チップの突起状電極と上記電子部品の電極部とを接触及び接合させる工程では、上記半導体チップと上記電子部品とを別々の温度に加熱しながら押圧する。
上記半導体チップと上記電子部品とを別々の温度に加熱しながら押圧する方法として、例えば、従来公知のステージ及びボンディングヘッドを有するボンディング装置にて、所定の温度に設定したステージに上記電子部品を搭載し、所定の温度に設定したボンディングヘッドを用いて上記電子部品に対して上記半導体チップを押圧する方法、上記半導体チップと上記電子部品とをそれぞれ所定の温度に設定したパルスヒーターを用いて加熱しながら、上記電子部品に対して上記半導体チップを押圧する方法等が挙げられる。なかでも、短時間で昇温させることができることから、上記半導体チップと上記電子部品とをパルスヒーターを用いて加熱する方法が好ましい。
なお、上記半導体チップと上記電子部品とを押圧する際には、上記半導体チップに対して上記電子部品を押圧してもよく、上記電子部品に対して上記半導体チップを押圧してもよい。
【0012】
ボンディング装置のステージ及びボンディングヘッドを所定の温度に設定する方法は特に限定されず、例えば、パルスヒーター、コンスタントヒーター等のヒーターを用いてステージ温度及びボンディングヘッド温度を調整する方法等が挙げられる。
【0013】
上記半導体チップと上記電子部品とを押圧する際の突起状電極1個あたりの荷重は、好ましい下限が0.002N、好ましい上限が0.080Nである。荷重が0.002N未満であると、特に突起状電極の高さにばらつきがある場合に、良好な電極接合を行うことができないことがある。荷重が0.080Nを超えると、特に上記半導体チップ又は上記電子部品が薄い場合に、上記半導体チップ又は上記電子部品に割れ又は欠けが生じることがある。
上記押圧する際の突起状電極1個あたりの荷重のより好ましい上限は0.010Nである。荷重が0.010Nを超えると、上記半導体チップの脆い低誘電層が破壊されることがある。
【0014】
上記半導体チップの突起状電極と上記電子部品の電極部とを接触及び接合させる工程では、上記半導体チップの突起状電極の先端部の融点をM1、上記電子部品の電極部の融点をM2、上記半導体チップを加熱する温度をT1、上記電子部品を加熱する温度をT2としたとき、T1<M1<T2<M2、又は、T2<M2<T1<M1となる。
なお、上記電子部品の電極部が複数の融点を有する場合には、上記電子部品の電極部の融点M2とは、上記電子部品の電極部の融点のうち最も低い融点を意味する。
図3に、本発明の半導体チップ実装体の製造方法における、半導体チップの突起状電極と電子部品の電極部とを接触及び接合させる工程の一例を模式的に示す。図3においては、ボンディングヘッド1に保持された半導体チップの突起状電極2と、ステージ4上の電子部品(基板)の電極部3とが接触及び接合している。図3では、突起状電極の先端部の融点M1、基板の電極部の融点M2、ボンディングヘッド温度T1、ステージ温度T2を、符号の後の括弧内に示す。
【0015】
まず、式:T1<M1<T2<M2について説明する。
上記半導体チップを加熱する温度(T1)が上記半導体チップの突起状電極の先端部の融点(M1)より低い(T1<M1)ことにより、上記半導体チップの突起状電極は、上記電子部品の電極部と接触する前は溶融していない。一方、上記電子部品を加熱する温度(T2)が上記半導体チップの突起状電極の先端部の融点(M1)より高い(M1<T2)ことにより、上記半導体チップの突起状電極は、上記電子部品の電極部と接触すると、接触した時点で電極部の熱により溶融する。従って、上記半導体チップの突起状電極は、高い突起状電極から順に上記電子部品の電極部に到達して溶融し、該電極部と接合することとなる。
従って、式:T1<M1<T2<M2を満たすことにより、突起状電極の高さにばらつきがあっても高荷重をかける必要がなく、多数の突起状電極を有する、薄い半導体チップ又は脆い低誘電層を有する半導体チップであっても、電極の接合不良を低減することができる。また、個々の電極接合についても高精度に行うことができる。
なお、上記電子部品を加熱する温度(T2)が上記電子部品の電極部の融点(M2)より低い(T2<M2)ことにより、上記電子部品の電極部は加熱されても溶融しない。
【0016】
次に、式:T2<M2<T1<M1について説明する。
上記電子部品を加熱する温度(T2)が上記電子部品の電極部の融点(M2)より低い(T2<M2)ことにより、上記電子部品の電極部は、上記半導体チップの突起状電極と接触する前は溶融していない。一方、上記半導体チップを加熱する温度(T1)が上記電子部品の電極部の融点(M2)より高い(M2<T1)ことにより、上記電子部品の電極部は、上記半導体チップの突起状電極と接触すると、接触した時点で突起状電極の熱により溶融する。従って、上記電子部品の電極部は、高い突起状電極と接触した電極部から順に溶融し、該突起状電極と接合することとなる。
従って、式:T2<M2<T1<M1を満たすことにより、突起状電極の高さにばらつきがあっても高荷重をかける必要がなく、多数の突起状電極を有する、薄い半導体チップ又は脆い低誘電層を有する半導体チップであっても、電極の接合不良を低減することができる。また、個々の電極接合についても高精度に行うことができる。
なお、上記半導体チップを加熱する温度(T1)が上記半導体チップの突起状電極の先端部の融点(M1)より低い(T1<M1)ことにより、上記半導体チップの突起状電極は加熱されても溶融しない。
【0017】
上記半導体チップの突起状電極の先端部の融点(M1)は、例えば、上記先端部を構成する電極材料がハンダである場合は220℃程度である。また、上記電子部品の電極部の融点(M2)は、例えば、上記電極部を構成する電極材料が銅である場合は1083℃程度であり、上記電極部を構成する電極材料が鉛フリーハンダである場合は230℃程度である。
上記半導体チップを加熱する温度(T1)及び上記電子部品を加熱する温度(T2)は、使用する電極材料の融点に合わせて適宜調整すればよいが、上記半導体チップを加熱する温度(T1)は、例えば、200〜210℃程度であり、上記電子部品を加熱する温度(T2)は、例えば、230〜240℃程度である。
【0018】
上記封止樹脂は特に限定されず、硬化剤と硬化性化合物とを含有することが好ましく、硬化剤と硬化性化合物との組み合わせによって上記封止樹脂の硬化性を制御することができる。
上記硬化性化合物は特に限定されず、例えば、ユリア化合物、メラミン化合物、フェノール化合物、レゾルシノール化合物、エポキシ化合物、アクリル化合物、ポリエステル化合物、ポリアミド化合物、ポリベンズイミダゾール樹脂、ジアリルフタレート化合物、キシレン化合物、アルキル−ベンゼン化合物、エポキシアクリレート化合物、珪素樹脂、ウレタン化合物、エピスルフィド化合物、ビスマレイミド化合物等の熱硬化性化合物が挙げられる。なかでも、得られる半導体チップ実装体が信頼性及び接合強度に優れることから、エポキシ化合物又はエピスルフィド化合物が好ましい。
【0019】
上記エポキシ化合物は特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールS型等のビスフェノール型エポキシ化合物、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型等のノボラック型エポキシ化合物、レゾルシノール型エポキシ化合物、トリスフェノールメタントリグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、フルオレン型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、ポリエーテル変性エポキシ化合物、ベンゾフェノン型エポキシ化合物、アニリン型エポキシ化合物、NBR変性エポキシ化合物、CTBN変性エポキシ化合物、及び、これらの水添化物等が挙げられる。なかでも、速硬化性が得られやすいことから、ベンゾフェノン型エポキシ化合物が好ましい。これらのエポキシ化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0020】
上記ビスフェノールF型エポキシ化合物のうち、市販品として、例えば、EXA−830−LVP、EXA−830−CRP(以上、DIC社製)等が挙げられる。
上記レゾルシノール型エポキシ化合物のうち、市販品として、例えば、EX−201(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ポリエーテル変性エポキシ化合物のうち、市販品として、例えば、EX−931(ナガセケムテックス社製)、EXA−4850−150(DIC社製)、EP−4005(アデカ社製)等が挙げられる。
【0021】
上記エピスルフィド化合物は、エピスルフィド基を有していれば特に限定されず、例えば、エポキシ化合物のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置換した化合物が挙げられる。
上記エピスルフィド化合物として、具体的には例えば、ビスフェノール型エピスルフィド化合物(ビスフェノール型エポキシ化合物のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置換した化合物)、水添ビスフェノール型エピスルフィド化合物、ジシクロペンタジエン型エピスルフィド化合物、ビフェニル型エピスルフィド化合物、フェノールノボラック型エピスルフィド化合物、フルオレン型エピスルフィド化合物、ポリエーテル変性エピスルフィド化合物、ブタジエン変性エピスルフィド化合物、トリアジンエピスルフィド化合物、ナフタレン型エピスルフィド化合物等が挙げられる。なかでも、ナフタレン型エピスルフィド化合物が好ましい。これらのエピスルフィド化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
なお、酸素原子から硫黄原子への置換は、エポキシ基の少なくとも一部におけるものであってもよく、すべてのエポキシ基の酸素原子が硫黄原子に置換されていてもよい。
【0022】
上記エピスルフィド化合物のうち、市販品として、例えば、YL−7007(水添ビスフェノールA型エピスルフィド化合物、ジャパンエポキシレジン社製)等が挙げられる。また、上記エピスルフィド化合物は、例えば、チオシアン酸カリウム、チオ尿素等の硫化剤を使用して、エポキシ化合物から容易に合成される。
【0023】
上記封止樹脂が上記エピスルフィド化合物を含有する場合、上記エピスルフィド化合物の配合量は特に限定されないが、上記封止樹脂全体100重量部に対する好ましい下限が3重量部、好ましい上限が12重量部であり、より好ましい下限が6重量部、より好ましい上限が9重量部である。
【0024】
上記封止樹脂は、上記硬化性化合物と反応可能な官能基を有する高分子化合物(以下、単に、反応可能な官能基を有する高分子化合物ともいう)を含有することが好ましい。上記反応可能な官能基を有する高分子化合物を含有することにより、得られる封止樹脂は、熱によるひずみが発生する際の接合信頼性が向上する。
【0025】
上記反応可能な官能基を有する高分子化合物として、上記硬化性化合物としてエポキシ化合物を用いる場合には、例えば、アミノ基、ウレタン基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等を有する高分子化合物等が挙げられる。なかでも、エポキシ基を有する高分子化合物が好ましい。上記エポキシ基を有する高分子化合物を含有することで、得られる封止樹脂の硬化物は、優れた可撓性を発現する。即ち、上記封止樹脂の硬化物は、上記硬化性化合物としてのエポキシ化合物に由来する優れた機械的強度、耐熱性及び耐湿性と、上記エポキシ基を有する高分子化合物に由来する優れた可撓性とを兼備することができ、耐冷熱サイクル性、耐ハンダリフロー性及び寸法安定性等に優れ、高い接着信頼性及び高い導通信頼性を発現する。
【0026】
上記エポキシ基を有する高分子化合物は特に限定されず、末端及び/又は側鎖(ペンダント位)にエポキシ基を有する高分子化合物であればよく、例えば、エポキシ基含有アクリルゴム、エポキシ基含有ブタジエンゴム、ビスフェノール型高分子量エポキシ化合物、エポキシ基含有フェノキシ樹脂、エポキシ基含有アクリル樹脂、エポキシ基含有ウレタン樹脂、エポキシ基含有ポリエステル樹脂等が挙げられる。なかでも、エポキシ基を多く含有することができ、得られる封止樹脂の硬化物の機械的強度及び耐熱性がより優れたものとなることから、エポキシ基含有アクリル樹脂が好ましい。これらのエポキシ基を有する高分子化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0027】
上記反応可能な官能基を有する高分子化合物として、上記エポキシ基を有する高分子化合物、特にエポキシ基含有アクリル樹脂を用いる場合、上記エポキシ基を有する高分子化合物の重量平均分子量の好ましい下限は1万である。上記エポキシ基を有する高分子化合物の重量平均分子量が1万未満であると、得られる封止樹脂の硬化物の可撓性が充分に向上しないことがある。
【0028】
上記反応可能な官能基を有する高分子化合物として、上記エポキシ基を有する高分子化合物、特にエポキシ基含有アクリル樹脂を用いる場合、上記エポキシ基を有する高分子化合物のエポキシ当量の好ましい下限は200、好ましい上限は1000である。上記エポキシ基を有する高分子化合物のエポキシ当量が200未満であると、得られる封止樹脂の硬化物の可撓性が充分に向上しないことがある。上記エポキシ基を有する高分子化合物のエポキシ当量が1000を超えると、得られる封止樹脂の硬化物の機械的強度及び耐熱性が低下することがある。
【0029】
上記封止樹脂が上記反応可能な官能基を有する高分子化合物を含有する場合、上記反応可能な官能基を有する高分子化合物の配合量は特に限定されないが、上記硬化性化合物100重量部に対する好ましい下限が1重量部、好ましい上限が30重量部である。上記反応可能な官能基を有する高分子化合物の配合量が1重量部未満であると、得られる封止樹脂は、熱によるひずみが発生する際の接合信頼性が低下することがある。上記反応可能な官能基を有する高分子化合物の配合量が30重量部を超えると、得られる封止樹脂の硬化物は、機械的強度、耐熱性及び耐湿性が低下することがある。
【0030】
上記硬化剤は特に限定されず、従来公知の硬化剤を上記硬化性化合物に合わせて適宜選択することができる。上記硬化性化合物としてエポキシ化合物を用いる場合、上記硬化剤として、例えば、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸等の加熱硬化型酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、ジシアンジアミド等の潜在性硬化剤、カチオン系触媒型硬化剤等が挙げられる。これらの硬化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0031】
上記封止樹脂が上記硬化剤を含有する場合、上記硬化剤の配合量は特に限定されないが、上記硬化性化合物の官能基と等量反応する硬化剤を用いる場合、上記硬化性化合物の官能基量に対して、60〜100当量であることが好ましい。また、触媒として機能する硬化剤を用いる場合、上記硬化剤の配合量は、上記硬化性化合物100重量部に対して好ましい下限が1重量部、好ましい上限が20重量部である。
【0032】
上記封止樹脂は、硬化速度又は硬化温度を調整する目的で、上記硬化剤に加えて硬化促進剤を含有することが好ましい。
上記硬化促進剤は特に限定されず、例えば、イミダゾール系硬化促進剤、3級アミン系硬化促進剤等が挙げられる。なかでも、硬化速度の制御をしやすいことから、イミダゾール系硬化促進剤が好ましい。これらの硬化促進剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0033】
上記イミダゾール系硬化促進剤は特に限定されず、例えば、イミダゾールの1位をシアノエチル基で保護した1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、イソシアヌル酸で塩基性を保護したイミダゾール系硬化促進剤(商品名「2MA−OK」、四国化成工業社製)等が挙げられる。これらのイミダゾール系硬化促進剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記硬化促進剤として、例えば、2MZ、2MZ−P、2PZ、2PZ−PW、2P4MZ、C11Z−CNS、2PZ−CNS、2PZCNS−PW、2MZ−A、2MZA−PW、C11Z−A、2E4MZ−A、2MA−OK、2MAOK−PW、2PZ−OK、2MZ−OK、2PHZ、2PHZ−PW、2P4MHZ、2P4MHZ−PW、2E4MZ・BIS、VT、VT−OK、MAVT、MAVT−OK(以上、四国化成工業社製)等が挙げられる。
【0034】
上記硬化促進剤の配合量は特に限定されず、上記硬化性化合物100重量部に対して好ましい下限が1重量部、好ましい上限が10重量部である。
【0035】
上記硬化性化合物としてエポキシ化合物を用い、かつ、上記硬化剤と上記硬化促進剤とを併用する場合、用いる硬化剤の配合量は、用いるエポキシ化合物中のエポキシ基に対して理論的に必要な当量以下とすることが好ましい。上記硬化剤の配合量が理論的に必要な当量を超えると、得られる封止樹脂を硬化して得られる硬化物から、水分によって塩素イオンが溶出しやすくなることがある。即ち、硬化剤が過剰であると、例えば、得られる封止樹脂の硬化物から熱水で溶出成分を抽出した際に、抽出水のpHが4〜5程度となるため、エポキシ化合物から塩素イオンが多量溶出することがある。従って、得られる封止樹脂の硬化物1gを、100℃の純水10gで2時間浸した後の純水のpHが6〜8であることが好ましく、pHが6.5〜7.5であることがより好ましい。
【0036】
上記封止樹脂は、上記封止樹脂の粘度を低減させるために希釈剤を含有してもよい。
上記希釈剤は、エポキシ基を有することが好ましく、1分子中のエポキシ基数の好ましい下限が2、好ましい上限が4である。1分子中のエポキシ基数が2未満であると、封止樹脂の硬化後に充分な耐熱性が発現しないことがある。1分子中のエポキシ基数が4を超えると、硬化によるひずみが発生したり、未硬化のエポキシ基が残存したりすることがあり、これにより、接合強度の低下又は繰り返しの熱応力による接合不良が発生することがある。上記希釈剤の1分子中のエポキシ基数のより好ましい上限は3である。
また、上記希釈剤は、芳香環及び/又はジシクロペンタジエン構造を有することが好ましい。
【0037】
上記希釈剤は、120℃での重量減少量及び150℃での重量減少量の好ましい上限が1%である。120℃での重量減少量及び150℃での重量減少量が1%を超えると、得られる封止樹脂の硬化中又は硬化後に未反応物が揮発してしまい、生産性又は得られる半導体チップ実装体の性能に悪影響を与えることがある。
また、上記希釈剤は、上記硬化性化合物よりも硬化開始温度が低く、硬化速度が大きいことが好ましい。
【0038】
上記封止樹脂が上記希釈剤を含有する場合、上記封止樹脂全体における上記希釈剤の配合量の好ましい下限は1重量%、好ましい上限は20重量%である。上記希釈剤の配合量が上記範囲外であると、得られる封止樹脂の粘度を充分に低減できないことがある。
【0039】
上記封止樹脂は、更に、チキソトロピー付与剤を含有してもよい。
上記チキソトロピー付与剤を含有することで、上記封止樹脂の粘度挙動を、フリップチップ実装に最適となるように調整することができる。
【0040】
上記チキソトロピー付与剤は特に限定されず、例えば、金属微粒子、炭酸カルシウム、ヒュームドシリカ、酸化アルミニウム、窒化硼素、窒化アルミニウム、硼酸アルミ等の無機微粒子等が挙げられる。なかでも、ヒュームドシリカが好ましい。
また、上記チキソトロピー付与剤は、必要に応じて、表面処理が施されていてもよい。上記表面処理が施されたチキソトロピー付与剤は特に限定されないが、表面に疎水基を有する粒子が好ましく、具体的には、例えば、表面を疎水化したヒュームドシリカ等が挙げられる。
【0041】
上記チキソトロピー付与剤が粒子状である場合、該粒子状チキソトロピー付与剤の平均粒子径は特に限定されないが、好ましい上限は1μmである。上記粒子状チキソトロピー付与剤の平均粒子径が1μmを超えると、得られる封止樹脂が所望のチキソトロピー性を発現できないことがある。
【0042】
上記封止樹脂全体における上記チキソトロピー付与剤の配合量は特に限定されないが、上記チキソトロピー付与剤に表面処理がなされていない場合には、好ましい下限が0.5重量%、好ましい上限が20重量%である。上記チキソトロピー付与剤の配合量が0.5重量%未満であると、得られる封止樹脂に充分なチキソトロピー性を付与することができないことがある。上記チキソトロピー付与剤の配合量が20重量%を超えると、半導体チップ実装体を製造する際に上記封止樹脂の排除性が低下することがある。上記チキソトロピー付与剤の配合量のより好ましい下限は3重量%、より好ましい上限は10重量%である。
【0043】
上記封止樹脂は、更に、無機充填材を含有することが好ましい。
上記無機充填材として、例えば、表面処理されたシリカフィラー等が挙げられる。上記表面処理されたシリカフィラーは特に限定されないが、フェニルシランカップリング剤で表面処理されたシリカフィラーが好ましい。
【0044】
上記封止樹脂が上記無機充填材を含有する場合、上記封止樹脂における上記無機充填材の配合量は特に限定されないが、上記硬化性化合物100重量部に対する好ましい下限が30重量部、好ましい上限が400重量部である。上記無機充填材の配合量が30重量部未満であると、得られる封止樹脂が充分な信頼性を保持することができないことがある。上記無機充填材の配合量が400重量部を超えると、得られる封止樹脂の粘度が高くなりすぎることがある。
【0045】
上記封止樹脂は、必要に応じて、無機イオン交換体を含有してもよい。
上記無機イオン交換体のうち、市販品として、例えば、IXEシリーズ(東亞合成社製)等が挙げられる。上記封止樹脂が上記無機イオン交換体を含有する場合、上記無機イオン交換体の配合量は特に限定されないが、好ましい上限が10重量%、好ましい下限が1重量%である。
【0046】
上記封止樹脂は、必要に応じて、ブリード防止剤、イミダゾールシランカップリング剤等の接着性付与剤等のその他の添加剤を含有してもよい。
【0047】
上記封止樹脂は、上記突起状電極と上記電極部とを接触及び接合させる際に上記半導体チップと上記電子部品との間に挟み込まれればよく、上記半導体チップ側に上記封止樹脂層が予め設けられていてもよく、上記電子部品側に上記封止樹脂層が予め設けられていてもよい。
【0048】
上記封止樹脂層を半導体チップ又は電子部品に設ける方法は特に限定されず、例えば、ペースト状の封止樹脂組成物をスクリーン印刷等により半導体チップ又は電子部品に塗布する方法、シート状の封止樹脂組成物を半導体チップ又は電子部品に貼り合わせる方法等が挙げられる。また、シート状の封止樹脂組成物を半導体チップに貼り合わせる場合には、上記封止樹脂層と基材とを有するシート状材料を用い、このシート状材料をウエハに貼り合わせた状態でウエハのバックグラインドを行った後、基材の剥離及びウエハのダイシングを経て、ウエハを個別の半導体チップにダイシングしてもよい。
上記封止樹脂層を半導体チップに設ける際には、ウエハに上記封止樹脂層を設けた後でウエハを個別の半導体チップにダイシングしてもよく、ウエハを個別の半導体チップにダイシングした後で半導体チップに上記封止樹脂層を設けてもよい。
【0049】
本発明の半導体チップ実装体の製造方法では、次いで、上記封止樹脂を硬化させる工程を行う。
上記封止樹脂を硬化させる工程は、上記半導体チップの突起状電極と上記電子部品の電極部とを接触及び接合させる工程の後、別途行ってもよく、上記半導体チップの突起状電極と上記電子部品の電極部とを接触及び接合させる工程と同時に行ってもよい。より良好な電極接合を行うためには、上記半導体チップの突起状電極と上記電子部品の電極部とを接触及び接合させる工程では上記封止樹脂を完全には硬化させず、その後、本硬化させることが好ましい。
【発明の効果】
【0050】
本発明によれば、高精度な電極接合を行うことができ、多数の突起状電極を有する、薄い半導体チップ又は脆い低誘電層を有する半導体チップであっても、電極の接合不良を低減することのできる半導体チップ実装体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施例1で得られた半導体チップ実装体の研磨により露出した断面の顕微鏡写真を示す。
【図2】比較例1で得られた半導体チップ実装体の研磨により露出した断面の顕微鏡写真を示す。
【図3】本発明の半導体チップ実装体の製造方法における、半導体チップの突起状電極と電子部品の電極部とを接触及び接合させる工程の一例の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0053】
(実施例1)
厚み725μm、幅7.3mm角であり、表面に高さ35μm、幅35μm角の正方形の銅ポストの上に高さ20μmのハンダからなる先端部(融点210℃、M1)をつけたバンプが50μmピッチでペリフェラル状に多数形成されており、デイジー回路が形成された半導体チップを準備した。この半導体チップの封止エリアに、下記の材料からなる表1に示す組成の封止樹脂溶液を塗布し、80℃20分で乾燥し、封止樹脂層が形成された半導体チップを得た。また、ハンダからなる電極部(融点230℃、M2)を有するデイジー回路が形成された基板を準備した。なお、基板としては、導通確認用の端子が設けられているものを用いた。
基板及び半導体チップをそれぞれ、パルスヒーター(ADVANCED MATERIALS社製、12mm角及び35mm角)に保持させ、基板を保持するパルスヒーターを220℃(T2)に、半導体チップを保持するパルスヒーターを200℃(T1)に設定した。基板に対して半導体チップを10N5秒で押圧し、バンプと電極部との接触及び接合を行うとともに封止樹脂を硬化させ、半導体チップ実装体を得た。このときのバンプ1個あたりの荷重は0.009Nであった。
【0054】
(エポキシ化合物)
ビフェニル型エポキシ樹脂(商品名「YX−4000」、ジャパンエポキシレジン社製)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名「1004AF」、ジャパンエポキシレジン社製)
【0055】
(反応可能な官能基を有する高分子化合物)
グリシジル基含有アクリル樹脂(重量平均分子量20万、商品名「G−2050M」、日油社製)、
グリシジル基含有アクリル樹脂(重量平均分子量2万、商品名「G−0250SP」、日油社製)
【0056】
(硬化剤)
トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸(商品名「YH−306」、JER社製)
【0057】
(硬化促進剤)
2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン イソシアヌル酸付加塩(商品名「2MA−OK」、四国化成工業社製)
【0058】
(無機充填材)
表面フェニル処理無機フィラー(シリカ)(商品名「SE−1050−SPT」、アドマテックス社製)
表面疎水化ヒュームドシリカ(商品名「MT−10」、トクヤマ社製)
【0059】
(その他)
シランカップリング剤(商品名「KBM−573」、信越化学社製)
溶剤 メチルエチルケトン(MEK、和光純薬工業社製)
【0060】
(実施例2)
厚み725μm、幅7.3mm角であり、表面に高さ35μm、幅35μm角の正方形の銅ポストの上に高さ20μmのハンダからなる先端部(融点230℃、M1)をつけたバンプが50μmピッチでペリフェラル状に多数形成されており、デイジー回路が形成された半導体チップを準備した。この半導体チップの封止エリアに、下記の材料からなる表1に示す組成の封止樹脂溶液を塗布し、80℃20分で乾燥し、封止樹脂層が形成された半導体チップを得た。また、ハンダからなる電極部(融点210℃、M2)を有するデイジー回路が形成された基板を準備した。なお、基板としては、導通確認用の端子が設けられているものを用いた。
基板及び半導体チップをそれぞれ、パルスヒーター(ADVANCED MATERIALS社製、12mm角及び35mm角)に保持させ、基板を保持するパルスヒーターを200℃(T2)に、半導体チップを保持するパルスヒーターを220℃(T1)に設定した。基板に対して半導体チップを10N5秒で押圧し、バンプと電極部との接触及び接合を行うとともに封止樹脂を硬化させ、半導体チップ実装体を得た。このときのバンプ1個あたりの荷重は0.009Nであった。
【0061】
(比較例1)
実施例1と同様にして、封止樹脂層が形成された半導体チップと、基板とを準備した。
基板に対して半導体チップを荷重10Nで押圧し、パルスヒーターでヘッド温度を280℃(T1)に、コンスタントヒーターでステージ温度を120℃(T2)に調整したフリップチップボンダー(FC3000、東レエンジニアリング社製)を用いてバンプと電極部との接触及び接合を行ったこと以外は実施例1と同様にして、半導体チップ実装体を得た。このときのバンプ1個あたりの荷重は0.009Nであった。
【0062】
(比較例2)
実施例1と同様にして、封止樹脂層が形成された半導体チップと、基板とを準備した。
基板に対して半導体チップを荷重40Nで押圧し、パルスヒーターでヘッド温度を280℃(T1)に、コンスタントヒーターでステージ温度を120℃(T2)に調整したフリップチップボンダー(FC3000、東レエンジニアリング社製)を用いてバンプと電極部との接触及び接合を行ったこと以外は実施例1と同様にして、半導体チップ実装体を得た。このときのバンプ1個あたりの荷重は0.036Nであった。
【0063】
<評価>
実施例及び比較例で得られた半導体チップ実装体について、以下の評価を行った。
【0064】
(1)導通試験
基板に設けられた導通確認用の端子に抵抗器(HIOKI社製、3541)を接続し、抵抗値を測定して、下記の基準により評価した。結果を表1に示した。なお、比較例1で得られた半導体チップ実装体については、一部のバンプが基板の電極部に到達していないため、ディジーチェーンで導通確認ができなかった。
○:抵抗値が、配線部面積及び接続数から計算される期待値に対し、±20%以内の値であった。
×:抵抗値が、配線部面積及び接続数から計算される期待値に対し、±20%を超える値であった。
【0065】
(2)接合状態の観察1
半導体チップ実装体を透明樹脂で封止して、観察用サンプルを作製した。この観察用サンプルを導通方向と並行な方向(バンプと並行な方向)に研磨して、接合電極部分の形状を直接観察し、下記の基準で評価した。結果を表1に示した。なお、比較例2で得られた半導体チップ実装体については、全てのバンプが基板の電極部に到達していたが、半導体チップが薄いと割れることがあり、また、脆い低誘電層が存在すると破壊されていることがあった。
○:全てのバンプが基板の電極部に到達して高精度に接合されており、半導体チップの割れも確認されなかった。
×:一部のバンプが基板の電極部に到達していないか、接合状態が不良であるか、又は、半導体チップの割れが確認された。
【0066】
(3)接合状態の観察2
実施例1及び比較例1で得られた半導体チップ実装体をSUS板に押し当てながら、研磨を行い、基板の電極部と半導体チップのバンプとの境界付近を露出させた。研磨により露出した断面を、金属顕微鏡(ニコン社製、MM800)を用いて観察した。
その結果、実施例1で得られた半導体チップ実装体については、全ての接合電極部分の断面において、金属の露出が確認された。これは、電極間に樹脂が介在しておらず、電極同士が良好に接合していたことを示す。一方、比較例1で得られた半導体チップ実装体については、1以上のバンプを樹脂が被覆していた。これは、電極間に樹脂が介在しており、電極同士が良好に接合できなかったことを示す。一部のバンプの高さが不足しており基板の電極部に到達できなかったため、電極同士が良好に接合することができなかったものと考えられる。
【0067】
なお、図1に、実施例1で得られた半導体チップ実装体の研磨により露出した断面の顕微鏡写真を、図2に、比較例1で得られた半導体チップ実装体の研磨により露出した断面の顕微鏡写真を示した。
【0068】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明によれば、高精度な電極接合を行うことができ、多数の突起状電極を有する、薄い半導体チップ又は脆い低誘電層を有する半導体チップであっても、電極の接合不良を低減することのできる半導体チップ実装体の製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 ボンディングヘッド
2 突起状電極
3 基板の電極部
4 ステージ
5 封止樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
封止樹脂を介して半導体チップと電子部品とを別々の温度に加熱しながら押圧して、前記半導体チップの突起状電極と前記電子部品の電極部とを接触及び接合させる工程と、
前記封止樹脂を硬化させる工程とを有する半導体チップ実装体の製造方法であって、
前記半導体チップの突起状電極と前記電子部品の電極部とを接触及び接合させる工程において、前記半導体チップの突起状電極の先端部の融点をM1、前記電子部品の電極部の融点をM2、前記半導体チップを加熱する温度をT1、前記電子部品を加熱する温度をT2としたとき、T1<M1<T2<M2、又は、T2<M2<T1<M1を満たす
ことを特徴とする半導体チップ実装体の製造方法。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−216831(P2012−216831A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−77126(P2012−77126)
【出願日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】