説明

半導体レーザおよびその製造方法

【課題】歩留の低下や製造コストの上昇を招かず、窒化物半導体レーザのCODを抑止する。
【解決手段】半導体レーザ101は、第1クラッド層103、活性層105、第2クラッド層108を有している。レーザ共振器の前端面113および後端面114の近傍には、窒素よりも電気陰性度の大きい不純物元素であるフッ素を含有する窓領域115が形成されている。この窓領域115は前端面113および後端面114をそれぞれフッ化炭素(CF4 )プラズマに晒すことで形成される。窓領域115の活性層105の実効バンドギャップは、それ以外の活性層の実効バンドギャップよりも大きくなるので、CODを抑止するための端面窓構造として機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップあるいは固体照明装置等に用いられる、青から紫外域の波長で発振する窒化物半導体レーザおよびその製造方法に関するものであり、特に光学損傷を抑止するための共振器端面の表面処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクの再生・記録に用いられる光ピックアップに搭載される半導体レーザは、その発振波長が短いほど光ディスクの記録密度を高められることから、青から紫の波長で発振する窒化物半導体レーザの開発が進められ、これを用いた光ピックアップが実用に供せられるようになった。また、紫外域で発振する窒化物半導体レーザは、紫外光で蛍光体を励起する固体照明装置への適用が考えられ、この固体照明装置は蛍光灯に取って代わることが期待されている。
【0003】
このような窒化物半導体レーザにおいても、従来のAlGaAs系赤外半導体レーザあるいはAlGaInP系赤色半導体レーザと同様に、共振器端面における光学損傷(catastrophic optical damage:COD)が発生し、高出力化の妨げとなることが知られている。CODとは、高密度の界面準位が存在する端面近傍において、電子と正孔の非発光再結合が共振器内部よりも多く発生し、これによる温度上昇によってバンドギャップが小さくなって光吸収を生じ、この光吸収がさらに温度上昇をもたらすという正帰還作用により、共振器端面が破壊されてしまう現象である。
【0004】
従来の赤外半導体レーザあるいは赤色半導体レーザにおいては、CODの発生を防ぐために、共振器端面近傍において多重量子井戸活性層に不純物を拡散し、井戸層と障壁層を無秩序化して、端面近傍のみ活性層のバンドギャップを大きくした窓構造とすることがよく行われている。しかし、窒化物半導体では多重量子井戸の無秩序化が生じにくく、この方法による窓構造の形成は困難である。これに代わる窓構造の形成方法として、端面となる部分にバンドギャップの大きな窒化物半導体層を予め結晶成長で埋込んでおき、この部分を選んで劈開を行うことで端面窓構造とするという製造方法が開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、窓構造を作り込むのではなく、端面近傍に電流が注入されなくすることでCODを抑止するという方法もある。窒化物半導体レーザに対しては、共振器端面近傍に不純物を導入することで高抵抗化し、その部分に電流が流れないようにする技術(特許文献2参照)、および共振器端面近傍にはオーミック電極ではなくショットキ電極を形成し、電流が注入されないようにする技術(特許文献3参照)が開示されている。以下、特許文献2に開示された技術について、図面を用いて簡単に説明する。
【0006】
最終構造が図10に示される半導体レーザを製造するに際し、サファイア基板1001上に、GaNからなるn型コンタクト層1002、AlGaNからなるn型クラッド層1003、および、多重量子井戸活性層1004、AlGaNからなるp型クラッド層1005、および、GaNからなるp型コンタクト層1006を順次形成する。n型コンタクト層1002およびn型クラッド層1003のn型ドーパントとしてはSiを用い、p型クラッド層1005およびp型コンタクト層1006のp型ドーパントとしては、Mgを用いる。次に、共振器端面近傍上の領域のみ、p型コンタクト層1006上にZnO膜を形成し、熱拡散炉中でアニールを行う。これにより、ZnO膜内のZnが下方に熱拡散されて、p型コンタクト層1006を経てp型クラッド層1005、活性層1004およびn型クラッド層1003の一部領域まで導入される。その結果、共振器端面近傍に、高抵抗領域1007が形成される。
【0007】
ZnO膜を除去後、p型クラッド層1005の突出部とp型コンタクト層1006とからなるリッジ部を形成し、p型コンタクト層1006上の高抵抗領域1007以外の領域およびn型コンタクト層1002の表面の一部の領域に開口を有するSiO2 電流阻止層1008を形成する。この後、p側オーミック電極(図示されず)上にp側パッド電極1009、n側オーミック電極1010上にn側パッド電極1011を形成して、図10に示す半導体レーザとなる。本半導体レーザは、共振器端面近傍の高抵抗領域1007に電流が注入されないので、CODが生じにくくなるという利点を有している。
【特許文献1】特開2003−60298号公報
【特許文献2】特開2002−305353号公報
【特許文献3】特開2003−31894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
CODを抑止するための上記従来の方法は、何れも半導体レーザの構造を一部変更することでその作用を生ぜしめている。このような構造の変更は、フォトマスクの追加を伴う新たな工程を必要とし、歩留の低下と製造コストの上昇を招く恐れがある。特に、窓構造を形成するために結晶成長工程を追加することは、大幅なコストアップ要因になる。また、共振器端面近傍に電流を注入しない領域を設ける構造は、非注入領域が狭すぎるとCOD抑止の効果が無く、広すぎると非注入領域が可飽和吸収体となって、半導体レーザの電流−光出力特性に不連続な跳びを生じることになる。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、歩留の低下あるいは製造コストの上昇を招かず、また他の電気的・光学的特性に影響を及ぼすことなく、窒化物半導体レーザのCODを抑止することである。このために、半導体レーザの基本構造は変更せず、しかしながら実効的な窓構造を有する新規な窒化物半導体レーザおよびその製造方法を提供する。また、本発明は強い分極特性を持つという窒化物半導体固有の物性に基づくものであり、従来の赤外あるいは赤色半導体レーザに対してはその効果は小さい。ただし、強い分極特性をもつ新たな材料系による半導体レーザが実用に供せられれば、これに対しては適用可能である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る半導体レーザは、基板と、前記基板上に形成された、第1導電型の窒化物半導体よりなる第1クラッド層と、前記第1クラッド層上に形成された、単層もしくは多層の窒化物半導体よりなる活性層と、前記活性層上に形成された、第2導電型の窒化物半導体よりなる第2クラッド層とを備え、共振器方向における少なくとも一方の端面近傍の前記活性層を含む領域に、窒素よりも電気陰性度の大きい不純物元素を含有することを特徴とする。
【0011】
まず、窒化物半導体は自発分極と圧電分極による強い分極特性を有している。この分極の大きさは、例えばGaN活性層とAlGaNクラッド層とで異なるため、その界面にシート固定電荷が発生する。このシート固定電荷によりGaN活性層には内部電界が生じ、エネルギーバンド図における伝導帯と価電子帯が傾斜するので、内部電界がない場合に比べて実効的なバンドギャップが小さくなる。以上の知見は、例えば特開2005−217415に開示されている。
【0012】
これに対して、本願発明者らが新たに見出した知見を以下に述べる。窒素よりも電気陰性度の大きい不純物元素を活性層に導入すると電子トラップとなり、電子を捕獲あるいは正孔を生成することで負の分布固定電荷を生じ、伝導帯と価電子帯の傾斜が緩和される。これは小さくなっていた活性層のバンドギャップを元に戻す働きをする。すなわち、共振器端面近傍に、窒素よりも電気陰性度の大きい不純物元素を導入すると、端面近傍のみ活性層のバンドギャップを大きくすることができ、実効的な窓構造となる。窓構造がCOD抑止効果を持つことはよく知られるところであり、本構成によってCODの発生を抑えることができる。
【0013】
さらに、前記活性層は多重量子井戸構造を有することを特徴とする。
【0014】
活性層が多重量子井戸構造を有する場合は、例えばInGaN井戸層とGaN障壁層の界面にもシート固定電荷が発生する。このシート固定電荷により井戸層の実効的なバンドギャップが小さくなるが、共振器端面近傍に窒素よりも電気陰性度の大きい不純物元素を導入すると、端面近傍のみ井戸層のバンドギャップが元に戻るので、実効的な窓構造となる。活性層がバルクであっても、多重量子井戸であっても、電気陰性度の大きい不純物元素の導入で実効的な窓構造とすることができるが、多重量子井戸構造の場合の方が分極による伝導帯と価電子帯の傾斜が大きく、より顕著な効果が得られる。
さらに、前記不純物元素はフッ素であることを特徴とする。
【0015】
フッ素は周期律表にある全元素の中で最も電気陰性度が大きく、分極の緩和効果が最も大きい。
【0016】
さらに、前記フッ素の含有量は、前記端面において、1018cm-3以上であることを特徴とする。
【0017】
分極により発生するシート固定電荷の量は、例えば前記特開2005−217415に開示されており、これを打消すためには1018cm-3以上のフッ素を添加することが効果的である。
【0018】
さらに、前記端面上に形成された、窒化物絶縁体よりなる保護膜を有することを特徴とする。
【0019】
端面から導入された不純物元素は、導入後の熱履歴あるいは経時変化によって外部に散逸する場合もある。これを防止するためには、SiNあるいはAlN等の窒化物絶縁体を保護膜とすることが有効である。
【0020】
また、本発明に係る半導体レーザの製造方法は、基板上に、第1導電型の窒化物半導体よりなる第1クラッド層を形成する工程と、前記第1クラッド層上に、単層もしくは多層の窒化物半導体よりなる活性層を形成する工程と、前記活性層上に、第2導電型の窒化物半導体よりなる第2クラッド層を形成する工程と、前記基板を分割して、共振器方向における両端面を露出させる工程と、前記両端面の少なくとも一方の片端面から、窒素よりも電気陰性度の大きい不純物元素を導入する端面処理工程とを備えることを特徴とする。
【0021】
本製造方法により、窒素よりも電気陰性度の大きい不純物元素を共振器端面近傍に含有する半導体レーザを製造することができる。本製造方法の特徴は、半導体レーザ製造におけるウエハ工程が終了し、共振器端面を形成するためにウエハを劈開した、いわゆるバー状態で端面処理工程を行い、不純物元素を導入する点にある。通常の製造工程においては、共振器端面の反射率を制御するとともに、端面を保護するためにバー状態で端面コートを行う。これに先立つ工程として、不純物元素を導入する端面処理工程を行うことは、大幅な工数増加を伴うことなく、容易に実施できる。
【0022】
なお、不純物元素の導入は、共振器の両端面に対して行ってもよいし、片端面のみに行ってもよい。一般に、半導体レーザは前端面から高出力、後端面からは低出力となるように端面コートが施され、共振器内部の光パワー密度は後端面の方が大きくなる。従って、後端面のみに端面処理を施しても大きなCOD抑止効果が生じる。端面処理工程を前端面と後端面で2回行う必要がある場合には、後端面のみに端面処理を行うことで工数削減が可能になる。
【0023】
さらに、前記不純物元素はフッ素であることを特徴とする。
【0024】
前述の通り、フッ素は周期律表にある全元素の中で最も電気陰性度が大きく、分極の緩和効果が最も大きい。
【0025】
さらに、前記端面処理工程は、前記不純物元素を含む原料ガスを用いて発生させたプラズマに、前記両端面もしくは前記片端面を晒す工程であることを特徴とする。
【0026】
不純物元素を含む原料ガスを用いて発生させたプラズマには、不純物元素のイオンおよびラジカルが存在し、共振器端面をこのプラズマに晒すことで端面近傍に不純物元素が導入される。
【0027】
さらに、前記原料ガスは、フッ素、フッ化炭素、フッ化硫黄、フッ化窒素、およびフッ化シリコンからなるグループより選択される1つのガスを主要成分とすることを特徴とする。
【0028】
不純物元素としてフッ素を選んだ場合、原料ガスとしてはフッ素(F2 )、フッ化炭素(CF4 )、フッ化硫黄(SF6 、S2 2 )、フッ化窒素(NF3 )、あるいはフッ化シリコン(SiF4 )を用いることが望ましい。これらの原料ガスは、反応性イオンエッチング等の半導体プロセスに広く用いられており、プラズマを発生させる技術および装置は既に確立されている。また、窒化物半導体は、これらの原料ガスによる反応性イオンエッチングでほとんどエッチングされないので、反応性イオンエッチング装置をそのまま使用して端面処理することも可能である。
【0029】
さらに、前記端面処理工程に用いる真空装置内において、前記端面処理工程に引き続き行われる保護膜堆積工程を更に備えることを特徴とする。
【0030】
端面処理工程によって導入された不純物元素の散逸を防ぐためには、例えば窒化物絶縁体よりなる保護膜を形成することが有効であるが、端面処理工程に用いた真空装置内で、引き続き保護膜を堆積すれば、その効果はより顕著になる。プラズマCVD等の絶縁体堆積装置は、装置内壁に堆積する絶縁体をクリーニングするためのプラズマエッチング機能を有していることが多く、このような装置を用いれば、プラズマに晒す端面処理工程と、保護膜堆積工程を連続的に行うことは容易である。
【0031】
さらに、前記端面処理工程は、前記不純物元素を前記両端面もしくは前記片端面からイオン注入する工程であることを特徴とする。
【0032】
上記の反応性イオンエッチング装置による端面処理に比べると、工程コストは高くなるが、不純物元素をイオン注入すれば、導入する元素の量および導入深さを正確に制御することが可能である。
【0033】
さらに、前記端面処理工程は、前記不純物元素を含む原料ガスに前記両端面もしくは前記片端面を晒し、前記原料ガスに紫外線を照射する工程であることを特徴とする。
プラズマ励起以外にも、紫外線を照射することで、原料ガスを分解して活性化することもできる。プラズマ励起では、共振器端面がプラズマに晒されることで損傷を受ける可能性があるが、紫外線励起ではこのような問題は生じない。
【0034】
さらに、前記端面処理工程は、前記不純物元素を含む原料ガスに前記両端面もしくは前記片端面を晒し、前記原料ガスを加熱する工程であることを特徴とする。特に、前記原料ガスは、フッ化キセノンあるいは塩化フッ素を主要成分とすることを特徴とする
紫外線照射ではなく、加熱によって原料ガスを分解することも可能である。この場合は、加熱によって分解されやすい原料ガスを用いることが望ましく、フッ化キセノン(XeF2 )あるいは塩化フッ素(FCl3 )が原料ガスとして好適である。
【0035】
さらに、前記端面処理工程は、前記不純物元素をイオンとして含む溶液に、前記両端面もしくは前記片端面を浸す工程であることを特徴とする。
【0036】
真空装置を必要としない、より簡便な端面処理方法として、ウェット処理も可能である。窒素よりも電気陰性度の大きい不純物元素をイオンとして含む溶液に共振器端面を浸すことで、不純物元素が端面近傍に導入される。
【0037】
さらに、前記端面処理工程において、前記両端面もしくは前記片端面を陽極として前記溶液に電界を印加することを特徴とする。
【0038】
電気陰性度の大きい元素は陰イオンとなるので、共振器端面を陽極として電界を印加すれば、より積極的に不純物元素を端面近傍に導入することができる。
【0039】
さらに、前記溶液は、フッ化アンモニウムであることを特徴とする。
【0040】
不純物元素としてフッ素を選んだ場合、ウェット処理の溶液としてはフッ化アンモニウム水溶液が好適である。フッ化アンモニウム水溶液は、半導体プロセスで広く用いられているので、容易に高純度のものを入手できる。また、バー状態の半導体レーザを構成する窒化物半導体、絶縁膜、電極金属をほとんどエッチングしないので、端面処理の際に端面以外の部分を被覆して保護する必要がなく、端面処理工程が簡略化できる。
【発明の効果】
【0041】
本発明に係る半導体レーザによれば、基本構造は変更せず、しかしながら実効的な窓構造を有する窒化物半導体レーザを実現できることから、他の電気的・光学的特性に影響を及ぼすことなく、窒化物半導体レーザのCODを抑止することができる。また、その製造方法においては、端面処理工程として、半導体プロセスで一般に用いられている工程を共振器端面に対して新たに適用するだけであり、歩留の低下あるいは製造コストの上昇を招くことなく、CODを抑止した窒化物半導体レーザを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0043】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る半導体レーザの斜視図である。半導体レーザ101は、n型(第1導電型)GaN基板102上に、Si添加n型Al0.05Ga0.95N(厚さ1μm、キャリア濃度5×1017cm-3)よりなる第1クラッド層103、Si添加n型GaN(厚さ100nm、キャリア濃度5×1017cm-3)よりなる第1ガイド層104、不純物無添加のIn0.08Ga0.92N井戸層(厚さ3nm)とGaN障壁層(厚さ8nm)の多重量子井戸よりなる活性層105、無添加GaN(厚さ100nm)よりなる第2ガイド層106、Mg添加p型(第2導電型)Al0.15Ga0.85N(厚さ10nm、キャリア濃度1×1019cm-3)よりなるオーバーフロー抑制層107、Mg添加p型Al0.1 Ga0.9 N/GaN超格子(厚さ500nm)よりなる第2クラッド層108、Mg添加p型GaN(厚さ60nm、キャリア濃度1×1020cm-3)よりなるコンタクト層109を順次積層したエピ構造を有している。
【0044】
コンタクト層109および第2クラッド層108の一部は、ストライプ状のリッジとなるようにエッチングされている。その上にSiO2 よりなる絶縁膜110が形成され、さらにPd/Ptよりなるp側電極111が形成される。絶縁膜110はリッジ上に開口部を有しており、この部分でp側電極111はコンタクト層109に接触している。また、GaN基板102の裏面には、Ti/Pt/Auよりなるn側電極112が形成されている。なお、図示はしていないが、p側電極111およびn側電極112の上には、ボンディングおよび放熱のために、最上層がAuよりなるパッドを形成することが望ましい。
【0045】
斜視図の正面に当たるレーザ共振器の前端面113、および背面に当たる後端面114の近傍には、窒素よりも電気陰性度の大きい不純物元素であるフッ素を含有する窓領域115が形成されている。この窓領域115は前端面113および後端面114をそれぞれフッ化炭素(CF4 )プラズマに晒すことで形成されるが、製造方法の詳細については後述する。窓領域115におけるフッ素の含有量を図2に示す。これは、2次イオン質量分析(SIMS)によって、GaN基板102におけるフッ素含有量を端面から深さ方向に測定した結果であるが、活性層105の井戸層および障壁層にも同程度のフッ素が含有されている。なお、窓領域115は後端面114近傍のみに形成してもよい。
【0046】
図示はしていないが、前端面113および後端面114上に窒化物絶縁体、例えばSiNあるいはAlNよりなる保護膜を形成してもよい。窒化物絶縁体は、半導体レーザを構成する窒化物半導体との密着性に優れ、窓領域115に導入されたフッ素が導入後の熱履歴あるいは経時変化によって外部に散逸するのを防止する保護膜として、効果が大である。この保護膜の膜厚を適宜設定すれば、端面反射率を制御するための端面コートとしても機能させることができる。
【0047】
図3は、窓領域115がCODの発生を抑えることを示す、半導体レーザ101のエージング試験結果である。70℃の環境温度で、光出力170mWの自動パワー制御(APC)駆動を行い、その時の駆動電流の時間変化を測定している。図3(a)は、比較のために窓領域115を形成しなかった試料に対する試験結果であり、5試料中2試料で1000時間以内に急激な駆動電流の増加301を生じている。この急激な劣化を生じた試料について、共振器方向の断面を露出して走査型電子顕微鏡(SEM)および透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果、後端面の活性層部分で結晶に損傷が生じていることが確認された。すなわち、窓領域115を形成しない試料で発生した急激な劣化は、CODによるものである。一方、図3(b)は窓領域115を形成した半導体レーザ101に対して、同様の試験を行った結果である。5試料とも1000時間のエージング範囲では急激な劣化を生じておらず、窓領域115を形成することでCODの発生が抑えられていることが分かる。
【0048】
窒素よりも電気陰性度の大きい不純物元素を導入することで、CODを抑止する窓領域が形成されるメカニズムについて、図4を用いて説明する。図4は、(a)、(b)とも活性層105中の井戸層401および障壁層402のエネルギーバンド図を示しており、紙面右手側が第1クラッド層のある基板側、紙面左手側が第2クラッド層のある表面側になる。また、(a)は電気陰性度の大きい不純物元素が導入されていない領域、(b)は電気陰性度の大きい不純物元素が導入されている領域を示しているが、まず図4(a)を用いて窒化物半導体の分極特性に対する一般的知見を述べる。
【0049】
窒化物半導体の結晶成長では、c軸方向のGa面である(0001)面上にエピタキシアル成長するのが一般的である。この場合、InGaN井戸層401およびGaN障壁層402には、ともに表面から基板方向に向かう自発分極403を生じるが、井戸層401には圧縮応力が働くため、これと逆方向の圧電分極404を生じる。この結果、井戸層401の基板側端部(図では右側)には負のシート固定電荷405が発生し、表面側端部(図では左側)には正のシート固定電荷406が発生する。これらのシート固定電荷によって生じる内部電界により、井戸層401および障壁層402の伝導帯407と価電子帯408が図示したように傾斜し、その時の傾斜バンドギャップ409は、本来の無電界バンドギャップ410に比べて小さくなる。また、井戸層401の基板側端部に正孔411が局在し、表面側端部には電子412が局在することになる。
【0050】
次に、本発明に関する新たな知見について、図4(b)を用いて説明する。例えばフッ素等の窒素よりも電気陰性度の大きい不純物元素を井戸層401および障壁層402に導入すると、電子トラップとなる深い準位が形成される。この電子トラップは、井戸層401にあった電子412を捕獲し、あるいは正孔411を新たに発生させて、負の分布固定電荷413となる。この負の分布固定電荷よって井戸層401および障壁層402の伝導帯407と価電子帯408は上に凸の曲がりを生じ、結果的に図4(b)に示すバンド構造となる。この時の曲がりバンドギャップ414は、傾斜バンドギャップ409よりも大きくなり、無電界バンドギャップ410に近づく。
【0051】
以上の説明から明らかなように、電気陰性度の大きい不純物元素を含有する領域の活性層の実効バンドギャップ(曲がりバンドギャップ414)は、それ以外の活性層の実効バンドギャップ(傾斜バンドギャップ409)よりも大きくなるので、図1に示す半導体レーザ101の窓領域115は、CODを抑止するための端面窓構造として機能する。
【0052】
図4(b)に示したバンドの曲がりを実質的に生じさせるために必要な不純物元素の含有量については、以下の通り計算される。In0.08Ga0.92N井戸層とGaN障壁層の界面で分極によって生じるシート固定電荷量は、In0.08Ga0.92NとGaNの自発分極量の差−6.4×10-8C/cm2 と、格子定数、弾性定数、および圧電定数から計算されるIn0.08Ga0.92Nの圧電分極量8.67×10-7C/cm2 の和として求められ、8×10-7C/cm2 程度である。これを井戸層と障壁層の合計膜厚11nmに分布する不純物元素濃度に換算すると、(8×10-7C/cm2 )÷(1.6×10-19 C)÷(11×10-7cm)=4.5×1018cm-3となる。バンドの曲がりを実質的に生じさせるためには、これと同じオーダーの不純物元素を含有している必要があるので、本発明の作用・効果を生ぜしめるためには、不純物元素が1018cm-3以上含まれていることが望ましい。
【0053】
本実施の形態に係る製造方法について、図1および図5を参照して説明する。図1の構造を製造するためには、まず、有機金属気相成長法(metal-organic vapor-phase epitaxy:MOVPE)によって、GaN基板102上に第1クラッド層103、第1ガイド層104、活性層105、第2ガイド層106、オーバーフロー抑制層107、第2クラッド層108、およびコンタクト層109をエピタキシアル成長する。次に、塩素系ガスによる反応性イオンエッチング(reactive ion etching:RIE)を行い、コンタクト層109および第2クラッド層108の一部をストライプ状のリッジに加工する。その上にSiO2 よりなる絶縁膜110を形成し、エッチングによってリッジ上に開口部を形成する。この上に、PdおよびPtを電子ビーム蒸着し、p側電極111を形成する。また、GaN基板102の裏面には、Ti、Pt、およびAuを蒸着して、n側電極112とする。さらに、p側電極111およびn側電極112の上に、電界メッキによってAuパッドを形成する。
【0054】
以上の工程を経たウエハは、劈開によって共振器端面を露出したバー状態に加工され、図5に示すRIE装置501にセットされる。RIE装置501は、下部電極を兼ねるサセプタ502、上部電極503、真空排気ライン504、ガス導入ライン505を備えている。半導体レーザのバー506は、保持治具507によって共振器の片端面508が上を向くように固定され、サセプタ502上に載置される。RIE装置501のチャンバ509を一旦高真空に排気した後、ガス導入ライン505から原料ガスを導入し、真空排気ライン501からの排気量を調整してチャンバ509内を一定圧力に保つ。原料ガスは、窒素よりも電気陰性度の大きい不純物元素(例えばフッ素)を含むガスであり、例えばフッ化炭素(CF4 )ガスである。原料ガス導入後、サセプタ502と上部電極503の間に150〜200Wの高周波電力を印加し、CF4 プラズマ510を発生させる。これにより、共振器の片端面508がCF4 プラズマ510に晒されることになる。この状態を20分程度維持することで、共振器の片端面508からフッ素元素を導入する端面処理工程が完了する。この端面処理工程の後、通常の端面コート工程を行い、最後にバーを半導体レーザチップに分割する。
【0055】
上記端面処理工程は、半導体レーザの後端面のみに施してもよいし、2度繰返すことで両端面を処理してもよい。また、前端面の端面処理、端面コートを行った後、後端面の端面処理、端面コートを行うことで、バー506の保持治具507への取付け工数を減らすこともできる。これと別の方法として、保持治具506がバー506を水平に保持するようにして、共振器の両端面が同時にCF4 プラズマ510に晒されるようにすることも可能である。この場合は、1回の端面処理工程で両端面を同時に処理することができる。
さらに、端面処理工程によって導入されたフッ素元素の散逸を防ぐ保護膜を端面コートしてもよい。このような保護膜としては、例えばSiNあるいはAlNなどの窒化物絶縁体が好適である。端面処理工程を行ったプラズマ装置内で引き続き保護膜の堆積を行えば、その効果はより顕著になる。この場合は、RIE装置ではなくプラズマCVD装置を用いるとよい。プラズマCVD装置は、装置内壁に堆積する絶縁体をクリーニングするためのプラズマエッチング機能を有していることが多く、このような装置を用いれば、プラズマに晒す端面処理工程と、保護膜堆積工程を連続的に行うことは容易である。
【0056】
なお、端面処理工程でプラズマ発生に用いるガスは、CF4 以外にフッ素(F2 )、フッ化硫黄(SF6 、S2 2 )、フッ化窒素(NF3 )、あるいはフッ化シリコン(SiF4 )であってもよいし、窒素よりも電気陰性度の大きい他の不純物元素を含有するガスであってもよい。また、プラズマに晒すことによって共振器端面に多少の損傷を与える場合があるので、端面処理工程後に熱処理を行ってもよい。具体的には、例えばRTA(rapid thermal annealing)装置によって、400℃で5分間の加熱を行うことで、プラズマ損傷が回復する。
【0057】
(実施の形態2)
次に、図6を用いて本発明の実施の形態2について説明する。本実施の形態では、図1に示す半導体レーザ101の活性層105が多重量子井戸ではなく、不純物無添加のGaNバルク(厚さ100nm)となっている。また、第1ガイド層104、第2ガイド層106、およびオーバーフロー抑制層107が存在しないが、それ以外は実施の形態1と同様の構造を有しており、実施の形態1と同様の製造方法が適用される。
【0058】
本実施の形態においても、窒素よりも電気陰性度の大きい不純物元素を導入することで、CODを抑止する窓領域が形成されることを、図6を用いて説明する。図6は実施の形態1における図4に対応しており、第1クラッド層601、活性層602、および第2クラッド層603のエネルギーバンド図を示している。図6(a)は電気陰性度の大きい不純物元素が導入されていない領域、(b)は電気陰性度の大きい不純物元素が導入されている領域を示しているが、まず図6(a)を用いてAl0.05Ga0.95N第1クラッド層/GaN活性層/Al0.05Ga0.95N第2クラッド層の3層構造の分極特性に対する一般的知見を述べる。第2クラッド層603は、実際にはAl0.1 Ga0.9 N/GaN超格子であるが、実効的には両者の平均組成であるAl0.05Ga0.95Nのバルクであると考えて差支えない。
【0059】
c軸方向のGa面である(0001)面上にエピタキシアル成長すると、Al0.05Ga0.95Nクラッド層およびGaN活性層には、ともに表面から基板方向に向かう自発分極604を生じるが、その大きさはGaN活性層の方が小さい。この自発分極の大きさの差により、GaN活性層602には基板から表面方向に向かう分極を生じる。また、GaN基板を用いると、Al0.05Ga0.95Nクラッド層には引張り応力が働くため、表面から基板方向に向かう圧電分極605を生じる。この圧電分極605も、結果としてはGaN活性層602に基板から表面方向に向かう分極を生じることになる。これら両者の分極が足し合され、GaN活性層401の基板側端部(図では右側)には負のシート固定電荷606が発生し、表面側端部(図では左側)には正のシート固定電荷607が発生する。これらのシート固定電荷によって生じる内部電界により、活性層602の伝導帯608と価電子帯609が図示したように傾斜し、その時の傾斜バンドギャップ610は、本来の無電界バンドギャップ611に比べて小さくなる。また、活性層602の基板側端部に正孔612が局在し、表面側端部には電子613が局在することになる。
【0060】
次に、本発明に関わる新たな知見について、図6(b)を用いて説明する。例えばフッ素等の窒素よりも電気陰性度の大きい不純物元素を活性層602および第1、第2クラッド層601、603に導入すると、電子トラップとなる深い準位が形成される。この電子トラップは、活性層602にあった電子613を捕獲し、あるいは正孔612を新たに発生させて、負の分布固定電荷614となる。この負の分布固定電荷よって活性層602の伝導帯608と価電子帯609は上に凸の曲がりを生じ、結果的に図6(b)に示すバンド構造となる。この時の曲がりバンドギャップ615は、傾斜バンドギャップ610よりも大きくなり、無電界バンドギャップ611に近づく。
【0061】
図6(b)に示したバンドの曲がりを実質的に生じさせるために必要な不純物元素の含有量については、以下の通り計算される。GaN活性層とAl0.05Ga0.95Nクラッド層の界面で分極によって生じるシート固定電荷量は、GaNとAl0.05Ga0.95Nの自発分極量の差2.8×10-7C/cm2 と、格子定数、弾性定数、および圧電定数から計算されるAl0.05Ga0.95Nの圧電分極量1.23×10-7C/cm2 の和として求められ、4×10-7C/cm2 程度である。これを活性層の膜厚100nmに分布する不純物元素濃度に換算すると、(4×10-7C/cm2 )÷(1.6×10-19C)÷(100×10-7cm)=2.5×1017cm-3となる。バンドの曲がりを実質的に生じさせるためには、これと同じオーダーの不純物元素を含有している必要があるが、バルク活性層の場合は不純物元素が1017cm-3以上含まれていれば、本発明の作用・効果を生ぜしめることができる。
【0062】
(実施の形態3)
図7を用いて本発明の実施の形態3について説明する。本実施の形態は製造方法に係るものであり、窒素よりも電気陰性度の大きい不純物元素を含むプラズマに端面を晒すプラズマ処理以外の方法で端面処理を行う例である。端面処理工程以外の工程は実施の形態1と同様であり、劈開によって共振器端面を露出したバー状態の半導体レーザに対し、窒素よりも電気陰性度の大きい不純物元素、例えばフッ素を共振器端面からイオン注入する。図7は実施の形態1における図2に対応しており、イオン注入されたフッ素の深さ方向のプロファイルを示している。本例では、ピーク注入量は6×1018cm-3、注入深さは170nmであるが、イオン注入における注入量および注入深さは任意に制御可能である。
【0063】
イオン注入工程は、プラズマ処理工程と比較すると、工程コストが高いというデメリットがあるが、より多量の不純物元素をより深くまで導入できるという利点がある。また、イオン注入によって共振器端面に新たな欠陥が導入される可能性があるので、注入後に熱処理を施すことが望ましい。例えばRTA装置によって、500℃で10分間の加熱を行うことで、イオン注入によって生じた欠陥がアニールされる。
【0064】
(実施の形態4)
図8を用いて本発明の実施の形態4について説明する。本実施の形態も製造方法に係るものであり、プラズマ処理あるいはイオン注入以外の方法で端面処理を行う例である。端面処理工程以外の工程は実施の形態1と同様であり、劈開によって共振器端面を露出したバー状態の半導体レーザは、図8に示す紫外線装置801にセットされる。紫外線装置801は、サセプタ802、紫外線ランプ803、真空排気ライン804、ガス導入ライン805を備えている。半導体レーザのバー806は、保持治具807によって共振器の片端面808が上を向くように固定され、サセプタ802上に載置される。紫外線装置801のチャンバ809を一旦高真空に排気した後、ガス導入ライン805から原料ガスを導入し、真空排気ライン801からの排気量を調整してチャンバ809内を一定圧力に保つ。原料ガスは、窒素よりも電気陰性度の大きい不純物元素(例えばフッ素)を含むガスであり、例えばフッ化炭素(CF4 )ガスである。原料ガス導入後、紫外線ランプ803を点灯し、紫外線810を照射する。これにより、共振器の片端面808近傍のCF4 が紫外線によって分解され、遊離したフッ素元素が共振器の片端面808に導入される。
本実施の形態では、共振器端面には紫外線が照射されるだけであり、プラズマ処理あるいはイオン注入と比較して端面が損傷を受けにくいという利点がある。
【0065】
(実施の形態5)
図8を再度用いて本発明の実施の形態5について説明する。本実施の形態も製造方法に係るものであり、実施の形態4と同様の端面処理工程において、共振器端面に紫外線を照射するのではなく、共振器端面を加熱するというものである。すなわち、図8に示す紫外線装置801の紫外線ランプ803を赤外線ランプに置換え、原料ガス導入後に赤外線ランプを点灯することで共振器端面を加熱する。これにより、共振器の片端面808近傍の原料ガスが熱分解され、遊離した不純物元素が共振器の片端面808に導入される。赤外線ランプの代わりに、サセプタ802に埋設した電熱ヒーターを用いて、保持治具807ごとバー806を加熱することも可能である。
【0066】
なお、本実施の形態に用いる原料ガスは、熱分解しやすいものを用いることが望ましく、不純物元素がフッ素の場合には、フッ化キセノン(XeF2 )あるいは塩化フッ素(FCl3 )が好適である。
【0067】
(実施の形態6)
次に、図9を用いて本発明の実施の形態6について説明する。本実施の形態も製造方法に係るものであり、ウェット処理工程で端面処理を行う例である。端面処理工程以外の工程は実施の形態1と同様である。窒素よりも電気陰性度の大きい不純物元素をイオンとして含む溶液、例えばフッ化アンモニウム(NH4 F)水溶液901に、劈開によって共振器端面902を露出したバー903を浸す。これだけでも、フッ素イオン(F- )が共振器端面902から取込まれ、端面処理工程として機能するが、電界を印加するとさらに効果が高まる。すなわち、バー903を保持する保持治具904を導電性材料で構成して陽極とし、これと別にNH4 F水溶液901に挿入した陰極905との間に電界を印加すると、溶液中のフッ素イオンがバー903近傍に集中し、より多くのフッ素イオンが共振器端面902から取込まれることになる。
【0068】
このウェット処理による端面処理は、真空装置を必要としないので工程コストが安く、またプラズマ処理やイオン注入のように共振器端面にダメージを与えることもない。ただし、バー状態の半導体レーザをウェット処理するので、ハンドリングには注意を要する。すなわち、プラズマ処理、イオン注入、紫外線照射、加熱処理、ウェット処理について、一概にどの方法が最適であるとは言えないが、何れの方法によっても共振器端面近傍に窒素よりも電気陰性度の大きい不純物元素を導入することは可能であり、本発明の製造方法における端面処理工程として有効である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明に係る窒化物半導体レーザは、歩留の低下あるいは製造コストの上昇を招かず、また他の電気的・光学的特性に影響を及ぼすことなくCODが抑止される。また、その製造方法においては、共振器端面を露出した後にプラズマ処理、イオン注入、あるいはウェット処理等の一般的な半導体プロセスで用いられる工程を行うだけである。CODが抑止された窒化物半導体レーザは、高い光出力と高信頼性を兼備え、産業上有用である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1に係る半導体レーザの斜視図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態1に係る半導体レーザの窓領域に含有されるフッ素の深さ方向分布図である。
【図3】図3(a)〜(b)は、本発明の実施の形態1に係る半導体レーザのエージング特性図である。
【図4】図4(a)〜(b)は、本発明の実施の形態1に係る半導体レーザのエネルギーバンド図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態1に係る半導体レーザの製造方法における端面処理工程の概念図である。
【図6】図6は(a)〜(b)は、本発明の実施の形態2に係る半導体レーザのエネルギーバンド図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態3に係る半導体レーザの窓領域に含有されるフッ素の深さ方向分布図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態4に係る半導体レーザの製造方法における端面処理工程の概念図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態6に係る半導体レーザの製造方法における端面処理工程の概念図である。
【図10】図10は、従来の半導体レーザの斜視図である。
【符号の説明】
【0071】
101 半導体レーザ
102 GaN基板
103 第1クラッド層
105 活性層
108 第2クラッド層
115 窓領域
501 RIE装置
502 サセプタ
506 バー
508 共振器の片端面
510 CF4 プラズマ
801 紫外線装置
802 サセプタ
806 バー
808 共振器の片端面
810 紫外線
901 フッ化アンモニウム水溶液
902 共振器端面
903 バー
904 保持治具
905 陰極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された、第1導電型の窒化物半導体よりなる第1クラッド層と、
前記第1クラッド層上に形成された、単層もしくは多層の窒化物半導体よりなる活性層と、
前記活性層上に形成された、第2導電型の窒化物半導体よりなる第2クラッド層とを備え、
共振器方向における少なくとも一方の端面近傍の前記活性層を含む領域に、窒素よりも電気陰性度の大きい不純物元素を含有する
ことを特徴とする半導体レーザ。
【請求項2】
前記活性層は多重量子井戸構造を有することを特徴とする請求項1記載の半導体レーザ。
【請求項3】
前記不純物元素はフッ素であることを特徴とする請求項1記載の半導体レーザ。
【請求項4】
前記フッ素の含有量は、前記端面において、1018cm-3以上であることを特徴とする請求項3記載の半導体レーザ。
【請求項5】
前記端面上に形成された、窒化物絶縁体よりなる保護膜を有することを特徴とする請求項1記載の半導体レーザ。
【請求項6】
基板上に、第1導電型の窒化物半導体よりなる第1クラッド層を形成する工程と、
前記第1クラッド層上に、単層もしくは多層の窒化物半導体よりなる活性層を形成する工程と、
前記活性層上に、第2導電型の窒化物半導体よりなる第2クラッド層を形成する工程と、
前記基板を分割して、共振器方向における両端面を露出させる工程と、
前記両端面の少なくとも一方の片端面から、窒素よりも電気陰性度の大きい不純物元素を導入する端面処理工程とを備える
ことを特徴とする半導体レーザの製造方法。
【請求項7】
前記不純物元素はフッ素であることを特徴とする請求項6記載の半導体レーザの製造方法。
【請求項8】
前記端面処理工程は、前記不純物元素を含む原料ガスを用いて発生させたプラズマに、前記両端面もしくは前記片端面を晒す工程であることを特徴とする請求項6記載の半導体レーザの製造方法。
【請求項9】
前記原料ガスは、フッ素、フッ化炭素、フッ化硫黄、フッ化窒素、およびフッ化シリコンからなるグループより選択される1つのガスを主要成分とすることを特徴とする請求項8記載の半導体レーザの製造方法。
【請求項10】
前記端面処理工程に用いる真空装置内において、前記端面処理工程に引き続き行われる保護膜堆積工程を更に備える
ことを特徴とする請求項8記載の半導体レーザの製造方法。
【請求項11】
前記端面処理工程は、前記不純物元素を前記両端面もしくは前記片端面からイオン注入する工程であることを特徴とする請求項6記載の半導体レーザの製造方法。
【請求項12】
前記端面処理工程は、前記不純物元素を含む原料ガスに前記両端面もしくは前記片端面を晒し、前記原料ガスに紫外線を照射する工程であることを特徴とする請求項6記載の半導体レーザの製造方法。
【請求項13】
前記端面処理工程は、前記不純物元素を含む原料ガスに前記両端面もしくは前記片端面を晒し、前記原料ガスを加熱する工程であることを特徴とする請求項6記載の半導体レーザの製造方法。
【請求項14】
前記原料ガスは、フッ化キセノンあるいは塩化フッ素を主要成分とすることを特徴とする請求項13記載の半導体レーザの製造方法。
【請求項15】
前記端面処理工程は、前記不純物元素をイオンとして含む溶液に、前記両端面もしくは前記片端面を浸す工程であることを特徴とする請求項6記載の半導体レーザの製造方法。
【請求項16】
前記端面処理工程において、前記両端面もしくは前記片端面を陽極として前記溶液に電界を印加することを特徴とする請求項15記載の半導体レーザの製造方法。
【請求項17】
前記溶液は、フッ化アンモニウム水溶液であることを特徴とする請求項15記載の半導体レーザの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−34749(P2008−34749A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−208938(P2006−208938)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】