説明

半導体レーザ励起固体レーザ装置、光走査装置、画像形成装置及び表示装置

【課題】大型化を招くことなく、良好なビーム品質のレーザ光を出射する。
【解決手段】励起用の半導体レーザからの励起用レーザ光によって励起されるNdが添加され、レーザ発振方向(Z軸方向)に垂直な方向に関するNdの濃度プロファイルにおける濃度0近傍からの立ち上がり形状がゆるやかに増加するスロープ状であるガドリニウムバナデイト(GdVO)の一軸性単結晶を含む固体レーザ結晶10を備える。これにより、固体レーザ結晶10では中央にピークを持つ所望の吸収量分布を容易に得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザ励起固体レーザ装置、光走査装置、画像形成装置及び表示装置に係り、さらに詳しくは、半導体レーザによって励起される固体レーザ結晶を有する半導体レーザ励起固体レーザ装置、該半導体レーザ励起固体レーザ装置を備える光走査装置、画像形成装置及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザ光を利用した装置として、レーザプリンタやレーザ計測器などが実用化されている。また、将来の実用化を目指し、レーザディスプレイ等も開発、検討が進められている。これらのレーザ光を利用した装置では、レーザ光源の小型化や、レーザ光の高品質化に対する要求が高まっている。
【0003】
ところで、いわゆる固体レーザに関係する種々の考案がなされている(例えば、特許文献1〜特許文献11参照)。
【0004】
特許文献1にはドープ部と非ドープ部とを備えるレーザ媒質を用いた固体レーザ発振装置が開示されている。また、特許文献2には利得媒質と励起光導波素子とを有するレーザ装置が、特許文献3にはレーザ媒質と導波光学系とを有するレーザ装置がそれぞれ開示されている。
【0005】
特許文献4にはコア部とクラッド部とを備えている酸化物単結晶体を製造する方法が開示され、特許文献5には酸化物光学単結晶からなるファイバーとこのファイバーの外表面を覆う酸化物光学単結晶の液相エピタキシャル層とを備えているファイバー状酸化物光学単結晶が開示されている。特許文献6には励起面となる端面から冷却面となる端面に向かってレーザ活性イオンのドープ濃度分布が連続的又は段階的に増加している固体レーザ結晶が開示されている。
【0006】
特許文献7にはレーザ発振可能な領域を含む透明性結晶体と、該透明性結晶体に接合されている第二結晶体を有し、前記透明性結晶体及び第二結晶体の少なくとも一方が多結晶である複合レーザ素子が開示されている。また、特許文献8には活性元素を含まない多結晶質透明セラミックと、活性元素をドープした多結晶質透明セラミックとを結合した多結晶質セラミック複合レーザ媒質を有する固体レーザ発振器が開示されている。
【0007】
特許文献9〜特許文献11及び非特許文献1には、いわゆる二重ダイEFG(Edge-defined Film-fed Growth)法で作製された組成又は成分の異なる部分を単一の結晶内に持つ複合単結晶が開示されている。
【0008】
【特許文献1】特許第3503588号公報
【特許文献2】特開2004−356479号公報
【特許文献3】特開2004−152817号公報
【特許文献4】特許第3759807号公報
【特許文献5】特開平8−278419号公報
【特許文献6】特許第3266071号公報
【特許文献7】特開2005−327997号公報
【特許文献8】特開2002−57388号公報
【特許文献9】特開平6−128089号公報
【特許文献10】特開平6−128076号公報
【特許文献11】特開平6−128078号公報
【非特許文献1】P.Rudolph、K.Shimamura and T.Fukuda、「The Radial Selectivity of In−situ Core−doped Crystal Rods Grown by the Double Die EFG Method」、Cryst.Res.Technol.Vol.29、1994、No.6、p801〜p807
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来のレーザ光源では、大型化を招くことなく、良好なビーム品質のレーザ光を得るのは困難であった。
【0010】
本発明はかかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、大型化を招くことなく、良好なビーム品質のレーザ光を出力することができる半導体レーザ励起固体レーザ装置を提供することにある。
【0011】
また、本発明の第2の目的は、被走査面上を精度良く走査することができる光走査装置を提供することにある。
【0012】
また、本発明の第3の目的は、高品質な画像を形成することができる画像形成装置を提供することにある。
【0013】
また、本発明の第4の目的は、表示品質に優れた情報の表示ができる表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、第1の観点からすると、少なくとも1つの励起用の半導体レーザと;前記少なくとも1つの励起用の半導体レーザからの励起用のレーザ光によって励起される添加物(発光中心:希土類や遷移金属イオンなど)が添加され、レーザ発振方向に垂直な方向に関する前記添加物の濃度プロファイルにおける濃度0近傍からの立ち上がり形状がゆるやかに増加するスロープ状である単結晶の固体レーザ結晶を含む少なくとも1つのレーザ光発生装置と;を備える半導体レーザ励起固体レーザ装置である。
【0015】
これによれば、少なくとも1つのレーザ光発生装置は、少なくとも1つの励起用の半導体レーザからの励起用のレーザ光によって励起される添加物(発光中心:希土類や遷移金属イオンなど)が添加され、レーザ発振方向に垂直な方向に関する添加物の濃度プロファイルにおける濃度0近傍からの立ち上がり形状がゆるやかに増加するスロープ状である単結晶の固体レーザ結晶を含んでいるため、固体レーザ結晶では所望の吸収量分布を容易に得ることができる。そして、励起用のレーザ光を整形する必要もない。従って、大型化を招くことなく、良好なビーム品質のレーザ光を出力することが可能となる。
【0016】
本発明は、第2の観点からすると、光ビームによって被走査面上を走査する光走査装置において、前記光ビームを出力する少なくとも1つの本発明の半導体レーザ励起固体レーザ装置を備えることを特徴とする光走査装置である。
【0017】
これによれば、少なくとも1つの本発明の半導体レーザ励起固体レーザ装置を備えているため、結果として、被走査面上を精度良く走査することが可能となる。
【0018】
本発明は、第3の観点からすると、レーザ光を用いて物体上に画像を形成する画像形成装置において、前記レーザ光を出力する少なくとも1つの本発明の半導体レーザ励起固体レーザ装置を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【0019】
これによれば、少なくとも1つの本発明の半導体レーザ励起固体レーザ装置を備えているため、結果として、高品質な画像を形成することが可能となる。
【0020】
本発明は、第4の観点からすると、レーザ光を用いて情報を表示する表示装置において、前記レーザ光を出力する少なくとも1つの本発明の半導体レーザ励起固体レーザ装置を備えることを特徴とする表示装置である。
【0021】
これによれば、少なくとも1つの本発明の半導体レーザ励起固体レーザ装置を備えているため、結果として、表示品質に優れた情報の表示が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
《半導体レーザ励起固体レーザ装置》
『第1の実施形態』
以下、本発明の半導体レーザ励起固体レーザ装置の第1の実施形態を図1(A)〜図7に基づいて説明する。図1(A)及び図1(B)には、本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置100の概略構成が示されている。本明細書では、レーザ発振方向をZ軸方向とし、Z軸方向に垂直な面内における互いに直交する2つの方向をX軸方向及びY軸方向として説明する。
【0023】
この半導体レーザ励起固体レーザ装置100は、いわゆる側面励起型の半導体レーザ励起固体レーザ装置であり、2つの励起用の半導体レーザアレイ素子(LDa、LDb)と、2つの光学系(20a、20b)と、固体レーザ結晶10と、出力ミラー40と、ヒートシンク30とを備えている。
【0024】
2つの励起用の半導体レーザアレイ素子(LDa、LDb)は、いずれもヒートシンク30の+Z側の面上で、互いにY軸方向に対向して配置され、いずれも出力40Wで波長808nmの励起用レーザ光を発光する。ここでは、半導体レーザアレイ素子LDaは+Y方向に励起用レーザ光を発光し、半導体レーザアレイ素子LDbは−Y方向に励起用レーザ光を発光するものとする。
【0025】
2つの光学系(20a、20b)は、いずれも複数のレンズ素子の組合せで構成されており、それぞれヒートシンク30の+Z側の面上に配置され、固体レーザ結晶10の入射面で100μm(固体レーザ結晶10の厚み方向:Z軸方向)×1000μm(X軸方向)の大きさの光スポットを形成することができる。ここでは、光学系20aは、半導体レーザアレイ素子LDaの+Y側に配置され、半導体レーザアレイ素子LDaからの励起用レーザ光を集光する。また、光学系20bは、半導体レーザアレイ素子LDbの−Y側に配置され、半導体レーザアレイ素子LDbからの励起用レーザ光を集光する。
【0026】
固体レーザ結晶10は、ヒートシンク30の+Z側の面上であって、光学系20aの+Y側であり、かつ光学系20bの−Y側に配置されている。
【0027】
固体レーザ結晶10は、一例として図2(A)及び図2(B)に示されるように、ディスク状(もしくはチップ状)のガドリニウムバナデイト(GdVO)の一軸性単結晶であり、各半導体レーザアレイ素子からの励起用レーザ光によって励起される添加物(発光中心)としてネオジウム(Nd)が添加されている。
【0028】
Ndの濃度プロファイルは、一例として図2(A)に示されるように、レーザ発振方向(ここでは、Z軸方向)に垂直な方向に関して、濃度0近傍からの立ち上がり形状がゆるやかに増加するスロープ状となっている。そして、以下では、レーザ発振に寄与する部分を「コア部10a」といい、レーザ発振にほとんど寄与しない部分を「クラッド部10b」ということとする。すなわち、固体レーザ結晶10は、一体で形成されているコア部10aとクラッド部10bとから構成されている。
【0029】
ここでは、一例として、コア部10aは固体レーザ結晶10の中央に位置する直径Daの円形状の部分であり、クラッド部10bはコア部10aを取り囲むドーナツ状の部分である。
【0030】
コア部10aにおけるNdの濃度は、一例として図2(A)に示されるように、コア部10aの中心近傍で最も高く、クラッド部10bに向かって徐々に低下している。一例として、コア部10aの中心近傍におけるNdの濃度は約0.5at.%である。そして、Ndの濃度プロファイルは、ガウス分布形状に類似した形状となっている。
【0031】
ここでは一例として、固体レーザ結晶10は、前記二重ダイEFG法やμPD法などで作製されたロッド状の単結晶(柱状結晶)をスライスしたものであり、厚さtが0.5mm、直径Dbが5mm、前記直径Daが1mmである。そして、固体レーザ結晶10は、励起されると、直線偏波のレーザ光を発光するように設定されている結晶である。
【0032】
また、図3に示されるように、固体レーザ結晶10におけるヒートシンク30側の面(ここでは−Z側の面、以下、便宜上「A面」という)には、波長1063nmの光に対する反射率が99.9%となるように、コーティングが施されている。また、図3に示されるように、固体レーザ結晶10における前記A面に対向する面(ここでは+Z側の面、以下、便宜上「B面」という)には、波長1063nmの光に対する透過率が99.9%となるように、コーティングが施されている。
【0033】
なお、A面のコーティング表面には、更に金属(Cr/Ni/Au)層が形成されており、ヒートシンク30上に形成されたAuSn合金層と接合されている。
【0034】
出力ミラー40は、固体レーザ結晶10の+Z側に配置されている。この出力ミラー40は、−Z側の面の曲率半径が5000mmであり、波長1063nmの光に対する透過率は5%である。
【0035】
すなわち、固体レーザ結晶10のA面と出力ミラー40とによって共振器(図3参照)が形成されている。
【0036】
ここでは、固体レーザ結晶10のA面と出力ミラー40の−Z側の面との距離は100mmとしている。また、固体レーザ結晶10内でのレーザ光のビーム径は半径0.5mmである。
【0037】
なお、出力ミラー40は、固体レーザ結晶10と一体化された、いわゆるマイクロチップ構成であっても良い。
【0038】
次に、上記のように構成される半導体レーザ励起固体レーザ装置100の動作について簡単に説明する。
【0039】
半導体レーザアレイ素子LDaから出射された波長808nmの励起用レーザ光は、光学系20aを通過後、固体レーザ結晶10に側面より入射する。また、半導体レーザアレイ素子LDbから出射された波長808nmの励起用レーザ光は、光学系20bを通過後、固体レーザ結晶10に側面より入射する。
【0040】
固体レーザ結晶10中のNdは、各励起用レーザ光により励起され、固体レーザ結晶10のA面と出力ミラー40とによって形成される共振器(図3参照)により、波長1063nmのレーザ発振に至る。そして、出力ミラー40を透過した波長1063nmのレーザ光が出力される。
【0041】
以上説明したように、本第1の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置100によると、2つの励起用の半導体レーザアレイ素子(LDa、LDb)からの各励起用レーザ光によって励起されるNdが添加され、レーザ発振方向(ここでは、Z軸方向)に垂直な方向に関するNdの濃度プロファイルにおける濃度0近傍からの立ち上がり形状がゆるやかに増加するスロープ状であるガドリニウムバナデイト(GdVO)の一軸性単結晶を含む固体レーザ結晶10を備えているため、一例として図4及び図5に示されるように、固体レーザ結晶10では中央にピークを持つ所望の吸収量分布を容易に得ることができる。これにより、出力されるレーザ光(以下、便宜上「出力レーザ光」と略述する)では、良好なガウシアン分布を持つ横モードが実現できる。
【0042】
ところで、側面励起型の半導体レーザ励起固体レーザ装置において、コア部におけるNdの濃度が均一な固体レーザ結晶、すなわち、Ndの濃度プロファイルにおける濃度0近傍からの立ち上がり形状が急激に増加する形状である固体レーザ結晶を使用した場合には、一例として図6及び図7に示されるように、側面から入射された励起用レーザ光が、コア部とクラッド部との境界近傍で強く(急激に)吸収され、良好なビーム品質の出力レーザ光を得るのは困難である。そこで、この場合には、ビーム品質を補正するための補正機構を備えることが考えられるが、補正機構を備えると、大型化及び高コスト化を招くこととなる。さらに、補正機構の調整も必要になる。
【0043】
また、本第1の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置100によると、固体レーザ結晶10で発生する熱(励起用レーザ光と出力レーザ光のエネルギー差に起因する熱)は、A面を介して直接放熱されるため、固体レーザ結晶10の温度上昇を抑制することができる。そして、その結果として高出力化が可能となる。
【0044】
ところで、仮にコア部におけるNdの濃度が均一な場合には、固体レーザ結晶内における熱分布は、吸収量分布と同様な分布形状となり、これに起因して屈折率変化(熱レンズ効果)を生じるため、ビーム品質がさらに悪くなる。
【0045】
しかしながら、本第1の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置100では、固体レーザ結晶10におけるNdの濃度プロファイルを調整することにより、熱分布形状を最適化することが可能である。従って、本第1の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置100では、屈折率変化(熱レンズ効果)に対する補正機構を設けなくても、良好なビーム品質の出力レーザ光を得ることが可能となる。
【0046】
従って、本第1の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置100によると、大型化を招くことなく、良好なビーム品質のレーザ光(波長1063nm)を高出力で出力することが可能となる。
【0047】
なお、上記第1の実施形態では、出力レーザ光の波長が1063nmの場合について説明したが、これに限定されるものではない。前記固体レーザ結晶10におけるコーティング仕様及び前記出力ミラー40の光学的特性を選択することにより、例えば、波長が912nmの出力レーザ光及び波長が1340nmの出力レーザ光を得ることも可能である。
【0048】
『第2の実施形態』
以下、本発明の半導体レーザ励起固体レーザ装置の第2の実施形態を図8(A)及び図8(B)に基づいて説明する。図8(A)には、本発明の第2の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置200の概略構成が示されている。この半導体レーザ励起固体レーザ装置200は、上記第1の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置100に対して、前記固体レーザ結晶10と前記出力ミラー40との間のレーザ光の光路上に非線形光学結晶50を配置した点、前記出力ミラー40の光学的特性が異なる点及び前記固体レーザ結晶10におけるコーティング仕様が異なる点に特徴を有する。そして、その他の構成については、上記第1の実施形態と同じである。そこで、以下においては、第1の実施形態との相違点を中心に説明するとともに、第1の実施形態と同一若しくは同等の構成部分については同一の符号を用い、その説明を簡略化し若しくは省略するものとする。
【0049】
非線形光学結晶50は、基本波である波長1063nmのレーザ光を、第二高調波である波長531.5nmのレーザ光に変換する。この非線形光学結晶50には、一例としてPPMgLN素子(周期分極反転構造を有し、MgOがドープされたLiNbOからなる素子)を用いている。この非線形光学結晶50は、長さ(X軸方向及びY軸方向の長さ)が5mm、厚さ(Z軸方向の長さ)が2mmである。そして、共振器内部のレーザ光の偏光方向と擬似位相整合条件が合う方向に非線形光学結晶50の結晶軸が配置されている。非線形光学結晶50の両端面には、図8(B)に示されるように、基本波である波長1063nmの光及び第二高調波である波長531.5nmの光に対する透過率がいずれも99.5%以上となるようにコーティングが施されている。なお、以下では、便宜上、非線形光学結晶50の−Z側の面をC面、+Z側の面をD面ともいう。
【0050】
固体レーザ結晶10におけるヒートシンク30と接合した面(A面)には、図8(B)に示されるように、波長1063nmの光に対する反射率が99.9%となるように、コーティングが施されている。また、図8(B)に示されるように、固体レーザ結晶10における前記A面に対向する面(B面)には、波長1063nmの光に対する透過率が99.9%、波長531.5nmの光に対する反射率が99%となるように、コーティングが施されている。これにより、共振器内部で発生した第二高調波が固体レーザ結晶10内に入射するのを抑制することができる。
【0051】
出力ミラー40は、−Z側の面の曲率半径が5000mmであり、波長1063nmの光に対する反射率が99.9%、波長531.5nmの光に対する透過率が99%である。
【0052】
すなわち、固体レーザ結晶10のA面と出力ミラー40とによって共振器(図8(B)参照)が形成されている。
【0053】
次に、半導体レーザ励起固体レーザ装置200の動作について簡単に説明する。
【0054】
半導体レーザアレイ素子LDaから出射された波長808nmの励起用レーザ光は、光学系20aを通過後、固体レーザ結晶10に側面より入射する。また、半導体レーザアレイ素子LDbから出射された波長808nmの励起用レーザ光は、光学系20bを通過後、固体レーザ結晶10に側面より入射する。
【0055】
固体レーザ結晶10中のNdは、各励起用レーザ光により励起され、固体レーザ結晶10のA面と出力ミラー40とによって形成される共振器(図8(B)参照)により、波長1063nmのレーザ発振に至る。そして、基本波である波長1063nmのレーザ光は、共振器内部に閉じこもることになる。ここでは、共振器内部に非線形光学素子50が配置されているため、閉じ込められた基本波が波長変換を受け、第二高調波が発生し、第二高調波である波長531.5nmのレーザ光が取り出され、出力ミラー40を透過して出力される。
【0056】
以上説明したように、本第2の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置200によると、2つの励起用の半導体レーザアレイ素子(LDa、LDb)からの各励起用レーザ光によって励起されるNdが添加され、レーザ発振方向(ここでは、Z軸方向)に垂直な方向に関するNdの濃度プロファイルにおける濃度0近傍からの立ち上がり形状がゆるやかに増加するスロープ状であるガドリニウムバナデイト(GdVO)の一軸性単結晶を含む固体レーザ結晶10を備えているため、固体レーザ結晶10では中央にピークを持つ所望の吸収量分布を容易に得ることができる。これにより、固体レーザ結晶10からのレーザ光では、良好なガウシアン分布を持つ横モードが実現できる。すなわち、高出力でビーム品質の良好な波長1063nmのレーザ光が非線形光学素子50に入射する。
【0057】
ところで、非線形光学素子における第二高調波の出力は入射光の光強度(パワー)の二乗に比例することが知られている。すなわち、ビーム品質に比例して出力が増加する。
【0058】
本第2の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置200によると、良好なビーム品質で、高出力のレーザ光を非線形光学素子50に入射させることができるため、非線形光学素子50での変換効率が向上する。
【0059】
従って、本第2の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置200によると、大型化を招くことなく、良好なビーム品質のレーザ光(波長531.5nm)を高出力で出力することが可能となる。
【0060】
なお、上記第2の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置200では、非線形光学素子50の長さが5mm、厚さが2mmの場合について説明したが、これに限定されるものではない。要するに、基本波である波長1063nmのレーザ光が第二高調波である波長531.5nmのレーザ光に所望の変換効率で変換されれば良い。
【0061】
『第3の実施形態』
以下、本発明の半導体レーザ励起固体レーザ装置の第3の実施形態を図9(A)及び図9(B)に基づいて説明する。図9(A)には、本発明の第3の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置300の概略構成が示されている。この半導体レーザ励起固体レーザ装置300は、上記第2の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置200に対して、前記非線形光学結晶50を前記出力ミラー40の+Z側に配置した点に特徴を有する。そして、その他の構成については、上記第2の実施形態と同じである。そこで、以下においては、第2の実施形態との相違点を中心に説明するとともに、第2の実施形態と同一若しくは同等の構成部分については同一の符号を用い、その説明を簡略化し若しくは省略するものとする。
【0062】
非線形光学結晶50は、出力ミラー40を透過したレーザ光の光路上に配置されている。この非線形光学結晶50の厚さ(Z軸方向の長さ)は一例として10mmである。上記第2の実施形態のように非線形光学結晶50が共振器内に配置されているときには、光強度が高いので、厚さが短くても良いが、本第3の実施形態のように非線形光学結晶50が共振器外に配置されているときには、レーザ光が非線形光学結晶50中を一回伝播するだけで波長変換を行うため、第2の実施形態と同等の変換効率とするには厚さを厚くする必要がある。
【0063】
本第3の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置300によると、高出力でビーム品質の良好な波長1063nmのレーザ光が非線形光学素子50に入射するため、上記第2の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置200と同様に、大型化を招くことなく、良好なビーム品質のレーザ光(波長531.5nm)を高出力で出力することが可能となる。
【0064】
なお、上記第3の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置300では、非線形光学素子50の長さが5mm、厚さが10mmの場合について説明したが、これに限定されるものではない。要するに、基本波である波長1063nmのレーザ光が第二高調波である波長531.5nmのレーザ光に所望の変換効率で変換されれば良い。
【0065】
また、上記第3の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置300において、前記出力ミラー40と前記非線形光学結晶50との間に、さらにレンズを配置しても良い。これにより、非線形光学結晶50に入射する基本波を絞り込むことができ、基本波のビーム強度がさらに向上し、その結果、非線形光学結晶50での変換効率をさらに向上させることが可能となる。
【0066】
『第4の実施形態』
以下、本発明の半導体レーザ励起固体レーザ装置の第4の実施形態を図10(A)及び図10(B)に基づいて説明する。図10(A)には、本発明の第4の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置400の概略構成が示されている。この半導体レーザ励起固体レーザ装置400は、上記第2の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置200に対して、前記非線形光学結晶50のD面におけるコーティング仕様を変更し、前記出力ミラー40を不要とした点に特徴を有する。そして、その他の構成については、上記第2の実施形態と同じである。そこで、以下においては、第2の実施形態との相違点を中心に説明するとともに、第2の実施形態と同一若しくは同等の構成部分については同一の符号を用い、その説明を簡略化し若しくは省略するものとする。
【0067】
非線形光学結晶50のD面には、図10(B)に示されるように、基本波である波長1063nmの光に対する反射率が99.9%、第二高調波である531.5nmの光に対する透過率が99.5%となるように、コーティングが施されている。また、非線形光学結晶50のC面には、図10(B)に示されるように、基本波である波長1063nmの光及び第二高調波である波長531.5nmの光に対する透過率がいずれも99.5%以上となるようにコーティングが施されている。
【0068】
すなわち、固体レーザ結晶10のA面と前記非線形光学結晶50のD面とによって共振器(図10(B)参照)が形成されている。
【0069】
固体レーザ結晶10と非線形光学結晶50とのコンタクトは、接触のみか、光耐性の強い接着剤を用いて固定されている。なお、固体レーザ結晶10と非線形光学結晶50とのコンタクトが、コーティングをしないオプティカルコンタクトであっても良い。
【0070】
以上説明したように、本第4の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置400によると、高出力でビーム品質の良好な波長1063nmのレーザ光が非線形光学素子50に入射するため、上記第2の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置200と同様に、大型化を招くことなく、良好なビーム品質のレーザ光(波長531.5nm)を高出力で出力することが可能となる。
【0071】
また、本第4の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置400によると、前記半導体レーザ励起固体レーザ装置200における前記出力ミラー40が不要なため、小型化をさらに促進することができる。
【0072】
『第5の実施形態』
以下、本発明の半導体レーザ励起固体レーザ装置の第5の実施形態を図11(A)及び図11(B)に基づいて説明する。図11(A)には、本発明の第5の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置500の概略構成が示されている。この半導体レーザ励起固体レーザ装置500は、上記第3の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置300に対して、前記固体レーザ結晶10及び前記非線形光学結晶50におけるコーティング仕様を変更し、前記出力ミラー40を不要とした点に特徴を有する。そして、その他の構成については、上記第3の実施形態と同じである。そこで、以下においては、第3の実施形態との相違点を中心に説明するとともに、第3の実施形態と同一若しくは同等の構成部分については同一の符号を用い、その説明を簡略化し若しくは省略するものとする。
【0073】
固体レーザ結晶10のA面には、図11(B)に示されるように、波長1063nmの光に対する反射率が99.9%となるように、コーティングが施されている。また、図11(B)に示されるように、固体レーザ結晶10のB面には、波長1063nmの光に対する透過率が5%となるように、コーティングが施されている。
【0074】
すなわち、固体レーザ結晶10のA面とB面とによって共振器(図11(B)参照)が形成されている。
【0075】
非線形光学結晶50の両端面には、第二高調波である波長531.5nmの光に対する透過率が99.5%以上となるようにコーティングが施されている。
【0076】
固体レーザ結晶10と非線形光学結晶50とのコンタクトは、接触のみか、光耐性の強い接着剤を用いて固定されている。なお、固体レーザ結晶10と非線形光学結晶50とのコンタクトが、コーティングをしないオプティカルコンタクトであっても良い。
【0077】
以上説明したように、本第5の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置500によると、高出力でビーム品質の良好な波長1063nmのレーザ光が非線形光学素子50に入射するため、上記第3の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置300と同様に、大型化を招くことなく、良好なビーム品質のレーザ光(波長531.5nm)を高出力で出力することが可能となる。
【0078】
また、本第5の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置500によると、前記半導体レーザ励起固体レーザ装置300における前記出力ミラー40が不要なため、小型化をさらに促進することができる。
【0079】
なお、上記第2〜第5の各実施形態では、出力レーザ光の波長が531.5nmの場合について説明したが、これに限定されるものではない。前記非線形光学結晶50における分極反転ピッチ及び各コーティング仕様などを選択することにより、例えば、波長が670nmの出力レーザ光や波長が456nmの出力レーザ光を得ることも可能である。
【0080】
『第6の実施形態』
以下、本発明の半導体レーザ励起固体レーザ装置の第6の実施形態を図12〜図15(B)に基づいて説明する。図12には、本発明の第6の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置600の概略構成が示されている。この半導体レーザ励起固体レーザ装置600は、波長が670nmの赤色レーザ光を出力する第1の固体レーザ装置600Rと、波長が456nmの青色レーザ光を出力する第2の固体レーザ装置600Bと、波長が531.5nmの緑色レーザ光を出力する第3の固体レーザ装置600Gとを有している。
【0081】
第1の固体レーザ装置600Rは、一例として図13(A)に示されるように、前述した第5の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置500に類似した構成である。但し、一例として図13(B)に示されるように、固体レーザ結晶10のA面には、波長1340nmの光に対する反射率が99.9%となるように、コーティングが施されている。また、図13(B)に示されるように、固体レーザ結晶10のB面には、波長1340nmの光に対する透過率が5%、波長1063nmの光に対する透過率が99.9%となるように、コーティングが施されている。固体レーザ結晶10の材料については、上記第5の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置500の場合と同じである。非線形光学結晶50は、分極反転ピッチを変更したPPMgLN素子であり、その両端面には波長1340nmの光及び波長670nmの光に対する透過率がいずれも99.5%以上となるように、コーティングが施されている。
【0082】
第2の固体レーザ装置600Bは、一例として図14(A)に示されるように、前述した第5の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置500に類似した構成である。但し、一例として図14(B)に示されるように、固体レーザ結晶10のA面には、波長912nmの光に対する反射率が99.9%となるように、コーティングが施されている。また、図14(B)に示されるように、固体レーザ結晶10のB面には、波長912nmの光に対する透過率が3%、波長1063nmの光に対する透過率が99.9%となるように、コーティングが施されている。固体レーザ結晶10の材料については、第5の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置500の場合と同じである。非線形光学結晶50は、分極反転ピッチを変更したPPMgLN素子であり、その両端面には波長912nmの光及び波長456nmの光に対する透過率がいずれも99.5%以上となるように、コーティングが施されている。
【0083】
第3の固体レーザ装置600Gは、一例として図15(A)及び図15(B)に示されるように、前述した第5の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置500と同じ構成である。
【0084】
以上説明したように、本発明の第6の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置600によると、それぞれが固体レーザ結晶10を有する複数の固体レーザ装置を備えているため、大型化を招くことなく、それぞれが良好なビーム品質でかつ高出力の複数のレーザ光を出力することが可能となる。
【0085】
なお、上記第6の実施形態において、各固体レーザ装置から出射されるレーザ光の波長が互いに同じであっても良い。
【0086】
また、上記第6の実施形態では、3個の固体レーザ装置を備える場合について説明したが、これに限定されるものではない。2個あるいは4個以上の固体レーザ装置を備えても良い。
【0087】
なお、上記第2〜第6の各実施形態では、前記非線形光学結晶50として、PPMgLN素子を用いる場合について説明したが、これに限定されるものではない。PPMgLN素子と同等の機能を有する非線形光学結晶であれば良い。
【0088】
『第7の実施形態』
以下、本発明の半導体レーザ励起固体レーザ装置の第7の実施形態を図16(A)及び図16(B)に基づいて説明する。図16(A)には、本発明の第7の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置700の概略構成が示されている。
【0089】
この半導体レーザ励起固体レーザ装置700は、いわゆる端面励起型の半導体レーザ励起固体レーザ装置であり、励起用の半導体レーザLDと、レンズ素子20と、前記固体レーザ結晶10と、出力ミラー40とを備えている。
【0090】
半導体レーザLDは、シングルストライプ構造の半導体レーザであり、出力2Wで波長が808nmのレーザ光を発光することができる。ここでは、半導体レーザLDは、+Z方向にレーザ光を発光するものとする。
【0091】
レンズ素子20は、半導体レーザLDの+Z側に配置され、半導体レーザLDからの励起用レーザ光を集光する。このレンズ素子20は、ビーム径がφ1mm程度の大きさとなるように励起用レーザ光を集光することができる。
【0092】
固体レーザ結晶10は、レンズ素子20の+Z側に配置されている。そして、図16(B)に示されるように、固体レーザ結晶10におけるレンズ素子20側の面(ここでは−Z側の面、以下、便宜上「E面」という)には、波長808nmの光に対する透過率が99.5%、波長1063nmの光に対する透過率が0.1%となるように、コーティングが施されている。また、図16(B)に示されるように、固体レーザ結晶10における前記E面に対向する面(ここでは+Z側の面、以下、便宜上「F面」という)には、波長1063nmの光に対する透過率が99.9%となるように、コーティングが施されている。
【0093】
出力ミラー40は、固体レーザ結晶10の+Z側に配置されている。この出力ミラー40は、−Z側の面の曲率半径が5000mmであり、1063nmの光に対する透過率は5%である。
【0094】
すなわち、固体レーザ結晶10のE面と出力ミラー40とによって共振器(図16(B)参照)が形成されている。
【0095】
ここでは、固体レーザ結晶10のE面と出力ミラー40の−Z側の面との距離は100mmとしている。また、固体レーザ結晶10内でのレーザ光のビーム径は半径0.5mmである。
【0096】
なお、出力ミラー40は、固体レーザ結晶10と一体化された、いわゆるマイクロチップ構成であっても良い。
【0097】
次に、上記のように構成される半導体レーザ励起固体レーザ装置700の動作について簡単に説明する。
【0098】
半導体レーザLDから出射された波長808nmのレーザ光(励起用レーザ光)は、レンズ素子20を通過後、固体レーザ結晶10に入射する。固体レーザ結晶10中のNdは、励起用レーザ光により励起され、固体レーザ結晶10のE面と出力ミラー40とによって形成される共振器により、波長1063nmのレーザ発振に至る。そして、出力ミラー40を透過した波長1063nmのレーザ光が出力される。
【0099】
ところで、通常、端面励起型の半導体レーザ励起固体レーザ装置では、励起用レーザ光の集光ビーム形状(スポット形状)が、半導体レーザ励起固体レーザ装置から出力されるレーザ光(出力レーザ光)のビーム品質に大きく影響を及ぼすことが、一般に知られている。
【0100】
本第7の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置700によると、励起用の半導体レーザLDからの励起用レーザ光によって励起されるNdが添加され、レーザ発振方向(ここでは、X軸方向)に垂直な方向に関するNdの濃度プロファイルにおける濃度0近傍からの立ち上がり形状がゆるやかに増加するスロープ状であるガドリニウムバナデイト(GdVO)の一軸性単結晶を含む固体レーザ結晶10を備えているため、励起用レーザ光のスポット形状や光強度分布を整形することなく、良好なビーム品質のレーザ光を出力することができる。従って、大型化を招くことなく、良好なビーム品質のレーザ光を出力することが可能となる。
【0101】
なお、上記各実施形態では、前記固体レーザ結晶10としてディスク状(もしくはチップ状)の固体レーザ結晶を用いる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、図17(A)及び図17(B)に示されるように、二重ダイEFG法やμPD法で作製されたロッド状の結晶の外周をカットして角柱状とした後、スライスすることにより、矩形板状としても良い。さらに、多角形状であっても良い。
【0102】
また、上記各実施形態では、前記固体レーザ結晶10の材料として、GdVOを用いる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えばイットリウムバナデイト(YVO)や他の結晶を用いても良い。
【0103】
また、上記各実施形態では、前記固体レーザ結晶10における添加物として、Ndを用いる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、その他の希土類及び金属イオンを用いても良い。また、濃度に関しても0.5at.%に限定するものではない。
【0104】
また、上記各実施形態では、前記固体レーザ結晶10として、一軸性単結晶を用いる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、二軸性単結晶を用いても良い。
【0105】
また、上記各実施形態では、前記固体レーザ結晶10の厚さtが0.5mm、直径Daが5mm及びDbが1mmの場合について説明したが、これに限定されるものではない。要求される出力レーザ光のビーム品質に応じて各寸法を変更しても良い。
【0106】
《レーザプリンタ》
図18には、本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのレーザプリンタ1000の概略構成が示されている。
【0107】
このレーザプリンタ1000は、光走査装置900、感光体ドラム901、帯電チャージャ902、現像ローラ903、トナーカートリッジ904、クリーニングブレード905、給紙トレイ906、給紙コロ907、レジストローラ対908、転写チャージャ911、除電ユニット914、定着ローラ909、排紙ローラ912、及び排紙トレイ910などを備えている。
【0108】
帯電チャージャ902、現像ローラ903、転写チャージャ911、除電ユニット914及びクリーニングブレード905は、それぞれ感光体ドラム901の表面近傍に配置されている。そして、感光体ドラム901の回転方向に関して、帯電チャージャ902→現像ローラ903→転写チャージャ911→除電ユニット914→クリーニングブレード905の順に配置されている。
【0109】
感光体ドラム901の表面には、感光層が形成されている。ここでは、感光体ドラム901は、図18における面内で時計回り(矢印方向)に回転するようになっている。
【0110】
帯電チャージャ902は、感光体ドラム901の表面を均一に帯電させる。
【0111】
光走査装置900は、帯電チャージャ902で帯電された感光体ドラム901の表面に、上位装置(例えばパソコン)からの画像情報に基づいて変調された光を照射する。これにより、感光体ドラム901の表面では、画像情報に対応した潜像が感光体ドラム901の表面に形成される。ここで形成された潜像は、感光体ドラム901の回転に伴って現像ローラ903の方向に移動する。ところで、感光体ドラム901の長手方向(回転軸に沿った方向)は「主走査方向」と呼ばれ、感光体ドラム901の回転方向は「副走査方向」と呼ばれている。なお、この光走査装置900の構成については後述する。
【0112】
トナーカートリッジ904にはトナーが格納されており、該トナーは現像ローラ903に供給される。
【0113】
現像ローラ903は、感光体ドラム901の表面に形成された潜像にトナーカートリッジ904から供給されたトナーを付着させて画像情報を顕像化させる。ここでトナーが付着された潜像は、感光体ドラム901の回転に伴って転写チャージャ911の方向に移動する。
【0114】
給紙トレイ906には記録紙913が格納されている。この給紙トレイ906の近傍には給紙コロ907が配置されており、該給紙コロ907は、記録紙913を給紙トレイ906から1枚づつ取り出し、レジストローラ対908に搬送する。該レジストローラ対908は、転写ローラ911の近傍に配置され、給紙コロ907によって取り出された記録紙913を一旦保持するとともに、該記録紙913を感光体ドラム901の回転に合わせて感光体ドラム901と転写チャージャ911との間隙に向けて送り出す。
【0115】
転写チャージャ911には、感光体ドラム901の表面上のトナーを電気的に記録紙913に引きつけるために、トナーとは逆極性の電圧が印加されている。この電圧により、感光体ドラム901の表面の潜像が記録紙913に転写される。ここで転写された記録紙913は、定着ローラ909に送られる。
【0116】
この定着ローラ909では、熱と圧力とが記録紙913に加えられ、これによってトナーが記録紙913上に定着される。ここで定着された記録紙913は、排紙ローラ912を介して排紙トレイ910に送られ、排紙トレイ910上に順次スタックされる。
【0117】
除電ユニット914は、感光体ドラム901の表面を除電する。
【0118】
クリーニングブレード905は、感光体ドラム901の表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。なお、除去された残留トナーは、再度利用されるようになっている。残留トナーが除去された感光体ドラム901の表面は、再度帯電チャージャ902の位置に戻る。
【0119】
《光走査装置》
次に、前記光走査装置900の構成及び作用について図19を用いて説明する。
【0120】
この光走査装置900は、前記半導体レーザ励起固体レーザ装置100〜500、700のうちのいずれかの半導体レーザ励起固体レーザ装置と同等のレーザ装置を含む光源11、カップリングレンズ12、変調器17、シリンドリカルレンズ13、ポリゴンミラー14、fθレンズ15、トロイダルレンズ16及び上記各部を統括的に制御する不図示の主制御装置を備えている。
【0121】
前記カップリングレンズ12は、光源11から出射された光ビームを略平行光に整形する。
【0122】
前記変調器17は、カップリングレンズ12を透過した光ビームをオンオフする。
【0123】
前記シリンドリカルレンズ13は、変調器17を透過した光ビームをポリゴンミラー14の反射面に集光する。
【0124】
前記ポリゴンミラー14は、高さの低い正六角柱状部材からなり、側面には6面の偏向面が形成されている。そして、不図示の回転機構により、図19に示される矢印の方向に一定の角速度で回転されている。従って、光源11から出射され、シリンドリカルレンズ13によってポリゴンミラー14の偏向面に集光された光ビームは、ポリゴンミラー14の回転により一定の角速度で偏向される。
【0125】
前記fθレンズ15は、ポリゴンミラー14からの光ビームの入射角に比例した像高をもち、ポリゴンミラー14により一定の角速度で偏向される光ビームの像面を、主走査方向に対して等速移動させる。
【0126】
前記トロイダルレンズ16は、fθレンズ15を透過した光ビームを感光体ドラム901の表面上に結像する。
【0127】
以上説明したように、本実施形態に係る光走査装置900によると、光源11は前記半導体レーザ励起固体レーザ装置100〜500、700のうちのいずれかの半導体レーザ励起固体レーザ装置と同等のレーザ装置を含んでいるため、感光体ドラム901の表面上を精度良く走査することが可能となる。
【0128】
また、本実施形態に係るレーザプリンタ1000によると、前記半導体レーザ励起固体レーザ装置100〜500、700のうちのいずれかの半導体レーザ励起固体レーザ装置と同等のレーザ装置を含む光走査装置900を備えているため、高品質な画像を形成することが可能となる。
【0129】
なお、上記実施形態に係る光走査装置900において、前記光源11は複数の前記レーザ装置を含んでいても良い。この場合には、同時に複数の走査を行うことができ、その結果、レーザプリンタ1000では高速に画像を形成することができる。
【0130】
また、上記実施形態において、前記ポリゴンミラー14に代えてMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーを用いても良い。この場合には、MEMSミラーの偏向角度を制御することにより、光ビームの偏向方向を制御することとなる。
【0131】
また、上記実施形態では、画像形成装置としてレーザプリンタ1000の場合について説明したが、これに限定されるものではない。要するに、前記半導体レーザ励起固体レーザ装置100〜500、700のうちのいずれかの半導体レーザ励起固体レーザ装置と同等のレーザ装置を有する画像形成装置であれば、高品質な画像を安定して形成することが可能となる。
【0132】
また、前記半導体レーザ励起固体レーザ装置100〜700のうちのいずれかの半導体レーザ励起固体レーザ装置と同等のレーザ装置を含み、レーザ光によって発色する媒体(例えば、用紙)に直接、レーザ光を照射する画像形成装置であっても良い。
【0133】
《表示装置》
図20には、本発明の一実施形態に係る表示装置としてのレーザ・ディスプレイ装置2000の概略構成が示されている。
【0134】
このレーザ・ディスプレイ装置2000は、前記半導体レーザ励起固体レーザ装置100〜700のうちのいずれかの半導体レーザ励起固体レーザ装置と同等のレーザ装置を含む光源101と、光源101からのレーザ光をスクリーン104に向けて照射するためのミラーを含む光学系103と、前記光源101及び前記光学系103を制御する制御装置105とを備えている。
【0135】
このように、本実施形態に係るレーザ・ディスプレイ装置2000は、レーザ光の光源として、前記半導体レーザ励起固体レーザ装置100〜700のうちのいずれかの半導体レーザ励起固体レーザ装置と同等のレーザ装置を用いているため、スクリーン104上に絵や文字を高品質に描くことが可能となる。
【0136】
なお、空間を貫くレーザ光によって映像表現を行うレーザ・ディスプレイ装置であっても、前記光源101を備えるレーザ・ディスプレイ装置であれば、表現効果を向上させることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0137】
以上説明したように、本発明の半導体レーザ励起固体レーザ装置によれば、大型化を招くことなく、良好なビーム品質のレーザ光を出力するのに適している。また、本発明の光走査装置によれば、被走査面上を精度良く走査するのに適している。また、本発明の画像形成装置によれば、高品質な画像を形成するのに適している。また、本発明の表示装置によれば、表示品質に優れた情報の表示に適している。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】図1(A)及び図1(B)は、それぞれ本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置を説明するための図である。
【図2】図2(A)及び図2(B)は、それぞれ図1(A)及び図1(B)における固体レーザ結晶を説明するための図である。
【図3】図1(A)における共振器を説明するための図である。
【図4】図2(A)及び図2(B)の固体レーザ結晶における吸収係数及び吸収量を説明するための図である。
【図5】図2(A)及び図2(B)の固体レーザ結晶における吸収量を三次元的に説明するための図である。
【図6】コア部のNd濃度が均一なときの吸収係数及び吸収量を説明するための図である。
【図7】コア部のNd濃度が均一なときの吸収量を三次元的に説明するための図である。
【図8】図8(A)及び図8(B)は、それぞれ本発明の第2の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置を説明するための図である。
【図9】図9(A)及び図9(B)は、それぞれ本発明の第3の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置を説明するための図である。
【図10】図10(A)及び図10(B)は、それぞれ本発明の第4の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置を説明するための図である。
【図11】図11(A)及び図11(B)は、それぞれ本発明の第5の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置を説明するための図である。
【図12】本発明の第6の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置を説明するための図である。
【図13】図13(A)及び図13(B)は、それぞれ図12における固体レーザ装置600Rを説明するための図である。
【図14】図14(A)及び図14(B)は、それぞれ図12における固体レーザ装置600Bを説明するための図である。
【図15】図15(A)及び図15(B)は、それぞれ図12における固体レーザ装置600Gを説明するための図である。
【図16】図16(A)及び図16(B)は、それぞれ本発明の第7の実施形態に係る半導体レーザ励起固体レーザ装置を説明するための図である。
【図17】図17(A)及び図17(B)は、それぞれ固体レーザ結晶の変形例を説明するための図である。
【図18】本発明の一実施形態に係るレーザプリンタの概略構成を説明するための図である。
【図19】図18のレーザプリンタにおける光走査装置の概略構成を説明するための図である。
【図20】本発明の一実施形態に係るレーザ・ディスプレイ装置を説明するための図である。
【符号の説明】
【0139】
10…固体レーザ結晶、20…レンズ素子、20a…光学系、20b…光学系、40…出力ミラー、50…非線形光学結晶、100…半導体レーザ励起固体レーザ装置、200…半導体レーザ励起固体レーザ装置、300…半導体レーザ励起固体レーザ装置、400…半導体レーザ励起固体レーザ装置、500…半導体レーザ励起固体レーザ装置、600…半導体レーザ励起固体レーザ装置、600R…第1の固体レーザ装置、600B…第2の固体レーザ装置、600G…第3の固体レーザ装置、700…半導体レーザ励起固体レーザ装置、900…光走査装置、1000…レーザプリンタ(画像形成装置)、2000…レーザ・ディスプレイ装置(表示装置)、LD…励起用半導体レーザ、LDa…励起用半導体レーザ、LDb…励起用半導体レーザ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの励起用の半導体レーザと;
前記少なくとも1つの励起用の半導体レーザからの励起用のレーザ光によって励起される添加物(発光中心)が添加され、レーザ発振方向に垂直な方向に関する前記添加物の濃度プロファイルにおける濃度0近傍からの立ち上がり形状がゆるやかに増加するスロープ状である単結晶の固体レーザ結晶を含む少なくとも1つのレーザ光発生装置と;を備える半導体レーザ励起固体レーザ装置。
【請求項2】
前記濃度プロファイルは、前記単結晶の中央部近傍で濃度が高く、前記中央部近傍から離れるにつれて徐々に濃度が低くなる濃度プロファイルであることを特徴とする請求項1に記載の半導体レーザ励起固体レーザ装置。
【請求項3】
前記単結晶は、一軸性及び二軸性のいずれかの単結晶であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体レーザ励起固体レーザ装置。
【請求項4】
前記単結晶は、レーザ発振方向を厚さ方向とする板状の単結晶であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体レーザ励起固体レーザ装置。
【請求項5】
前記励起用のレーザ光は、前記単結晶の側面を介して前記添加物を励起することを特徴とする請求項4に記載の半導体レーザ励起固体レーザ装置。
【請求項6】
前記励起用のレーザ光は、前記単結晶の一側の板面を介して前記添加物を励起することを特徴とする請求項4に記載の半導体レーザ励起固体レーザ装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つのレーザ光発生装置は、前記固体レーザ結晶とともに共振器を構成するミラー素子を有し、
前記少なくとも1つのレーザ光発生装置は、前記固体レーザ結晶と前記ミラー素子との間におけるレーザ光の光路上に配置され、該レーザ光の波長を変換する非線形結晶を更に含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体レーザ励起固体レーザ装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つのレーザ光発生装置は、前記固体レーザ結晶とともに共振器を構成するミラー素子を有し、
前記少なくとも1つのレーザ光発生装置は、前記ミラー素子を透過したレーザ光の光路上に配置され、該レーザ光の波長を変換する非線形結晶を更に含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体レーザ励起固体レーザ装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つのレーザ光発生装置は、前記固体レーザ結晶を透過したレーザ光の光路上に配置され、該レーザ光の波長を変換する非線形結晶を更に含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体レーザ励起固体レーザ装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つのレーザ光発生装置から出力されるレーザ光は、直線偏波のレーザ光であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の半導体レーザ励起固体レーザ装置。
【請求項11】
前記レーザ光発生装置を複数備えることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の半導体レーザ励起固体レーザ装置。
【請求項12】
前記複数のレーザ光発生装置は、互いに異なる波長のレーザ光を出力することを特徴とする請求項11に記載の半導体レーザ励起固体レーザ装置。
【請求項13】
光ビームによって被走査面上を走査する光走査装置において、
前記光ビームを出力する少なくとも1つの請求項1〜12のいずれか一項に記載の半導体レーザ励起固体レーザ装置を備えることを特徴とする光走査装置。
【請求項14】
レーザ光を用いて物体上に画像を形成する画像形成装置において、
前記レーザ光を出力する少なくとも1つの請求項1〜12のいずれか一項に記載の半導体レーザ励起固体レーザ装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項15】
レーザ光を用いて情報を表示する表示装置において、
前記レーザ光を出力する少なくとも1つの請求項1〜12のいずれか一項に記載の半導体レーザ励起固体レーザ装置を備えることを特徴とする表示装置。

【図4】
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【図6】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−10603(P2008−10603A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−178884(P2006−178884)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成16年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 エネルギー使用合理化技術戦略的開発 エネルギー有効利用基盤技術先導研究開発 カラーリライタブルプリンタ用高効率小型可視光光源”Tri Color Laser”の研究開発、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【出願人】(504261077)大学共同利用機関法人自然科学研究機構 (156)
【出願人】(503098724)株式会社オキサイド (22)
【Fターム(参考)】