説明

半導体レーザ素子

【課題】レーザ素子の信頼性を向上させることが可能な半導体レーザ素子を提供する。
【解決手段】この窒化物系半導体レーザ素子(半導体レーザ素子)1000は、光出射面1から近い順に、AlN膜41と、Al膜42と、AlN膜43とが形成された誘電体多層膜である第1変質防止層40と、第1変質防止層40の光出射面1側とは反対側の表面に形成されたAl膜51とを備える。そして、レーザ光の波長がλであり、AlN膜41、Al膜42およびAlN膜43の屈折率が、それぞれ、n1、n2およびn3である場合に、AlN膜41の厚みt1、Al膜42の厚みt2およびAlN膜43の厚みt3は、それぞれ、t1<λ/(4×n1)、t2<λ/(4×n2)およびt3<λ/(4×n3)に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザ素子に関し、特に、発光層を有する半導体素子層を備えた半導体レーザ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体レーザは、光ディスクシステムや光通信システムなどの光源として広く用いられている。また、システムを構成する機器の高性能化に伴い、要素部品としての半導体レーザの特性向上が要望されている。特に、高密度光ディスクシステムの光源として、レーザ光の短波長化や高出力化が望まれており、近年では、窒化物系材料により、発振波長が約405nmの青紫色半導体レーザが開発されるとともに、その高出力化が検討されている。
【0003】
一般的に、半導体レーザの高出力化を行う場合、製造プロセスにおいて、半導体レーザ素子の共振器における光出射面を低反射率にするとともに、光反射面を高反射率とする端面コート処理が施される。多くの半導体レーザでは、共振器の端面コート処理に、従来SiOやAlなどの酸化膜からなる誘電体膜が用いられてきた。しかし、この場合、レーザ光の発振中に、誘電体膜中の酸素が半導体層に拡散することにより半導体層が酸化されてしまい、半導体層と端面コート膜との界面に非発光再結合準位(発光エネルギが熱エネルギに変換される状態)が発生する。この結果、レーザ光が半導体層や端面コート膜に吸収されやすくなり、共振器端面の異常発熱に起因して光学損傷破壊(COD)が発生する不都合がある。また、酸素を有しない窒化膜からなる誘電体膜による端面コート処理が提案されている。しかし、一般的に、窒化膜が有する応力は、酸化膜の場合と比較して数倍〜数十倍も大きいために膜剥がれ(剥離)が生じやすく、その結果、共振器端面に割れや剥離を生じさせる不都合もある。
【0004】
そこで、従来では、半導体層と酸化膜からなる端面コート膜との間に、窒化物からなる薄膜を形成する提案がなされている(たとえば、特許文献1参照)。
【0005】
上記特許文献1には、光出射側の共振器端面に、酸化物からなる第1コート膜が形成されるとともに、光出射側の共振器端面と第1コート膜との間に挟まれるように窒化物からなる第2コート膜が形成された窒化物半導体発光素子が開示されている。この特許文献1に記載の窒化物半導体発光素子では、共振器端面に接触するように形成された窒化物からなる第2コート膜により、雰囲気にさらされる最表面の第1コート膜から半導体層(光出射側の共振器端面)へ酸素が供給されるのが抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−243023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に開示された窒化物半導体発光素子では、約400nmの波長を有する光密度の大きい高エネルギのレーザ光が共振器端面から出射されるので、レーザ光が透過する第1コート膜および第2コート膜に発熱が生じる。この場合、第1コート膜と第2コート膜との界面では、発熱によって酸化物からなる第1コート膜から酸素が脱離する。また、雰囲気中の酸素が第1コート膜を透過して窒化物からなる第2コート膜に取り込まれやすいために、第2コート膜の窒素と、外部および第1コート膜から脱離した酸素とが置換される。これにより、第1コート膜と第2コート膜との界面が変質を起こす。なお、第2コート膜における窒素と酸素との置換の反応速度よりも、酸化物からなる第1コート膜から酸素が脱離する反応速度が大きい。このため、レーザ光の出射に伴って第1コート膜が次第に劣化し始める。この結果、レーザ素子の動作電流の上昇を招き、動作電流の上昇に伴うさらなる発熱に起因して共振器端面が破壊されやすくなる。特に、高出力化された半導体レーザでは、レーザの動作時間が長いほど上記の点が顕著となるので、レーザ素子の信頼性が低下するという問題点がある。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、レーザ素子の信頼性を向上させることが可能な半導体レーザ素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の一の局面による半導体レーザ素子は、発光層を有する半導体素子層と、半導体素子層の発光層を含む領域の光出射側の端部に形成された第1共振器端面と、第1共振器端面上に、第1共振器端面側から第1窒化膜と、第1酸化膜および第1酸窒化膜の少なくとも一方を含む第1中間膜と、第2窒化膜とがこの順に形成された第1絶縁膜と、第1絶縁膜上に形成され、第2酸化膜および第2酸窒化膜の少なくとも一方を含む第2絶縁膜とを備え、発光層が発するレーザ光の波長がλであり、第1窒化膜の屈折率、第1中間膜の平均屈折率および第2窒化膜の屈折率が、それぞれ、n1、n2およびn3である場合に、第1窒化膜の厚みt1、第1中間膜の厚みt2および第2窒化膜の厚みt3は、それぞれ、t1<λ/(4×n1)、t2<λ/(4×n2)およびt3<λ/(4×n3)になるように設定されている。
【0010】
なお、本発明において、光出射側の共振器端面は、一対に形成された共振器端面のそれぞれから出射されるレーザ光強度の大小関係により区別される。すなわち、相対的にレーザ光の出射強度の大きい側が光出射側の第1共振器端面である。また、相対的にレーザ光の出射強度の小さい側が光反射側の第2共振器端面である。
【0011】
この発明の一の局面による半導体レーザ素子では、上記のように、光出射側の第1共振器端面上に、第1共振器端面側から第1窒化膜と、第1酸化膜および第1酸窒化膜の少なくとも一方を含む第1中間膜と、第2窒化膜とがこの順に形成された第1絶縁膜を備える。これにより、外側に配置された第2窒化膜により、第2絶縁膜中および雰囲気中に存在する酸素が第1絶縁膜中に取り込まれにくくなるので、第1中間膜と第1窒化膜との界面における酸素の脱離や、酸素と窒素との置換反応などが抑制される。すなわち、第1中間膜と第1窒化膜との界面が変質して劣化するのが抑制される。また、第1中間膜と第1窒化膜との界面に変質が生じた場合でも、第1窒化膜および第2窒化膜によって、第1中間膜内に広がる変質領域をこの領域内に留めることができるので、変質の拡大が抑制される。これにより、第1絶縁膜内の変質を最小限に抑制することができる。したがって、レーザ出射光を高出力化した場合でも光出射側の第1共振器端面および第1絶縁膜近傍における発熱が抑制されるので、第1共振器端面の破壊が抑制される。この結果、レーザ素子の信頼性を向上させることができる。
【0012】
また、第1絶縁膜上、すなわち、第1共振器端面とは反対側に位置する第1絶縁膜の表面上に形成された第2酸化膜および第2酸窒化膜の少なくとも一方を含む第2絶縁膜の厚みを調整することにより、光出射側の第1共振器端面を出射したレーザ光の反射率を容易に制御することができる。これにより、高出力化に対応したレーザ素子の信頼性を向上させることができる。
【0013】
また、第1絶縁膜を構成する第1窒化膜の厚みt1、第1中間膜の厚みt2および第2窒化膜の厚みt3を、それぞれ、t1<λ/(4×n1)、t2<λ/(4×n2)およびt3<λ/(4×n3)となるように設定することによって、第1絶縁膜を構成する各々の膜の厚みがλ/(4×n)よりも小さくなる。これにより、光出射側の第1共振器端面を出射したレーザ光は、第1絶縁膜を構成する各膜の厚みに影響されることなく透過して第2絶縁膜に達する。その結果、所望の反射率を有するように設定された第2絶縁膜の反射率制御機能が第1絶縁膜によって影響されるのを容易に抑制することができる。また、第1絶縁膜を構成する各膜の厚みが薄いので、膜形成後の応力に起因した膜剥がれ(剥離)なども抑制することができる。
【0014】
上記一の局面による半導体レーザ素子において、好ましくは、第1窒化膜は、半導体素子層と接する。このように構成すれば、光出射側の第1共振器端面には第1窒化膜が接触しているので、第1中間膜中の第1酸化膜および第1酸窒化膜の少なくとも一方からの酸素が半導体素子層に取り込まれるのを、第1窒化膜により容易に抑制することができる。
【0015】
上記一の局面による半導体レーザ素子において、好ましくは、第1窒化膜および第2窒化膜の少なくとも一方と、第1中間膜とは、同じ金属元素を含む。このように構成すれば、互いに接触する第1窒化膜と第1中間膜、および、互いに接触する第2窒化膜と第1中間膜の少なくとも一方は、同種の金属元素を含む材料であるので、接触の際の密着性を向上させることができる。この結果、第1窒化膜および第2窒化膜の少なくとも一方の膜剥がれ(剥離)を抑制することができる。
【0016】
上記一の局面による半導体レーザ素子において、好ましくは、第1窒化膜および第2窒化膜は、それぞれ、AlおよびSiの少なくとも一方を含む。このように構成すれば、AlおよびSiの少なくとも一方を含む窒化物は良好な絶縁性を有するので、第1窒化膜および第2窒化膜の絶縁性を向上させることができる。また、AlおよびSiの少なくとも一方を含んだ窒化膜により、第1絶縁膜および半導体素子層に酸素が取り込まれるのを効果的に抑制することができる。
【0017】
上記一の局面による半導体レーザ素子において、好ましくは、第1酸化膜は、Al、Si、Zr、Ta、HfおよびNbからなるグループより選択される少なくとも1つの元素を含む。このように構成すれば、上記の元素を含む酸化物は良好な絶縁性を有するので、第1酸化膜の絶縁性を向上させることができる。また、第1酸化膜と、第1酸化膜を両側から挟み込む第1窒化膜および第2窒化膜とが上記グループより選択される共通の元素を共に含む場合には、第1酸化膜と、第1窒化膜および第2窒化膜との各膜間の密着性を向上させることができる。
【0018】
上記一の局面による半導体レーザ素子において、好ましくは、第1酸窒化膜は、AlおよびSiの少なくとも一方を含む。このように構成すれば、AlおよびSiの少なくとも一方を含む酸化物は良好な絶縁性を有するので、第1酸窒化膜の絶縁性を向上させることができる。また、Al元素を含む第1酸窒化膜を、Al元素を含む第1窒化膜および第2窒化膜とによって両側から挟み込む場合、各々の膜は同種の金属元素(Al元素)により容易に接触させることができるので、各膜間の密着性を向上させることができる。
【0019】
上記一の局面による半導体レーザ素子において、好ましくは、第1絶縁膜と第2絶縁膜との間に第3酸化膜および第3酸窒化膜の少なくとも一方を含む第2中間膜がさらに形成されている。このように構成すれば、光出射側の第1共振器端面上に、第1窒化膜と第1酸化膜および第1酸窒化膜の少なくとも一方とからなる領域、および、第2窒化膜と第3酸化膜および第3酸窒化膜の少なくとも一方とからなる領域が光出射側の第1共振器端面から近い順に形成されて多層化されるので、第1共振器端面の破壊をより一層抑制することができる。
【0020】
上記一の局面による半導体レーザ素子において、好ましくは、半導体素子層の発光層を含む領域の光反射側の端部に形成された第2共振器端面と、第2共振器端面上に、第2共振器端面側から第3窒化膜と、第4酸化膜および第4酸窒化膜の少なくとも一方を含む第3中間膜と、第4窒化膜とがこの順に形成された第3絶縁膜をさらに備える。このように構成すれば、雰囲気中からの酸素が、第4窒化膜により第3絶縁膜中に取り込まれにくくなるので、第3中間膜と第3窒化膜との界面が変質して劣化するのが抑制される。したがって、レーザ出射光を高出力化した場合でも光反射側の第2共振器端面および第3絶縁膜における発熱が抑制され、第2共振器端面の破壊も抑制される。この結果、レーザ素子の信頼性をより向上させることができる。
【0021】
この場合、好ましくは、第3窒化膜の屈折率、第3中間膜の平均屈折率および第4窒化膜の屈折率が、それぞれ、n5、n6およびn7である場合に、第3窒化膜の厚みt5、第3中間膜の厚みt6および第4窒化膜の厚みt7は、それぞれ、t5<λ/(4×n5)、t6<λ/(4×n6)およびt7<λ/(4×n7)になるように設定されている。このように構成すれば、たとえば、第3絶縁膜上、すなわち、光反射側の第2共振器端面とは反対側に位置する第3絶縁膜の表面上にレーザ光を反射する反射膜などを設けた場合、第3絶縁膜を構成する各々の膜の厚みがλ/(4×n)よりも小さくなる。これにより、光反射側の第2共振器端面を出射したレーザ光は、第3絶縁膜を構成する各膜の厚みに影響されることなく透過して反射膜に達するので、所望の反射率を有するように設定された反射膜の反射率制御機能が第3絶縁膜によって影響されるのを容易に抑制することができる。また、第3絶縁膜を構成する各膜の厚みが薄いので、膜形成後の応力に起因した膜剥がれ(剥離)なども抑制することができる。
【0022】
また、この場合、好ましくは、第3窒化膜は、半導体素子層と接する。このように構成すれば、光反射側の第2共振器端面には第3窒化膜が接触しているので、第3中間膜中の第4酸化膜および第4酸窒化膜の少なくとも一方からの酸素が半導体素子層に取り込まれるのを、第3窒化膜により容易に抑制することができる。
【0023】
また、この場合、好ましくは、第3窒化膜および第4窒化膜の少なくとも一方と、第3中間膜とは、同じ金属元素を含む。このように構成すれば、互いに接触する第3窒化膜と第3中間膜、および、互いに接触する第4窒化膜と第3中間膜の少なくとも一方は、同種の金属元素を含む材料であるので、接触の際の密着性を向上させることができる。この結果、第3窒化膜および第4窒化膜の少なくとも一方の膜剥がれ(剥離)を抑制することができる。
【0024】
また、この場合、好ましくは、第3窒化膜および第4窒化膜は、それぞれ、AlおよびSiの少なくとも一方を含む。このように構成すれば、AlおよびSiの少なくとも一方を含む窒化物は良好な絶縁性を有するので、第3窒化膜および第4窒化膜の絶縁性を向上させることができる。また、AlおよびSiの少なくとも一方を含んだ窒化膜により、第3絶縁膜および半導体素子層に酸素が取り込まれるのを効果的に抑制することができる。
【0025】
また、この場合、好ましくは、第4酸化膜は、Al、Si、Zr、Ta、HfおよびNbからなるグループより選択される少なくとも1つの元素を含む。このように構成すれば、上記の元素を含む酸化物は良好な絶縁性を有するので、第4酸化膜の絶縁性を向上させることができる。また、第4酸化膜と、第4酸化膜を両側から挟み込む第3窒化膜および第4窒化膜とが上記グループより選択される共通の元素を共に含む場合には、第4酸化膜と、第3窒化膜および第4窒化膜との各膜間の密着性を向上させることができる。
【0026】
また、この場合、好ましくは、第4酸窒化膜は、AlおよびSiの少なくとも一方を含む。このように構成すれば、AlおよびSiの少なくとも一方を含む酸化物は良好な絶縁性を有するので、第4酸窒化膜の絶縁性を向上させることができる。また、Al元素を含む第4酸窒化膜を、同じく、Al元素を含む第3窒化膜および第4窒化膜とによって両側から挟み込む場合には、各膜間の密着性を向上させることができる。
【0027】
上記第3絶縁膜をさらに備える構成において、好ましくは、第3絶縁膜上に形成された多層反射膜をさらに備える。このように構成すれば、多層反射膜の厚みを調整することにより、光反射側の第2共振器端面を出射したレーザ光の反射率を容易に制御することができる。
【0028】
なお、上記第2中間層を含む構成において、好ましくは、第2中間膜の平均屈折率がn4で、厚みがt4である場合に、t4<λ/(4×n4)になるように設定されている。このように構成すれば、第2中間膜の厚みがλ/(4×n)よりも小さくなるので、光出射側の第1共振器端面を出射したレーザ光は、第2中間膜の厚みに影響されることなく透過して第2絶縁膜に達する。これにより、所望の反射率を有するように設定された第2絶縁膜の反射率制御機能が第2中間膜によって影響されるのを容易に抑制することができる。
【0029】
また、上記一の局面による半導体レーザ素子において、好ましくは、第1中間膜は、第1酸化膜と第1酸窒化膜との両方を含む。すなわち、第1窒化膜と第2窒化膜との間には、第1酸化膜および第1酸窒化膜の両方が形成されている。このように構成すれば、第2絶縁膜中および雰囲気中に存在する酸素が第1絶縁膜中にさらに取り込まれにくくなるので、第1中間膜と第1窒化膜との界面が変質して劣化することをさらに抑制することができる。
【0030】
また、この場合、好ましくは、第1中間膜は、第1酸化膜と、第1酸化膜を積層方向に挟む2つの第1酸窒化膜とからなる。このように構成すれば、第1絶縁膜が、窒化膜、酸窒化膜、酸化膜、酸窒化膜および窒化膜の順に積層されるので、第1絶縁膜中の組成が漸次変化することになる。その結果、第1絶縁膜中の各膜間の密着性をさらに向上させることができるので、複数の薄膜からなる第1絶縁膜の強度を維持することができる。
【0031】
また、上記一の局面による半導体レーザ素子において、好ましくは、半導体素子層は、窒化物系半導体からなる。このように構成すれば、約525nm以下の短い発振波長を有し、かつ、高エネルギなレーザ光を出射する窒化物系半導体レーザ素子において、レーザ光出射時の発熱に起因した光出射側の第1共振器端面の破壊を効果的に抑制することができる。
【0032】
上記一の局面による半導体レーザ素子において、好ましくは、第1窒化膜、第1中間膜および第2窒化膜は、それぞれ、1nm以上20nm以下の範囲の厚みを有する。このように構成すれば、第2絶縁膜の反射率制御機能が第1絶縁膜によって影響されるのをさらに容易に抑制することができるとともに、各膜の膜剥れ(剥離)などもさらに抑制することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、レーザ素子の信頼性を向上させることが可能な半導体レーザ素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1実施形態による半導体レーザ素子の構造を説明するための、半導体レーザ素子の共振器方向に沿った面における断面図である。
【図2】図1に示した窒化物系半導体レーザ素子の共振器方向に直交する面における断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態の第1変形例による半導体レーザ素子の構造を説明するための、半導体レーザ素子の共振器方向に沿った面における断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態による半導体レーザ素子の構造を説明するための、半導体レーザ素子の共振器方向に沿った面における断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態による半導体レーザ素子の構造を説明するための、半導体レーザ素子の共振器方向に沿った面における断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態による半導体レーザ素子の構造を説明するための、半導体レーザ素子の共振器方向に沿った面における断面図である。
【図7】本発明の第5実施形態による半導体レーザ素子の構造を説明するための、半導体レーザ素子の共振器方向に沿った面における断面図である。
【図8】図7に示した窒化物系半導体レーザ素子の共振器方向に直交する面における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0036】
(第1実施形態)
まず、図1および図2を参照して、本発明の第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子1000の構造について説明する。
【0037】
本発明の第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子1000では、図2に示すように、約100μmの厚みを有するとともに、約5×1018cm−3のキャリア濃度を有するSiがドープされたn型GaNからなる基板10上に、発振波長λが約405nm帯を有する窒化物系半導体からなる半導体素子層20が形成されている。
【0038】
また、窒化物系半導体レーザ素子1000は、図1に示すように、共振器の延びる方向(A方向)の両端部に、それぞれ、光出射面1および光反射面2が形成されている。なお、光出射面1は、本発明の「第1共振器端面」の一例であり、光反射面2は、本発明の「第2共振器端面」の一例である。また、窒化物系半導体レーザ素子1000の光出射面1および光反射面2には、製造プロセスにおける端面コート処理により、端面コート膜がそれぞれ形成されている。
【0039】
ここで、第1実施形態では、図1に示すように、窒化物系半導体レーザ素子1000の光出射面1上には、光出射面1から近い順に、光出射面1に接触する約10nmの厚みを有するAlN膜41と、AlN膜41に接触する約10nmの厚みを有するAl膜42と、Al膜42に接触する約10nmの厚みを有するAlN膜43とが積層された誘電体多層膜である第1変質防止層40が形成されている。そして、第1変質防止層40上には、第1変質防止層40に接触するように約70nmの厚みを有するAl膜51が形成されている。なお、第1変質防止層40は、本発明の「第1絶縁膜」の一例である。また、AlN膜41は、本発明の「第1窒化膜」の一例であり、Al膜42は、本発明の「第1酸化膜」および「第1中間膜」の一例であり、AlN膜43は、本発明の「第2窒化膜」の一例である。また、Al膜51は、本発明の「第2酸化膜」および「第2絶縁膜」の一例である。第1実施形態では、AlN膜41、Al膜42およびAlN膜43により、第1変質防止層40自身および光出射面1がレーザ光の出射に伴って変質するのを抑制する機能を有する。また、Al膜51は反射率を制御する機能を有し、Al膜51により光出射面1でのレーザ光の反射率が約8%を有するように設定されている。
【0040】
また、第1実施形態では、AlN膜41、Al膜42およびAlN膜43の屈折率が、それぞれ、n1(=約2.15)、n2(=約1.68)およびn3(=約2.15)である場合、AlN膜41の厚みt1(=約10nm)、Al膜42の厚みt2(=約10nm)およびAlN膜43の厚みt3(=約10nm)は、それぞれ、t1<λ/(4×n1)、t2<λ/(4×n2)およびt3<λ/(4×n3)の関係を有するように設定されている。
【0041】
すなわち、第1実施形態では、約405nmの発振波長λを有する半導体素子層20では、AlN膜41の厚みt1が、t1<約47nmであるように形成されるのが好ましい。また、AlN膜43の厚みt3が、t3<約47nmであるように形成されるのが好ましい。なお、窒化膜(AlN膜41および43)は、約1nm〜約20nmの範囲の厚みを有するように形成されるのがより好ましい。また、Al膜42の厚みt2については、t2<約60nmであるように形成されるのが好ましく、特に約1nm〜約20nmの範囲の厚みを有するのがより好ましい。
【0042】
また、図1に示すように、窒化物系半導体レーザ素子1000の光反射面2上には、光反射面2から近い順に、光反射面2に接触する約10nmの厚みを有するAlN膜61と、AlN膜61に接触する約10nmの厚みを有するAl膜62とが積層された誘電体多層膜である第2変質防止層60が形成されている。そして、第2変質防止層60上には、Al膜62に接触する約140nmの厚みを有するSiO膜63が形成されている。また、SiO膜63上には、SiO膜63に接触する低屈折率膜として約70nmの厚みを有するSiO膜と高屈折率膜として約50nmの厚みを有するZrO膜とが交互に6層ずつ積層された約720nmの厚みを有する誘電体多層膜である多層反射膜64が形成されている。また、多層反射膜64は反射率を制御する機能を有し、多層反射膜64により光反射面2でのレーザ光の反射率が約98%の高反射率を有するように設定されている。
【0043】
また、第1実施形態では、AlN膜61、Al膜62およびSiO膜63の屈折率が、それぞれ、n5(=約2.15)、n6(=約1.68)およびn8(=約1.48)である場合、AlN膜61の厚みt5(=約10nm)、Al膜62の厚みt6(=約10nm)およびSiO膜63の厚みt8(=約140nm)は、それぞれ、t5<λ/(4×n5)、t6<λ/(4×n6)およびt8≒λ/(2×n8)の関係を有するように設定されている。
【0044】
また、窒化物系半導体レーザ素子1000の半導体素子層20は、図2に示すように、基板10の上面上には、約100nmの厚みを有するとともに、約5×1018cm−3のドーピング量を有するSiがドープされたn型GaNからなるn型層21が形成されている。また、n型層21上には、約400nmの厚みを有するとともに、約5×1018cm−3のドーピング量および約5×1018cm−3のキャリア濃度を有するSiがドープされたn型Al0.07Ga0.93Nからなるn型クラッド層22が形成されている。
【0045】
また、n型クラッド層22上には、約5nmの厚みを有するとともに、約5×1018cm−3のドーピング量および約5×1018cm−3のキャリア濃度を有するSiがドープされたn型Al0.16Ga0.84Nからなるn型キャリアブロック層23が形成されている。また、n型キャリアブロック層23上には、約100nmの厚みを有するとともに、約5×1018cm−3のドーピング量および約5×1018cm−3のキャリア濃度を有するSiがドープされたn型GaNからなるn型光ガイド層24が形成されている。また、n型光ガイド層24上には、活性層25が形成されている。この活性層25は、約20nmの厚みを有するアンドープIn0.02Ga0.98Nからなる4層の障壁層と、約3nmの厚みを有するアンドープIn0.1Ga0.9Nからなる3層の井戸層とが交互に積層されたMQW構造を有している。
【0046】
また、図2に示すように、活性層25上には、約100nmの厚みを有するとともに、約4×1019cm−3のドーピング量および約5×1017cm−3のキャリア濃度を有するMgがドープされたp型GaNからなるp型光ガイド層26が形成されている。p型光ガイド層26上には、約20nmの厚みを有するとともに、約4×1019cm−3のドーピング量および約5×1017cm−3のキャリア濃度を有するMgがドープされたp型Al0.16Ga0.84Nからなるp型キャップ層27が形成されている。
【0047】
また、p型キャップ層27上には、凸部28aと凸部28a以外の平坦部28bとを有するとともに、約4×1019cm−3のドーピング量および約5×1017cm−3のキャリア濃度を有するMgがドープされたp型Al0.07Ga0.93Nからなるp型クラッド層28が形成されている。このp型クラッド層28の平坦部28bは、凸部28aの左右両側において約80nmの厚みを有している。また、p型クラッド層28の平坦部28bの上面から凸部28aの上面までは、約320nmの高さを有するとともに、凸部28aの幅は、約1.5μmを有している。
【0048】
また、p型クラッド層28の凸部28a上には、約10nmの厚みを有するとともに、約4×1019cm−3のドーピング量および約5×1017cm−3のキャリア濃度を有するMgがドープされたp型In0.02Ga0.98Nからなるp型コンタクト層29が形成されている。このp型コンタクト層29とp型クラッド層28の凸部28aとによって、一方側面30aと、一方側面30aとは反対側に位置する他方側面30bとを有するリッジ部30が構成されている。また、リッジ部30は、下部において約1.5μmの幅を有し、[1−100]方向(レーザ光の出射方向である図1のA方向)に延びる形状に形成されている。ここで、リッジ部30の下方に位置する活性層25を含む部分に、[1−100]方向(図1のA方向)に延びる導波路が形成されており、この導波路と光出射面1および光反射面2とによって共振器が構成されている。なお、n型層21、n型クラッド層22、n型キャリアブロック層23、n型光ガイド層24、活性層25、p型光ガイド層26、p型キャップ層27、p型クラッド層28およびp型コンタクト層29は、それぞれ、本発明の「半導体素子層」の一例である。また、活性層25は、本発明の「発光層」の一例である。
【0049】
また、図2に示すように、リッジ部30を構成するp型コンタクト層29上には、下層側から上層側に向かって、約5nmの厚みを有するPt層と、約100nmの厚みを有するPd層と、約150nmの厚みを有するAu層とがこの順に形成されたp側オーミック電極31が形成されている。また、p側オーミック電極31の上面以外の領域上には、約250nmの厚みを有するSiO膜(絶縁膜)からなる電流ブロック層32が形成されている。また、電流ブロック層32上の所定領域には、p側オーミック電極31の上面に接触するように、下層側から上層側に向かって、約100nmの厚みを有するTi層と、約100nmの厚みを有するPd層と、約3μmの厚みを有するAu層とがこの順に形成されたp側パッド電極33が形成されている。
【0050】
また、図2に示すように、n型GaN基板10の下面上には、n側電極34が形成されている。このn側電極34は、n型GaN基板10下面側から近い順に積層された、約10nmの厚みを有するAl層と、約20nmの厚みを有するPt層と、約300nmの厚みを有するAu層とから構成されている。
【0051】
次に、図1および図2を参照して、第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子1000の製造プロセスについて説明する。
【0052】
まず、図2に示すように、基板10上に、有機金属気相エピタキシ(MOVPE)法を用いて、約100nmの厚みを有するn型層21、約400nmの厚みを有するn型クラッド層22、約5nmの厚みを有するn型キャリアブロック層23、約100nmの厚みを有するn型光ガイド層24、約90nmの合計厚みを有する活性層25を順次形成する。また、活性層25に、約100nmの厚みを有するp型光ガイド層26、約20nmの厚みを有するp型キャップ層27、約400nmの厚みを有するp型クラッド層28、および約10nmの厚みを有するp型コンタクト層29を順次形成する。その後、p型化アニール処理とエッチングによるリッジ部30の形成とを行った後、p側オーミック電極31、電流ブロック層32およびp側パッド電極33を真空蒸着法によりそれぞれ形成する。また、基板10の下面上に、真空蒸着法によりn側電極34を形成する。
【0053】
次に、窒化物系半導体レーザ素子1000(図1参照)を構成する共振器端面と端面コート膜との形成方法について説明する。まず、所定の箇所にレーザあるいは機械式スクライブにより、リッジ部30の延びる方向(図1におけるA方向)に直交する方向にスクライブ傷を形成する。このスクライブ傷は、リッジ部30を除く部分に、破線状に形成される。
【0054】
ここで、第1実施形態では、上述の半導体レーザ構造を形成した基板10をスクライブ傷に沿って劈開を行い、バー状態に分離された構造を形成する。その後、劈開面が形成されたバー状態の基板を、電子サイクロトロン共鳴(ECR)スパッタ成膜装置に導入する。
【0055】
また、ECRプラズマを劈開面からなる光出射面1(図1参照)に照射することにより、光出射面1を清浄化する。ECRプラズマは、Nガス雰囲気中で発生させる。このとき、光出射面1(図1参照)は軽微にエッチングされる。なお、その際、スパッタターゲットへRFパワーを印加しない。その後、ECRスパッタ法により、光出射面1に第1変質防止層40およびAl膜51(図1参照)を順次形成する。
【0056】
また、上述の光出射面1を清浄化する工程と同様に、ECRプラズマを劈開面からなる光反射面2(図1参照)に照射することにより、光反射面2を清浄化する。このとき、光反射面2は軽微にエッチングされる。なお、その際、スパッタターゲットへRFパワーを印加しない。その後、ECRスパッタ法により、光反射面2に第2変質防止層60、SiO2膜63および多層反射膜64(図1参照)を形成する。
【0057】
その後、バー状態の基板10をリッジ部30の延びる方向(図1におけるA方向)に平行な方向に分離することにより、チップ化された窒化物系半導体レーザ素子1000が形成される。
【0058】
このように、第1実施形態では、ECRプラズマを照射することにより、劈開後の光出射面1および光反射面2に対して清浄化を行う工程を備えることによって、導波路端面近傍の劣化やCODが発生するのが抑制された窒化物系半導体レーザ素子1000が容易に形成されることが可能である。このようにして、第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子1000が形成される。
【0059】
第1実施形態では、上記のように、光出射面1上に、光出射面1から近い順に、AlN膜41と、Al膜42と、AlN膜43とが形成された第1変質防止層40を備える。これにより、外側に配置されたAlN膜43により、Al膜51中および雰囲気中に存在する酸素が第1変質防止層40に取り込まれにくくなるので、Al膜42とAlN膜41との界面における酸素の脱離や、酸素と窒素との置換反応などが抑制される。すなわち、Al膜42とAlN膜41との界面が変質して劣化するのが抑制される。したがって、レーザ出射光を高出力化した場合でも光出射面1および第1変質防止層40近傍における発熱が抑制されるので、光出射側の共振器端面(光出射面1)の破壊が抑制される。この結果、窒化物系半導体レーザ素子1000の信頼性を向上させることができる。なお、上記効果は、約525nm以下の短い発振波長でかつ高エネルギを有するレーザ光を出射する半導体レーザ素子に対して特に有効である。
【0060】
また、上記のように構成した場合に、Al膜42とAlN膜41との界面に変質が生じた場合でも、AlN膜43によってAl膜42内に広がる変質領域をAl膜42内に留めることができるので、変質の拡大が抑制される。これにより、第1変質防止層40の変質を最小限に抑制することができる。
【0061】
また、第1変質防止層40上、すなわち、光出射面1とは反対側に位置する第1変質防止層40の表面上に形成されたAl膜51の厚みを調整することにより、光出射面1を出射したレーザ光の反射率を容易に制御することができる。これにより、高出力化に対応した窒化物系半導体レーザ素子1000の信頼性を向上させることができる。
【0062】
また、第1変質防止層40を構成するAlN膜41の厚みt1、Al膜42の厚みt2およびAlN膜43の厚みt3を、それぞれ、t1<λ/(4×n1)、t2<λ/(4×n2)およびt3<λ/(4×n3)となるように設定することによって、第1変質防止層40を構成する各々の膜の厚みがλ/(4×n)よりも小さくなる。これにより、光出射面1を出射したレーザ光は、第1変質防止層40を構成する各膜の厚みに影響されることなく透過してAl膜51に達する。その結果、所望の反射率(約8%)を有するように設定されたAl膜51の反射率制御機能が第1変質防止層40によって影響されるのを容易に抑制することができる。また、第1変質防止層40を構成する各膜の厚みが薄いので、膜形成後の応力に起因した膜剥がれ(剥離)なども抑制することができる。
【0063】
また、第1実施形態では、第1変質防止層40のAlN膜41は半導体素子層20と接する。これにより、光出射面1にはAlN膜41が接触しているので、Al膜42の酸素が半導体素子層20に取り込まれるのを、AlN膜41により容易に抑制することができる。
【0064】
また、第1実施形態では、AlN膜41およびAlN膜43と、Al膜42とが、同じAl元素を含む。これにより、互いに接触するAlN膜41とAl膜42、および、互いに接触するAlN膜43とAl膜42とは、それぞれ、同種の金属元素(Al元素)を含む材料であるので、接触の際の密着性を向上させることができる。この結果、AlN膜41およびAlN膜43の膜剥がれ(剥離)を抑制することができる。
【0065】
また、第1実施形態では、AlN膜41およびAlN膜43が、それぞれ、Alを含む。これにより、Alを含む窒化物は良好な絶縁性を有するのでAlN膜41およびAlN膜43の絶縁性を向上させることができる。また、Alを含んだ窒化膜により、第1変質防止層40および半導体素子層20に酸素が取り込まれるのを効果的に抑制することができる。
【0066】
また、第1実施形態では、Al膜42がAlを含む。これにより、Alを含む酸化物は良好な絶縁性を有するので、Al膜42の絶縁性を向上させることができる。また、Alを含むAl膜42と、Al膜42を両側から挟み込むAlN膜41およびAlN膜43とを同種の金属元素(Al元素)により容易に接触させることができるので、各膜間の密着性を向上させることができる。
【0067】
また、第1実施形態では、活性層25を含む半導体素子層20は、窒化物系半導体からなる。これにより、約405nm帯の短い発振波長を有し、かつ、高エネルギなレーザ光を出射する窒化物系半導体レーザ素子1000において、特にレーザ光出射時の発熱に起因した光出射側の共振器端面(光出射面1)の破壊を効果的に抑制することができる。
【0068】
また、第1実施形態では、第2変質防止層60を構成するAlN膜61の厚みt5およびAl膜62の厚みt6を、それぞれ、t5<λ/(4×n5)およびt6<λ/(4×n6)となるように設定することによって、第2変質防止層60を構成する各々の膜の厚みがλ/(4×n)よりも小さくなる。これにより、光反射面2を出射したレーザ光は、第2変質防止層60を構成する各膜の厚みに影響されることなく透過する。また、SiO膜63の厚みt8は、t8≒λ/(2×n8)となるように設定されているので、SiO膜63においてもレーザ光は実質的に反射されない。その結果、所望の反射率(約98%)を有するように設定された多層反射膜64の反射率制御機能が第2変質防止層60によって影響されるのを容易に抑制することができる。
【0069】
また、第2変質防止層60を構成する各膜の厚みが薄いので、膜形成後の応力に起因した膜剥がれ(剥離)なども抑制することができる。
【0070】
(第1実施形態の第1変形例)
図3を参照して、この第1実施形態の第1変形例では、上記第1実施形態と異なり、第1変質防止層40に接触するように約95nmの厚みを有するSiO膜52が形成されている。なお、SiO膜52は、本発明の「第2酸化膜」および「第2絶縁膜」の一例である。
【0071】
なお、第1実施形態の第1変形例による窒化物系半導体レーザ素子1005のその他の構造および製造プロセスは、上記第1実施形態と同様である。
【0072】
第1実施形態の第1変形例では、上記のように、第1変質防止層40上、すなわち、光出射面1とは反対側に位置する第1変質防止層40の表面上に形成されたSiO膜52の厚みを調整することにより、光出射面1を出射したレーザ光の反射率を容易に制御することができる。これにより上記第1実施形態と同様に、高出力化に対応した窒化物系半導体レーザ素子1005の信頼性を向上させることができる。なお、この第1変形例のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0073】
(第2実施形態)
図4を参照して、この第2実施形態では、上記第1実施形態で用いたAl膜42のかわりに、酸窒化膜であるAlO膜44を用いるとともに、第1変質防止層40とAl膜51との間に酸窒化膜であるAlO膜45を用いた場合について説明する。なお、AlO膜44は、本発明の「第1酸窒化膜」および「第1中間膜」の一例である。また、AlO膜45は、本発明の「第3酸窒化膜」および「第2中間膜」の一例である。なお、以降の説明では、AlO膜44およびAlO膜45を、それぞれ、AlON膜44およびAlON膜45として記載する。
【0074】
ここで、第2実施形態では、図4に示すように、窒化物系半導体レーザ素子2000の光出射面1上には、光出射面1から近い順に、光出射面1に接触する約10nmの厚みを有するAlN膜41と、AlN膜41に接触する約10nmの厚みを有するAlON膜44と、AlON膜44に接触する約10nmの厚みを有するAlN膜43とが積層された誘電体多層膜である第1変質防止層240が形成されている。また、第1変質防止層240上には、第1変質防止層240に接触するように、約10nmの厚みを有するAlON膜45と、約70nmの厚みを有するAl膜51とが形成されている。すなわち、第2実施形態では、光出射面1上に、光出射面1から近い順に、窒化膜および酸窒化膜が交互に2層ずつ積層されている。なお、第1変質防止層240は、本発明の「第1絶縁膜」の一例である。
【0075】
また、第2実施形態では、AlON膜44および45の屈折率が、それぞれ、n2およびn4(=約1.68〜約2.15の範囲の値(AlとAlNとの混合比で決定されるため))である場合、AlON膜44の厚みt2(=約10nm)およびAlON膜45の厚みt4(=約10nm)は、それぞれ、t2<λ/(4×n2)およびt4<λ/(4×n4)の関係を有するように設定されている。
【0076】
すなわち、第2実施形態では、約405nmの発振波長λを有する半導体素子層20では、AlON膜44および45の厚みt2およびt4が、それぞれ、t2<約47nm〜約60nmの範囲、および、t4<約47nm〜約60nmの範囲で形成されるのが好ましい。ここで、AlONの屈折率は、AlとAlNとの混合比により約1.68〜約2.15の範囲に決定されるので、AlON膜44および45の厚みt2およびt4には、上記範囲が存在する。なお、酸窒化膜(AlON膜44および45)は、約1nm〜約20nmの範囲の厚みを有するのがより好ましい。
【0077】
なお、第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子2000のその他の構造および製造プロセスは、上記第1実施形態と同様である。
【0078】
第2実施形態では、上記のように、光出射面1上に、光出射面1から近い順に、AlN膜41と、AlON膜44と、AlN膜43とが形成された第1変質防止層240を備える。これにより、外側に配置されたAlN膜43により、AlON膜44中および雰囲気中に存在する酸素が第1変質防止層240に取り込まれにくくなるので、AlON膜44とAlN膜41との界面における酸素の脱離や、酸素と窒素との置換反応などが抑制される。すなわち、AlON膜44とAlN膜41との界面が変質して劣化するのが抑制される。特に、AlON膜44などの酸窒化膜は、Al膜などの酸化膜よりも酸素原子の含有率が小さいので、上記の反応はより軽微になると考えられる。したがって、レーザ出射光を高出力化した場合でも光出射面1および第1変質防止層240近傍における発熱が抑制されるので、共振器端面(光出射面1)の破壊がさらに抑制される。この結果、窒化物系半導体レーザ素子2000の信頼性をさらに向上させることができる。
【0079】
なお、AlON膜44とAlN膜41との界面に変質が生じた場合でも、AlN膜43によってAlON膜44内に広がる変質領域をAlON膜44内に留めることができるので、変質の拡大が抑制される。これにより、第1変質防止層240の変質を最小限に抑制することができる。
【0080】
また、第1変質防止層240を構成するAlN膜41の厚みt1、AlON膜44の厚みt2およびAlN膜43の厚みt3を、それぞれ、t1<λ/(4×n1)、t2<λ/(4×n2)およびt3<λ/(4×n3)となるように設定することによって、第1変質防止層240を構成する各々の膜の厚みがλ/(4×n)よりも小さくなる。これにより、光出射面1を出射したレーザ光は、第1変質防止層240を構成する各膜の厚みに影響されることなく透過してAl膜51に達する。その結果、所望の反射率(約8%)を有するように設定されたAl膜51の反射率制御機能が第1変質防止層240によって影響されるのを容易に抑制することができる。また、第1変質防止層240を構成する各膜の厚みが薄いので、膜形成後の応力に起因した膜剥がれ(剥離)なども抑制することができる。
【0081】
また、第2実施形態では、第1変質防止層240とAl膜51との間に酸窒化膜であるAlON膜45がさらに形成されている。これにより、光出射面1上に、AlN膜41とAlON膜44とからなる領域、および、AlN膜43とAlON膜45とからなる領域が光出射面1から近い順に形成されて多層化されるので、光出射側の共振器端面(光出射面1)の破壊をより一層抑制することができる。
【0082】
また、第2実施形態では、AlON膜45の厚みt4についてもt4<λ/(4×n4)となるように設定されている。これにより、光出射面1を出射したレーザ光は、AlON膜45の厚みにも影響されることなく透過してAl膜51に達する。その結果、反射率を制御するAl膜51の反射率制御機能が第1変質防止層240によって影響されるのを容易に抑制することができる。
【0083】
また、第2実施形態では、AlON膜44がAlを含む。これにより、Alを含む酸窒化物は良好な絶縁性を有するので、AlON膜44の絶縁性を向上させることができる。また、AlON膜44と、AlON膜44を両側から挟み込むAlN膜41およびAlN膜43とを同種の金属元素(Al元素)により容易に接触させることができるので、各々の膜同士の密着性を向上させることができる。なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0084】
(第3実施形態)
図5を参照して、この第3実施形態では、上記第1実施形態と異なり、光反射面2側に、窒化膜および酸化膜が多層化された誘電体多層膜である第2変質防止層160が形成される場合について説明する。なお、第2変質防止層160は、本発明の「第3絶縁膜」の一例である。
【0085】
ここで、第3実施形態では、図5に示すように、窒化物系半導体レーザ素子3000の光反射面2上には、光反射面2から近い順に、光反射面2に接触する約10nmの厚みを有するAlN膜61と、AlN膜61に接触する約10nmの厚みを有するAl膜62と、Al膜62に接触する約10nmの厚みを有するAlN膜73とが積層された誘電体多層膜である第2変質防止層160が形成されている。なお、AlN膜61は、本発明の「第3窒化膜」の一例であり、Al膜62は、本発明の「第4酸化膜」および「第3中間膜」の一例であり、AlN膜73は、本発明の「第4窒化膜」の一例である。第3実施形態では、AlN膜61、Al膜62およびAlN膜73により、第2変質防止層160自身および光反射面2がレーザ光の反射に伴って変質するのを抑制する機能を有する。
【0086】
また、第2変質防止層160上、すなわち、光反射面2とは反対側に位置する第2変質防止層160の表面上には、AlN膜73に接触するように約140nmの厚みを有するSiO膜63が形成されている。また、SiO膜63上には、SiO膜63に接触する低屈折率膜として約70nmの厚みを有するSiO膜と高屈折率膜として約50nmの厚みを有するZrO膜とが交互に6層ずつ積層された約720nmの厚みを有する誘電体多層膜である多層反射膜64が形成されている。
【0087】
また、第3実施形態では、AlN膜61、Al膜62およびAlN膜73の屈折率が、それぞれ、n5(=約2.15)、n6(=約1.68)およびn7(=約2.15)である場合、AlN膜61の厚みt5(=約10nm)、Al膜62の厚みt6(=約10nm)およびAlN膜73の厚みt7(=約10nm)は、それぞれ、t5<λ/(4×n5)、t6<λ/(4×n6)およびt7<λ/(4×n7)の関係を有するように設定されている。
【0088】
すなわち、第3実施形態では、約405nmの発振波長λを有する半導体素子層20では、AlN膜61の厚みt5が、t5<約47nmであるように形成されるのが好ましい。また、AlN膜73の厚みt6が、t6<約47nmであるように形成されるのが好ましい。なお、窒化膜(AlN膜61および73)は、約1nm〜約20nmの範囲の厚みを有するように形成されるのがより好ましい。また、Al膜62の厚みt7については、t7<約60nmであるように形成されるのが好ましく、特に約1nm〜約20nmの範囲の厚みを有するのがより好ましい。
【0089】
なお、第3実施形態による窒化物系半導体レーザ素子3000のその他の構造および製造プロセスは、上記第1実施形態と同様である。
【0090】
第3実施形態では、上記のように、光反射面2上に、光反射面2から近い順に、AlN膜61と、Al膜62と、AlN膜73とが形成された第2変質防止層160を備える。これにより、外側に配置されたAlN膜73により、酸化物からなる多層反射膜64中および雰囲気中に存在する酸素が第2変質防止層160に取り込まれにくくなるので、Al膜62とAlN膜61との界面が変質して劣化するのが抑制される。したがって、レーザ出射光を高出力化した場合でも光反射面2および第2変質防止層160における発熱が抑制されるので、光反射側の共振器端面(光反射面2)の破壊が抑制される。この結果、窒化物系半導体レーザ素子3000の信頼性をより向上させることができる。
【0091】
なお、Al膜62とAlN膜61との界面に変質が生じた場合でも、AlN膜73によってAl膜62内に広がる変質領域をAl膜62内に留めることができるので、変質の拡大が抑制される。これにより、第2変質防止層160の変質を最小限に抑制することができる。
【0092】
また、第2変質防止層160を構成するAlN膜61の厚みt5、Al膜62の厚みt6およびAlN膜73の厚みt7を、それぞれ、t5<λ/(4×n5)、t6<λ/(4×n6)およびt7<λ/(4×n7)となるように設定することによって、第2変質防止層160を構成する各々の膜の厚みがλ/(4×n)よりも小さくなる。これにより、光反射面2を一旦出射したレーザ光は、第2変質防止層160を構成する各膜の厚みに影響されることなく透過して多層反射膜64に達する。これにより、所望の反射率(約98%)を有するように設定された多層反射膜64の反射率制御機能が第2変質防止層160によって影響されるのを容易に抑制することができる。また、第2変質防止層160を構成する各膜の厚みが薄いので、膜形成後の応力に起因した膜剥がれ(剥離)なども抑制することができる。
【0093】
また、第3実施形態では、第2変質防止層160のAlN膜61が半導体素子層20と接する。これにより、光反射面2にはAlN膜61が接触しているので、Al膜62の酸素が半導体素子層20に取り込まれるのを、AlN膜61により容易に抑制することができる。
【0094】
また、第3実施形態では、AlN膜61およびAlN膜73と、Al膜62とが、同じAl元素を含む。これにより、互いに接触するAlN膜61とAl膜62、および、互いに接触するAlN膜73とAl膜62とは、それぞれ、同種の金属元素(Al元素)を含む材料であるので、接触の際の密着性を向上させることができる。この結果、AlN膜61およびAlN膜73の膜剥がれ(剥離)を抑制することができる。
【0095】
また、第3実施形態では、AlN膜61およびAlN膜73が、それぞれ、Alを含む。これにより、Al含む窒化物は良好な絶縁性を有するので、AlN膜61およびAlN膜73の絶縁性を向上させることができる。また、Alを含んだ窒化膜により、第2変質防止層160および半導体素子層20に酸素が取り込まれるのを効果的に抑制することができる。
【0096】
また、第3実施形態では、Al膜62がAlを含む。これにより、Alを含む酸化物は良好な絶縁性を有するので、Al膜62の絶縁性を向上させることができる。また、Al膜62と、Al膜62を両側から挟み込むAlN膜61およびAlN膜73とは、共通の元素(Al)を含んでいるので、各膜間の密着性を向上させることができる。
【0097】
また、第3実施形態では、第2変質防止層160上に、AlN膜73に接するSiO膜63を介して多層反射膜64を備える。これにより、多層反射膜64の厚みを調整することにより、光反射面2における第2変質防止層160を出射したレーザ光の反射率を容易に制御することができる。なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0098】
(第4実施形態)
図6を参照して、この第4実施形態では、上記第1実施形態と異なり、窒化物系半導体レーザ素子4000を構成する第1変質防止層340が、2つの窒化膜とこの2つの窒化膜に挟まれる酸化膜および酸窒化膜とから形成されるとともに、第2変質防止層260が、窒化膜、酸窒化膜および酸化膜が順次積層された構成を備える場合について説明する。
【0099】
ここで、第4実施形態では、図6に示すように、窒化物系半導体レーザ素子4000の光出射面1上には、光出射面1から近い順に、光出射面1に接触する約10nmの厚みを有するAlN膜41と、AlN膜41に接触する約5nmの厚みを有するAlON膜81と、AlON膜81に接触する約2.5nmの厚みを有するAl膜82と、Al膜82に接触する約2.5nmの厚みを有するAlON膜83と、AlON膜83に接触する約10nmの厚みを有するAlN膜43とが積層された誘電体多層膜である第1変質防止層340が形成されている。そして、第1変質防止層340上には、第1変質防止層340に接触するように約73nmの厚みを有するAl膜51が形成されている。なお、AlON膜81、Al膜82およびAlON膜83は、本発明の「第1中間膜」の一例であるとともに、それぞれ、本発明の「第1酸窒化膜」、「第1酸化膜」および「第1酸窒化膜」の一例である。また、Al膜51により光出射面1でのレーザ光の反射率が約8%を有するように設定されている。
【0100】
また、第4実施形態では、AlON膜81、Al膜82およびAlON膜83が有する平均屈折率がn2である場合、AlON膜81、Al膜82およびAlON膜83が有する合計厚みt2(=約10nm)は、t2<λ/(4×n2)の関係を有するように設定されている。ここで、上記3層(AlON膜81、Al膜82およびAlON膜83)からなる多層膜の平均屈折率n2は、AlとAlNとの混合比により約1.68〜約2.15の範囲に決定されるので、約405nmの発振波長λを有する半導体素子層20では、合計厚みt2が、t2<約47nm(AlNが約100%)〜約60nm(Alが約100%)の範囲で形成されるのが好ましく、特に、約1nm〜約20nmの範囲の厚みを有するように形成されるのがより好ましい。
【0101】
また、図6に示すように、窒化物系半導体レーザ素子4000の光反射面2上には、光反射面2から近い順に、光反射面2に接触する約10nmの厚みを有するAlN膜61と、AlN膜61に接触する約5nmの厚みを有するAlON膜84と、AlON膜84に接触する約5nmの厚みを有するAl膜85とが積層された誘電体多層膜である第2変質防止層260が形成されている。そして、第2変質防止層260上には、Al膜85に接触する約140nmの厚みを有するSiO膜63が形成されている。また、SiO膜63上には、SiO膜63に接触する低屈折率膜として約70nmの厚みを有するSiO膜と高屈折率膜として約50nmの厚みを有するZrO膜とが交互に6層ずつ積層された約720nmの厚みを有する誘電体多層膜である多層反射膜64が形成されている。また、多層反射膜64により光反射面2でのレーザ光の反射率が約98%の高反射率を有するように設定されている。
【0102】
また、第4実施形態では、AlN膜61、AlON膜84およびAl膜85の屈折率が、それぞれ、n5(=約2.15)、n6(=約1.68〜約2.15)およびn9(=約1.68)である場合、AlN膜61の厚みt5(=約10nm)、AlON膜84の厚みt6(=約5nm)およびAl膜85の厚みt9(=約5nm)は、それぞれ、t5<λ/(4×n5)、t6<λ/(4×n6)およびt9<λ/(4×n9)の関係を有するように設定されている。
【0103】
なお、第4実施形態による窒化物系半導体レーザ素子4000のその他の構造および製造プロセスは、上記第1実施形態と同様である。
【0104】
第4実施形態では、上記のように、AlN膜41とAlN膜43との間に、AlON膜81、Al膜82およびAlON膜83が形成されている。これにより、Al膜51中および雰囲気中に存在する酸素が第1変質防止層340中にさらに取り込まれにくくなるので、AlON膜81とAlN膜41との界面が変質して劣化することをさらに抑制することができる。
【0105】
また、第4実施形態では、AlN膜41とAlN膜43との間において、AlON膜81およびAlON膜83がAl膜82を積層方向に挟むように形成されている。これにより、第1変質防止層340が、窒化膜(AlN膜41)、酸窒化膜(AlON膜81)、酸化膜(Al膜82)、酸窒化膜(AlON膜83)および窒化膜(AlN膜43)の順に積層されるので、第1変質防止層340中の組成が漸次変化することになる。その結果、第1変質防止層340中の各膜間の密着性をさらに向上させることができるので、複数の薄膜からなる第1変質防止層340の強度を維持することができる。
【0106】
また、第4実施形態では、第2変質防止層260を構成するAlN膜61の厚みt5、AlON膜84の厚みt6およびAl膜85の厚みt9を、それぞれ、t5<λ/(4×n5)、t6<λ/(4×n6)およびt9<λ/(4×n9)となるように設定することによって、第2変質防止層260を構成する各々の膜の厚みがλ/(4×n)よりも小さくなる。これにより、光反射面2を出射したレーザ光は、第2変質防止層260を構成する各膜の厚みに影響されることなく透過する。なお、第4実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0107】
(第5実施形態)
図7および図8を参照して、本発明の第5実施形態による窒化物系半導体レーザ素子5000の構造について説明する。この第5実施形態では、上記第1実施形態と異なり、発振波長λが約365nmである紫外光半導体レーザを用いている。
【0108】
ここで、第5実施形態では、図7に示すように、窒化物系半導体レーザ素子5000の光出射面1上には、光出射面101から近い順に、光出射面101に接触する約10nmの厚みを有するAlN膜41と、AlN膜41に接触する約10nmの厚みを有するHfO膜142と、HfO膜142に接触する約10nmの厚みを有するAlN膜43とが積層された誘電体多層膜である第1変質防止層440が形成されている。そして、第1変質防止層440上には、第1変質防止層440に接触するように約100nmの厚みを有するHfO膜151が形成されている。なお、第1変質防止層440は、本発明の「第1絶縁膜」の一例である。また、HfO膜142は、本発明の「第1酸化膜」および「第1中間膜」の一例であり、HfO膜151は、本発明の「第2酸化膜」および「第2絶縁膜」の一例である。また、HfO膜151により光出射面101でのレーザ光の反射率が約8%を有するように設定されている。
【0109】
また、第5実施形態では、AlN膜41、HfO膜142およびAlN膜43の屈折率が、それぞれ、n1(=約2.15)、n2(=約1.95)およびn3(=約2.15)である場合、AlN膜41の厚みt1(=約10nm)、HfO膜142の厚みt2(=約10nm)およびAlN膜43の厚みt3(=約10nm)は、それぞれ、t1<λ/(4×n1)、t2<λ/(4×n2)およびt3<λ/(4×n3)の関係を有するように設定されている。
【0110】
すなわち、第5実施形態では、約365nmの発振波長λを有する半導体素子層120では、AlN膜41の厚みt1が、t1<約42nmであるように形成されるのが好ましい。また、AlN膜43の厚みt3が、t3<約42nmであるように形成されるのが好ましい。なお、窒化膜(AlN膜41および43)は、約1nm〜約20nmの範囲の厚みを有するように形成されるのがより好ましい。また、HfO膜142の厚みt2については、t2<約47nmであるように形成されるのが好ましく、特に約1nm〜約20nmの範囲の厚みを有するのがより好ましい。
【0111】
また、図7に示すように、窒化物系半導体レーザ素子5000の光反射面102上には、光反射面102から近い順に、光反射面102に接触する約10nmの厚みを有するAlN膜61と、AlN膜61に接触する約10nmの厚みを有するHfO膜162とが積層された誘電体多層膜である第2変質防止層360が形成されている。そして、第2変質防止層360上には、HfO膜162に接触する約100nmの厚みを有するSiO膜63が形成されている。SiO膜63上には、SiO膜に接触する低屈折率膜として約70nmの厚みを有するSiO膜と高屈折率膜として約40nmの厚みを有するHfO膜とが交互に8層ずつ積層された約880nmの厚みを有する誘電体多層膜である多層反射膜164が形成されている。また、多層反射膜164により光反射面102でのレーザ光の反射率が約98%の高反射率を有するように設定されている。
【0112】
また、第5実施形態では、AlN膜61、HfO膜162およびSiO膜63の屈折率が、それぞれ、n5(=約2.15)、n6(=約1.95)およびn8(=約1.48)である場合、AlN膜61の厚みt5(=約10nm)、HfO膜162の厚みt6(=約10nm)およびSiO膜63の厚みt8(=約100nm)は、それぞれ、t5<λ/(4×n5)、t6<λ/(4×n6)およびt8<λ/(2×n8)の関係を有するように設定されている。
【0113】
また、窒化物系半導体レーザ素子5000の半導体素子層120は、図8に示すように、n型GaNからなる基板10の上面上には、約100nmの厚みを有するとともに、約5×1018cm−3のドーピング量を有するGeがドープされたn型GaNからなるn型層121が形成されている。また、n型層121上には、約700nmの厚みを有するとともに、約5×1018cm−3のドーピング量および約5×1018cm−3のキャリア濃度を有するGeがドープされたn型Al0.10Ga0.90Nからなるn型クラッド層122が形成されている。
【0114】
また、n型クラッド層122上には、約10nmの厚みを有するアンドープAl0.20Ga0.80Nからなるn側キャリアブロック層123が形成されている。また、n側キャリアブロック層123上には、約150nmの厚みを有するとともに、約5×1018cm−3のドーピング量および約5×1018cm−3のキャリア濃度を有するGeがドープされたn型Al0.03Ga0.97Nからなるn型光ガイド層124が形成されている。また、n型光ガイド層124上には、活性層125が形成されている。この活性層125は、約10nmの厚みを有するアンドープAl0.06Ga0.94Nからなる2層の障壁層と、約18nmの厚みを有するアンドープGaNからなる単層の井戸層とが交互に積層されたSQW構造を有している。
【0115】
また、図8に示すように、活性層125上には、約150nmの厚みを有するとともに、約3×1019cm−3のドーピング量および約7×1017cm−3のキャリア濃度を有するMgがドープされたp型Al0.03Ga0.97Nからなるp型光ガイド層126が形成されている。p型光ガイド層126上には、約10nmの厚みを有するとともに、アンドープAl0.20Ga0.80Nからなるp側キャリアブロック層127が形成されている。
【0116】
また、p側キャリアブロック層127上には、凸部128aと凸部128a以外の平坦部128bとを有するとともに、約3×1019cm−3のドーピング量および約7×1017cm−3のキャリア濃度を有するMgがドープされたp型Al0.10Ga0.90Nからなるp型クラッド層128が形成されている。このp型クラッド層128の平坦部128bは、凸部128aの左右両側において約80nmの厚みを有している。また、p型クラッド層128の平坦部128bの上面から凸部128aの上面までは、約320nmの高さを有するとともに、凸部128aの幅は、約1.5μmを有している。
【0117】
また、p型クラッド層128の凸部128a上には、約10nmの厚みを有するとともに、約4×1019cm−3のドーピング量および約5×1017cm−3のキャリア濃度を有するMgがドープされたp型In0.02Ga0.98Nからなるp型コンタクト層129が形成されている。このp型コンタクト層129とp型クラッド層128の凸部128aとによって、一方側面130aと、一方側面130aとは反対側に位置する他方側面130bとを有するリッジ部130が構成されている。また、リッジ部130は、下部において約1.5μmの幅を有し、[1−100]方向(レーザ光の出射方向である図7のA方向)に延びる形状に形成されている。ここで、リッジ部130の下方に位置する活性層125を含む部分に、[1−100]方向(図7のA方向)に延びる導波路が形成されており、この導波路と光出射面101および光反射面102とによって共振器が構成されている。なお、n型層121、n型クラッド層122、n側キャリアブロック層123、n型光ガイド層124、活性層125、p型光ガイド層126、p側キャリアブロック層127、p型クラッド層128およびp型コンタクト層129は、それぞれ、本発明の「半導体素子層」の一例である。また、活性層125は、本発明の「発光層」の一例である。
【0118】
なお、第5実施形態による窒化物系半導体レーザ素子5000のその他の構造および製造プロセスは、上記第1実施形態と同様である。
【0119】
第5実施形態では、上記のように、光出射面101上に形成されている端面コート膜の第1酸化膜および第2酸化膜として、第1実施形態で用いたAl膜42およびAl膜51に代えて、それぞれ、HfO膜142および151を用いている。ここで、HfOの吸収端は、紫外領域以下(λ=約300nm以下)であるので、紫外光(λ=365nm)を出射する窒化物系半導体レーザ素子5000においては、光出射面101上に形成されている端面コート膜での光吸収を抑制することができるので、光出射面101から効率よく光を取り出すことができる。
【0120】
また、第5実施形態では、光反射面102上に形成されている端面コート膜の第2変質防止層360において、第1実施形態で用いたAl膜62に代えてHfO膜162を用いており、多層反射膜164中においても、第1実施形態で用いたAl膜に代えてHfO膜を用いている。これにより、光出射面101上に形成されている端面コート膜と同様に、光反射面102上に形成されている端面コート膜での光吸収を抑制することができるので、光反射面102において効率よく光を反射することができる。
【0121】
また、HfO膜の膜応力は、Alの膜応力よりも容易に小さくすることができるので、光出射面101および光反射面102上に形成された各端面コート膜における剥離をより抑制することができる。さらに、HfO膜の膜密度は、Alの膜密度よりも容易に大きくすることができるので、高エネルギのレーザ光が照射された場合に生じる変質をより抑制することができる。その結果、窒化物系半導体レーザ素子5000の信頼性をより向上させることができる。第5実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0122】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0123】
たとえば、上記第1〜第5実施形態では、半導体素子層20(120)を、窒化物系半導体層により構成した例について示したが、本発明はこれに限らず、半導体素子層を、窒化物系半導体層以外の半導体層により構成してもよい。
【0124】
また、上記第1〜第5実施形態では、第1窒化膜(AlN膜41)および第2窒化膜(AlN膜43)を、それぞれ、AlN膜とした例について示したが、本発明はこれに限らず、上記第1および第2窒化膜を、Si元素などを含む窒化物により形成してもよい。この変形例の場合、たとえば、第1窒化膜および第2窒化膜にはそれぞれSiからなる窒化膜を用いることができる。この場合には、第1窒化膜および第2窒化膜は約2.1の屈折率を有するので、第1窒化膜および第2窒化膜の厚みtは、t<約48nmに形成されるのが好ましく、特に、約1nm〜約20nmの範囲の厚みを有するのがより好ましい。
【0125】
また、上記第1〜第5実施形態では、第1窒化膜(AlN膜41)および第2窒化膜(AlN膜43)を共にAlN膜とした例について示したが、本発明はこれに限らず、第1窒化膜と第2窒化膜とが異なる金属元素を含む窒化膜としてもよい。
【0126】
また、上記第1および第3実施形態では、第1酸化膜(Al膜42)をAl膜とした例について示したが、本発明はこれに限らず、上記第1酸化膜を、Si元素、Zr元素、Ta元素、Hf元素およびNb元素などを含む酸化物により形成してもよい。この変形例において、第1酸化膜を約1.48の屈折率を有するSiO膜とした場合、第1酸化膜の厚みtは、t<約68nmに形成されるのが好ましい。また、第1酸化膜を約2.28の屈折率を有するZrO膜とした場合、第1酸化膜の厚みtは、t<約44nmに形成されるのが好ましい。また、第1酸化膜を約2.25の屈折率を有するTa膜とした場合、第1酸化膜の厚みtは、t<約45nmに形成されるのが好ましい。また、第1酸化膜を約1.95の屈折率を有するHfO膜とした場合、第1酸化膜の厚みtは、t<約47nmに形成されるのが好ましい。また、第1酸化膜を約2.35の屈折率を有するNb膜とした場合、第1酸化膜の厚みtは、t<約43nmに形成されるのが好ましい。また、上記例示した各第1酸化膜においても、特に、約1nm〜約20nmの範囲の厚みを有するように形成されるのがより好ましい。
【0127】
また、上記第2実施形態では、第1酸窒化膜(AlON膜44)をAlON膜とした例について示したが、本発明はこれに限らず、上記酸窒化膜を、Si元素などを含む酸窒化物により形成してもよい。この変形例において、たとえば、第1酸窒化膜をSiO(以降、SiONと記載する)からなる酸窒化膜とした場合、SiONの屈折率は、SiOとSiとの混合比により約1.48〜約2.1の範囲に決定されるので、第1酸窒化膜の厚みtは、t<約48nm(SiOが約100%)〜約68nm(Siが約100%)の範囲で形成されるのが好ましく、特に、約1nm〜約20nmの範囲の厚みを有するように形成されるのがより好ましい。
【0128】
また、上記第4実施形態では、第1窒化膜(AlN膜41)と第2窒化膜(AlN膜43)との間に形成される第1中間膜を第1酸化膜(Al膜82)と、第1酸化膜を積層方向に挟む2つの第1酸窒化膜(AlON膜81およびAlON膜83)とから構成する例について示したが、本発明はこれに限らず、例えば、第1中間膜が第1酸化膜および第1酸窒化膜を1層づつ含むなど、第1中間膜が第1酸化膜および第1酸窒化膜の両方を含む他の組み合わせであってもよい。
【0129】
また、上記第2実施形態では、第2窒化膜(AlN膜43)と第2酸化膜(Al膜51)との間に第2中間膜として第3酸窒化膜(AlON膜45)を形成する例について示したが、本発明はこれに限らず、第2中間膜としてAl膜やSiO膜などの酸化膜を形成してもよい。なお、第2中間膜として用いるAl膜やSiO膜などの酸化膜は、本発明の「第3酸化膜」の一例である。あるいは、この第2中間膜は、第3酸窒化膜および上記第3酸化膜の両方を含んでいてもよい。
【0130】
また、上記第2実施形態では、第1酸窒化膜(AlON膜44)および第3酸窒化膜(AlON膜45)をともにAlON膜とした例について示したが、本発明はこれに限らず、第1酸窒化膜と第3酸窒化膜とが異なる金属元素を含む酸窒化膜としてもよい。
【0131】
また、上記第1〜第4実施形態では、光出射面1の反射率を制御する第2絶縁膜として酸化膜であるAl膜51またはSiO膜52を用いた例について示したが、本発明はこれに限らず、第2絶縁膜に、酸窒化膜であるAlON膜やSiON膜などを用いてもよい。なお、第2絶縁膜として用いるAlON膜やSiON膜などの酸窒化膜は、本発明の「第2酸窒化膜」の一例である。あるいは、第2絶縁膜を第2酸化膜と上記第2酸窒化膜との両方を含むように構成してもよい。
【0132】
また、上記第1〜第4実施形態では、光出射面1の反射率を制御するAl膜51の厚みを約70nmまたは約73nm(第2実施形態では約60nm)に形成した例について示したが、本発明はこれに限らず、Al膜51の厚みを上記以外の厚みになるように形成してもよい。
【0133】
また、上記第1実施形態の第1変形例では、光出射面1の反射率を制御するSiO膜52の厚みを約70nmに形成した例について示したが、本発明はこれに限らず、SiO膜52の厚みを上記以外の厚みになるように形成してもよい。
【0134】
また、上記第3実施形態では、第3窒化膜(AlN膜61)および第4窒化膜(AlN膜73)を、それぞれ、AlN膜とした例について示したが、本発明はこれに限らず、上記第3および第4窒化膜を、Si元素などを含む窒化物により形成してもよい。この変形例の場合も、たとえば、第4窒化膜および第5窒化膜にはそれぞれSiからなる窒化膜を用いることができる。この場合には、第3窒化膜および第4窒化膜は約2.1の屈折率を有するので、第3窒化膜および第4窒化膜の厚みtは、t<約48nmに形成されるのが好ましく、特に、約1nm〜約20nmの範囲の厚みを有するのがより好ましい。
【0135】
また、上記第3実施形態では、第3窒化膜(AlN膜61)および第4窒化膜(Al膜73)をともにAlN膜とした例について示したが、本発明はこれに限らず、第3窒化膜と第4窒化膜とが異なる金属元素を含む窒化膜としてもよい。
【0136】
また、上記第3実施形態では、第4酸化膜(Al膜62)をAl膜とした例について示したが、本発明はこれに限らず、上記第4酸化膜を、上記第1実施形態の第1酸化膜(Al膜42)と同様に、Si元素、Zr元素、Ta元素、Hf元素およびNb元素などを含む酸化物により形成してもよい。この場合、第4酸化膜の厚みは、上記第1実施形態の第1酸化膜と同様に設定することができる。
【0137】
また、上記第3実施形態では、第3窒化膜(AlN膜61)と第4窒化膜(AlN膜73)との間に挟まれる第4酸化膜(Al膜62)を形成した例について示したが、本発明はこれに限らず、第3窒化膜と第4窒化膜との間に、AlON膜やSiON膜などの酸窒化膜からなる第3中間膜を形成してもよい。なお、第3中間膜として用いるAlON膜やSiON膜などの酸窒化膜は、本発明の「第4酸窒化膜」の一例である。この変形例の場合も上記第2実施形態と同様に、たとえば上記第4酸窒化膜がAlONからなる場合、第4酸窒化膜の厚みtは、t<約47nm〜約60nmの範囲で形成されるのが好ましく、特に、約1nm〜約20nmの範囲の厚みを有するのがより好ましい。また、上記第4酸窒化膜がSiONからなる場合、第4酸窒化膜の厚みtは、t<約48nm(SiOが約100%)〜約68nm(Siが約100%)の範囲で形成されるのが好ましく、特に、約1nm〜約20nmの範囲の厚みを有するのがより好ましい。このように構成しても、AlまたはSiを含む酸窒化物は良好な絶縁性を有するので、上記AlON膜やSiON膜などの絶縁性を向上させることができる。さらには、AlON膜を、Al元素を含む第3窒化膜および第4窒化膜とによって両側から挟み込む場合、各々の膜は共通の元素(Al)を含んでいるので、各膜間の密着性を向上させることができる。
【0138】
また、上記第3実施形態では、第3窒化膜(AlN膜61)と第4窒化膜(AlN膜73)との間に挟まれる第3中間膜を第4酸化膜(Al膜62)で構成する例について示したが、本発明はこれに限らず、第3中間膜は、第4酸化膜および上記第4酸窒化膜の両方を含んでいてもよい。
【0139】
また、上記第1〜第4実施形態では、光反射面2側の反射率を制御する多層反射膜64を、SiO膜およびZrO膜が交互に6層ずつ積層して形成した例について示したが、本発明はこれに限らず、SiO膜およびZrO膜を交互に6層以外の数に積層して形成してもよい。また、多層反射膜として、SiO膜およびZrO膜以外の他の屈折率を有する、異なる2種類の絶縁膜を組み合わせてもよい。
【0140】
また、上記第5実施形態では、紫外光半導体レーザ5000の光出射面101上の端面コート膜の第1酸化膜(HfO膜142)および第2酸化膜(HfO膜162)をHfO膜で構成する例について示したが、本発明はこれに限らず、吸収端が紫外領域以下(λ=約300nm以下)であるTa元素、Mg元素およびY元素などを含む酸化物(Ta、MgOおよびYなど)および酸窒化物(TaO、MgOおよびYOなど)により形成してもよい。
【0141】
また、上記第5実施形態では、紫外光半導体レーザ5000の光反射面102上の端面コート膜の第2変質防止層360および多層反射膜164中の酸化膜をHfO膜で構成する例について示したが、本発明はこれに限らず、吸収端が紫外領域以下(λ=約300nm以下)であるTa元素、Mg元素およびY元素などを含む酸化物(Ta、MgOおよびYなど)および酸窒化物(TaO、MgOおよびYOなど)、あるいは、Al元素、Mg元素、Y元素およびLa元素などを含む弗化物(AlF、MgF、YFおよびLaFなど)により形成してもよい。
【0142】
また、上記第5実施形態では、光反射面102の反射率を制御する多層反射膜164を、SiO膜およびHfO膜が交互に8層ずつ積層して形成した例について示したが、本発明はこれに限らず、SiO膜およびHfO膜を交互に8層以外の数に積層して形成してもよい。また、多層反射膜として、SiO膜およびHfO膜以外の他の屈折率を有する異なる2種類の絶縁膜(たとえば、上記Ta元素、Mg元素およびY元素などを含む酸化物および酸窒化物やAl元素、Mg元素、Y元素およびLa元素などを含む弗化物など)を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0143】
1、101 光出射面(第1共振器端面)
2、102 光反射面(第2共振器端面)
20 半導体素子層
21 n型層(半導体素子層)
22 n型クラッド層(半導体素子層)
23 n型キャリアブロック層(半導体素子層)
24 n型光ガイド層(半導体素子層)
25 活性層(半導体素子層、発光層)
26 p型光ガイド層(半導体素子層)
27 p型キャップ層(半導体素子層)
28 p型クラッド層(半導体素子層)
29 p型コンタクト層(半導体素子層)
40、240、340、440 第1変質防止層(第1絶縁膜)
41 AlN膜(第1窒化膜)
42、82 Al膜(第1酸化膜、第1中間膜)
43 AlN膜(第2窒化膜)
44、81、83 AlON膜(第1酸窒化膜、第1中間膜)
45 AlON膜(第3酸窒化膜、第2中間膜)
51 Al膜(第2酸化膜、第2絶縁膜)
52 SiO膜(第2酸化膜、第2絶縁膜)
60、160、260、360 第2変質防止層(第3絶縁膜)
61 AlN膜(第3窒化膜)
62 Al膜(第4酸化膜、第3中間膜)
63 SiO
64、164 多層反射膜
73 AlN膜(第4窒化膜)
84 AlON膜
85 Al
142 HfO膜(第1酸化膜、第1中間膜)
151 HfO膜(第2酸化膜、第2絶縁膜)
162 HfO膜(第4酸化膜、第3中間膜)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光層を有する半導体素子層と、
前記半導体素子層の前記発光層を含む領域の光出射側の端部に形成された第1共振器端面と、
前記第1共振器端面上に、前記第1共振器端面側から第1窒化膜と、第1酸化膜および第1酸窒化膜の少なくとも一方を含む第1中間膜と、第2窒化膜とがこの順に形成された第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜上に形成され、第2酸化膜および第2酸窒化膜の少なくとも一方を含む第2絶縁膜とを備え、
前記発光層が発するレーザ光の波長がλであり、前記第1窒化膜の屈折率、前記第1中間膜の平均屈折率および前記第2窒化膜の屈折率が、それぞれ、n1、n2およびn3である場合に、前記第1窒化膜の厚みt1、前記第1中間膜の厚みt2および前記第2窒化膜の厚みt3は、それぞれ、t1<λ/(4×n1)、t2<λ/(4×n2)およびt3<λ/(4×n3)になるように設定されている、半導体レーザ素子。
【請求項2】
前記第1窒化膜は、前記半導体素子層と接する、請求項1に記載の半導体レーザ素子。
【請求項3】
前記第1窒化膜および前記第2窒化膜の少なくとも一方と、前記第1中間膜とは、同じ金属元素を含む、請求項1または2に記載の半導体レーザ素子。
【請求項4】
前記第1窒化膜および前記第2窒化膜は、それぞれ、AlおよびSiの少なくとも一方を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項5】
前記第1酸化膜は、Al、Si、Zr、Ta、HfおよびNbからなるグループより選択される少なくとも1つの元素を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項6】
前記第1酸窒化膜は、AlおよびSiの少なくとも一方を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項7】
前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜との間に第3酸化膜および第3酸窒化膜の少なくとも一方を含む第2中間膜がさらに形成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項8】
前記半導体素子層の前記発光層を含む領域の光反射側の端部に形成された第2共振器端面と、
前記第2共振器端面上に、前記第2共振器端面側から第3窒化膜と、第4酸化膜および第4酸窒化膜の少なくとも一方を含む第3中間膜と、第4窒化膜とがこの順に形成された第3絶縁膜をさらに備える、請求項1〜7のいずれか1項に記載の半導体レーザ素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−218578(P2009−218578A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22572(P2009−22572)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】